説明

樹脂粒子の製造方法

【課題】 表面に凹凸形状を有する樹脂粒子の製造方法を見出す。
【解決手段】 有機溶剤(S)中に、活性水素含有基を有する樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、及び樹脂粒子(A)より体積平均粒径が小さい粒子(B)を分散させた後、金属アルコキシド(C)を添加して、樹脂粒子(A)の表面に粒子(B)を固定化する工程を含む樹脂粒子の製造方法。樹脂(a)の含有する活性水素含有基は、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子の製造方法に関するものである。更に詳しくは、塗料用添加剤、化粧品用添加剤、紙塗工用添加剤、研磨剤、スラッシュ成形用材料、ホットメルト接着剤、粉体塗料、その他成形材料等に有用な樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め溶剤に樹脂を溶解させた樹脂溶液を界面活性剤又は水溶性ポリマー等の分散(助)剤の存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱又は減圧等によって溶剤を除去して製造される樹脂粒子が知られている(溶液樹脂懸濁法)。これら溶液樹脂懸濁法で得られる樹脂粒子の形状を制御することは難しく、一般的には真球状となる。
真球状粒子を塗料用添加剤あるいは化粧品用添加剤として用いた場合、隠ぺい性が不充分である場合がある。また紙塗工用添加剤として使用する場合、吸油性が不足しインキの保持性が悪い場合がある。
このような問題に対し、脱溶剤により粒子が体積収縮する前に粒子表面を適度に弾性化し、表面積減少速度を体積収縮速度より小さくして表面に凹凸を有する樹脂粒子を形成する方法がある。粒子表面の弾性化の手段として、樹脂粒子の表面に界面重合法又はin−situ重合法により殻物質を形成する方法(特許文献1参照)が提案されているが、この方法では、殻物質の影響により粒子の要求特性が充分に発現されないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−209630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における上記の事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、塗料用添加剤あるいは化粧品用添加剤として使用する場合、隠ぺい性に優れ、紙塗工用添加剤として使用する場合、インクの保持性に優れる、表面に凹凸形状を有する樹脂粒子の製造方法を見出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、有機溶剤(S)中に、活性水素含有基を有する樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、及び樹脂粒子(A)より体積平均粒径が小さい粒子(B)を分散させた後、金属アルコキシド(C)を添加して、樹脂粒子(A)の表面に粒子(B)を固定化する工程を含む樹脂粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法により得られる樹脂粒子は、以下の効果を奏する。
〔1〕隠ぺい性に優れる。
〔2〕インクの保存性等の吸収性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明における樹脂粒子(A)は、活性水素含有基を有する樹脂(a)を含有しており、樹脂(a)の活性水素含有基は2種以上であってもよい。活性水素含有基としては、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基が好ましい。金属アルコキシドとの反応性と樹脂粒子(A)の製造しやすさから、水酸基及びカルボキシル基がより好ましい。
【0008】
本発明において、樹脂粒子(A)を構成する樹脂(a)としては、いかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂(a)といては、上記樹脂の2種以上を併用しても差し支えない。これらのうち好ましいのは、樹脂粒子(A)の製造に好適な微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいという観点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれらの併用である。
樹脂粒子の柔軟性の観点から、さらに好ましくは、樹脂(a)がウレタン結合ユニットを有する樹脂を含有することであり、特に好ましくはポリウレタン樹脂を含有することであり、最も好ましくはポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂を含有することである。
【0009】
ポリエステル樹脂としては、1種以上のポリオール成分と、1種以上のポリカルボン酸成分を重縮合して得られるもの等が挙げられる。
【0010】
ポリエステル樹脂を構成するポリオール成分のうち2価アルコール(ジオール)としては、炭素数2〜36の脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオールおよびドデカンジオール等);炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等);上記炭素数2〜36の脂肪族ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(以下AOと略記する)〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)およびブチレンオキシド等〕付加物(付加モル数2〜30);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0011】
ポリオール成分のうち3〜8価またはそれ以上のポリオールとしては、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびソルビトール等);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらのポリオール成分の中で、好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール、炭素数6〜36の脂環式ジオール、炭素数6〜36の脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物、ビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜4のAO付加物である。
【0012】
ポリエステル樹脂を構成するポリカルボン酸成分のうち脂肪族(脂環式を含む)ジカルボン酸としては、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸、およびセバシン酸等)、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、およびグルタコン酸等)、などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。
【0013】
ポリカルボン酸成分のうち、3〜6価またはそれ以上の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸としては、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下Mnと記載、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による):450〜10000](α−オレフィン/マレイン酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分のうち、3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[Mn:450〜10000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、およびスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分として、これらのポリカルボン酸の、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0014】
これらのポリカルボン酸成分のうち、好ましいものは、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、および炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、さらに好ましくは、アジピン酸、炭素数16〜50のアルケニルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの併用である。
【0015】
ポリエステル樹脂を構成するポリオール成分の水酸基[OH]と、ポリカルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]は、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.8/1〜1/1.8、特に1.5/1〜1/1.5である。
【0016】
ポリウレタン樹脂としては、有機ポリイソシアネートと活性水素含有化合物(上記ポリオール成分、上記ポリオール成分とポリカルボン酸成分の重縮合により得られるポリエステルポリオール等)との重付加物等が挙げられる。
重付加反応には、公知の重付加反応触媒等が使用できる。
上記有機ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート[例えば、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び粗製MDI];炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート[例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びドデカメチレンジイソシアネート];炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート[例えばイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)];炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート[例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート];及びこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン、カルボジイミド、アロファネート、ウレア、ビューレット、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、又はオキサゾリドン基含有変性物等);並びにこれらの2種以上の混合物等が用いられる。
【0017】
樹脂(a)として用いられるこれら以外の樹脂としては、特開2002−284881号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0018】
樹脂(a)の有する活性水素含有基の量は、金属アルコキシド(C)を固定化し得る量であれば特に限定押れないが、例えば、樹脂(a)が有する活性水素含有基が水酸基の場合、(a)の水酸基価(mgKOH/g)としては、粒子(B)の固定化の効率の観点から、好ましくは10〜120、より好ましくは15〜100、最も好ましくは18〜80である。
【0019】
樹脂(a)が有する活性水素含有基がカルボキシル基の場合、酸価(mgKOH/g)としては、粒子(B)の固定化の効率の観点から、好ましくは10〜120、より好ましくは15〜100、最も好ましくは18〜80である。
【0020】
本発明において、樹脂(a)の酸価および水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
【0021】
樹脂(a)の分子量としては環境に対する安定性の観点から重量平均分子量(Mw)が500〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは1000〜500,000である。
【0022】
本発明において、樹脂(a)の分子量〔数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
分子量の測定は、樹脂(a)をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
【0023】
樹脂(a)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂粒子(A)のブロッキングの観点から、30〜70℃が好ましく、さらに好ましくは40〜70℃、特に好ましくは44〜68℃である。
なお、上記および以下において、Tgはセイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0024】
樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、粉体流動性の観点から2〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましく、4〜10μmが特に好ましい。なお、体積平均粒径は、レーザー式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所製)やマルチサイザーIII(コールター社製)で測定できる。
【0025】
樹脂粒子(A)の製造方法としては特に限定されないが、下記(1)〜(8)等が挙げられる。
(1)ビニル系樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の重合反応により、直接、樹脂粒子(A)の水性分散体を製造し、次いで下記の方法で水性媒体を除去する方法。
(2)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液を適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えたりして前駆体を硬化させて樹脂粒子(A)の水性分散体を製造し、次いで下記の方法で水性媒体を除去する方法。
(3)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化し、硬化剤を加えたりして前躯体を硬化させ、次いで下記の方法で水性媒体を除去する方法。
(4)あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい;以下の本項の重合反応についても同様)により作成した樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分球することによって樹脂粒子を得る方法。
(5)あらかじめ重合反応により作成した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂粒子を得る方法。
(6)あらかじめ重合反応により作成した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、またはあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂粒子を析出させ、次いで、溶剤を除去して樹脂粒子を得る方法。
(7)あらかじめ重合反応により作成した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶剤を除去し、次いで下記の方法で水性媒体を除去する方法。
(8)あらかじめ重合反応により作成した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化し、次いで下記の方法で水性媒体を除去する方法。
この中で、生産性、及び樹脂等の複合化の関係で、好ましくは(2)、(6)、及び(7)である。
【0026】
上記〔1〕〜〔8〕の方法において、併用する乳化剤または分散剤としては、公知の界面活性剤、水溶性ポリマー等を用いることができる。また、分散剤として有機微粒子を用いてもよい。さらに、乳化または分散の助剤として有機溶剤、可塑剤等を併用することができる。
これらの原料の具体例としては、特開2002−284881号公報に記載のものが挙げられる。
【0027】
上記の方法で、樹脂粒子(A)を含有する水性分散体から水性媒体を除去する方法としては、以下の(1)〜(3)及びこれらの組合せの方法等が適用できる。
(1)水性分散体を減圧下又は常圧下で乾燥する方法。
(2)遠心分離器、スパクラフィルター及び/又はフィルタープレスなどにより固液分離し、必要に応じて水等を加え固液分離を繰り返した後、得られた固体を乾燥する方法。
(3)水性分散体を凍結させて乾燥させる方法(いわゆる凍結乾燥)。
【0028】
上記(1)及び(2)の方法において、乾燥機としては、流動層式乾燥機、減圧乾燥機及び循風乾燥機等公知の設備を用いて行うことができる。
また、必要に応じ、風力分級器又はふるい等を用いて分級し、所定の粒度分布とすることもできる。
【0029】
本発明の製造方法で用いる有機溶剤(S)としては、活性水素を持たない溶剤、及び炭素数5以下のアルコールが好ましい。より好ましくは、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び1−ブタノールである。
【0030】
有機溶剤(S)の使用量は、粒子(B)固定化時の凝集と生産性の観点から、樹脂粒子(A)の重量に対して0.5〜1,000倍が好ましく、より好ましくは1〜100倍であり、最も好ましくは2〜30倍である。
【0031】
樹脂粒子(A)より体積平均粒径が小さい粒子(B)の体積平均粒径は、凹凸を有する粒子の形成効率の観点から、0.02〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.8μm、特に好ましくは0.04〜0.7μm、最も好ましくは0.05〜0.6μmである。
【0032】
本発明の製造方法で用いる粒子(B)は、無機化合物であることが好ましく、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、及び、酸化ジルコンからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有することがより好ましく、二酸化チタン及びシリカが特に好ましい。
【0033】
粒子(B)の合成方法としては、一般的方法であれば特に限定されない。一般的な合成方法としては乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ヘテロ凝集法、エマルションアグリゲーション法、ゾル−ゲル法、粉砕法等が挙げられる。二酸化チタン、シリカ、アルミナ、及び、酸化ジルコンを含有する場合は生産性の観点から懸濁重合法、エマルションアグリゲーション法、ゾル−ゲル法、粉砕法を用いることが好ましい。
【0034】
粒子(B)を樹脂粒子(A)に固定化する方法としては、金属アルコキシド(C)の脱アルコール反応により、粒子(B)を樹脂粒子(A)の各活性水素含有基と結合させることが好ましい。具体的な方法としては、樹脂粒子(A)及び粒子(B)を有機溶剤(S)中に分散させ、攪拌下に金属アルコキシド(C)を投入し、必要により触媒(M)を加え反応させた後、固液分離により、粒子(B)が樹脂粒子(A)の表面に固定化された樹脂粒子(G)得ることができる。
【0035】
粒子(B)の量としては、樹脂粒子(A)の重量に対し、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜8重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%である。
【0036】
粒子(B)固定化の際用いる金属アルコキシド(C)としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウム、鉄、銅、アルミニウム、ケイ素などの金属のアルコキシドが挙げられ、その中でケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンのアルコキシドが好ましい。有機部としては炭素数4以下が好ましく、具体的にはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシが好ましい。1分子中のアルコキシ基の数は3又は4が好ましい。
【0037】
金属アルコキシド(C)の使用量としては、樹脂粒子(A)の重量に対し、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、最も好ましくは0.05〜1重量%である。
【0038】
粒子(B)を固定化する際の温度としては、粒子(B)の固定化効率の観点から30℃以上が好ましく、かつ有機溶剤(S)の沸点以下で行うことが好ましい。反応時間としては生産性の観点から3時間〜48時間が好ましい。
【0039】
触媒(M)としては、金属触媒[スズ系(ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート、塩化第一スズなど)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛など)、テトラブチルジルコネートなど]、アミン系触媒[アンモニア、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミンなど]、酸[三フッ化ホウ素、塩酸など]、塩基[アルカリ土類金属水酸化物など]、塩[第4級オニウム塩など]、有機酸[パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸など]などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、%は重量%、部は重量部を意味する。
【0041】
<製造例1>
攪拌装置及び脱水装置のついた反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物218部、ビスフェノールA・PO3モル付加物537部、テレフタル酸213部、アジピン酸47部、ジブチルチンオキサイド2部を投入し、常圧、230℃で5時間脱水反応を行った後、3mmHgの減圧下で5時間脱水反応を行った。更に180℃に冷却し、無水トリメリット酸43部を投入し、常圧で2時間反応を行い、[ポリエステル樹脂1]を得た。[ポリエステル樹脂1]は、Tg44℃、数平均分子量2700、重量平均分子量6500、酸価25であった。
【0042】
<製造例2>
攪拌装置及び脱水装置のついた反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物681部、ビスフェノールA・PO2モル付加物81部、テレフタル酸275部、アジピン酸7部、無水トリメリット酸22部、ジブチルチンオキサイド2部を投入し、常圧、230℃で5時間脱水反応を行った後、3mmHgの減圧下で5時間脱水反応を行い、[ポリエステル樹脂2]を得た。[ポリエステル樹脂2]は、Tg54℃、数平均分子量2200、重量平均分子量9500、酸価0.8、水酸基価53であった。
【0043】
<製造例3>
オートクレーブに、製造例2で得られた[ポリエステル樹脂2]407部、IPDI108部、酢酸エチル485部を投入し、密閉状態で100℃、5時間反応を行い、分子末端にイソシアネート基を有する[プレポリマー溶液]を得た。[プレポリマー溶液]のNCO含量は1.7%であった。
【0044】
<製造例4>
撹拌機、脱溶剤装置、及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン50部とメチルエチルケトン300部を投入し、50℃で5時間反応を行った後、脱溶剤してケチミン化合物である[硬化剤]を得た。[硬化剤]の全アミン価は415であった。
【0045】
<製造例5>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸EO付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン139部、メタクリル酸138部、アクリル酸ブチル184部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成してビニル樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸EO付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液]を得た。[微粒子分散液]をLA−920で測定した体積平均粒径は、0.15μmであった。
【0046】
<製造例6>
攪拌棒をセットした容器に、水955部、製造例5により得られた[微粒子分散液]15部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON7、三洋化成工業製)30部を投入し、乳白色の液体[水相]を得た。
【0047】
<製造例7>
ビーカー内に[ポリエステル樹脂1]409部、酢酸エチル373部、[プレポリマー]116部、[硬化剤]13部、を投入して溶解・混合均一化した後、[水相]1500部を添加し、TKホモミキサーを使用し、回転数12000rpmで25℃で1分間分散操作を行い、更にフィルムエバポレータで減圧度−0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤し、水性分散体(D)を得た。
(D)100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥して、ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の混合樹脂を含有する樹脂粒子(A−1)を得た。マルチサイザーIIIで測定した樹脂粒子(A−1)の体積平均粒径は4.8μm、Tgは58℃であった。
【0048】
<製造例8>
チタニウムテトライソプロポキシド(TPT)200部、メチルエチルケトン750部、ポリビニルピロリドン(数平均分子量40000)7部を均一混合した後、50℃まで加熱し、1%アンモニア水溶液2部を1時間かけて滴下した。滴下後、80℃まで加熱し、8時間反応させ、球状チタニア(二酸化チタン)粒子(B−1)を含む分散液を得た。この分散液を遠心分離し、水洗浄した後、乾燥{50℃×48時間、循風乾燥機}させることにより、球状チタニア粒子(B−1)得た。LA−920で測定した体積平均粒径は0.2μmであった。
【0049】
<製造例9>
テトラエトキシシラン(TEOS)100部、メチルエチルケトン850部、ポリビニルピロリドン(数平均分子量40000)15部を均一混合した後、50℃まで加熱し、1%アンモニア水溶液2部を1時間かけて滴下した。滴下後、80℃まで加熱し、8時間反応させ、球状シリカ粒子(B−2)を含む分散液を得た。この分散液を遠心分離し、水洗浄した後、乾燥{50℃×48時間、循風乾燥機}させることにより、球状シリカ粒子(B−2)得た。LA−920で測定した体積平均粒径は0.05μmであった。
【0050】
<実施例1〜3>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、表1に示す量(部)に従い、イソプロパノール中に樹脂粒子(A)と粒子(B)を各々配合し、超音波洗浄機で90分超音波を照射するこで分散した。容器内を攪拌し、金属アルコキシド(C)を加え、30分間均一化した。この後、1%アンモニア水を加え、40℃まで加熱し、20時間反応させ、樹脂粒子(A)の表面に粒子(B)が固定化された、表面に凹凸を有する樹脂粒子(G−1)、(G−2)、または(G−3)を含む分散液(LG−1)〜(LG−3)を得た。この分散液を遠心分離し、水洗浄した後、乾燥{50℃×48時間、循風乾燥機}させることにより樹脂粒子(G−1)〜(G−3)得た。
【0051】
【表1】

【0052】
<比較例1>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソプロパノール2000部中に樹脂粒子(A−1)100部と粒子(B−2)3部を配合し、超音波洗浄機で90分超音波を照射するこで分散し、30分攪拌して、比較の樹脂粒子(R−1)を含む分散液(LR−1)を得た。この分散液を遠心分離し、水洗浄した後、乾燥{50℃×48時間、循風乾燥機}させることにより、比較の樹脂粒子(R−1)得た。
【0053】
<比較例2>
密栓できる鉄製の容器に樹脂粒子(A−1)100部、粒子(B−2)3部を配合し、密栓した上でボトルシェーカーで10分間予備混合を行った。得られた混合粉体をハイブリダイゼーションシステム[奈良機械製作所社製]を用いて、3000rpmで2分間処理することで、比較の樹脂粒子(R−2)を得た。
【0054】
実施例1〜3、比較例1、2で得られた粒子について下記の評価を行い、表2にまとめた。
【0055】
【表2】

【0056】
[評価法]
(1)体積平均粒径
本発明の製造方法により得られた樹脂粒子(G−1)〜(G−3)、比較の樹脂粒子(R−1)〜(R−2)の体積平均粒径(Dv)を、コールターカウンター粒度測定装置[例えば、商品名:マルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)]を用いて測定した。
【0057】
(2)表面中心線平均粗さ
表面凹凸の程度を、表面中心線平均粗さによって評価した。表面中心線平均粗さは、走査型プローブ顕微鏡システム(AFM、[東洋テクニカ社製])により測定した。
【0058】
(3)隠蔽製試験
水90部に、PEG−2000[三洋化成工業社製、ポリエチレングリコール]を3部加え溶解させた水溶液に、樹脂粒子(G−1)〜(G−3)、及び比較の樹脂粒子(R−1)〜(R−2)を各々7部加え、超音波を60分照射することで分散し、得られた溶液を30cm×30cm、厚さ50μmのPETフィルムにアプリケーターを用いて20μmの厚さで塗装し、60℃で30分循風乾燥機で乾燥させ、試験片を得た。得られたフィルム状の試験片のヘイズを測定することで評価した。ヘイズ測定はヘイズメータ[BYK社製]を用いて行った。
【0059】
(4)インク保持性試験
メチルエチルケトン60部に、PEG−10000[三洋化成工業社製、ポリエチレングリコール]を10部加え溶解させた水溶液に、樹脂粒子(G−1)〜(G−3)、及び比較の樹脂粒子(R−1)〜(R−2)を各々30部加え、超音波を180分照射することで分散し、得られた溶液を市販のA4用紙に100μmのアプリケーターを用いて塗装し、80℃で60分循風乾燥機で乾燥させ、試験片を得た。得られた試験片に黒色のインクを5ml滴下し、滲みを下記の基準で評価した。
○:滲みなし
×:滲みあり
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の製造方法により得られた、粒子(B)が樹脂粒子(A)の表面に固定化された表面に凹凸を有する樹脂粒子は、塗料用添加剤、化粧品用添加剤、紙塗工用添加剤、その他成形材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤(S)中に、活性水素含有基を有する樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、及び樹脂粒子(A)より体積平均粒径が小さい粒子(B)を分散させた後、金属アルコキシド(C)を添加して、樹脂粒子(A)の表面に粒子(B)を固定化する工程を含む樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
樹脂(a)の有する活性水素含有基が、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
樹脂粒子(A)の体積平均粒径が2〜20μmであり、且つ、粒子(B)の体積平均粒径が0.02〜1μmである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
粒子(B)が二酸化チタン、シリカ、アルミナ、及び、酸化ジルコンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂(a)がウレタン結合ユニットを有する樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−285579(P2010−285579A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142275(P2009−142275)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】