説明

樹脂組成物、その製造方法及び樹脂膜

本発明は、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基及びイミド基からなる群より選択される1種以上を分子内に有する脂環式オレフィン樹脂、無機微粒子、及び溶媒を含有することを特徴とする樹脂組成物、その製造方法、並びにこの樹脂組成物から形成された、厚さ1〜200μmの樹脂膜である。本発明の樹脂組成物は、ろ過性に優れ、優れた透明性と面内膜厚均一性を兼ね備える樹脂膜の形成材料として有用である。この樹脂膜は、表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品や、ディスプレイ用カラーフィルター、保護膜、平坦化膜、電気絶縁膜等の電子部品用樹脂膜として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた透明性と面内膜厚均一性を兼ね備えた樹脂膜を形成できる樹脂組成物、その製造方法及び樹脂膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンスを、「EL」と略記する。)素子や液晶表示素子等の各種表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、カラーフィルター、ブラックマトリックス等の電子部品には、その劣化や損傷を防止するための保護膜、内容物を保護する封止膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜、層状に配置される配線の間を絶縁するための層間絶縁膜等、種々の機能性の樹脂膜が設けられている。
【0003】
これらの樹脂膜には、用途の多様化にともない、樹脂膜材料に低誘電性のみならず、透明性が要求される場合がある。
【0004】
透明性を有する樹脂膜を形成する材料としては、例えば、特定の構造を有する反応性シリル基をもつ脂環式オレフィン系付加共重合体を含有する樹脂組成物があり、この樹脂組成物に金属酸化物を添加すると、架橋構造が形成されて寸法安定性等に優れた透明樹脂膜を与えることが知られている(特開2003−160620号公報)。
【0005】
特開平11−327125号公報には、感光性樹脂組成物にコロイダルシリカ等の無機微粒子を添加すると、得られる樹脂膜の酸素プラズマ耐性、耐熱性、ドライエッチング耐性等が向上することが報告されている。また、特開2003−156838号公報には、脂環式オレフィン樹脂にある種のグリコール系溶媒を添加することにより、塗膜均一性と保存安定性に優れた樹脂膜が得られることが記載されている。ここに開示された脂環式オレフィン樹脂は、透明な電気絶縁膜を形成できるものである。
【発明の開示】
【0006】
これらの従来技術のもとで本発明者は、透明性に優れる樹脂膜を得るべく、樹脂成分として脂環式オレフィン樹脂を選択し、特開平11−327125号公報で提案されたシリカゾルを添加した樹脂組成物の調製を試みた。しかしながら、この樹脂組成物を用いると、透明性に優れる樹脂膜を得ることができるものの、面内で膜厚が均一な樹脂膜(面内膜厚均一性のある樹脂膜)が得られない場合があることが判った。
【0007】
かかる知見に基づき、本発明者は、透明で、かつ、面内膜厚均一性のある樹脂膜を形成できる樹脂組成物を得るべく鋭意検討した。その結果、樹脂成分として、ある種の極性基を有する脂環式オレフィン樹脂を使用すると、シリカゾル等の無機微粒子が存在していても、優れた透明性と面内膜厚均一性を兼ね備えた樹脂膜を形成できる樹脂組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(7)の樹脂組成物が提供される。
(1)カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基及びイミド基からなる群より選ばれる1種以上を分子内に有する脂環式オレフィン樹脂、無機微粒子、並びに溶媒を含有することを特徴とする樹脂組成物。
(2)23℃、0.5kgf/cmの加圧下で、直径47mm、孔径1μm、多孔度83%のメンブレンフィルターを用いてろ過したときのろ過速度が20g/分以上であることを特徴とする(1)の樹脂組成物。
【0009】
(3)前記溶媒が、前記脂環式オレフィン樹脂の23℃における溶解度が20重量%以上である溶媒を、脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、500重量部以上含有することを特徴とする(1)の樹脂組成物。
(4)前記溶媒が、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物及びアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である(3)の樹脂組成物。
(5)前記脂環式オレフィン樹脂が、式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又は式:−X−R(Xは二価の基であり、nは0又は1であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基、芳香族基、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基、又はイミド基である)で示される基を表し、R〜Rのうち1つ以上は、式:−X−R(式中、X、nは前記と同じ意味を表し、Rは、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基、又はイミド基である。)で示される基である。mは0〜2の整数である。〕で表される繰り返し単位を有する樹脂である(1)の樹脂組成物。
(6)前記無機微粒子が、1〜200nmの一次粒子径を有するものである(1)の樹脂組成物。
(7)前記無機微粒子が金属酸化物である(1)の樹脂組成物。
【0012】
本発明の第2によれば、下記(8)〜(10)の樹脂組成物の製造方法が提供される。
(8)前記脂環式オレフィン樹脂及び溶媒を含有する樹脂溶液と、前記無機微粒子及び分散媒を含有する無機微粒子分散液とを混合する工程を有することを特徴とする(1)の樹脂組成物の製造方法。
(9)前記溶媒が、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物及びアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である(8)の樹脂組成物の製造方法。
(10)前記分散媒が、グリコールエーテルアセテート化合物、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物及びアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である(8)又は(9)の樹脂組成物の製造方法。
【0013】
本発明の第3によれば、下記(11)の樹脂膜が提供される。
(11)前記(1)〜(7)いずれかの樹脂組成物を用いて形成された、厚さ0.1〜200μmの樹脂膜。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基及びイミド基からなる群より選ばれる1種以上を分子内に有する脂環式オレフィン樹脂、無機微粒子、並びに溶媒を含有することを特徴とする。
【0015】
(1)脂環式オレフィン樹脂
本発明に用いる脂環式オレフィン樹脂は、脂環構造と炭素−炭素二重結合とを有する重合性単量体(以下、「脂環式オレフィン単量体」という)由来の構造単位を有する重合体である。
脂環式オレフィン単量体が有する脂環構造は、単環であっても、多環(縮合多環、橋架け環、これらの組み合わせ多環等)であってもよい。樹脂膜の機械的強度、耐熱性等の観点から多環が好ましい。
【0016】
脂環構造を構成する炭素原子数は、特に制約はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。炭素原子数がこのような範囲であるときに、樹脂膜の耐熱性、及びパターン性等の諸特性が高度にバランスされ好適である。
【0017】
脂環式オレフィン樹脂中、脂環式オレフィン単量体由来の構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式オレフィン単量体由来の構造単位の割合が過度に少ないと、樹脂膜の耐熱性に劣り好ましくない。
【0018】
本発明に用いる脂環式オレフィン樹脂は、分子内に、カルボキシル基(ヒドロキシカルボニル基)、ジカルボン酸無水物基(カルボニルオキシカルボニル基)、ヒドロキシル基、及びイミド基からなる群より選ばれる1種以上(以下、これらをまとめて「特定極性基」ということがある。)を有する。
【0019】
特定極性基は、樹脂の主鎖である脂環構造を構成する炭素原子に直接結合していてもよいし、特定極性基を含む基として、脂環構造を構成する炭素原子と結合していてもよい。後者の場合、特定極性基は、アルキレン基等の二価の有機基を介して、脂環構造を構成する炭素原子と結合している。
【0020】
特定極性基を含む基としては、カルボキシル基を含む基、ジカルボン酸無水物基を含む基、ヒドロキシル基を含む基、及びイミド基を含む基が挙げられる。
【0021】
カルボキシル基を含む基としては、ヒドロキシカルボニルアルキル基やヒドロキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。
ジカルボン酸無水物基を含む基としては、アルキレンオキシカルボニルオキシアルキル基、〔−(CH−CO−O−CO−(CH−(pは任意の自然数を示す)〕で表される基等が挙げられる。
【0022】
ヒドロキシル基を含む基としては、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルアルキル基等のフェノール性ヒドロキシル基を含む基;ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基、ヒドロキシアルコキシカルボニル基等のアルコール性ヒドロキシル基を含む基;が挙げられる。
イミド基を含む基としては、N−フェニルジカルボキシイミド基等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、特定極性基又は特定極性基を含む基の好ましい具体例としては、カルボキシル基、ヒドロキシカルボニルメチル基、カルボニルオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基が挙げられる。
【0024】
本発明に用いる脂環式オレフィン樹脂は、特定極性基の1種類のみを有していてもよいし、2種類以上を組み合わせて有していてもよい。本発明の樹脂組成物及び該組成物から得られる樹脂膜の諸特性を高度にバランスさせる観点から、脂環式オレフィン樹脂は、2種類以上を組み合わせて有しているのが好ましく、カルボキシル基とイミド基とを有しているのが特に好ましい。
【0025】
本発明に用いる脂環式オレフィン樹脂としては、前記式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂が、透明性に優れる樹脂膜を与えることから好ましい。
【0026】
前記式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は、式:−X−Rで示される基を表す。但し、R〜Rのうち1つ以上は、式:−X−R(Rは前記特定極性基を表す。)で示される基である。また、前記R〜Rのうち、いずれか2つが前記式:−X−Rで示される基である場合、異なる炭素(例えば、RとR)に結合しているのが好ましい。
【0027】
前記式:−X−Rにおいて、Xは二価の基を表す。
Xの具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレン基等のアリーレン基;−O−で表される基;−R−CO−R−(Rはアルキレン基又はアリーレン基を表す。)で示される基;等が挙げられる。ここで、Rのアルキレン基及びアリーレン基の具体例としては、前記Xのアルキレン基、アリーレン基と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、安定性の観点から、アルキレン基又はアリーレン基が好ましい。
nは0又は1である。
また、mは0〜2の整数であり、0又は1であるのが好ましい。
【0028】
Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基、芳香族基、又は前記特定極性基を表す。
【0029】
炭素数1〜7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、3−メチルペンチル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−エチル−3−メチルブチル基、イソヘプチル基等が挙げられる。
炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0030】
置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシル基;フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基;ベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。
【0031】
芳香族基としては、フェニル基、2−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;1−ナフチル基、2−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基等の置換基を有していてもよいナフチル基;2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基等の置換基を有していてもよいピリジル基;等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いる脂環式オレフィン樹脂を得る方法は特に制限されず、例えば、次の(i)〜(iv)の方法が挙げられる。
【0033】
(i)特定極性基を有さない脂環式オレフィン単量体を、ラジカル重合開始剤の存在下重合して得られる樹脂を、特定極性基を含有する化合物を用いて公知の方法により変性して、特定極性基を導入する方法。
【0034】
特定極性基を含有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸化合物、及びこれらのイミド誘導体;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;等が挙げられる。
【0035】
(ii)アルコキシカルボニル基等の特定極性基以外の極性基を有し、特定極性基を有さない脂環式オレフィン単量体を、ラジカル重合開始剤の存在下に重合して重合体を得、得られた重合体中に含まれる特定極性基以外の極性基を、公知の方法により加水分解又は還元して特定極性基に誘導する方法。
【0036】
前記特定極性基以外の極性基は、加水分解や還元などの化学反応により、特定極性基に誘導することができる基である。具体的には、−OR;−OCOR;−COOR;N−置換アミド基;等が挙げられる。ここで、Rは、直鎖状、分岐鎖状又は脂環式の、飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基である。また、前記飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む基(但し、ヒドロキシル基及びヒドロキシカルボニル基を除く)に置換されていてもよい。
【0037】
(i)、(ii)の方法において、特定極性基を有さない脂環式オレフィン単量体をラジカル重合する際には、必要に応じて前記脂環式オレフィン単量体と付加共重合又は開環共重合可能なその他の単量体(以下、「その他の単量体」という)を添加してもよい。また、必要に応じて、得られる樹脂の不飽和結合部分を常法に従って水素添加してもよい。
【0038】
(iii)特定極性基を有さない脂環式オレフィン単量体と、特定極性基を有する脂環式オレフィン単量体とを共重合する方法。
この方法において、共重合する際には、必要に応じてその他の単量体を添加してもよく、また、必要に応じて、得られる樹脂の不飽和結合部分を常法に従って水素添加してもよい。
【0039】
また、(iii)の方法において、特定極性基を有さない脂環式オレフィン単量体と、特定極性基を有する脂環式オレフィン単量体とを、有機ルテニウム重合触媒の存在下で開環メタセシス共重合したのち、必要に応じて不飽和結合部分を常法に従って水素添加し、さらに、必要に応じて特定極性基以外の極性基を加水分解等により特定極性基に誘導することによっても、目的とする脂環式オレフィン樹脂を得ることができる。この方法によれば、分子量分布の狭い、特定極性基を有する脂環式オレフィン樹脂を効率よく得ることができる。
【0040】
ここで用いる有機ルテニウム重合触媒は、開環重合を促進する、ルテニウムを含有する触媒である。なかでも、中性の電子供与性配位子が配位している有機ルテニウム化合物を主成分とする重合触媒が好ましい。中性の電子供与性配位子は、中心金属(すなわちルテニウム)から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子である。
【0041】
より好適な有機ルテニウム化合物は、中性の電子供与性配位子とともに、アニオン性配位子が配位したものである。アニオン性配位子は、ルテニウムから引き離されたときに負の電荷を持つ配位子である。
【0042】
また、有機ルテニウム化合物には、さらに対アニオンが存在していてもよい。対アニオンは、ルテニウム陽イオンとイオン対を形成する陰イオンをいい、こうした対を形成できる陰イオンであれば特に限定されない。
【0043】
有機ルテニウム化合物の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)−3,3−ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド等が挙げられる。
【0044】
また、上述した重合触媒の重合活性を高めるため、ピリジン類;ホスフィン類;前述の1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン等の、含窒素複素環式カルベン化合物等の中性の電子供与性化合物を、重合触媒中のルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で添加することもできる。
【0045】
さらに、上述した重合触媒を使用する場合には、重合活性を高めるために、例えば、NCHCOOEt等のジアゾ化合物;フェニルアセチレン等のアセチレン化合物;EtSiH、PhMeSiH等のシリル化合物;を、ルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で使用することもできる。ここで、Etはエチル基、Phはフェニル基、Meはメチル基をそれぞれ示す。
【0046】
(iv)また、上記(i)〜(iii)の方法において、脂環式オレフィン単量体の一部又は全部の代わりに、芳香族重合性単量体を用いて重合し、得られる樹脂の芳香族性の炭素−炭素二重結合を水素添加する方法によっても、目的とする脂環式オレフィン樹脂を得ることができる。
【0047】
上記(i)〜(iv)の方法において、脂環式オレフィン樹脂を得るために使用される重合性単量体の具体例を、以下の(a)〜(d)に挙げる。尚、特定極性基を有する脂環式オレフィン単量体として例示された化合物は、前記式(I)で表される繰り返し単位を与える単量体である。
【0048】
(a)特定極性基としてカルボキシル基を有する脂環式オレフィン単量体
5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5,6−ジ(ヒドロキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシカルボニル−5−ヒドロキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のビシクロヘプテン誘導体;5−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−ヒドロキシカルボニルメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5,6−ジ(ヒドロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−メチル−5,6−ジ(ヒドロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−ヒドロキシカルボニル−5−ヒドロキシカルボニルメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシカルボニルメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8,9−ジ(ヒドロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8,9−ジ(ヒドロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシカルボニル−8−ヒドロキシカルボニルメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のテトラシクロドデセン誘導体;
【0049】
11−ヒドロキシカルボニルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−ヒドロキシカルボニルメチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11,12−ジ(ヒドロキシカルボニル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−メチル−11−ヒドロキシカルボニルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−メチル−11,12−ジ(ヒドロキシカルボニル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−ヒドロキシカルボニル−11−ヒドロキシカルボニルメチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン等のヘキサシクロヘプタデセン誘導体;等。
【0050】
(b)特定極性基としてジカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン単量体
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等のビシクロヘプテン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸無水物、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸無水物等のテトラシクロドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン−11,12−ジカルボン酸無水物、11−メチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン−11,12−ジカルボン酸無水物等のヘキサシクロヘプタデセン誘導体;等。
【0051】
(c)特定極性基としてヒドロキシル基を有する脂環式オレフィン単量体
5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、等のビシクロヘプテン誘導体;
【0052】
8−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8,9−ビス(ヒドロキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のテトラシクロドデセン誘導体;
【0053】
11−ヒドロキシヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−ヒドロキシメチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11,12−ビス(ヒドロキシメチル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−メチル−11−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−メチル−11−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン等のヘキサシクロヘプタデセン誘導体;等。
【0054】
(d)特定極性基としてイミド基を有する脂環式オレフィン単量体
N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)等のN−フェニル置換イミド化合物;
【0055】
これらの中でも、以下の単量体が特に好ましい。
5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のビシクロヘプテン誘導体や、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8,9−ジ(ヒドロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のテトラシクロドデセン誘導体;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸無水物等のヘキサシクロヘプタデセン誘導体;
【0056】
5−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のヘキサシクロヘプタデセン誘導体;
N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)等のN−フェニル置換イミド化合物;等。
【0057】
特定極性基を有さない脂環式オレフィン単量体としては、以下の(e)、(f)のものが挙げられる。
(e)極性基を有さない脂環式オレフィン単量体
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.02,8]テトラデカ−3,5,7,12,11−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等。
【0058】
(f)特定極性基以外の極性基を有する脂環式オレフィン単量体
前記(c)の、ビシクロヘプテン誘導体、テトラシクロドデセン誘導体、へキサシクロヘプタデセン誘導体等のホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレート、ベンゾエート等の、ヒドロキシル基に変性されうる基:−OCORが結合した脂環式オレフィン単量体;前記(c)の、ビシクロヘプテン誘導体、テトラシクロドデセン誘導体、へキサシクロヘプタデセン誘導体等のメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、t−ブチルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル等の、カルボキシル基に変性されうる基:−COORが結合した脂環式オレフィン単量体;等。ここで、Rは前記と同じ意味を表す。
【0059】
前記特定極性基以外の極性基を有する脂環式オレフィン単量体の具体例としては、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
これらの脂環式オレフィン単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
その他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、α−オレフィンには、脂環式オレフィン単量体の開環共重合に使用されると、後述する分子量調整剤として機能するものもある。
【0061】
脂環式オレフィン単量体の開環重合に際して、分子量調整剤を、単量体全量に対して0.1〜10モル%程度を添加すると、開環重合体の分子量の調整が容易になる。用いる分子量調整剤の量が少ない場合は、比較的大きい重量平均分子量(Mw)の重合体が得られ、逆に多い場合は、比較的小さい重量平均分子量(Mw)の重合体が得られる。
【0062】
分子量調整剤として、ビニル化合物、ジエン化合物等を使用することができる。
ビニル化合物としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン化合物;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;等が挙げられる。ジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン化合物;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン化合物;が挙げられる。これらの中でも、1−ヘキセン等のα−オレフィン化合物が特に好ましい。
【0063】
得られる脂環式オレフィン樹脂としては、例えば、脂環式オレフィン単量体の開環重合体及びその水素添加物、脂環式オレフィン単量体の付加重合体、脂環式オレフィン単量体とビニル化合物との付加重合体、単環シクロアルケン重合体、脂環式共役ジエン重合体、ビニル系脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物等が挙げられる。本発明において、これらの脂環式オレフィン樹脂は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
これらの中でも、脂環式オレフィン単量体の開環重合体及びその水素添加物、脂環式オレフィン単量体の付加重合体、脂環式オレフィン単量体とビニル化合物との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物が好ましく、脂環式オレフィン単量体の開環重合体の水素添加物が特に好ましい。
【0065】
(2)無機微粒子
本発明に用いる無機微粒子としては、金属単体、無機酸化物、無機炭酸塩、無機硫酸塩、無機リン酸塩等が挙げられ、耐熱性や耐酸化性の観点から無機酸化物が好ましく、金属酸化物が特に好ましい。
【0066】
金属酸化物としては、コロイダルシリカ、アエロジル、ガラス等のケイ素酸化物;アルミナ等のアルミニウム酸化物;ジルコニア等のジルコニウム酸化物;チタニア等のチタン酸化物;が挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアが好ましく、生産性の観点から、コロイダルシリカの使用が特に好ましい。
【0067】
本発明に用いる無機微粒子の一次粒子径は、通常1〜200nmであり、透明性やパターン形成性の観点から、好ましくは1〜150nm、より好ましくは5〜100nmである。また、無機微粒子の一次粒子径がこの範囲であると、後述する範囲のろ過速度をもつ樹脂組成物を容易に得ることができる。
ここで一次粒子径は、真球であると仮定したときの、真密度を基準にして、BET法(比表面積測定法)により測定されたものである。
【0068】
無機微粒子の使用量は、形成する樹脂膜の用途に応じて任意に選択することができる。例えば、表示素子用透明樹脂膜を得る場合であれば、上述した特定極性基を有する脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、通常5〜1000重量部、好ましくは5〜800重量部、より好ましくは10〜500重量部である。
【0069】
(3)溶媒
本発明に用いる溶媒は、前記脂環式オレフィン樹脂が溶解可能な有機溶媒(良溶媒)を含有する限り、格別な制限はない。
良溶媒としては、前記脂環式オレフィン樹脂の23℃における溶解度が20重量%以上であるものが好ましい。
【0070】
良溶媒の使用量は、前記脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、通常500重量部以上であり、所望の透明性を得る観点から、500〜10,000重量部が好ましく、500〜5,000重量部がより好ましく、900〜2,000重量部が特に好ましい。
【0071】
良溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル等のグリコールジエーテル化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のグリコールモノエーテル化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;テトラヒドロフラン等の脂環式エーテル化合物;シクロヘキサノン等の脂環式ケトン化合物;等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物のろ過のし易さから、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物、及びアミド化合物が好ましい。
【0072】
本発明の樹脂組成物においては、溶媒として、良溶媒及び良溶媒以外の溶媒(貧溶媒)の混合溶媒を用いることもできる。
貧溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルアセテート化合物等が挙げられる。
貧溶媒の使用量は、面内膜厚均一性に優れる樹脂膜を得るのが容易であることから、良溶媒に対して、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下である。
【0073】
(4)他の成分
本発明の樹脂組成物には、上述した成分以外に、各種添加剤を目的に応じて添加することができる。
添加剤としては、キノンジアジド化合物等の感光剤;アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基等の反応性基を2以上有する架橋剤(好ましい具体例としてはメチロール化合物やエポキシ化合物等が挙げられる)、固体スルホン酸化合物、イミダゾール化合物等のアミン化合物等の硬化助剤等の硬化成分;フッ素系化合物やシリコン系化合物等の界面活性剤;ヒンダードフェノール化合物等の酸化防止剤;シランカップリング剤等の接着助剤;フェノール化合物等の増感剤;帯電防止剤;消泡剤;分散剤;等が挙げられる。
【0074】
2)樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物を製造する方法に格別な制限はないが、操作性に優れることや、ろ過性に優れる組成物が得られること等の理由から、前記脂環式オレフィン樹脂と無機微粒子とを、それぞれ任意の液状媒体と混合して、脂環式オレフィン樹脂溶液(以下、単に「樹脂溶液」という)と、無機微粒子分散液とをそれぞれ調製した後、両者を混合する方法、即ち、脂環式オレフィン樹脂及び溶媒を含有する樹脂溶液と、前記無機微粒子及び分散媒を含有する無機微粒子分散液とを混合する工程を有することが好ましい。これらの液状媒体は、本発明の樹脂組成物を構成する溶媒の全部又は一部とすることができる。
【0075】
前記脂環式オレフィン樹脂を溶解するのに用いる液状媒体(溶媒)としては、前述した良溶媒が好ましく、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物、及びアミド化合物が特に好ましい。
無機微粒子を分散させるのに用いる液状媒体(分散媒)としては、前述した溶媒が好ましく、グリコールモノエーテルアセテート化合物、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物、及びアミド化合物が特に好ましい。
【0076】
金属酸化物の中で、ケイ素酸化物等は、水や有機分散媒に分散された状態で市販されているものが多い。本発明においては、有機分散媒に分散されたものであれば、そのまま樹脂組成物の製造に用いたり、必要に応じて分散媒を他の分散媒に交換(分散媒交換)して用いることができる。分散媒が水であるものも、分散媒交換して用いることができる。
【0077】
樹脂溶液と無機微粒子分散液とを混合する方法に格別な制限はなく、樹脂溶液に無機微粒子分散液を加えても、無機微粒子分散液に樹脂溶液を加えても、両者を同時に容器に加えてもよいが、微粒子の凝集を防止する観点から、無機微粒子分散液に樹脂溶液を加える方法が好ましい。
【0078】
混合時の温度に格別な制限はないが、樹脂組成物中の溶媒の沸点を考慮して、その蒸発を抑制できる温度に設定するのが一般的である。従って、常圧での混合温度は、通常10〜50℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜35℃である。
混合は、攪拌機付きの容器を用いても、振とう機に設置された容器を用いてもよい。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、優れた面内膜厚均一性を有する樹脂膜を形成できるものであるが、ろ過速度の大きいものが、より優れた面内膜厚均一性を有する樹脂膜を形成できることから好ましい。
【0080】
ここで、ろ過速度は、常温(23℃)、0.5kgf/cm(ゲージ圧)の加圧下で、直径47mm、孔径1μm、多孔度83%のメンブレンフィルターを用いてろ過したときの平均速度であり、この速度は、通常20g/分以上、好ましくは30g/分以上、より好ましくは40g/分以上である。このようなろ過速度を有する樹脂組成物は、特に優れた面内膜厚均一性を有する樹脂膜を与える。ここで、多孔度は、細孔を含めてのメンブレンフィルターの全容積に対する細孔容積の割合である。
【0081】
ろ過速度が上述した範囲である樹脂組成物は、上述した本発明の樹脂組成物の製造方法により容易に得ることができる。また、同一成分を使用して、ろ過速度を調整する方法としては、溶媒量を調整する方法を採用することもできる。
【0082】
3)樹脂膜
本発明の樹脂組成物を用いることで、厚みが0.1〜200μmの樹脂膜を容易に形成することができる。得られる樹脂膜は、優れた透明性と面内膜厚均一性とを兼ね備えた薄膜である。
【0083】
本発明の樹脂膜は、任意の形状の基板上に形成することができる。本発明の樹脂膜は、基板と共に使用することもできるが、必要に応じて基板から樹脂膜を剥離して、樹脂膜を単独で使用することもできる。
【0084】
本発明の樹脂膜の形成に用いる基板の種類や材質等は、特に制限されない。また、用いる基板としては、単層の基板であっても、複数の層からなる基板であってもよい。用いる基板の具体例としては、プリント配線板、ディスプレイ用基板等の配線を有する基板;ガラス基板等の平坦な基板;樹脂膜を形成した後、適宜、樹脂膜と剥離される樹脂製又は金属製の支持フィルムや支持プレート;等が挙げられる。
【0085】
基板上に樹脂膜を形成する方法に格別な制限はなく、例えば、基板上に樹脂組成物を塗布し、得られた樹脂組成物の塗膜を加熱・乾燥する方法等が挙げられる。
【0086】
本発明の樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の方法が挙げられる。
【0087】
樹脂組成物の塗膜を加熱・乾燥する温度に格別な制限はなく、通常150〜300℃、好ましくは200〜250℃である。また、加熱・乾燥する時間に格別な制限はなく、例えばホットプレートを用いる場合、通常5〜60分間であり、オーブンを用いる場合、通常30〜90分間である。高い透明性のある樹脂膜を得る必要がある場合、窒素雰囲気下で加熱するのが好ましい。
【0088】
本発明の樹脂組成物には、架橋剤等の硬化成分を添加することもできる。硬化成分を添加した場合、加熱により、基板上で樹脂膜を硬化させることができる。
硬化のための加熱方法に格別な制限はなく、例えば、硬化成分を含有する本発明の樹脂組成物の塗膜を加熱・乾燥したのち、更に加熱する方法が挙げられる。硬化のための加熱は、ホットプレートやオーブン等の加熱装置により行うことができる。
【0089】
また樹脂膜は、基板全体を覆っているものであっても、パターン状等部分的に基板表面を覆うものであってもよい。
パターン状の樹脂膜を基板上に形成する方法としては、感光剤を添加した本発明の樹脂体組成物を用いたフォトリソグラフィー法が挙げられる。
【0090】
フォトリソグラフィー法により、パターン状の樹脂膜を形成する具体的な方法としては、基板上に感光剤を含有する樹脂組成物を、上述と同様の要領によって塗布、乾燥(プリベーク)して得られた樹脂膜に、必要に応じてマスクパターンを介して、活性放射線を照射して、前記樹脂膜中に潜像パターンを形成し、潜像パターンを有する当該樹脂膜とアルカリ現像液とを接触させることによりパターンを顕在化して、基板上にパターン状の樹脂膜を形成する方法が挙げられる。更に、パターン状の樹脂膜を加熱(ポストベーク)すれば、パターン状の樹脂膜を硬化させることもできる。
【0091】
活性放射線の種類は特に制限されず、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、プロトンビーム線等が挙げられ、可視光線、紫外線が好ましい。
照射する放射線量は、透明樹脂膜の使用目的、膜の厚み等により任意に設定することができる。また、パターンは、マスクを介して活性放射線を照射することによって形成しても、電子線等で直接描画することによって形成してもよい。
【0092】
本発明の樹脂膜は透明性に優れる。樹脂膜の透明性は、樹脂膜の透過率を分光光度計にて測定することにより評価することができる。
また、本発明の樹脂膜は、面内膜厚均一性に優れる。面内膜厚均一性は、実施例記載の条件により面内の膜厚を測定し、面内膜厚、膜厚の最大値と最小値の差により評価される。この差が小さい程、面内膜厚均一性に優れると評価できる。
【0093】
フィルム状やパターン状の、本発明の樹脂膜は、面内膜厚均一性に優れるばかりでなく、誘電特性等の電気特性にも優れる。従って、表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品や、ディスプレイ用カラーフィルター、保護膜、平坦化膜、電気絶縁膜等の電子部品用樹脂膜として使用することができる。
【実施例】
【0094】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されない。なお、部及び%は、特記のない限り質量基準である。
【0095】
<評価方法>
(1)無機微粒子の一次粒子径
無機微粒子の平均粒径は、比表面積・細孔分布測定装置(製品名「トライスター300」、島津製作所社製)を用い、JIS Z8830の方法に準じて、窒素ガスの吸着量から表面積を計算するBET法(比表面積測定法)で測定した。
【0096】
(2)樹脂の分子量の測定と水素添加率
樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定して求めた。
水素添加率は、H−NMRスペクトルを測定して、水素添加前の炭素−炭素二重結合に対する水素添加された炭素−炭素二重結合の割合(モル%)を算出して求めた。
【0097】
(3)ろ過速度
樹脂と無機微粒子の混合溶液100gを、23℃、0.5kgf/cmの加圧下、ろ過装置(製品名「LS−47V」、アドバンテック社製)を用い、直径47mm、孔径1μmの親水性ポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルター(製品名「H100A07A」、アドバンテック社製、多孔度83%、質量1.3mg/cm、厚さ35μm、水流量73ml/分・cm)でろ過し、ろ過量とろ過時間とから、平均ろ過速度(g/分)を求めた。
ここで水流量は、孔径0.1μmのメンブレンフィルターでろ過した25℃の蒸留水を−0.069MPaの減圧下でろ過し、その流量を1cm当たりのml/分数で表示したものである。
【0098】
(4)透過率
厚さ0.7mm×縦100mm×横100mmに切断したガラス基板(製品名「1737 AMLCD」、コーニング社製)に、樹脂組成物を16.7回転/秒の回転速度で回転塗布し、得られた塗膜を、100℃のホットプレート上で2分間乾燥し、厚さ1〜3μmの樹脂膜を得た。次いで、この樹脂膜を、窒素雰囲気下のクリーンオーブン中で、230℃にて1時間加熱した。
【0099】
このようにして形成した樹脂膜の透過率を分光光度計にて測定した。透過率はそれぞれが比較できるよう、膜厚を2μmに換算し、全光線透過率として計算して求めた。この値が大きい程、透明性に優れる。
【0100】
(5)面内膜厚均一性
厚さ0.7mm×縦650mm×横550mmのガラス基板(コーニング社製)に、クロムを2000Åの厚さで蒸着させたクロム蒸着ガラス基板を用意した。このクロム蒸着ガラス基板に、16.7回転/秒の回転速度で回転塗布し、得られた塗膜を、窒素雰囲気下、100℃で2分間、ホットプレート上で乾燥して、厚さ1.5μmの樹脂膜を得た。
【0101】
得られた樹脂膜の面内121点の膜厚を、光学式膜厚計(製品名「Nanometrics Nanospec M6500」、ナノメトリクス・ジャパン社製)にて測定した。測定点は650mm×550mmのガラス基板を縦横12分割したときの交点とした。この測定点における膜厚に基づいて、下記式にて算出される値を面内膜厚均一性とした。この値が小さい程、樹脂膜の面内膜厚均一性に優れる。
【0102】
【数1】

【0103】
<合成例1>
8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロドデセン 60部、N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド) 40部、1−ヘキセン 1.3部、(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド 0.05部、及びテトラヒドロフラン 400部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ70℃にて2時間反応させて樹脂溶液(a)(固形分濃度:約20%)を得た。
この樹脂溶液(a)を攪拌機付きオートクレーブ内に移し、水素圧力4MPa、温度150℃にて5時間反応させて、水素添加された樹脂(水素添加率99%)を含む樹脂溶液(b)(固形分濃度:約20%)を得た。
【0104】
次に、樹脂溶液(b)100部及び活性炭粉末1部を耐熱製のオートクレーブ内に入れ、水素圧力4MPa、温度150℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液を孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターでろ過して活性炭を分離して樹脂溶液(c)を得た。このとき、ろ過は滞りなく行うことができた。
【0105】
次いで、樹脂溶液(c)をエチルアルコール中に注加して、生成したクラムを乾燥して樹脂(1)を得た。樹脂(1)のポリイソプレン換算のMwは5,500、Mnは3,200であった。また、水素添加率は99%であった。
【0106】
<合成例2>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン 100部、1−ヘキセン 1.3部、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド 0.05部、及びシクロヘキサン 400部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、合成例1と同様の方法で重合反応及び水素添加反応を行い、樹脂(A)を得た。樹脂(A)のMwは5,300、Mnは3,200であった。また、水素添加率は99%であった。
【0107】
次に、上記で得た樹脂(A)100部、N−メチルピロリドン 100部、プロピレングリコール 500部、85%水酸化カリウム 84.5部を反応器に仕込み、全容を4.5時間190℃で加熱撹拌した。得られた反応液を、大量の水、テトラヒドロフラン及び塩酸の混合溶液に注いで加水分解物を凝固させた。凝固ポリマーを水洗、乾燥して加水分解された樹脂(2)を得た。樹脂(2)の加水分解率は95%であった。
【0108】
<合成例3>
5−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 100部、1−ヘキセン 1.3部、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド 0.05部、及びテトラヒドロフラン 400部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、合成例1と同様の方法で重合反応、水素添加反応を行い、樹脂(3)を得た。樹脂(3)のMwは5,500、Mnは3,300であった。また、水素添加率は99%であった。
【0109】
<合成例4>
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン 100部、1−ヘキセン 1.3部、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド 0.05部、及びシクロヘキサン 400部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、合成例1と同様の方法で重合反応、水素添加反応を行い、樹脂(B)を得た。樹脂(B)のMwは5,500、Mnは3,200であった。また、水素添加率は99%であった。
【0110】
<実施例1>
合成例1で得た樹脂(1)30部を、プロピレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)120部と混合し溶解させた後、孔径1.0μmのフッ素樹脂製メンブレンフィルターでろ過して、樹脂濃度が20%の樹脂溶液(1)を調製した。
表面処理されたコロイダルシリカであるオルガノシリカゾル(製品名「PMA−ST」、日産化学社製;分散媒=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、固形分濃度=30%)100部に、EDM 50部を加えて撹拌して、シリカゾル濃度が20%のシリカゾル分散液(1)を調製した。この分散液(1)中のシリカゾル粒子の一次粒子径は約20nmであった。
このシリカゾル分散液(1)150部と樹脂溶液(1)150部とを混合し、これに、シリコン系界面活性剤(製品名「KP−341」、信越化学工業社製)0.1部を混合し溶解した後、さらに30分間攪拌し、樹脂組成物(1)を得た。樹脂組成物(1)について、ろ過速度を測定し、また、透明性と面内膜厚均一性を評価した。
【0111】
<実施例2>
オルガノシリカゾル(製品名「PMA−ST」、日産化学社製)100部に、プロピレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)30部を加えて混合することにより、シリカゾル分散液(2)を調製した。この分散液(2)中のシリカゾル粒子の一次粒子径は約20nmであった。
このシリカゾル分散液(2)150部と樹脂溶液(1)150部とを混合し、これに、シリコン系界面活性剤(製品名「KP−341」、信越化学工業社製)0.1部を混合し溶解した後、さらに30分間攪拌し、樹脂組成物(2)を得た。樹脂組成物(2)について、ろ過速度の測定、透明性、面内膜厚均一性の評価を行った。
【0112】
<実施例3>
合成例1で得た樹脂(1)30部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)120部と混合し溶解させた後、孔径1.0μmのフッ素樹脂製メンブレンフィルターでろ過して、樹脂濃度が20%の樹脂溶液(2)を調製した。
オルガノシリカゾル(製品名「PMA−ST」、日産化学社製;分散媒=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、固形分濃度=30%)100部にNMP 50部を加えて撹拌して、シリカゾル濃度が20%のシリカゾル分散液(3)を調製した。この分散液(3)中のシリカゾル粒子の一次粒子径は約20nmであった。
樹脂溶液(1)を樹脂溶液(2)に変更し、シリカゾル分散液(1)をシリカゾル分散液(3)に変更したほかは、実施例1と同様の方法で樹脂組成物(3)を調製した。樹脂組成物(3)について、ろ過速度の測定、透明性、面内膜厚均一性の評価を行った。
【0113】
<実施例4>
合成例1で得た樹脂(1)30部を、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)120部と混合し溶解させた後、孔径1.0μmのフッ素樹脂製メンブレンフィルターでろ過して、樹脂濃度が20%の樹脂溶液(3)を調製した。
オルガノシリカゾル(製品名「PMA−ST」、日産化学社製;分散媒=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、固形分濃度=30%)100部にPGEE50部を加えて撹拌して、シリカゾル濃度が20%のシリカゾル分散液(4)を調製した。この分散液(4)中のシリカゾル粒子の一次粒子径は約20nmであった。
樹脂溶液(1)を樹脂溶液(3)に変更し、シリカゾル分散液(1)をシリカゾル分散液(4)に変更したほかは、実施例1と同様の方法で樹脂組成物(4)を調製した。樹脂組成物(4)について、ろ過速度の測定、透明性、面内膜厚均一性の評価を行った。
【0114】
<実施例5>
合成例2で得た樹脂(2)を30部と、溶媒としてプロピレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)120部を混合し溶解させた後、孔径1.0μmのメンブレンフィルターでろ過して、樹脂濃度が20%の樹脂溶液(4)を調製した。樹脂溶液(1)を樹脂溶液(4)に変更したほかは、実施例1と同様の方法で樹脂組成物(5)を調製した。樹脂組成物(5)について、ろ過速度の測定、透明性、面内膜厚均一性の評価を行った。
【0115】
<実施例6>
合成例3で得た樹脂(3)を30部と、溶媒としてプロピレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)120部を混合し溶解させた後、孔径1.0μmのメンブレンフィルターでろ過して、樹脂濃度が20%の樹脂溶液(5)を調製した。樹脂溶液(1)を樹脂溶液(5)に変更したほかは、実施例1と同様の方法で樹脂組成物(6)を調製した。樹脂組成物(6)について、ろ過速度の測定、透明性、面内膜厚均一性の評価を行った。
【0116】
<比較例1>
合成例2で得た樹脂(A)30部と、溶媒としてシクロヘキサン(CH)120部を混合し溶解させた後、孔径1.0μmのメンブレンフィルターでろ過して、樹脂濃度が20%の樹脂溶液(6)を調製した。
オルガノシリカゾル(製品名「PMA−ST」、日産化学社製)100部にシクロヘキサン(CH)を50部加え混合してシリカゾル分散液(5)を調製した。この分散液(5)中のシリカゾル粒子の一次粒子径は約20nmであった。
このシリカゾル分散液(5)150部と樹脂溶液(6)150部とを混合して樹脂組成物(7)を調製した。樹脂組成物(7)について、ろ過速度の測定、透明性、面内膜厚均一性の評価を行った。
【0117】
<比較例2>
合成例4で得た樹脂(B)30部と、溶媒としてシクロヘキサン(CH)120部を混合し溶解させた後、孔径1.0μmのメンブレンフィルターでろ過して、樹脂濃度が20%の樹脂溶液(7)を調製した。
比較例1で得たシリカゾル分散液(5)150部と樹脂溶液(7)150部とを混合して樹脂組成物(8)を調製した。樹脂組成物(8)は、微粒子が析出して均一な溶液ではなかった。
上記実施例及び比較例の結果を下記第1表にまとめた。
【0118】
【表1】

第1表より、特定極性基を有する脂環式オレフィン樹脂を用いた実施例1〜6の樹脂組成物は、透明性、面内膜厚均一性に優れた樹脂膜を形成できることがわかる。特に、ろ過速度が速い樹脂組成物を用いると、面内膜厚均一性により優れた樹脂膜の得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の樹脂組成物は、特定極性基を有する脂環式オレフィン樹脂と無機微粒子と溶媒とを含有するものであり、ろ過性に優れ、優れた透明性と面内膜厚均一性を兼ね備える樹脂膜の形成材料として有用である。
【0120】
本発明の樹脂膜は、透明性、面内膜厚均一性、及び誘電特性等の電気特性に優れる。従って、表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品や、ディスプレイ用カラーフィルター、保護膜、平坦化膜、電気絶縁膜等の電子部品用樹脂膜として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基及びイミド基からなる群より選ばれる1種以上を分子内に有する脂環式オレフィン樹脂、無機微粒子、並びに溶媒を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
23℃、0.5kgf/cmの加圧下で、直径47mm、孔径1μm、多孔度83%のメンブレンフィルターを用いてろ過したときのろ過速度が20g/分以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、前記脂環式オレフィン樹脂の23℃における溶解度が20重量%以上である溶媒を、脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、500重量部以上含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物及びアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂環式オレフィン樹脂が、式(I)
【化1】

〔式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又は式:−X−R(Xは二価の基であり、nは0又は1であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基、芳香族基、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基、又はイミド基である。)で示される基を表し、R〜Rのうち1つ以上は、式:−X−R(式中、X、nは前記と同じ意味を表し、Rは、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、ヒドロキシル基又はイミド基である。)で示される基である。mは0〜2の整数である。〕で表される繰り返し単位を有する樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機微粒子が、1〜200nmの一次粒子径を有するものである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機微粒子が金属酸化物である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記脂環式オレフィン樹脂及び溶媒を含有する樹脂溶液と、前記無機微粒子及び分散媒を含有する無機微粒子分散液とを混合する工程を有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒が、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物及びアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記分散媒が、グリコールエーテルアセテート化合物、グリコールジエーテル化合物、グリコールモノエーテル化合物及びアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8又は9記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて形成された、厚さ0.1〜200μmの樹脂膜。

【国際公開番号】WO2005/073310
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517514(P2005−517514)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001212
【国際出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】