説明

樹脂組成物およびそれから得られる延伸フィルム

本発明は、エルメンドルフ引裂強度が優れ、均一に延伸することが可能なポリエチレン系延伸フィルムに関する。本発明は、ポリエチレン系樹脂を延伸してなるフィルムであって、(a−i)ASTM D1922に準じて測定されるMD方向のエルメンドルフ引裂強度をEm、TD方向のエルメンドルフ引裂強度をEtとするとき、EmおよびEtが次の(式1)、(式2)および(式3)を満たし、 20≦Em[N/m]≦3000 (式1) 20≦Et[N/m]≦3000 (式2) 0.1≦(Em/Et)≦3 (式3) (a−ii) MD方向の引張初期弾性率TMが次の(式4)を満たし、 300≦TM[Mpa]≦10000 (式4) (a−iii)厚みが5から150μmの範囲にあり、延伸均一性に優れたポリエチレン系フィルム、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系のポリマーからなる樹脂組成物およびそれから得られる延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンまたはポリエチレンを主剤とする樹脂組成物による延伸フィルムは、透明性、強度特性、耐薬品性、製袋加工性に優れるため、多種の用途に用いられている。
しかしながら、従来のポリエチレンを用いた延伸フィルムは、延伸方向に対し強度が弱く、内容物を入れた際に袋が破けやすく、内容物を損なったり、ヒートシールが困難なため袋状製品としての加工が難しい、また、外観が悪い等の不十分な点があった。
【0003】
特開平8−134284号公報では、メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレンを少なくとも1軸方向に延伸してなるポリエチレン系樹脂延伸フィルムに関して報告がなされているが、MD方向の引裂き強度が不満足なレベルにあり改良が求められている。
【0004】
特開平8−269256号公報には、線状低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよび高圧法低密度ポリエチレンからなる組成物より得られる重量物包装用フィルムが開示されている。同発明は重量物包装を目的としており、インフレーション成形したフィルムを用いることが開示されているのみであって、延伸フィルムに関しては記載も示唆もされていない。
【0005】
上記のように、MD方向とTD方向の引裂強度が共に優れており、さらに均一な延伸が可能で透明性に優れたポリエチレン系延伸フィルムが望まれていた。またこのような延伸フィルムを製造しうる樹脂組成物が望まれていた。
【特許文献1】特開平8−134284号公報
【特許文献2】特開平8−269256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決しようとするものであって、引裂強度が高くMD方向とTD方向の引裂強度バランスに優れ、均一に延伸することが可能な延伸フィルム、およびこのようなフィルムに適した樹脂組成物を提供することを目的としている。さらに本発明は、透明性と剛性に優れ、耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性等の優れた延伸フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行い、特定の物性パラメータを満足するポリエチレン系延伸フィルムが、引裂強度が高くMD方向とTD方向の引裂強度バランスに優れ、透明性と剛性に優れ、さらに延伸均一性が優れることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち第1の発明は、
ポリエチレン系樹脂を延伸してなるフィルムであって、
(A−i)ASTM D1922に準じて測定されるMD方向のエルメンドルフ引裂強度をEm、TD方向のエルメンドルフ引裂強度をEtとするとき、EmおよびEtが次の(式1)(式2)(式3)を満たし、
20≦Em[N/m]≦3000 (式1)
20≦Et[N/m]≦3000 (式2)
0.1≦(Em/Et)≦3 (式3)
(A−ii)MD方向の引張初期弾性率TMが次の(式4)を満たし、
300≦TM[Mpa]≦10000 (式4)
(A−iii)厚みが5から150μmの範囲にあり、
延伸均一性に優れたポリエチレン系フィルム
である。なお延伸均一性に優れるとは、最大延伸倍率まで1軸延伸したフィルムに白化がみられないことをいう。
【0008】
本発明の延伸フィルムはポリエチレン系樹脂組成物をインフレーション法、Tダイキャスト法等により肉厚のフィルムに成形し、これを更に延伸成形して得られる。延伸成形を行う前のフィルムを原反と呼ぶ。本発明では原反フィルムの引取方向をMD(Machine Direction)とし、引取方向と直角な方向をTD(Transverse Direction)とする。
【0009】
延伸フィルムの延伸倍率は、透明性や引張弾性率が良好な点から、2倍から15倍の範囲にあることが好ましく、6倍から12倍の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の延伸フィルムはASTM D1003に従って測定したヘイズが10%以下であることが望ましい。
【0010】
また本発明者らは、特定のポリエチレン系樹脂からなる組成物を延伸成形して得られるフィルムが、驚くべきことに引裂強度が高くMD方向とTD方向の引裂強度バランスに優れ、さらに延伸均一性に優れることを見出した。
すなわち第2の発明は、以下に示す樹脂組成物に係る。
【0011】
(A)下記成分(I)および(II)からなり((I)と(II)の合計で100重量部である。)、メルトフローレートが0.1〜100kg/m3の範囲にあり、密度が890〜940Kg/m3の範囲にあるポリエチレン組成物50〜95重量部と、
(B)メルトフローレートが0.1〜100kg/m3の範囲にあり、密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン5〜50重量部
(成分(A)と成分(B)の合計で100重量部である。)からなり、メルトフローレートが0.1〜100kg/m3の範囲にあり、密度が898〜960Kg/m3の範囲にある延伸フィルム用樹脂組成物。
(ここで(I)エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が860〜925Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体5〜95重量部であり、
(II)エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体5〜95重量部である。)
【0012】
さらに前記成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜980Kg/m3の範囲にあるエチレン重合体またはエチレン・α−オレフィンの共重合体からなる高密度ポリエチレン(C)が5から50重量部配合されていることが好ましい。ただし、高密度ポリエチレン(C)の密度はエチレン・α−オレフィン共重合体(II)の密度より大きい。高密度ポリエチレン(C)と共重合体(II)の密度差は5Kg/m3以上、好ましくは10Kg/m3以上50Kg/m3以下である。
高密度ポリエチレン(C)を上記範囲で含むと、特に延伸フィルムの引張弾性率とMD方向のエルメンドルフ引裂き強度が優れるため好ましい。
【0013】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)はメタロセン触媒を用いて重合したものが好ましく、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)はメタロセンまたはチーグラー触媒を用いて重合したものが好ましい。
このような樹脂組成物を用いることによって、第1の発明に係るフィルムを好適に製造することが出来る。
【0014】
また、第1の発明に係る延伸フィルム、および第2の発明に係る樹脂組成物を延伸したフィルムからなる層が少なくとも1層含まれる多層フィルムを調製することも行われる。
多層フィルムは、延伸フィルムの原反となる樹脂組成物と他の層となる樹脂組成物をインフレーション成形その他の方法で共押出し、押出しラミネート、あるいはドライラミネートなどの方法で積層し、さらに延伸して得られる。また、予め延伸したフィルムに他の層をドライラミネートなどの方法で積層する方法が例示される。延伸の方法には、例えば加熱ロールと該ロールと異なる速度で回転しているロールとの間に通してMD方向に延伸する方法がある。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によればエチレン系のポリマーからなる優れた性能の延伸フィルムおよびフィルム用樹脂組成物が得られる。またこの延伸フィルムは、シュリンクフィルムその他の包装材をはじめ種々の用途に適しており、特に透明性、剛性、MD方向とTD方向の引裂強度のバランス、耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性に優れており、包装材として用いたとき内容物の鮮度保持性、見栄え、また耐寒性にも優れ、さらにはシュリンクさせたときの内容物の保持性に優れる等の特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、第1の発明に係る延伸フィルムについて説明する。
EmおよびEtは通常20〜3000[N/m]、好ましくは50〜2500[N/m]である。
MD方向(Em)とTD方向(Et)のエルメンドルフ引裂強度バランスは、
通常 0.1≦(Em/Et)≦3
好ましくは0.2≦(Em/Et)≦2.5
更に好ましくは0.3≦(Em/Et)≦2である。
【0017】
延伸倍率は通常2倍から15倍の範囲にあり、好ましくは6倍から12倍である。倍率がこの範囲にあると、延伸したフィルムが均一となり透明性に優れ、さらに引張弾性率も優れるため好ましい。
【0018】
引張初期弾性率は通常300〜10000MPa、好ましくは500〜8000MPa、更に好ましくは500〜5000MPaである。
本発明において引張初期弾性率は以下のように求められる。フィルムからJIS K6718に準ずる大きさのダンベルを、フィルムの引取方向と平行すなわちMD方向に打ち抜いたものを試験片とする。
インストロン型万能材料試験機のエアチャックに試験片をセットし、チャック間距離86mm、引張速度200mm/分で引張試験を行い、初期応力の変位に対する傾きを引張初期弾性率とする。
【0019】
延伸均一性は以下のように確認される。フィルム原反を表面温度が110℃の加熱ロール1と、これとは異なる速度で回転するロール2との間に通してフィルム原反をMD方向に1軸延伸して延伸フィルムを得る。ロール1の回転速度は5m/minとし、ロール2の回転速度で倍率を調整する。倍率を0.5倍刻みで増大してフィルムが破断する手前の倍率を最大延伸倍率とし、最大延伸倍率のフィルムを目視で観察する。フィルムに白化すなわち白く濁った部分がみられないものを延伸均一性に優れると定義する。なお、フィルム端部の白化は除くものとする。
【0020】
以下、第2の発明に係わる延伸フィルム用樹脂組成物について説明する。
(エチレン・α−オレフィン共重合体)
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(I)は、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)は、、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン共重合体である。そして、エチレン・α−オレフィン共重合体(I)とエチレン・α−オレフィン共重合体(II)は、同じα−オレフィンを共重合して得られるものでもよく、それぞれ異なるα−オレフィンを共重合して得られるものでもよい。
【0021】
共重合体(I)はメタロセン触媒を用いて重合することが好ましい。共重合体(II)はメタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られるが、特にメタロセン触媒を用いて重合することが好ましい。
【0022】
炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、好ましくはヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1である。また、上記の炭素原子数4〜12のα−オレフィンは単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0023】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)およびエチレン・α−オレフィン共重合体(II)としては、例えば、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1、エチレン・オクテン−1共重合体であり、より好ましくはエチレン・ヘキセン−1共重合体である。
【0024】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)のメルトフローレート(MFR)は0.01〜10g/10分であり、好ましくは0.2〜5g/10分であり、より好ましくは0.3〜1g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体(I)のメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分未満の場合、溶融粘度が高くなりすぎて押出加工性が悪化することがあり、10g/10分を超えた場合、機械的強度が低下することがある。
【0025】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)の密度は、860〜925Kg/m3であり、好ましくは900〜920Kg/m3であり、より好ましくは903〜920Kg/m3である。エチレン・α−オレフィン共重合体(I)の密度が860〜925Kg/m3の範囲にあるとフィルムに延伸する際に均一な延伸が可能となるために良好となるため好ましい。共重合体(I)の密度は、α−オレフィンの共重合量によって変えることができる。
【0026】
エチレン・α−オレフィン共重合体(II)のメルトフローレート(MFR)は1〜100g/10分であり、好ましくは2〜80g/10分であり、より好ましくは4〜60g/10分である。MFRが1g/10分以上であると押出加工性が良好であり、100g/10分以下であると機械的強度が向上するので好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(II)の密度は、926〜960Kg/m3であり、好ましくは935〜945Kg/m3である。エチレン・α−オレフィン共重合体(II)の密度が、926Kg/m3未満の場合、延伸成形を行う際に加熱ロールに付着がおき、均一延伸性が低下することがある。960Kg/m3を超えた場合、衝撃強度や透明性が低下することがある。共重合体(II)の密度は、α−オレフィンの共重合量によって変えることができる。
【0027】
(高圧法低密度ポリエチレン)
本発明で用いられる高圧法低密度ポリエチレン(B)のメルトフローレート(MFR)は、押出加工性、機械的強度および加熱処理後の透明性を良好に保つ観点から、好ましくは0.1〜10g/10分であり、より好ましくは0.1〜8g/10分であり、さらに好ましくは0.2〜8g/10分である。
高圧法低密度ポリエチレン(B)の密度は、延伸フィルムの剛性を保つ観点から、好ましくは915〜935Kg/m3であり、より好ましくは915〜930Kg/m3であり、さらに好ましくは918〜930Kg/m3である。
【0028】
(高密度ポリエチレン)
本発明で用いられることがある高密度ポリエチレン(C)のメルトフローレート(MFR)は0.1〜20、なかでも0.1〜10、好ましくは0.5から5g/10分であり、さらに好ましくは0.1〜3g/10分である。
高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上の場合、溶融粘度が押出加工性の点から適切であり好ましい。20g/10分以下の場合、機械的強度が良好であり好ましい。
高密度ポリエチレン(C)は、エチレン重合体またはエチレン・α−オレフィンの共重合体からなる。密度は940〜980、好ましくは950〜970Kg/m3の範囲にある。密度が940Kg/m3を下回ると、エルメンドルフ引裂き強度のバランスが低下することがある。
【0029】
高密度ポリエチレン(C)としては、DSCのピークを複数有する高密度ポリエチレンが好適である。なお、DSCのピークを複数有するとは、DSCのチャートにピークが明らかに2本以上見られる場合の他、ピークが1本とそれにショルダーが付随する場合も含むものである。DSCはJIS K 7122に準拠し、10℃から加熱速度:10℃/分で180℃迄昇温して測定する。
DSCのピークを複数有する高密度ポリエチレンは組成分布の広いものであり、多段重合を行うか、密度の異なる物をドライブレンドすることによって得ることができる。
【0030】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法)
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(I)の製造方法としては、メタロセン触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合方法として、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法、溶液重合法、高圧イオン重合法であり、より好ましくは気相重合法である。
【0031】
メタロセン系触媒として、好ましくは、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む触媒系である。シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を有する遷移金属化合物とは、いわゆるメタロセン系化合物であり、例えば、一般式MLaXn−a(式中、Mは元素の周期律表の第4族又はランタナイド系列の遷移金属原子である。Lはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基又はヘテロ原子を含有する基であり、少なくとも一つはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。複数のLは互いに架橋していてもよい。Xはハロゲン原子、水素又は炭素原子数1〜20の炭化水素基である。nは遷移金属原子の原子価を表し、aは0<a≦nなる整数である。)で表され、単独で用いてもよく、少なくとも2種類を併用してもよい。
【0032】
さらに、上記のメタロセン系触媒には、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、メチルアルモキサン等のアルモキサン化合物、および/またはトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等のイオン性化合物を組み合わせて用いられる。
【0033】
また、上記のメタロセン系触媒は、上記のメタロセン系化合物と、有機アルミニウム化合物、アルモキサン化合物および/またはイオン性化合物とを、SiO2、Al2O3等の微粒子状無機担体、ポリエチレン、ポリスチレン等の微粒子状有機ポリマー担体に担持または含浸させた触媒であってもよい。
上記のメタロセン系触媒を用いる重合によって得られるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、例えば、特開平9−183816号公報に記載されているエチレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。
【0034】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(II)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくはメタロセン系触媒である。公知の重合方法としては、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(I)の製造方法で用いられる重合方法と同様の重合方法が挙げられる。
【0035】
(高密度ポリエチレンの製造方法)
本発明で用いられる高密度ポリエチレン(C)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒等が挙げられ、公知の重合方法としては、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(I)の製造方法で用いられる重合方法と同様の重合方法が挙げられる。高密度ポリエチレン(C)の製造方法としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒を用いるスラリー重合方法が挙げられる。
【0036】
(高圧法低密度ポリエチレンの製造方法)
本発明で用いられる高圧法低密度ポリエチレン(B)の製造方法としては、一般に、槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140〜300MPa、重合温度200〜300℃の条件下でエチレンを重合する方法が挙げられ、メルトフローレートを調節するために、分子量調節剤として水素、メタンやエタン等の炭化水素が用いられる。高圧法低密度ポリエチレンは公知の方法、例えば、Mori et al:″High Polymer Engineering″,Vol.13,P247(Chijin−Shokan),1966等に記載の方法で製造することが出来る。
【0037】
(樹脂組成物)
本発明の成分(A)はエチレン・α−オレフィン共重合体(I)5〜95重量部および、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)95〜5重量部((I)と(II)の合計で100重量部とする)からなる。好ましくは(I)が30〜80重量部に対して(II)が70〜20重量部であり、さらに好ましくは(I)が40〜80重量部に対して(II)が20〜60重量部である。
(I)が5重量部未満の場合、機械的強度が劣る場合があり、また延伸フィルムの透明性を悪化させることがある。(I)が95重量部を超えた場合、延伸フィルムの剛性が低下することがある。
【0038】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)の配合量が50〜95重量部に対して、成分(B)の配合量が5〜50重量部であり、好ましくは成分(A)50〜90重量部に対して、成分(B)が10〜50重量部であり、さらに好ましくは成分(A)が60〜90重量部に対して、成分(B)が10〜40重量部である(いずれも、成分(A)と成分(B)の合計100重量部とする)。
成分(A)が5重量部未満の場合、機械的強度が劣る場合があり、また透明性を悪化させることがある。成分(B)が95重量部を超えた場合、延伸フィルムの剛性が低下することがある。
【0039】
本発明の成分(A)および(B)からなる樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は0.1〜10g/10分であり、好ましくは0.2〜4g/10分であり、より好ましくは0.3〜3g/10分である。樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分未満の場合、押出加工性が悪化することがあり、10g/10分を超えた場合、機械的強度が低下することがある。メルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分であれば、特に、インフレーション法によるフィルム成形において、樹脂の押出し性が良好でバブルが安定することから、延伸工程前のフィルム原反を製造する際インフレーション法によるフィルム成形にとって、より好ましい樹脂組成物が得られる。
【0040】
(樹脂組成物の製造方法)
また、本発明で用いられるポリエチレン系樹脂組成物の密度は898〜960Kg/m3であり、好ましくは900〜950Kg/m3であり、より好ましくは900〜940Kg/m3である。前記組成物の密度が898〜960Kg/m3であれば、強度および剛性が高く、引き裂きバランスに優れたフィルムが得られる。前記組成物の密度が898Kg/m3未満の場合、延伸フィルムのブロッキングが悪化することがあり、960Kg/m3超えた場合、延伸フィルムの透明性や機械的強度が低下することがある。
なお、本発明のエチレン系樹脂組成物を延伸して得られるフィルムの密度は、上記の密度範囲内にある。
【0041】
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂組成物の他の製造方法としては、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(C)あるいは更に高圧法低密度ポリエチレン(B)をドライブレンドまたはメルトブレンドする方法が挙げられる。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサーなどの各種ブレンダーを用いることができ、またメルトブレンドには、単軸押出機、二軸押出機、バンバリ−ミキサー、熱ロールなどの各種ミキサーを用いることができる。
【0042】
また、本発明に用いられるポリエチレン系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、以下のような望ましい製造方法が挙げられる。
1.1個の重合器を用い、2条件以上の反応条件に分けて、エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、(II)および必要に応じて高密度ポリエチレン(C)を連続的に重合した後に、高圧法低密度ポリエチレン(B)を混合する方法。
2.多段重合プロセスによって、複数の重合器で各々の成分を重合し、最終的に本発明のポリエチレン系樹脂組成物を得る方法。
3.各成分のうちのいずれか2成分を多段重合によって製造した後に、残りの1成分ないし2成分を混合する方法。
【0043】
本発明の延伸フィルムはポリエチレン系樹脂をまず原反と呼ばれる肉厚のフィルムに成形し、これを更に延伸成形して得られる。原反フィルムの引取方向をMDとし、引取方向と直角な方向をTDとする。延伸の前工程において製造する原反フィルムは、公知の製造方法を用いることができ、例えばインフレーションフィルム成形法、Tダイキャストフィルム成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等が挙げられる。延伸工程にて良好な延伸性を得るという観点から、インフレーション成形法が好ましく用いられる。
【0044】
本発明の延伸フィルムは、単層フィルムとして利用することができる。
また、本発明の延伸フィルムは、原反を一軸延伸あるいは2軸に逐次あるいは同時に延伸して調製される。また、原反の調製の過程で1軸あるいは2軸に予備延伸された原反を、さらに延伸しることも行われる。本発明の好ましい態様の1つとして、インフレーション成形で得られた単層フィルムをさらに延伸倍率2から15倍程度に一軸に延伸した一軸延伸フィルムがある。一軸延伸フィルムの延伸方向は、原反フィルムのMD方向と一致していることが好ましい。
【0045】
本発明の延伸フィルム及びそのフィルム用いた包装用フィルムの厚みは、通常5〜150ミクロン(μm)であり、好ましくは10〜100ミクロン(μm)であり、より好ましくは10〜80ミクロン(μm)である。
【0046】
本発明の延伸フィルムの引張初期弾性率TMは、通常300〜10000メガパスカル(MPa)の範囲であり、好ましくは500〜8000MPaであり、より好ましくは500〜5000MPaである。引張初期弾性率TMが300メガパスカル(MPa)未満の場合、例えば、延伸フィルムを包装材として用いる際のハンドリングが悪化する場合があり、10000メガパスカル(MPa)を超える場合エルメンドルフ引裂きバランスが悪くなり、衝撃強度の低下につながる可能性がある。
【0047】
本発明の延伸フィルムのMDとTDにおけるエルメンドルフ引裂強度(ASTM D1922)の比(MD/TDの比)は0.1以上3以下であり、好ましくは0.2以上2.5以下であり、より好ましくは、0.3以上2以下である。エルメンドルフ引裂強度(ASTMD1922)の比(MD/TDの比)が0.1未満の場合、衝撃強度の低下を引き起こす可能性がある。
【0048】
また、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する積層フィルムから得られる延伸フィルムを利用することができる。本発明の延伸フィルムを積層フィルムの少なくとも一つの層として利用する場合、積層フィルムの製造方法としては、共押出法、押出コーティング法(押出ラミネート法ともいう。)等が挙げられる。
これらは、予め本発明の延伸フィルムの原反となる樹脂組成物と他の層となる樹脂組成物を共押出し、押出しラミネート、あるいはドライラミネーなどの方法で積層し、さらに延伸して得られる。また、予め延伸したフィルムに他の層をドライラミネートなどの方法で積層する方法が例示される。延伸の方法には、例えば加熱ロールと該ロールと異なる速度で回転しているロールとの間に通してMDに延伸する方法がある。
【0049】
また、本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる延伸フィルムを、基材にラミネートして複合フィルムとして利用することもできる。基材としては、公知のものが挙げられ、例えば、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
【0050】
本発明の延伸フィルムを基材にラミネートする方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、ホットメルトラミネート法等が挙げられる。
【0051】
本発明の延伸フィルムには、必要に応じて、その他のポリマー、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、ブロッキング防止剤等を添加してもよい。その他の樹脂や添加剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0052】
その他のポリマーとしては、本発明で用いられるポリエチレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、剛性や耐熱性を改良するために添加されるポリプロピレン樹脂、衝撃強度を改良するために添加されるポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの他のポリマーは、成分(A)及び成分(C)の合計100重量部に対して通常1ないし30重量部の割合で添加されることがある。
【0053】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名:IRGANOX1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名:スミライザーGP、住友化学工業社製)等のホファイト系酸化防止剤等が挙げられる。
【0054】
滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等が挙げられ、ブロッキング防止剤としては、無機系ブロッキング防止剤、有機系ブロッキング防止剤が挙げられ、無機系ブロッキング防止剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリ(メタクリル酸メチル−スチレン)共重合体、架橋シリコーン、架橋ポリスチレンの粉末等が挙げられる。
これらの酸化防止剤をはじめとする添加剤の配合割合は、その種類により成分(A)と成分(C)の合計100重量部に対して通常0.01ないし30重量部の範囲で適宜添加される。
【0055】
上記の必要に応じて添加されるその他の樹脂や添加剤の混合方法としては、例えば、本発明のポリエチレン系樹脂組成物とともにその他の樹脂や添加剤を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いて溶融混練した後フィルム加工に供する方法、本発明のポリエチレン系樹脂組成物とその他の樹脂や添加剤をヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いてドライブレンドした後フィルム加工に供する方法、または、その他の樹脂や添加剤を少なくとも一種のマスターバッチにしてヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いて本発明のポリエチレン系樹脂組成物とドライブレンドした後フィルム加工に供する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
次に本発明を実施例および比較例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例に用いた樹脂組成物の基本物性およびフィルム物性は次の方法に従って測定した。
【0057】
〔樹脂組成物の基本物性〕
(1)密度(単位:Kg/m3)
密度は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)測定時に得られたストランドを120℃で2時間処理し、1時間かけて室温まで徐冷した後、密度勾配管を用いて測定した。
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
ASTM D1238−65Tに従い、190℃、2.16kg荷重の条件下にて測定した。
(3)ヘイズ(透明性、単位:%)
ASTM D1003に従って測定した。
(4)グロス(単位:%)
ASTM D1922に規定された方法に従って測定した。
【0058】
(5)エルメンドルフ引裂強度
エルメンドルフ引裂強度は、ASTM D1922に準じ、株式会社東洋精機製作所のエルメンドルフ引裂試験機を用いて測定する。切れ目をフィルムの引き取り方向に入れる場合をMD方向、引取方向と直角に入れる場合をTD方向とする。また、引裂きバランスはここで測定される(MDの引裂き強度/TDの引裂き強度)により求めた。
【0059】
(6)引張初期弾性率
フィルムからJIS K6718に準ずる大きさのダンベルを打ち抜き試験片とし、フィルムの引取方向と平行に打ち抜く場合をMD方向、フィルムの引取方向と直角に打ち抜く場合をTD方向とする。
インストロン型万能材料試験機のエアチャックを試験片をセットし、チャック間距離86mm、引張速度200mm/分で引張試験を行い、初期応力の変位に対する傾きを引張初期弾性率とする。
【0060】
実施例および比較例に用いたエチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(C)、高圧法低密度ポリエチレン(B)を以下に示した。
【0061】
(I)エチレン・α−オレフィン共重合体
共重合体(I−a):エチレン−ヘキセン−1共重合体
MFR=0.5g/10分、密度=902Kg/m3
共重合体(I−b):エチレン−ヘキセン−1共重合体
MFR=3.9g/10分、密度=913Kg/m3
【0062】
(II)エチレン・α−オレフィン共重合体
共重合体(II−a):エチレン−ヘキセン−1共重合体
MFR=5g/10分、密度=940Kg/m3
上記のエチレン・α−オレフィン共重合体(I−a)、(I−b)エチレン・α−オレフィン共重合体(II−a)は公知のメタロセン触媒を用いて、気相重合法によって製造されたものであった。
【0063】
(C)高密度ポリエチレン
HDPE(III−a):MFR=0.11g/10分、密度=958Kg/m3
HDPE(III−b):MFR=5.3g/10分、密度=962Kg/m3
HDPE(III−c):MFR=0.3g/10分、密度=951Kg/m3
上記のHDPE(III−a)は、DSCの融点のピークが、131.5℃および129℃付近にショルダーを有する。HDPE(III−b)はDSCの融点のピークが、132.7℃のシングルピークを有する。HDPE(III−c)は、131.0℃にシングルピークを有する。
【0064】
(B)高圧法低密度ポリエチレン
LDPE(IV−a):MFR=0.6g/10分、密度=923Kg/m3
上記の高圧法低密度ポリエチレンは、管型反応器を用いて、ラジカル重合法によって製造されたものであった。
実施例1
【0065】
〔樹脂組成物の製造〕
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(C)および高圧法低密度ポリエチレン(B)を表1に示した組成でドライブレンドを行い、続いて池貝鉄工社製46mmφ 2軸押出機を用いて、加工温度190℃、押出量50Kg/hrで樹脂組成物ペレットを製造した。
【0066】
〔延伸フィルム原反の製造〕
上記のようにして製造されたポリエチレン組成物を、下記成形条件で空冷インフレーション成形を行い、肉厚250μm、幅400mmのフィルムを製造した。
<延伸原反成形条件>
成形機:モダンマシナリー製65mmφインフレーション成形機
スクリュー:バリアタイプスクリュー
ダイス:125mmφ(径)、3.5mm(リップ幅)
エアーリング:2ギャップタイプ
成形温度:190℃
押出し量:77Kg/h
引取速度:7m/min
【0067】
〔延伸フィルムの製造条件〕
上記方法にて得られた延伸原反を表面温度(延伸温度)が110℃の加熱ロールと異なる速度で回転しているロールとの間に通してMD方向に表1に示す倍率で1軸延伸を実施し延伸フィルムを得た。
倍率が低すぎるときには延伸が不均一となり、透明なフィルムが得られず、また倍率が高すぎるとフィルム破断が生じる。倍率を0.5倍刻みで増大していき、フィルムが破断する手前の倍率を最大延伸倍率とした。
【0068】
最大延伸倍率以外の項目は、破断がおきずかつ透明なフィルムが得られる倍率で延伸を行って評価した。延伸の均一性は、得られたフィルムを観察して全面が透明なものを良、一部が白化したものを不良とした。
得られた樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)、密度、光学特性、引張初期弾性率、エルメンドルフ引裂き強度、エルメンドルフ引裂きバランス、フィルムインパクトを前記の方法に従って評価、測定し、得られた結果を表1に示した。
実施例2
【0069】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高密度ポリエチレン(C)および高圧法低密度ポリエチレン(B)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表1に示す。
実施例3
【0070】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)、高圧法低密度ポリエチレン(B)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。高密度ポリエチレン(C)は用いなかった。得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
【0071】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。高密度ポリエチレン(C)および高圧法低密度ポリエチレン(B)は用いなかった。延伸倍率を5.5以下に設定したときは透明なフィルムが得られず、また延伸倍率が6をこえると破断が生じる為、延伸倍率が6のフィルムで評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
【0072】
エチレン・α−オレフィン共重合体(I)、高密度ポリエチレン(C)および高圧法低密度ポリエチレン(B)を表1に示した組成で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、フィルム原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。エチレン・α−オレフィン共重合体(II)は用いなかった。得られた結果を表1に示す。延伸倍率が6をこえると破断が生じ、また延伸倍率を6以下に設定したときは透明なフィルムが得られなかった。評価は延伸倍率が6のフィルムで行った。
【0073】
本発明の要件を満足する実施例1〜4は、引張初期弾性率(MD)が500メガパスカル(MPa)以上かつエルメンドルフ引裂き強度バランスが0.1以上でありまた、透明性に優れ、最大延伸倍率も高いことから延伸性に優れることが分かる。その中でも高圧法ポリエチレン(C)と高圧法低密度ポリエチレン(B)を含有する実施例1および2は良好な結果となっている。
【0074】
実施例と比較して、成分(B)を含有しない比較例1は、エルメンドルフ引裂き強度バランスおよび透明性に劣り、最大延伸倍率も低い事から引張初期弾性率も低く、実用性に欠ける。
【0075】
実施例と比較して、エチレン・α−オレフィン共重合体(II)を含有しない比較例2は、引張初期弾性率およびエルメンドルフ引裂き強度バランスは比較的良好であるものの、最大延伸倍率が低く、また延伸が不均一となり透明なフィルムが得られなかった。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂を延伸してなるフィルムであって、
(a−i)ASTM D1922に準じて測定されるMD方向のエルメンドルフ引裂強度をEm、TD方向のエルメンドルフ引裂強度をEtとするとき、EmおよびEtが次の(式1)、(式2)および(式3)を満たし、
20≦Em[N/m]≦3000 (式1)
20≦Et[N/m]≦3000 (式2)
0.1≦(Em/Et)≦3 (式3)
(a−ii)MD方向の引張初期弾性率TMが次の(式4)を満たし、
300≦TM[Mpa]≦10000 (式4)
(a−iii)厚みが5から150μmの範囲にあり、
延伸均一性に優れたポリエチレン系フィルム。
【請求項2】
(A)下記成分(I)および(II)からなり((I)と(II)の合計で100重量部である。)、メルトフローレートが0.1〜100kg/m3の範囲にあり、密度が890〜940Kg/m3の範囲にあるポリエチレン組成物50〜95重量部と、
(B)メルトフローレートが0.1〜100kg/m3の範囲にあり、密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン5〜50重量部
(成分(A)と成分(B)の合計で100重量部である。)からなり、メルトフローレートが0.1〜100kg/m3の範囲にあり、密度が898〜960Kg/m3の範囲にある延伸フィルム用樹脂組成物。
(ここで(I)エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が860〜925Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体5〜95重量部であり、
(II)エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるメルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体5〜95重量部である。)
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂組成物100重量部に対し、メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜980Kg/m3の範囲にある高密度ポリエチレン(C)が5から50重量部配合されてなる延伸フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物からなる延伸フィルム。

【国際公開番号】WO2005/028553
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514061(P2005−514061)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013660
【国際出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】