説明

樹脂組成物およびプロセス

【課題】色のついたモノマーを含み、得られる樹脂に色を付与することが可能な、環境に優しい樹脂粒子を提供する。
【解決手段】生物由来のポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸から誘導される少なくとも1つのモノマー、フラボノール類、フラボン類、イソフラボン類、アントシアニン類、アントシアニジン類、C−グリコシルフラボノイド類、これらの組み合わせからなる群から選択されるフラボノイドを含む少なくとも1つのモノマーと、を含み、前記フラボノイドが前記ポリエステル樹脂に色を付与する、生物由来のポリエステル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【発明を実施するための形態】
【0001】
本開示は、ポリエステル系EAトナーの作成を含め、種々の用途に適した生物由来の環境に優しい新規ポリマー材料を提供する。EAトナーの場合、トナー粒子に色を付与するために、乳化凝集(EA)プロセス中に顔料が加えられる。顔料によって種々の色が生じ、仕様に応じてEAラテックスに加えられる。EAプロセスおよび/またはトナー製造プロセスの洗浄段階で顔料が受け入れられない場合があり、これにより、トナーの最終色が変わってしまうことがある。他の産業、例えば、プラスチック製の食器および玩具のポリマー押出成型では、着色剤は、物品成型中に加えられる。多くの着色剤は、高温ポリマーの融点よりも低い温度で軟化するか、溶融するか、または分解し、押出機の部品に付着し、最終的な製品に色むらができてしまう。本開示のポリマー材料は、生物由来であり、天然の色がついており、これらの問題のいくつかを避けることができる。
【0002】
生物由来の樹脂または製品は、本明細書で使用される場合、実施形態では、米国環境行政局が定義しているような、全体またはかなりの部分が生体産物または再生可能な国内農業材料(植物、動物または海産物を含む)および/または森林材料で構成されていてもよい商業製品および/または工業製品を含む(食品または餌以外のもの)。
【0003】
生物由来の樹脂は、石油化学製品の代わりに、植物油のような生物源に由来する樹脂または樹脂配合物である。環境への影響が少ない再生可能なポリマーとして、このポリマーの主な利点は、有限な資源である石油化学製品に頼ってしまうのを減らすこと、また、大気から炭素を捕捉することである。生物系樹脂としては、樹脂の少なくとも一部分が天然生体材料、例えば、動物、植物、これらの組み合わせから誘導される樹脂が挙げられる。
【0004】
生物由来の樹脂としては、天然のトリグリセリド植物油(例えば、菜種油、大豆油、ひまわり油)、またはフェノール系植物油(例えば、カシューナッツ殻液(CNSL))、これらの組み合わせが挙げられる。生物由来の樹脂は、アモルファス樹脂であってもよい。適切な生物由来のアモルファス樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリイソブチレート、ポリオレフィン、これらの組み合わせが挙げられる。
【0005】
アモルファス生物由来のポリマー樹脂の例としては、大豆油の脂肪族ダイマー酸またはジオール、D−イソソルビド、および/またはL−チロシンおよびグルタミン酸のようなアミノ酸をはじめとしたモノマーから誘導されるポリエステルが挙げられる。
【0006】
適切な生物由来のポリマー樹脂としては、脂肪族ダイマー酸またはジオール、D−イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、ジカルボン酸、例えば、アゼライン酸、コハク酸、シクロヘキサン二酸、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、グルタミン酸、およびこれらの組み合わせを含むモノマーと、場合により、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、およびこれらの組み合わせとから誘導されるポリエステルが挙げられる。
【0007】
また、生物由来の樹脂は、天然色をもつ少なくとも1つのモノマー(すなわち、モノマー自体が着色している)を含んでいてもよい。天然色をもつモノマーとしては、植物材料が着色していることに起因し、花、果実、葉に赤色〜青色の色を付与する植物化学品群であるフラボノイド類が挙げられる。フラボノイド類は、植物の成長および発達にも関与しており、UV−B照射から保護し、抗真菌障壁を作り、抗菌性、防虫性、エストロゲン様性質を与え、植物の繁殖にも関与している。
【0008】
適切なフラボノイド類としては、フラボノール類、フラボン類、イソフラボン類、アントシアニン類、アントシアニジン類、C−グリコシルフラボノイド類、これらの組み合わせが挙げられる。
【0009】
樹脂を作成する際に利用されるフラボノイドは、これ自体が着色していてもよく、したがって、このような樹脂を利用して製造される物品は、着色した物品を得るために、顔料、染料および/または着色剤をさらに加える必要がない場合がある。このようなモノマーおよび/または得られる樹脂は、「天然色」および/または「天然で着色した」および/または「固有に着色した」と呼ばれることがある。
【0010】
適切なフラボノイド類としては、フラボノール類(フラボンのヒドロキシル誘導体)、例えば、ケルセチン、ミリセチン、アザレアチン、フィセチン、ガランギン、ゴッシペチン、ケンペリド、ケンペロール、イソラムネチン、モリン、ラムナジン、ラムネチン、エピカテキン、パチポダール(pachypodal)、ラリシトリン、シリンゲチン、これらの組み合わせが挙げられる。他の適切なフラボノイド類としては、アピゲニン、ルテオリン、アカセチン、そのイソフラボンであるカリコシン、これらの組み合わせのようなフラボン類が挙げられる。一般的に、フラボノール類は、十分に高濃度で存在する場合には、黄色、橙色、緑色、および/またはこれらの色を組み合わせた色を示す。他の主要なフラボノイド群であるアントシアニン類は、被子植物のほとんどの花、果実、葉に、サーモンピンクから赤色まで、紫色から暗青色までのシアン系の色を与える。アントシアニン類の糖を含まない相当物であるアントシアニジン類を用いてもよい。適切なアントシアニジン類としては、例えば、オーランチニジン、エウロピニジン、ルテオリニジン、ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン、ペツニジン、ペオニジン、マルビジン、ロシニジン、これらの組み合わせのようなアントシアニジンが挙げられる。
【0011】
フラボノール類は、少なくとも3個のヒドロキシル基、3〜7個のヒドロキシル基、または4〜5個のヒドロキシル基を有していてもよい。反応条件、立体化学によるが、反応性ヒドロキシル基の数が多いほど、分岐または架橋したポリマー構造を合成することができるようになってよい。
【化1】

【0012】
フラボノール類は、天然にアグリコンとして、またはO−グリコシド類(例えば、D−グルコース、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、キシロース、グルクロン酸などとのO−グリコシド類)として存在していてもよい。フラボンおよびフラボノールのO−グリコシド類は、最も大きなフラボノイド構成要素群の1つをなしており、2000種類を超える構造が知られている。上の記載から、ケルセチンといえば、アグリコン、またはこれらの任意のグリコシド(典型的には、Oで結合したグリコシド)を包含することを意図していることが理解されるだろう。ケルセチンのグリコシド類は、慣用名がついている傾向がある。ケルセチンのラムノースグリコシドは、クエルシトリンとして知られており、そのルチノシドはルチンとして知られている。フラボノイド類の中には、アシル化グリコシド誘導体または硫酸化グリコシド誘導体も含んでいるものがある。ケルセチン類似体としては、3、5、7、3’および/または4’位の1個所以上の位置に−OH基以外の置換基を含む化合物が挙げられる。
【0013】
フラボン類およびフラボノール類とのO−組み合わせに最もよくみられる単糖類は、グルコースおよびラムノースであり、次によくあるのは、アラビノース、キシロース、グルクロン酸である。ビシアノース、ルチノース、セロビオース、ラクトースのような二糖類、またはプリムフラシンのような三糖類と、フラボン類またはフラボノール類との組み合わせは、天然で広く存在するわけではないが、これも利用してよい。
【0014】
着色したモノマーとしてC−グリコシルフラボノイド類を利用してもよく、C−グリコシルフラボノイド類は、モノ−C−グリコシルフラボノイド類、ジ−C−グリコシルフラボイド類、O−グリコシル−C−グリコシルフラボノイド類、O−アシル−C−グリコシルフラボノイド類の4つの群の中に存在することが知られている。
【0015】
フラバノングリコシド類が適している場合があり、フラバノングリコシド類中の最も一般的な糖は、モノシドとして、またはビオシド、トリオシド、ジグリコシド酸またはアクリル酸化グリコシド類の1つ以上の糖として、グルコースである。
【0016】
アントシアニジン類および/またはアントシアニン類を、着色したモノマーとしてフラボン類の代わりに用いてもよい。以下の二糖類が、アントシアニジン類に結合していてもよい。2−グルコシルグルコース(ソホロース)、6−ラムノシルグルコース(ルチノース)、2−キシロシルグルコース(サンブビオース)、6−グルコシルグルコース(ゲンチオビオース)、6−ラムノシルガラクトース(ロビノビオース)、2−キシロガラクトース(ラチロース(lathyrose))、2−ラムノシルグルコース(ネオヘスペリドース)、3−グルコシルグルコース(ラミナリビオース)、6−アラビノシルグルコース、2−グルクロニルグルコース、6−グルコシルガラクトース、4−アラボノシルグルコース。他の可能なアントシアニン類は、2−グルコシル−6−ラムノシルグルコースまたは2−キシロシル−6−ラムノシルグルコースのような三糖類を含んでいる。これらのグリコシド部分は、3−、5−、7−、3’−、または5’−位に存在していてもよい。
【0017】
着色したモノマーは、ケルセチン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)であってもよく、ケルセチンは、特定的には、数例を挙げると、リンゴ、柑橘類の果実、レッドオニオン、紅茶、赤ワインの色のもとである。ケルセチンは、以下からわかるように、ヘテロ環であるピロン環(芳香族三量体のヘテロ環)に結合した2個のベンゼン環を含む。
【化2】

【0018】
ケルセチンは、302℃で溶融する黄色から緑色がかった結晶性粉末である。ケルセチンは、モノマーポリオール(ペントール型)であるため、カルボキシレート化モノマーと簡単に重合する。
【0019】
淡黄色を示すように、樹脂配合物にケルセチンを少量加えてもよく、もっと顕著な橙色−黄色−褐色を与えるために、ケルセチンをまたはもっと高い保有量になるように加えてもよい。
【0020】
ケルセチンは、4個の反応性ヒドロキシル基(合計で5個のヒドロキシル基)を有しており、これを利用して生体樹脂を作成してもよい。いかなる理論によっても束縛されることを望まないが、両ベンゼン環に結合しているヒドロキシル基は、C−4’の共役によって助色性を発揮するのだろうと考えられる。長い方の波長(380nm)の光の吸収は、B環と、C−3’のヒドロキシル基と関連しており、これより短い波長の光の吸収は、A環と関連している。
【0021】
ケルセチンを他の生物由来のモノマー(例えば、イソソルビドおよびコハク酸)とともに重合させてもよい。着色したモノマーは、生物由来の樹脂の0.01モル%〜約0.8モル%の量で存在してもよい。
【0022】
非常に分子量が低い状態であっても、ポリマーは、47℃と妥当なガラス転移発生温度を示す。また、このポリマーは、非常に堅く、ガラスのような性質を有しており、この性質は、部分的に、ケルセチン分子のベンゼン環の剛性に起因する。
【0023】
ポリマー材料は、このポリマー材料から作られるポリマーに色を付ける、天然色をもつ少なくとも1つのモノマーを含む。本開示の生物由来のポリマー材料を用いて製造した物品は、着色剤の存在を必要としない。本開示の生物由来のポリマー材料は、天然色をもっていてもよく、このポリマー材料を用いて製造したトナーは、生物由来の顔料以外の顔料を必要としないだろう。得られるポリマーは、着色剤または顔料がポリマー構造の一部分であるため、着色しており、トナー、インク、プラスチック(玩具、機械の部品、家庭用器具、ボウル、カップ、椅子、ブラシの持ち手、ビン、バケツ、台所用品、洋服用ハンガー、氷トレーのような家庭用品)、塗料、繊維、これらの組み合わせのための組成物として塗布してもよい。
【0024】
また、着色したモノマーは、ポリマーの強度または剛性を制御するために、架橋剤または分岐剤として機能してもよい。
【0025】
得られるポリマーおよびこのポリマーから製造される任意のトナーの色を精密に調整するために、フラボノール(例えば、ケルセチン)の保有量を調節することができる。色の測定は、例えば、一般的にCIELABと呼ばれるCIE(Commission International de I’Eclairage)の仕様によって特徴づけられ、L、a、bは、修正された対立する色座標であり、3次元空間を形成しており、Lは、色の明るさを特徴づけ、aは、おおよその赤みを特徴づけ、bは、おおよその色の黄色さを特徴づけている。いくつかの実施形態では、ケルセチンを用いて製造されたポリマーの場合、得られるポリマーの色は、CIE L色空間の黄色/赤色四分円の範囲内にある。
【0026】
得られる着色した生物由来のポリマーは、トナー用途で用いるのに適したガラス転移温度(Tg)、軟化点、酸値、分子特性を有する。
【0027】
生物由来のポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。この樹脂は、イソソルビド、フラボノイド、ケルセチン、ジカルボン酸、コハク酸、およびこれらの組み合わせから誘導されてもよい。
【0028】
適切な生物由来のアモルファス樹脂は、ガラス転移温度が40℃〜80℃であってもよく、重量平均分子量(Mw)が1,500〜100,000であってもよく、数平均分子量(Mn)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合、1,000〜10,000であってもよく、分子量分布(Mw/Mn)が、1〜20であってもよく、炭素/酸素比が2〜6であってもよい。ラテックスで用いられる樹脂の組み合わせは、130℃での溶融粘度が10〜100,000PaSであってもよい。
【0029】
得られる着色した生物由来のポリマー材料は、トナーを含む多くの樹脂に由来する物品を作成する際に利用されてもよい。
【0030】
上の生物由来の樹脂を単独で用いてもよく、トナーを作成するのに適した任意の他の樹脂とともに用いてもよい。
【0031】
樹脂は、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。樹脂を作成するのに利用されるポリマーは、ポリエステル樹脂であってもよく、アモルファスポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の混合物であってもよい。
【0032】
樹脂は、任意要素の触媒が存在する状態で、ジオールと二酸とを反応させることによって作成されるポリエステル樹脂であってもよい。
【0033】
アモルファスポリエステルの調製で利用されるビニル二酸またはビニルジエステルとしては、ジカルボン酸またはジエステル、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、トリメリット酸、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、cis,1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、コハク酸、シクロヘキサン酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ナフタレンカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、無水フタル酸、フタル酸ジエチル、コハク酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ドデシルコハク酸ジメチル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。有機二酸またはジエステルは、樹脂の40〜60モル%の量で存在していてもよい。
【0034】
アモルファスポリエステルを作成する際に利用可能なジオールの例としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、2,2,3−トリメチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ドデカンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)−ビスフェノールA、ビス(2−ヒドロキシプロピル)−ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、キシレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)オキシド、ジプロピレングリコール、ジブチレン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。選択される有機ジオールの量は、樹脂の40〜60モル%の量で存在してもよい。
【0035】
結晶性ポリエステルまたはアモルファスポリエステルのいずれかを作成する際に使用可能な重縮合触媒としては、ポリエステル樹脂を作成するために用いられる出発物質の二酸またはジエステルを基準として、例えば、0.01モル%〜5モル%の量の、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシド水酸化物が挙げられる。
【0036】
利用可能なアモルファス樹脂としては、アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、分岐アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、アルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂、分岐アルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0037】
樹脂は、架橋可能な1個以上の基(例えば、C=C結合)を含む架橋可能な樹脂であってもよい。樹脂は、開始剤を用いた遊離ラジカル重合によって架橋させることができる。
【0038】
不飽和アモルファスポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。例示的な不飽和アモルファスポリエステル樹脂としては、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコ−フマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコ−フマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノールコ−フマレート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノールコ−エトキシル化ビスフェノールコ−フマレート)、ポリ(1,2−プロピレンフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコ−マレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコ−マレエート)が挙げられる。
【0039】
適切なアモルファス樹脂としては、アルコキシル化ビスフェノールAフマレート/テレフタレートに由来するポリエステルおよびコポリエステル樹脂を挙げることができる。適切なポリエステル樹脂は、以下の式(I)を有するポリ(プロポキシル化ビスフェノールAコ−フマレート)樹脂のようなアモルファスポリエステルであってもよく、
【化3】

式中、mは5〜1000であってもよいが、mの値は、この範囲からはずれていてもよい。
【0040】
直鎖プロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂を利用してもよい。
【0041】
結晶性ポリエステルを作成する場合、適切な有機ジオールとしては、炭素原子を2〜36個含む脂肪族ジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、アルカリスルホ−脂肪族ジオール、例えば、ソジオ2−スルホ−1,2−エタンジオール、リチオ2−スルホ−1,2−エタンジオール、ポタシオ2−スルホ−1,2−エタンジオールが挙げられる。脂肪族ジオールは、樹脂の40〜60モル%の量であってもよい。
【0042】
結晶性樹脂を調製するために選択されるビニル二酸またはビニルジエステルを含む有機二酸またはジエステルの例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸が挙げられる。有機二酸は、樹脂の40〜60モル%の量で選択されてもよい。
【0043】
特定の結晶性樹脂は、ポリエステルに由来するものであってもよく、例えば、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−サクシネート)、ポリ(プロピレン−サクシネート)、ポリ(ブチレン−サクシネート)、ポリ(ペンチレン−サクシネート)、ポリ(ヘキシレン−サクシネート)、ポリ(オクチレン−サクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)であってもよい。
【0044】
結晶性樹脂は、トナー要素の1〜85重量%の量で存在していてもよい。結晶性樹脂は、種々の融点、例えば、30℃〜120℃の融点を有していてもよい。結晶性樹脂は、数平均分子量(M)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される場合、例えば、1,000〜50,000、重量平均分子量(M)が、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィーによって測定される場合、例えば、2,000〜100,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M/M)は、2〜6であってもよい。
【0045】
適切な結晶性樹脂としては、エチレングリコールと、以下の式を有するドデカン二酸およびフマル酸のコモノマー混合物とから作られる樹脂を挙げることができ、
【化4】

式中、bは、5〜2000であり、dは、5〜2000である。
【0046】
トナーを作成する際に利用可能な他の適切な樹脂またはポリマーとしては、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(メチルスチレン−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸メチル−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸エチル−ブタジエン)が挙げられる。
【0047】
樹脂は、縮重合法または乳化重合法によって作られてもよい。
【0048】
トナー組成物は、任意要素の着色剤、ワックス、凝固剤、他の添加剤(例えば、界面活性剤)を含んでいてもよい。
【0049】
ワックス、トナー組成物を作成するために利用される他の添加剤は、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい。トナー粒子は、樹脂およびトナーの他の要素を、1つ以上の界面活性剤が存在する状態におき、エマルションを生成させ、トナー粒子が凝集し、融着し、場合により、これを洗浄し、乾燥させ、回収するような乳化凝集方法によって作られてもよい。
【0050】
1種類、2種類またはそれ以上の界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。
【0051】
界面活性剤を、固体として、または濃度が5重量%〜100重量%の溶液(純粋な界面活性剤)として加えてもよい。界面活性剤は、樹脂の0.01重量%〜20重量%の量で存在するように利用されてもよい。
【0052】
利用可能なアニオン系界面活性剤としては、サルフェート類およびスルホネート類が挙げられる。
【0053】
通常は正に帯電したカチオン性界面活性剤の例としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0054】
非イオン系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸が挙げられる。
【0055】
本開示の生物由来の樹脂は天然で着色しているため、この樹脂から製造されるトナーは、さらなる着色料を必要としないはずである。さらなる着色剤をトナー配合物に加え、得られるトナーの色を調整または変化させてもよい。さらなる着色剤を加える場合、本開示の生物由来の樹脂は、すでに着色しているため、さらなる着色剤の必要な保有量は低いことになる。
【0056】
加えられる着色剤として、種々の既知の着色剤、例えば、染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物がトナーに含まれていてもよい。着色剤は、トナー中に、トナーの0.1〜35重量%の量で含まれていてもよい。
【0057】
場合により、トナー粒子を作成する際に、ワックスを樹脂と合わせてもよい。ワックスは、ワックス分散物の状態で与えられてもよく、1種類のワックスを含んでいてもよく、2種類以上の異なるワックスの混合物を含んでいてもよい。
【0058】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の1重量%〜25重量%の量で存在していてもよい。
【0059】
ワックス分散物が用いられる場合、ワックス分散物は、乳化凝集トナー組成物で従来から用いられる種々の任意のワックスを含んでいてもよい。選択可能なワックスとしては、平均分子量が500〜20,000のワックスが挙げられる。使用可能なワックスとしては、ポリオレフィンが挙げられる。
【0060】
トナー粒子を作成する際に、凝固剤を樹脂、任意要素の着色剤、ワックスと組み合わせてもよい。このような凝固剤を、粒子凝集中にトナー粒子に組み込んでもよい。凝固剤は、トナー粒子中に、外部添加剤を除き、乾燥重量基準でトナー粒子の0重量%〜5重量%の量で存在していてもよい。
【0061】
使用可能な凝固剤としては、イオン系凝固剤、例えば、カチオン系凝固剤が挙げられる。無機カチオン系凝固剤としては、金属塩、例えば、硫酸アルミニウムが挙げられる。有機カチオン系凝固剤の例としては、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0062】
他の適切な凝固剤としては、一価金属凝固剤、二価金属凝固剤、多価イオン凝固剤などが挙げられる。本明細書で使用される場合、「多価イオン凝固剤」は、塩または酸化物である凝固剤を指し、例えば、少なくとも3価の価数を有する金属種から作られる金属塩または金属酸化物を指す。「多価イオン凝固剤」は、塩または酸化物である凝固剤を指す。したがって、適切な凝固剤としては、アルミニウム塩に由来する凝固剤、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリアルミニウムスルホシリケート(PASS)が挙げられる。
【0063】
また、他の適切な凝固剤としては、限定されないが、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシドが挙げられる。
【0064】
(プロセス)
トナー組成物を乳化凝集プロセスによって、例えば、任意要素の着色剤、任意要素のワックス、任意要素の凝固剤、任意の他の望ましい添加剤または必要な添加剤、上述の樹脂を含むエマルション(場合により、上述の界面活性剤中)の混合物を凝集させ、次いで、凝集した混合物を融着させることを含むプロセスによって調製してもよい。このエマルション(樹脂を含む2つ以上のエマルションの混合物であってもよい)に、任意要素の着色剤と、場合により、ワックスまたは他の材料(場合により、界面活性剤を含む分散剤の状態であってもよい)を加えることによって、混合物を調製してもよい。例えば、トナーを調製するための乳化/凝集/融着プロセスは、上に引用した特許および刊行物の開示内容に示されている。
【0065】
得られた混合物のpHを、酸(例えば、酢酸)によって調節してもよい。いくつかの実施形態では、混合物のpHを2〜5に調節してもよい。いくつかの実施形態では、水で希釈した0.5〜10重量%の形態の酸を利用してpHを調節する。
【0066】
pHを上げ、凝集粒子をイオン化するために用いられ、これによって凝集物を安定化させ、凝集物の粒径が大きくなるのを防ぐ塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0067】
混合物を、毎分600〜6,000回転の速度で均質化してもよい。
【0068】
上の混合物を調製した後に、この混合物に凝集剤を加えてもよい。任意の適切な凝集剤を利用してトナーを作成してもよい。適切な凝集剤としては、例えば、二価カチオン材料または多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。凝集剤は、例えば、ポリハロゲン化アルミニウム、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)であってもよい。
【0069】
有機カチオン系凝集剤の適切な例としては、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0070】
また、他の適切な凝集剤としては、限定されないが、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシドが挙げられる。
【0071】
凝集剤を0.1〜10重量%の量で混合物に加え、これを利用してトナーを作成してもよい。
【0072】
所定の望ましい粒径が得られるまで、粒子を凝集させてもよい。成長プロセス中にサンプルを採取し、平均粒径を分析してもよい。高温を維持するか、または、例えば、40℃から100℃までゆっくりと温度を上げ、撹拌を維持しつつ、混合物をこの温度で0.5時間〜6時間維持することによって、凝集を進め、凝集粒子を得てもよい。所定の望ましい粒径に達したら、次に成長プロセスを止める。
【0073】
成長および成型は、凝集が融着とは別に起こるような条件で行われてもよい。別個の凝集段階および融着段階では、凝集プロセスは、剪断条件下、高温、例えば、約40℃〜約90℃で行われてもよく、この温度は、トナー粒子を作成するために利用される樹脂のガラス転移点よりも低い温度であってもよい。
【0074】
トナー粒子の望ましい最終粒径に到達したら、塩基を用いて混合物のpHを約3〜約10の値になるまで調節してもよい。pHを調節することによって、トナーの成長を凍結させる(すなわち、止める)。
【0075】
凝集した後で融着する前に、凝集粒子にシェルを塗布してもよい。コア樹脂を作成するのに適した上述の任意の樹脂をシェルとして利用してもよい。
【0076】
凝集粒子の上でのシェルの形成は、30℃〜80℃の温度になるまで加熱しながら行ってもよい。
【0077】
望ましい粒径になるまで凝集させ、任意要素の任意のシェルを塗布した後、次いで、粒子を望ましい最終形状になるまで融着させてもよく、融着は、混合物を、約45℃〜約100℃(この温度は、トナー粒子を作成するために利用される樹脂のガラス転移点であってもよく、ガラス転移点より高い温度であってもよい)まで加熱し、および/または、撹拌を例えば毎分約100回転(rpm)〜約1000rpmまで遅くすることによって達成されてもよい。融合した粒子は、望ましい形状が得られるまで、形状因子または真円度を測定してもよい。
【0078】
凝集を0.01〜9時間かけて行ってもよい。
【0079】
凝集および/または融着の後、混合物を、室温(例えば、約20℃〜約25℃)まで冷却してもよい。冷却は、所望な場合、すばやく行ってもよいし、ゆっくり行ってもよい。冷却した後、トナー粒子を、場合により、水で洗浄し、次いで乾燥させてもよい。
【0080】
また、トナー粒子は、所望な場合、または必要な場合、他の任意要素の添加剤も含んでいてもよい。トナーは、正電荷または負電荷の制御剤を、トナーの約0.1〜約10wt%の量で含んでいてもよい。適切な電荷制御剤としては、四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0081】
また、流動補助添加剤を含む配合の後に、トナー粒子に外部添加剤粒子をブレンドしてもよく、この場合、添加剤は、トナー粒子表面に存在していてもよい。これらの添加剤の例としては、金属酸化物、コロイド状シリカおよびアモルファスシリカ、金属塩および脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0082】
これらの外部添加剤は、それぞれ、トナーの0.1重量%〜5重量%の量で存在していてもよい。
【0083】
実施形態では、コアおよび/またはシェルを有する乾燥トナー粒子は、外部表面添加剤を除き、以下の1つ以上の特徴を有していてもよい。
(1)トナー粒子の体積および直径の差について、体積平均径(「体積平均粒径」とも呼ばれる)を測定した。トナー粒子は、体積平均径が約3〜約25μm、いくつかの実施形態では、約4〜約15μm、他の実施形態では、約5〜約12μmである。
(2)数平均幾何粒度分布(GSDn)および/または体積平均幾何粒度分布(GSDv):実施形態では、上の(1)に記載のトナー粒子は、非常に狭い粒径分布を有していてもよく、下側の数比GSDが約1.15〜約1.38、他の実施形態では、約1.31未満である。本開示のトナー粒子は、上側GSDが体積で約1.20〜約3.20、他の実施形態では、約1.26〜約3.11の粒径を有していてもよい。体積平均粒子径D50v、GSDv、GSDnは、Beckman Coulter Multisizer 3のような測定装置を用い、製造業者の指示にしたがって操作して測定されてもよい。代表的なサンプリングは、以下のように行われてもよい。少量のトナーサンプル(約1グラム)を得て、25μmのふるいで濾過し、次いで、等張性溶液に入れて濃度を約10%にし、次いで、このサンプルをBeckman Coulter Multisizer 3で操作する。
(3)形状因子SF1aが、約105〜約170、いくつかの実施形態では、約110〜約160である(が、これらの範囲からはずれた値が得られてもよい)。走査型電子顕微鏡法(SEM)を用い、SEMおよび画像分析(IA)によってトナーの形状因子の分析を決定してもよい。平均的な粒子の形状は、以下の形状因子(SF1a)の式:SF1a=100πd/(4A)を使用することによって定量化され、式中、Aは、粒子の面積であり、dは、主要な軸である。完全に円形または球形の粒子は、形状因子がちょうど100である。粒子の形状が、表面積が大きくなるような不規則な形状または細長い形状になるにつれて、形状因子SF1aは大きくなる。
(4)真円度が、約0.92〜約0.99、他の実施形態では、約0.94〜約0.975。粒子の真円度を測定するために用いられる装置は、製造業者の指示にしたがって、Sysmex製のFPIA−2100であってもよい。
【0084】
トナー粒子は、重量平均分子量(Mw)が17,000〜60,000ダルトン、数平均分子量(Mn)が9,000〜18,000ダルトン、MWD(トナー粒子のMnに対するMwの比、ポリマーの多分散性または幅の測定値である)が2.1〜10である。シアントナーおよびイエロートナーの場合、トナー粒子は、いくつかの実施形態では、重量平均分子量(Mw)が22,000〜38,000ダルトン、数平均分子量(Mn)が9,000〜13,000ダルトン、MWDが2.2〜10を示していてもよい。黒色およびマゼンタの場合、トナー粒子は、いくつかの実施形態では、重量平均分子量(Mw)が22,000〜38,000ダルトン、数平均分子量(Mn)が9,000〜13,000ダルトン、MWDが2.2〜10を示していてもよい。
【0085】
トナーは、ラテックス樹脂の分子量と、乳化凝集手順後に得られるトナー粒子の分子量との間に特定の関係を有していてもよい。樹脂は、処理中に架橋反応を受け、架橋度は、プロセス中に制御することができる。この関係は、樹脂の分子量のピーク値(Mp)が、Mwの最高ピークをあらわすときに最もよい関係となるだろう。樹脂は、分子量ピーク(Mp)が22,000〜30,000ダルトンであってもよい。また、この樹脂から調製したトナー粒子は、23,000〜32,000と高い分子量ピークを示し、このことは、この分子量ピークが、ワックスのような別の要素ではなく、樹脂の性質によるものであることを示している。
【0086】
本開示にしたがって製造されるトナーは、極端な相対湿度(RH)条件にさらされた場合にも、優れた帯電特性を有しているだろう。低湿度ゾーン(Cゾーン)は、12℃/RH15%であってもよく、一方、高湿度ゾーン(Aゾーン)は、28℃/RH85%であってもよい。本開示のトナーは、元のトナーの電荷質量比(Q/M)が−2μC/g〜−100μC/g、実施形態では、−5μC/g〜−90μC/gであってもよく、表面添加剤をブレンドした後の最終的なトナーの電荷は、−8μC/g〜−85 μC/g、実施形態では、−15μC/g〜−80μC/gであってもよい。
【0087】
トナー粒子を現像剤組成物に配合してもよい。トナー粒子をキャリア粒子と混合し、2成分現像剤組成物を得てもよい。キャリア粒子を種々の適切な組み合わせでトナー粒子と混合してもよい。現像剤中のトナーの濃度は、現像剤の1重量%〜25重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、トナーの濃度は、キャリアの90重量%〜98重量%であってもよい(が、これらの範囲から外れた値を用いてもよい)。
【0088】
本開示にしたがって調製したトナー組成物と混合するために選択可能なキャリア粒子の具体例としては、トナー粒子と反対の極性を有する電荷を摩擦電気から得ることが可能な粒子が挙げられる。したがって、一実施形態では、キャリア粒子は、正に帯電したトナー粒子がキャリア粒子に付着し、キャリア粒子を取り囲むように、負の極性のものを選択してもよい。このようなキャリア粒子の具体例としては、顆粒状ジルコン、顆粒状ケイ素、ガラス、二酸化ケイ素、鉄、鉄アロイ、鋼鉄、ニッケル、鉄フェライトが挙げられる。
【0089】
選択したキャリア粒子を、コーティングとともに、またはコーティングを用いずに使用することができる。実施形態では、キャリア粒子は、コアと、その上にコーティングを備えていてもよく、コーティングは、帯電列に近い位置にはないポリマーの混合物から得られてもよい。コーティングとしては、ポリオレフィン、フルオロポリマー、スチレンポリマー、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、アクリルおよびメタクリルのコポリマーと、フルオロポリマーとのターポリマー、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミンおよび/またはシランとのターポリマーが挙げられる。ポリフッ化ビニリデンおよび/またはポリメタクリル酸メチルを含むコーティングは、例えば、重量平均分子量が300,000〜350,000であってもよく、ポリフッ化ビニリデンおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)を、30重量%〜70重量%の比率で混合してもよい。コーティングは、コーティング重量が、キャリアの0.1重量%〜5重量%であってもよい。
【0090】
得られるコポリマーが適切な粒径のままであるなら、PMMAを、場合により、任意の望ましいコモノマーと共重合させてもよい。適切なコモノマーとしては、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミン、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレートを挙げることができる。キャリア粒子は、コーティングされるキャリア粒子の重量を基準として、キャリアコアに対し、機械的な衝撃および/または静電引力によって接着するまで、キャリアコアとポリマーとを、約0.05〜約10重量%の量で混合することによって調製されてもよい。
【0091】
種々の有効で適切な手段、例えば、カスケードロールによる混合、タンブリング、粉砕、振とう、静電粉末噴霧、流動床、静電ディスク処理、静電カーテン処理、これらの組み合わせなどを用い、キャリアコア粒子の表面にポリマーを塗布してもよい。次いで、キャリアコア粒子およびポリマーの混合物を加熱し、ポリマーを溶融し、融合させ、キャリアコア粒子にしてもよい。次いで、コーティングされたキャリア粒子を冷却し、その後、望ましい粒径になるように分級してもよい。
【0092】
適切なキャリアは、鋼鉄コアを含んでいてもよく、例えば、米国特許第5,236,629号および第5,330,874号に記載のプロセスを用い、粒径が約25〜約100μmで、約0.5%〜約10重量%の導電性ポリマー混合物(例えば、アクリル酸メチルおよびカーボンブラックを含む)でコーティングされていてもよい。
【0093】
キャリア粒子を、種々の適切な組み合わせで、例えば、トナー組成物の約1重量%〜約20重量%になるようにトナー粒子と混合してもよい。
【0094】
電子写真式画像形成方法に本開示のトナーを利用してもよい。
【実施例】
【0095】
(実施例1)
1リットルのParr反応器にメカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、これに219グラムのD−イソソルビド(IS)(1500mmole、0.50当量(eq.))、142グラムのコハク酸(SA)(1200mmole、0.40eq.)、91グラムのケルセチン(300mmole、0.10eq.)を加えた後、0.452グラムのブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販)を加えた。この反応器内を窒素で覆い、(固体が溶解したら)撹拌速度を毎分230回転(rpm)に維持しつつ、反応器の温度を200℃までゆっくりと上げた。収集フラスコに水を連続的に集めつつ、反応混合物を窒素下で一晩維持した。約31.4mlの水が留去された。
【0096】
次の日に、温度を215℃まで上げ、低減圧状態(>10Torr)を90分間適用した。次いで、減圧度を高減圧状態(<0.1Torr)に変えた。この間に、もっと多くの水(10ml)が留去され、低分子量ポリマーが生成した。1日以上、3時間間隔で高減圧状態を適用した。
【0097】
Dropping Point Cell(Mettler FP83HT dropping point cellを備えたMettler FP90セントラルプロセッサ)によって測定した場合に、軟化点が100℃に達したら、温度を200℃まで下げ、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON)製の皿に取り出した。ポリマー樹脂を室温まで冷却した後、ポリマーをチゼルで小さな塊に分解し、少量をM20 IKA Werkeミルで粉砕した。粉砕したポリマーサンプルを、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、示差走査熱量測定(DSC)によって分析し、ポリマーサンプルの酸値(または「中和価」または「酸価」または「酸性度」)は、既知の量のポリマーサンプルを有機溶媒に溶解し、既知の濃度の水酸化カリウム(KOH)溶液を用い、色指示薬としておよびフェノールフタレインを用いて滴定することによって得られた。酸価は、化学基質1gを中和するのに必要な、ミリグラム単位での水酸化カリウムの重量である。ポリエステル樹脂の場合、酸価は、ポリエステル分子中のカルボン酸基の量の測定値である。
【0098】
このGPCデータは、ガラス転移開始温度(Tg(on))が46.7℃の低分子量ポリマーが作られたことを示していた。ポリマーの物理的属性は、黄色から褐色の色を含んでおり、延性という観点で非常に堅く/脆かった。
【0099】
(実施例2)
1リットルのParr反応器にメカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、これに46グラムのルチン水和物(ケルセチン−3−ルチノシド水和物)(0.075mole、0.02当量(eq.))、185グラムの1,2−プロピレングリコール(1,2−PG)(2.438mole、0.65eq.、過剰量として0.20mole(57グラム))、110グラムのジメチルナフタレン−2,6−ジカルボキシレート(NDC)(0.45mole、0.12eq.)、228グラムのロジンフマレート(0.563mole、0.15eq.)、93グラムのコハク酸(0.788mole、0.21eq.)を加えた後、0.626グラムのブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販)、1.05グラムの有機チタン触媒(VERTEC(商標) AC422、Johnson Matthey Catalystsから市販)を加えた。この反応器内を窒素で覆い、(固体が溶解したら)撹拌速度を毎分230回転(rpm)に維持しつつ、反応器の温度を200℃までゆっくりと上げた。収集フラスコに水を連続的に集めつつ、反応混合物を窒素下で一晩維持した。約79.9mlの水が留去された。
【0100】
次の日に、温度を215℃まで上げ、低減圧状態(>10Torr)を10分間適用した。次いで、減圧度を高減圧状態(<0.1Torr)に変えた。この間に、水(10ml)が留去され、低分子量ポリマーが生成した。6.5時間、高減圧状態を適用した。反応混合物を窒素下、200℃で一晩維持した。
【0101】
次の日に、ポリマーの軟化点が100.8℃であると測定され、この時点で、温度を185℃まで下げ、76グラムのロジンフマレート(0.188mole、0.05eq.)を重合反応物に加え、この温度で30分間撹拌した。次いで、反応器の温度を215℃まで上げ、再び、高減圧状態を5.5時間適用した。この間に、蒸留した水25mlが集められた。
【0102】
次いで、温度を200℃まで下げ、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON)製の皿に取り出した。ポリマー樹脂を室温まで冷却した後、ポリマーをチゼルで小さな塊に分解し、少量をM20 IKA Werkeミルで粉砕した。ポリマーが架橋しているため、軟化点は、150℃を超えていると測定された。粉砕したポリマーサンプルは、この樹脂がテトラヒドロフランに溶解しないため、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって適切に分析することはできなかった。示差走査熱量測定(DSC)データは得ることができたが、酸価は、ポリマーが一般的な実験溶媒にはどれにも溶解しなかったため、測定することができなかった。ポリマーは架橋しており、末端の酸官能基のほとんどが消費されているため、予想される酸価は非常に低かった。(酸価は、化学基質1gを中和するのに必要な、ミリグラム単位での水酸化カリウムの重量である。ポリエステル樹脂の場合、酸価は、ポリエステル分子中のカルボン酸基の量の測定値である)。
【0103】
このGPCデータは、ガラス転移開始温度(Tg(on))が41.1℃の低分子量ポリマーが作られたことを示していた。ポリマーの物理的属性は、黄色から褐色の色を含んでおり、延性という観点で非常に堅く/脆かった。
【0104】
以下の表1は、実施例1および2のケルセチン系ポリマーの関連する全分析データを示す。比較のために、上述の一般的な反応スキームにしたがって、コハク酸(0.45eq.)、イソソルビド(0.50eq.)、アゼライン酸(0.05eq.)を含むポリマーを製造し、このポリマーを試験し、データを以下の表1に同様に記載した。(比較の樹脂は、ケルセチンを含んでおらず、100%生物由来でもあったが、ケルセチンを有する樹脂と同等の色向上性を示さなかった。)
【表1】

【0105】
International Commission on Illuminationによって特定されるようなCIE L(CIELAB)色空間を利用するポリマーのa値およびb値も得た。実施例1および2の樹脂を普通紙の上に薄膜として溶融させ、GretagMacbeth SPECTROLINO比色計によって、光源D50を用い、視野2°で測定した。ポリマーのa値は、黄色/赤色四分円の範囲内にあり、XEROX Corporationから市販されているトナーに匹敵するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物由来のポリエステル樹脂であって、
ジカルボン酸から誘導される少なくとも1つのモノマーと、
フラボノール類、フラボン類、イソフラボン類、アントシアニン類、アントシアニジン類、C−グリコシルフラボノイド類、これらの組み合わせからなる群から選択されるフラボノイドを含む少なくとも1つのモノマーと、を含み、
前記フラボノイドが前記ポリエステル樹脂に色を付与する、生物由来のポリエステル樹脂。
【請求項2】
トナー、インク、玩具、塗料、繊維、機械の部品、成型した家庭用品、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の生物由来の樹脂を含む物品。
【請求項3】
ジカルボン酸から誘導される少なくとも1つのモノマーを、フラボノール類、フラボン類、イソフラボン類、アントシアニン類、アントシアニジン類、C−グリコシルフラボノイド類、これらの組み合わせからなる群から選択されるフラボノイドを含む少なくとも1つの着色したモノマーと組み合わせて含む生物由来のポリエステル樹脂と、
場合により、結晶性ポリエステル樹脂、アモルファスポリエステル樹脂、着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分と、を含む、トナー。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が、アゼライン酸、コハク酸、シクロヘキサン二酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー二酸、テレフタル酸、グルタミン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載のトナー。
【請求項5】
前記フラボノイドが、ケルセチン、ミリセチン、アザレアチン、フィセチン、ガランギン、ゴッシペチン、ケンペリド、ケンペロール、イソラムネチン、モリン、ラムナジン、ラムネチン、エピカテキン、パチポダール(pachypodal)、ラリシトリン、シリンゲチン、アピゲニン、ルテオリン、アカセチン、カリコシン、オーランチニジン、エウロピニジン、ルテオリニジン、ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン、ペツニジン、ペオニジン、マルビジン、ロシニジン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載のトナー。
【請求項6】
前記フラボノイドが、O−グリコシド類、モノ−C−グリコシルフラボノイド類、ジ−C−グリコシルフラボイド類、O−グリコシル−C−グリコシルフラボノイド類、O−アシル−C−グリコシルフラボノイド類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載のトナー。
【請求項7】
前記生物由来の樹脂が、ケルセチンとコハク酸を含み、さらに、イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、プロピレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される要素を含む、請求項3に記載のトナー。
【請求項8】
前記トナーが、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂と、前記生物由来のアモルファス樹脂とを含む、請求項3に記載のトナー。
【請求項9】
前記トナーの体積平均径が、3〜25μmであり、GSD数が1.15〜1.38であり、真円度が0.92〜0.99である、請求項3に記載のトナー。
【請求項10】
コハク酸およびケルセチンを含む生物由来のポリエステル樹脂と、
少なくとも1つの結晶性樹脂と、
場合により、アモルファスポリエステル樹脂、着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分と、を含む、トナー。

【公開番号】特開2012−167274(P2012−167274A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22505(P2012−22505)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】