説明

樹脂組成物および注型成形方法

【課題】注型成形方法に好適な、瞬時に硬化可能で、適度な弾性率と優れた伸び性を示し、さらに耐加水分解性に優れた光硬化性の樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(1)(A)分子内にポリエステル骨格を有し、分子量が5,000〜100,000の範囲にあるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)単官能(メタ)アクリレート、さらに、(C)ヒンダードアミン化合物を含有し、(A)成分と(B)成分の配合比が、質量比で5:95〜95:5の範囲であり、(C)成分が(A)成分と(B)成分の合量100質量部に対して、0.01〜10質量部含有する樹脂組成物であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、可視光線等のエネルギー線照射(以下、単に「光照射」ともいう。)により硬化可能な光硬化性の樹脂組成物および硬化体に関し、詳しくは、光照射により瞬時に硬化可能で、適度な弾性率と優れた伸び性を示し、さらに耐加水分解性に優れた光硬化性の樹脂組成物およびその硬化体に関し、更に、該樹脂組成物をエネルギー線の透過可能な材料で作成された型中に注入し、該型の外側より紫外線、可視光線等のエネルギー線照射することにより硬化させ、成形体を形成することを特徴とする注型成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に柔軟性、伸縮性、弾性といった、所謂ゴム特性を与える組成物は、エラストマーと呼ばれ、柔軟性、伸び性が他の高分子素材と比較し抜きんでて優れており、さらに適度な弾性率を示すことから、タイヤ等の自動車部材、土木、建築等の構造物用シール部材、Oリング等のパッキング部材、スピーカー等の音響用部材、携帯電話用キーシート等のシート部材、防振材料、各種機構部材等として適用されている。
【0003】
エラストマー(以下、記号Rで示す)としては、天然ゴム、変性天然ゴム、グラフト天然ゴム、環化天然ゴム、塩素化天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、アクリロニトリル−塩化ビニルゴム、アクリロニトリル−EPDMゴムのブレンド、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、メチルシリコーンゴム、ビニル−メチルシリコーンゴム、フェニル−メチルシリコーンゴム、フッ化シリコーンゴム等のゴム材料、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー材料が知られている。
【0004】
一般にエラストマー(R)の成形体を得る方法としては、硬化剤および他の添加剤を配合したエラストマー原料を充分に混練する混練り工程、そして、練り生地を真空成形法、圧空成形法、上型下型を一組とする成形型(以下、上下型という)による加熱加圧成形法、射出成形法等により成型し、加熱、加圧により加硫または硬化させる硬化工程(加硫工程)を経て、目的の成形体が得られている。
【0005】
しかしながら、前記の真空成形法、圧空成形法、上下型による加熱加圧成形法などでは、材料の融点付近まで金型温度を上げる必要があり、加熱のために膨大なエネルギーを必要とする。また、金型を冷却して取り出す必要があるので、成形サイクルに長時間費やすことになる。
【0006】
射出成形法では、溶融した樹脂が温度差のある金型に接触した直後に冷却され流動性が極端に低下するので、薄肉の成型体を得ることが困難であり、加熱、射出、保圧等の工程上、設備も高額となる。また、熱可塑性材料を融点近くまで加熱するので、加熱エネルギーが膨大である。
【0007】
成形材料は、前記の真空成形法、圧空成形法、上下型による加熱加圧成形法などでは、目的の部品寸法より略大きな平面材料を成形した後、部品部分を切り出して使用することとなるため、廃棄物が多く発生し、環境的、経済的に好ましくない。
【0008】
真空成形法、圧空成形法、上下型による加熱成形の上記構成材料は、一般的には均一な厚さの材料であるため、成形後は各部分で同じ厚さとなり、同一材料からは各部分の厚さを変えることが困難である。
【0009】
加えて、工業的に製造されている厚さは限られており、それ以外の厚さの材料を得ることは、通常困難である。成形時の延伸などの処理により、厚さを変える方法も提案されているが、成形後の内部応力歪みが大きくなる等の問題が発生する。
【0010】
上記の様な成形法の課題を解決する手段として、特許文献1〜3に記載されているようなエネルギー線透過可能な材料で作成した型中にエネルギー線硬化性液状物質を注入または充填し、紫外線、可視光線等のエネルギー線照射することにより硬化させ、成形体を形成する光硬化注型成形法が挙げられる。
【特許文献1】特許第3140478号公報
【特許文献2】特許第3197907号公報
【特許文献3】特開2004−357020号公報
【0011】
特に特許文献3に記載の成型法は、上型と下型を用いることにより、型を破壊することなく成形体を得ることができ、同じ型で繰り返し成形体を製造することができる。
【0012】
より詳しくは、上型、下型よりなる一組の成形型の少なくともいずれか一方を光が透過する材料にて形成し、かつ光照射により硬化可能な樹脂をセットして型を閉じ、光を透過する型の外側から光を照射し、樹脂を硬化させて目的形状の硬化体を得る方法であり、この方法により、少ないエネルギーおよび少ない工数で、任意の厚みの成形体を容易かつ安価に製造することが可能となる。
【0013】
しかしながら、上記の光硬化注型成形法に適する成形性を有し、得られる硬化体が従来のエラストマーに要求される適度な弾性率、且つ伸び性を満たす樹脂組成物は知られていない。光硬化可能なエラストマーまたはゴム弾性を示す樹脂組成物として、特許文献4〜6が開示されているが、特許文献4および特許文献5に記載のシーリング材用樹脂組成物、また、特許文献6に記載の光学的立体造形用樹脂組成物は、上記の光硬化注型成形に要求される成形性とエラストマーに要求される適度な弾性率と伸び性とを満足するものではなかった。
【特許文献4】特表2002−501109号公報
【特許文献5】特表2003−505525号公報
【特許文献6】特開2000−290328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、公知技術の事情に鑑みてなされたもので、紫外線、可視光線等の光照射により硬化可能な光硬化性の樹脂組成物および硬化体に関し、詳しくは、光照射により瞬時に硬化可能で、適度な弾性率と優れた伸び性を示し、さらに耐加水分解性に優れた光硬化性の樹脂組成物およびその硬化体を提供し、更に、該樹脂組成物をエネルギー線の透過可能な材料で作成された型中に注入し、該型の外側より紫外線、可視光線等のエネルギー線照射することにより硬化させ、成形体を形成することを特徴とする注型成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)(A)分子内に下記化式〔1〕で表されるポリエステル骨格を有し、分子量が5,000〜100,000の範囲にあるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基もしくはポリアルコキシ基であり、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、または、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、又はフルオレン環から選ばれる芳香環を含む基であり、mは重合度を表す。)
(B)単官能(メタ)アクリレート、
さらに、
(C)下記化式〔2〕で表される基を有するヒンダードアミン化合物
【化2】


を含有し、(A)成分と(B)成分の配合比が、質量比で5:95〜95:5の範囲であり、(C)成分が(A)成分と(B)成分の合量100質量部に対して、0.01〜10質量部含有する樹脂組成物であることを特徴とする樹脂組成物である。
【0016】
(2)(B)単官能(メタ)アクリレートが下記化式〔3〕または〔4〕で表される単官能(メタ)アクリレートであることを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物である。
【化3】


(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜22である直鎖もしくは分岐アルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、又はアリル基である。)
【化4】


(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜4である直鎖もしくは分岐アルキル基、Rは、炭素数1〜4である直鎖もしくは分岐アルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、又はアリル基であり、nは1〜12の整数である。)
【0017】
(3)(D)成分として、光重合開始剤を含有することを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物である。
【0018】
(4)(D)光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物であることを特徴する(3)に記載の樹脂組成物である。
【0019】
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる硬化体である。
【0020】
(6)引張弾性率が1〜100MPaであり、しかも引張破壊伸びが200%以上である(5)の硬化体である。
【0021】
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物を、エネルギー線の透過可能な材料で作成された型中に注入し、該型の外側よりエネルギー線照射することにより硬化させ、成形体を形成することを特徴とする注型成形方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂組成物は、紫外線または可視光線等の光照射により極めて短時間に硬化し、その硬化体は適度な弾性率と優れた伸び性を示し、さらに耐加水分解性に優れるという特性を有しているので、タイヤ等の自動車部材、土木、建築等の構造物用シール部材、Oリング等のパッキング部材、スピーカー等の音響用、携帯電話用キーシート等のシート部材、部材、防振材料、各種機構部材等に好適に使用できる。また、本発明の樹脂組成物は、土木、建築等の構造用シーリング剤、金属、マグネット、セラミックス、ガラス、プラスチック用の接着剤にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書において用いられる「分子量」なる用語は、特に説明がない場合、重量平均分子量を意味する。
【0024】
本明細書において用いられる「Tg」なる用語は、特に説明がない場合、ガラス転移温度を意味する。
【0025】
本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、特に説明がない場合、直鎖、分岐および環状飽和炭化水素基を意味する。
【0026】
本明細書において用いられる「粘度」なる用語は、特に説明がない場合「絶対粘度」を意味し、流速勾配とそれに対して発生する剪断応力との比例係数として定義され、一般的にはB型粘度計、E型粘度計、レオメーター等の粘度計により測定でき、本発明に於いてはE型粘度計で測定した値をもって示す。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、光照射を受けて硬化体を形成する光硬化性樹脂組成物である。ここでいう光とは、紫外線、可視光線等に代表されるエネルギー線をいう。
【0028】
本発明の目的を達成するにあたり、樹脂組成物としては、特定な組成のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーとを含有する。
【0029】
本発明の樹脂組成物に用いられるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、分子内に下記化式〔5〕で表されるポリエステル骨格を有するポリエステルポリオール系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを単官能(メタ)アクリレートと特定なヒンダードアミン化合物と共に用いることで、速硬化、且つ、適度な弾性率と優れた伸び性を示す硬化体を得ることができ、さらに低硬化収縮率、耐熱性、耐薬品性、耐UV性に優れた硬化体を得ることができるため好ましい。
【化5】

【0030】
本発明の樹脂組成物に用いられるポリエステルポリオール系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内に下記化式〔6〕で表されるポリエステル骨格を有するポリエステルポリオール化合物(以後、「X」で表す)と有機ポリイソシアネート化合物(以後、「Y」で表す)とヒドロキシ(メタ)アクリレート(以後、「Z」で表す)とを反応させてなる、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーをいう。
【化6】


(式中、Rは炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基もしくはポリアルコキシ基であり、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、または、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、又はフルオレン環から選ばれる芳香環を含む基であり、mは重合度を表す。)
【0031】
ポリエステルポリオール化合物(X)の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ブチルエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレングリコール等から選ばれる2価以上のアルコールを1種以上と、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のポリカルボン酸、またはその酸無水物1種以上との縮合物であるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0032】
ポリエステルポリオールの分子量は、200〜100,000であることが好ましく、より好ましくは500〜50,000、更に好ましくは1,000〜10,000である。分子量が200以上ならば好適な伸び性を得ることができるし、100,000以内であれば適度な弾性率が得られ、また、硬化性が低下することもなく、好ましい。
【0033】
有機ポリイソシアネート化合物(Y)としては、芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられ、具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート(H−MDI)、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(クルードMDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(変性MDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)等のポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの三量体化合物、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等が好適に用いられ、中でも水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が耐光性に優れるため好ましい。ポリイソシアネート化合物(Y)の分子量は500以下が好ましい。500以下であればジオールとの反応性が低下することもない。
【0034】
ヒドロキシ(メタ)アクリレート(Z)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、4−ブチルヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおける、分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、分子の末端又は側鎖に1個以上6個以下、より好ましくは2個以上4個以下の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。(メタ)アクリロイル基がない場合、前記(B)成分である単官能(メタ)アクリレートと共重合できず、6個より多い場合は、得られる硬化体が硬くなりすぎて、優れた伸び性が得られないことがある。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの分子量については5,000以上100,000以下であることが好ましく、より好ましくは10,000以上80,000以下である。分子量が5,000以上ならば、得られる硬化体が硬くなりすぎたり、硬化収縮率が高くなったりすることもなく優れた伸び性を示し、100,000以下であれば、硬化性が悪くなることもなく好適な弾性率を示す。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを単独で重合した硬化体のTgは0℃以下であることが好ましい。さらに好ましくはTgが−10℃以下、特に好ましくは−20℃以下である。Tgが0℃以下であれば、得られる硬化体は優れた伸び性を示す。尚、本発明の樹脂組成物のTgについては、例えばDSCや動的粘弾性等の公知の方法で測定される。
【0038】
前記(B)成分である単官能(メタ)アクリレートは、分子内に1つの(メタ)アクリロイル基を含有するものであれば特に限定されないが、下記式〔7〕または〔8〕で表される単官能(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物が適度な弾性率、優れた伸び性の硬化体を得ることができるため特に好ましい。
【化7】


(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜22である直鎖もしくは分岐アルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、又はアリル基である。)
【化8】


(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜4である直鎖もしくは分岐アルキル基、Rは、炭素数1〜4である直鎖もしくは分岐アルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、又はアリル基であり、nは1〜12の整数である。)
【0039】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピオキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレン(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が例示できる。尚、アクリレートとメタクリレートとではメタクリレートの方がより好適な弾性率と伸び性を示す。
【0040】
(B)単官能(メタ)アクリレートは、当該ホモポリマーのTgが20℃以上の単官能(メタ)アクリレートを1種以上含有することが好ましい。さらに好ましくはTgが50℃以上、特に好ましくは80℃以上である。Tgが20℃以上であれば、得られる硬化体は適度な弾性率を示し、硬化性が悪くなったりすることもない。
【0041】
本発明の樹脂組成物において、(A)成分と(B)成分の配合比が、質量比で5:95〜95:5の範囲、好ましくは10:90〜80:20の範囲、特に好ましくは20:80〜70:30の範囲にあるとき、光照射により得られる硬化体は、速硬化、且つ適度な弾性率と優れた伸び性を示す樹脂組成物を得ることができる。
【0042】
本発明者は、ポリエステルポリオール系ウレタン(メタ)アクリレートを上記配合比で含有するとき、分子内にエステル結合を多く含むため、高温多湿という条件下で使用した場合に、エステル結合の加水分解による分子量の低下に伴う機械的特性が十分でないことを見いだし、この改良を行うべくいろいろ検討を重ねた結果、上記(A)成分と(B)成分を含有する樹脂組成物に加えて、(C)下記化式〔9〕で表される基を有するヒンダードアミン化合物を含有させることにより、光照射により極めて短時間に硬化し、その硬化体が適度な弾性率と優れた伸び性を示し、さらに耐加水分解性に優れる樹脂組成物を得るという本発明の目的を達成するに至った。
【化9】

【0043】
(C)成分であるヒンダートアミン化合物は、前記化式〔9〕で表される基を有する化合物であり、具体例としては、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、
4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−(メタ)アクリレート、
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−(メタ)アクリレート、
1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチル〕ブチルマロネート、
デカンニ酸ビス〔2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル〕エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロキシペルオキシドとオクタンの反応生成物、
N,N′,N″,N″′−テトラキス−〔4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、
ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、
ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、
2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ−〔5・1・11・2〕−ヘネイコサン−21−オン、
β−アラニン,N,−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、
N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン−21−オン、
2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−〔5,1,11,2〕−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、
プロパンニ酸,〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、
1,3−ベンゼンジカルボキシアミド,N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルおよびトリデシルの混合物のテトラエステル、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルおよびトリデシルの混合物のテトラエステル、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよびβ,β,β‘,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン−3,9−ジエタノールとの反応物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β‘,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン−3,9−ジエタノールとの反応物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ポリマー2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールと3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパナール、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルエステル、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステル1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよびβ,β,β‘,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン−3,9−ジエタノール、
等が挙げられる。
【0044】
本発明の樹脂組成物における(C)成分の含有割合は、(A)成分と(B)成分の合量100質量部に対して、0.01〜10質量部含有する組成とするとき、得られる硬化体は、特に優れた耐加水分解性を有する。0.01質量部以上であれば優れた耐加水分解性を付与でき、10質量部以下であれば硬化性を低下させることもない。
【0045】
本発明の樹脂組成物に於いては、(D)成分である光重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤としてはベンゾイン系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、チオキサントン系、メタロセン系、キノン系、ボロン系等の紫外線重合開始剤や可視光重合開始剤が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2-ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられるが、中でも、可視光で硬化可能で特に反応性に優れている2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましい。
【0047】
さらに本発明の樹脂組成物において、優れた振動疲労耐久性を付与するためにゴム組成物を配合することができる。
【0048】
ゴム組成物としては、前記のエラストマー(R)が例示できるが、その中でも樹脂組成物への相溶性の面から特に好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル化合物、ビニル系化合物、及びオレフィン系炭化水素化合物からなる群から選ばれる単量体からなる共重合体であるゴム組成物が好ましい。
【0049】
本発明に於いては、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲において、顔料(チタン白、シアニンブルー、ウォッチングレッド、ベンガラ、カーボンブラック、アニリンブラック、マンガンブルー、鉄黒、ウルトラマリンブルー、ハンザレッド、クロームイエロー、クロームグリーン等)、無機充填剤(炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、硫酸バリウム、リトポン、石コウ、ステアリン酸亜鉛、パーライト、石英、石英ガラス、溶融シリカ、球状シリカ等のシリカ粉等や、球状アルミナ、破砕アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物類、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類や合金類、ダイヤモンド、カーボン等の炭素系材料等)、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂(ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの各種エラストマー樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体などのグラフト共重合体等)、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維等)、垂れ止め剤(水添ヒマシ油、微粒子無水硅酸等)、艶消し剤(微粉シリカ、パラフィンワックス等)、研削剤(ステアリン酸亜鉛等)を配合することも可能である。
【0050】
又、上記の成分以外にも、フェノール系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、熱重合開始剤、シランカップリング剤、密着性付与剤等を併用することも可能である。
【0051】
以上の様にして得られる本発明の樹脂組成物に、光等のエネルギー線を照射することで、短時間に硬化し、従来のエラストマー樹脂に要求される適度な弾性率と優れた伸び性を示す硬化体を得ることができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物の硬化体は、JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠して引張試験測定を実施したとき、引張弾性率が1〜100MPa、特に好ましくは3〜70MPaであり、しかも引張破壊伸びが200%以上であることを特徴とする。硬化体の引張弾性率が1MPa以上であれば、得られる硬化体が柔らかすぎて目的の形状を保持できないという問題を生じることもない。また、硬化体の引張弾性率が100MPa以下で、しかも引張破壊伸びが200%以上であれば、優れた振動疲労耐久性を得ることができる。
【0053】
また、本発明の樹脂組成物の硬化体を成形する場合、その手段は種々の方法を採用することができるが、特に次の2つの方法が好ましい。(1)上型、下型よりなる一組の成形型の少なくともいずれか一方を光等のエネルギー線が透過する材料にて形成し、硬化前の樹脂組成物を所定量配置する。次に上型と下型を圧着して、型閉じし、エネルギー線を透過する材料からなる型の外側からエネルギー線を照射し、樹脂を硬化させて目的の硬化体を得る方法、或いは、(2)上型、下型よりなる一組の成形型の少なくともいずれか一方をエネルギー線が透過する材料にて形成し、次に上型と下型を圧着して、型閉じし、次に型に予め形成しておいた注入口より、硬化前の樹脂組成物を所定量注入する。そして、エネルギー線を透過する材料からなる型の外側から光を照射し、樹脂を硬化させて目的の硬化体を得る方法。
【0054】
エネルギー線を透過する型に用いられる材料としては、例えば石英、石英ガラス、硼珪酸ガラス、ソーダガラス等のガラス材料、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、セルロース樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等の樹脂材料が例示できる。中でも透明性、耐久性に優れ、且つ安価に型を製造できることから、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂が特に好ましく、アクリル樹脂を使用することで本発明の樹脂組成物が示す優れた成形性を最大に発揮することができる。
【0055】
エネルギー線源としてはハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ等が挙げられる。
【0056】
各々放射波長、エネルギー分布が異なるため、上記エネルギー線源(以下、単に光源という。)は例えば光重合開始剤の反応波長などにより選択される。また、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0057】
上記光源は、直接照射、反射鏡等により集光照射、ファイバー等による集光照射をすることができ、低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0058】
また、上記の成形方法により本発明の樹脂組成物の硬化体を成形する場合、樹脂組成物の硬化収縮率は0%〜5%であることが好ましい。0%未満(硬化により膨張すること表す)であったり、5%を越えたりすると、型の寸法と硬化体の寸法に差が生じるため目的形状の硬化体が得られ難いためである。
【0059】
また、樹脂組成物の粘度は、25℃で100〜100,000mPa・s、特に好ましくは、3,000〜90,000mPa・sであることが好ましい。100mPa・s未満であると、型からの液漏れ等を起こし目的の形状の成型体が得られないことがあるし、100,000mPa・sを越えると、型内に充填しにくく、また、型を押し上げてしまう等して、目的の形状の硬化体が得られなくなることがあるためである。
【実施例】
【0060】
〈実施例1〜14、および比較例1〜3〉
表1〜2に示す種類の各成分を表中に示す組成で混合して光硬化性の樹脂組成物を調整した。尚、表1〜2に記載の各成分には以下の化合物を選択した。
【0061】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、下記を用いた。尚、下記に記載の分子量とは、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)(溶剤:テトラヒドロフラン(THF))で測定した、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(a1)ポリエステルポリオール系ウレタンアクリレート(1)(日本合成化学工業社製 「UV−3000B」分子量:18,000)
(a2)ポリエステルポリオール系ウレタンアクリレート(2)(根上工業社製「KHP−11」分子量:25,000)
(a3)ポリエステルポリオール系ウレタンアクリレート(3)(根上工業社製「KHP−17」分子量:40,000)
(a4)ポリエステルポリオール系ウレタンアクリレート(4)(根上工業社製「SD−7」分子量:3,500)
【0062】
(B)成分の単官能(メタ)アクリレートとしては、下記(b1)〜(b4)を用いた。
(b1)ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業社製「ファンクリルFA−513M」)
(b2)n−ブチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルNB」)
(b3)フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルPO」)
(b4)4−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルHOB」)
【0063】
(C)成分のヒンダートアミン化合物としては、下記(c1)〜(c8)を用いた。
(c1)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(三共ライフテック社製「サノールLS−770」)
(c2)ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート(三共ライフテック社製「サノールLS−765」)
(c3)1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−(メタ)アクリレート(三共ライフテック社製「サノールLS−3410」)
(c4)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル(アデカ社製「アデカスタブLA−52」)
(c5)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルおよびトリデシルの混合物のテトラエステル(アデカ社製「アデカスタブLA−62」)
(c6)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルおよびトリデシルの混合物のテトラエステル(アデカ社製「アデカスタブLA−67」)
(c7)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよびβ,β,β‘,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン−3,9−ジエタノールとの反応物(アデカ社製「アデカスタブLA−63P」)
(c8)2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−〔5,1,11,2〕−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル(クラリアントジャパン社製「ホスタビンN24」)
【0064】
(D)成分の光重合開始剤としては、
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「IRGACURE819」)を用いた。
【0065】
各種物性は、次のように測定した。
【0066】
〔光照射条件〕
光照射に際しては、無電極放電ランプ(Dバルブ)を搭載したフュージョン社製ベルトコンベアー式紫外線硬化装置を用い、樹脂組成物への積算照射量が4,000mJ/cm(365nm)となる条件にて硬化させた。
【0067】
〔硬化体試験片の調整〕
上型として200mm×200mm×5mm厚のアクリル樹脂板と、上型と同じ形状のアクリル樹脂板の片面の中央部に目的の形状の凹部を象った下型とからなる一組の成形型を作成し、硬化前の樹脂組成物を下型の凹部に必要量滴下した。次に上型を下型に被せて、圧着、型閉じし、上型の外側から前記の照射条件で光を照射し、樹脂を硬化させて目的の硬化体試験片を得た。
【0068】
〔樹脂引張試験〕
(1)初期
JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠し、2(1/2)号ダンベル形状(標点間距離12mm)で1mm厚の試験片を上記の条件で調整し、温度23℃、湿度50%の環境下で、引張速度50mm/minで測定した。引張破壊強さ、引張弾性率、引張破壊伸びの各値については、JIS K7113に準拠して求めた。
【0069】
(2)高温多湿試験
(1)と同様の条件で調整した試験片を、温度60℃、湿度90%の環境下に10日間暴露した。暴露後の試験片を(1)と同様の環境下で、引張速度50mm/minで測定し、樹脂物性保持率を(樹脂物性保持率(%))={(高温多湿暴露後の樹脂物性)/(初期の樹脂物性)}×100として計算した。
【0070】
得られた樹脂組成物の硬化体の樹脂引張試験及び高温多湿試験の結果をまとめて表1〜2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の樹脂組成物は、紫外線または可視光線等の光照射により瞬時に硬化し、その硬化体は適度な弾性率と優れた伸び性を示し、さらに耐加水分解性に優れるという特性を有しているので、タイヤ等の自動車部材、土木、建築等の構造物用シール部材、Oリング等のパッキング部材、スピーカー等の音響用、携帯電話用キーシート等のシート部材、部材、防振材料、各種機構部材等に好適に使用でき、また、本発明の樹脂組成物は、土木、建築等の構造用シーリング剤、金属、マグネット、セラミックス、ガラス、プラスチック用の接着剤にも適用可能であるため、産業上に非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に下記化式〔1〕で表されるポリエステル骨格を有し、分子量が5,000〜100,000の範囲にあるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基もしくはポリアルコキシ基であり、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、または、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、又はフルオレン環から選ばれる芳香環を含む基であり、mは重合度を表す。)
(B)単官能(メタ)アクリレート、
さらに、
(C)下記化式〔2〕で表される基を有するヒンダードアミン化合物
【化2】


を含有し、(A)成分と(B)成分の配合比が、質量比で5:95〜95:5の範囲であり、(C)成分が(A)成分と(B)成分の合量100質量部に対して、0.01〜10質量部含有する樹脂組成物。
【請求項2】
(B)単官能(メタ)アクリレートが下記化式〔3〕または〔4〕で表される単官能(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化3】


(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜22である直鎖もしくは分岐アルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、又はアリル基である。)
【化4】


(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜4である直鎖もしくは分岐アルキル基、Rは、炭素数1〜4である直鎖もしくは分岐アルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基により置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、又はアリル基であり、nは1〜12の整数である。)
【請求項3】
(D)成分として、光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(D)光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物であることを特徴する請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる硬化体。
【請求項6】
引張弾性率が1〜100MPaであり、しかも引張破壊伸びが200%以上であることを特徴とする請求項5に記載の硬化体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を、エネルギー線の透過可能な材料で作成された型中に注入し、該型の外側よりエネルギー線照射することにより硬化させ、成形体を形成することを特徴とする注型成形方法。

【公開番号】特開2008−88354(P2008−88354A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273132(P2006−273132)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】