説明

樹脂組成物

【課題】 高い弾性を有する乾燥皮膜を形成できる樹脂組成物の提供。
【解決手段】 セルロース繊維と天然及び/又は合成樹脂エマルジョンを含む樹脂組成物であって、前記セルロース繊維が、平均繊維径200nm以下のセルロース繊維を含み、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gである、樹脂組成物。接着剤、塗料として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い強度の乾燥皮膜を形成できる樹脂組成物と、それを含む接着剤等に利用できる皮膜形成剤、それから得られる皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース材料は、資源量が豊富で耐久性や強度等の点で優れた材料であり、長年、各種の用途に用いられてきた。近年は、優れたリサイクル性の点でも注目されている。
【0003】
特許文献1では、棒状粒子からなる結晶性セルロース微粉末と分散剤を用いた衝撃強度や機械的強度の高い熱可塑性樹脂が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、硫酸又はリン酸にて酸化したミクロフィブリルセルロースと、水分散樹脂を混合した樹脂組成物が開示されている。しかし、セルロース材料からミクロフィブリルセルロースを得る工程で、二種類のミキサーを用いてセルロースの解離、分散を行った後、ろ過工程を必要とする。さらに硫酸等で酸化した後に洗浄する工程と、表面酸化ミクロフィブリルセルロースを得る工程が多段階にわたり、煩雑であった。
【特許文献1】特開2006−282923号公報
【特許文献2】特表平9−509694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂を含む製品群の中には、接着剤等の天然及び/又は合成樹脂エマルジョンの形態を有する製品も多く存在する。しかし、これまでの製品よりも、乾燥時の弾性率、破断応力、伸張率等の強度の点において更に満足がいくものが求められている。
【0006】
本発明は、高い強度を有する乾燥皮膜を形成できる樹脂組成物と、それを含む皮膜形成剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セルロース繊維と天然及び/又は合成樹脂エマルジョンを含む樹脂組成物であって、
前記セルロース繊維が、平均繊維径200nm以下のセルロース繊維を含み、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gである、樹脂組成物、それを含む皮膜形成剤、それから得られる皮膜に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、高い強度を有する乾燥皮膜を形成することができるため、その皮膜形成作用を利用して、接着剤、塗料、ワックス又はそれらの製造原料として適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<樹脂組成物>
〔セルロース繊維〕
本発明で用いるセルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下のものであり、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは1〜50nmのものである。
【0010】
本発明で用いるセルロース繊維は、それを構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gであり、好ましくは0.4〜2mmol/g、より好ましくは0.6〜1.8mmol/gである。カルボキシル基含有量は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。なお、カルボキシル基含有量が0.1mmol/g以上であることにより、後述の繊維の微細化処理後、セルロース繊維の平均繊維径が200nm以下となり、良好な強度を有する皮膜を形成することが可能となる。
【0011】
本発明で用いるセルロース繊維は、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10〜5,000のものが好ましく、より好ましくは10〜2,000、更に好ましくは10〜1000、また更に好ましくは10〜500のものである。平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0012】
〔セルロース繊維の調製〕
本発明で用いるセルロース繊維は、例えば、次の方法により製造することができる。
(i)まず、原料となる天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理して、スラリーにする。ここでいう、絶対乾燥基準とは20℃、50%RHの環境下で自然乾燥した酸化パルプの水分率をハロゲン水分計にて測定したものから絶乾パルプ量を算出するものである。
【0013】
原料となる天然繊維を含む成形体としては、木材パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、バクテリアセルロース、コットン、絹、羊毛、キチン、キトサン、アルギン酸、コラーゲン等を含むシートを挙げることができる。
【0014】
成形体の大きさや形状は特に制限されないが、厚さは、好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.03〜3mm、さらに好ましくは0.05〜1mmの範囲から選択することができ、シート状の成形体が好ましい。
【0015】
(ii)次に、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液を用いて、上記スラリーを酸化処理する。
N−オキシル化合物を含む酸化触媒液としては、N−オキシル化合物、他の酸化剤、ハロゲン化物を含む溶液又は懸濁液を使用する。
N−オキシル化合物としては、2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を用いることができる。TEMPOの使用量は、成形体(絶対乾燥基準)に対して、約0.1〜30質量%となる範囲であることが好ましい。また、触媒液の濃度としては0.001〜30質量%となる範囲であることが好ましい。
【0016】
他の酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物等を挙げることができ、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の使用量は、成形体(絶対乾燥基準)に対して、約1〜50質量%となる範囲である。
【0017】
ハロゲン化物としては、臭化物又はヨウ化物が好ましく、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属を挙げることができ、臭化ナトリウムが好ましい。ハロゲン化物の使用量は、成形体(絶対乾燥基準)に対して、約1〜30質量%となる範囲であることが好ましい。また、触媒液の濃度としては0.01〜30質量%となる範囲であることが好ましい。
【0018】
溶媒は水を使用するが、酸化触媒液の表面張力を低下させ、成形体に浸透させやすくする観点から、メタノール、エタノール等のアルコール、各種の界面活性剤を含有させることができる。アルコールは反応性の観点から2級以上のアルコールが好ましい。1級アルコールを使用すると、酸化触媒液と1級アルコール自身が反応する場合があるからである。
【0019】
酸化触媒液の溶媒として、水とエタノール等の有機溶媒の混合物を使用する場合、有機溶媒の含有量は5〜80質量%が好ましく10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%が更に好ましい。
【0020】
酸化触媒液のpHは、酸化反応を効率良く進行させる点から9〜12の範囲であることが好ましい。
酸化処理の温度(前記スラリーの温度)と時間は、1〜50℃で、1〜300分間が好ましい。
【0021】
酸化処理においては、成形体と酸化触媒液を機械的操作で接触させることが好ましい。本願でいう機械的操作とは、攪拌等により、成形体又は酸化触媒液に機械的な運動を与えることを意味する。
【0022】
(iii)そして、使用した触媒等を水洗等により除去し、必要に応じて乾燥処理した繊維状や粉末状の中間体を得ることができる。
【0023】
(iv)その後、該中間体を水等の溶媒中に分散し、微細化処理をする。微細化処理は、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサーで所望の繊維幅や長さに調整することができる。
【0024】
このような微細化処理により、平均繊維径が200nm以下のセルロース繊維を得ることができ、更に好ましくは平均アスペクト比が10〜5,000であるセルロース繊維を得ることができる。
【0025】
(v)その後、必要に応じて水洗等して、懸濁液状(目視的に無色透明又は不透明な液)又は必要に応じて乾燥処理した粉末状(但し、繊維状であり、粒を意味するものではない)の樹脂複合化前のセルロース繊維を得ることができる。なお、懸濁液にするときは、水のみを使用したものでもよいし、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用したものでもよい。
【0026】
このような酸化処理及び微細化処理により、セルロース構成単位のC6位が選択的にカルボキシル基に酸化され、前記カルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのセルロースからなる平均繊維径が200nm以下の微細化された高結晶性のセルロース繊維を得ることができる。
【0027】
そして、酸化処理条件を調整することにより、前記のカルボキシル基含有量を所定範囲内にて増減させたり、極性を変化させたり、該カルボキシル基の静電反発や前述の微細化処理により、セルロース繊維の平均繊維径や平均繊維長等を制御することができる。
【0028】
また、前記セルロース繊維は、上記カルボキシル基を有することから繊維間の静電反発力が強くなるため、該水分散液の分散性は良好である。ここでの分散性が良好であるというのは、200nm以下の微細化された高結晶性のセルロース繊維が分散液中で凝集、沈降を起こしにくいことをいう。分散性は、水分散液の目視観察によって確認される。
【0029】
未処理のセルロース繊維水分散体は、セルロース繊維の凝集体が分散している状態であり、目視観察において凝集物、沈殿物が確認される。一方、本発明で用いるセルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下の微細構造体であり、該構造体が凝集することなく、水中で均一に分散するため、目視観察において凝集物、沈殿物は確認されない。
【0030】
〔天然及び/又は合成樹脂エマルジョン〕
本発明の天然及び/又は合成樹脂エマルジョンは、樹脂エマルジョン、ラテックス等が挙げられ、その中でも、合成樹脂水性エマルジョン、ゴム水性ラテックスが好ましい。
合成樹脂水性エマルジョンとしては、酢酸ビニル系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリビニルアルコール系の樹脂エマルジョンが挙げられ、具体的には、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレン/アクリル共重合樹脂エマルジョン、エチレン、バーサティック酸ビニルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と酢酸ビニルとを共重合した酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン等が挙げられる。これらは、1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも酢酸ビニル樹脂エマルジョンが好ましい。
ゴム水性ラッテクスとしては、例えば、ブタジエンラッテクス、黒炉プレンラテックス、イソプレンラテックス、ブタジエンやイソプレン等とスチレンやアクリロニトリル等とを共重合した共重合樹脂ラッテクス等が挙げられる。これらは、1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
樹脂水性エマルジョンとゴム水性ラテックスの固形分濃度(樹脂又はゴム量)は特に制限されるものではなく、1.0〜99.0質量%程度でよい。
【0032】
〔樹脂組成物の調製〕
本発明の樹脂組成物は、上記セルロース繊維水分散液と樹脂水性エマルジョン及び/又はゴム水性ラテックスを、適当な容器中にて、前記成分を攪拌又は振とう等の方法により、混合して得ることができる
【0033】
本発明の樹脂組成物におけるセルロース繊維と天然及び/又は合成樹脂エマルジョンの混合割合は、乾燥皮膜の強度を高める観点から、天然及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対して、セルロース繊維(固形分)は0.1質量部以上が好ましく、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5.0質量部がさらに好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の成分を加えてもよい。例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃剤、可塑剤、難燃助剤、耐候性改良剤、スリップ剤、無機又は有機充填剤、強化剤、各種着色剤、離型剤を添加してもよい。
【0035】
<皮膜形成剤及び皮膜>
本発明の皮膜形成剤は、上記した樹脂組成物を含むもので、処理対象物に塗布・噴霧等した後、乾燥させることにより、高い弾性率を有する皮膜を形成できるものである。このように乾燥皮膜が高い弾性率を有していると、皮膜自体が破壊され難くなるため、処理対象物から皮膜が剥がれにくくなる。このため、本発明の皮膜形成剤は、接着剤、塗料、ワックス(床、家具等の磨き剤乃至艶だし剤)等として好適であるほか、それらの製造原料としても利用できる。また、皮膜形成剤から得られる皮膜(フィルム)自体を単独で、所望用途に使用することもできる。
【0036】
本発明の皮膜形成剤は、接着剤等の天然及び/又は合成樹脂エマルジョンを含む市販品に対して、上記した樹脂組成物の構成成分であるセルロース繊維水分散液を混合することよっても調製することができる。
【実施例】
【0037】
(1)平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比
原子間力顕微鏡(Veeco Dimension 3100 Tapping mode)によって撮影されたセルロース繊維の直径が確認できる画像において、50点以上抽出し、繊維径及び繊維長を測定し平均アスペクトを算出した。
【0038】
(2)カルボキシル基含有量(mmol/g)
絶乾パルプ約0.5gを100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて0.83質量%パルプ懸濁液とし、パルプが十分に分散するまでスタラーにて攪拌した。そして、0.1M塩酸を加えてpH2.5〜3.0としてから、自動滴定装置(AUT−501、東亜デイーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で注入し、パルプ懸濁液の1分ごとの電導度とpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続けた。そして、得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、カルボキシル基含有量を算出した。
【0039】
(3)物性測定
樹脂組成物をテフロンシャーレ上にキャストして、室温で1週間乾燥させ、皮膜(フィルム)を作製する。その後、皮膜を5mm×50mmの短冊状に3枚切り出し、マイクロメーターで各試験フィルムをランダムに5点厚さ測定し、平均値を算出した。この試験フィルムを用い、引張試験機テンシロン(ORIENTIC製,RTC-1210A)にて、チャック間距離30mm、移動速度100mm/min.、23.5℃/60%RTの条件で測定した。このときのひずみと応力曲線の初期傾きより、弾性率G‘を求めた。試験片が破断するまでの最大応力を破断応力とした。試験片が破断するまでの伸びをLとしたとき、Lのチャック間距離30mmに対する比率(%)を伸張率とした。
【0040】
製造例1
(I)原料
天然繊維:針葉樹の漂白クラフトパルプ(製造会社:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名 「Machenzie」、CSF650ml)
TEMPO:市販品(製造会社:ALDRICH、Free radical、98%)
次亜塩素酸ナトリウム:市販品(製造会社:和光純薬工業(株)Cl:5%)
臭化ナトリウム:市販品(製造会社:和光純薬工業(株))。
【0041】
(II)製造手順
まず、上記の針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維3gを297gのイオン交換水で十分攪拌後、パルプ質量3gに対し、TEMPO1.25質量%、次亜塩素酸ナトリウム14.2質量%、臭化ナトリウム12.5質量%をこの順で添加し、pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムにて滴下を行い、pHを10.5、温度20℃に保持し、酸化反応を60分間行い、酸化パルプを得た。
【0042】
次に、酸化パルプをイオン交換水にて十分洗浄し、脱水処理後、23℃の雰囲気下で自然乾燥した。その後、酸化パルプ0.75gとイオン交換水99.25gをミキサー(SM−KM36、サンヨー(株)製)にて10分間攪拌することにより、繊維の微細化処理を行い、半透明の懸濁液を得た。
得られた分散液中の酸化パルプ量(固形分濃度)は、0.75質量%であった(酸化パルプ0.75g/イオン交換水99.25g)。また、セルロース繊維は、平均繊維径:4.12nm、平均繊維長:614nm、平均アスペクト比:149、カルボキシル含有量0.92mmol/gであった。
【0043】
上記酸化反応後に微細化処理を行ったセルロース分散液と、酸化反応を行わず、同様の微細化処理を行ったセルロース繊維の同濃度分散液について目視観察を行った。酸化反応を行ったセルロース分散液は、凝集物、沈殿物なく、均一な外観であった。一方、未反応セルロース分散液は、綿状の凝集物が確認された。
【0044】
実施例1〜3、比較例1〜4
製造例1にて調整した濃度0.75%のセルロース繊維分散液−1とポリ酢酸ビニル系エマルジョン(樹脂エマルジョン−1)(製品名CH38,(株)コニシ製,固形分40%)とイオン交換水(イオン交換水を用いて総量が100gとなるように調整した)を表1に示す配合量で攪拌混合した(実施例1〜3)。ポリ酢酸ビニル系エマルジョンの固形分は、赤外線水分量測定機(kett FD-240 (株)ケツト化学研究所製)にて、120℃/Automatic mode(60秒)で測定し、算出した(以下同様である)。
上記樹脂エマルジョン−1の代わりに、酸化反応を行っていない濃度0.75%のセルロース繊維分散液−2(上記天然繊維)を用いた以外は、上記実施例3と同様の方法で配合した(比較例2)。
上記樹脂エマルジョン−1の代わりに、微結晶セルロース(Avicel:Merck製)を用いた以外は、上記実施例3と同様の方法で配合した(比較例3)。
上記樹脂エマルジョン−1の代わりに、ヒドロキシエチルセルロース(住友精化(株)製 SZ−25F)を用いた以外は、上記実施例3と同様の方法で配合した(比較例4)。
【0045】
上記混合物12.0gをテフロン製シャーレ(半径=4cm)にキャストし、室温にて1週間乾燥させ、試験フィルムを得た。各試験フィルムの物性測定結果を表1に示す。比較例1〜2の試験フィルムと比較して、実施例1〜3の試験フィルムが高い弾性率、破断応力、及び伸張率を有することが確認された。さらに、セルロース繊維の配合量の増加に比例して、弾性率及び破断応力の増加が確認された(図1、2参照)。
【0046】
【表1】

【0047】
「セルロース繊維含有量(対樹脂質量部)」は、樹脂エマルジョン固形分量(g)を100質量部としたときのセルロース繊維固形分量(g)の量(質量部)であり、組成物の固形分(%)は、樹脂組成物中の固形分の質量割合である(表2も同様)。
【0048】
実施例4、比較例5
製造例1にて調整した濃度0.75%のセルロース繊維分散液−1とポリアクリル系エマルジョン(樹脂エマルジョン−2)(製品名FL200,(株)コニシ製,固形分70%)とイオン交換水を表2に示す配合比率で混合した。ポリアクリル系エマルジョンの固形分は、赤外線水分量測定機(kett FD-240 (株)ケツト化学研究所製)にて、120℃/Automatic mode(60秒)で測定し、算出した。
【0049】
上記混合物10.0gをテフロン製シャーレ(半径=4cm)にキャストし、室温にて1週間乾燥させ、試験フィルムを得た。各試験フィルムの弾性率測定結果を表2に示す。
【0050】
比較例6
実施例4において、セルロース繊維分散液の代わりにタルク(製造会社:和光純薬製,)を対樹脂固形分100質量部に対して1質量部になるように配合し(固形分30.3%)、実施例4と同様に試験フィルムを作製し、弾性率を測定した。試験フィルムの弾性率測定結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例4の試験フィルムは、比較例5〜6の試験フィルムと比較して弾性率の向上が確認された。比較例6の試験用フィルムは、比較例5の試験用フィルムと比較すると弾性率は高かったが、実施例4と比較すると弾性率は低かった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例及び比較例におけるフィルムの弾性率G’(MPa)を示した図である。
【図2】実施例及び比較例における破断応力(MPa)及び伸張率(%)の関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と天然及び/又は合成樹脂エマルジョンを含む樹脂組成物であって、
前記セルロース繊維が、平均繊維径200nm以下のセルロース繊維を含み、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gである、樹脂組成物。
【請求項2】
前記セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10〜5,000である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記天然及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対して、前記セルロース繊維(固形分)を0.1質量部以上含有する、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物を含有する皮膜形成剤。
【請求項5】
請求項4に記載の皮膜形成剤より形成される、皮膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−197122(P2009−197122A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39731(P2008−39731)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】