説明

樹脂組成物

本発明は、(a)不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を30〜80重量%と、(b)スチレンを10〜50重量%とを含む樹脂組成物であって、(c)イタコン酸のエステルと、(d)パラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスとをさらに含む、樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、構造部品の製造に使用するのに好適な樹脂組成物であって、(a)不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を30〜80重量%と、(b)スチレンを10〜50重量%とを含む樹脂組成物に関する。
【0002】
現在、構造部品を得るために用いられる不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂組成物は、反応性希釈剤としてのスチレンを多量に含む場合が多い。スチレンが存在することにより、調製および硬化の最中だけでなく想定内の長期使用期間中さえもスチレンが放出される可能性があり、これが望ましくない悪臭の原因となり、さらには毒性作用を引き起こす可能性さえある。したがって、スチレンの放出を抑えることが強く望まれている。
【0003】
本発明の目的は、特にオープンモールド用途における、特に硬化工程時の樹脂組成物からのスチレン放出を低減することにある。
【0004】
驚くべきことに、反応性希釈剤としてのスチレンの一部をイタコン酸のエステルと置き換えると同時に、さらにパラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスを樹脂組成物中に存在させることにより、置換した量から予想される以上にスチレン放出が低減されることが見出された。したがって、本発明による樹脂組成物は、(a)不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を30〜80重量%と、(b)スチレンを10〜50重量%と、(c)イタコン酸のエステルと、(d)パラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスとを含む。
【0005】
本発明による組成物は、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を30〜90重量%含む。特段の指定がない限り、本明細書において用いられる量はすべて不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂および反応性希釈剤の総重量に対する重量%で与えられる。本発明による樹脂組成物中に含まれる不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂は、それ自体は当業者に周知の不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂から適切に選択してもよい。本発明の樹脂組成物中に使用するのに好適な不飽和ポリエステルは、J.M.S.−Rev.Macromol.Chem.Phys.、C40(2&3)、pp.139〜165(2000)においてM.Malikらにより分類された種類にさらに細分される。
(1)オルソ系樹脂:これらは無水フタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸、およびグリコール(1,2−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA等)をベースとする。一般には、1,2−プロピレングリコールから誘導されたものがスチレン等の反応性希釈剤と併用される。
(2)イソ系樹脂:これらはイソフタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸、およびグリコールから調製される。これらの樹脂はオルソフタル酸系樹脂よりも反応性希釈剤を高比率で含み得る。
(3)ビスフェノールA−フマル酸エステル:これらはエトキシ化ビスフェノールAおよびフマル酸をベースとする。
(4)クロレンド酸系樹脂(chlorendics):UP樹脂の調製において塩素/臭素含有無水物またはフェノールから調製される樹脂である。
【0006】
これらの樹脂分類に加えて、いわゆるジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂も不飽和ポリエステル樹脂として区別することができる。DCPD樹脂に分類されるものは、上記いずれかの種類の樹脂をシクロペンタジエンとディールス・アルダー(Diels−Alder)反応に付して変性することによって得られるか、あるいは別法として、まず最初に二酸(例えば、マレイン酸)をジシクロペンタジエンと反応させた後、不飽和ポリエステル樹脂を製造する通常のステップを行うことによって得られる(DCPDマレイン酸エステル(DCPD−maleate)樹脂とも称される)かのいずれかである。
【0007】
本明細書において用いられるビニルエステル樹脂は(メタ)アクリレート官能性樹脂((meth)acrylate functional resin)である。ビニルエステル樹脂は当業者に周知のビニルエステル樹脂から適切に選択することができる。ビニルエステル樹脂が使用される理由は主として耐加水分解性および極めて優れた機械的性質を有する点にある。末端の位置にのみ不飽和部位を有するビニルエステル樹脂は、例えば、エポキシオリゴマーまたはポリマー(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ、またはテトラブロモビスフェノールAをベースとするエポキシ)を、例えば(メタ)アクリル酸と反応させることにより調製される。(メタ)アクリル酸に替えて(メタ)アクリルアミドも使用してもよい。本明細書において用いられるビニルエステル樹脂とは、少なくとも1個の(メタ)アクリレート官能性末端基を含むオリゴマーまたはポリマーであり、(メタ)アクリレート官能性樹脂としても周知である。これには、ビニルエステルウレタン樹脂(ウレタン(メタ)アクリレート樹脂とも称される)の分類も含まれる。好ましいビニルエステル樹脂は、ウレタンメタクリレート樹脂や、エポキシオリゴマーまたはポリマーをメタクリル酸またはメタクリルアミド(好ましくはメタクリル酸)と反応させることにより得られる樹脂等のメタクリレート官能性樹脂である。最も好ましいビニルエステル樹脂は、エポキシオリゴマーまたはポリマーをメタクリル酸と反応させることにより得られる樹脂である。
【0008】
本発明による樹脂組成物中に含まれ得る不飽和ポリエステル樹脂の分子量は、好ましくは500〜10000ダルトンの範囲、より好ましくは500〜5000の範囲、よりさらに好ましくは750〜4000の範囲にある。本明細書において用いられる樹脂の分子量は、ISO 13885−1に準拠し、ポリスチレン標準および分子量測定用に設計された適切なカラムを用いて、テトラヒドロフラン(tetrahydrofurane)中でゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される。好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂の酸価は0〜80mgKOH/g樹脂の範囲、好ましくは5〜70mgKOH/g樹脂の範囲にある。本明細書において用いられる樹脂の酸価はISO 2114−2000に準拠して滴定法により測定される。不飽和ポリエステル樹脂としてDCPD樹脂が用いられる場合は、酸価は好ましくは0〜50mgKOH/g樹脂の範囲にある。
【0009】
本発明による樹脂組成物中に含まれ得るビニルエステル樹脂の分子量は、好ましくは500〜3000ダルトンの範囲、より好ましくは500〜1500の範囲にある。ビニルエステル樹脂の酸価は、好ましくは0〜50mgKOH/g樹脂の範囲にある。
【0010】
本樹脂組成物は、好ましくは不飽和ポリエステル、好ましくはDCPD樹脂、より好ましくはDCPDマレイン酸エステル樹脂を含む。この種の樹脂が存在することによりVOC放出の低下が一層顕著になる。
【0011】
本樹脂組成物は、10〜50重量%の量のスチレンを含む。
【0012】
本発明による樹脂組成物は、反応性希釈剤としてのイタコン酸のエステル(本明細書においては以後イタコン酸エステルと称する)を、好ましくは1〜50重量%の量で、より好ましくは5〜50重量%の量で含む。
【0013】
本発明による樹脂組成物は反応性希釈剤を含む。希釈剤は、例えば、樹脂組成物の取扱いをより容易にすることを目的として粘度を低減するために適用されるであろう。明瞭化のため、反応性希釈剤とは、本発明による組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と共重合可能な希釈剤とする。
【0014】
イタコン酸エステルは、好ましくは、イタコン酸モノ(シクロ)アルキルエステル、イタコン酸ジ(シクロ)アルキルエステル、ジオールジイタコン酸エステル、およびトリオールトリイタコン酸エステルから選択される。好ましいイタコン酸モノ(シクロ)アルキルエステルは、イタコン酸C5〜C8シクロアルキルエステルおよびイタコン酸C1〜C12アルキルエステル、より好ましくはイタコン酸C1〜C6アルキルエステルである。好ましいイタコン酸ジ(シクロ)アルキルエステルは、イタコン酸ジC5〜C8シクロアルキルエステル、イタコン酸ジC1〜C12アルキルエステル、より好ましくはイタコン酸ジC1〜C6アルキルエステルである。
【0015】
イタコン酸アルキルエステルの例としては、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、イタコン酸プロピル、イタコン酸イソプロピル、イタコン酸ヒドロキシエチルがある。イタコン酸シクロアルキルエステルの好ましい例としては、イタコン酸シクロヘキシルがある。イタコン酸ジアルキルエステルの例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジヒドロキシエチル、イタコン酸ジヘキシルがある。イタコン酸ジシクロアルキルエステルの好ましい例としては、イタコン酸ジシクロヘキシルがある。ジオールジイタコン酸エステルの例としては、例えば、ブタンジオールジイタコネート、ブタンジオールジイタコネートジメチルエステル、(ポリ)エチレングリコールジイタコネート、(ポリ)エチレングリコールジイタコネートジエチルエステル、(ポリ)プロピレングリコールジイタコネート、(ポリ)プロピレングリコールジイタコネートジエチルエステルがある。トリオールトリイタコン酸エステルの例としては、例えば、トリメチロールプロパントリイタコネート、トリメチロールプロパントリイタコネートトリメチルエステル、ならびにそのエトキシ化およびプロポキシ化形態がある。
【0016】
好ましい実施形態においては、本発明による組成物は、イタコン酸エステルとしてイタコン酸のジエステルを含む。より好ましい実施形態においては、イタコン酸エステルとしてイタコン酸のジエステルが用いられる。イタコン酸のジエステルは、好ましくは式
【化1】



(式中、AおよびBは、同一であっても異なっていてもよく、Aおよび/またはBは、1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)
を有する。最も好ましくは、AおよびBは両方共メチル基である。したがって、好ましい実施形態においては、本発明による樹脂組成物はイタコン酸ジメチルを含む。
【0017】
本組成物は、好ましくはイタコン酸エステルを、反応性希釈剤の総量に対し1〜80重量%、好ましくは2〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%の量で含む。好ましくは、イタコン酸エステルは、例えばトウモロコシ等の非化石資源に由来する。
【0018】
本樹脂組成物はパラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスをさらに含む。パラフィンは一般式C2n+2のアルカン炭化水素の一般名である。パラフィンワックスとは20≦n≦40の固体を指す。パラフィンオイルとは15≦n≦30の液体(混合物)を指す。パラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスの量は、好ましくは0.01〜10重量%(不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂(a)、反応性希釈剤、ならびにパラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスの総量に対する)、より好ましくは0.3〜7重量%、よりさらに好ましくは1〜5重量%である。市販のパラフィンワックスまたはオイルとしては、例えば、Byk 740、Byk 750、およびPalatal X960−02Xがある。
【0019】
本樹脂組成物は、好ましくは、樹脂組成物をラジカル硬化させるための開始助剤を0.00001〜10重量%の量でさらに含む。好ましい開始助剤はアミンまたは遷移金属化合物である。
【0020】
本組成物中に存在し得るアミン開始助剤は、好ましくは芳香族アミンであり、よりさらに好ましくは第3級芳香族アミンである。好適な促進剤(accelerator)としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン;トルイジンおよびキシリジン(N,N−ジイソプロパノール−パラ−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)キシリジンおよびトルイジン等)が挙げられる。樹脂組成物中のアミンの量は、通常は少なくとも0.00001重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%である。一般に、樹脂組成物中のアミンの量は、最大で10重量%、好ましくは最大5重量%である。
【0021】
開始助剤として好適な遷移金属化合物の例は、原子番号が22〜29の範囲または原子番号が38〜49の範囲または原子番号が57〜79の範囲にある、バナジウム、鉄、マンガン、銅、ニッケル、モリブデン、タングステン、コバルト、クロム化合物等の遷移金属化合物である。好ましい遷移金属は、V、Cu、Co、Mn、およびFeである。
【0022】
好ましくは、樹脂組成物は、好ましくはフェノール化合物、ベンゾキノン、ヒドロキノン、カテコール、安定なラジカル、および/またはフェノチアジンの群から選択される1種またはそれ以上のラジカル禁止剤をさらに含む。しかしながら、本発明の文脈において使用されるラジカル禁止剤の量は多少広い範囲で変化させてもよく、達成したいゲル化時間の1つの目安(first indication)として選択してもよい。
【0023】
本発明による樹脂組成物中に使用することができるラジカル禁止剤の好適な例は、例えば、2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレンジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOLとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPONとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPOとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYL)、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ガルビノキシル、フェノチアジン、および/またはこれらの任意の化合物の誘導体もしくは組合せである。
【0024】
有利には、本発明による樹脂組成物中のラジカル禁止剤の量は0.0001〜10重量%の範囲にある。より好ましくは、樹脂組成物中の禁止剤の量は0.001〜1重量%の範囲にある。当業者であれば、選択された禁止剤の種類に応じて本発明により良好な結果が得られる量を非常に容易に決定することができるであろう。
【0025】
さらに本発明は、本発明による樹脂組成物をラジカル硬化させる方法であって、上述した樹脂組成物に開始剤を加えることにより硬化を実施する方法に関する。好ましくは、硬化は、−20〜+200℃の範囲、好ましくは−20〜+100℃の範囲、最も好ましくは−10〜+60℃の範囲の温度(いわゆる低温硬化)で実施される。開始剤は光開始剤、熱開始剤、および/またはレドックス開始剤である。
【0026】
本明細書における光開始剤は、照射により硬化を開始させることができるものを意味する。光開始とは、好適な波長の光の照射(光照射)を用いて硬化させることと理解される。これは光硬化とも称される。
【0027】
光開始系は、光開始剤そのもので構成されていてもよいし、あるいは光開始剤および増感剤の組合せであってもよいし、あるいは光開始剤の混合物(場合により1種またはそれ以上の増感剤を併用)であってもよい。
【0028】
本発明の文脈において使用することができる光開始系は当業者に周知の広範囲な光開始系群から選択することができる。非常に多くの好適な光開始系を、例えば、「UVおよびEB製剤の化学技術(Chemistry and Technology of UV and EB Formulations)」、第3巻、第2版、K.DietlikerおよびJ.V.Crivello(SITA Technology,ロンドン(London);1998)から探すことができる。
【0029】
熱開始剤は、アゾ化合物(例えばアゾイソブチロニトリル(AIBN)等)、C−Cが不安定な化合物(例えば、ベンゾピナコールや過酸化物等)、およびこれらの混合物から選択することができる。熱開始剤は、好ましくは、有機過酸化物または2種以上の有機過酸化物の組合せである。
【0030】
レドックス開始剤は、好ましくは、有機過酸化物と上述の開始助剤の少なくとも1種との組合せである。好適な過酸化物の例は、例えば、ハイドロパーオキサイド、パーオキシカーボネート(式−OC(O)OO−を有するもの)、パーオキシエステル(式−C(O)OO−を有するもの)、ジアシルパーオキサイド(式−C(O)OOC(O)−のもの)、ジアルキルパーオキサイド(式−OO−のもの)等である。
【0031】
さらに本発明は、この種の樹脂組成物を、上述した開始剤を用いて硬化させることにより調製される物品または構造部品にも関する。本明細書において用いられる構造用樹脂組成物とは、構造部品を提供することができるものである。一般に、この種の樹脂組成物は非水系である。これらは水を最大5重量%含み、これは主として樹脂調製反応中に生じたものである。本明細書における構造部品とは、厚みが少なくとも0.5mmで適切な機械的性質を有するとみなされるものを意味する。本発明による樹脂組成物を適用することができる最終分野は、例えば、自動車部品、船、ケミカルアンカー、屋根材、建設、容器、再ライニング、パイプ、タンク、床材、風車の羽根である。
【0032】
ここで一連の実施例および比較例を用いて本発明を具体的に示す。すべての実施例は特許請求の範囲を支持するものである。しかしながら、本発明は実施例に示す特定の実施形態に限定されない。
【0033】
[実施例1および比較実験A]
パラフィンワックスおよびスチレンを37重量%含むスチレン低輝散性樹脂であるSynolite 8388−P1をDSM Composite Resins B.Vより入手した。実施例に用いるためにSynolite 8388−P1からスチレンを真空中で除去して、スチレンおよびイタコン酸ジメチルDMI混合物に置き換えた。置換後の固形分を確認した。
【0034】
次いで過酸化物としてのトリゴノックス(Trigonox)44Bを1重量%を使用して4mmの注型品を調製した。注型品を離型した後、60℃で24時間、次いで80℃で24時間後硬化させた。次いで、注型品について機械的分析およびスチレン量測定を行った。
【0035】
硬化物の機械的性質をISO 527−2に準拠して測定した。荷重たわみ温度(HDT)をISO 75−Aに準拠して測定した。
【0036】
粘度測定のための試験方法はISO 3219に準拠する。
【0037】
VOC放出として示すスチレン放出は、樹脂組成物30gおよび直径12.5cmのペトリ皿を用いて25℃で30分間の重量変化により測定した。
【0038】
硬化は標準的なゲル化時間測定装置(gel time equipment)で観測した。これは、前述したように樹脂を過酸化物で硬化させてDIN 16945の方法に準拠して発熱測定を行うことによりゲル化時間(TgelまたはT25→35℃)およびピーク時間(peak time)(TpeakまたはT25→peak)の両方を測定したことを意味することを意図している。
【0039】
【表1】



【0040】
スチレンの減量分に基づけば、実施例1のVOC放出は5.2g((32/37)×6)となることが予測されるであろう。したがって、イタコン酸エステルとスチレンとの予期せぬ相乗効果が明らかに認められる。さらに、スチレンの一部をイタコン酸エステルに置き換えても機械的性質はほとんど影響を受けていないことに注目されたい。
【0041】
[比較実験B〜Dおよび実施例2]
DSM Composite Resins B.V.より入手したSynolite 8388−N1(スチレン37重量%を含むDPCDマレイン酸エステル樹脂)からスチレンを真空中で除去し、スチレンおよびイタコン酸ジメチルDMIの混合物と置き換えた。置換後に固形分を確認した。場合によりパラフィンワックスを加えた。実施例1と同様にして硬化および試験を行った。
【0042】
【表2】



【0043】
比較実験BをDと比較すると、DMIが存在してもVOC放出が相対的に増加したに過ぎなかったことが明白である。比較実験CをDと比較すると、パラフィンワックスが存在することによりVOC放出が大幅に低減されたことがわかる。驚くべきことに、実施例2を比較実験B〜Dと比較すると、DMIおよびパラフィンワックスを両方共併用することによりVOC放出に予期せぬ相乗効果が起こることがわかる。
【0044】
[比較実験Eおよび実施例3]
Synolite 8388−P1に替えてパラフィンワックスを含むオルソ系樹脂であるSynolite 1408−P−1を使用したことを除いて比較実験Aおよび実施例1を繰り返した。
【0045】
【表3】



【0046】
スチレンの減量分に基づけば、実施例3のVOC放出は4.6g((39.1/44.1)×5.2)となることが予測されるであろう。したがって、ここでもやはり、イタコン酸エステルおよびスチレンの予期せぬ相乗効果が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を30〜80重量%と、(b)スチレンを10〜50重量%とを含む樹脂組成物であって、(c)イタコン酸のエステルと、(d)パラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスとをさらに含むことを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物がイタコン酸エステルを5〜50重量%の量で含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
パラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスの量が0.01〜10重量%(前記不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂、反応性希釈剤、ならびにパラフィンオイルおよび/またはパラフィンワックスの総量に対する)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記組成物が不飽和ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記不飽和ポリエステル樹脂がDCPD樹脂であることを特徴とする、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
イタコン酸エステルとしてイタコン酸のジエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記イタコン酸の前記ジエステルが、式
【化1】



(式中、AおよびBは同一であっても異なっていてもよく、Aおよび/またはBはアルキル基である)
を有することを特徴とする、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
AおよびBが、1〜12個の炭素原子を有する同一または異なるアルキル基であることを特徴とする、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記組成物が、イタコン酸ジメチルを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記組成物が、イタコン酸のエステルを、反応性希釈剤の総量に対し1〜80重量%、好ましくは2〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%の量で含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記イタコン酸の前記エステルが、非化石資源に由来することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物をラジカル硬化させる方法であって、前記硬化が、開始剤を添加することにより実施されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を、開始剤を用いて硬化させることによる硬化物または構造部品。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化物または構造部品の、自動車部品、船、ケミカルアンカー、屋根材、建設、容器、再ライニング、パイプ、タンク、床材、風車の羽根における使用。

【公表番号】特表2012−521465(P2012−521465A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501293(P2012−501293)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053812
【国際公開番号】WO2010/108941
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】