説明

樹脂被覆キャリアおよび2成分現像剤

【課題】 大粒径の外添剤が外添されたトナーを長期間にわたって安定して帯電させることができる樹脂被覆キャリアおよび2成分現像剤を提供する。
【解決手段】 樹脂被覆キャリア2は、平均一次粒子径がそれぞれ異なる複数種の外添剤3aが外添されたトナー3であって、複数種の外添剤3aのうち、少なくとも1種の外添剤3aの平均一次粒子径が50nm以上であるトナー3とともに用いられ、キャリア芯材2aと、キャリア芯材2aの表面に形成される樹脂被覆層2bとを有する。樹脂被覆層2bは、被覆用樹脂と、帯電補助微粒子2cとを含む。帯電補助微粒子2cは、樹脂被覆層2bに凸部2dを形成し、特定のフェライトからなり、平均一次粒子径が、複数種の外添剤3aにおけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値よりも大きく、かつ0.2μm以上2.0μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆キャリアおよび2成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のOA機器の目覚しい発達にともなって、電子写真方式を利用して画像形成を行う複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置が広く普及している。
【0003】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、たとえば帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電および定着の各工程を経ることにより画像が形成される。帯電工程で、回転駆動される感光体の表面を帯電装置によって均一に帯電し、露光工程で、帯電した感光体表面に露光装置によってレーザ光が照射され、感光体表面に静電潜像が形成される。次に現像工程で、現像装置で撹拌されることで帯電した現像剤によって、感光体表面の静電潜像が現像されて感光体表面にトナー像が形成され、転写工程で、感光体表面のトナー像が転写装置によって転写材上に転写される。その後、定着工程で、定着装置で加熱されることによって、トナー像が転写材上に定着される。また、画像形成動作後に感光体表面上に残留した転写残留トナーは、クリーニング工程で、クリーニング装置により除去されて所定の回収部に回収され、除電工程で、クリーニング後の感光体表面における残留電荷が、次の画像形成に備えるために、除電装置により除電される。
【0004】
電子写真方式を利用する画像形成装置では、感光体表面の静電潜像を現像するための現像剤として、トナーのみを含む1成分現像剤と、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤とが用いられる。2成分現像剤は、トナーとキャリアとで機能が分離されており、1成分現像剤のようにトナーがキャリアの機能を併せ持つ必要がないので、トナーのみを単独で含む1成分現像剤よりも制御性が向上し、高画質画像を得やすいという特徴を有する。
【0005】
キャリアは、トナーを所望とする帯電量に安定して帯電させる機能とトナーを感光体に搬送する機能という2つの基本機能を有する。また、キャリアは現像槽内でトナーとともに撹拌され、マグネットローラー上に搬送され、磁気穂を形成し規制ブレードを通過して再び現像槽内に戻り、繰り返し使用される。したがって、キャリアには、継続して使用されるなかで、安定した基本機能、特に安定的にトナーを帯電させる機能が求められる。
【0006】
このようなキャリアの機能を維持するために、たとえば、キャリア芯材表面を、樹脂成分で被覆した樹脂被覆キャリアが提案されている。樹脂被覆キャリアは、トナー成分が樹脂被覆キャリア表面に付着するトナースペントの発生を抑制することができ、トナーを安定して帯電させることができる。
【0007】
近年においては、定着装置の電力消費量を低減させるために、低い定着温度であっても、充分な定着強度が得られるトナーが使用される。このようなトナーは、トナーに含まれる結着樹脂として、熱および圧力によって変形しやすい樹脂材料が用いられる。このようなトナーは、樹脂被覆キャリアとともに用いると、樹脂被覆キャリア表面へのトナースペントが発生し易く、それに伴うトナーの帯電量の不安定化が問題となる。
【0008】
このような問題を解決するため、特許文献1には、樹脂被覆層に樹脂被覆層の層厚よりも大きな粒子径を有する粒子(アルミナまたはシリカ)が含有され、その粒子によって樹脂被覆層に凸部が形成された樹脂被覆キャリアが開示されている。特許文献1に開示の樹脂被覆キャリアによれば、前記粒子によって形成された凸部によって、現像槽内でトナーと樹脂被覆キャリアとを撹拌することによる結着樹脂への強い衝撃を緩和することができるので、樹脂被覆キャリア表面へのトナースペントの発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−188388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、転写性の向上を目的として、平均一次粒子径が50nm以上の大粒径の外添剤が外添されたトナーが用いられる。このようなトナーと樹脂被覆キャリアとを含む2成分現像剤は、長期間にわたってトナーを安定して帯電させることができないという問題がある。
【0011】
この理由としては、現像槽内での撹拌によって、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層に大粒径の外添剤が付着して埋没し、トナーと樹脂被覆キャリアとの正常な摩擦帯電が妨げられて、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力が低下するためである。
【0012】
大粒径の外添剤が外添されたトナーと組合せる樹脂被覆キャリアとして、特許文献1に開示の樹脂被覆キャリアを用いた場合であっても、樹脂被覆層に大粒径の外添剤が付着および埋没すると、トナーに対する帯電付与能力が低下するおそれがある。
【0013】
本発明の目的は、大粒径の外添剤が外添されたトナーを長期間にわたって安定して帯電させることができる樹脂被覆キャリアおよび2成分現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、平均一次粒子径がそれぞれ異なる複数種の外添剤が外添されたトナーであって、前記複数種の外添剤のうち、少なくとも1種の外添剤の平均一次粒子径が50nm以上であるトナーとともに用いられる樹脂被覆キャリアであって、
キャリア芯材と、
前記キャリア芯材の表面に形成され、凸部を有する樹脂被覆層とを含み、
前記樹脂被覆層は、
被覆用樹脂と、
下記一般式(1)で表されるフェライト、下記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物からなる帯電補助微粒子であって、平均一次粒子径が、前記複数種の外添剤におけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値よりも大きく、かつ0.2μm以上2.0μm以下である帯電補助微粒子とを含み、
前記凸部は、前記帯電補助微粒子によって形成されることを特徴とする樹脂被覆キャリアである。
O・Fe …(1)
(式中、MはFe、Mn、Mg、Znから選ばれる金属元素を示す。)
O・6Fe …(2)
(式中、MはBa、Sr、Pbから選ばれる金属元素を示す。)
【0015】
また本発明は、前記樹脂被覆層は、含窒素有機物からなる微粒子をさらに含有することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記被覆用樹脂は、架橋型シリコーン樹脂であることを特徴とする。
また本発明は、前記キャリア芯材が、表面に複数の細孔を有する多孔質フェライトであり、前記帯電補助微粒子は、前記複数の細孔の少なくとも一部に嵌め込まれることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記樹脂被覆キャリアと、平均一次粒子径がそれぞれ異なる複数種の外添剤が外添されたトナーであって、前記複数種の外添剤のうち、少なくとも1種の外添剤の平均一次粒子径が50nm以上であるトナーとを含むことを特徴とする2成分現像剤である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂被覆キャリアは、平均一次粒子径がそれぞれ異なる複数種の外添剤が外添されたトナーであって、前記複数種の外添剤のうち、少なくとも1種の外添剤の平均一次粒子径が50nm以上であるトナーとともに用いられ、キャリア芯材と、キャリア芯材の表面に形成され、凸部を有する樹脂被覆層とを含む。この樹脂被覆層は、被覆用樹脂と帯電補助微粒子とを含み、前記凸部は、帯電補助微粒子によって形成される。帯電補助微粒子は、上記一般式(1)で表されるフェライト、上記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物からなり、平均一次粒子径が、前記複数種の外添剤におけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値よりも大きく、かつ0.2μm以上2.0μm以下である。
【0019】
上記一般式(1)で表されるフェライト、上記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物からなる帯電補助微粒子は、樹脂被覆層の抵抗値を低下させ、樹脂被覆層を適度な抵抗値に調整することができる。このような帯電補助微粒子によって樹脂被覆層に凸部が形成され、帯電補助微粒子の平均一次粒子径が、複数種の外添剤におけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値よりも大きく、かつ0.2μm以上2.0μm以下であることによって、樹脂被覆層に大粒径の外添剤が埋没しても、帯電補助微粒子で形成された凸部がトナーと接触し、帯電補助微粒子を介して樹脂被覆キャリアからトナーへ電荷が移動する。これによって、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力を安定化させることができる。このような樹脂被覆キャリアは、長期間にわたってトナーを安定して帯電させることができる。
【0020】
また本発明によれば、樹脂被覆層は、含窒素有機物からなる微粒子をさらに含有するので、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力をさらに安定化させることができる。
【0021】
また本発明によれば、被覆用樹脂は、架橋型シリコーン樹脂である。被覆用樹脂が架橋型シリコーン樹脂であることによって、樹脂被覆層に帯電補助微粒子を強固に保持できるので、長期間にわたって現像槽内で撹拌されても、樹脂被覆層から帯電補助微粒子が脱離するのを抑制することができる。したがって、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力を、長期間にわたってより一層安定化することができる。
【0022】
また本発明によれば、キャリア芯材が、表面に複数の細孔を有する多孔質フェライトであり、帯電補助微粒子が前記細孔の少なくとも一部に嵌め込まれている。これによって、帯電補助微粒子のキャリア芯材への密着性が高まるので、樹脂被覆層に帯電補助微粒子をより強固に保持させることができ、樹脂被覆層から帯電補助微粒子が脱離するのを一層抑制することができる。
【0023】
また本発明によれば、2成分現像剤は、本発明の樹脂被覆キャリアと、平均一次粒子径がそれぞれ異なる複数種の外添剤が外添されたトナーであって、前記複数種の外添剤のうち、少なくとも1種の外添剤の平均一次粒子径が50nm以上であるトナーとを含むので、長期間にわたってトナーを安定して帯電させることができる。このような2成分現像剤を用いて画像を形成することによって、長期間にわたって画像濃度が高く、かぶりのない画像を安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の一形態に係る2成分現像剤1の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】測定治具9の構成を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施の一形態に係る2成分現像剤1の構成を模式的に示す断面図である。2成分現像剤1は、トナー3と、本発明の実施の一形態である樹脂被覆キャリア2とを含む。トナー3は、平均一次粒子径が50nm以上の外添剤3aがトナー粒子3bに外添されてなる。平均一次粒子径が50nm以上の外添剤3aが外添されることによって、トナー3の転写性を向上させることができる。トナー3の詳しい構成については、後述する。
【0026】
<樹脂被覆キャリア>
本実施形態の樹脂被覆キャリア2は、キャリア芯材2aと、樹脂被覆層2bとを含む。
【0027】
(キャリア芯材)
キャリア芯材2aとしては、この分野で常用されるものが使用でき、たとえば、鉄、銅、ニッケルおよびコバルトナーどの磁性金属、ならびにフェライトおよびマグネタイトナーどの磁性金属酸化物などが挙げられる。キャリア芯材2aが上記のような磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適な樹脂被覆キャリア2が得られる。これらの中でも、帯電性能および耐久性に優れるとともに、フルカラー画像形成装置に適した飽和磁化を有する樹脂被覆キャリア2を実現することができるという観点から、フェライトが好適に用いられる。
【0028】
キャリア芯材2aとしては、表面に複数の細孔が形成された多孔質フェライトを用いることが好ましい。キャリア芯材2aが多孔質フェライトであることによって、後述する帯電補助微粒子2cまたは含窒素有機物からなる微粒子が、キャリア芯材2a表面の細孔に部分的に嵌め込まれることになるので、帯電補助微粒子2cのキャリア芯材2aへの密着性が高まり、樹脂被覆層2bに帯電補助微粒子2cを強固に保持させることができ、樹脂被覆層2bから帯電補助微粒子2cが脱離するのを抑制することができる。
【0029】
多孔質フェライトからなるキャリア芯材2aの製造方法は、秤量工程と、混合工程と、粉砕工程と、造粒工程と、仮焼工程と、焼成工程と、解砕工程と、分級工程とを含む。
【0030】
[秤量工程、混合工程]
本工程では、磁性酸化物などのキャリア芯材2aの原材料を秤量し、混合して金属原料混合物を得る。2種類以上の磁性酸化物を用いる場合には、2種類以上の磁性酸化物の配合比を、磁性酸化物の目的とする組成と一致させて秤量する。
【0031】
次に、該金属原料混合物中に樹脂粒子を添加する。ここで添加する樹脂粒子としては、ポリエチレンおよびアクリルなどの炭素系の樹脂粒子が挙げられる。炭素系樹脂粒子は、後述する仮焼工程にて燃焼し、該燃焼時に発生するガスによって、仮焼粉中に中空構造を生成させる。
【0032】
該樹脂粒子の体積平均粒子径は、2〜8μmが好ましい。また、樹脂粒子の添加量は、キャリア芯材2aの原材料の全量に対して0.1〜20wt%であることが好ましい。樹脂粒子の添加量を調整することによって、得られるキャリア芯材2a表面に形成される細孔の面積平均径、およびキャリア芯材2aの全表面積に対する面積割合を制御することができる。
【0033】
[粉砕工程]
本工程では、金属原料混合物および樹脂粒子を、振動ミルなどの粉砕機中に導入し、体積平均粒子径0.5〜2.0μm、好ましくは1μmまで粉砕する。次いで、この粉砕物に、水と、0.5〜2wt%のバインダと、0.5〜2wt%の分散剤とを加えることで、固形分濃度が50〜90wt%のスラリーとし、該スラリーをボールミルなどで湿式粉砕する。ここで、バインダとしては、ポリビニルアルコールなどが好ましく、分散剤としては、ポリカルボン酸アンモニウムなどが好ましい。
【0034】
[造粒工程]
本工程では、該湿式粉砕されたスラリーを噴霧乾燥機に導入し、100〜300℃の熱風中に噴霧して乾燥させ、体積平均粒子径10〜200μmの造粒粉を得る。得られた造粒粉は、本製造方法で製造される樹脂被覆キャリア2の体積平均粒子径を考慮して、それを外れる粗粒および微粉を、振動ふるいで除外して粒度調整する。具体的には、樹脂被覆キャリア2の体積平均粒子径は25〜50μmが好ましいことから、当該造粒粉の体積平均粒子径を15〜100μmに調整しておくことが好ましい。
【0035】
[仮焼工程]
本工程では、前記造粒粉を、800℃〜1000℃に加熱した炉に投入し、大気下で仮焼して仮焼品とする。このとき、樹脂粒子が燃焼し発生するガスにより造粒粉中に中空構造が形成される。
【0036】
[焼成工程]
本工程では、該中空構造が形成された仮焼品を、1100〜1250℃に加熱した炉に投入して焼成し、フェライト化して焼成物とする。焼成時の温度が高いと鉄の酸化が進行し、磁力が低下するため、キャリア芯材2aの残留磁化はたとえば焼成温度で調整することができる。該焼成時の雰囲気は、キャリア芯材2a原材料のうち、磁性酸化物などの金属原料の種類によって適宜選択される。たとえば、金属原料がFeおよびMn(モル比100:0〜50:50)である場合は窒素雰囲気とする。金属原料がFe、MnおよびMgの場合は窒素雰囲気や酸素分圧調製雰囲気が好ましく、金属原料がFe、MnおよびMgの場合であってMgのモル比が30%を超える場合は大気雰囲気でもよい。
【0037】
[解砕工程、分級工程]
本工程では、焼成工程で得られた焼成物をハンマーミル解粒等で粗粉砕し、次に気流分級機で1次分級する。さらに振動ふるいまたは超音波ふるいにて粒度をそろえた後、磁場選鉱機にかけて非磁性成分を除去することによって、内部に空隙を有し、表面に表面細孔が形成されたキャリア芯材2aを得る。
【0038】
このようにして製造されたキャリア芯材2aは、内部に空隙が形成されるとともに、表面に複数の細孔が形成される多孔質材料で構成されており、見掛密度が1.6〜2.2g/cmである。
【0039】
多孔質フェライトからなるキャリア芯材2a表面の細孔は、その合計面積が、キャリア芯材2aの総表面積に対して5〜30%の割合となるように形成されることが好ましい。また、前記細孔は、その面積平均径が0.3〜1.5μmとなるように形成されることが好ましい。前記細孔の面積割合が5%未満である場合、見掛密度が充分に小さいキャリア芯材2aとすることができない。また、前記細孔の面積割合が30%を超える、または面積平均径が1.5μmを超える場合、キャリア芯材2aの機械的強度が充分に得られない。
【0040】
ここで、キャリア芯材2a表面の細孔の面積平均径とは、キャリア芯材2aの表面に形成される細孔を小径側から積算した累積面積分布において、全細孔に対する累積面積の面積百分率が50%になる円相当径である。
【0041】
なお、細孔の面積割合P1、細孔の面積平均径は、次のようにして算出する。まず、電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス製)によって1000倍の倍率でキャリア芯材2aを写真撮影する。次いで、キャリア芯材2aの中心からキャリア芯材2aの半径の1/2の領域を撮影写真よりトリミングし、その領域から画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)によって、キャリア芯材2a表面の細孔の輪郭を抽出して解析することにより、キャリア芯材2a表面の細孔合計面積、面積平均径を算出する。このような解析を50個のキャリア芯材2aについて行い、平均値をそのキャリア芯材2a表面の細孔合計面積、面積平均径とする。そして、トリミングした領域の面積をキャリア芯材2aの総表面積とし、表面細孔の面積割合P1を算出する。
【0042】
(樹脂被覆層)
樹脂被覆層2bは、キャリア芯材2aの表面に形成される層であり、被覆用樹脂と、帯電補助微粒子2cとを含む。樹脂被覆層2bは、帯電補助微粒子2cにより凸部2dが形成される。
【0043】
被覆用樹脂としては、特に限定されず、公知のものを使用できるが、トナー離型性およびキャリア芯材2aとの密着性を両立できる点から、シリコーン樹脂を含む樹脂を使用することが好ましい。
【0044】
シリコーン樹脂としては特に限定されず、この分野にて常用されるものを使用できるが、架橋型シリコーン樹脂が好ましい。被覆用樹脂が架橋型シリコーン樹脂であることによって、樹脂被覆層2bに帯電補助微粒子2cおよび後述する含窒素有機微粒子を強固に保持できるので、長期間にわたって現像槽内で撹拌しても、樹脂被覆層2bから帯電補助微粒子2cおよび含窒素有機微粒子が脱離するのを抑制することができる。したがって、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を、長期間にわたってより一層安定化することができる。また、現像時におけるトナー3の樹脂被覆キャリア2からの離型性を一層向上させることができるので、現像性を一層良好にすることができる。
【0045】
架橋型シリコーン樹脂は、下記の化学式に示すように、Si原子に結合する水酸基同士または水酸基と−OX基とが加熱脱水反応、常温硬化反応などによって架橋して硬化する公知のシリコーン樹脂である。
【0046】
【化1】

【0047】
架橋型シリコーン樹脂としては特に制限されず、加熱硬化型シリコーン樹脂、常温硬化型シリコーン樹脂のいずれも使用できる。加熱硬化型シリコーン樹脂を架橋させるには、樹脂を200〜250℃程度に加熱する必要がある。常温硬化型シリコーン樹脂を硬化させるには加熱は必要ないけれども、硬化時間の短縮のために150〜280℃で加熱するのが好ましい。
【0048】
架橋型シリコーン樹脂の中でも、Rで示される1価の有機基がメチル基であるものが好ましい。Rがメチル基である架橋型シリコーン樹脂は、架橋構造が緻密であることから、そのような架橋型シリコーン樹脂を用いて樹脂被覆層2bを形成すると、撥水性および耐湿性などの良好な樹脂被覆キャリア2が得られる。ただし、架橋構造が緻密になりすぎると、樹脂被覆層2bが脆くなる傾向があるので、架橋型シリコーン樹脂の分子量の選択が重要である。
【0049】
また、架橋型シリコーン樹脂中の珪素と炭素の重量比(Si/C)は、0.3〜2.2が好ましい。珪素と炭素の重量比が0.3未満では、樹脂被覆層2bの硬さが低下し、樹脂被覆キャリア2の寿命などが低下するおそれがある。珪素と炭素の重量比が2.2を超えると、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する電荷付与性が温度変化による影響を受けやすくなり、樹脂被覆層2bが脆化するおそれがある。
【0050】
架橋型シリコーン樹脂としては、市販のものを使用でき、たとえば、SR2400、SR2410、SR2411、SR2510、SR2405、840RESIN、804RESIN(いずれも商品名、東レダウコーニング株式会社製)、KR271、KR272、KR274、KR216、KR280、KR282、KR261、KR260、KR255、KR266、KR251、KR155、KR152、KR214、KR220、X−4040−171、KR201、KR5202、KR3093、KR240、KR350、KR400(いずれも商品名、信越化学工業株式会社製)、TSR127B(商品名、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製)などが挙げられる。この中から、1種を単独で使用しても良いし、2種以上の樹脂を併用しても良い。
【0051】
樹脂被覆層2bは、樹脂被覆層2bに凸部2dを形成する帯電補助微粒子2cを含む。
帯電補助微粒子2cは、下記一般式(1)で表されるフェライト、下記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物からなる。
O・Fe …(1)
(式中、MはFe、Mn、Mg、Znから選ばれる金属元素を示す。)
O・6Fe …(2)
(式中、MはBa、Sr、Pbから選ばれる金属元素を示す。)
【0052】
上記一般式(1)で表されるフェライト、上記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物からなる帯電補助微粒子2cは、樹脂被覆層2bの抵抗値を低下させて、樹脂被覆層2bを適度な抵抗値に調整することができる。また、上記のような帯電補助微粒子2cにより樹脂被覆層2bに凸部2dが形成されることによって、樹脂被覆キャリア2が現像槽内で長期間撹拌されて、樹脂被覆層2bが磨耗しても、樹脂被覆キャリア2表面には帯電補助微粒子2cによって形成された凸部2dが残る。
【0053】
帯電補助微粒子2cの平均一次粒子径は、トナー粒子3bに外添された複数種の外添剤3aにおけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値よりも大きく、かつ0.2μm以上2.0μm以下である。
【0054】
上記一般式(1)で表されるフェライト、上記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物以外のものからなる粒子、たとえばアルミナからなる粒子によって樹脂被覆層に凸部が形成された樹脂被覆キャリアに、平均一次粒子径が50nm以上の外添剤3aが埋没すると、その樹脂被覆キャリアのトナー3に対する帯電付与能力が低下するが、上記のような帯電補助微粒子2cにより形成された凸部2dを有する樹脂被覆層2bを含む本実施形態の樹脂被覆キャリア2は、現像槽内で長期間撹拌されて、樹脂被覆層2bに大粒径の外添剤3aが埋没しても、帯電補助微粒子2cで形成された凸部2dがトナー3と接触し、帯電補助微粒子2cを介して樹脂被覆キャリア2からトナー3へ電荷が移動するので、長期間にわたって、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を安定化させることができる。
【0055】
帯電補助微粒子2cの平均一次粒子径が複数種の外添剤3aにおけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値以下、または0.2μmよりも小さい場合、長期の使用において、外添剤3aが樹脂被覆層2bに埋没すると、トナー3と樹脂被覆キャリア2との正常な摩擦帯電が妨げられ、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力の低下を抑制することができない。帯電補助微粒子2cの体積平均粒子径が2.0μmを超える場合、樹脂被覆層2bから帯電補助微粒子2cが脱離しやすくなる。
【0056】
上記一般式(1)で表されるフェライト、上記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物のうち、帯電補助微粒子2cとして特に、フェライトの中で抵抗値の低いマグネタイト(一般式:FeO・Fe)を用いると、より顕著に、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を安定化させることができる。また、帯電補助微粒子2cとして、バリウムフェライト(一般式:BaO・6Fe)、ストロンチウムフェライト(一般式:SrO・6Fe)といったアルカリ土類金属を含有するフェライトを用いた場合、それら自身の高い電子供与性によって、より顕著に、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を安定化させることができる。また、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を安定化させることを考慮すると、上記一般式(1)で表されるフェライトと、上記一般式(2)で表されるフェライトとでは、上記一般式(2)で表されるフェライトを用いるほうが好ましい。
【0057】
帯電補助微粒子2cの1000V/cmの電界下における体積抵抗値は、1.0×10Ω/cm以上1.0×1012Ω/cm以下が好ましい。帯電補助微粒子2cの1000V/cmの電界下における体積抵抗値が上記範囲であることによって、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を一層安定化させることができる。
【0058】
帯電補助微粒子2cの1000V/cmの電界下における体積抵抗値が1.0×10Ω/cm未満であると、樹脂被覆キャリア2の抵抗値を著しく低下させるので、感光体へのキャリア付着が増加するおそれがある。帯電補助微粒子2cの1000V/cmの電界下における体積抵抗値が1.0×1012Ω/cmを超えると、帯電補助微粒子2cを樹脂被覆層2bに含有させても、トナー3を安定して帯電させることができない。
【0059】
ここで、帯電補助微粒子2cの1000V/cmの電界下における体積抵抗値は、図2に示すような測定治具9によって測定される。図2は、測定治具9の構成を模式的に示す概略図である。測定治具9は、磁石6、アルミニウム製の2枚の電極7、基盤(アクリル樹脂板)8から構成される。電極7の間隔は1mmであり、大きさ10mm×40mmの平行平板電極を形成する。この電極間に帯電補助微粒子2cを200mg挿入し、次いで磁石6(表面磁束密度1500ガウス、対向する部分の磁石面積10mm×30mm)をN極とS極とが対向するように配置して帯電補助微粒子2cを電極間に保持する。この電極7に直流電圧1Vステップで800Vまで印加したときの電流値を計測してブリッジ抵抗値を算出し、その値を帯電補助微粒子2cの体積抵抗値とする。
【0060】
帯電補助微粒子2cの含有量は、被覆用樹脂の固形分100重量部に対して、40〜120重量部が好ましい。帯電補助微粒子2cの含有量が40重量部未満である場合、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を充分に安定化することができない。帯電補助微粒子2cの含有量が120重量部を超える場合、帯電補助微粒子2c同士での凝集が多くなり、樹脂被覆層2bを形成する際に樹脂被覆キャリア2同士の凝集物が多くなってしまう。帯電補助微粒子2c同士での凝集が多くなると、樹脂被覆キャリア2同士の凝集物が多くなる理由としては、明確ではないが、帯電補助微粒子2cの凝集物が樹脂被覆キャリア2同士を接着するよう働きをするためであると推測される。
【0061】
(含窒素有機物微粒子)
樹脂被覆層2bは、含窒素有機物からなる微粒子(以下「含窒素有機物微粒子」と記載する)を含むことが好ましい。樹脂被覆層2bが、帯電補助微粒子2cとともに含窒素有機物微粒子を含むことによって、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を、長期間にわたってさらに安定化させることができる。その理由は明確ではないが、含窒素有機物微粒子は高い電子供与性を有し、含窒素有機物微粒子が帯電補助微粒子2cへの電荷供給源となるので、トナー3に対する帯電付与能力を安定化できると考えられる。
【0062】
含窒素有機物微粒子を構成する樹脂としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。
【0063】
含窒素有機物微粒子の含有量は、被覆用樹脂の固形分100重量部に対して、15〜60重量部が好ましい。含窒素有機物微粒子の含有量が15重量部未満である場合、帯電補助微粒子2cへの電荷供給源としての役割を充分に果たすことができないので、含窒素有機物微粒子を含有させることによる、トナー3に対する帯電付与能力をさらに安定化させる効果が充分に発揮されない。含窒素有機物微粒子の含有量が60重量部を超える場合、含窒素有機物微粒子同士での凝集が多くなり、樹脂被覆層2bを形成する際に樹脂被覆キャリア2同士の凝集物が多くなってしまう。含窒素有機物微粒子同士での凝集が多くなると、樹脂被覆キャリア2同士の凝集物が多くなる理由としては、明確ではないが、含窒素有機物微粒子の凝集物が樹脂被覆キャリア2同士を接着するよう働きをするためであると推測される。
【0064】
含窒素有機物微粒子の平均一次粒子径は0.2μm以上、帯電補助微粒子2cの平均一次粒子径よりも小さいことが好ましい。含窒素有機物微粒子の平均一次粒子径が0.2μm未満であると、帯電補助微粒子2cへの電荷供給源としての役割を充分に果たすことができないので、含窒素有機物微粒子を含有させることによる、トナー3に対する帯電付与能力をさらに安定化させる効果が充分に発揮されない。含窒素有機物微粒子の平均一次粒子径が帯電補助微粒子2cの平均一次粒子径以上であると、帯電補助微粒子2cによって形成される凸部2d以上に、含窒素微粒子によって形成される凸部が大きくなってしまうので、帯電補助微粒子2cによって形成される凸部2dがトナー3と接触しにくくなり、トナー3に対する帯電付与能力を安定化させることができない。
【0065】
(導電性粒子)
樹脂被覆層2bは導電性粒子を含有しても良い。樹脂被覆層2bに導電性粒子が含まれることによって、樹脂被覆キャリア2のトナー3に対する帯電付与能力を高め、長期間にわたってトナー3をより一層安定して帯電させることができる。
【0066】
導電性粒子としては、たとえば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化スズなどの酸化物が用いられる。少ない添加量で導電性を発現させるには、カーボンブラックなどが好適であるけれども、カラートナーに対しては樹脂被覆キャリア2の樹脂被覆層2bからのカーボン脱離が懸念される場合がある。このときはアンチモンをドープさせた導電性酸化チタンなどを用いてもよい。
【0067】
導電性粒子は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。導電性粒子の体積平均粒子径は特に制限されないけれども、好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.02〜1μmである。なお、この体積平均粒子径はレーザー回折・散乱式の粒度測定装置(たとえば、株式会社堀場製作所製のLA−920)を用いて測定される値である。
【0068】
樹脂被覆層2bにおける導電性粒子の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは被覆用樹脂100重量部に対して30重量部以下であり、より好ましくは1重量部以上30重量部以下である。導電性粒子の含有量が被覆用樹脂100重量部に対して30重量部を超えると、樹脂被覆層2bから導電性粒子が欠落しやすく、カラー画像に影響を及ぼすことが懸念される。また樹脂被覆層2bの機械的強度およびキャリア芯材2aに対する密着性が不充分となり、樹脂被覆層2bが剥離して、キャリア芯材2aが露出するおそれがある。樹脂被覆層2bが剥離してキャリア芯材2aが露出すると、初期の樹脂被覆キャリア2と比べて、帯電性能が変化してしまい、トナー3を安定して帯電させることができないおそれがある。
【0069】
導電性粒子の含有量を被覆用樹脂100重量部に対して30重量部以下にすることによって、樹脂被覆層2bからの導電性粒子の欠落を防いで、カラー画像への影響を抑えることができる。また樹脂被覆層2bの機械的強度およびキャリア芯材2aに対する密着性を向上させることができるので、長期的かつ安定的にトナー3を帯電させることのできる樹脂被覆キャリア2が実現される。したがって高画質の画像をより安定的に形成することのできる現像剤が実現される。
【0070】
導電性粒子の含有量が被覆用樹脂100重量部に対して1重量部未満であると、導電性粒子の添加効果が見られず、トナー3に充分な電荷を付与することができないおそれがある。導電性粒子の含有量を被覆用樹脂100重量部に対して1重量部以上とすることによって、導電性粒子の添加効果をより確実に発現させ、トナー3に充分な電荷を付与することができる。
【0071】
(シランカップリング剤)
樹脂被覆層2bは、トナー3の帯電量の調整を一層容易にするために、シランカップリング剤を含有してもよい。その中でも、電子供与性の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、アミノ基含有シランカップリング剤がさらに好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤としては公知のものを使用でき、たとえば、下記一般式(3)に示すものが挙げられる。
(Y)nSi(R)m(Z)q …(3)
(式中、m個のRおよびq個のZは同一または異なるアルキル基、アルコキシ基または塩素原子を示す。n個のYは同一または異なるアミノ基を含有する炭化水素基を示す。mおよびnはそれぞれ1〜3の整数を示す。ただし、m+q+n=4である。)
【0072】
上記一般式(1)において、RおよびZで示されるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基などが好ましい。RおよびZで示されるアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。Yで示されるアミノ基を含有する炭化水素基としては、たとえば、−(CH−X(式中、Xはアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、フェニルアミノ基またはジアルキルアミノ基を示す。aは1〜4の整数を示す。)、−Ph−X(式中、Xは前記に同じ。−Ph−はフェニレン基を示す。)などが挙げられる。
【0073】
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、たとえば、次のようなものが挙げられる。
N(HC)Si(OCH
N(HC)Si(OC
N(HC)Si(CH)(OCH
N(HC)HN(HC)Si(CH)(OCH
NOCHN(HC)Si(OC
N(HC)HN(HC)Si(OCH
N−Ph−Si(OCH(式中−Ph−はp−フェニレン基を示す。)
Ph−HN(HC)Si(OCH(式中Ph−はフェニル基を示す。)
(HN(HC)Si(OCH
【0074】
アミノ基含有シランカップリング剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。アミノ基含有シランカップリング剤の使用量はトナー3に充分な電荷を付与し、かつ樹脂被覆層2bの機械的強度などを著しく低下させることがない範囲から適宜選択されるけれども、好ましくは樹脂被覆層2bの組成物100重量部に対して10重量部以下、さらに好ましくは0.01重量部以上10重量部以下である。
【0075】
(その他の添加剤)
被覆用樹脂として架橋型シリコーン樹脂を用いる場合、樹脂被覆層2bは、架橋型シリコーン樹脂により形成される樹脂被覆層2bの好ましい特性を損なわない範囲で、架橋型シリコーン樹脂とともに他の樹脂を含むことができる。他の樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アセタール樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン、これらの共重合体樹脂、配合樹脂などが挙げられる。また、樹脂被覆層2bは、架橋型シリコーン樹脂により形成される樹脂被覆層2bの耐湿性、離型性などをさらに向上させるために、二官能性シリコーンオイルを含むことができる。
【0076】
樹脂被覆層2bの層厚は、5μm以下が好ましく、0.1〜3μm程度がより好ましい。このような層厚の樹脂被覆層2bであることによって、樹脂被覆層2bに帯電補助微粒子2cによって凸部2dを形成することができるとともに、樹脂被覆層2bからの帯電補助微粒子2cの離脱を抑制することができる。なお、樹脂被覆層2bの層厚は、帯電補助微粒子によって凸部が形成された部分、および帯電補助微粒子2cによる凸部2dが形成されていない部分を含めた樹脂被覆層2bの厚みの平均値を示し、測定方法は後述する。
【0077】
(樹脂被覆キャリアの製造方法)
樹脂被覆キャリア2の製造方法は、コート樹脂液調製工程と、被覆工程とを含む。
【0078】
[コート樹脂液調製工程]
コート樹脂液調製工程では、コート樹脂液を調製する。コート樹脂液は、樹脂被覆層2bの原料を有機溶媒に溶解または分散させることで調製できる。
【0079】
有機溶媒としては、被覆用樹脂を溶解できるものであれば特に限定されないけれども、たとえば、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、高級アルコール類、ならびにこれらの2種以上の混合溶媒などが挙げられる。後述する被覆工程でこのようなコート樹脂液を用いることによって、キャリア芯材2aの表面に樹脂被覆層2bを容易に形成できる。
【0080】
[被覆工程]
被覆工程では、コート樹脂液を用いてキャリア芯材2aの表面に樹脂被覆層2bを形成する。樹脂被覆層2bは、キャリア芯材2a表面にコート樹脂液を付着させてコート層を形成し、加熱によってコート層から有機溶媒を揮発除去し、さらに乾燥時または乾燥後にコート層を加熱硬化または単に硬化させることによって形成できる。これによって、樹脂被覆キャリア2が得られる。
【0081】
コート樹脂液のキャリア芯材2a表面への付着方法としては、たとえば、キャリア芯材2aをコート樹脂液に含浸させる浸漬法、キャリア芯材2aにコート樹脂液を噴霧するスプレー法、流動気流によって浮遊状態にあるキャリア芯材2aにコート樹脂液を噴霧する流動層法などが挙げられる。これらの中でも、樹脂被覆層2bを容易に形成できることから、浸漬法が好ましい。
【0082】
コート層の乾燥には、乾燥促進剤を用いてもよい。乾燥促進剤としては公知のものを使用でき、たとえば、ナフチル酸、オクチル酸などの鉛、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛塩などの金属石鹸、エタノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。乾燥促進剤は、コート樹脂液に含有させて用いる。
【0083】
コート層の硬化には、硬化触媒を用いてもよい。硬化触媒としては、オルガチックス TC−401、TC−750、TC−100(マツモトファインケミカル株式会社製)の有機チタン化合物などが挙げられる。硬化触媒は、コート樹脂液に含有させて用いる。
【0084】
コート層の硬化は、被覆用樹脂の種類に応じて加熱温度を選択しながら行う。たとえば、150〜280℃程度に加熱して行うのが好ましい。被覆用樹脂が常温で硬化するタイプのものである場合は、加熱は必須ではないけれども、形成される樹脂被覆層2bの機械的強度を向上させること、硬化時間を短縮することなどを目的として、150〜280℃程度に加熱してもよい。
【0085】
[微粒子添加工程]
キャリア芯材2aとして多孔質フェライトを用いる場合、被覆工程の前に微粒子添加工程を行ってもよい。
【0086】
微粒子添加工程では、多孔質フェライトからなるキャリア芯材2aを、帯電補助微粒子2cまたは含窒素有機物微粒子が有機溶媒中に分散されてなる微粒子分散液に浸漬し、撹拌しながら加熱(温度:80〜100℃)する。ここで、前記有機溶媒としては、帯電補助微粒子2cまたは含窒素有機物微粒子を溶解させない溶媒であれば特に限定されないが、たとえば、トルエンなどを挙げることができる。その後、有機溶媒を揮発除去することによってキャリア芯材2a表面の細孔が帯電補助微粒子2cまたは含窒素有機物微粒子で塞がれたキャリア芯材2a(含窒素有機物微粒子付着キャリア芯材、帯電補助微粒子付着キャリア芯材)を得る。このように、樹脂被覆層2bを形成する前に、帯電補助微粒子2cまたは含窒素有機物微粒子によってキャリア芯材2a表面の細孔を塞ぐことで、少ない樹脂量で樹脂被覆層2bを形成することができる。
【0087】
なお、本工程において、帯電補助微粒子2cおよび含窒素有機物微粒子のどちらの粒子を用いた場合でも、キャリア芯材2a表面の複数の細孔を全て塞ぐことはなく、本工程の後も、帯電補助微粒子2cおよび含窒素有機物微粒子のどちらの粒子にも塞がれていない細孔に起因したキャリア芯材2a表面の凹凸は存在する。そのため、たとえば、被覆工程で、含窒素有機物微粒子付着キャリア芯材の表面に樹脂被覆層2bを形成する場合、キャリア芯材2aの一部の細孔が含窒素有機物微粒子によって予め塞がれていたとしても、含窒素有機物微粒子で塞がれていない残余の細孔に帯電補助微粒子2cが嵌り込む。したがって、本工程において、キャリア芯材2a表面の一部の細孔を含窒素有機物微粒子で塞いだとしても、被覆工程において帯電補助微粒子2cが含窒素有機物微粒子で塞がれていない残余の細孔に嵌り込むので、帯電補助微粒子2cのキャリア芯材2aに対する密着性は高くなる。
【0088】
微粒子添加工程で用いる微粒子としては、帯電補助微粒子2cよりも、含窒素有機物微粒子の方が好ましい。含窒素有機物微粒子の方が、キャリア芯材2a表面の細孔を塞ぐ効果が大きく、コート樹脂液量を減らすことができる。この理由としては、含窒素有機物微粒子の方が帯電補助微粒子2cよりも、トルエンのような溶媒への分散性が良く、キャリア芯材2a表面の細孔を均一に埋めることができるためである。
【0089】
また、本工程において、キャリア芯材2aの細孔を、帯電補助微粒子2cおよび含窒素有機物微粒子で塞いでもよい。その場合は、帯電補助微粒子2cおよび含窒素有機物微粒子が有機溶媒中に分散されてなる微粒子分散液をキャリア芯材2aに付着させ、有機溶媒を揮発除去する。
【0090】
<トナー>
本発明の実施の一形態である2成分現像剤1は、前述の本発明の樹脂被覆キャリア2と、平均一次粒子径が50nm以上の大粒径の外添剤3aがトナー粒子3bに外添されたトナー3とを含む。
【0091】
トナー粒子3bの原料としては、結着樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤などが挙げられる。
【0092】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、ブラックトナー用またはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートナーどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂を得るための芳香系のアルコール成分としては、たとえばビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0094】
また上記ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの二塩基酸類、トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸などの三塩基以上の酸類およびこれらの無水物、低級アルキルエステル類が挙げられ、耐熱凝集性の点からテレフタル酸、またはその低級アルキルエステルが好ましい。
【0095】
ここで上記ポリエステル樹脂の酸価は、5〜30mgKOH/gが好ましい。酸価が5mgKOH/g未満になると樹脂の帯電特性の低下を招いたり、帯電制御剤がポリエステル樹脂中に分散しにくくなったりする。これにより、帯電量の立ち上がりおよび連続使用による繰り返し現像の帯電量安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。酸価が30mgKOH/gを超えると、酸価に起因する官能基による吸湿性が向上し、使用環境の変化による帯電量の変化、たとえば、高温高湿環境下における帯電量低下を招くおそれがある。よって、上記範囲が好ましい。なお、酸価の測定は、日本工業規格(JIS)K0070−1992に記載の電位差滴定法に準拠して行う。
【0096】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、得られるトナー3の定着性および保存安定性などを考慮すると、40℃以上80℃以下であることが好ましい。30℃未満であると、保存安定性が不充分になるため画像形成装置内部でのトナー3の熱凝集が起こりやすくなり、現像不良が発生するおそれがある。また高温オフセット現象が発生し始める温度(以下、「高温オフセット開始温度」と称する)が低下してしまう。高温オフセット現象とは、加熱ローラなどの定着部材で加熱および加圧してトナー3を記録媒体に定着させる際に、トナー3が過熱されることによってトナー粒子3bの凝集力がトナー3と定着部材との接着力を下回ってトナー層が分断され、トナー3の一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。また80℃を超えると、定着性が低下するため定着不良が発生するおそれがある。
【0097】
結着樹脂の軟化温度(T1/2)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、150℃以下であることが好ましく、さらには60℃以上120℃以下であることが好ましい。60℃未満であると、トナー3の保存安定性が低下し、画像形成装置内部でトナー3の熱凝集が起こりやすくなり、トナー3を安定して像担持体に供給することができず、現像不良が発生するおそれがある。また画像形成装置の故障が誘発されるおそれもある。120℃を超えると、トナー3を記録媒体に定着させる際に、トナー3が溶融または軟化しにくくなるので、トナー3の記録媒体への定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
【0098】
結着樹脂の分子量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、重量平均分子量(Mw)で5,000以上500,000以下であることが好ましい。5,000未満であると、結着樹脂の機械的強度が低下し、得られるトナー粒子3bが現像装置内部での撹拌などによって粉砕されやすくなり、トナー粒子3bの形状が変化し、たとえば帯電性能にばらつきが生じるおそれがある。また500,000を超えると、溶融されにくくなるため、トナー3の定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。ここで、結着樹脂の重量平均分子量は、GPCによって測定されるポリスチレン換算の値である。
【0099】
(着色剤)
着色剤としては、所望の色に応じて種々の着色剤を用いることができ、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
【0100】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0101】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、C.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0102】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー 25、C.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0103】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
【0104】
着色剤としては、これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用してもよい。着色剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
【0105】
着色剤はマスターバッチの形態で使用されてもよい。着色剤のマスターバッチは、一般的なマスターバッチと同様にして製造できる。たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練して着色剤を合成樹脂中に均一に分散させた後、得られる溶融混練物を造粒することによって製造できる。合成樹脂には、トナーの結着樹脂と同種のものか、またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有するものが使用される。このとき、合成樹脂と着色剤との使用割合は、特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して、30〜100重量部である。また、マスターバッチは、粒径2〜3mm程度に造粒される。
【0106】
また、着色剤の使用量は、特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5〜20重量部である。これはマスターバッチ量ではなく、マスターバッチに含まれる着色剤そのものの量である。着色剤をこの範囲で用いることによって、トナーの各種物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0107】
(離型剤)
離型剤は、トナー3を記録媒体に定着させる際にトナー3に離型性を付与するために添加される。したがって、離型剤を使用しない場合と比較して高温オフセット開始温度を高め、耐高温オフセット性を向上させることができる。またトナー3を定着させる際の加熱によって離型剤を溶融させ、定着開始温度を低下させ、耐高温オフセット性を向上させることができる。離型剤としては、この分野で常用されるものが使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。離型剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部である。
【0108】
(帯電制御剤)
帯電制御剤は、トナー3の摩擦帯電性を制御することを目的として添加される。帯電制御剤としては、この分野で常用される負電荷制御用のものを使用できる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。この中でもホウ素化合物は重金属を含まないものとして特に好ましい。帯電制御剤は、用途に応じて使い分ければよい。帯電制御剤は、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。帯電制御剤の使用量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
【0109】
(トナーの製造方法)
トナー粒子3bの製造方法は特に制限されず、公知の製造方法により得ることができる。トナー粒子3bは、たとえば、溶融混練粉砕法によって製造できる。溶融混練粉砕法は、たとえば混合工程、溶融混練工程、粉砕工程および分級工程を含む。溶融混練粉砕法によれば、混合工程では、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、その他の添加材などのそれぞれ所定量を乾式混合し混合物を得る。溶融混練工程では、混合物を溶融混練し、得られる溶融混練物を冷却して固化させ固化物を得る。粉砕工程では、固化物を機械的に粉砕する。分級工程では、粉砕工程にて得られた粉砕物から、分級機で過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去する。これらの工程を経ることで、トナー粒子3bを製造できる。
【0110】
乾式混合に用いられる混合機としては、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0111】
混練は、撹拌下に結着樹脂の溶融温度以上の温度(通常は80〜200℃程度、好ましくは100〜150℃程度)に加熱しながら行われる。混練機として、たとえば、2軸押し出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)などの1軸もしくは2軸の押出機、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式のものが挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式のものが好ましい。溶融混練物を冷却して得られる固化物の粉砕には、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルなどが挙げられる。たとえば、固化物をカッターミルで粗粉砕した後、ジェットミルで粉砕することによって、所望の体積平均粒子径を有するトナー粒子3bが得られる。
【0112】
分級には、遠心力による分級または風力による分級によって過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
【0113】
またトナー粒子3bは、たとえば、溶融混練物の固化物を粗粉砕し、得られる粗粉砕物を水性スラリー化し、得られる水性スラリーを高圧ホモジナイザで処理して微粒化し、得られる微粒を水性媒体中で加熱して凝集・溶融させることによっても製造できる。溶融混練物の固化物の粗粉砕は、たとえば、ジェットミル、ハンドミルなどを用いて行われる。粗粉砕によって、粒子径100μm〜3mm程度の粒子径を有する粗粉を得る。粗粉を水に分散させて、水性スラリーを調製する。粗粉を水に分散させるに際しては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの分散剤の適量を水に溶解させておくことによって、粗粉が均一に分散した水性スラリーが得られる。この水性スラリーを高圧ホモジナイザで処理することによって、水性スラリー中の粗粉が微粒化され、体積平均粒子径0.4〜1.0μm程度の微粒を含む水性スラリーが得られる。この水性スラリーを加熱し、微粒を凝集させ、微粒同士を溶融させて結合することによって、所望の体積平均粒子径および平均円形度を有するトナー粒子3bが得られる。体積平均粒子径および平均円形度は、たとえば、微粒の水性スラリーの加熱温度および加熱時間を適宜選択することによって、所望の値にすることができる。加熱温度は、結着樹脂の軟化点以上、結着樹脂の熱分解温度未満の温度範囲から適宜選択される。加熱時間が同じである場合には、通常は、加熱温度が高いほど、得られるトナー粒子3bの体積平均粒子径は大きくなる。
【0114】
高圧ホモジナイザとしては、市販品が知られる。高圧ホモジナイザの市販品としては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)、NANO3000(商品名、株式会社美粒製)などが挙げられる。
【0115】
以上のように製造されたトナー粒子3bには球形化処理が施されてもよく、球形化する手段としては衝撃式球形化装置、熱風式球形化装置などが挙げられる。衝撃式球形化装置としては、市販されているものを使用することもでき、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)などを用いることができる。または、熱風式球形化装置としては、市販されているものも使用することができ、たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などを用いることができる。
【0116】
(外添剤)
このようにして得られたトナー粒子3bには、平均一次粒子径が50nm以上、好ましくは0.1μm以上0.2μm以下の外添剤3aが外添される。外添剤3aの平均一次粒子径が50nm未満であると、特にカラートナーにおいて、転写性を向上させることができない。外添剤3aの平均一次粒子径が0.2μmを超えると、トナー粒子3bから外添剤3aが離脱しやすくなる。
【0117】
外添剤3aとしては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。
【0118】
また上記以外にも、少なくとも1種類以上の外添剤3aを併用することができる。併用できる外添剤3aとしては特に限定されず、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。併用できる外添剤3aの平均一次粒子径は、5〜30nmであることが好ましい。このような粒子径の外添剤3aを併用することによって、トナーの流動性を向上させることができる。併用できる外添剤3aの平均一次粒子径が5nm未満だと、均一に分散させることが困難である。併用できる外添剤3aの平均一次粒子径が30nmを超えると、流動性の向上効果が充分でない。
【0119】
ここで、外添剤3aの平均一次粒子径は、動的光散乱を利用する粒子径分布測定装置、たとえばDLS−800(商品名、株式会社大塚電子製)、コールターN4(商品名、コールターエレクトロニクス社製)などによって測定可能であるけれども、疎水化処理後の粒子の二次凝集を解離することは困難であるため、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)により得られる写真画像を画像解析することにより直接求めることが好ましい。
【0120】
また、外添剤3aの添加量は、特に制限されないけれども、好ましくはトナー粒子3b100重量部に対して0.1〜3.0重量部である。外添剤3aの添加量をこのような範囲とすることによって、トナー3に流動性を付与し、転写効率を高めることができる。外添剤3aの添加量が0.1重量部未満だと、トナー3に充分な流動性を与えることができず、また転写効率を高めることができない。外添剤3aの添加量が3.0重量部を超えると、外添剤3aが樹脂被覆キャリア2表面へ付着しやすくなる。
【0121】
このようにして得られたトナー3を、本発明の樹脂被覆キャリア2と混合撹拌することによって、本発明の2成分現像剤1を得ることができる。
【0122】
上記樹脂被覆キャリア2と上記トナー3との混合割合は、特に制限はないけれども、A4サイズの画像で1分間に40枚以上印刷可能な高速画像形成装置に用いることを考慮すると、トナー3の体積平均粒子径に対する樹脂被覆キャリア2の体積平均粒子径の比率が5以上であり、カバレッジθが50〜75%程度のものを用いることが好ましい。これによって、トナー3の帯電性が充分良好な状態で安定的に維持され、高速画像形成装置においても高画質画像を安定的に、かつ長期的に形成できる好適な現像剤として使用できる。
【0123】
カバレッジθの値は、現像剤中のトナー濃度で調整することができる。現像剤中のトナー濃度が低い場合(カバレッジθが50%より小さい場合)はトナー帯電量が上昇する傾向にあり、トナー濃度が高い場合(カバレッジθが75%より大きい場合)にはトナー帯電量が減少する傾向にある。そのため、この現象を利用し帯電量をある程度調節することが可能である。しかしながら、実機に搭載して現像剤を使用する場合、トナー濃度を下げていくと、キャリアと感光体との接触面積の増加からキャリア付着が問題となって現れる。またトナー濃度を上げていくと、帯電量の低下とともにトナー飛散が深刻になってくる。
【0124】
カバレッジθとトナー濃度との関係としては、具体的には、トナー3の体積平均粒子径が6.5μmであり、樹脂被覆キャリア2の体積平均粒子径が40μmである場合に、カバレッジθを50〜75%にすると、現像剤中で100重量部の樹脂被覆キャリア2に対してトナー3が6.9〜10.4重量部程度含まれる。このような現像剤で高速現像すると、トナー消費量とトナー3の消費に応じて現像装置の現像槽に供給されるトナー供給量とがそれぞれ最大になり、それでも需給バランスが損なわれることがない。そして、現像剤中で100重量部の樹脂被覆キャリア2に対してトナー3が6.9〜10.4重量部程度よりも多くなると、帯電量がより低くなる傾向があり所望の現像特性が得られないばかりか、トナー供給量よりもトナー消費量の方が多くなり、トナー3に充分な電荷を付与できなくなり、画質の劣化を招く。反対に、トナー3の量が少ない場合は帯電量が高くなる傾向があり、樹脂被覆キャリア2からトナー3が電界によって分離しにくくなり、結果として画質の劣化を招く。
【0125】
トナー3の総投影面積は、本実施形態では、以下のように算出する。トナー3の比重を1.0とし、コールターカウンタ(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径を基に算出する。すなわち、混合するトナー重量中のトナー個数を算出し、トナー個数×トナー面積(円と仮定して算出)をトナー総投影面積とする。同様に、樹脂被覆キャリア2の表面積の総和は、キャリア比重を4.7とし、マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)よって得られた粒子径を基に、混合するキャリア重量から総表面積を算出する。
【0126】
本発明の2成分現像剤は、上記樹脂被覆キャリア2と上記トナー3とを含むので、長期間にわたってトナー帯電量を安定させることができ、画像濃度が高く、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0127】
以下に本発明に係る実施例および比較例を記載する。本発明はその要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0128】
[キャリア芯材の体積平均粒子径]
エマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルHLB13.6)の5%水溶液10mlに測定試料を約10〜15mg添加し、超音波分散機を用いて、測定試料の分散処理を1分間行い、前記水溶液中に測定試料を分散させた。このうち約1mlをマイクロトラックMT3000(日機装株式会社)の所定箇所に充填した後、1分間撹拌し散乱光強度が安定したことを確認して測定を行った。
【0129】
[トナーの体積平均粒子径]
100mlビーカーに、塩化ナトリウム(1級)の1%水溶液(電解液)を20ml入れ、これにアルキルベンゼンスルホン酸塩(分散剤)0.5mlおよび測定試料3mgを順次添加し、5分間超音波分散処理を行った。これに全量が100mlになるように塩化ナトリウム(1級)の1%水溶液を添加し、再度5分間超音波分散処理を行ったものを測定用試料とした。この測定用試料について、コールターカウンタ TA−III(商品名、コールター社製)を用い、アパーチャー径100μm、測定対象粒径が個数基準で2〜40μmの条件下で測定を行い、測定試料の体積平均粒子径を算出した。
【0130】
[キャリア芯材の見掛密度]
キャリア芯材の見掛密度は、JIS Z2504 2000に準拠して測定した。
【0131】
[帯電補助微粒子および含窒素有機物微粒子の平均一次粒子径]
電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス社製)を用いて、10000倍の倍率で、50個の帯電補助微粒子について一次粒子径を測定し、それらの平均値を帯電補助微粒子の平均一次粒子径とした。含窒素有機物微粒子の平均一次粒子径も同様にして測定した。
【0132】
[外添剤の平均一次粒子径]
電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス社製)を用いて、10000倍の倍率で、50個の外添剤について一次粒子径を測定し、それらの平均値を外添剤の平均一次粒子径とした。
【0133】
[樹脂被覆層の層厚]
CP(クロスセクションポリッシャー、商品名:SM09020CP、日本電子株式会社製)を用いて、樹脂被覆キャリアの断面を観察し、樹脂被覆キャリア1個当たり5点平均で樹脂被覆層の厚さを測定した。同様にして樹脂被覆キャリア10個の樹脂被覆層の厚さを測定し、計50点の樹脂被覆層の厚さの平均値を樹脂被覆層の層厚とした。
【0134】
(実施例1)
[コート樹脂液調製工程]
架橋型シリコーン樹脂(商品名:KR350、信越化学工業株式会社製)1.0重量部をトルエン12重量部に溶解し、そこに帯電補助微粒子(構成成分:バリウムフェライト、平均一次粒子径:0.8μm、体積抵抗値:1.0×1010Ω/cm)0.8重量部、含窒素有機物微粒子(構成成分:メラミン樹脂、平均一次粒子径:0.4μm)0.3重量部、導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.05重量部、カップリング剤(商品名:Z−6011、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.05重量部、硬化触媒(商品名:オルガチックス TC−401、マツモトファインケミカル株式会社製)0.03重量部を内添または分散させることでコート樹脂液を調製した。
【0135】
[被覆工程]
コート樹脂液14.23重量部を用いて、浸漬法によって、体積平均粒子径40μmのキャリア芯材(Mn−Mgフェライト)100重量部の表面を被覆した。その後、キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることで実施例1の樹脂被覆キャリアを得た。
【0136】
(実施例2)
コート樹脂液調製工程において、バリウムフェライトからなる帯電補助微粒子の代わりに、マグネタイトからなる帯電補助微粒子(平均一次粒子径:0.3μm、体積抵抗値:1.0×10Ω/cm)を0.5重量部用い、平均一次粒子径が0.4μmのメラミン樹脂からなる含窒素有機物微粒子の代わりに、平均一次粒子径が0.2μmのメラミン樹脂からなる含窒素有機物微粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の樹脂被覆キャリアを得た。
【0137】
(実施例3)
コート樹脂液調製工程において、バリウムフェライトからなる帯電補助微粒子の代わりに、Mn−Znフェライトからなる帯電補助微粒子(平均一次粒子径:1.9μm、体積抵抗値:1.0×10Ω/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の樹脂被覆キャリアを得た。
【0138】
(実施例4)
コート樹脂液調製工程において、含窒素有機物微粒子を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして実施例4の樹脂被覆キャリアを得た。
【0139】
(実施例5)
[秤量工程、混合工程]
キャリア芯材の原材料として、微粉砕したFeとMgCOとを準備し、モル比でFe:MgCO=80:20となるように秤量し、混合して金属原料混合物を得た。キャリア芯材の全原材料に対して0.4wt%に相当する体積平均粒子径5μmのポリエチレン樹脂粒子(商品名:LE−1080、住友精化株式会社製)と、1.5wt%に相当するポリカルボン酸アンモニウム系分散剤と、0.05wt%に相当するSNウェット980(湿潤剤、サンノプコ株式会社製)と、0.02wt%に相当するポリビニルアルコール(バインダ)とを水中へ添加した水溶液を調製した。
【0140】
[粉砕工程]
前記水溶液に金属原料混合物を投入して撹拌し、濃度75wt%のスラリーを得た。このスラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕し、体積平均粒子径が1μmとなるまでしばらく撹拌した。
【0141】
[造粒工程]
スプレードライヤーにて該スラリーを噴霧し、体積平均粒子径10〜200μmの乾燥した造粒品を得た。網目61μmの篩網を用いてこの造粒品から粗粒を分離した。
【0142】
[仮焼工程]
大気下において乾燥造粒品を900℃で加熱することで仮焼し、樹脂粒子成分を分解させて仮焼品とした。
【0143】
[焼成工程]
1160℃の窒素雰囲気下で仮焼品を5時間焼成してフェライト化させ、焼成品とした。
【0144】
[解砕工程、分級工程]
焼成品をハンマーミルで解砕して、風力分級機を用いて微粉を除去し、網目54μmの振動ふるいで粒度調整することによって多孔質フェライトからなるキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材は、見掛密度が2.00g/cmであり、表面細孔の面積平均径が0.40μmであった。
【0145】
[微粒子添加工程]
含窒素有機物微粒子(構成成分:メラミン樹脂、平均一次粒子径:0.40μm)0.6重量部をトルエン15重量部に添加し、スリーワンモーターで5分間撹拌することでトルエン中に含窒素有機物微粒子を分散させて、含窒素有機物微粒子分散液を得た。
【0146】
この含窒素有機物微粒子分散液に、多孔質フェライトからなるキャリア芯材100重量部を浸し、加熱しながら撹拌した。その後、トルエンを揮発除去することによって、キャリア芯材の表面に含窒素有機物微粒子を付着させ、表面細孔が含窒素有機物微粒子で塞がれた含窒素有機物微粒子付着キャリア芯材を得た。
【0147】
[コート樹脂液調製工程]
架橋型シリコーン樹脂(商品名:KR350、信越化学工業株式会社製)2.0重量部をトルエン15重量部に溶解し、そこに帯電補助微粒子(構成成分:バリウムフェライト、平均一次粒子径:0.8μm、体積抵抗値:1.0×1010Ω/cm)1.6重量部、導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.10重量部、カップリング剤(商品名:Z−6011、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.10重量部、硬化触媒(商品名:オルガチックス TC−401、マツモトファインケミカル株式会社製)0.06重量部を内添または分散させることでコート樹脂液を調製した。
【0148】
[被覆工程]
コート樹脂液18.86重量部を用いて、浸漬法によって、100.6重量部の含窒素有機物微粒子付着キャリア芯材の表面を被覆した。その後、キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることで実施例5の樹脂被覆キャリアを得た。
【0149】
(実施例6)
コート樹脂液調製工程において、バリウムフェライトからなる帯電補助微粒子の代わりに、ストロンチウムフェライトからなる帯電補助微粒子(平均一次粒子径:1.0μm、体積抵抗値:1.0×1010Ω/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の樹脂被覆キャリアを得た。
【0150】
(比較例1)
コート樹脂液調製工程において、帯電補助微粒子を用いないこと以外は実施例1と同様にして比較例1の樹脂被覆キャリアを得た。
【0151】
(比較例2)
コート樹脂液調製工程において、平均一次粒子径が0.8μmの帯電補助微粒子の代わりに、平均一次粒子径が0.1μmのマグネタイトからなる帯電補助微粒子(体積抵抗値:1.0×10Ω/cm)を0.5重量部用い、平均一次粒子径が0.4μmの含窒素有機物微粒子の代わりに、平均一次粒子径が0.2μmのメラミン樹脂からなる含窒素有機物微粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の樹脂被覆キャリアを得た。
【0152】
(比較例3)
コート樹脂液調製工程において、平均一次粒子径が0.8μmの帯電補助微粒子の代わりに、平均一次粒子径が3.0μmのマグネタイトからなる帯電補助微粒子(体積抵抗値:1.0×10Ω/cm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の樹脂被覆キャリアを得た。
【0153】
(比較例4)
コート樹脂液調製工程において、帯電補助微粒子の代わりにアルミナ微粒子(平均一次粒子径:1.0μm、体積抵抗値:1.0×1015Ω/cm)を0.8重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の樹脂被覆キャリアを得た。
【0154】
(比較例5)
コート樹脂液調製工程において、バリウムフェライトからなる帯電補助微粒子の代わりに、アモルファスシリカ微粒子(平均一次粒子径:1.1μm、体積抵抗値:1.0×1015Ω/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例5の樹脂被覆キャリアを得た。
【0155】
実施例および比較例の樹脂被覆キャリアの構成成分、および樹脂被覆層の層厚などを表1に示す。なお、帯電補助微粒子および含窒素有機物微粒子を用いないこと以外は、実施例1〜4,6および比較例1〜5と同様にして樹脂被覆キャリアを作製した場合、その樹脂被覆キャリアの膜厚は0.3μmとなり、帯電補助微粒子および含窒素有機物微粒子を用いないこと以外は実施例5と同様にして樹脂被覆キャリアを作製した場合、その樹脂被覆キャリアの膜厚は0.4μmとなる。
【0156】
【表1】

【0157】
<トナーの作製>
結着樹脂としてポリエステル樹脂(商品名:FC1494、三菱レーヨン株式会社製)87.5重量部、着色剤(C.I.Pigment Red 57:1)5重量部、離型剤(商品名:HNP11、日本精鑞株式会社製)6重量部、帯電制御剤(商品名:LR−147、日本カーリット株式会社製)1.5重量部を、ヘンシェルミキサにて前混合した後、二軸押出混練機にて溶融混練して混練物を得た。
【0158】
この混練物をカッティングミルで粗粉砕した後、ジェットミルにて微粉砕し、風力分級機で分級することによって、平均一次粒子径が6.5μmのトナー母体粒子を作製した。
【0159】
このトナー母体粒子97.8重量%に、i‐ブチルトリメトキシシランで疎水化処理した平均一次粒子径が0.1μmのシリカ1.2重量%と、HMDSで疎水化処理した平均一次粒子径が12nmのシリカ微粒子1.0重量%とを加え、ヘンシェルミキサにて混合して外添処理を行うことによって、負帯電性のトナー(非磁性マゼンタトナー)を得た。トナーに外添された複数種の外添剤におけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値は、0.1μmである。
【0160】
<2成分現像剤の作製>
樹脂被覆キャリアの総表面積に対するトナーの総投影面積の割合が70%となるような重量比で、実施例および比較例の樹脂被覆キャリアとトナーとを、樹脂製円筒容器に投入した後、両軸駆動ポリ瓶回転架台にて、回転数200rpm、1時間の条件で混合撹拌することによって、2成分現像剤を作製した。
【0161】
<評価>
前記2成分現像剤を用いて以下の評価を行った。
【0162】
[ライフ特性]
前記2成分現像剤を複写機(商品名:MX−5000FN、カラープリント速度50ppm、モノクロプリント速度50ppm、シャープ株式会社製)にセットし、常温常湿下において印字率5%の画像を50000(50K)枚印刷した。50K枚印刷前後の2成分現像剤の帯電量を用いて2成分現像剤の帯電安定性を評価した。2成分現像剤の初期(50K枚印刷前)および50K枚印刷後の帯電量は、吸引式帯電量測定装置を用いて測定した。
【0163】
2成分現像剤の帯電安定性の評価基準は以下のとおりである。
○:良好。初期の帯電量と50K枚印刷後の帯電量との差が絶対値で3μC/g以下である。
△:可。初期の帯電量と50K枚印刷後の帯電量との差が絶対値で3μC/gを超えて5μC/g以下である。
×:不良。初期の帯電量と50K印刷後の帯電量との差が絶対値で5μC/gより大きい。
【0164】
また、50K枚印刷後、画像部の画像濃度および非画像部の白色度を測定した。画像濃度は、X−Rite938分光測色濃度計により測定した。白色度は、日本電色工業株式会社製SZ90型分光式色差計を用いて三刺激値X、Y、Zを求めた。
【0165】
画像濃度の評価基準は以下のとおりである。
○:良好。画像濃度が1.4以上である。
△:可。画像濃度が1.3以上1.4未満である。
×:不良。画像濃度が1.3未満である。
【0166】
白色度の評価基準は以下のとおりである。
○:良好。Zの値が0.5以下である。
△:可。Zの値が0.5を超えて0.7以下である。
×:不良。Zの値が0.7を超える。
【0167】
[総合評価]
上記評価結果を用いた総合評価の評価基準は以下のとおりである。
◎:上記評価の評価結果が全て「○」である。
○:上記評価の評価結果に「△」を含むが「×」は含まない。
×:上記評価の評価結果に「×」を含む。
評価結果を表2に示す。
【0168】
【表2】

【0169】
表2から、実施例1〜6の樹脂被覆キャリアは、長期間にわたってトナーに対する帯電付与能力を維持でき、画像濃度が高く、かぶりのない画像を安定して形成することができることがわかる。
【0170】
しかしながら、実施例2の樹脂被覆キャリアは、帯電補助微粒子の平均一次粒子径が他の実施例よりも相対的に小さいので、帯電安定性が少し低下した。実施例3の樹脂被覆キャリアは、帯電補助微粒子の平均一次粒子径が他の実施例よりも相対的に大きいので、帯電安定性が少し低下した。
【0171】
実施例4の樹脂被覆キャリアは、含窒素有機物微粒子を含まないので帯電安定性が少し低下した。
【0172】
比較例1の樹脂被覆キャリアおよび比較例4の樹脂被覆キャリアは、帯電補助微粒子を含まないので結果が不良となった。
【0173】
比較例2の樹脂被覆キャリアは、帯電補助微粒子の平均一次粒子径が実施例よりも相対的に小さいので、結果が不良となった。比較例3の樹脂被覆キャリアは、帯電補助微粒子の平均一次粒子径が実施例よりも相対的に大きいので、結果が不良となった。
【0174】
比較例5の樹脂被覆キャリアは、帯電補助微粒子よりも抵抗値が高いシリカを用いたので、結果が不良となった。
【符号の説明】
【0175】
1 2成分現像剤
2 樹脂被覆キャリア
2a キャリア芯材
2b 樹脂被覆層
2c 帯電補助微粒子
2d 凸部
3 トナー
3a 外添剤
3b トナー粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径がそれぞれ異なる複数種の外添剤が外添されたトナーであって、前記複数種の外添剤のうち、少なくとも1種の外添剤の平均一次粒子径が50nm以上であるトナーとともに用いられる樹脂被覆キャリアであって、
キャリア芯材と、
キャリア芯材の表面に形成され、凸部を有する樹脂被覆層とを含み、
前記樹脂被覆層は、
被覆用樹脂と、
下記一般式(1)で表されるフェライト、下記一般式(2)で表されるフェライト、またはこれらの混合物からなる帯電補助微粒子であって、平均一次粒子径が、前記複数種の外添剤におけるそれぞれの平均一次粒子径のうちの最大値よりも大きく、かつ0.2μm以上2.0μm以下である帯電補助微粒子とを含み、
前記凸部は、前記帯電補助微粒子によって形成されることを特徴とする樹脂被覆キャリア。
O・Fe …(1)
(式中、MはFe、Mn、Mg、Znから選ばれる金属元素を示す。)
O・6Fe …(2)
(式中、MはBa、Sr、Pbから選ばれる金属元素を示す。)
【請求項2】
前記樹脂被覆層は、含窒素有機物からなる微粒子をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆キャリア。
【請求項3】
前記被覆用樹脂は、架橋型シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆キャリア。
【請求項4】
前記キャリア芯材が、表面に複数の細孔を有する多孔質フェライトであり、前記帯電補助微粒子は、前記複数の細孔の少なくとも一部に嵌め込まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂被覆キャリア。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂被覆キャリアと、平均一次粒子径がそれぞれ異なる複数種の外添剤が外添されたトナーであって、前記複数種の外添剤のうち、少なくとも1種の外添剤の平均一次粒子径が50nm以上であるトナーとを含むことを特徴とする2成分現像剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate