説明

樹脂被覆シリカ、ゴム組成物及びタイヤ

【課題】ゴムとの混練性が良好で、硬さ付与効果に優れた樹脂被覆シリカ、並びに、転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性とを両立するゴム組成物及びタイヤを提供すること。
【解決手段】BET法による窒素吸着比表面積50〜300m/gのシリカが第一の被覆材料と第二の被覆材料で順次被覆された樹脂被覆シリカであって、前記第一の被覆材料はフェノール類を含み、前記第二の被覆材料は(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤、及び(B)レゾール型フェノール樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする樹脂被覆シリカ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆シリカ、該樹脂被覆シリカを含有するゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に対して国際的に関心が高まるなか、二酸化炭素の排出量削減の観点から、自動車の低燃費化の要求が強まっている。
自動車の燃費には、タイヤトレッド部の転がり抵抗の影響が大きい。そのため、環境性と安全性とを共に満足するには、タイヤトレッド部の転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性との両立を図る必要がある。
【0003】
タイヤトレッド部には、耐摩耗性や補強性を付与するため、カーボンブラックをゴムに配合したゴム組成物が用いられている。これに対して、カーボンブラックの代わりにシリカを使用することで、耐摩耗性や補強性の付与に加えて、転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性とのバランスを改良できることから、シリカを配合したゴム組成物が使用されるようになってきた(非特許文献1参照)。
しかしながら、シリカ粒子の表面はシラノール基で覆われているため、シリカ粒子はゴム中で凝集しやすく、分散性が悪い。その結果として、シリカ粒子とゴムとが混ざりにくいという問題があった。また、タイヤへの硬さ付与効果も得られにくかった。
【0004】
このシリカ粒子のゴム中での分散性を向上するため、シリカを、ポリスルフィド構造を含むシランカップリング剤で表面処理する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、フェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂でシリカが被覆された樹脂被覆シリカ、及びゴムを必須成分とするゴム組成物が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高分子材料・技術総覧,723頁,(2)シリカ補強技術
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−333481号公報
【特許文献2】特開2010−083943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載された方法では、ゴム中でのシリカ粒子の分散性が不良であり、転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性との両立について不充分である。また、シリカとゴムとの混練性も未だ充分とは云えず、タイヤへの硬さ付与効果も不充分である。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ゴムとの混練性が良好で、硬さ付与効果に優れた樹脂被覆シリカ、並びに、転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性とを両立するゴム組成物及びタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の樹脂被覆シリカは、BET法による窒素吸着比表面積50〜300m/gのシリカが第一の被覆材料と第二の被覆材料で順次被覆された樹脂被覆シリカであって、前記第一の被覆材料はフェノール類を含み、前記第二の被覆材料は(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤、及び(B)レゾール型フェノール樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明の樹脂被覆シリカにおいては、前記第一の被覆材料が硬化剤を含むことが好ましい。
また、本発明の樹脂被覆シリカにおいては、前記第一の被覆材料がシランカップリング剤を含むことが好ましい。
また、本発明のゴム組成物は、前記本発明の樹脂被覆シリカと、ゴムとを含有することを特徴とする。
また、本発明のタイヤは、前記本発明のゴム組成物をタイヤトレッド部に用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴムとの混練性が良好で、硬さ付与効果に優れた樹脂被覆シリカを提供することができる。
また、本発明によれば、転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性とを両立するゴム組成物及びタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<樹脂被覆シリカ>
本発明の樹脂被覆シリカは、BET法による窒素吸着比表面積50〜300m/gのシリカが第一の被覆材料と第二の被覆材料で順次被覆されたものである。
【0011】
(シリカ)
本発明の樹脂被覆シリカに用いられるシリカは、湿式シリカであってもよく、乾式シリカであってもよい。なかでも、補強効果がより高いことから、湿式シリカが好ましい。
本発明において「BET法による窒素吸着比表面積」とは、粉体粒子の表面に窒素ガスを吸着させ、その際の圧力と吸着量との関係からBET式によって単分子吸着量を測定することにより求められる比表面積をいう。
シリカのBET法による窒素吸着比表面積は50〜300m/gであり、90〜230m/gであることが好ましく、115〜215m/gであることがより好ましい。
シリカの該窒素吸着比表面積が下限値以上であると、ゴムに対する補強効果が優れる。一方、上限値以下であると、ゴム中のシリカ分散性が優れる。
シリカは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0012】
(第一の被覆材料)
第一の被覆材料はフェノール類を含む。
本発明において「フェノール類」とは、芳香族炭化水素核の水素原子をヒドロキシ基で置換した芳香族ヒドロキシ化合物をいう。
フェノール類としては、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カルダノール、カシューナッツシェル油、没食子酸、オイゲノール、ウルシオール等が挙げられる。
なかでも、液状であるためシリカを被覆しやすく、経済的にも有利であることから、クレゾール、アリルフェノール、カルダノール、カシューナッツシェル油が好ましく、クレゾール、カルダノールがより好ましい。
クレゾールのなかでもオルトクレゾールが好ましい。アリルフェノールのなかでもオルトアリルフェノールが好ましい。
フェノール類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0013】
第一の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)中のフェノール類の含有量は、第一の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)全体に対して40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
フェノール類の含有量が好ましい下限値以上であると、シリカ表面の極性を低減しやすくなる。また、第一の被覆材料で被覆されたシリカを第二の被覆材料で被覆しやすくなる。
【0014】
第一の被覆材料は、フェノール類以外の成分を含んでいてもよい。
本発明の樹脂被覆シリカにおいては、前記第一の被覆材料が硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤の併用により、樹脂被覆シリカを含有するゴム組成物を加硫させた際、第一の被覆材料が第二の被覆材料と共に硬化反応を生じ、第一の被覆材料と第二の被覆材料とが一体化する効果がより高まる。
本発明において「硬化剤」とは、フェノール類の芳香族炭化水素核の水素原子、又はフェノール性水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物をいう。
硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキサール、トリオキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、アセトアルデヒドアンモニア、レゾール型フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、硬化反応が良好に進行しやすいことから、ヘキサメチレンテトラミンが特に好ましい。
硬化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0015】
第一の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)中の硬化剤の含有量は、フェノール類100質量部に対して0.5〜50質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。
硬化剤の含有量が好ましい下限値以上であると、第一の被覆材料と第二の被覆材料とが一体化する効果が向上し、タイヤとした際、良好な硬さが得られやすく、操縦安定性も向上する。一方、好ましい上限値を超えても、その増加分に応じた硬さ付与効果と操縦安定性の向上が見られない。好ましい上限値以下であれば、コスト低減が図れる。
【0016】
また、本発明の樹脂被覆シリカにおいては、前記第一の被覆材料がシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤の併用により、シリカとフェノール類との親和性が高まり、シリカと第一の被覆材料との密着性が高まる。
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィドシランなどが挙げられる。
なかでも、シリカと第一の被覆材料との密着性がより高まることから、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0017】
なお、特許文献1に記載されている、ポリスルフィド構造(硫黄原子)を含むシランカップリング剤は高価であり、タイヤを得るのに高コストになる問題もあった。しかし、本発明の樹脂被覆シリカにおいては、シランカップリング剤は必須ではなく、シランカップリング剤を用いる場合であっても、この硫黄原子を含むシランカップリング剤を用いなくても、前記の一般的なシランカップリング剤を用いることにより、シリカと第一の被覆材料との密着性向上の効果が得られ、コスト低減も図れる。
【0018】
(第二の被覆材料)
第二の被覆材料は、(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤、及び(B)レゾール型フェノール樹脂の少なくとも一方を含む。すなわち、第二の被覆材料は、(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤、(B)レゾール型フェノール樹脂単独、又は(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤と(B)レゾール型フェノール樹脂との組合せ、のいずれかを含む。
【0019】
(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応させたものが用いられる。また、酸触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類との反応物をカシューナッツシェル油、桐油、ロジン等で変性したノボラック型フェノール樹脂も用いることができる。
本発明において「アルデヒド類」とは、カルボニル基に水素原子を少なくとも1個持つ、すなわちホルミル基−CHOを持つカルボニル化合物をいう。
フェノール類は、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カルダノール、カシューナッツシェル油、没食子酸、オイゲノール、ウルシオール等を用いることができる。該フェノール類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、グリオキザール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等を用いることができる。該アルデヒド類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
なかでも、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性がより両立しやすいことから、フェノール類としてはフェノール、クレゾール、カルダノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ビスフェノールAが好ましく、アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
酸触媒は、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硼酸、又は塩化亜鉛もしくは酢酸亜鉛などの金属との塩等が挙げられる。該酸触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ノボラック型フェノール樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0020】
第二の被覆材料が(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤を含み、(B)レゾール型フェノール樹脂を含まない場合、第二の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)中のノボラック型フェノール樹脂の含有量は、第二の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)全体に対して30質量%以上が好ましく、60〜99質量%がより好ましく、70〜95質量%がさらに好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂の含有量が好ましい下限値以上であると、シリカのゴムに対する混練性が向上する。加えて、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0021】
(A)成分における硬化剤としては、上記第一の被覆材料について説明した中の硬化剤と同様のものが挙げられる。なかでも、硬化反応が良好に進行しやすいことから、ヘキサメチレンテトラミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンがより好ましく、ヘキサメチレンテトラミンが特に好ましい。
硬化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
第二の被覆材料中の硬化剤の含有量は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。
硬化剤の含有量が好ましい下限値以上であると、加硫したゴム組成物に硬さを付与する効果が向上する。加えて、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。一方、好ましい上限値を超えても、その増加分に応じた硬さ付与効果と操縦安定性の向上が見られない。好ましい上限値以下であれば、コスト低減が図れる。
【0023】
(B)レゾール型フェノール樹脂
レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒の存在下で反応させたものが用いられる。また、アルカリ触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類との反応物をカシューナッツシェル油、桐油、ロジン等で変性したレゾール型フェノール樹脂も用いることができる。これらのレゾール型フェノール樹脂は自硬性を有する。
フェノール類及びアルデヒド類としては、上記ノボラック型フェノール樹脂について説明した中のフェノール類及びアルデヒド類とそれぞれ同様のものが挙げられる。
なかでも、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性がより両立しやすいことから、フェノール類としてはフェノール、クレゾール、カルダノール、ブチルフェノール、オクチルフェノールが好ましく、アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
アルカリ触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類等が挙げられる。該アルカリ触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
レゾール型フェノール樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0024】
第二の被覆材料が(B)レゾール型フェノール樹脂を含み、(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤を含まない場合、第二の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)中のレゾール型フェノール樹脂の含有量は、第二の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)全体に対して30質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
レゾール型フェノール樹脂の含有量が好ましい下限値以上であると、シリカのゴムに対する混練性が向上する。加えて、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0025】
第二の被覆材料には、(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤、(B)レゾール型フェノール樹脂の他に、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等の(C)樹脂を用いてもよい。
また、第二の被覆材料には、ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤との硬化反応、レゾール型フェノール樹脂の硬化反応を促進するため、水酸化カルシウム等の硬化触媒などを用いてもよい。
(C)樹脂を併用する場合、第二の被覆材料(溶媒、分散媒を除く)中の、(ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂との合計の含有量)/(全樹脂の含有量)は、質量比で0.50〜1であることが好ましく、0.65〜1であることがより好ましい。
該質量比が好ましい下限値以上であると、シリカのゴムに対する混練性が向上する。加えて、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0026】
(樹脂被覆シリカの製造)
本発明の樹脂被覆シリカは、前記のシリカを、第一の被覆材料と第二の被覆材料で順次被覆することにより製造できる。具体的には、シリカと第一の被覆材料とを混合した後、第二の被覆材料を加えて混合する方法が挙げられる。
【0027】
第一の被覆材料の塗布量は、シリカに塗布された該被覆材料中に含まれるフェノール類が、シリカ100質量部に対して0.5〜50質量部となる量が好ましく、1〜30質量部となる量がより好ましい。シリカの比表面積が大きいほど、第一の被覆材料の塗布量も多い方が好ましい。
該被覆材料中に含まれるフェノール類が好ましい下限値以上であると、シリカ表面の極性が低減しやすくなる。また、シリカ表面の極性が低減することにより、第一の被覆材料で被覆されたシリカを第二の被覆材料で被覆しやすくなる。一方、好ましい上限値以下であると、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0028】
第一の被覆材料がシランカップリング剤を含む場合、第一の被覆材料の塗布量は、シリカに塗布された該被覆材料中に含まれるシランカップリング剤が、シリカ100質量部に対して0.3〜20質量部となる量が好ましく、1〜10質量部となる量がより好ましい。
該被覆材料中に含まれるシランカップリング剤が好ましい下限値以上であると、シリカと第一の被覆材料との密着性が高まりやすい。一方、好ましい上限値を超えても、その増加分に応じたシリカと第一の被覆材料との密着性の向上が見られない。好ましい上限値以下であれば、コスト低減が図れる。
【0029】
第二の被覆材料が(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤を含み、(B)レゾール型フェノール樹脂を含まない場合、第二の被覆材料の塗布量は、シリカに塗布された該被覆材料中に含まれるノボラック型フェノール樹脂が、シリカ100質量部に対して0.5〜50質量部となる量が好ましく、1〜30質量部となる量がより好ましい。
該被覆材料中に含まれるノボラック型フェノール樹脂が好ましい下限値以上であると、シリカのゴムに対する混練性が向上する。ノボラック型フェノール樹脂が前記の好ましい範囲となる量であることにより、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0030】
第二の被覆材料が(B)レゾール型フェノール樹脂を含み、(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤を含まない場合、第二の被覆材料の塗布量は、シリカに塗布された該被覆材料中に含まれるレゾール型フェノール樹脂が、シリカ100質量部に対して0.5〜50質量部となる量が好ましく、1〜30質量部となる量がより好ましい。
該被覆材料中に含まれるレゾール型フェノール樹脂が好ましい下限値以上であると、シリカのゴムに対する混練性が向上する。レゾール型フェノール樹脂が前記の好ましい範囲となる量であることにより、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0031】
第二の被覆材料が(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤と(B)レゾール型フェノール樹脂との両方を含む場合、第二の被覆材料の塗布量は、シリカに塗布された該被覆材料中に含まれるノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂との合計が、シリカ100質量部に対して0.5〜50質量部となる量が好ましく、1〜30質量部となる量がより好ましい。
該被覆材料中に含まれるノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂との合計が好ましい下限値以上であると、シリカのゴムに対する混練性が向上する。ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂との合計が前記の好ましい範囲となる量であることにより、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0032】
第一の被覆材料と第二の被覆材料は、必要に応じて、それぞれ適切な溶媒又は分散媒により希釈又は分散した材料を用いてもよい。溶媒又は分散媒としては、水、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン等を用いることができる。
第一の被覆材料がシランカップリング剤を含む場合、該シランカップリング剤を第一の被覆材料に含まれるその他の成分と予め混合したものをシリカと混合させてもよく、該シランカップリング剤を単独でシリカと混合させた後、第一の被覆材料に含まれるその他の成分を混合させてもよい。
シリカと各被覆材料との混合には、バッチ式ミキサー、連続式ミキサー等の装置を用いることができる。これらの装置は、常温で、又は必要に応じて加温して用いればよい。特に、各被覆材料に固体材料を用いる場合、混合操作を容易に行うことができることから、装置を加温して用いることが好ましい。
第二の被覆材料を加えて混合した後に得られるシリカを、必要に応じて、公知の乾燥機等により乾燥してもよい。その際の乾燥温度、乾燥時間は、使用する溶媒又は分散媒、材料の希釈量などによって適宜決定すればよい。
【0033】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、前記本発明の樹脂被覆シリカと、ゴムとを含有する。
(ゴム)
ゴムとしては、天然ゴム;スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴム等が挙げられる。
【0034】
ゴム組成物中の樹脂被覆シリカの含有量は、ゴム100質量部に対して10〜200質量部が好ましく、30〜150質量部がより好ましい。
樹脂被覆シリカの含有量が好ましい上限値以下であると、樹脂被覆シリカとゴムとが良好に混ざりやすい。また、樹脂被覆シリカの含有量が前記の好ましい範囲であることにより、タイヤとした際に転がり抵抗と操縦安定性が両立しやすい。
【0035】
ゴム組成物は、樹脂被覆シリカとゴム以外の成分を含有していてもよい。
ゴム組成物には、樹脂被覆シリカの他に、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、マイカ、クレー等の補強材を併用してもよい。これらの補強材は、その表面が未処理のものでも、公知のシランカップリング剤等で表面処理が施されたものでもよい。
また、ゴム組成物には、フェノール樹脂等の補強用樹脂;ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等の硬化剤;硫黄、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のゴム架橋剤;加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、各種オイル、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛などのゴム工業界で通常使用される配合成分を用いてもよい。
【0036】
未加硫状態のゴム組成物(未加硫ゴム組成物)は、樹脂被覆シリカと、ゴムと、必要に応じてその他の配合成分とを、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー等の装置で混練することにより製造できる。
また、未加硫状態のゴム組成物を、所定の型などに充填し、好ましくは130〜180℃で5〜60分間の加熱処理(加硫)を行うことにより、加硫状態のゴム組成物(加硫ゴム組成物)が得られる。
【0037】
本発明のゴム組成物は、タイヤ、ベルト、ゴムクローラ、防振ゴム、ホース、マット、海洋用フェンス等の用途に利用できる。なかでも、タイヤ用として好適であり、タイヤトレッド部用として特に好適である。
【0038】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、前記本発明のゴム組成物をタイヤトレッド部に用いたものである。
かかるタイヤは、通常の方法により製造される。具体的には、本発明のゴム組成物を未加硫の状態で用いてタイヤトレッド部の所定形状に加工したものと、タイヤの各部材向けに調製されたゴム組成物を未加硫の状態で用いてそれぞれ所定形状に加工したものとを、タイヤ成形機により貼り合わせて生タイヤ(未加硫状態)を成形し、これを加硫機中で加熱、加圧することにより製造される。
【0039】
未加硫ゴム組成物を製造する際、本発明の樹脂被覆シリカを用いた方が、従来のポリスルフィド構造を含むシランカップリング剤で、又はフェノール樹脂のみで表面処理されたシリカを用いるよりも、シリカのゴムに対する混練性が良好である。また、本発明の樹脂被覆シリカを用いた加硫ゴム組成物は、従来の表面処理を施したシリカを用いた加硫ゴム組成物よりも、転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性が共に優れ、かつ、硬さにも優れる。これらの理由は次のように推測される。
【0040】
本発明の樹脂被覆シリカにおいては、シリカが、直接、フェノール類を含む第一の被覆材料で被覆されている。フェノール類は、親水性のフェノール性水酸基と親油性のフェニル基を有する。そして、この親水性のフェノール性水酸基と、シリカ表面のシラノール基とが水素結合により強固に結合する。これにより、第一の被覆材料で被覆されたシリカ表面の極性がシリカ単独の表面の極性に比べて低くなり、シリカと第二の被覆材料との密着性が高まることで、次に第二の被覆材料で被覆しやすくなる。さらに、フェノール類は、フェノール樹脂などの樹脂類に比べ、その粘度又は溶融粘度が著しく低い。そのため、溶媒等により希釈しなくても、シリカの被覆処理を容易に行うことができる。
また、本発明の樹脂被覆シリカにおいては、自硬性樹脂である(B)レゾール型フェノール樹脂、又は(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤、の少なくとも一方を含む第二の被覆材料でさらに被覆されている。このようにシリカが第一及び第二の被覆材料による被覆層を有するため、ゴムと混練する際の粘度が低くなり、シリカのゴムに対する混練性が向上する。また、該被覆層と、非極性又は極性の低いゴムとの親和性が高まることにより、ゴム中でのシリカの分散性が向上することで、転がり抵抗の低下による燃費向上と操縦安定性が共に優れると考えられる。
さらに、ゴム組成物に加硫操作を施した際、第二の被覆材料は第一の被覆材料と硬化反応を生じ、第一の被覆材料と第二の被覆材料とが一体化して、シリカとの密着性が高い樹脂被覆層が形成される。加えて、第二の被覆材料はゴム、及び必要に応じて配合される補強用樹脂とも硬化反応を生じて一体化する。これらの作用により、加硫したゴム組成物に硬さが充分に付与されると考えられる。
【0041】
本発明の樹脂被覆シリカは、上記のように、その製造が容易である。さらに、本発明の樹脂被覆シリカを用いた加硫ゴム組成物は、従来の表面処理を施したシリカを用いた加硫ゴム組成物に比べて、硬さに優れると共に同程度の破断強度を持ち、ゴム製品として充分な強度を有する。
以上のように、本発明の樹脂被覆シリカをタイヤ原料として用いることにより、環境性と安全性を共に満足したタイヤを提供することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<評価>
本実施例において、未加硫ゴム組成物についての混練性は以下の方法により評価した。また、加硫ゴム組成物についての貯蔵弾性率、損失正接(tanδ)、硬さ、破断強度は、以下の方法によりそれぞれ測定した。
【0043】
[混練性]
未加硫ゴム組成物について、キュラストメーター(JSR社製、CURELASTOMETER MODELIII)を使用して、150℃におけるトルクと時間との関係(トルク−時間曲線)を測定し、ゴム組成物が溶融した後、加硫する前のキュラスト最小トルク(N・m)を求めることにより混練性を評価した。このキュラスト最小トルクの値が小さいほど、混練性が良好であることを意味する。
【0044】
[貯蔵弾性率、損失正接(tanδ)]
加硫ゴム組成物について、エスエスアイ・ナノテクノロジー社製のDMS110を使用し、振動数10Hzにて70℃における貯蔵弾性率と損失正接(tanδ)をそれぞれ測定した。
この貯蔵弾性率の値が高いほど、タイヤとした場合に操縦安定性に優れていることを意味する。このtanδの値が小さいほど、転がり抵抗が小さいことを意味する。
【0045】
[硬さ]
加硫ゴム組成物について、JIS K6253に準じ、テクロック製のタイプAデュロメータGS−719Gを使用して、硬さ(ショアA)を測定した。この硬さの測定値が高いほど、硬さ付与効果に優れていることを意味する。
【0046】
[破断強度]
加硫ゴム組成物について、JIS K6251に準じ、東洋精機製のストログラフV10−Cを使用して、ダンベル状3号とした試験片の破断強度(MPa)を測定した。この破断強度の値が高いほど、強度に優れていることを意味する。
【0047】
<シリカの表面処理に使用した材料>
シリカ(a):ウルトラジルVN3(商品名、デグサ社製)、BET法による窒素吸着比表面積205m/gの湿式シリカ。
シリカ(b):Zeosil 1115MP(商品名、ローディア社製)、BET法による窒素吸着比表面積115m/gの湿式シリカ。
オルトクレゾール:オルソクレゾール(商品名、新日鐵化学社製)。
カルダノール:カルダノール(商品名、Golden Cashew products pvt.Ltd.製)。
シランカップリング剤(1):3−アミノプロピルトリエトキシシランKBE−903(商品名、信越化学社製)。
ノボラック型フェノール樹脂(1):PS−6230(商品名、群栄化学工業社製;カルダノール−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、軟化点85℃)の50質量%メタノール溶液。
ノボラック型フェノール樹脂(2):PSK−2320(商品名、群栄化学工業社製;フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、軟化点90℃)の50質量%メタノール溶液。
硬化剤(1):ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学社製)の10質量%水溶液。
硬化剤(2):4,4’−ジアミノジフェニルメタン、スミキュアM(商品名、住友化学社製)の10質量%メタノール溶液。
レゾール型フェノール樹脂:PL−6507(商品名、群栄化学工業社製;カルダノール−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、固形分50質量%のメタノール溶液)。
シランカップリング剤(2):ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドKBE−846(商品名、信越化学社製)の50質量%メタノール溶液。
【0048】
<ゴム組成物の製造に使用した材料>
シリカ(a1)〜(a9):実施例1〜5、7、8と比較例1〜2の表面処理されたシリカ。
シリカ(b1):実施例6の表面処理されたシリカ。
天然ゴム:RSS3号。
ワックス:サンノックワックス(商品名、大内新興化学工業社製)。
オイル:ダイアナプロセスAH40(商品名、出光興産社製)。
老化防止剤:ノクラック6C(商品名、大内新興化学工業社製)。
ステアリン酸:ステアリン酸さくら(商品名、日本油脂社製)。
亜鉛華:酸化亜鉛(堺化学社製)。
ノボラック型フェノール樹脂(3):PS−4569(商品名、群栄化学工業社製;カシュー変性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、融点72℃)。
硫黄:硫黄(鶴見化学工業社製)。
硬化剤(1):ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学社製)の10質量%水溶液。
加硫促進剤:ノクセラーNS−P(商品名、大内新興化学工業社製)。
【0049】
<シリカの表面処理>
表1に示す組成に従い、各材料を撹拌混合して、表面処理されたシリカを調製した。
表1中、各材料の配合量は、シリカ100質量部に対する、その材料自体の量(該材料が溶液の場合、溶液としての量)を示す。
【0050】
(実施例1)
シリカ(a)100質量部に、カルダノール2.7質量部を加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(1)(50質量%メタノール溶液)12.6質量部と硬化剤(1)(10質量%水溶液)9.0質量部とを加えて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a1)を得た。
【0051】
(実施例2)
シリカ(a)100質量部に、オルトクレゾール4.5質量部を加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(1)(50質量%メタノール溶液)9.0質量部と硬化剤(1)(10質量%水溶液)9.0質量部とを加えて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a2)を得た。
【0052】
(実施例3)
シリカ(a)100質量部に、カルダノール4.5質量部を加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(2)(50質量%メタノール溶液)9.0質量部と硬化剤(1)(10質量%水溶液)9.0質量部とを加えて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a3)を得た。
【0053】
(実施例4)
シリカ(a)100質量部に、カルダノール2.7質量部を加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。次いで、レゾール型フェノール樹脂(50質量%メタノール溶液)12.6質量部を加えて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a4)を得た。
【0054】
(実施例5)
シリカ(a)100質量部に、シランカップリング剤(1)2.0質量部と、カルダノール1.5質量部とを加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(1)(50質量%メタノール溶液)3.0質量部と硬化剤(1)(10質量%水溶液)3.0質量部とを加えて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a5)を得た。
【0055】
(実施例6)
シリカ(a)をシリカ(b)に変更した以外は、実施例5と同様にして、表面処理されたシリカ(b1)を得た。
【0056】
(実施例7)
シリカ(a)100質量部に、シランカップリング剤(1)2.0質量部と、カルダノール4.5質量部と、硬化剤(1)(10質量%水溶液)4.5質量部とを加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(1)(50質量%メタノール溶液)9.0質量部と硬化剤(1)(10質量%水溶液)4.5質量部とを加えて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a6)を得た。
【0057】
(実施例8)
シリカ(a)100質量部に、シランカップリング剤(1)2.0質量部と、カルダノール4.5質量部とを加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(1)(50質量%メタノール溶液)9.0質量部と硬化剤(1)(10質量%水溶液)4.5質量部と硬化剤(2)(10質量%メタノール溶液)4.5質量部とを加えて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a7)を得た。
【0058】
(比較例1)
シリカ(a)100質量部に、シランカップリング剤(2)(50質量%メタノール溶液)16.0質量部を加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合し、熱風乾燥機にて130℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a8)を得た。
【0059】
(比較例2)
シリカ(a)100部に、シランカップリング剤(1)2.0質量部と、ノボラック型フェノール樹脂(2)(50質量%メタノール溶液)20.0質量部とを加えて、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合し、熱風乾燥機にて90℃−1時間乾燥することにより、表面処理されたシリカ(a9)を得た。
【0060】
【表1】

【0061】
<ゴム組成物の製造>
表2に示す組成に従い、各材料を混練して未加硫ゴム組成物を調製した。また、未加硫ゴム組成物を型内で加熱して加硫ゴム組成物を得た。
表2中、各材料の配合量は、天然ゴム100質量部に対する、その材料自体の量(該材料が溶液の場合、溶液としての量)を示す。
【0062】
(実施例9)
天然ゴム100質量部と、シリカ(a1)85質量部と、ワックス2質量部と、オイル4質量部と、老化防止剤2質量部と、ステアリン酸4質量部と、亜鉛華5質量部と、ノボラック型フェノール樹脂(3)10質量部とを、加圧ニーダーにて150℃−5分間混練した。得られた混練物に、硫黄2.5質量部と、硬化剤(1)(10質量%水溶液)5質量部と、加硫促進剤1.5質量部とを添加し、2軸ロールにて90℃−5分間混練することにより、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
【0063】
次いで、得られた未加硫ゴム組成物を150mm×150mm×2mmの型内に入れ、150℃−40分間加熱することにより、加硫ゴム組成物を得た。
【0064】
(実施例10〜16、比較例3〜4)
シリカ(a1)をシリカ(a2)〜(a5)、(b1)、(a6)〜(a9)にそれぞれ変更した以外は、実施例9と同様にして、未加硫ゴム組成物と加硫ゴム組成物を得た。
【0065】
上記評価の方法により、各例の未加硫ゴム組成物についてキュラスト最小トルクを求めた。また、加硫ゴム組成物について貯蔵弾性率、tanδ、硬さ、破断強度をそれぞれ測定した。それらの結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2の結果から、実施例9〜16の未加硫ゴム組成物は、比較例3、4の未加硫ゴム組成物に比べて、ゴム組成物が溶融した後、加硫するまでのキュラスト最小トルクの値が小さいことから、ゴム組成物を製造する際の混練性が良好であることが分かる。
また、実施例9〜16の加硫ゴム組成物は、比較例3、4の加硫ゴム組成物よりも、貯蔵弾性率の値が高く、かつ、tanδの値が小さいことから、操縦安定性に優れ、転がり抵抗の低下による燃費向上の効果も高いことが分かる。
【0068】
さらに、実施例9〜16の加硫ゴム組成物は、比較例3、4の加硫ゴム組成物に比べて、硬さの値が高いことから、実施例1〜8の表面処理されたシリカ(樹脂被覆シリカ)は硬さ付与効果に優れていることが分かる。
加えて、実施例9〜16の加硫ゴム組成物は、比較例3、4の加硫ゴム組成物と同等以上の破断強度を持つことから、実用上、ゴム製品として充分な強度を有している、と云える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET法による窒素吸着比表面積50〜300m/gのシリカが第一の被覆材料と第二の被覆材料で順次被覆された樹脂被覆シリカであって、
前記第一の被覆材料はフェノール類を含み、
前記第二の被覆材料は(A)ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤、及び(B)レゾール型フェノール樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする樹脂被覆シリカ。
【請求項2】
前記第一の被覆材料が硬化剤を含む、請求項1記載の樹脂被覆シリカ。
【請求項3】
前記第一の被覆材料がシランカップリング剤を含む、請求項1又は請求項2記載の樹脂被覆シリカ。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂被覆シリカと、ゴムとを含有するゴム組成物。
【請求項5】
請求項4記載のゴム組成物をタイヤトレッド部に用いたタイヤ。

【公開番号】特開2012−116972(P2012−116972A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268709(P2010−268709)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】