説明

樹脂製ケース及びそれを備えたモータ制御装置

【課題】 基板を樹脂ケースのシャーシと垂直な方向から取付けや取り外す場合にリブの折損を防止し、樹脂ケースの中に手の入るスペースが無くても基板を容易に取り外すことができる小型・簡単化が可能な樹脂製ケース及びそれを備えたモータ制御装置を提供する。
【解決手段】 シャーシ2上に基板6を取り付けるため樹脂製ケース1において、シャーシ2上の両端に垂直方向に突出して立設された支持リブ3、3´と、シャーシ2の両端に設けた支持リブ3、3´の一方のリブ3先端に該シャーシ2と平行に突出して設けると共に該基板6の一端部を引っ掛けて保持するための引っ掛け部4と、基板6を該基板の下部から押圧支持するようにシャーシ2の下部から突出させ、シャーシ両端に位置する支持リブの内側にそれぞれ設けた保持用リブ5、5´と、シャーシ2における引っ掛け部4を有した支持リブ3と該保持リブ5との間に穿設された基板取り外し用孔部7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばモータ制御装置等の電子機器筐体に基板を取付ける樹脂製ケース及びそれを備えたモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ制御装置等の電子機器筐体に基板を取付けて収納するための樹脂製ケースは、図5のようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
図5は第1従来技術を示す基板取付装置の斜視図、図6は図5の要部を示した側断面図である。
図5、図6において、10は樹脂製ケース、11はシャーシ、11aは孔、12は基板、13は支持リブ、14は引っ掛け部、15は弾性リブである。
基板取付装置を構成する樹脂製ケースは、シャーシ11の底から立設された支持リブ13の上部に水平方向に突出した引っ掛け部14が設けられており、この引っ掛け部14に基板12の一端部が引っ掛けられて保持されると共に、該引っ掛け部14に引っ掛けられた基板12を該基板の下部から押圧支持する弾性リブ15が支持リブ13の下部から突出するように設けられている。
このような構成の樹脂ケース10において、引っ掛け部14は基板12に対し傾斜方向へ横に突出した形で設けられており、引っ掛け部14と弾性リブ15の間における側面(シャーシ11と平行な方向)から基板12を挿入すると、基板12が引っ掛け部14の上方から押し当てられた状態で、引っ掛け部14の傾斜に沿って移動し、最終的には引っ掛け部14と弾性リブ15の間で保持される。なお、孔11aは引っ掛け部14をシャーシ11と合成樹脂で一体成形にて形成される金型を避けた孔となっている。
また、第2従来技術として、ディスクの固定、取り出し用に押圧用の操作片を有する爪を形成したコンパクトディスク等を収納するケースは、図7、図8、図9のようになっている(例えば、特許文献2参照)。
図7は第2従来技術を示すディスク収納ケースの平面図、図8は図7のディスク収納ケースの爪部の断面図、図9は図7のディスク収納ケースにおける操作片を有した爪部の断面図である。
図7、図8において、20はディスク収納ケース、21はシャーシ、22はディスク、22aは中央孔、22bは外周縁、23及び24並びに25は爪部、26はボス部である。
この三つの爪部23〜25のうち爪部23は、図9において、爪23の上端にディスク22の径方向外方に延出するように押圧用の操作片28が形成されると共に、操作片28の上面に押圧し易いように多数の突条27が形成されている。この操作片28を押圧すると爪部23は外方に撓むことで、収納されていたディスク22を取り外すことが可能となる。
【特許文献1】特開平11−307961号公報(第3頁、図3)
【特許文献2】実用新案登録第2605604号(第4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来技術には以下の問題があった。
(1)第1従来技術における基板固定用の樹脂製ケースは、引っ掛け部と弾性リブの間における側面(シャーシと平行な方向)から基板を挿入する際に、ネジを使用しなくても基板を取り付けることが可能であった。しかしながら、例えば、樹脂ケースにおいて、基板の取り付けや取り外しを行う方向がシャーシと平行な方向でなく、シャーシに対して垂直な方向に限定される構造の場合、基板取付けを行う際、引っ掛け部を乗り越えるように基板を傾け、基板を弾性リブに押し当てながら弾性変形させると、弾性リブに無理な力がかかり、折損する恐れがあった。また、基板取り外しを行う際にも、引掛け部から開放する方向に弾性リブを押し付けながら弾性変形させる必要があり、基板を斜めにした不規則な姿勢で、基板を引っ掛け部から取り外すようにすると、基板を弾性リブに押し付ける際の無理な力が働き、弾性リブの折損の恐れがあるという問題があった。
(2)第2従来技術におけるディスク収納ケースのような場合は、ディスク取り外し作業の際に一方の片手で爪部を撓ませ、他方の片方の手でディスクを取り外す必要があるので、ケース内に両手が入り込むスペースを確保する必要があった。そのため、収納ケースに両手が入り込むスペースを確保することは、小型・簡単化、省スペース化に逆行することになり、不向きであった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、基板を樹脂ケースの基板取付台を構成するシャーシと垂直な方向から取付けや取り外す場合に、リブの折損を防止すると共に、樹脂ケースの中に手の入るスペースが無くても基板を容易に取り外すことができる、小型・簡単化が可能な樹脂製ケース及びそれを備えたモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、請求項1に記載の本発明は、固定ベースとなるシャーシと、前記シャーシ上に基板を取り付けるための合成樹脂で形成されたケースと、を備えた基板取付用樹脂製ケースにおいて、前記シャーシ上の両端に垂直方向に突出するように立設された支持リブと、前記シャーシの両端に設けた支持リブの一方のリブ先端に該シャーシと平行に突出するように設けると共に該基板の一端部を引っ掛けて保持するための引っ掛け部と、前記基板を該基板の下部から押圧支持するように、前記シャーシの下部から突出するように前記シャーシ両端に位置する支持リブの内側にそれぞれ設けられた保持用リブと、前記引っ掛け部に保持された基板を容易に取り外す事が出来るように前記シャーシにおける前記引っ掛け部を有した支持リブと該保持リブとの間に穿設された基板取り外し用孔部と、を備えたことを特徴としている。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の樹脂製ケースにおいて、前記引っ掛け部は弾性突起で構成されたことを特徴としている。
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の樹脂製ケースを電子機器に取り付けるための電子機器筐体として構成するモータ制御装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、基板を樹脂ケースの基板取付台を構成するシャーシと垂直な方向から取付けや取り外す場合に、基板を引っ掛け部に装着することで、簡単に基板を保持する事が出来るとともに取付けや取り外し作業も行え、基板保持用リブの折損を防ぐ事が出来る。
また、本発明によると、基板取り外しの際に専用の工具を準備する必要が無く、基板の取り外しが可能となる。
また、本発明によると、支持リブの先端に基板を押圧支持する弾性突起を設けたので、従来技術のように弾性リブを支持リブの下部から突出するように設けた構成に比べて、構造を小型・簡単化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明の実施例を示す基板を取り付けるための樹脂製ケースの概略斜視図、図2は図1のX方向から見た樹脂製ケースに基板を取付けた状態を示す正面図、図3は図2のA―A線に沿う側断面図、図4は他の実施例を示す引っ掛け部を示す図である。
図1〜図3において、1は樹脂製ケース、2はシャーシ、3および3´は支持リブ、4は引っ掛け部、5および5´は保持用リブ、6は基板、7は基板取り外し用孔部、8は基板取り外し用工具である。なお、樹脂製ケースは基板を該樹脂ケースの基板取付台を構成するシャーシ2と垂直な方向から取付けや取り外す場合となっている。
本発明の特徴は以下のとおりである。
すなわち、固定ベースとなるシャーシ2と、シャーシ2上に基板6を取り付けるための合成樹脂で形成されたケース1と、を備えた基板取付用樹脂製ケースにおいて、シャーシ2上の両端に垂直方向に突出するように立設された支持リブ3および3´と、シャーシ2の両端に設けた支持リブ3および3´の一方のリブ3先端に該シャーシ2と平行に突出するように設けると共に該基板6の一端部を引っ掛けて保持するための引っ掛け部4と、基板6を該基板の下部から押圧支持するように、シャーシ2の下部から突出するようにシャーシ両端に位置する支持リブ3および3´の内側にそれぞれ設けられた保持用リブ5および5´と、引っ掛け部4に保持された基板6を容易に取り外す事が出来るようにシャーシ2における引っ掛け部4を有した支持リブ3と該保持リブ5との間に穿設された基板取り外し用孔部7と、を備えた点である。
また、引っ掛け部4は弾性突起で構成されたものとなっている。
【0008】
次に動作について説明する。
図3に示すように、先端に傾斜角度を持った工具8(例えばマイナスドライバー等)を、基板の背面(樹脂ケース本体の背面)から入れて、基板取り外し用孔部7に通し、基板6と基板引っ掛け部4を形成する支持リブ3との間に挿入する。次に工具8の先端部を基板6の端面に当て、この基板6の端面を支点として矢印Bの方向に工具8を回転移動するように力を加えると、基板6は該基板の下から押圧支持される際に保持用リブ5、5´により反力が作用すると共に、矢印Cの方向に力が加わり移動しようとする。そして、弾性突起で構成された引っ掛け部4を有する支持リブ3には矢印Dの方向に力が加わって弾性変形することで、基板6が引っ掛け部4の先端部を乗り越え、基板6が基板引っ掛け部4から外れる。
逆に、樹脂製ケース1に振動・衝撃等の外力が加わった場合においては、基板6がシャーシ2の基板引っ掛け部4から容易に外れる事を防ぐ事が可能となる。
【0009】
したがって、本発明の実施例は上記構成にしたので、基板取付用樹脂製ケースにおいて、シャーシにおける引っ掛け部を有した支持リブと保持リブとの間に基板取り外し用孔部を穿設し、該孔部から基板と基板引っ掛け部を形成する支持リブの間に向かって工具を挿入することにより、基板を樹脂ケースの基板取付台を構成するシャーシと垂直な方向から取付けや取り外す場合に、基板取付用樹脂製ケースの中に手の入るスペースが無くても基板取り外し用孔部を利用することで、基板を容易に取り外すことができる。
また、引っ掛け部は弾性突起で構成されているため、基板を基板取付装置を構成するケースの支持リブから取り外す際にリブの折損を防止することができる。
さらに、支持リブの先端に基板を押圧支持する弾性突起を設けたので、従来技術のように弾性リブを支持リブの下部から突出するように設けた構成に比べて、構造を小型・簡単化することができる。
【0010】
なお、図4は他の実施例の構成を示す図である。
9は例えばケース1と組み合わせて使用される樹脂製工具であり、樹脂製工具9は、基板取り外し用孔部7から基板引っ掛け部4と基板6との間に挿入することが可能な形状を有した突起部である。
基板取り外しについては、第1実施例同様に基板引っ掛け部4を使用し、基板取り外し用孔部7を介し、樹脂製工具9で矢印Bの方向に力を加えることで、基板6を容易に取り外すことができる。これにより、基板6を取り外す際に専用の工具を準備する必要がなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
樹脂製ケースに組み合わされる部品が基板ではなく、他の樹脂製部品であった場合、ネジを使用せず部品の脱着することができるので、多数の部品から形成される樹脂製ユニットにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示す基板を取り付けるための樹脂製ケースの概略斜視図である。
【図2】図1のX方向から見た樹脂製ケースに基板を取付けた状態を示す正面図である。
【図3】図2のA―A線に沿う側断面図である。
【図4】他の実施例を示す引っ掛け部を示す図である。
【図5】第1従来技術を示す基板取付装置の斜視図である。
【図6】図5の要部を示した側断面図である。
【図7】第2従来技術を示すディスク収納ケースの平面図である。
【図8】図7のディスク収納ケースの爪部の断面図である。
【図9】図7のディスク収納ケースにおける操作片を有した爪部の断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1 樹脂製ケース、
2 シャーシ、
3 支持リブ、
4 引っ掛け部、
5 保持用リブ、
6 基板、
7 基板取り外し用孔部
8 工具(マイナスドライバー)
9 樹脂製工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベースとなるシャーシ(2)と、
前記シャーシ(2)上に基板(6)を取り付けるための合成樹脂で形成されたケース(1)と、
を備えた基板取付用樹脂製ケースにおいて、
前記シャーシ(2)上の両端に垂直方向に突出するように立設された支持リブ(3、3´)と、
前記シャーシ(2)の両端に設けた支持リブ(3、3´)の一方のリブ(3)先端に該シャーシ(2)と平行に突出するように設けると共に該基板(6)の一端部を引っ掛けて保持するための引っ掛け部(4)と、
前記基板(6)を該基板の下部から押圧支持するように、前記シャーシ(2)の下部から突出するように前記シャーシ(2)両端に位置する前記支持リブ(3、3´)の内側にそれぞれ設けられた保持用リブ(5)と、
前記引っ掛け部(4)に保持された基板(6)を容易に取り外す事が出来るように前記シャーシ(2)における前記引っ掛け部(3)を有した支持リブ(3)と該保持リブ(5)との間に穿設された基板取り外し用孔部(7)と、
を備えたことを特徴とする樹脂製ケース。
【請求項2】
前記引っ掛け部(4)は弾性突起で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製ケース。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂製ケースを電子機器に取り付けるための電子機器筐体として構成することを特徴とするモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−164497(P2009−164497A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2764(P2008−2764)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】