説明

樹脂製トレイ

【課題】 誤って落下させて角部に衝撃が加わっても、割れ難い形状の樹脂製トレイを提供すること。
【解決手段】 平面視形状が方形であり、角部が円弧状に形成されている樹脂製トレイであって、角部の側部において高さ1/2より上部に外方に向けて肉厚部が設けられており、肉厚部の最大肉厚が、高さ1/2より下部の最大肉厚の1.5〜2.5倍であり、肉厚部が少なくとも前記円弧の中心角45°の範囲で形成されている樹脂製トレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製トレイに関する。さらに詳しくは、角部が落下等の衝撃が加わったときに破損し難い形状の樹脂製トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製トレイは、軽量で、成形が容易であり、比較的低いコストで入手できることから、集団給食用、食堂用などに多く使用されている。
樹脂製トレイは材質が樹脂であることから、衝撃が加わったときに割れやすい性質を有している。特に落下したときの衝撃によって割れが起こることが多く、割れを起こしたトレイは、強度上の安全性及び美観の低下等の理由でその後の使用に耐えず廃棄されることになる。
【0003】
最近は、環境上の理由等でリサイクル樹脂が使用される機会が多くなってきたが、リサイクル樹脂を使用したトレイにおいてより多く落下時に割れる事例が発生している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、落下したときに生じる割れが、角部への衝撃によって角部からヒビ割れが発生することによって生じることを突き止め、誤って落下させてもヒビ割れ破損し難い樹脂製トレイの開発に鋭意取組んだ結果、本発明に到達したものである。
本発明は、誤って落下させて角部に衝撃が加わっても、割れ難い形状の樹脂製トレイを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、平面視形状が方形であり、角部が円弧状に形成されている樹脂製トレイであって、角部の側部において高さ1/2より上部に外方に向けて肉厚部が設けられており、肉厚部の最大肉厚が、高さ1/2より下部の最大肉厚の1.5〜2.5倍であり、肉厚部が前記円弧の中心角45°以上の範囲で形成されている樹脂製トレイを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、誤って落下させても、割れ難い形状の樹脂製トレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の樹脂製トレイの一例を示す平面図である。
【図2】図1の樹脂製トレイの正面図である。
【図3】図1におけるA−A’断面図である
【図4】本発明の樹脂製トレイにおいて肉厚部が形成される位置を示す概略図である。
【図5】本発明の樹脂製トレイが複数積載されたときの様子を示す概略図である。
【図6】落下衝撃試験方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明が提供するのは、平面視形状が方形であり、角部が円弧状に形成されている樹脂製トレイであって、角部の側部において高さ1/2より上部に外方に向けて肉厚部が設けられており、肉厚部の最大肉厚が、高さ1/2より下部の最大肉厚の1.5〜2.5倍であり、肉厚部が前記円弧の中心角45°以上の範囲で形成されている樹脂製トレイである。
【0009】
本発明の樹脂製トレイの形状は、平面視方形のものである。形状は、正方形であっても、長方形であってもよい。トレイの四つの角部は、外観上の美観及び取り扱い易さの観点から円弧状の形状とすることが好ましい。角部の円弧状の大きさには制限はないが、曲率半径(R)で20〜80mm程度とすることが好ましい。
【0010】
本発明の樹脂製トレイにおいて、角部の側部において外方に向けて設けられた肉厚部は、側部の高さの1/2より上部の位置、好ましくは1/3より上部の位置に設けることが好ましい。樹脂トレイに運搬及び積載の都合をよくするために上縁外方にフランジ部分が設けられているときは、フランジ部分を除いた部分を側部という。
【0011】
樹脂によるトレイの成形の場合、部分的に肉厚部を作ると、ひけ、反り、ウェルドといった成形不良が起こりやすいので、部分的に肉厚部を形成させることは行われない。本発明は、このような成形上の特性を考慮して、本発明の角部において高さ1/2より上部に形成させる肉厚部の最大肉厚を、高さ1/2より下部最大肉厚の1.5〜2.5倍、好ましくは1.7〜2.3倍とするものである。この範囲であれば、成形不良の問題は発生しない。本発明における側部の肉厚とは、側部の断面中心線に垂直の測定した厚みをいう。
【0012】
本発明の肉厚部は、樹脂製トレイの角部の円弧の中心角45°以上の範囲で、好ましくは45°〜90°の範囲に形成されていることが望ましい。
【0013】
形成される肉厚部のサイズは、樹脂製トレイのサイズによるが、上記の条件を満たす範囲で、絶対値としてたとえば、側面中心線にそった上下方向の長さで4〜9mm程度、水平方向で3〜8mm程度であることが好ましい。
【0014】
以下に本発明を、図面を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の樹脂製トレイの一例を示す平面図である。トレイ1は、平面視長方形をしており角部2は円弧状の曲線を描いている形状をしている。トレイ1には底部から上方に立ち上がる側部3を有している。角部2の側部3には肉厚部4が形成されている。トレイ1には、そのほか樹脂トレイに運搬及び積載の都合をよくするために上縁外方にフランジ部分5が設けられており、トレイを積載するときの安定性と、過密着防止のためにリブ6が複数設けられている。そして、トレイ底面角にはトレイの底面がテーブル等とこすれて汚れが付かないようにする為、糸尻7が設けられている。
【0015】
図2は、図1に示したトレイ1の正面図である。図2から、本発明の肉厚部が、角部の側部において高さ1/2より上部に外方に向けて設けられていることがわかる。
【0016】
図3は、図1のトレイ1におけるA−A’の断面図の拡大図である。図3から肉厚部が設けられている様子がより具体的に見ることができる。肉厚部の肉厚aは、高さ1/2より下部の最大肉厚bの1.5〜2.5倍であることが好ましい。
【0017】
図4は、本発明の樹脂製トレイ1において、肉厚部が設けられる好ましい範囲を示す材略図である。角部中心部において、円弧の中心角cが、45°以上、好ましくは45°〜90°の範囲で肉厚部が設けられていることが好ましい。
【0018】
図5は、本発明の樹脂製トレイが積層されている様子を示す概略図である。図5においては、積載したとき下側トレイの側部内面が、上側トレイの肉厚部外面に当接しているようを示している。本発明の樹脂製トレイを積層したとき、下側トレイの側部内面が、上側トレイの肉厚部外面に当接しないように、トレイ側面外側に複数のリブを設けたトレイは、本発明の好ましい態様の一つであるが、一方で図5のように下側トレイの側部内面が、上側トレイの肉厚部外面に当接する形状とすることによって、複数のリブを設けることを省略した樹脂製トレイもまた本発明の好ましい態様の一つである。
【0019】
本発明のトレイを形成する樹脂にはとくに制限はなく、通常樹脂製トレイに使用される熱可塑性樹脂であれば、適宜選択して使用することができる。落下によって割れる事故は特にポリエステル系樹脂において多く発生するので、本発明は特にポリエステル系樹脂製トレイに有効であることになる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。中でもポリエステル系樹脂のリサイクル品にとくに有効である。
【実施例】
【0020】
1.樹脂製トレイの作製
(1)樹脂製トレイI(実施例)
樹脂ポリエチレンナフタレートのリサイクル品を用いて、サイズ370×270×18mmで、角部側部肉厚部が2.2mmの樹脂製トレイを作製した。
【0021】
(2)樹脂製トレイII(比較例)
樹脂製トレイIにおいて、角部側部に肉厚部を設けず側部が均一な肉厚であるほかは、樹脂製トレイIと同様にして、従来形状の樹脂製トレイIIを作製した。
【0022】
2.樹脂製トレイの落下衝撃試験
上記で作製した樹脂製トレイI及び樹脂製トレイIIについて、図7に示すようなコンクリート面上に水平に対して80°の傾斜で立てた平滑な板の上に、樹脂製トレイを裏向けに置き、所定の高さから落下させて、割れているかどうかを目視で観察した。
1枚のテストトレイについて、落下高さを順次30cm、50cm、70cm、90cm、130cm、150cm、170cmと上げて、各落下の度に割れているかどうか観察しながら、割れが確認できるまで落下を繰り返した。
樹脂製トレイI及びIIについて、それぞれ25枚ずつの落下衝撃試験を行った結果を下記表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
3.落下衝撃試験
表1から明らかなように、本発明の樹脂製トレイは、25枚とも170cmでも割れなかったが、従来形状の樹脂製トレイは、110cmまでの高さで25枚すべてが割れた。
このことから、本発明の樹脂製トレイでは、落下衝撃に対して割れ難いという効果が顕著に現れている。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明により、誤って落下させても、割れ難い形状の樹脂製トレイが提供される。
本発明を実施することによって、落下させても割れ難い形状だけでなく、通常樹脂製トレイに設けられているリブを省略することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1.トレイ
2.角部
3.側部
4.肉厚部
5.フランジ部
6.リブ
7.糸尻
8.板
9.コンクリート
a.肉厚
b.肉厚
c.中心角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視形状が方形であり、角部が円弧状に形成されている樹脂製トレイであって、角部の側部において高さ1/2より上部に外方に向けて肉厚部が設けられており、肉厚部の最大肉厚が、高さ1/2より下部の最大肉厚の1.5〜2.5倍であり、肉厚部が前記円弧の中心角45°以上の範囲で形成されている樹脂製トレイ。
【請求項2】
前記肉厚部の長さが、水平方向で3〜8mmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製トレイ。
【請求項3】
前記樹脂が、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製トレイ。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂が、リサイクル品であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製トレイ。
【請求項5】
トレイ側部外側にリブ状物の形成が省略されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂製トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93562(P2011−93562A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248915(P2009−248915)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000176176)三信化工株式会社 (34)
【Fターム(参考)】