説明

樹脂製ボビン

【課題】仕様が変わっても金型を変更する必要が無く、コストの安い樹脂製ボビンを提供する。
【解決手段】糸状物を巻き付ける筒状のボビン本体9と、前記糸状物の脱落を防止するため前記ボビン本体の幅方向の端部で形成されたフランジ5とを少なくとも有する樹脂製ボビン1において、前記ボビン本体9が仕切り板3を有し、該仕切り板3によってボビン本体9が少なくとも二つの区画16,17を有し、その区画が良品巻き付け部と不良品巻き付け部であり、さらに前記フランジ5の少なくとも一方には少なくとも一つの切欠き10を有する樹脂製ボビン1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸状物を巻き付けるための樹脂製ボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
直径が少なくとも500mm以上ある大型ボビンは木製となっており、それ以下の外径を有するボビンは、樹脂製の製品となっている。大型の木製ボビンは破損した際には一部分の修理では対応できなく、全く新しいものに交換しなければならなかった。又、一体成形品の樹脂ボビンは、金型コストが掛かると共に、寸法が少し変更になれば、新しい金型から作り直さねばならなかった。
【0003】
又、ボビンの要求としては、少なくとも2種類の要求があり、糸状物の製造初期に不良品が大量に発生し、有る程度不良品を巻いた後に、良品を巻かねばならず、不良品の糸状物と良品の糸状物をボビン上で区別する必要があった。
【0004】
又一方では、糸状物の製造初期に不良品は発生しない場合には、そういった区別をする必要がなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こういった用途の異なるものに対して、仕様を変える必要があり、仕様を変えるために金型も変える必要が生じ、コスト高になっていた。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するものであり、仕様が変わっても金型を変更する必要が無く、コストの安い樹脂製ボビン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1記載の発明は、糸状物を巻き付ける筒状のボビン本体と、前記糸状物の脱落を防止するため前記ボビンの幅方向の端部で形成されたフランジとを少なくとも有する樹脂製ボビンにおいて、前記ボビン本体が仕切り板を有し、該仕切り板によってボビン本体が少なくとも二つの区画を有し、さらに前記フランジの少なくとも一方には少なくとも一つの切り欠けを有する樹脂製ボビンである。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記仕切り板は、前記フランジよりも少なくとも外径の小さい円板状で、前記仕切り板には少なくとも一つの切り欠きを有する請求項1に記載の樹脂製ボビンである。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記二つの区画がそれぞれ良品巻き付け部と不良品巻き付け部である請求項1又は2に記載の樹脂製ボビンである。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記仕切り板とフランジとは少なくとも内周側と外周側に位置する二つの係合孔を有し、前記二つの係合孔を結ぶ直線が円の中心点に向かう放射線状とは異なる請求項1から3のいずれかに記載の樹脂製ボビンである。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記仕切り板とフランジとが仕切り板の外周側の孔とフランジの内周側の孔とを係合手段で係合した請求項4に記載の樹脂製ボビンである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記フランジは円板を4分割した扇形のドラムであって、該ドラムを周方向に連結したものであり、前記仕切り板は前記ドラムを一部切除し、前記フランジとボビン本体幅方向に連結したものである請求項1から5のいずれかに記載の樹脂製ボビンである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記ドラムは、外周側と内周側に位置する少なくとも二つの係合孔を有し、該二つの係合孔を結ぶ直線は、該扇形の中心線と平行であり、前記仕切り板の外周側の孔と前記ドラムの内周側の孔とを係合手段にて係合した請求項6に記載の樹脂製ボビンである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、糸状物を巻き付ける筒状のボビン本体と、前記糸状物の脱落を防止するため前記ボビンの幅方向の端部で形成されたフランジとを少なくとも有する樹脂製ボビンにおいて、前記ボビン本体が仕切り板を有し、該仕切り板によってボビン本体が少なくとも二つの区画を有し、さらに前記フランジの少なくとも一方には少なくとも一つの切り欠けを有する樹脂製ボビンであることから、製造始めに不良品が発生する糸状物であっても、製造始めの不良品と、その後の良品とを区別した区画内で巻くことができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、前記仕切り板は、前記フランジよりも少なくとも外径の小さい円板状で、前記仕切り板には少なくとも一つの切り欠きを有する請求項1に記載の樹脂製ボビンであることから、ボビンを地面で転がして使用する場合に仕切り板が障害とならないという効果が有る。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、前記二つの区画がそれぞれ良品巻き付け部と不良品巻き付け部である請求項1又は2に記載の樹脂製ボビンであることから、良品部と不良品部を明確に区別でき、不良品のみ除去することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、前記仕切り板とフランジとは少なくとも内周側と外周側に位置する二つの係合孔を有し、前記二つの係合孔を結ぶ直線が円の中心点に向かう放射線状とはなっていない請求項1から3のいずれかに記載の樹脂製ボビンであることから、前記仕切り板がフランジよりも中心に入っている場合でも、仕切り板の外周側の係合孔とフランジの内周側の係合孔とを合わせて係合することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、前記仕切り板とフランジとが仕切り板の外周側の孔とフランジの内周側の孔とを係合手段で係合した請求項4に記載の樹脂製ボビンであることから、糸状部材の不良箇所を巻いた部分と、良品箇所を巻いた部分とを区分することができるという効果がある。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、前記フランジは円板を4分割した扇形のドラムであって、該ドラムを周方向に連結したものであり、前記仕切り板は前記ドラムを一部切除し、前記フランジとボビン本体幅方向に連結したものである請求項1から5のいずれかに記載の樹脂製ボビンであることから、フランジと仕切り板は同じものから作製することができ、複数の金型や成形機が不要となる効果が有る。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、前記ドラムは、外周側と内周側に位置する少なくとも二つの係合孔を有し、該二つの係合孔を結ぶ直線は、該扇形の中心線と平行であり、前記仕切り板の外周側の孔と前記ドラムの内周側の孔とを係合手段にて係合した請求項6に記載の樹脂製ボビンであることから、前記仕切り板がフランジよりも中心に入っている場合でも、仕切り板の外周側の係合孔とフランジの内周側の係合孔とを合わせて係合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る樹脂ボビンは、図1に示すような円板状の仕切り板3があるタイプと、図2のような仕切り板のないものに分かれる。図1の仕切り板のあるタイプは、若干仕切り板3の外径をフランジ5の外径よりも小さくしている。好ましくは、フランジ5よりも仕切り板3の方が10〜20mm内側に入り込んでいる方が良い。そうすることによって当該ボビンを地面を転がして使用する場合に仕切り板が障害とならないという効果がある。
【0022】
図1に示すタイプの樹脂製ボビン1は、糸状物を巻き始めは、前記フランジ5と仕切り板3との間の不良品巻きつけ部6に糸状物を巻き付ける。そして、糸状物が良品に変わってくるとボビン本体8に誘導して、ボビン本体8に巻き付ける。そして、良品の巻き付け後、フランジ5の切欠き10の部分から刃物を挿入して不良品を切断し、回収することができる。
【0023】
樹脂製ボビン1の材料としては、熱可塑性樹脂であれば特に限定は無く、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ノリル等の樹脂が使用できる。
【0024】
又、前記フランジは図3に示すように、円板部材を4等分にした扇状のドラム7を4つ組み合わせて用いられる。該ドラムは、円周方向で連結されて円板状のフランジ5となる。又、前記ドラム7には、前記ドラム7の内周側と外周側に位置する少なくとも二つの係合孔9,11が設けられている。該外周側と内周側に設けた係合孔を直線で結んだときに、その直線は図4に示したように、扇形の中心線13と平行となるようにする。
【0025】
更に、前記ドラム7の一部分を切除しツバ15とし、前記ツバ15をドラム7に係合することによって仕切り板3を作製する。ツバ15とドラム7を係合する際に、ツバ15の外周側の係合孔11と、ドラム7の内周側の係合孔9とを合わせて、長螺子やボルトといった係合手段にて固定する。前記ドラム7及びツバ15に設けられた係合孔9,11間の距離は、仕切り板3がフランジ5よりも入り込む寸法に合わせる。また、前記係合孔9,11間を結んだ線が扇形であるドラム7の中心線と平行となることから、ツバ15の外周側の係合孔11とドラム7の内周側の係合孔とが合致する。
【0026】
これらのことより、フランジ5と仕切り板3とは同じ金型から製造することができ、複数の金型が不要となり、コスト低減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る樹脂ボビンの斜視図である。
【図2】本発明に係る他の樹脂ボビンの斜視図である。
【図3】本発明に係るドラムとツバの斜視図である。
【図4】本発明に係るドラムの斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 樹脂ボビン
3 仕切り板
5 フランジ
7 ドラム
8 ボビン本体
9 係合孔
10 切欠き
11 係合孔
13 中心線
15 ツバ
16 良品巻き付け部
17 不良品巻き付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状物を巻き付ける筒状のボビン本体と、前記糸状物の脱落を防止するため前記ボビンの幅方向の端部で形成されたフランジとを少なくとも有する樹脂製ボビンにおいて、前記ボビン本体が仕切り板を有し、該仕切り板によってボビン本体が少なくとも二つの区画を有し、さらに前記フランジの少なくとも一方には少なくとも一つの切欠きを有することを特徴とする樹脂製ボビン。
【請求項2】
前記仕切り板は、前記フランジよりも少なくとも外径の小さい円板状で、前記仕切り板には少なくとも一つの切り欠きを有する請求項1に記載の樹脂製ボビン。
【請求項3】
前記二つの区画がそれぞれ良品巻き付け部と不良品巻き付け部である請求項1又は2に記載の樹脂製ボビン。
【請求項4】
前記仕切り板とフランジとは少なくとも内周側と外周側に位置する二つの係合孔を有し、前記二つの係合孔を結ぶ直線が円の中心点に向かう放射線状とはなっていない請求項から3のいずれかに記載の樹脂製ボビン。
【請求項5】
前記仕切り板とフランジとが仕切り板の外周側の孔とフランジの内周側の孔とを係合手段で係合した請求項4に記載の樹脂製ボビン。
【請求項6】
前記フランジは円板を4分割した扇形のドラムであって、該ドラムを周方向に連結したものであり、前記仕切り板は前記ドラムを一部切除し、前記フランジとボビン本体幅方向に連結したものである請求項1から5のいずれかに記載の樹脂製ボビン。
【請求項7】
前記ドラムは、外周側と内周側に位置する少なくとも二つの係合孔を有し、該二つの係合孔を結ぶ直線は、該扇形の中心線と平行であり、前記仕切り板の外周側の孔と前記ドラムの内周側の孔とを係合手段にて係合した請求項6に記載の樹脂製ボビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−227361(P2009−227361A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72237(P2008−72237)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】