説明

樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置及びこれを用いた洗濯・滅菌方法

【課題】樹脂製繊維を乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類を保形したままで洗浄・滅菌を可能にする。
【解決手段】樹脂製繊維を乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類Mの洗濯・滅菌装置Aであって、前記樹脂製マット類Mを直立させて収容可能な収納容器本体1と、この収納容器本体1を密閉する蓋体2とからなる直立槽3と、前記直立槽3の内部に収容された前記樹脂製マット類Mを高熱及び/又は高圧の気体或いは液体で洗浄可能な洗浄具4と、 前記直立槽3の下端に併設されたトレー状の洗濯パン5と、より構成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線条の樹脂製繊維を、乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置及びこれを用いた洗濯・滅菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マット類の洗濯装置としては、回転ドラムの内周面に所定間隔でドラムの軸方向の畝状突起を設け、隣接する畝状突起の間にマットを少し弾性圧縮した状態で嵌め込むことにより、前記マットを回転ドラムの周面に定置させて洗浄するものがあった。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
これらマット類は、一般には、綿・羽毛、或いは、発泡ウレタン・スポンジを基材とするものであり、最近では低反発のマット類も人気である。
【0004】
一方、近年では、熱可塑性樹脂を原料又は主原料とした線条の繊維を、ループ状に無秩序に絡め、且つ、部分的に熱接着して、まるで乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類が開発されており、この樹脂製マット類は、高反発なうえ、撥水性が良いため、例えば、床擦れや、失禁し易い老人介護や病院等のベッド等として使用するのに適している(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−62376号
【特許文献2】特開2006−6924号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の回転ドラムを用いた洗濯装置では、マット類を変形して洗浄するため、変形し難い前記樹脂製マット類を洗浄することはできないという問題があった。
【0006】
また、従来の洗濯装置では、洗浄、すすぎ、脱水、乾燥という工程を順次行うものであるが、このような洗濯工程では、滅菌までを行うことは考慮されていないという問題もある。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするもので、樹脂製繊維を、乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類を保形したままで洗浄・滅菌が可能な樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置及びこれを用いた洗濯・滅菌方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、
請求項1に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置は、線条の樹脂製繊維を、乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置であって、前記樹脂製マット類を直立させて収容可能な収納容器本体と、この収納容器本体を密閉する蓋体とからなる直立槽と、前記直立槽の内部に収容された前記樹脂製マット類を高熱及び/又は高圧の気体或いは液体で洗浄可能な洗浄具と、前記直立槽の下端に併設されたトレー状の洗濯パンと、より構成してなる。
【0009】
請求項2に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置は、請求項1において、直立槽の収納容器本体は、複数の樹脂製マット類を並設して収容可能にしてなる。
【0010】
請求項3に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌方法は、請求項1又は2に記載された樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置を用い、樹脂製マット類に付着された汚れ等を洗濯パン上で粗洗浄する粗洗浄工程と、この粗洗浄工程で粗洗浄された樹脂製マット類を収納容器本体に収容し、所定量の洗剤・滅菌剤を投入したうえで、蓋体で密閉し、洗浄具を稼働して収容された樹脂製マット類を洗浄・滅菌処理する本洗浄工程と、よりなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果がある。
請求項1に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置によれば、直立槽の収納容器本体内に樹脂製マット類を直立させて収容可能とし、更に、この収納容器本体を蓋体で密閉したうえで、前記樹脂製マット類を高熱及び/又は高圧の気体或いは液体で洗浄可能な洗浄具を備えているため、変形し難い前記樹脂製マット類であっても、これを変形させずに保形したままで洗浄・滅菌することができる。
【0012】
また、樹脂製マット類に付着された汚れ等は、洗濯パン上で予め粗洗浄することが可能であるため、前記収納容器本体内には、表面が粗洗浄された樹脂製マット類が収容され、この樹脂製マット類の内部にまで洗浄具の気体或いは液体が噴出されて洗浄し易く、樹脂製マット類の洗浄・滅菌を確実に行うことができる。
【0013】
請求項2に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置によれば、収納容器本体は、複数の樹脂製マット類を並設して収容可能にしてなるため、複数の樹脂製マット類を同時に洗浄・滅菌して、作業効率を高めることができる。
【0014】
請求項3に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌方法によれば、請求項1又は2に記載された樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置を用いて、粗洗浄工程、本洗浄工程を順次行うことにより、樹脂製マット類に付着された汚れ等を、洗濯パン上で予め粗洗浄し、その表面が粗洗浄された前記樹脂製マット類を変形させずに保形したままで、収納容器本体内に直立させて洗浄・滅菌するので、前記樹脂製マット類の内部にまで洗浄具の気体或いは液体が噴出され、樹脂製マット類の洗浄・滅菌を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置及びこれを用いた洗濯・滅菌方法を図面とともに説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置Aの一実施例を示す概略図であり、図1(a)は、本発明に係る洗濯・滅菌装置Aの全体斜視図であり、図1(b)は、(a)で示した直立槽3の概略分解図である。
【0017】
なお、本実施例で示した洗濯・滅菌装置Aは、本発明の基本構成を示すものである。
【0018】
すなわち、この樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置Aは、線条の樹脂製繊維を、乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類Mに用いることができ、樹脂製マット類Mを直立させて収容可能な収納容器本体1と、この収納容器本体1を密閉する蓋体2とからなる直立槽3と、この直立槽3の内部に収容された樹脂製マット類Mを高熱及び/又は高圧の気体或いは液体で洗浄可能な洗浄具4と、直立槽3の下端に併設されたトレー状の洗濯パン5と、より構成してなる。
【0019】
この樹脂製マット類Mは、中空線条又は中実線条の熱可塑性樹脂を主原料とし、これを押し出し成形によってループ状に無秩序に絡め、且つ、部分的に熱接着して、まるで乾燥した寒天状に成形されてなり、高反発なうえ、撥水性が高いものである。
【0020】
そのため、この樹脂製マット類Mを、例えば、一般的な矩形状のベッドに形成すれば、床擦れを生じ難いだけでなく、特に、失禁し易い老人介護等では、失禁した際にベッド内部に汚水が吸水されず好適である。
【0021】
直立槽3は、収納容器本体1と、この収納容器本体1を密閉する蓋体2とからなる。
【0022】
収納容器本体1は、耐熱性及び耐圧性を備え、上方のみが開放された箱状に形成することで、樹脂製マット類Mを上方から落し入れるだけで、これを直立させて収容可能にしている。
【0023】
なお、本実施例では、樹脂製マット類Mが長方形の立方体に形成されたものを例示しているため、この樹脂製マット類Mを横長方向に向けて収納容器本体1に収容可能にしているが、これに限定されるものではない。
【0024】
また、収納容器本体1に対向して立設された短辺側壁11の内面には、複数の樹脂製マット類Mを一定間隔を隔てて並設して収容可能にしてなるガイド突起12を形成している。
【0025】
このようなガイド突起12を形成することで、複数の樹脂製マット類Mを収納容器本体1内に同時に一定間隔を隔てて並設して収容することができ、洗浄・滅菌効率及び作業効率を高めることができる。
【0026】
蓋体2は、収納容器本体1と同じく、耐熱性及び耐圧性を備え、この収納容器本体1の上方の開口13を密閉可能にしている。
【0027】
ここでは、収納容器本体1の上方の開口13に外嵌される蓋本体21の上端に取っ手22を形成し、この取っ手22を把持しながら、蓋体2を着脱するようにしたものを示しているが、例えば、蓋体2の一端に開閉ヒンジ(不図示)を設け、蓋体2の開閉操作を行うものでも構わない。
【0028】
また、収納容器本体1の下端内部には、収容された樹脂製マット類Mの下端に近接されて、この樹脂製マット類Mを高熱及び/又は高圧の気体或いは液体で洗浄可能な洗浄具4を設置している。
【0029】
この洗浄具4は、開閉バルブ41の上流に連結された高温の水蒸気等の液体、又は、高圧のエアー等の気体を発生可能な駆動源(不図示)から送給される前記水蒸気、エアー等を、開閉バルブ41を開放することで、収納容器本体1内に設置された噴霧ノズル等の噴射部42を通じて、密閉された収納容器本体1内を高熱及び/又は高圧状態に供給して、樹脂製マット類Mの洗浄・滅菌を行うものである。
【0030】
そして、収納容器本体1内を一定時間、高熱及び/又は高圧状態にして樹脂製マット類Mの洗浄・滅菌を行った後は、開閉バルブ41を閉じると共に、噴射部42の下流に設置された排出バルブ43を開放して、収納容器本体1内を常温及び/又は大気圧に戻し、蓋体2を開放して、洗浄・滅菌された樹脂製マット類Mを取り出すのである。
【0031】
更に、直立槽3の下端外部には、トレー状の洗濯パン5を併設してなり、この洗濯パン5の底面51には、排水口52を開設している。
【0032】
このように構成した本発明に係る洗濯・滅菌装置Aは、以下の方法で使用する。
【0033】
先ず、樹脂製マット類Mに付着された汚れ等は、洗濯パン5上で予め粗洗浄し、その表面に付着された汚れ等を除去して排水口52から下水等に排水する。
【0034】
なお、この粗洗浄では、前記駆動源(不図示)を使用して、高圧の噴水シャワー等で樹脂製マット類Mの表面に付着された汚れ等を洗い流す程度の簡易な手段であれば良い。
【0035】
そして、この粗洗浄された樹脂製マット類Mを、収納容器本体1に収容し、所定量の洗剤・滅菌剤を投入する。
【0036】
ここで、使用される洗剤・滅菌剤としては、種々の化学洗剤が利用可能であるが、本実施例では、殺菌力が高く、且つ、無臭力の高い酸化剤を使用しており、具体的には、純粋二酸化塩素水を利用している。
【0037】
このような純粋二酸化塩素水等の洗剤・滅菌剤を投入すると共に、収納容器本体1を蓋体2で密閉して、洗浄具4を前記要領で稼働すれば、収容された樹脂製マット類Mの洗浄・滅菌処理を行うのである。
【0038】
そして、所定時間経過後、樹脂製マット類Mの洗浄・滅菌を行った後は、洗浄具4の開閉バルブ41を閉じると共に、排出バルブ43を開放して、収納容器本体1内を常温及び/又は大気圧に戻し、蓋体2を開放して、洗浄・滅菌された樹脂製マット類Mを取り出すのである。
【0039】
上述の如く、本発明に係る樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置M及びこれを用いた洗濯・滅菌方法によれば、直立槽3の収納容器本体1内に樹脂製マット類Mを直立させて収容可能とし、更に、この収納容器本体1を蓋体2で密閉したうえで、樹脂製マット類Mを高熱及び/又は高圧の気体或いは液体で洗浄可能な洗浄具4を備えているため、変形し難い樹脂製マット類Mであっても、これを変形させずに保形したままで洗浄・滅菌することができる。
【0040】
又、樹脂製マット類Mに付着された汚れ等は、洗濯パン5上で予め粗洗浄することが可能であるため、収納容器本体1内には、表面が粗洗浄された樹脂製マット類Mが収容され、この樹脂製マット類Mの内部にまで洗浄具4の気体或いは液体が噴出されて洗浄・滅菌し易く、樹脂製マット類Mの洗浄・滅菌を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は、本発明に係る洗濯・滅菌装置Aの全体斜視図であり、(b)は、(a)で示した直立槽3の概略分解図である。
【符号の説明】
【0042】
A 洗濯・滅菌装置
M 樹脂製マット類
1 収納容器本体
2 蓋体
3 直立槽
4 洗浄具
5 洗濯パン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条の樹脂製繊維を、乾燥した寒天状に成形してなる樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置であって、
前記樹脂製マット類を直立させて収容可能な収納容器本体と、この収納容器本体を密閉する蓋体とからなる直立槽と、
前記直立槽の内部に収容された前記樹脂製マット類を高熱及び/又は高圧の気体或いは液体で洗浄可能な洗浄具と、
前記直立槽の下端に併設されたトレー状の洗濯パンと、より構成してなる樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置。
【請求項2】
請求項1において、
直立槽の収納容器本体は、複数の樹脂製マット類を並設して収容可能にしてなる樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された樹脂製マット類の洗濯・滅菌装置を用い、
樹脂製マット類に付着された汚れ等を洗濯パン上で粗洗浄する粗洗浄工程と、
この粗洗浄工程で粗洗浄された樹脂製マット類を収納容器本体に収容し、所定量の洗剤・滅菌剤を投入したうえで、蓋体で密閉し、洗浄具を稼働して収容された樹脂製マット類を洗浄・滅菌処理する本洗浄工程と、よりなる樹脂製マット類の洗濯・滅菌方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−252852(P2007−252852A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84800(P2006−84800)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(593178409)株式会社オーティス (224)
【出願人】(505311478)ラクーパシステム株式会社 (4)
【Fターム(参考)】