説明

樹脂製薄肉ブレードの製造方法と同装置

【課題】製造が容易で自動化も可能であり、高精度で超小型の薄肉ブレードを効率よく大量に製造でき、低コスト化が図れる樹脂製薄肉ブレードの製造装置を提供する 。
【解決手段】遠心成形した円筒状の薄肉成形体を長手方向に沿って所定幅で切断した短冊状樹脂製薄肉ブレード材xから複数の薄肉ブレードwを打ち抜くプレス機1の下型15に、薄肉ブレード材xを位置決め可能な複数の位置決め部材16を突設し、各薄肉ブレードw位置ごとに給排気孔20を設けて各給排気孔20に連通する給排気路21を真空源およびエア噴射源に切換弁を介して接続する一方、プレス機1の上型10に、薄肉ブレードwの端部形状および前記取付孔形状に対応する打ち抜き部12を設け、プレス機1により打ち抜かれる各薄肉ブレードwを一斉に吸引可能な搬送パッド3を、下型15と上型10間に出入り可能に配備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばインクジェットプリンターのヘッド部をクリーニングするためのブレードをはじめ、主として厚みが0.5mm乃至それ以下と非常に薄く幅が小さくて長さも数
センチメートルと超小型の樹脂製薄肉ブレードを製造するための製造方法とその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な樹脂製ブレードは厚みが1.0mm〜2.0mm程度で長さが10cm前後であるが、厚みが例えば0.5mm前後と非常に薄くなり、また長さも例えば3cm前後と短くて非方形の複雑な形状になると、金型を作って射出成形(注型)にて製造する方法がある。しかし、射出成形するだけではエッジ部をクリーニング等に必要な鋭いカット面に形成するのは難しい。そうなると、射出成形後に、エッジ部を裁断して形成することになり、多量の薄肉ブレードを高効率で製造するのが困難で、低コスト化も図りにくい。
【0003】
クリーニングブレードの製造方法に関する先行技術として、支持金具の縁部に接着剤を塗布した状態で、その支持金具の縁部側を注型金型に挿入し、樹脂注型機によりブレードを注型して硬化させたのち、注型金型から取り出してブレードのエッジ面をカットすることにより、クリーニングブレードを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その他、厚さ0.5mm程度の薄肉ブレードの製造に関する先行技術に、遠心成形金型のポ
リウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂材料を充填して遠心成形した円筒状の薄肉成形体を周方向に沿って短冊状に切断することによって細長の薄肉ブレードを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)、
【特許文献1】特開平8−190327号公報
【特許文献2】特開2004−25846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の射出成形(注型)による製造方法では、本発明の対象とする超小型で薄肉のブレードを製造するのに不都合な点があることは、上記したとおりである。
【0006】
そこで、特許文献2に記載の遠心成形により円筒状の薄肉成形体から短冊状に切断した細長い薄肉ブレード材を製造する。この薄肉ブレード材は長手方向に切断して製造されるため、切断面は鋭く、従来はその切断面をエッジとして利用していたことから、超小型の薄肉ブレードとする場合でも、切断面をエッジとして使用すれば有効に利用できるはずである。また、本発明の対象とする薄肉ブレードは、取付孔を備えているだけでなく、単純な方形ではなく比較的複雑な形状を呈していることから、プレス機により切断面をエッジ部として残るようにして打ち抜くことで、複数の薄肉ブレードを製造することも可能である。
【0007】
しかし、打ち抜き前のブレード材が薄肉で細長い形状であるから、これを複数のブレードに打ち抜こうとすれば、打ち抜き時にブレード材が位置ずれするおそれがある。また、ブレード材をプレス機の下型(下金型)上に位置決めする必要があるが、非常に薄くて柔軟なために下型上面に吸着し易いから、いったん吸着するとブレード材を移動させることが困難である。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、製造が容易で自動化も可能であり、高精度で超小型の薄肉ブレードを効率よく大量に製造でき、低コスト化が図れる樹脂製薄肉ブレードの製造方法とその製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る樹脂製薄肉ブレードの製造方法は、反エッジ側近くに一対の取付孔を備えた非方形の樹脂製薄肉ブレードの製造方法であって、遠心成形した円筒状の薄肉成形体を所定幅で長手方向に沿って切断して短冊状薄肉ブレード材を多数本製造し、前記各短冊状薄肉ブレード材を1本ごとにプレス機の下型上に揮発性液を塗布することにより前記短冊状薄肉ブレード材を滑動可能にして位置決めし、前記短冊状薄肉ブレード材を前記各薄肉ブレードの位置ごとに前記プレス機の下型側に吸引した状態で、相互に隣接する前記薄肉ブレードの少なくとも端部形状および前記取付孔に対応した打ち抜き部を設けたプレス機の上型により複数の薄肉ブレードを一斉に打ち抜き、前記各薄肉ブレードを上方より吸引するとともに、プレス機の下型側の吸引を中止して圧縮空気をパージすることによりプレス機の下型上から剥離させ、同時に各薄肉ブレード裏面の付着液を概ね除去し、前記吸引した複数の薄肉ブレードを表面に無数の細かい突起部を突設してなる乾燥用コンベヤベルト上に載置し、搬送させながら空気流を前記各薄肉ブレードに当てて乾燥させることを特徴とする。
【0010】
上記の構成を有する本発明に係る樹脂製ブレードの製造方法によれば、例えば、作業者が人手により長尺の短冊状薄肉ブレード材をプレス機の下型上に位置決めするだけで、自動的に多数の薄肉ブレードが高効率で製造される。短冊状の薄肉ブレード材は薄くて下型上面に吸着し易く、移動および位置決めが困難であるが、揮発性液を塗布して滑りやすくしているので、薄肉ブレード材を簡単にかつ正確に位置決めできる。なお、塗布した揮発性液は薄肉ブレード材の裏面に付着するが、プレス機により打ち抜いて製品としての薄肉ブレードとした段階で、各薄肉ブレードを下型から剥離する際に圧縮空気をパージした際にほぼ除去されるうえに、乾燥用ベルトコンベヤにより搬送する間に乾燥させることができる。また、ブレードとして使用するエッジ部には、短冊状薄肉ブレード材を製造する際に切断した部分を使用し、プレス機ではエッジ部以外の部分(少なくとも端部や取付孔)を打ち抜くので、エッジ部としての稜線の機能は有効に維持される。さらに、薄肉ブレード材を下型上に位置決めした後、上型で複数の薄肉ブレードの形状に打ち抜く際には下型側に各薄肉ブレードの位置ごとに吸引して固定するので、位置ずれが生じにくく、正確に所期の薄肉ブレードを製造できるとともに、製造した薄肉ブレードを吸引して移動する際には、下型側から各薄肉ブレードごとに吸引に同期させパージして突き上げるので、下型上から剥離されて円滑に移動させられる。
【0011】
上記の目的を達成するために本発明に係る樹脂製薄肉ブレードの製造装置は、遠心成形した円筒状の薄肉成形体を長手方向に沿って所定幅で切断して複数本の長尺の短冊状樹脂製薄肉ブレード材を製造し、各薄肉ブレード材から一方の切断面近くに一対の取付孔を備えた非方形の樹脂製薄肉ブレードを製造する装置であって、前記短冊状薄肉ブレード材から一斉に複数の薄肉ブレードを打ち抜くプレス機の下型に、前記薄肉ブレード材の切断面を当接させて位置決め可能な複数の位置決め部材を長手方向に間隔をあけて上向きに突設するとともに、打ち抜かれて形成される各薄肉ブレード位置ごとに給排気孔を設けてそれらの給排気孔に連通する給排気路を真空源およびエア噴射源に切換弁を介して接続する一方、前記プレス機の上型に、相互に隣接させた前記薄肉ブレードの少なくとも端部形状および前記取付孔形状に対応する打ち抜き部を設け、前記プレス機により打ち抜かれる複数の各薄肉ブレードを一斉に吸引可能な吸引搬送機構を、前記下型の上方に前記上型が配置される開放状態で、前記下型と上型間に出入り可能に配備したことを特徴とする。
【0012】
上記の構成を有する本発明に係る樹脂製薄肉ブレードの製造装置によれば、上記製造方
法と同様の効果が発揮され、また上記薄肉ブレードを大量に、かつ効率よく製造でき、大幅なコストダウンが図ることができる。
【0013】
請求項3に記載のように、前記吸引搬送機構を、前記下型上とこれに隣接して設けた乾燥用ベルトコンベヤのコンベヤベルト上とで移動可能に配備するとともに、前記乾燥用ベルトコンベヤはコンベヤベルト表面に無数の細かい突起部を全面かつ全長にわたり突設し、前記コンベヤベルト表面とこの上に載置される複数の前記薄肉ブレードとの間に空気を吹き出す空気吹き出し装置を備えることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、なお、製品としての薄肉ブレードの裏面に揮発性の付着液がまだ残存している場合でも乾燥用ベルトコンベヤにより搬送する間に乾燥させることができるうえに、薄肉ブレードはコンベヤベルト上の無数の細かい突起部上に載置された状態で乾燥されるので、裏面に付着液の跡形が残ることがなく、高品質が維持される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る薄肉ブレードの製造方法と製造装置によれば、ブレードとして使用するエッジ部は短冊状薄肉ブレード材を製造する際に切断した部分をそのまま使用し、プレス機ではエッジ部として使用する部分以外の箇所を打ち抜くので、品質の高い薄肉ブレードを製造でき、また、薄肉ブレード材を下型上に位置決めした後、各薄肉ブレードの位置ごとに吸引して下型上に固定した状態で上型にて複数の薄肉ブレードの形状に打ち抜くので、位置ずれが生じにくく、超小型の薄肉ブレード形状であっても確実にかつ正確に打ち抜くことができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る薄肉ブレードの製造装置について実施の最良の形態を図面に基づいて説明し、併せて製造方法についても説明する。
【0017】
図1は本発明の製造対象の薄肉ブレードの一例を拡大して示す正面図と側面図、図2は長尺の短冊状薄肉ブレード材と打ち抜かれた複数の薄肉ブレード(図1参照)の一例を示す平面図、図3は薄肉ブレードの他の例を示す図2と同様の平面図である。図4は遠心成形した薄肉ブレード材用シート材を円筒状にして幅カットし、さらに長さカットして短冊状薄肉ブレード材を製造し、その短冊状薄肉ブレード材の稜線を検査する状態を工程順に示す説明図である。図5は薄肉ブレード製造装置の全体配置の一例を概略的に示す平面図であ離、図6は図5に示す製造装置の正面図である。
【0018】
製造する本例の薄肉ブレードwは、図1に示すように、長さ約40mm、幅約11mm、厚さ0.5mm前後の超小型で、インクジェットプリンタのヘッド部のクリーニングブレードで、透
明なポリウレタン製である。この薄肉ブレードwは、エッジ部w−a側に凹所w−cを有し、反エッジ部w−b寄りに長円孔w−dと円孔w−eとの一対の取付孔を設けた構造からなる。エッジ部w−aをなす稜線の品質に高い精度が要求され、厚みが0.5mm前後と薄
肉からなることから、最初に遠心成形法により円筒状の薄肉遠心成形体を製造する。それから、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を遠心成形金型に注入し、金型を高速回転させて厚みが均一で、加熱により硬化してゴム状の弾性体となる遠心成形体を製造した後、熟成させて所定寸法のシート材yに切断する。
【0019】
このシート材yを一軸マントル(図示せず)に巻き付けて図4(a)のように円筒状とし、図4(b)のように回転させながら円筒状シートy材を刃物(図示せず)により周方向に所定幅ごとに切断する。このシート材yを図4(c)のように拡げた状態で、切断線(カットライン)に直交する方向に一定長さごとに切断し、長尺の短冊状薄肉ブレード材xを形成する。そして、各薄肉ブレード材xの稜線x−aを図4(d)のように稜線検査
装置で検査し、稜線粗さが基準値以下のものを使用する。
【0020】
本例の場合、図2に示すように1本のブレード材xから8個の薄肉ブレードwがプレス機1により打ち抜かれて形成される。ブレード材xは、図5のようにあらかじめ1本ずつ平行に並べてトレー27に収納される。
【0021】
図7は図3に示す他の実施例からなる薄肉ブレードwを打ち抜くためのプレス機の下型の上面を示す平面図で、薄肉ブレードwの形状は異なるが、この例の場合、エッジ部w−a側に凹所w−cがないので、隣接する薄肉ブレードw間および両側の薄肉ブレードwの外端部形状gならびに取付孔形状hに対応する打ち抜き部12が上型10に対し一体に下向きに突設され、また上型10にガイド(図示せず)を介して薄抜きブレードwの固定用ストリッパ(ストリッパプレートとも称される)11を上下動可能に配設し、スプリング(図示せず)により下向きに弱く付勢している。図8はプレス機の上型と下型における真空吸引・ブローの切換態様を打ち抜き工程順に示す説明図で、搬送パッド(搬送機構)による真空吸引態様を併せて示し、図9は薄肉ブレード打ち抜きから取り出しに至る上下型ブローと真空吸引のチャートである。
【0022】
また、上型10の端部形状gに対応する打ち抜き部12の中心位置には圧縮空気の吹き出し孔12aを設け、各吹き出し孔12aに連通する共通の給気路13を圧縮空気源としてのブロー(図示せず)に接続している(図8参照)。一方、図7に示すように下型15には、各薄肉ブレードwのエッジ部w−a側に板状片の位置決め部材16を長手方向に間隔をあけて上向きに突設し、隣接する薄肉ブレードw間および両側の薄肉ブレードw外端部に、打ち抜かれた樹脂片(屑)g・hの吸引排出口部17・18を開口し、図8に示すように各吸引排出口部17・18を共通の吸引路(図示せず)に連通してその他端部を開閉弁(図示せず)を介して真空源(図示せず)に接続している。また、各薄肉ブレードwに対応する位置で位置決め部材16寄りに一対の給排気孔20・20をそれぞれ設け、各給排気孔20を共通の吸引路21に連通してこの吸引路21の他端部を切換弁(図示せず)を介して図示を省略した真空源と圧縮空気源(ブロー)とに接続している。
【0023】
さらに、図5・図6に示すようにプレス機1の一側方に乾燥用ベルトコンベヤとしての風乾ベルトコンベヤ2が設置されており、両者1・2間にはプレス機1で打ち抜かれた8個の薄肉ブレードwを風乾ベルトコンベヤ2のコンベヤベルト25上に載せ移すための搬送パッド3が左右方向にスライド可能に配備されている。搬送パッド3の下面には下型15上の全ての薄肉ブレードwに対応する吸引具31が下向きに延設されており、風乾コンベヤベルト25上方の待機位置から下型15の上方へ水平移動したのちに下降し、吸引具31で薄肉ブレードwを吸引して上昇し、再び水平移動して待機位置へ戻り、そこでも昇降するように構成されている。
【0024】
風乾ベルトコンベヤ2のコンベヤベルト25は、表面が無数の細かい突起部を全面かつ長にわたり突設し、全面にちりばめたザラザラした、いわゆるサンドペーパー状に形成され、薄肉ブレードwの裏面に付着液が残っている場合にでも跡形が付かないように乾燥できるようにしている。このため、図示は省略するが、風乾ベルトコンベヤ2の薄肉ブレードwの搬送面に向けて温風吹き出し装置(図示せず)の温風噴き出し口26を配置している。また、図5・図6に示すように風乾ベルトコンベヤ2の前方位置に稜線検査ステージ4が設けられている。この検査ステージ4上と製品搬入トレー5の前方の待機ステージ6上との間をカメラ式寸法検査装置8の下方を通過してスライド台7が往復移動する。そして、寸法検査装置8で不合格となった製品は押出機9で搬出台29上に搬出される。搬入トレー5への製品搬入が完了すると、スライド台7は検査ステージ4上に戻る。なお、風乾ベルトコンベヤ2のコンベヤベルト25の前端位置と稜線検査ステージ4上のスライド台7と、待機ステージ6上に移動したスライド台7の後方のトレーコンベヤ5のコンベヤ
ベルト上における製品搬入トレー30上との間は、図6に示すように上記搬送パッド3と同様の搬送機構28により、複数の薄肉ブレードwが同時に吸引されて移し換えられるようになっている。
【0025】
以上のようにして本発明の実施例に係る薄肉ブレードwの製造装置が構成されるが、以下に薄肉ブレードwの製造方法をプレス機1により長尺薄肉ブレード材xから薄肉ブレードwに打ち抜かれる工程を中心に説明する。
【0026】
上記実施例の製造装置では、プレス機1の下型15上に透明で長尺の薄肉ブレード材xを位置決めして取り付ける作業のみ、作業者S(図5参照)が行うが、それ以降の作業工程、つまりプレス機1による打ち抜き〜薄肉ブレードwの付着液乾燥〜薄肉ブレードwの寸法検査〜不合格製品のトレーへの搬出〜薄肉ブレードwのトレー投入までの一連の作業を自動的に遂行する。
【0027】
1) 上記したとおり、図7に示すように長尺薄肉ブレード材xを下型15上面において、作業者Sが位置決め部材16にその切断面(エッジ部)x−aを当接させて位置決めする。下型15上には、ブレード材xの滑りをたすけるための揮発性液(例えば溶剤)を塗布しておく。
【0028】
2) この状態で、上型10は上死点に上昇して待機しており、そこから上型10が下降を開始する(図9参照)。
【0029】
3) 図9に示すように、上型10の下降途中で下型15の一対の給排気孔20・20には切換弁を介して真空源が接続され、ブレード材xは各薄肉ブレードw位置ごとに吸引され固定される。
【0030】
4) ここで、図8に示すように上型10は下型15上のブレード材x上に下降するが、スプリングにより下方に付勢されたストリッパ11が打ち抜き部12より先に下降する。そして、ストリッパ11は下型15上面(のブレード材x上)に達すると、スプリングによる付勢力に抗して下型15上面(のブレード材x上)に保持され、ブレード材xの薄肉ブレードw位置を固定する。打ち抜き部12はストリッパ11に対してさらに下降することにより、各薄肉ブレードwの端部および隣接する薄肉ブレードw間の中間部ならびに取付孔に対応する形状の樹脂屑g・hが打ち抜かれ、吸引排出口部17・18内へ押し出される。この結果、8個の薄肉ブレードwが打ち抜かれる。
【0031】
5) 打ち抜き部12の各吹き出し孔12aから圧縮空気が吹き出し、樹脂屑g・hは吸引排出口部17・18内へ排出される。
【0032】
6) 薄肉ブレードwの打ち抜き作業が終了すると、吹き出し孔12aからの圧縮空気の吹き出しが中止され、上型10は上昇を開始する。この間、下型15では一対の給排気孔20・20からの吸引作業が継続し、打ち抜き形成された8個の薄肉ブレードwは定位置に固定されている。またストリッパ11はスプリングにより下方に付勢されているので、打ち抜き時と逆に打ち抜き部12がストリッパ11に対し上方へ移動するまで、薄肉ブレードwを下型15上に押さえて固定しており、薄肉ブレードwが打ち抜き部12とともに持ち上げられるのが防止される。
【0033】
7) 上型10が上昇して上死点(図9参照)に達すると、搬送パッド3が上型10と下型15間のスペース内に水平に移動し、下降を開始して再下降位置に達する。そして、搬送パッド3の各吸引具31の先端開口が8個の薄肉ブレードwのほぼ中央位置に接触し、切換弁を介して真空源に接続され、全ての薄肉ブレードwを一斉に吸引する。わずかに遅
れて下型15の一対の給排気孔20・20は切換弁を介して圧縮空気源に接続され、圧縮空気が薄肉ブレードwの裏面に対し噴射される。この結果、各薄肉ブレードwの付着液は全て若しくは大部分が吹き飛ばされる。
【0034】
8) 搬送パッド3が定位置まで上昇し、水平に移動して風乾ベルトコンベヤ2の後端位置上へ戻る。そして、各吸引具31からの吸引が中止され、逆に圧縮空気が吹き出して吸引具31に吸着されている薄肉ブレードwは一斉に風乾ベルトコンベヤ2のベルト25の後端位置上に載せ移される。
【0035】
9) 風乾コンベヤベルト25上の各薄肉ブレードwは間欠的に前方へ搬送される。このようにして、最前列位置まで搬送される間に、風乾ベルトコンベヤ2の一側方で走行方向に沿って設置された複数の空気吹き出し口26から温風若しくは常温の空気を送り出し、コンベヤベルト25の突起部上の薄肉ブレードwに緩やかな空気流を吹き付けて、仮に付着液が残っている場合に完全に乾燥することができる。そして、風乾コンベヤベルト25の走行回転によりベルトコンベヤ2の最前端位置まで搬送されると、上記搬送パッド3にてコンベヤベルト25上の最前列の薄肉ブレードwは一斉にすぐ前方の検査ステージ4上にスライド台7上に移し載せられる。
【0036】
10) 図5に示すように、スライド台7はゆっくりと水平にトレーコンベヤ5側へ移動
し、寸法検査装置用カメラ8下を通過する。カメラ8は真下を通過するスライド台7上の薄肉ブレードwを撮影し、2値化などの画像処理をして正規(基準)の薄肉ブレード画像
と照合し、寸法差が基準値以内であれば合格と判断するが、基準値を超えていれば不合格と判断し、押出機9がスライド台7上から搬出台29上へ跳ね出す。
【0037】
11) スライド台7はトレーコンベヤ5の前方の待機ステージ6上に移動し、ここで図
6に示す搬送パッド28によりスライド台7上の合格した薄肉ブレードwを吸引してすぐ後方のトレーコンベヤ5のトレー30内に搬入する。そして、スライド台7は検査ステージ4へ戻る。
【0038】
12) こうして、トレーコンベヤ5のトレー30内に搬入された薄肉ブレードwは所定
の位置へ送られ、通常は、作業者による最終検査としての外観検査を受けて出荷されることになる。
【0039】
また、製造する薄肉ブレードには図3に示すように、エッジ部側に凹所を設けていないタイプなど、形状の異なる複数種類のブレードがある。そこで、ブレードの種類が異なる場合にでも、ブレード材xを共通にし、プレス機1の上型10と下型15を交換するだけで、上記と同じ手順で製造できるようにしている。
【0040】
以上に本発明の薄肉ブレードの製造装置として2つの実施例を挙げて説明したが、例えば、下記のように実施することもできる。
【0041】
1) クリーニングブレードに限らず、例えば現像ブレードの製造にも適用でき、また超小型の薄肉ブレードのほか、比較的長さの長い薄肉ブレードの製造にも適用できる。
【0042】
2) プレス機1以外の、乾燥用ベルトコンベヤ2、搬送パッド3・28、トレーコンベヤ5などは他の構造の搬送装置に代えることができ、また上記実施例で作業者の手作業による下型15上へのブレード材xの位置決めを搬送パッドのような装置を用いて自動化することも可能である。
【0043】
3) 上記実施例では、プレス機1を、乾燥用ベルトコンベヤ2、搬送パッド3・28、
トレーコンベヤ5などと組み合わせて一連の製造装置に組み立てたが、組み合わせは自由であり、またプレス機1についてもストリッパ11を備えた構造に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)は本発明の製造対象の薄肉ブレードの一例を拡大して示す正面図、図1(b)は同側面図である。
【図2】図2(a)は長尺の短冊状薄肉ブレード材の一例を、図2(b)は打ち抜かれた複数の薄肉ブレード(図1参照)の一例をそれぞれ示す平面図である。
【図3】図3(a)(b)は本発明の対象とする薄肉ブレードの他の例を示す図2と同様の平面図である。
【図4】遠心成形した薄肉ブレード材用シート材を円筒状にして幅カットし、さらに長さカットして短冊状薄肉ブレード材を製造し、その短冊状薄肉ブレード材の稜線を検査する状態を工程順に示す説明図である。
【図5】本発明に係る薄肉ブレード製造装置の全体配置の一例を示す平面図である。
【図6】図5に示す製造装置の正面図である。
【図7】図3に示す他の実施例からなる薄肉ブレードwを打ち抜くためのプレス機の下型を示す平面図である。
【図8】図8(a)〜(h)はプレス機の上型と下型における真空吸引・ブローの切換態様を打ち抜き工程順に示す説明図で、搬送パッド(搬送機構)による真空吸引態様を併せて示している。
【図9】本発明の製造方法において薄肉ブレード打ち抜きから取り出しに至る上下型ブローと真空吸引のチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 プレス機
2 風乾ベルトコンベヤ(乾燥用ベルトコンベヤ)
3・28 搬送パッド
4 稜線検査ステージ
5 トレーコンベヤ
6 待機ステージ
7 スライド台
8 カメラ式寸法検査装置
9 押出機
10 上型
11 ストリッパ(ストリッパプレート)
12 打ち抜き部
12a圧縮空気の吹き出し孔
13 給気路
15 下型
16 位置決め部材
17・18 吸引排出口部
19 吸引路
20 給排気孔
21 給排気路
25 コンベヤベルト
26 空気の噴き出し口
27・30 トレー
29 搬出台
31 吸引具
w 薄肉ブレード
x 薄肉ブレード材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反エッジ側近くに一対の取付孔を備えた非方形の樹脂製薄肉ブレードの製造方法であって、
遠心成形した円筒状の薄肉成形体を所定幅で長手方向に沿って切断して長尺の短冊状薄肉ブレード材を多数本製造し、
前記各短冊状薄肉ブレード材を1本ごとにプレス下型上に揮発性液を塗布することにより前記短冊状薄肉ブレード材を滑動可能にして位置決めし、
前記短冊状薄肉ブレード材を前記各薄肉ブレードの位置ごとに前記プレス機の下型側に吸引した状態で、相互に隣接する前記薄肉ブレードの少なくとも端部形状および前記取付孔に対応した打ち抜き部を設けたプレス機の上型により複数の薄肉ブレードを一斉に打ち抜き、
前記各薄肉ブレードを上方より吸引するとともに、プレス機の下型側の吸引を中止して圧縮空気をパージすることによりプレス機の下型上から剥離させ、同時に各薄肉ブレード裏面の付着液を概ね除去し、
前記吸引した複数の薄肉ブレードを表面に無数の細かい突起部を突設してなる乾燥用コンベヤベルト上に載置し、搬送させながら空気流を前記各薄肉ブレードに当てて乾燥させること
を特徴とする樹脂製ブレードの製造方法。
【請求項2】
遠心成形した円筒状の薄肉成形体を長手方向に沿って所定幅で切断して複数本の長尺の短冊状樹脂製薄肉ブレード材を製造し、各薄肉ブレード材から一方の切断面近くに一対の取付孔を備えた非方形の樹脂製薄肉ブレードを製造する装置であって、
前記短冊状薄肉ブレード材から一斉に複数の薄肉ブレードを打ち抜くプレス機の下型に、前記薄肉ブレード材の切断面を当接させて位置決め可能な複数の位置決め部材を長手方向に間隔をあけて上向きに突設するとともに、
打ち抜かれて形成される各薄肉ブレード位置ごとに給排気孔を設けてそれらの給排気孔に連通する給排気路を真空源および圧縮空気源に切換弁を介して接続する一方、
前記プレス機の上型に、相互に隣接させた前記薄肉ブレードの少なくとも端部形状および前記取付孔形状に対応する打ち抜き部を設け、
前記プレス機により打ち抜かれる複数の各薄肉ブレードを一斉に吸引可能な吸引搬送機構を、前記下型の上方に前記上型が配置される開放状態で、前記下型と上型間に出入り可能に配備したこと
を特徴とする樹脂製薄肉ブレードの製造装置。
【請求項3】
前記吸引搬送機構を、前記下型上とこれに隣接して設けた乾燥用ベルトコンベヤのコンベヤベルト上とで移動可能に配備するとともに、
前記乾燥用ベルトコンベヤはコンベヤベルト表面に無数の細かい突起部を全面かつ全長にわたり突設し、前記コンベヤベルト表面とこの上に載置される複数の前記薄肉ブレードとの間に空気を吹き出す空気吹き出し装置を備えたこと
を特徴とする請求項2記載の樹脂製薄肉ブレードの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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