樹脂製部材同士の組付構造
【課題】樹脂製部材同士を係合ピンと係合孔とを係合させることによって簡単に取り付けることができるとともに、樹脂製部材同士の組付状態を解除する場合に、係合ピンと係合孔との係合状態を解除するにあたって過度の引き抜き力が要求されず、係合ピンが不意に破損することを防止し、係合ピンと係合孔との係合解除を好適に行うことが可能な樹脂製部材同士の組付構造を提供する。
【解決手段】座裏カバー9に一体に設けた剛性の高い係合ピン95の先端部に、係合爪952を設けた係合爪形成領域95Aと係合爪952を設けていない係合爪非形成領域95Bとを軸回りに二分割して設け、この係合ピン95を係合孔311に挿入して係合させた状態で、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾けることにより係合ピン95自体を係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aを押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、係合ピン95と係合孔311との係合状態を解除するように構成した。
【解決手段】座裏カバー9に一体に設けた剛性の高い係合ピン95の先端部に、係合爪952を設けた係合爪形成領域95Aと係合爪952を設けていない係合爪非形成領域95Bとを軸回りに二分割して設け、この係合ピン95を係合孔311に挿入して係合させた状態で、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾けることにより係合ピン95自体を係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aを押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、係合ピン95と係合孔311との係合状態を解除するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係合ピンと係合孔とを係合させて樹脂製部材同士を組付可能に構成した樹脂製部材同士の組付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製部材同士を組み付ける構造としては、一方の樹脂製部材に、先端に係合爪を有する弾性変形可能な係合ピンを設け、この係合ピンを、他方の樹脂製部材に設けた係合孔に係合ピン自体の弾性変形を利用して弾性係合させることによって、樹脂製部材同士を組み付ける態様が挙げられる。
【0003】
具体的な実施態様としては、二枚のシェル構造体、例えば椅子の背シェルと背カバーとを相互に組み付けて構成する場合において、背カバーの適宜箇所に、筒状体をスリットによって軸回りに3分割し且つ先端部に係合爪を一体に有する係合ピンを複数設け、これら各係合ピンを、背シェルに設けた弾性変形不能な又は弾性変形し難い筒状の係合孔にそれぞれ押圧して挿入し、その過程で係合ピンが軸径を小さくする方向へ一時的に弾性退避し、係合孔の反挿入側開口縁を通過し終えた時点又は係合孔内に設けた係合突起を通過し終えた時点で係合ピンが弾性復帰することにより、係合爪を係合孔の反挿入側開口縁又は係合突起に係合させて、背カバーと背シェルとを一体的に組み付けるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3874375号公報(図4等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のものは、樹脂製部材同士を一旦組み付けた後において、部品交換やメンテナンス等、その組付状態を解除しなければならない場合には、樹脂製部材同士を相互に引き離す力、具体的には係合爪と係合孔との係合力を超える引っ張り力によって、各係合ピンの係合爪をなかば強引に弾性変形させて、係合ピンを係合孔から抜き取るようにしていた。
【0005】
しかしながら、各係合ピンの係合爪を強引に弾性変形させる態様であるため、引き離し作業時に過度の引き抜き力が要求され、引き離し作業をスムーズに行うことができないという不具合に加え、係合爪をスムーズに弾性変形させることができない場合や、急な引っ張り力が係合爪に作用した場合には、係合爪、ひいては係合ピン自体が破損するおそれがあり、破損した場合にはこのような係合爪を一体に設けた樹脂製部材ごと交換しなければならず、コスト面及び作業効率で劣るものとなる。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、樹脂製部材同士を係合ピンと係合孔とを相互に係合させることによって簡単に組み付けることができるとともに、樹脂製部材同士の組付状態を解除する場合に、係合ピンと係合孔との係合状態を解除するにあたって過度の引き抜き力が要求されず、係合ピンが不意に破損することを防止し、係合ピンと係合孔との係合解除をスムーズに行うことが可能な樹脂製部材同士の組付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の樹脂製部材同士の組付構造は、第1の樹脂製部材に一体に設けた剛性の高い係合ピンを、第2の樹脂製部材に設けた係合孔に、当該係合孔の周縁の弾性を利用して係合させることによって、前記樹脂製部材同士を組付可能に構成したものであり、前記係合ピンが、円柱状又は円筒状をなす軸部を主体としてなり、当該軸部の先端部をその軸回りに、係合爪を設けた係合爪形成領域と係合爪を設けていない係合爪非形成領域とに二分割したものであり、前記係合孔が、前記係合ピンを外嵌する円形状をなし、且つ周縁にスリット又は切欠からなる弾性変形惹起部を設けたものであり、当該係合ピンを前記係合孔に挿入して係合させた状態で、前記第1の樹脂製部材のうち前記係合ピンの基端部を設けた部位を傾けることにより当該係合ピン自体を前記係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、前記係合ピンと前記係合孔との係合状態を解除するように構成したことを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、係合ピンを係合孔に挿入して係合させた状態において、係合ピンを反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても係合ピンの軸部のうち係合爪形成領域が係合孔に係わり合い、係合ピンが係合孔から抜け外れることを防止できるとともに、係合ピンの軸部の先端部を係合爪形成領域と係合爪非形成領域とに軸回りに二分割しているため、係合ピンと係合孔とを相互に係合させた状態において、剛性の高い係合ピンを傾動させて係合孔の周縁を係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が押圧することによって係合孔が弾性変形惹起部の作用により開口寸法を拡開する方向に弾性変形し、係合爪非形成領域を係合孔から抜き外すことができ、さらに係合ピンを傾動させる又は反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合に、係合爪非形成領域に続いて係合爪形成領域も係合孔から抜け外れ、係合ピン全体を係合孔から抜き外すことができる。
【0009】
したがって、本発明によれば、樹脂製部材同士を一旦組み付けた後において、部品交換やメンテナンス等、その組付状態を解除しなければならない場合に、係合爪と係合孔との係合力を超える過度の引っ張り力、引き抜き力が要求されず、樹脂製部材同士の分解作業をスムーズに行うことができる。しかも、係合ピンに急な引っ張り力が作用することを回避し、係合爪、ひいては係合ピン自体の破損を防止することができる。
【0010】
特に、前記傾動手段が、前記第1の樹脂製部材自体を傾けることによって、前記係合ピン自体を、前記係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し且つ係合爪非形成領域が係合孔から抜け外れる角度まで傾けるものであれば、第1の樹脂製部材に専用の傾動機構を設ける必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0011】
係合ピンと係合孔とを相互に係合させた状態において係合ピンを反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても、係合ピンが係合孔の弾性変形惹起手段から不意に抜け外れることを防止するためには、前記係合ピンを前記係合孔に係合させた状態で、前記係合爪の端部、換言すれば係合爪形成領域と前記係合爪非形成領域との境界部分にある段部と、前記係合孔の前記弾性変形惹起部とが、同一直線上に並ばないように設定すればよい。
【0012】
前記第1の樹脂製部材が、概略薄板状のシェル構造体であり、当該シェル構造体の外縁部又は外縁部近傍部位に前記係合ピンを一体に設けていれば、係合ピンを係合孔に係合させた状態においてシェル構造体の外縁部又は外縁部近傍部位を把持して第2の樹脂製部材から引き離す方向に反らせて湾曲変形させることにより係合ピンを確実に傾けることができ、樹脂製部材同士の分解作業をスムーズ且つ容易に行うことができる。
【0013】
この場合、第1の樹脂製部材のうち係合ピンの基端部を設けた部位を傾ける際に要する座裏カバーを反らせる操作を比較的軽い力で行うことができるようにするには、前記シェル構造体のコーナー部又はコーナー部近傍部位に前記係合ピンを一体に設ければよい。
【0014】
また、複数の係合ピンを第1の樹脂製部材に一体成型する場合に用いる金型の設計上の要求を満たすためには、前記第1の樹脂製部材が各コーナー部又は各コーナー部近傍部位にそれぞれ前記係合ピンを一体に設けたものであり、左右巾方向に対向する係合ピンを、前記係合爪形成領域同士が内向きに対向するように設けることが好ましい。このような構造により、各係合ピンの係合爪非形成領域が第1の樹脂製部材の外縁側に設けられることとなり、第1の樹脂製部材を第2の樹脂製部材から引き離す方向に反らす操作力を付与した場合に、相対的に外縁側に位置する係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位を係合孔の周縁に当てて押圧させる動作を効率良く行うことができるという効果も得られる。
【0015】
前記第1の樹脂製部材が前記係合ピンを複数備えたものであり、前記第2の樹脂製部材が前記係合ピンと同数の前記係合孔を備えたものであれば、第1の樹脂製部材と第2の樹脂製部材との間に複数の係合箇所を確保することができ、第1の樹脂製部材と第2の樹脂製部材との安定した組付状態を維持できる。
【0016】
具体的な実施態様としては、前記第1の樹脂製部材又は前記第2の樹脂製部材の何れか一方がインナーシェルであり、他方がアウターシェルである態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、剛性の高い係合ピンを弾性変形可能な係合孔に挿入して係合させることによって樹脂製部材同士を簡単に組み付けることができるとともに、一旦組み付けた樹脂製部材同士を分解させる場合に、係合ピンと係合孔との係合状態を解除するにあたって過度の引き抜き力が要求されず、係合ピンが不意に破損することを防止し、係合ピンと係合孔との係合解除を好適に行うことが可能な樹脂製部材同士の組付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態では、本発明に係る樹脂製部材同士の組付構造を、図1に示す椅子1における座裏カバー9(本発明の「第1の樹脂製部材」に相当)と座シェル31(本発明の「第2の樹脂製部材」に相当)との組付構造に適用している。なお、座裏カバー9及び座シェル31を相互に組付可能なシェル構造体として捉えた場合、座裏カバー9がアウターシェルとなり、座シェル31がインナーシェルとなる。
【0020】
椅子1は、図1、図2(図2は図1に示す椅子1の左右幅方向中央断面を一部省略して示す図である)に示すように、脚体2と、座3と、座3の下方に配した支持基部4と、支持基部4の後部側に下端部を枢支させた背支桿5と、背支桿5に取り付けられる背凭れ6とを備えたものである。本実施形態の椅子1は、背支桿5の後傾動作に伴って背凭れ6が後傾する背チルト機能を有する一方で、座3が背凭れ6の後傾動作に連動するシンクロチルト機能は有さないものである。
【0021】
脚体2は、キャスタを有する複数の脚羽根21と、単一の脚支柱22とを備え、筒状の脚支柱22の内部に、座3を昇降させるための座昇降機構たるガスシリンダ(図示省略)を配している。すなわち、脚支柱22は、ガスシリンダを被覆するガスシリンダカバー部材として機能している。
【0022】
脚支柱22は、図2及び図2の要部拡大図である図3に示すように、テレスコープ状をなす上方側筒状体221及び下方側筒状体222と、上方側筒状体221の上端部に嵌合可能なキャップ部材223とを備えたものである。ここで、上方側筒状体221とキャップ部材223との嵌合構造について説明する。
【0023】
上方側筒状体221は、下方から上方に向かって径を漸次大きくして外周面全体をテーパ状に設定したものであり、上端部に、他の領域よりも薄肉な段部221aを形成している。
【0024】
一方、キャップ部材223は、概略円盤状をなし、中央部にガスシリンダの上端部の挿入を許容し且つ挿入されたガスシリンダを保持し得る保持孔223aを有し、上方側筒状体221の段部221aに嵌合可能な嵌合部223bを外縁部に有するものである。嵌合部223bは、径方向に対向する内側対向壁223ba及び外側対向壁223bbと、これら対向壁223ba、222bbの上端同士を接続する接続部223bcとを有し下方にのみ開口する凹溝状のものである。内側対向壁223baと外側対向壁223bbとの内法寸法を段部221aの厚み寸法と略同一又は若干大きく設定している。
【0025】
このような上方側筒状体221とキャップ部材223との取り付けは、図3に示すように、キャップ部材223の嵌合部223bを上方側筒状体221の段部221aに嵌合させることによって行う。嵌合状態(図3(b)参照)において、嵌合部223bの内側対向壁223baと外側対向壁223bbとによって段部221aを内側と外側とから挟み込む態様となる。さらに、本実施形態では、嵌合部223bの径寸法、具体的には外側対向壁223bbの内径寸法を、段部221aの外径寸法よりも若干小さく設定しているため、キャップ部材223の嵌合部223bをテーパ状になっている段部221aに圧入することにより、段部221aが嵌合部223bの内側対向壁223baと外側対向壁223bbとの間で押圧された状態で挟み込まれる態様となり、段部221aと嵌合部223bとのより強固な嵌合状態を長期に亘って維持できるように構成している。なお、段部221aの外向面又は内向面の少なくとも何れか一方に外方又は内方に突出する凸部を周方向に連続して設け、外側対向壁223bbの内向面又は内側対向壁223baの外向面の少なくとも何れか一方に前記凸部に係合可能な凹部を周方向に連続して設け、嵌合部223bを段部221aに嵌合させ際に、対面する凸部と凹部とが係合するように構成してもよい。もちろん、凸部と凹部との関係が逆である態様、つまり、段部221aに凹部を設け、嵌合部223bに凸部を設けた態様であっても構わない。
【0026】
なお、ガスシリンダは、周知のものであるため詳細な説明は省略する。ガスシリンダを脚支柱22の内部に配し、その上端部近傍をキャップ部材223の保持孔223aに挿入して保持させた状態で、後述する操作レバー7の基端部によって押圧され突没動作可能な頭部がキャップ部材223よりも上方に位置付けられる。
【0027】
座3は、図1及び図2に示すように、シェル構造体である座シェル31と、座シェル31の上方に配される座クッション材32と、座クッション材32を被覆し得る座面カバー33とを備えたものである。座シェル31の詳細については後述する。
【0028】
支持基部4は、図2、図4、及び図5(図5は、支持基部4に背支桿5及び操作レバー7を枢支させた状態の背面図である)に示すように、座シェル31の下向面のうち左右巾方向中央領域に位置付けられる支持基部本体41と、支持基部本体41の左右両側方に取り付けた肘受け部42と、支持基部本体41の下向面に取り付けた脚支柱受け部43とを備えたものである。
【0029】
支持基部本体41は、前後方向(長手方向)中間部よりも後方側に寄った位置を境に、前方に向かって緩い角度で漸次上方に傾斜するベース部411と、後方に向かってベース部411よりも急な角度で漸次上方に傾斜し、且つ背支桿5の後傾に伴う反力を受ける反力受け部412とを一体に備えたスチール製の一体品である(図2参照)。なお、背支桿5の後傾に伴って背支桿5を起立姿勢に傾動させる傾動力(反力)を発生させる反力機構Xは、図示しないスプリングバネを利用したものであり、座3の後部側下方に配される操作ノブX1(図1参照)を操作することによって、背支桿5の後傾に伴って背支桿5を起立姿勢に傾動させる傾動力(反力)の程度を調節できる周知のものを適用しており、詳細な説明は省略する。支持基部本体41は、左右両側縁又は左右両側縁近傍において前後方向に沿って延伸するリブ41aを備えている。本実施形態では、正面視略山折り状のリブ41aを適用している。ベース部411から反力受け部412に亘って連続して設けたリブ41aにより、支持基部本体41は剛性の高いものとなる。ベース部411は、リブ41aよりも外側に、座シェル31に取り付ける際に利用する座シェル取付用孔を形成した座シェル取付部411aを有し、この座シェル取付部411aの一部に肘受け部42を取り付けるための肘受け取付部411bを形成している(図4参照)。座シェル取付部411aは、ベース部411と同一角度で前方に向かって漸次上方に傾斜するものである一方で、肘受け取付部411bは、前後方向に水平に延びるものである。このように、肘受け取付部411bを水平なものに設定することにより、左右何れの肘受け取付部411bにも同一の肘受け部42を取り付けることができるようにしている。このような構成により、肘受け取付部411bがベース部411と同一角度で前方に向かって漸次上方に傾斜するものであれば生じる不具合、つまり、肘受け取付部411bの傾斜角度に対応させなければならないために左右の肘受け取付部411bの共通化を図れないという不具合を解消している。
【0030】
肘受け部42は、肘受け取付部411bの下面及び脚支柱受け部43の側面に例えば溶接等により固着したスチール製のものである。肘受け部42は、外側方に向かって漸次迫り上がった姿勢で保持されている。
【0031】
脚支柱受け部43は、前後方向及び上方に開口した概略上向きコ字状をなし、ベース部411の後部側及び反力受け部412の前部側に亘る領域に例えば溶接等により固着したスチール製のものである(図2、図5参照)。脚支柱受け部43のうち、ベース部411の後部側に位置付けられる部位には、ガスシリンダの上端部及び突没動作可能な頭部が挿通可能な筒状部431を設けている。この筒状部431は、ベース部411を貫通するものであり、ガスシリンダの頭部が筒状部431の開口に臨む位置に位置付けられるようにしている。そして、ガスシリンダを操作するための操作レバー78の基端部も、筒状部431の開口に臨む位置に位置付けられ、この操作レバー7によりガスシリンダの頭部を押圧できるようにしている。
【0032】
操作レバー7は、基端部近傍を支持基部4に前後方向の水平軸回りに回動可能に枢支させたレバー本体71と、レバー本体71の先端部に取り付けられた合成樹脂製の取手72とを備えたものである。なお、操作レバー7の動作の説明にあたって用いる「前後方向の水平軸回りに回動」とは、「前後方向に延びる水平軸を回転中心として高さ方向に回動」という意味である。
【0033】
レバー本体71は、金属製の棒状部材であり、支持基部4の下方に配される第1直線状部711と、支持基部4の上方に配されガスシリンダの頭部を上方から押圧し得る第2直線状部712と、第1直線状部711と第2直線状部712との間に設けられ、且つ支持基部4に形成したレバー挿通孔(具体的には、肘受け部42の内方端部に形成した第1レバー挿通孔42a、及び支持基部本体41の一方のリブ41aに形成した第2レバー挿通孔41aa)に通される屈曲部713とを連続して有するものである。
【0034】
取手72は、先端部を扁平状にした合成樹脂製のものであり、ビス等によってレバー本体71の先端部に取り付けられている。この取手72を上下方向に移動させる操作によって、操作レバー7は、レバー本体71の基端部(第2直線状部712の基端部)がガスシリンダの頭部を押圧する押圧位置と、ガスシリンダの頭部を押圧しない非押圧位置と間で前後方向の水平軸回りに回動する。
【0035】
背支桿5は、図2、図4及び図5等に示すように、左右一対の背凭れフレーム体51と、背凭れフレーム体51同士の間に設けられ反力機構Xのスプリングバネを受けるバネ受け部52とを一体的に備えたものである。
【0036】
左右一対の背凭れフレーム体51は、その前部が前記ベース部411の下方に位置するように配され、座3の後端部より後方で上方に湾曲し、上方に延伸する部位に、背凭れ6を取り付けるための背凭れ取付部53を一体的に設けたものである。なお、背凭れ6は、背シェルと、背シェルの前方に配される背クッション材(共に図示省略)と、背クッション材を被覆し得る背凭れ面カバー61と、背シェルの背面に取り付け可能な背カバー62とを備えたものである(図1参照)。
【0037】
各背凭れフレーム体51の下端部(基端部)は、脚支柱受け部43のうち反力受け部412の前部側に位置付けられる部位を両側方から挟む位置に配され、左右巾方向の水平軸である背支桿回転軸5xによって支持基部4に枢支されている(図2、図5参照)。背支桿回転軸5xは、左右一対の背凭れフレーム体51に連通する単一の軸であってもよいが、本実施形態では、各背凭れフレーム体51毎にそれぞれ個別に設けた態様としている。勿論、これら一対の軸同士は座の左右巾方向に同一直線上に位置付けられている。また、支持基部4に枢支させた各背凭れフレーム体51のうち、支持基部本体41の下方に配される下端部側領域は、図15に示すように、支持基部本体41に設けた左右一対のリブ41aの直下又は略直下に位置付けられる。
【0038】
バネ受け部52は、図2及び図6(図6は図2の要部拡大であって背支桿5が後傾した状態を一部省略して示す図である)に示すように、背凭れフレーム体51のうち、前記枢支点(背支桿回転軸5x)よりも後方であって且つ上方に曲がる部位よりも前方の部位に配され、概略平板状のスチール材を、側面視略下向きコ字状に折り曲げ加工したものである。バネ受け部52の前端部には、背凭れフレーム体51の下向面よりも若干下方に位置し、且つ背支桿5が支持基部4に対して後傾した際に支持基部4(具体的には脚支柱受け部43の後端部)と接触し得る当たり部521を設けている。当たり部521は、バネ受け部52の前向面522の下端から前方に向かって延びる舌片状をなし、上方に突出する上向き凸部521aを設けている(図6参照、なお、図6では上向き凸部521aの一部にパターンを付している)。本実施形態では、一対の上向き凸部521aを左右に離間させて設けている。
【0039】
背支桿5の下端部近傍部位のうち外部に露出する部位は背支桿カバー8によって被覆されている。
【0040】
背支桿カバー8は、図2、図4〜図7に示すように、背支桿5を挿通させるための背支桿用挿通孔81aを有する概略筒状のカバー本体81と、背支桿5の前記当たり部521を被覆し且つ背支桿5の後傾時に当たり部521よりも優先して支持基部4に接触する緩衝用カバー82とを一体に備えたものである。この背支桿カバー8は、例えば合成樹脂素材からなる一体成型品である。なお、図4では、本来装着されるべき背支桿カバー8を取り外した背支桿5を支持基部4に枢支させた状態であり、背支桿カバー自体を単体の斜視図として同図中に示している。
【0041】
カバー本体81の背支桿用挿通孔81aは、左右巾方向に巾広な略矩形状をなし、背支桿5の前記一対の背凭れフレーム体51を若干あそびのある状態で収容可能な開口寸法に設定されている。カバー本体81の底面には、背支桿5に取り付けた状態で背支桿5のバネ受け部52に連通する筒状の鍔部81bを設けている。
【0042】
緩衝用カバー82は、カバー本体81の上面の前端部に連続するものであり、カバー本体81に対して、背支桿用挿通孔81aの開口方向から見て背支桿用挿通孔81aから外れた位置である非装着位置(82A)(図7(c)参照)と、背支桿用挿通孔81aの開口方向から見て背支桿用挿通孔81a内に位置し当たり部521に装着可能な装着位置(82B)(図7(b)参照)との間で回動可能なものである。なお、本実施形態では、カバー本体81と緩衝用カバー82との接続部位を、薄肉に設定する又は一部切除することによりヒンジ部として機能させている。緩衝用カバー82の左右巾寸法を背凭れフレーム体51同士の内法よりも小さく設定している(図5参照)。
【0043】
このような背支桿カバー8を背支桿5に取り付けるには、先ず、緩衝用カバー82を非装着位置(82A)に位置付けた状態で、背支桿用挿通孔81aに、背支桿5の下端部近傍を挿入し、非装着位置(82A)から装着位置(82B)に回動させた緩衝用カバー82が背支桿5のバネ受け部52の当たり部521又は前向面522に当たる位置まで緩衝用カバー82を移動させ、緩衝用カバー82の先端部を当たり部521に前方から押圧して装着する。緩衝用カバー82の先端部は、当たり部521を上下方向から挟み込む形状をなし、さらに、この緩衝用カバー82の先端部に、当たり部521に設けた前記上向き凸部521aに嵌め込むことが可能な嵌合孔82aを設けている(図4、図7参照)。嵌合孔82aは、概略半球状をなす上向き凸部521aが圧入可能なものである。そして、緩衝用カバー82の先端部を当たり部521に装着することにより、背支桿5と背支桿カバー8との相対取付位置が位置決めされ、背支桿カバー8内で背支桿5がぐらつくことを防止し、嵌合孔82aに上向き凸部521aを圧入して嵌め込むことにより、当たり部521に対する緩衝用カバー82の嵌合状態がより良好なものとなる。なお、本実施形態では、緩衝用カバー82が自重で装着位置(82B)、又は装着位置(82B)と非装着位置(82A)との間の位置に位置付けられるようにしている。背支桿カバー8を背支桿5に装着した状態において、背支桿カバー8は支持基部4に対する背支桿5の枢支点5Xよりも後方に位置付けられる。
【0044】
背支桿カバー8を下端部近傍に装着した状態の背支桿5を支持基部4に枢着し、この支持基部4を座シェル31の裏面側にビス等の固定手段を利用して固定する。本実施形態では、さらに支持基部4に操作レバー7を枢支させた状態で、座裏カバー9を座シェル31の下面側から取り付けられるようにしている。
【0045】
座シェル31は、図2、図8及び図9(図8(a)は座シェル31の底面図であり、同図(b)は(a)のP領域拡大図であり、図9は図8(a)のa−a線断面である)等に示すように、概略薄板状をなす合成樹脂製のものであり、中央領域を外縁部よりも窪ませた3次元形状を有する。本実施形態の座シェル31は一体成型品である。座シェル31の上面に座クッション材32を載置可能に構成し、下面に、支持基部4を取付可能に構成している。また、座シェル31の軽量化及び剛性を高めるという観点から、適宜箇所(図示例では中央部領域)に厚み方向に貫通する一又は複数の貫通孔を設けるとともに、下面部に前後方向、左右幅方向に延びる複数のリブを設けている。そして、この座シェル31の各コーナー部近傍部位にそれぞれ下方に開口した概略円筒状の係合孔311を設けている。各係合孔311は、座シェル31の厚み方向、換言すれば座3の高さ方向に貫通するものであり、周縁311aに高さ方向に沿って延びる本発明の弾性変形惹起部たるスリット311bを形成している(図8(b)参照)。本実施形態では、円筒状をなす周縁311aを二等分する箇所に対向する一対のスリット311bを形成している。特に、本実施形態の係合孔311は、周縁311aのうち座3の左右幅方向に対向する箇所にスリット311bを形成している。このようなスリット311bを有する係合孔311は、弾性変形していない通常開口状態(図9(a)参照)と、スリット311bの拡開動作を通じて弾性変形し、開口寸法が通常開口状態における開口寸法よりも大きくなる拡開状態(図9(b)参照)との間で弾性変形する。また、各係合孔311は、周縁311aのうち開口縁に、開口側(下方)から奥方(上方)に向かって漸次内法を小さくするテーパ状の係合突起311cを周方向に沿って設けている。座シェル31には、操作レバー7の基端部との干渉を回避するための操作レバー干渉回避用孔312を形成している。
【0046】
座裏カバー9は、図2、図10、図11(図10(a)は座裏カバー9の平面図であり、同図(b)は(a)のQ領域拡大図である)に示すように、概略薄板状をなす合成樹脂製のものであり、座シェル31、支持基部4、及び背支桿5の下端部側領域を下方から被覆し得るものである。本実施形態の座裏カバー9は一体成型品である。座裏カバー9の中央部に脚体2の脚支柱22の上端部が差し込み可能な開口部91を設けている。開口部91は、脚体2内に配されたガスシリンダを取り付けるためのガスシリンダ用孔911と、ガスシリンダ用孔911に連続し且つ操作レバー7との干渉を回避するための操作レバー用孔912とからなる。ガスシリンダ用孔911は、略円形状をなし、操作レバー用孔912は、ガスシリンダ用孔911の一方の側方からに左右幅方向に延びる長孔である。このような開口部91を設けた領域及びその周辺領域を他の領域よりも下方に窪ませ、座シェル31に取り付けた支持基部4のうち主として脚支柱受け部43を収容し得る支持基部収容部92として機能するように設定している。座裏カバー9の後端側の左右幅方向中央領域であって支持基部収容部92に連続する部位に、背支桿カバー8との干渉を避けるための切欠部93を設けている。また、座裏カバー9の両側縁近傍領域には、支持基部4の肘受け部42の底面に当接又は近接し、肘Hを取り付けるためのビスが挿通可能なビス挿通孔を形成した肘受け部裏当て部94を設けている。そして、この座裏カバー9の各コーナー部近傍部位にそれぞれ係合ピン95を一体に設けている。
【0047】
各係合ピン95は、図10(b)に示すように、円筒状をなす軸部951を主体としてなり、この軸部951の先端部を、側方に突出する係合爪952を設けた係合爪形成領域95Aと、係合爪952を設けていない係合爪非形成領域95Bとに軸回りに二分割したものである。係合爪952は、先端に向かって漸次径を小さくしたテーパ状をなす。軸部951の外径寸法を、前記通常開口状態にある係合孔311の開口縁の開口内法よりも僅かに小さく設定するとともに、係合爪形成領域95Aにおける最大外径寸法を、通常開口状態にある係合孔311の周縁311aのうち係合突起311cよりも上方の部位における開口内法と略同一に設定している。本実施形態では、軸部951の先端部を、係合爪形成領域95Aと、係合爪非形成領域95Bとに略均等に分割し、係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとの境界部分である段部95C、換言すれば係合爪952の両端部が、平面視略同一直線上に位置付けられるようにしている。特に本実施形態では、係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとの境界部分である段部95Cを、座3の前後方向に対向する箇所に設定している。より具体的には、座裏カバー9の四隅近傍にそれぞれ設けた各係合ピン95は、左右幅方向に対向する係合ピン95との関係において、係合爪形成領域95A同士が内向きに対向するように設定している。つまり、各係合ピン95は、軸部951の先端部のうち、座裏カバー9の左右幅方向中心寄りである内向き側の半周領域を係合爪形成領域95Aに設定し、外向き側(座裏カバー9の外縁側)の半周領域を係合爪非形成領域95Bに設定している。各係合ピン95の基端部は、座裏カバー9の上向面から上方に向かって突出させた剛性の高い取付基部96に連続して設けられている。取付基部96は、中空状のボックス部961と、ボックス部961の内部に設けた一又は複数のリブ962とからなり、各取付基部96の上面を全て平行な平滑面にすることによって、各係合ピン95の突出方向が相互に平行となり、且つ各係合ピン95の基端位置が同一となる。座裏カバー9のうち、取付基部96を設けた箇所近傍を反らすように湾曲変形させた場合、取付基部96が座裏カバー9の湾曲具合に応じて傾き、これに伴って係合ピン95が取付基部96の傾きと同一角度に傾く。
【0048】
次にこのような座シェル31と座裏カバー9とを相互に組み付ける手順及び作用について説明する。
【0049】
座シェル31と座裏カバー9とを組み付ける前に、予め背支桿カバー8を取り付けた背支桿5の下端部を支持基部4の後端部近傍部位に枢支させるとともに、支持基部4に操作レバー7の基端部を枢支させておき、このような支持基部4を座シェル31の下面に固定しておく。
【0050】
そして、図12及び図13に示すように、座シェル31の下面を上方に向けた状態(倒置状態)で、座裏カバー9を、前記開口部91に操作レバー7を通して座シェル31の下面側を被覆し得る位置に位置付け、座シェル31の各係合孔311にそれぞれ係合ピン95を押圧して挿入する。座裏カバー9の開口部91に操作レバー7を通す際に、操作レバー7を、先端部(取手72)が座シェル31から離間する方向に回動させておくと、操作レバー7の先端部側領域と座シェル31及び支持基部4との離間寸法を大きく稼ぐことができ、開口部91に操作レバー7を通す作業をより簡単に行うことができる。なお、図12に示す操作レバー7は、先端部(取手72)が座シェル31から離間する方向に回動させた状態ではなく、図5に示す姿勢と同じ姿勢である。
【0051】
係合孔311に対する係合ピン95の挿入動作に伴って、係合爪形成領域95Aが周縁311aの開口側端部に設けた内向きテーパ状の前記係合突起311cを押圧し、この押圧力によりスリット311bが押し広げられ係合孔311が開口寸法を拡開する方向に弾性変形した拡開状態となり、さらに係合ピン95を挿入することによって、係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cを乗り越え、この時点で係合孔311が弾性復帰して通常開口状態となり、図14、図15及び図16(a)に示すように、係合ピン95の係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cに係合する。なお、図14は、座裏カバー9を座シェル31に組み付けた状態を図10のb―b線断面に相当する断面で示すものであり、図15は、座裏カバー9を座シェル31に組み付けた状態を図10のc−c線断面に相当する断面で示すものであり、図16(a)は図15の一部拡大図である。本実施形態では、各係合孔311に設けた一対のスリット311bが向き合う方向を座3の左右巾方向と略平行に設定しているのに対して、係合爪952の端部、つまり係合爪形成領域95Aと前記係合爪非形成領域95Bとの境界部分である一対の段部95Cが向き合う方向を座3の前後方向と略平行に設定しているため、係合ピン95を係合孔311に係合させた係合状態において、係合爪952の段部95Cと、係合孔311のスリット311bとが、同一直線上に並ばず、略直交する関係となる。その結果、係合状態において係合ピン95を反挿入方向へ真っ直ぐに引っ張る力が作用した場合であっても係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cに引っ掛かり、係合ピン95が係合孔311から抜け外れることを防止している。
【0052】
このように、係合ピン95と係合孔311とが、座裏カバー9と座シェル31とを相互に取り付ける際に利用される係合機構Kとして機能し、上記手順により座裏カバー9を座シェル31に取り付けることができる。すなわち、係合機構Kが、係合ピン95と係合孔311とを相互に係合させた係合状態となることによって座裏カバー9と座シェル31とを相互に組み付けることができる。
【0053】
座裏カバー9と座シェル31とを係合機構Kによって相互に組み付けた状態において、座裏カバー9の開口部91のうちガスシリンダ用孔911と、支持基部4の脚支柱受け部43のうち筒状部431とが高さ方向に連通し、ガスシリンダを内部に配した脚支柱22を、これらガスシリンダ用孔911及び筒状部431に続けて差し込んで取り付けると、ガスシリンダの頭部が、支持基部4の筒状部431に臨む位置に位置付けられる。また、座裏カバー9の開口部91のうち操作レバー用孔912に操作レバー7の基端部近傍領域(具体的にはレバー本体71の屈曲部713)が位置付けられ、操作レバー用孔912内におけるレバー本体71の前記押圧位置と前記非押圧位置との間での回動を許容している。
【0054】
一方、係合孔311に係合ピン95を係合させて座シェル31に座裏カバー9を取り付けた本実施形態の樹脂製部材同士の取付構造は、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾けることにより係合ピン95自体を、係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aに当たって当該周縁311aを押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、係合ピン95と係合孔311との係合状態を解除するように構成されている。
【0055】
傾動手段は、座裏カバー9自体を湾曲変形させることによって、剛性の高い係合ピン95自体を、係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aに当たって係合孔311をスリット311bによる弾性変形を利用して押し広げ且つ当該係合爪非形成領域95Bが係合孔311から外れ出る角度まで傾けるものである。本実施形態では、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を座シェル31から離間させる方向に反らす力を付与することにより、取付基部96がその反り程度(座裏カバー9の湾曲程度)に応じて傾き、取付基部96の傾動に同期して係合ピン95が係合孔311内で傾くようにしている。具体的には、図16(b)に示すように、係合ピン95自体を弾性変形不能な又は弾性変形が抑制される剛性の高い構造とし、このような係合ピン95を撓み変形可能な座裏カバー9に一体に設けることにより、この座裏カバー9のうち、係合ピン95の基端部を設けた部位、つまり取付基部96を設けた部位を、座シェル31から離間する方向に反らす操作力を加えることによって、係合ピン95が取付基部96の傾動に応じて係合孔311内で傾き、係合ピン95の係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aを押圧し、この押圧力を受けて係合孔311が、スリット311bの作用により開口寸法を拡開する方向に弾性変形して拡開状態となる。なお、本実施形態では、係合ピン95の係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aを押圧することに加えて、係合ピン95の軸部951のうち、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bよりも基端側の部位が周縁311aの係合突起311cを押圧する構成としている。これによって、係合孔311を通常開口状態から拡開状態へよりスムーズに移行させることができる。また、本実施形態では、係合ピン95が、軸部951の先端部を係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとに軸回りに二分割しているため、係合ピン95を係合孔311に係合させた状態において、係合ピン95のうち係合爪非形成領域95Bと係合孔311の周縁311aとの間に、係合ピン95の傾動を許容する空間が形成されている(図16(a)参照)。本実施形態では、係合ピン95を係合孔311に係合させた状態において、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bが係合孔311内に収まっているため、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bが係合孔311内に収まらずに座シェル31の上面よりも上方に突出する態様であれば生じる不具合、すなわち、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bが例えば座クッション材32に埋もれてしまい、係合ピン95自体を傾けることができない、又は係合ピン95の傾動をスムーズに行うことが出来ないという不具合を回避できる。
【0056】
引き続き、図16(c)に示すように、さらに座裏カバー9を反らせる操作力、又は係合ピン95を係合孔311に係合させる際の挿入方向とは逆の方向(反挿入方向)に引っ張る操作力を付与すると、拡開状態にある係合孔311から係合ピン95の係合爪非形成領域95Bに続いて係合ピン95の係合爪形成領域95Aの少なくとも一部が抜け外れ、さらに同じ操作力を付与し続けることによって、前記一部抜け外れた箇所をきっかけにまだ係合孔311に係合している残りの係合爪形成領域95Aが漸次又は一気に係合孔311から抜け外れ、係合ピン95と係合孔311との係合状態が解除される。本実施形態では、座裏カバー9の各コーナー部近傍部位に設けた係合ピン95を座シェル31の係合孔311に係合させた態様であるため、計4箇所の係合箇所において、係合ピン95と係合孔311とからなる各係合機構Kを上述した操作によって順次係合解除状態とすることにより、座裏カバー9を座シェル31から分離することができる。
【0057】
特に、本実施形態では、係合ピン95を座裏カバー9の各コーナー部近傍部位に一体に設けているため、係合ピン95を座裏カバー9の辺部分に相当する部位や、中央部近傍部位に設けた場合と比較して、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾ける際に要する座裏カバー9を反らせる操作を比較的軽い力で行うことができる。
【0058】
このように、係合ピン95及び係合孔311を備えてなる係合機構Kは、係合ピン95と係合孔311とを相互に係合させた状態において、作業者が座裏カバー9のコーナー部近傍部位を座シェル31から離間させる方向に反らせることにより、係合ピン95を係合孔311内で傾動させて係合爪非形成領域95Bを係合孔311から抜け出させた係合解除初期状態となり、この係合解除初期状態において、さらに係合ピン95を係合孔311から引き離す方向に座シェル31を反らせる又は引っ張ることによって係合ピン95全体を係合孔311から抜き外した係合解除状態となる。
【0059】
このように、本実施形態に係る樹脂製部材同士の取付構造は、係合ピン95を係合孔311に挿入して係合させた状態において、係合ピン95を反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても係合ピン95の軸部951のうち係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cに引っ掛かり、係合ピン95が係合孔311から抜け外れることを防止できるとともに、係合ピン95の軸部951の先端部を係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとに軸回りに二分割しているため、係合ピン95と係合孔311とを相互に係合させた状態において、係合ピン95のうち係合爪非形成領域95Bと係合孔311の周縁311aとの間に係合ピン95の傾動を許容する空間が形成され、傾動手段を利用して係合ピン95を係合孔311内で傾けることができ、剛性の高い係合ピン95を傾動させて係合孔311の周縁311aを押圧することによって係合孔311がスリット311bの作用により開口寸法を拡開する方向に弾性変形し、係合爪非形成領域95Bが係合孔311から抜け外れ、さらに係合ピン95を傾動させる又は反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合に、係合爪非形成領域95Bに続いて係合爪形成領域95Aも係合孔311から抜け外れ、係合ピン95全体を係合孔311から抜き外すことができる。
【0060】
したがって、樹脂製部材である座裏カバー9及び座シェル31を一旦組み付けた後において、部品交換やメンテナンス等、その組付状態を解除しなければならない場合に、係合爪952と係合孔311との係合力を超える過度の引っ張り力、引き抜き力が要求されず、座裏カバー9を座シェル31から取り外す作業をスムーズに行うことができる。しかも、係合ピン95に急な引っ張り力が作用することを回避し、係合爪952、ひいては係合ピン95自体の破損を防止することができる。
【0061】
特に傾動手段が、座裏カバー9自体を傾けることによって、係合ピン95自体を、係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aに当たって当該周縁311aを押圧し且つ係合孔311から抜け外れる角度まで傾けるものであるため、座裏カバー9に係合ピン95を傾動させるための別途専用の傾動機構を設ける必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0062】
さらに、係合ピン95を係合孔311に係合させた状態で、係合爪952の端部、つまり係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとの境界部分にある段部95Cと、係合孔311のスリット311bとが、同一直線上に並ばないようにしているため、係合状態において係合ピン95を反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても係合ピン95が係合孔311のスリット311bから不意に抜け外れることを防止し、良好な係合状態を実現できる。
【0063】
また、係合ピン95を座裏カバー9のコーナー部又はコーナー部近傍部位に一体に設けているため、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾ける際に要する座裏カバー9を反らせる操作を比較的軽い力で行うことができ、座裏カバー9を座シェル31から取り外す作業をスムーズ且つ確実に行うことができる。
【0064】
加えて、座3の左右巾方向に対向する係合ピン95を、係合爪形成領域95A同士が内向きに対向するように設けているため、複数の係合ピン95を座裏カバー9に一体成型する場合に用いる金型を作る上で、抜き方向を考慮した場合に設計上要求される条件を満たし、複数の係合ピン95を有する座裏カバー9を一体成型品とすることが可能になるとともに、各係合ピン95の係合爪非形成領域95Bが座裏カバー9の外縁側に設けられることにより、座裏カバー9を座シェル31から引き離す方向に反らす操作力を付与した場合に、相対的に外縁側に位置する係合爪非形成領域95Bを係合孔311の周縁311aに当てて押圧させる動作を効率良く行うことができる。
【0065】
さらに、座裏カバー9に複数の係合ピン95を一体に設け、座シェル31に係合ピン95と同数の係合孔311を一体に設けているため、複数の係合箇所を確保し、座裏カバー9と座シェル31との安定した取付状態を維持できる。
【0066】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0067】
例えば、係合ピンの軸部が中実の円柱状のものであってもよい。また、係合ピンは、軸部の先端部を係合爪形成領域と係合爪非形成領域とに軸回りに二分割したものであればよく、軸回りに占める係合爪形成領域と係合爪非形成領域との割合が均等でない態様であっても構わない。例えば、係合爪形成領域を係合爪非形成領域よりも大きく設定した場合には、より良好な係合状態を確保することができ、その逆、つまり係合爪非形成領域を係合爪形成領域よりも大きく設定した場合には、係合ピンを係合孔から抜き外す作業をよりスムーズに行うことができる。
【0068】
また、前記実施形態では、第1の樹脂製部材として座裏カバーを適用し、第2の樹脂製部材として座シェルを適用した態様を例示したが、第1の樹脂製部材及び第2の樹脂製部材は相互に組付可能な薄板状のシェル構造体(インナーシェル及びアウターシェル)であればよく、第2の樹脂製部材として背シェルを適用し、第1の樹脂製部材として背シェルの背面側に組付可能な背カバーを適用しても構わない。なお、上方又は前方にクッション材が配されない座シェルや背シェルであれば、これら座シェルや背シェルに係合ピンを一体に設け、座裏カバーや背カバーに係合孔を一体に設けてもよい。つまり、インナーシェルに係合ピンを設け、アウターシェルに係合孔を設けた態様であっても構わない。
【0069】
また、係合ピンが取付基部を介さずに第1の樹脂製部材に一体に設けられたものであってもよい。
【0070】
係合ピン及び係合孔の数は適宜増減しても勿論構わない。
【0071】
また、係合ピンや係合孔を、各樹脂製部材の外縁部のうち辺部分に相当する部位に一体に設けた態様であってもよい。
【0072】
また、係合孔の弾性惹起部として、スリットに代えて切欠を適用してもよい。
【0073】
係合孔が、周縁に弾性惹起部を設けた単純な円筒状のもの、つまり前記実施形態の係合突起がないものであってもよい。この場合、係合孔に挿入した係合ピンの係合爪が係合孔の反挿入側の開口縁に引っ掛かることにより係合ピン及び係合孔が相互に係合する。さらには、係合孔が円筒状のものではなく、第2の樹脂製部材の厚み方向に貫通させた単純な貫通孔であっても構わない。この場合、貫通孔の周縁にスリット又は切欠を設け、第1の樹脂製部材に一体に設けた係合ピンを貫通孔に挿入して係合爪を係合させるとともに、第1の樹脂製部材のうち係合ピンの基端部を設けた部位を傾けることにより係合ピン自体を、軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が貫通孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し、且つ係合爪非形成領域が係合孔から抜け外れる角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、係合ピンと係合孔との係合状態を解除するように構成すればよい。
【0074】
係合ピンの軸部が、少なくとも基端部側からアクセス可能な内部空間を有する有底筒状又は筒状のものであれば、傾動手段が、係合ピンの基端部側から内部空間に例えばドライバ等の工具を挿入して、第1の樹脂製部材自体を傾けることによって、係合ピンの軸部を傾動させ、係合ピン自体を、係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し且つ係合爪非形成領域が係合孔から抜け外れる角度まで傾けるものであってもよい。
【0075】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂製部材同士の組付構造を適用した椅子の全体概略図。
【図2】同実施形態における椅子の左右巾方向中央部断面を一部省略して示す図。
【図3】同実施形態における脚支柱の組付説明図。
【図4】同実施形態において背支桿カバーを装着していない背支桿を支持基部に枢支させた状態の斜視図。
【図5】同実施形態において背支桿カバーを装着した背支桿、及び操作レバーをそれぞれ枢支させた支持基部の底面図。
【図6】同実施形態において背支桿が後傾した状態を図2の一部に対応させて示す図。
【図7】同実施形態における背支桿カバーを示す図。
【図8】同実施形態における座シェルの底面図。
【図9】同実施形態における係合孔を示す図。
【図10】同実施形態における座裏カバーの平面図。
【図11】同実施形態における座裏カバーの全体図。
【図12】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付ける一過程を示す図。
【図13】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付けた状態の底面図。
【図14】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付けた状態を図10のb―b線断面に相当する断面で示す図。
【図15】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付けた状態を図10のc−c線断面に相当する断面で示す図。
【図16】作用説明図。
【符号の説明】
【0077】
1…椅子
31…第2の樹脂製部材(座シェル)
311…係合孔
311a…周縁
311b…弾性変形惹起部(スリット)
9…第1の樹脂製部材(座裏カバー)
95…係合ピン
951…軸部
952…係合爪
95A…係合爪形成領域
95B…係合爪非形成領域
95C…係合爪の端部(係合爪形成領域と係合爪非形成領域との境界部分にある段部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、係合ピンと係合孔とを係合させて樹脂製部材同士を組付可能に構成した樹脂製部材同士の組付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製部材同士を組み付ける構造としては、一方の樹脂製部材に、先端に係合爪を有する弾性変形可能な係合ピンを設け、この係合ピンを、他方の樹脂製部材に設けた係合孔に係合ピン自体の弾性変形を利用して弾性係合させることによって、樹脂製部材同士を組み付ける態様が挙げられる。
【0003】
具体的な実施態様としては、二枚のシェル構造体、例えば椅子の背シェルと背カバーとを相互に組み付けて構成する場合において、背カバーの適宜箇所に、筒状体をスリットによって軸回りに3分割し且つ先端部に係合爪を一体に有する係合ピンを複数設け、これら各係合ピンを、背シェルに設けた弾性変形不能な又は弾性変形し難い筒状の係合孔にそれぞれ押圧して挿入し、その過程で係合ピンが軸径を小さくする方向へ一時的に弾性退避し、係合孔の反挿入側開口縁を通過し終えた時点又は係合孔内に設けた係合突起を通過し終えた時点で係合ピンが弾性復帰することにより、係合爪を係合孔の反挿入側開口縁又は係合突起に係合させて、背カバーと背シェルとを一体的に組み付けるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3874375号公報(図4等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のものは、樹脂製部材同士を一旦組み付けた後において、部品交換やメンテナンス等、その組付状態を解除しなければならない場合には、樹脂製部材同士を相互に引き離す力、具体的には係合爪と係合孔との係合力を超える引っ張り力によって、各係合ピンの係合爪をなかば強引に弾性変形させて、係合ピンを係合孔から抜き取るようにしていた。
【0005】
しかしながら、各係合ピンの係合爪を強引に弾性変形させる態様であるため、引き離し作業時に過度の引き抜き力が要求され、引き離し作業をスムーズに行うことができないという不具合に加え、係合爪をスムーズに弾性変形させることができない場合や、急な引っ張り力が係合爪に作用した場合には、係合爪、ひいては係合ピン自体が破損するおそれがあり、破損した場合にはこのような係合爪を一体に設けた樹脂製部材ごと交換しなければならず、コスト面及び作業効率で劣るものとなる。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、樹脂製部材同士を係合ピンと係合孔とを相互に係合させることによって簡単に組み付けることができるとともに、樹脂製部材同士の組付状態を解除する場合に、係合ピンと係合孔との係合状態を解除するにあたって過度の引き抜き力が要求されず、係合ピンが不意に破損することを防止し、係合ピンと係合孔との係合解除をスムーズに行うことが可能な樹脂製部材同士の組付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の樹脂製部材同士の組付構造は、第1の樹脂製部材に一体に設けた剛性の高い係合ピンを、第2の樹脂製部材に設けた係合孔に、当該係合孔の周縁の弾性を利用して係合させることによって、前記樹脂製部材同士を組付可能に構成したものであり、前記係合ピンが、円柱状又は円筒状をなす軸部を主体としてなり、当該軸部の先端部をその軸回りに、係合爪を設けた係合爪形成領域と係合爪を設けていない係合爪非形成領域とに二分割したものであり、前記係合孔が、前記係合ピンを外嵌する円形状をなし、且つ周縁にスリット又は切欠からなる弾性変形惹起部を設けたものであり、当該係合ピンを前記係合孔に挿入して係合させた状態で、前記第1の樹脂製部材のうち前記係合ピンの基端部を設けた部位を傾けることにより当該係合ピン自体を前記係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、前記係合ピンと前記係合孔との係合状態を解除するように構成したことを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、係合ピンを係合孔に挿入して係合させた状態において、係合ピンを反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても係合ピンの軸部のうち係合爪形成領域が係合孔に係わり合い、係合ピンが係合孔から抜け外れることを防止できるとともに、係合ピンの軸部の先端部を係合爪形成領域と係合爪非形成領域とに軸回りに二分割しているため、係合ピンと係合孔とを相互に係合させた状態において、剛性の高い係合ピンを傾動させて係合孔の周縁を係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が押圧することによって係合孔が弾性変形惹起部の作用により開口寸法を拡開する方向に弾性変形し、係合爪非形成領域を係合孔から抜き外すことができ、さらに係合ピンを傾動させる又は反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合に、係合爪非形成領域に続いて係合爪形成領域も係合孔から抜け外れ、係合ピン全体を係合孔から抜き外すことができる。
【0009】
したがって、本発明によれば、樹脂製部材同士を一旦組み付けた後において、部品交換やメンテナンス等、その組付状態を解除しなければならない場合に、係合爪と係合孔との係合力を超える過度の引っ張り力、引き抜き力が要求されず、樹脂製部材同士の分解作業をスムーズに行うことができる。しかも、係合ピンに急な引っ張り力が作用することを回避し、係合爪、ひいては係合ピン自体の破損を防止することができる。
【0010】
特に、前記傾動手段が、前記第1の樹脂製部材自体を傾けることによって、前記係合ピン自体を、前記係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し且つ係合爪非形成領域が係合孔から抜け外れる角度まで傾けるものであれば、第1の樹脂製部材に専用の傾動機構を設ける必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0011】
係合ピンと係合孔とを相互に係合させた状態において係合ピンを反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても、係合ピンが係合孔の弾性変形惹起手段から不意に抜け外れることを防止するためには、前記係合ピンを前記係合孔に係合させた状態で、前記係合爪の端部、換言すれば係合爪形成領域と前記係合爪非形成領域との境界部分にある段部と、前記係合孔の前記弾性変形惹起部とが、同一直線上に並ばないように設定すればよい。
【0012】
前記第1の樹脂製部材が、概略薄板状のシェル構造体であり、当該シェル構造体の外縁部又は外縁部近傍部位に前記係合ピンを一体に設けていれば、係合ピンを係合孔に係合させた状態においてシェル構造体の外縁部又は外縁部近傍部位を把持して第2の樹脂製部材から引き離す方向に反らせて湾曲変形させることにより係合ピンを確実に傾けることができ、樹脂製部材同士の分解作業をスムーズ且つ容易に行うことができる。
【0013】
この場合、第1の樹脂製部材のうち係合ピンの基端部を設けた部位を傾ける際に要する座裏カバーを反らせる操作を比較的軽い力で行うことができるようにするには、前記シェル構造体のコーナー部又はコーナー部近傍部位に前記係合ピンを一体に設ければよい。
【0014】
また、複数の係合ピンを第1の樹脂製部材に一体成型する場合に用いる金型の設計上の要求を満たすためには、前記第1の樹脂製部材が各コーナー部又は各コーナー部近傍部位にそれぞれ前記係合ピンを一体に設けたものであり、左右巾方向に対向する係合ピンを、前記係合爪形成領域同士が内向きに対向するように設けることが好ましい。このような構造により、各係合ピンの係合爪非形成領域が第1の樹脂製部材の外縁側に設けられることとなり、第1の樹脂製部材を第2の樹脂製部材から引き離す方向に反らす操作力を付与した場合に、相対的に外縁側に位置する係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位を係合孔の周縁に当てて押圧させる動作を効率良く行うことができるという効果も得られる。
【0015】
前記第1の樹脂製部材が前記係合ピンを複数備えたものであり、前記第2の樹脂製部材が前記係合ピンと同数の前記係合孔を備えたものであれば、第1の樹脂製部材と第2の樹脂製部材との間に複数の係合箇所を確保することができ、第1の樹脂製部材と第2の樹脂製部材との安定した組付状態を維持できる。
【0016】
具体的な実施態様としては、前記第1の樹脂製部材又は前記第2の樹脂製部材の何れか一方がインナーシェルであり、他方がアウターシェルである態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、剛性の高い係合ピンを弾性変形可能な係合孔に挿入して係合させることによって樹脂製部材同士を簡単に組み付けることができるとともに、一旦組み付けた樹脂製部材同士を分解させる場合に、係合ピンと係合孔との係合状態を解除するにあたって過度の引き抜き力が要求されず、係合ピンが不意に破損することを防止し、係合ピンと係合孔との係合解除を好適に行うことが可能な樹脂製部材同士の組付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態では、本発明に係る樹脂製部材同士の組付構造を、図1に示す椅子1における座裏カバー9(本発明の「第1の樹脂製部材」に相当)と座シェル31(本発明の「第2の樹脂製部材」に相当)との組付構造に適用している。なお、座裏カバー9及び座シェル31を相互に組付可能なシェル構造体として捉えた場合、座裏カバー9がアウターシェルとなり、座シェル31がインナーシェルとなる。
【0020】
椅子1は、図1、図2(図2は図1に示す椅子1の左右幅方向中央断面を一部省略して示す図である)に示すように、脚体2と、座3と、座3の下方に配した支持基部4と、支持基部4の後部側に下端部を枢支させた背支桿5と、背支桿5に取り付けられる背凭れ6とを備えたものである。本実施形態の椅子1は、背支桿5の後傾動作に伴って背凭れ6が後傾する背チルト機能を有する一方で、座3が背凭れ6の後傾動作に連動するシンクロチルト機能は有さないものである。
【0021】
脚体2は、キャスタを有する複数の脚羽根21と、単一の脚支柱22とを備え、筒状の脚支柱22の内部に、座3を昇降させるための座昇降機構たるガスシリンダ(図示省略)を配している。すなわち、脚支柱22は、ガスシリンダを被覆するガスシリンダカバー部材として機能している。
【0022】
脚支柱22は、図2及び図2の要部拡大図である図3に示すように、テレスコープ状をなす上方側筒状体221及び下方側筒状体222と、上方側筒状体221の上端部に嵌合可能なキャップ部材223とを備えたものである。ここで、上方側筒状体221とキャップ部材223との嵌合構造について説明する。
【0023】
上方側筒状体221は、下方から上方に向かって径を漸次大きくして外周面全体をテーパ状に設定したものであり、上端部に、他の領域よりも薄肉な段部221aを形成している。
【0024】
一方、キャップ部材223は、概略円盤状をなし、中央部にガスシリンダの上端部の挿入を許容し且つ挿入されたガスシリンダを保持し得る保持孔223aを有し、上方側筒状体221の段部221aに嵌合可能な嵌合部223bを外縁部に有するものである。嵌合部223bは、径方向に対向する内側対向壁223ba及び外側対向壁223bbと、これら対向壁223ba、222bbの上端同士を接続する接続部223bcとを有し下方にのみ開口する凹溝状のものである。内側対向壁223baと外側対向壁223bbとの内法寸法を段部221aの厚み寸法と略同一又は若干大きく設定している。
【0025】
このような上方側筒状体221とキャップ部材223との取り付けは、図3に示すように、キャップ部材223の嵌合部223bを上方側筒状体221の段部221aに嵌合させることによって行う。嵌合状態(図3(b)参照)において、嵌合部223bの内側対向壁223baと外側対向壁223bbとによって段部221aを内側と外側とから挟み込む態様となる。さらに、本実施形態では、嵌合部223bの径寸法、具体的には外側対向壁223bbの内径寸法を、段部221aの外径寸法よりも若干小さく設定しているため、キャップ部材223の嵌合部223bをテーパ状になっている段部221aに圧入することにより、段部221aが嵌合部223bの内側対向壁223baと外側対向壁223bbとの間で押圧された状態で挟み込まれる態様となり、段部221aと嵌合部223bとのより強固な嵌合状態を長期に亘って維持できるように構成している。なお、段部221aの外向面又は内向面の少なくとも何れか一方に外方又は内方に突出する凸部を周方向に連続して設け、外側対向壁223bbの内向面又は内側対向壁223baの外向面の少なくとも何れか一方に前記凸部に係合可能な凹部を周方向に連続して設け、嵌合部223bを段部221aに嵌合させ際に、対面する凸部と凹部とが係合するように構成してもよい。もちろん、凸部と凹部との関係が逆である態様、つまり、段部221aに凹部を設け、嵌合部223bに凸部を設けた態様であっても構わない。
【0026】
なお、ガスシリンダは、周知のものであるため詳細な説明は省略する。ガスシリンダを脚支柱22の内部に配し、その上端部近傍をキャップ部材223の保持孔223aに挿入して保持させた状態で、後述する操作レバー7の基端部によって押圧され突没動作可能な頭部がキャップ部材223よりも上方に位置付けられる。
【0027】
座3は、図1及び図2に示すように、シェル構造体である座シェル31と、座シェル31の上方に配される座クッション材32と、座クッション材32を被覆し得る座面カバー33とを備えたものである。座シェル31の詳細については後述する。
【0028】
支持基部4は、図2、図4、及び図5(図5は、支持基部4に背支桿5及び操作レバー7を枢支させた状態の背面図である)に示すように、座シェル31の下向面のうち左右巾方向中央領域に位置付けられる支持基部本体41と、支持基部本体41の左右両側方に取り付けた肘受け部42と、支持基部本体41の下向面に取り付けた脚支柱受け部43とを備えたものである。
【0029】
支持基部本体41は、前後方向(長手方向)中間部よりも後方側に寄った位置を境に、前方に向かって緩い角度で漸次上方に傾斜するベース部411と、後方に向かってベース部411よりも急な角度で漸次上方に傾斜し、且つ背支桿5の後傾に伴う反力を受ける反力受け部412とを一体に備えたスチール製の一体品である(図2参照)。なお、背支桿5の後傾に伴って背支桿5を起立姿勢に傾動させる傾動力(反力)を発生させる反力機構Xは、図示しないスプリングバネを利用したものであり、座3の後部側下方に配される操作ノブX1(図1参照)を操作することによって、背支桿5の後傾に伴って背支桿5を起立姿勢に傾動させる傾動力(反力)の程度を調節できる周知のものを適用しており、詳細な説明は省略する。支持基部本体41は、左右両側縁又は左右両側縁近傍において前後方向に沿って延伸するリブ41aを備えている。本実施形態では、正面視略山折り状のリブ41aを適用している。ベース部411から反力受け部412に亘って連続して設けたリブ41aにより、支持基部本体41は剛性の高いものとなる。ベース部411は、リブ41aよりも外側に、座シェル31に取り付ける際に利用する座シェル取付用孔を形成した座シェル取付部411aを有し、この座シェル取付部411aの一部に肘受け部42を取り付けるための肘受け取付部411bを形成している(図4参照)。座シェル取付部411aは、ベース部411と同一角度で前方に向かって漸次上方に傾斜するものである一方で、肘受け取付部411bは、前後方向に水平に延びるものである。このように、肘受け取付部411bを水平なものに設定することにより、左右何れの肘受け取付部411bにも同一の肘受け部42を取り付けることができるようにしている。このような構成により、肘受け取付部411bがベース部411と同一角度で前方に向かって漸次上方に傾斜するものであれば生じる不具合、つまり、肘受け取付部411bの傾斜角度に対応させなければならないために左右の肘受け取付部411bの共通化を図れないという不具合を解消している。
【0030】
肘受け部42は、肘受け取付部411bの下面及び脚支柱受け部43の側面に例えば溶接等により固着したスチール製のものである。肘受け部42は、外側方に向かって漸次迫り上がった姿勢で保持されている。
【0031】
脚支柱受け部43は、前後方向及び上方に開口した概略上向きコ字状をなし、ベース部411の後部側及び反力受け部412の前部側に亘る領域に例えば溶接等により固着したスチール製のものである(図2、図5参照)。脚支柱受け部43のうち、ベース部411の後部側に位置付けられる部位には、ガスシリンダの上端部及び突没動作可能な頭部が挿通可能な筒状部431を設けている。この筒状部431は、ベース部411を貫通するものであり、ガスシリンダの頭部が筒状部431の開口に臨む位置に位置付けられるようにしている。そして、ガスシリンダを操作するための操作レバー78の基端部も、筒状部431の開口に臨む位置に位置付けられ、この操作レバー7によりガスシリンダの頭部を押圧できるようにしている。
【0032】
操作レバー7は、基端部近傍を支持基部4に前後方向の水平軸回りに回動可能に枢支させたレバー本体71と、レバー本体71の先端部に取り付けられた合成樹脂製の取手72とを備えたものである。なお、操作レバー7の動作の説明にあたって用いる「前後方向の水平軸回りに回動」とは、「前後方向に延びる水平軸を回転中心として高さ方向に回動」という意味である。
【0033】
レバー本体71は、金属製の棒状部材であり、支持基部4の下方に配される第1直線状部711と、支持基部4の上方に配されガスシリンダの頭部を上方から押圧し得る第2直線状部712と、第1直線状部711と第2直線状部712との間に設けられ、且つ支持基部4に形成したレバー挿通孔(具体的には、肘受け部42の内方端部に形成した第1レバー挿通孔42a、及び支持基部本体41の一方のリブ41aに形成した第2レバー挿通孔41aa)に通される屈曲部713とを連続して有するものである。
【0034】
取手72は、先端部を扁平状にした合成樹脂製のものであり、ビス等によってレバー本体71の先端部に取り付けられている。この取手72を上下方向に移動させる操作によって、操作レバー7は、レバー本体71の基端部(第2直線状部712の基端部)がガスシリンダの頭部を押圧する押圧位置と、ガスシリンダの頭部を押圧しない非押圧位置と間で前後方向の水平軸回りに回動する。
【0035】
背支桿5は、図2、図4及び図5等に示すように、左右一対の背凭れフレーム体51と、背凭れフレーム体51同士の間に設けられ反力機構Xのスプリングバネを受けるバネ受け部52とを一体的に備えたものである。
【0036】
左右一対の背凭れフレーム体51は、その前部が前記ベース部411の下方に位置するように配され、座3の後端部より後方で上方に湾曲し、上方に延伸する部位に、背凭れ6を取り付けるための背凭れ取付部53を一体的に設けたものである。なお、背凭れ6は、背シェルと、背シェルの前方に配される背クッション材(共に図示省略)と、背クッション材を被覆し得る背凭れ面カバー61と、背シェルの背面に取り付け可能な背カバー62とを備えたものである(図1参照)。
【0037】
各背凭れフレーム体51の下端部(基端部)は、脚支柱受け部43のうち反力受け部412の前部側に位置付けられる部位を両側方から挟む位置に配され、左右巾方向の水平軸である背支桿回転軸5xによって支持基部4に枢支されている(図2、図5参照)。背支桿回転軸5xは、左右一対の背凭れフレーム体51に連通する単一の軸であってもよいが、本実施形態では、各背凭れフレーム体51毎にそれぞれ個別に設けた態様としている。勿論、これら一対の軸同士は座の左右巾方向に同一直線上に位置付けられている。また、支持基部4に枢支させた各背凭れフレーム体51のうち、支持基部本体41の下方に配される下端部側領域は、図15に示すように、支持基部本体41に設けた左右一対のリブ41aの直下又は略直下に位置付けられる。
【0038】
バネ受け部52は、図2及び図6(図6は図2の要部拡大であって背支桿5が後傾した状態を一部省略して示す図である)に示すように、背凭れフレーム体51のうち、前記枢支点(背支桿回転軸5x)よりも後方であって且つ上方に曲がる部位よりも前方の部位に配され、概略平板状のスチール材を、側面視略下向きコ字状に折り曲げ加工したものである。バネ受け部52の前端部には、背凭れフレーム体51の下向面よりも若干下方に位置し、且つ背支桿5が支持基部4に対して後傾した際に支持基部4(具体的には脚支柱受け部43の後端部)と接触し得る当たり部521を設けている。当たり部521は、バネ受け部52の前向面522の下端から前方に向かって延びる舌片状をなし、上方に突出する上向き凸部521aを設けている(図6参照、なお、図6では上向き凸部521aの一部にパターンを付している)。本実施形態では、一対の上向き凸部521aを左右に離間させて設けている。
【0039】
背支桿5の下端部近傍部位のうち外部に露出する部位は背支桿カバー8によって被覆されている。
【0040】
背支桿カバー8は、図2、図4〜図7に示すように、背支桿5を挿通させるための背支桿用挿通孔81aを有する概略筒状のカバー本体81と、背支桿5の前記当たり部521を被覆し且つ背支桿5の後傾時に当たり部521よりも優先して支持基部4に接触する緩衝用カバー82とを一体に備えたものである。この背支桿カバー8は、例えば合成樹脂素材からなる一体成型品である。なお、図4では、本来装着されるべき背支桿カバー8を取り外した背支桿5を支持基部4に枢支させた状態であり、背支桿カバー自体を単体の斜視図として同図中に示している。
【0041】
カバー本体81の背支桿用挿通孔81aは、左右巾方向に巾広な略矩形状をなし、背支桿5の前記一対の背凭れフレーム体51を若干あそびのある状態で収容可能な開口寸法に設定されている。カバー本体81の底面には、背支桿5に取り付けた状態で背支桿5のバネ受け部52に連通する筒状の鍔部81bを設けている。
【0042】
緩衝用カバー82は、カバー本体81の上面の前端部に連続するものであり、カバー本体81に対して、背支桿用挿通孔81aの開口方向から見て背支桿用挿通孔81aから外れた位置である非装着位置(82A)(図7(c)参照)と、背支桿用挿通孔81aの開口方向から見て背支桿用挿通孔81a内に位置し当たり部521に装着可能な装着位置(82B)(図7(b)参照)との間で回動可能なものである。なお、本実施形態では、カバー本体81と緩衝用カバー82との接続部位を、薄肉に設定する又は一部切除することによりヒンジ部として機能させている。緩衝用カバー82の左右巾寸法を背凭れフレーム体51同士の内法よりも小さく設定している(図5参照)。
【0043】
このような背支桿カバー8を背支桿5に取り付けるには、先ず、緩衝用カバー82を非装着位置(82A)に位置付けた状態で、背支桿用挿通孔81aに、背支桿5の下端部近傍を挿入し、非装着位置(82A)から装着位置(82B)に回動させた緩衝用カバー82が背支桿5のバネ受け部52の当たり部521又は前向面522に当たる位置まで緩衝用カバー82を移動させ、緩衝用カバー82の先端部を当たり部521に前方から押圧して装着する。緩衝用カバー82の先端部は、当たり部521を上下方向から挟み込む形状をなし、さらに、この緩衝用カバー82の先端部に、当たり部521に設けた前記上向き凸部521aに嵌め込むことが可能な嵌合孔82aを設けている(図4、図7参照)。嵌合孔82aは、概略半球状をなす上向き凸部521aが圧入可能なものである。そして、緩衝用カバー82の先端部を当たり部521に装着することにより、背支桿5と背支桿カバー8との相対取付位置が位置決めされ、背支桿カバー8内で背支桿5がぐらつくことを防止し、嵌合孔82aに上向き凸部521aを圧入して嵌め込むことにより、当たり部521に対する緩衝用カバー82の嵌合状態がより良好なものとなる。なお、本実施形態では、緩衝用カバー82が自重で装着位置(82B)、又は装着位置(82B)と非装着位置(82A)との間の位置に位置付けられるようにしている。背支桿カバー8を背支桿5に装着した状態において、背支桿カバー8は支持基部4に対する背支桿5の枢支点5Xよりも後方に位置付けられる。
【0044】
背支桿カバー8を下端部近傍に装着した状態の背支桿5を支持基部4に枢着し、この支持基部4を座シェル31の裏面側にビス等の固定手段を利用して固定する。本実施形態では、さらに支持基部4に操作レバー7を枢支させた状態で、座裏カバー9を座シェル31の下面側から取り付けられるようにしている。
【0045】
座シェル31は、図2、図8及び図9(図8(a)は座シェル31の底面図であり、同図(b)は(a)のP領域拡大図であり、図9は図8(a)のa−a線断面である)等に示すように、概略薄板状をなす合成樹脂製のものであり、中央領域を外縁部よりも窪ませた3次元形状を有する。本実施形態の座シェル31は一体成型品である。座シェル31の上面に座クッション材32を載置可能に構成し、下面に、支持基部4を取付可能に構成している。また、座シェル31の軽量化及び剛性を高めるという観点から、適宜箇所(図示例では中央部領域)に厚み方向に貫通する一又は複数の貫通孔を設けるとともに、下面部に前後方向、左右幅方向に延びる複数のリブを設けている。そして、この座シェル31の各コーナー部近傍部位にそれぞれ下方に開口した概略円筒状の係合孔311を設けている。各係合孔311は、座シェル31の厚み方向、換言すれば座3の高さ方向に貫通するものであり、周縁311aに高さ方向に沿って延びる本発明の弾性変形惹起部たるスリット311bを形成している(図8(b)参照)。本実施形態では、円筒状をなす周縁311aを二等分する箇所に対向する一対のスリット311bを形成している。特に、本実施形態の係合孔311は、周縁311aのうち座3の左右幅方向に対向する箇所にスリット311bを形成している。このようなスリット311bを有する係合孔311は、弾性変形していない通常開口状態(図9(a)参照)と、スリット311bの拡開動作を通じて弾性変形し、開口寸法が通常開口状態における開口寸法よりも大きくなる拡開状態(図9(b)参照)との間で弾性変形する。また、各係合孔311は、周縁311aのうち開口縁に、開口側(下方)から奥方(上方)に向かって漸次内法を小さくするテーパ状の係合突起311cを周方向に沿って設けている。座シェル31には、操作レバー7の基端部との干渉を回避するための操作レバー干渉回避用孔312を形成している。
【0046】
座裏カバー9は、図2、図10、図11(図10(a)は座裏カバー9の平面図であり、同図(b)は(a)のQ領域拡大図である)に示すように、概略薄板状をなす合成樹脂製のものであり、座シェル31、支持基部4、及び背支桿5の下端部側領域を下方から被覆し得るものである。本実施形態の座裏カバー9は一体成型品である。座裏カバー9の中央部に脚体2の脚支柱22の上端部が差し込み可能な開口部91を設けている。開口部91は、脚体2内に配されたガスシリンダを取り付けるためのガスシリンダ用孔911と、ガスシリンダ用孔911に連続し且つ操作レバー7との干渉を回避するための操作レバー用孔912とからなる。ガスシリンダ用孔911は、略円形状をなし、操作レバー用孔912は、ガスシリンダ用孔911の一方の側方からに左右幅方向に延びる長孔である。このような開口部91を設けた領域及びその周辺領域を他の領域よりも下方に窪ませ、座シェル31に取り付けた支持基部4のうち主として脚支柱受け部43を収容し得る支持基部収容部92として機能するように設定している。座裏カバー9の後端側の左右幅方向中央領域であって支持基部収容部92に連続する部位に、背支桿カバー8との干渉を避けるための切欠部93を設けている。また、座裏カバー9の両側縁近傍領域には、支持基部4の肘受け部42の底面に当接又は近接し、肘Hを取り付けるためのビスが挿通可能なビス挿通孔を形成した肘受け部裏当て部94を設けている。そして、この座裏カバー9の各コーナー部近傍部位にそれぞれ係合ピン95を一体に設けている。
【0047】
各係合ピン95は、図10(b)に示すように、円筒状をなす軸部951を主体としてなり、この軸部951の先端部を、側方に突出する係合爪952を設けた係合爪形成領域95Aと、係合爪952を設けていない係合爪非形成領域95Bとに軸回りに二分割したものである。係合爪952は、先端に向かって漸次径を小さくしたテーパ状をなす。軸部951の外径寸法を、前記通常開口状態にある係合孔311の開口縁の開口内法よりも僅かに小さく設定するとともに、係合爪形成領域95Aにおける最大外径寸法を、通常開口状態にある係合孔311の周縁311aのうち係合突起311cよりも上方の部位における開口内法と略同一に設定している。本実施形態では、軸部951の先端部を、係合爪形成領域95Aと、係合爪非形成領域95Bとに略均等に分割し、係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとの境界部分である段部95C、換言すれば係合爪952の両端部が、平面視略同一直線上に位置付けられるようにしている。特に本実施形態では、係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとの境界部分である段部95Cを、座3の前後方向に対向する箇所に設定している。より具体的には、座裏カバー9の四隅近傍にそれぞれ設けた各係合ピン95は、左右幅方向に対向する係合ピン95との関係において、係合爪形成領域95A同士が内向きに対向するように設定している。つまり、各係合ピン95は、軸部951の先端部のうち、座裏カバー9の左右幅方向中心寄りである内向き側の半周領域を係合爪形成領域95Aに設定し、外向き側(座裏カバー9の外縁側)の半周領域を係合爪非形成領域95Bに設定している。各係合ピン95の基端部は、座裏カバー9の上向面から上方に向かって突出させた剛性の高い取付基部96に連続して設けられている。取付基部96は、中空状のボックス部961と、ボックス部961の内部に設けた一又は複数のリブ962とからなり、各取付基部96の上面を全て平行な平滑面にすることによって、各係合ピン95の突出方向が相互に平行となり、且つ各係合ピン95の基端位置が同一となる。座裏カバー9のうち、取付基部96を設けた箇所近傍を反らすように湾曲変形させた場合、取付基部96が座裏カバー9の湾曲具合に応じて傾き、これに伴って係合ピン95が取付基部96の傾きと同一角度に傾く。
【0048】
次にこのような座シェル31と座裏カバー9とを相互に組み付ける手順及び作用について説明する。
【0049】
座シェル31と座裏カバー9とを組み付ける前に、予め背支桿カバー8を取り付けた背支桿5の下端部を支持基部4の後端部近傍部位に枢支させるとともに、支持基部4に操作レバー7の基端部を枢支させておき、このような支持基部4を座シェル31の下面に固定しておく。
【0050】
そして、図12及び図13に示すように、座シェル31の下面を上方に向けた状態(倒置状態)で、座裏カバー9を、前記開口部91に操作レバー7を通して座シェル31の下面側を被覆し得る位置に位置付け、座シェル31の各係合孔311にそれぞれ係合ピン95を押圧して挿入する。座裏カバー9の開口部91に操作レバー7を通す際に、操作レバー7を、先端部(取手72)が座シェル31から離間する方向に回動させておくと、操作レバー7の先端部側領域と座シェル31及び支持基部4との離間寸法を大きく稼ぐことができ、開口部91に操作レバー7を通す作業をより簡単に行うことができる。なお、図12に示す操作レバー7は、先端部(取手72)が座シェル31から離間する方向に回動させた状態ではなく、図5に示す姿勢と同じ姿勢である。
【0051】
係合孔311に対する係合ピン95の挿入動作に伴って、係合爪形成領域95Aが周縁311aの開口側端部に設けた内向きテーパ状の前記係合突起311cを押圧し、この押圧力によりスリット311bが押し広げられ係合孔311が開口寸法を拡開する方向に弾性変形した拡開状態となり、さらに係合ピン95を挿入することによって、係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cを乗り越え、この時点で係合孔311が弾性復帰して通常開口状態となり、図14、図15及び図16(a)に示すように、係合ピン95の係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cに係合する。なお、図14は、座裏カバー9を座シェル31に組み付けた状態を図10のb―b線断面に相当する断面で示すものであり、図15は、座裏カバー9を座シェル31に組み付けた状態を図10のc−c線断面に相当する断面で示すものであり、図16(a)は図15の一部拡大図である。本実施形態では、各係合孔311に設けた一対のスリット311bが向き合う方向を座3の左右巾方向と略平行に設定しているのに対して、係合爪952の端部、つまり係合爪形成領域95Aと前記係合爪非形成領域95Bとの境界部分である一対の段部95Cが向き合う方向を座3の前後方向と略平行に設定しているため、係合ピン95を係合孔311に係合させた係合状態において、係合爪952の段部95Cと、係合孔311のスリット311bとが、同一直線上に並ばず、略直交する関係となる。その結果、係合状態において係合ピン95を反挿入方向へ真っ直ぐに引っ張る力が作用した場合であっても係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cに引っ掛かり、係合ピン95が係合孔311から抜け外れることを防止している。
【0052】
このように、係合ピン95と係合孔311とが、座裏カバー9と座シェル31とを相互に取り付ける際に利用される係合機構Kとして機能し、上記手順により座裏カバー9を座シェル31に取り付けることができる。すなわち、係合機構Kが、係合ピン95と係合孔311とを相互に係合させた係合状態となることによって座裏カバー9と座シェル31とを相互に組み付けることができる。
【0053】
座裏カバー9と座シェル31とを係合機構Kによって相互に組み付けた状態において、座裏カバー9の開口部91のうちガスシリンダ用孔911と、支持基部4の脚支柱受け部43のうち筒状部431とが高さ方向に連通し、ガスシリンダを内部に配した脚支柱22を、これらガスシリンダ用孔911及び筒状部431に続けて差し込んで取り付けると、ガスシリンダの頭部が、支持基部4の筒状部431に臨む位置に位置付けられる。また、座裏カバー9の開口部91のうち操作レバー用孔912に操作レバー7の基端部近傍領域(具体的にはレバー本体71の屈曲部713)が位置付けられ、操作レバー用孔912内におけるレバー本体71の前記押圧位置と前記非押圧位置との間での回動を許容している。
【0054】
一方、係合孔311に係合ピン95を係合させて座シェル31に座裏カバー9を取り付けた本実施形態の樹脂製部材同士の取付構造は、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾けることにより係合ピン95自体を、係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aに当たって当該周縁311aを押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、係合ピン95と係合孔311との係合状態を解除するように構成されている。
【0055】
傾動手段は、座裏カバー9自体を湾曲変形させることによって、剛性の高い係合ピン95自体を、係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aに当たって係合孔311をスリット311bによる弾性変形を利用して押し広げ且つ当該係合爪非形成領域95Bが係合孔311から外れ出る角度まで傾けるものである。本実施形態では、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を座シェル31から離間させる方向に反らす力を付与することにより、取付基部96がその反り程度(座裏カバー9の湾曲程度)に応じて傾き、取付基部96の傾動に同期して係合ピン95が係合孔311内で傾くようにしている。具体的には、図16(b)に示すように、係合ピン95自体を弾性変形不能な又は弾性変形が抑制される剛性の高い構造とし、このような係合ピン95を撓み変形可能な座裏カバー9に一体に設けることにより、この座裏カバー9のうち、係合ピン95の基端部を設けた部位、つまり取付基部96を設けた部位を、座シェル31から離間する方向に反らす操作力を加えることによって、係合ピン95が取付基部96の傾動に応じて係合孔311内で傾き、係合ピン95の係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aを押圧し、この押圧力を受けて係合孔311が、スリット311bの作用により開口寸法を拡開する方向に弾性変形して拡開状態となる。なお、本実施形態では、係合ピン95の係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aを押圧することに加えて、係合ピン95の軸部951のうち、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bよりも基端側の部位が周縁311aの係合突起311cを押圧する構成としている。これによって、係合孔311を通常開口状態から拡開状態へよりスムーズに移行させることができる。また、本実施形態では、係合ピン95が、軸部951の先端部を係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとに軸回りに二分割しているため、係合ピン95を係合孔311に係合させた状態において、係合ピン95のうち係合爪非形成領域95Bと係合孔311の周縁311aとの間に、係合ピン95の傾動を許容する空間が形成されている(図16(a)参照)。本実施形態では、係合ピン95を係合孔311に係合させた状態において、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bが係合孔311内に収まっているため、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bが係合孔311内に収まらずに座シェル31の上面よりも上方に突出する態様であれば生じる不具合、すなわち、係合爪形成領域95A及び係合爪非形成領域95Bが例えば座クッション材32に埋もれてしまい、係合ピン95自体を傾けることができない、又は係合ピン95の傾動をスムーズに行うことが出来ないという不具合を回避できる。
【0056】
引き続き、図16(c)に示すように、さらに座裏カバー9を反らせる操作力、又は係合ピン95を係合孔311に係合させる際の挿入方向とは逆の方向(反挿入方向)に引っ張る操作力を付与すると、拡開状態にある係合孔311から係合ピン95の係合爪非形成領域95Bに続いて係合ピン95の係合爪形成領域95Aの少なくとも一部が抜け外れ、さらに同じ操作力を付与し続けることによって、前記一部抜け外れた箇所をきっかけにまだ係合孔311に係合している残りの係合爪形成領域95Aが漸次又は一気に係合孔311から抜け外れ、係合ピン95と係合孔311との係合状態が解除される。本実施形態では、座裏カバー9の各コーナー部近傍部位に設けた係合ピン95を座シェル31の係合孔311に係合させた態様であるため、計4箇所の係合箇所において、係合ピン95と係合孔311とからなる各係合機構Kを上述した操作によって順次係合解除状態とすることにより、座裏カバー9を座シェル31から分離することができる。
【0057】
特に、本実施形態では、係合ピン95を座裏カバー9の各コーナー部近傍部位に一体に設けているため、係合ピン95を座裏カバー9の辺部分に相当する部位や、中央部近傍部位に設けた場合と比較して、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾ける際に要する座裏カバー9を反らせる操作を比較的軽い力で行うことができる。
【0058】
このように、係合ピン95及び係合孔311を備えてなる係合機構Kは、係合ピン95と係合孔311とを相互に係合させた状態において、作業者が座裏カバー9のコーナー部近傍部位を座シェル31から離間させる方向に反らせることにより、係合ピン95を係合孔311内で傾動させて係合爪非形成領域95Bを係合孔311から抜け出させた係合解除初期状態となり、この係合解除初期状態において、さらに係合ピン95を係合孔311から引き離す方向に座シェル31を反らせる又は引っ張ることによって係合ピン95全体を係合孔311から抜き外した係合解除状態となる。
【0059】
このように、本実施形態に係る樹脂製部材同士の取付構造は、係合ピン95を係合孔311に挿入して係合させた状態において、係合ピン95を反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても係合ピン95の軸部951のうち係合爪形成領域95Aが係合孔311の係合突起311cに引っ掛かり、係合ピン95が係合孔311から抜け外れることを防止できるとともに、係合ピン95の軸部951の先端部を係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとに軸回りに二分割しているため、係合ピン95と係合孔311とを相互に係合させた状態において、係合ピン95のうち係合爪非形成領域95Bと係合孔311の周縁311aとの間に係合ピン95の傾動を許容する空間が形成され、傾動手段を利用して係合ピン95を係合孔311内で傾けることができ、剛性の高い係合ピン95を傾動させて係合孔311の周縁311aを押圧することによって係合孔311がスリット311bの作用により開口寸法を拡開する方向に弾性変形し、係合爪非形成領域95Bが係合孔311から抜け外れ、さらに係合ピン95を傾動させる又は反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合に、係合爪非形成領域95Bに続いて係合爪形成領域95Aも係合孔311から抜け外れ、係合ピン95全体を係合孔311から抜き外すことができる。
【0060】
したがって、樹脂製部材である座裏カバー9及び座シェル31を一旦組み付けた後において、部品交換やメンテナンス等、その組付状態を解除しなければならない場合に、係合爪952と係合孔311との係合力を超える過度の引っ張り力、引き抜き力が要求されず、座裏カバー9を座シェル31から取り外す作業をスムーズに行うことができる。しかも、係合ピン95に急な引っ張り力が作用することを回避し、係合爪952、ひいては係合ピン95自体の破損を防止することができる。
【0061】
特に傾動手段が、座裏カバー9自体を傾けることによって、係合ピン95自体を、係合爪非形成領域95Bが係合孔311の周縁311aに当たって当該周縁311aを押圧し且つ係合孔311から抜け外れる角度まで傾けるものであるため、座裏カバー9に係合ピン95を傾動させるための別途専用の傾動機構を設ける必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0062】
さらに、係合ピン95を係合孔311に係合させた状態で、係合爪952の端部、つまり係合爪形成領域95Aと係合爪非形成領域95Bとの境界部分にある段部95Cと、係合孔311のスリット311bとが、同一直線上に並ばないようにしているため、係合状態において係合ピン95を反挿入方向へ引っ張る力が作用した場合であっても係合ピン95が係合孔311のスリット311bから不意に抜け外れることを防止し、良好な係合状態を実現できる。
【0063】
また、係合ピン95を座裏カバー9のコーナー部又はコーナー部近傍部位に一体に設けているため、座裏カバー9のうち係合ピン95の基端部を設けた部位を傾ける際に要する座裏カバー9を反らせる操作を比較的軽い力で行うことができ、座裏カバー9を座シェル31から取り外す作業をスムーズ且つ確実に行うことができる。
【0064】
加えて、座3の左右巾方向に対向する係合ピン95を、係合爪形成領域95A同士が内向きに対向するように設けているため、複数の係合ピン95を座裏カバー9に一体成型する場合に用いる金型を作る上で、抜き方向を考慮した場合に設計上要求される条件を満たし、複数の係合ピン95を有する座裏カバー9を一体成型品とすることが可能になるとともに、各係合ピン95の係合爪非形成領域95Bが座裏カバー9の外縁側に設けられることにより、座裏カバー9を座シェル31から引き離す方向に反らす操作力を付与した場合に、相対的に外縁側に位置する係合爪非形成領域95Bを係合孔311の周縁311aに当てて押圧させる動作を効率良く行うことができる。
【0065】
さらに、座裏カバー9に複数の係合ピン95を一体に設け、座シェル31に係合ピン95と同数の係合孔311を一体に設けているため、複数の係合箇所を確保し、座裏カバー9と座シェル31との安定した取付状態を維持できる。
【0066】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0067】
例えば、係合ピンの軸部が中実の円柱状のものであってもよい。また、係合ピンは、軸部の先端部を係合爪形成領域と係合爪非形成領域とに軸回りに二分割したものであればよく、軸回りに占める係合爪形成領域と係合爪非形成領域との割合が均等でない態様であっても構わない。例えば、係合爪形成領域を係合爪非形成領域よりも大きく設定した場合には、より良好な係合状態を確保することができ、その逆、つまり係合爪非形成領域を係合爪形成領域よりも大きく設定した場合には、係合ピンを係合孔から抜き外す作業をよりスムーズに行うことができる。
【0068】
また、前記実施形態では、第1の樹脂製部材として座裏カバーを適用し、第2の樹脂製部材として座シェルを適用した態様を例示したが、第1の樹脂製部材及び第2の樹脂製部材は相互に組付可能な薄板状のシェル構造体(インナーシェル及びアウターシェル)であればよく、第2の樹脂製部材として背シェルを適用し、第1の樹脂製部材として背シェルの背面側に組付可能な背カバーを適用しても構わない。なお、上方又は前方にクッション材が配されない座シェルや背シェルであれば、これら座シェルや背シェルに係合ピンを一体に設け、座裏カバーや背カバーに係合孔を一体に設けてもよい。つまり、インナーシェルに係合ピンを設け、アウターシェルに係合孔を設けた態様であっても構わない。
【0069】
また、係合ピンが取付基部を介さずに第1の樹脂製部材に一体に設けられたものであってもよい。
【0070】
係合ピン及び係合孔の数は適宜増減しても勿論構わない。
【0071】
また、係合ピンや係合孔を、各樹脂製部材の外縁部のうち辺部分に相当する部位に一体に設けた態様であってもよい。
【0072】
また、係合孔の弾性惹起部として、スリットに代えて切欠を適用してもよい。
【0073】
係合孔が、周縁に弾性惹起部を設けた単純な円筒状のもの、つまり前記実施形態の係合突起がないものであってもよい。この場合、係合孔に挿入した係合ピンの係合爪が係合孔の反挿入側の開口縁に引っ掛かることにより係合ピン及び係合孔が相互に係合する。さらには、係合孔が円筒状のものではなく、第2の樹脂製部材の厚み方向に貫通させた単純な貫通孔であっても構わない。この場合、貫通孔の周縁にスリット又は切欠を設け、第1の樹脂製部材に一体に設けた係合ピンを貫通孔に挿入して係合爪を係合させるとともに、第1の樹脂製部材のうち係合ピンの基端部を設けた部位を傾けることにより係合ピン自体を、軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が貫通孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し、且つ係合爪非形成領域が係合孔から抜け外れる角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、係合ピンと係合孔との係合状態を解除するように構成すればよい。
【0074】
係合ピンの軸部が、少なくとも基端部側からアクセス可能な内部空間を有する有底筒状又は筒状のものであれば、傾動手段が、係合ピンの基端部側から内部空間に例えばドライバ等の工具を挿入して、第1の樹脂製部材自体を傾けることによって、係合ピンの軸部を傾動させ、係合ピン自体を、係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し且つ係合爪非形成領域が係合孔から抜け外れる角度まで傾けるものであってもよい。
【0075】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂製部材同士の組付構造を適用した椅子の全体概略図。
【図2】同実施形態における椅子の左右巾方向中央部断面を一部省略して示す図。
【図3】同実施形態における脚支柱の組付説明図。
【図4】同実施形態において背支桿カバーを装着していない背支桿を支持基部に枢支させた状態の斜視図。
【図5】同実施形態において背支桿カバーを装着した背支桿、及び操作レバーをそれぞれ枢支させた支持基部の底面図。
【図6】同実施形態において背支桿が後傾した状態を図2の一部に対応させて示す図。
【図7】同実施形態における背支桿カバーを示す図。
【図8】同実施形態における座シェルの底面図。
【図9】同実施形態における係合孔を示す図。
【図10】同実施形態における座裏カバーの平面図。
【図11】同実施形態における座裏カバーの全体図。
【図12】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付ける一過程を示す図。
【図13】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付けた状態の底面図。
【図14】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付けた状態を図10のb―b線断面に相当する断面で示す図。
【図15】同実施形態において座シェルに座裏カバーを組み付けた状態を図10のc−c線断面に相当する断面で示す図。
【図16】作用説明図。
【符号の説明】
【0077】
1…椅子
31…第2の樹脂製部材(座シェル)
311…係合孔
311a…周縁
311b…弾性変形惹起部(スリット)
9…第1の樹脂製部材(座裏カバー)
95…係合ピン
951…軸部
952…係合爪
95A…係合爪形成領域
95B…係合爪非形成領域
95C…係合爪の端部(係合爪形成領域と係合爪非形成領域との境界部分にある段部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂製部材に一体に設けた剛性の高い係合ピンを、第2の樹脂製部材に設けた係合孔に、当該係合孔の周縁の弾性を利用して係合させることによって、前記樹脂製部材同士を組付可能に構成した樹脂製部材同士の組付構造であり、
前記係合ピンが、円柱状又は円筒状をなす軸部を主体としてなり、当該軸部の先端部をその軸回りに、係合爪を設けた係合爪形成領域と係合爪を設けていない係合爪非形成領域とに二分割したものであり、
前記係合孔が、前記係合ピンを外嵌する円形状をなし、且つ周縁にスリット又は切欠からなる弾性変形惹起部を設けたものであり、
当該係合ピンを前記係合孔に挿入して係合させた状態で、前記第1の樹脂製部材のうち前記係合ピンの基端部を設けた部位を傾けることにより当該係合ピン自体を前記係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、前記係合ピンと前記係合孔との係合状態を解除するように構成したことを特徴とする樹脂製部材同士の組付構造。
【請求項2】
前記傾動手段が、前記第1の樹脂製部材自体を傾けることによって、前記係合ピン自体を、前記係合爪非形成領域又は前記軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し且つ係合爪非形成領域が前記係合孔から抜け外れる角度まで傾けるものである請求項1記載の樹脂製部材同士の組付構造。
【請求項3】
前記係合ピンを前記係合孔に係合させた状態で、前記係合爪の端部と、前記係合孔の前記弾性変形惹起部とが、同一直線上に並ばないようにしている請求項1又は2記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項4】
前記第1の樹脂製部材が、シェル構造体であり、
当該シェル構造体の外縁部又は外縁部近傍部位に前記係合ピンを一体に設けている請求項1、2又は3記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項5】
前記シェル構造体のコーナー部又はコーナー部近傍部位に前記係合ピンを一体に設けている請求項4記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項6】
前記第1の樹脂製部材が各コーナー部又は各コーナー部近傍部位にそれぞれ前記係合ピンを一体に設けたものであり、
左右巾方向に対向する係合ピンを、前記係合爪形成領域同士が内向きに対向するように設けている請求項1、2、3、4又は5記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項7】
前記第1の樹脂製部材が前記係合ピンを複数備えたものであり、前記第2の樹脂製部材が前記係合ピンと同数の前記係合孔を備えたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項8】
前記第1の樹脂製部材又は前記第2の樹脂製部材の何れか一方がインナーシェルであり、他方がアウターシェルである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項1】
第1の樹脂製部材に一体に設けた剛性の高い係合ピンを、第2の樹脂製部材に設けた係合孔に、当該係合孔の周縁の弾性を利用して係合させることによって、前記樹脂製部材同士を組付可能に構成した樹脂製部材同士の組付構造であり、
前記係合ピンが、円柱状又は円筒状をなす軸部を主体としてなり、当該軸部の先端部をその軸回りに、係合爪を設けた係合爪形成領域と係合爪を設けていない係合爪非形成領域とに二分割したものであり、
前記係合孔が、前記係合ピンを外嵌する円形状をなし、且つ周縁にスリット又は切欠からなる弾性変形惹起部を設けたものであり、
当該係合ピンを前記係合孔に挿入して係合させた状態で、前記第1の樹脂製部材のうち前記係合ピンの基端部を設けた部位を傾けることにより当該係合ピン自体を前記係合爪非形成領域又は軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し得る角度まで傾けることが可能な傾動手段を利用して、前記係合ピンと前記係合孔との係合状態を解除するように構成したことを特徴とする樹脂製部材同士の組付構造。
【請求項2】
前記傾動手段が、前記第1の樹脂製部材自体を傾けることによって、前記係合ピン自体を、前記係合爪非形成領域又は前記軸部のうち係合爪非形成領域よりも基端側の部位が前記係合孔の周縁に当たって当該周縁を押圧し且つ係合爪非形成領域が前記係合孔から抜け外れる角度まで傾けるものである請求項1記載の樹脂製部材同士の組付構造。
【請求項3】
前記係合ピンを前記係合孔に係合させた状態で、前記係合爪の端部と、前記係合孔の前記弾性変形惹起部とが、同一直線上に並ばないようにしている請求項1又は2記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項4】
前記第1の樹脂製部材が、シェル構造体であり、
当該シェル構造体の外縁部又は外縁部近傍部位に前記係合ピンを一体に設けている請求項1、2又は3記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項5】
前記シェル構造体のコーナー部又はコーナー部近傍部位に前記係合ピンを一体に設けている請求項4記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項6】
前記第1の樹脂製部材が各コーナー部又は各コーナー部近傍部位にそれぞれ前記係合ピンを一体に設けたものであり、
左右巾方向に対向する係合ピンを、前記係合爪形成領域同士が内向きに対向するように設けている請求項1、2、3、4又は5記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項7】
前記第1の樹脂製部材が前記係合ピンを複数備えたものであり、前記第2の樹脂製部材が前記係合ピンと同数の前記係合孔を備えたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【請求項8】
前記第1の樹脂製部材又は前記第2の樹脂製部材の何れか一方がインナーシェルであり、他方がアウターシェルである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の樹脂製部材同士の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図16】
【公開番号】特開2009−233242(P2009−233242A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85548(P2008−85548)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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