樹脂配管の分岐構造およびこの形成方法
【課題】 作業性に優れ、トンネル火災消火用の送水配管等として使用しても耐内圧特性を確保することが可能な樹脂配管の分岐構造等を提供する。
【解決手段】 分岐管体3は、略T字状の部材である。分岐管体3を構成する管体は送水配管5と同様に樹脂製であり、管部9と、管部の長手方向の少なくとも一部に、管部9と所定角度に形成される分岐部10とから構成される。分岐管体3は例えばポリエチレン製である。分岐管体3の外周には、送水配管5と同様に補強層が形成される。分岐管体3の正面図において、管部9に対して分岐部10を延長して重複する領域には、分岐部10の外形と管部9の外形とが三次元的に連続した領域が形成される。この領域には、補強テープ11を全周に渡って隙間なく螺旋巻きすることが困難である。本発明では、この領域における補強テープ11の下層側に補強部材15が設けられる。
【解決手段】 分岐管体3は、略T字状の部材である。分岐管体3を構成する管体は送水配管5と同様に樹脂製であり、管部9と、管部の長手方向の少なくとも一部に、管部9と所定角度に形成される分岐部10とから構成される。分岐管体3は例えばポリエチレン製である。分岐管体3の外周には、送水配管5と同様に補強層が形成される。分岐管体3の正面図において、管部9に対して分岐部10を延長して重複する領域には、分岐部10の外形と管部9の外形とが三次元的に連続した領域が形成される。この領域には、補強テープ11を全周に渡って隙間なく螺旋巻きすることが困難である。本発明では、この領域における補強テープ11の下層側に補強部材15が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トンネル等の消火配管や工場配管等に用いられる樹脂配管の分岐構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、トンネル内部における火災に対して、初期消火用の消火栓がトンネル内部に設置される。図11は、従来のトンネル消火配管構造100を示す概略図であり、図12は縦断面図である。トンネル消火配管構造100は、消火栓113と、消火栓113同士を接続し、各消火栓113に送水可能な送水配管105等から構成される。
【0003】
消火栓113は、トンネル内部において所定間隔で設置される。また、トンネル下部には送水配管105が敷設される。消火栓113同士は、トンネル外部からトンネル全長にわたって設けられる送水配管105で接続される。送水配管105を流れる消火用水は、消火栓113近傍の分岐管体109で分岐され、各消火栓113に送水される。送水配管105には、図示を省略した送水部がトンネル外部に接続されており、所定量の水を送水することができる。
【0004】
消火栓113は、たとえばトンネル内に50m毎に設置される。消火栓113は送水配管105と分岐管体109で接続されている。分岐管体109は、コンクリート製のハンドホール107内部に設置される。
【0005】
このような消火に用いられる消火配管構造(例えば特許文献1、特許文献2)の送水管としては、従来、ダクタイル鋳鉄管等の金属管が使用されてきた。このような金属管は、火災時の熱に対しても十分な耐熱性を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−571号公報
【特許文献2】特開2008−55024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような送水配管は、所定長さの金属管を接続しながらトンネル長手方向に対して設置される。しかしながら、金属管は重量があり、長いトンネル全長にわたって送水配管を設置する作業は、接続部が多く作業工数を要し、コスト、工期も要する。
【0008】
これに対し、送水配管を軽量かつ長尺で対応可能な樹脂製とする方法がある。樹脂製の送水配管とすることで、長手方向の接続箇所を大幅に削減することが可能であるため、接続作業が削減され、継手等の部材も削減できる。また、軽量であるため取り扱い性にも優れ、設置後の地盤変化によって送水配管に力が付与された際にも、ある程度の範囲であれば、配管自体の変形能によってこれを吸収できる。
【0009】
しかしながら、樹脂製の送水配管は、金属管ほどの耐熱性を有しないため、火災時に送水配管自体の強度低下等によって、内圧で送水配管が破れるなどの恐れがある。このため、樹脂製の送水配管の外周には、補強テープが螺旋巻きされ、耐内圧特性を高めるための補強層が形成される。
【0010】
このような補強テープは、直管である管体に対しては、全周にわたって完全に被覆することが容易である。しかし、分岐部においては、その形状のため、通常の螺旋巻きでは、補強テープを分岐管体の外周全面に完全に巻きつけることが困難である。
【0011】
図13は、分岐管体109に補強テープ119を巻き付けた状態を示す図である。図に示すように、分岐管体109は、直管部115と、この略中央に直管部115に対して略垂直に形成される分岐部117とから構成される。なお、直管部115と分岐部117とは、略同一の外径の筒状部材である。このような分岐管体109に補強テープ119を巻き付けると、直管部115と分岐部117との接合部近傍(図中X)の一部に、補強テープ115が巻きつけられず、内部の管体が露出する管体露出部121が形成される恐れがある。
【0012】
すなわち、このような分岐管体109に通常の方法で補強テープ119を巻き付けたのでは、補強テープ115により形成される補強層に隙間が形成される恐れがある。このような隙間が形成されると、管体露出部121の耐内圧特性が十分でなく、たとえば火災時に樹脂管が軟化し、管体露出部121が破損する恐れがある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性に優れ、トンネル火災消火用の送水配管等として使用しても耐内圧特性を確保することが可能な樹脂配管の分岐構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達するために第1の発明は、樹脂配管の分岐構造であって、樹脂配管と、前記樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体と、前記分岐管体の外周に設けられる補強層と、を具備し、前記補強層は、前記管部と前記分岐部との接合部近傍の外面形状に対応した形状に沿って配置され、前記接合部近傍の外面全周に渡って覆う補強部材と、少なくとも前記補強部材が配置される部位以外の前記分岐管体の外周面に巻きつけられる繊維補強テープと、を有し、前記補強部材は、前記補強部材の外周に設けられる保持部材で固定されることを特徴とする樹脂配管の分岐構造である。この発明によれば、分岐部は1個所とは限らず、複数個所でも良い。また、補強部材は管体に1つ取り付けても良いし複数個取り付けることもできる。
【0015】
ここで、管部と分岐部との接合部近傍とは、分岐管体の正面において、管部に対して分岐部を延長して重複する領域の分岐管体の外面形状であって、分岐部の外形と管部の下端部の外形とが三次元的に連続した形状をいう。
【0016】
前記補強部材は、板状部材であり、前記分岐部を挿通可能な孔が形成され、前記孔の対向する縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部が形成され、前記孔に前記分岐部が挿通されて前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着してもよい。
【0017】
前記補強部材は、一対の板状部材であり、前記分岐部に対応する切欠きが形成され、前記切欠きの縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部が形成され、一対の前記板状部材を対向させて前記切欠きによって前記分岐部を挟み込み、前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着してもよい。
【0018】
前記繊維補強テープは、前記補強部材の外周面の一部を覆うように巻き付けられており、前記繊維補強テープが前記保持部材として機能して、前記繊維補強テープによって前記補強部材が固定されてもよい。前記保持部材は、前記補強部材の外周面に設けられるバンド状部材であってもよい。
【0019】
さらに前記補強部材の内面の少なくとも一部に接するように、前記繊維補強テープが前記管部と前記分岐部との接合部近傍に直接巻き付けて設けられてもよい。この場合、前記補強部材の内面において前記繊維補強テープを巻き付けることができない部位には、テープや樹脂フィルムが接着剤で貼り付けられてもよい。
【0020】
このような構造とすることで、分岐管体に直接巻き付けた補強テープによる補強効果に加えて、補強部材で分岐管体の内面に接するように巻き付けられた補強テープを締め付けることができ、分岐管体の分岐部をより強固に補強部材で保持することができる。前記分岐管体には、前記分岐部が同一角度で互いに平行に複数個形成され、一つの前記補強部材によって、複数の前記分岐部に対して一括して配置されてもよい。
【0021】
第1の発明によれば、樹脂製の送水配管および分岐管体の外周に、補強層が設けられるため、例えばトンネル内部の火災の熱による送水配管や分岐管体の強度低下を補強層によって補強し、送水配管や分岐管体が破損することを防止することができる。
【0022】
また、分岐管体は、管部と分岐部とがT字状に接合されて形成されるが、この場合に管部と分岐部との接合部近傍には、繊維補強テープを巻き付けることが困難である。しかし、本発明によれば、従来繊維補強テープを巻き付けることが困難である部位に対して、当該部位の外形に応じた形状を有する補強部材を別途用いるため、分岐管体の全周にわたって補強層を形成することができる。このため、分岐管体の破損等を防止することができる。尚、分岐管体の分岐部は略垂直のT字としたが、必ずしも垂直である必要はなく、斜めのV字状に交わるようにしても良い。また、分岐部の位置は、必ずしも中央である必要はなく、管部の途中であれば、中央からいずれかの側に偏った位置に設定することも可能である。また、特に図示しないが管部に形成された複数個の分岐部が同一角度で互いに平行に形成されていれば、1つの補強部材で、複数の分岐部とその接合部近傍を全周に渡って補強することができる。すなわち、分岐部を挿入する孔や切欠きを複数個所形成し、一つの補強部材を複数の分岐部に同時に挿入して配置すればよい。
【0023】
また、補強部材の外周に繊維補強テープを巻き付けることで、補強部材を分岐管体の外面に保持し、固定することができる。このため、この場合には、別途補強部材を保持するための保持部材が不要である。また、別途補強部材の外周をSUSバンドや耐熱性の高い樹脂バンド状の保持部材で固定することもできる。このように、補強部材の外周をバンドで締め付けて固定することで、補強テープを用いずに、補強部材を保持固定することも可能である。
【0024】
また、補強部材に孔を設け、孔に分岐部を挿通して分岐管体の外周に補強部材を巻き付ければ、補強部材の取り付け性にも優れる。また、管部と分岐部との接合部近傍の外面形状に応じた形状にあらかじめ形成することで、確実に、管部と分岐部との接合部近傍の外周全面を補強部材で覆うことができる。
【0025】
また、補強部材を一対の分離部材に分離し、切欠き部で分岐部を挟むように取り付けることで、あらかじめ管部の外面に沿うように、円弧状に曲げておいても、分岐管体に補強部材を容易に取り付けることができる。
【0026】
さらに前記補強部材の補強部材の内面に接するように、補強テープが分岐管体の分岐部に直接巻き付けて設けることができる。このように、管部と分岐部の接合部に管体露出部を有する状態で、補強テープを分岐管体に直接巻き付けた後、さらに前記補強部材を分岐部に配置し、補強部材の外周に繊維補強テープを巻き付けて固定するか、あるいは別途補強部材の外周をSUSバンド等金属バンドの保持部材で固定する構造とすることもできる。
【0027】
このような構成にすることで、分岐管体に直接巻き付けた補強テープの補強効果に加えて、補強部材を介して、繊維補強テープ又は保持部材で締め付けられるため、分岐管体の耐内圧性をより高めることができる。特に、補強テープを分岐管体に直接巻き付けた場合には、補強部材を管体に直接巻き付けた補強テープの外周に設けるため、保持部材あるいは補強テープで補強部材を分岐管体に確実に保持し、補強部材を締め付けて保持して固定することができる。
【0028】
テープを巻き付けることができない分岐管体の管体露出部にテープや樹脂フィルムが接着剤で貼り付けることで、補強部材により分岐管体の分岐部の全体をほぼ均等に締め付けることができる。
【0029】
以上の他、分岐管体に直接テープを巻着付けた後で、テープを巻き付けることができない分岐管体の管体露出部に合わせた形状にテープや樹脂フィルムを切断して接着剤で貼り付けるなどした後に、分岐管体に補強部材を配置する方が、分岐管体の補強部材が接するほぼ全ての表面にテープを配置することができるため、補強部材により、分岐管体により均一な締め付け効果を及ぼすことができる。
【0030】
また、管部に2つの分岐部を設けて、一つ又は複数の補強部材で補強する分岐構造も必要に応じて設計することができる。たとえば、管部に垂直あるいは同方向に同一の傾斜角で設けられている場合には、2つの分岐部を設けた分岐構造に対して、2つの膨出部を有する補強部材を使用することで、必要とする分岐構造を得ることができるが、分岐部が異なる方向あるいは、異なる角度で設けられた場合には、複数の補強部材を用いる必要がある。つまり、このようにすることで、管体が複数の分岐部を有する場合でも、補強部材による補強構造を構成することが可能にすることができる。
【0031】
第2の発明は、樹脂配管の分岐構造の形成方法であって、樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が少なくとも一つ所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体に対し、板状部材に孔が形成され、前記孔の対向する縁部に膨出部が形成された補強部材を用い、前記膨出部は、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部があらかじめ形成され、前記補強部材の前記孔に前記分岐部を挿通し、前記膨出部を前記分岐部の接続部近傍外面に密着するように、前記補強部材を前記管部の外周に巻きつけ、前記補強部材と、前記管部および前記分岐部の外周面に、繊維補強テープを巻き付けることを特徴とする樹脂配管の分岐構造の形成方法である。
【0032】
第2の発明によれば、管部と分岐部との接続部近傍の三次元的な外面形状に対応した形状の保持部材を用いることで、容易に、かつ確実に分岐管体の耐内圧補強を行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、作業性に優れ、トンネル火災消火用の送水配管等として使用しても耐内圧特性を確保することが可能な樹脂配管の分岐構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】分岐構造1を示す図であり、(a)は立面図、(b)は平面図。
【図2】補強部材15を示す斜視図。
【図3】補強部材15を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図4】補強部材15を分岐管体3に取り付ける工程を示す図。
【図5】補強部材15が分岐管体3に取り付けられた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は(a)のE−E線断面図。
【図6】(a)は補強部材15の外周に補強テープ11を巻き付けた状態を示す正面図、(b)は補強部材15を補強テープ11の外周に取り付けた状態を示す正面図。
【図7】(a)は補強部材15の内面に補強テープ11を巻き付けた状態を示す正面図、(b)は補強部材15の内外面に補強テープ11を巻き付けた状態を示す正面図。
【図8】(a)は分岐管体3の露出部に補強テープ11aを配置した状態を示す正面図、(b)は補強部材15を補強テープ11の外周に取り付けた状態を示す正面図。
【図9】補強部材15aを示す斜視図。
【図10】補強部材15aを分岐管体3に取り付ける工程を示す図。
【図11】トンネル消火配管構造100を示す斜視図。
【図12】トンネル消火配管構造100を示す断面図。
【図13】分岐管体109の外周に補強テープ119を巻き付けた状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、分岐構造1を示す図で、図1(a)は正面図、図1(b)は平面図である。なお、図1に示す分岐構造1は、例えば、図9、図10で示したトンネル消火配管構造等における一部である。
【0036】
送水配管5は、主に、樹脂製の管体の外周に補強層が形成され、補強層の外周に保護層が設けられる。管体は、例えば耐熱性のある架橋ポリエチレン製である。補強層は、例えば、補強帯状体が螺旋状に巻きつけられて形成される。補強帯状体としては、ポリアリレート繊維などの繊維補強テープを用いることができ、また、スーパ繊維製のテープであるクラレ社製のベクトラン(登録商標)を使用することができる。
【0037】
ベクトラン(登録商標)は、難燃性で、耐クリープ性にも優れていて、熱分解温度も450℃以上と高く、火災発生時、分岐部温度が80℃の温度でも、消火配管の耐圧性を保つのに十分な強度(たとえば約1200MPa)を有する。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付けは、例えば、テープ幅方向の端部同士をラップさせるように巻きつけてもよく、または、多少のギャップを設けて巻きつけてもよい。また、ポリアリレート繊維製テープを正逆2重に巻きつけるなど、複数回巻きつけて補強層を形成してもよい。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付け方法は、ポリアリレート繊維製テープの強度や必要とされる耐内圧に応じて適宜決定される。
【0038】
保護層は、樹脂製であり、例えば難燃性ポリオレフィンが用いられる。保護層は、送水配管5の敷設作業時における外傷防止のために用いられる。また、送水配管5を露出配管する場合には、送水配管5として耐候性が要求される。このため、保護層には、カーボンブラックを1%以上配合することが望ましい。
【0039】
送水配管は、EF(Electro Fusion)接続や、突き合わせ接続、機械継手による接続等で、複数本が接続されて長手方向に敷設される。トンネル消火配管においては、前述の通り、所定間隔で消火栓が接続される。消火栓との接続部には、ハンドホール7が設けられ、ハンドホール7の内部で分岐管体3と送水配管5とが接続される。
【0040】
図1(b)に示すように、分岐管体3は、略T字状の部材である。分岐管体3を構成する管体は送水配管5と同様に樹脂製であり、管部9と、管部の長手方向の略中央に、管部9と略垂直に形成される分岐部10とから構成される。分岐管体3の管部9の両側端がハンドホール7の側壁部(側面)を貫通する送水配管5とハンドホール7内部で接続される。
【0041】
分岐管体3は例えばポリエチレン製である。分岐管体3の外周には、送水配管5と同様に補強層が形成される。分岐管体3に形成される補強層は、分岐管体の耐内圧特性を向上するためのものである。なお、分岐管体3の補強層は、前述した送水配管5の補強層と同様のものを使用でき、たとえばポリアリレート繊維の補強テープ11が巻きつけられる。
【0042】
分岐管体3の正面図(図1(b)の分岐構造1の平面視における分岐管体3を、分岐管体3の正面図とする)において、管部9に対して分岐部10を延長して重複する領域には、分岐部10の外形と管部9の外形とが三次元的に連続した領域が形成される。この領域には、補強テープ11を全周に渡って隙間なく螺旋巻きすることが困難である。すなわち、分岐管体3に補強テープ11が巻き付けられた状態では、図11に示したように、補強テープが巻きつけられない部位が生じる。本発明では、この領域における補強テープ11の下層側に補強部材15が設けられる。なお、補強部材15については詳細を後述する。
【0043】
なお、補強層の外周には、断熱層を形成してもよい。断熱層は、トンネル内の温度がハンドホール7内に伝達した際に、分岐管体3の温度上昇を抑制するためのものである。さらに、断熱層の外周には、必要に応じて防水層を設けても良い。防水層は、外部の水が断熱層に侵入することを防止するためのものである。防水層としては、耐熱性の高いポリイミド、フッ化樹脂製等のテープや、架橋ポリエチレンの熱収縮チューブ等を用いることができる。
【0044】
分岐管体3の分岐部10の端部(T字状の分岐部でありトンネル壁面方向に向いて配置される)は、鋼管13と、例えば互いのフランジ同士で接続される。ハンドホール7内部で分岐管体3と接続される鋼管13は、ハンドホール7内でトンネル壁面方向に配設され、トンネル壁面に沿って上方に屈曲されてハンドホール7の外部(トンネル内部)に導出される。なお、トンネル壁面(内壁面)は、ハンドホール7設置部においてやや窪んでおり、ハンドホール7との間に鋼管13が導出可能な空間が形成される。鋼管13は、ハンドホール7の上方の図示を省略した消火栓と接続される。
【0045】
また、トンネル内部とハンドホール7内部との間(隙間や蓋部)には、必要に応じて断熱材が設けられる。断熱材は、トンネル内部側とハンドホール内部側との境界部を通じて、トンネルからの熱がハンドホール7内部に伝達することを抑制する。断熱材はセラミックファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系断熱材や、架橋発泡ポリエチレン、発泡ウレタン等の発泡系断熱材、ケイ酸カルシウム等の無機系断熱材が使用できる。
【0046】
次に、補強部材15について説明する。図2は補強部材15を示す斜視図、図3(a)は補強部材15の平面図、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。補強部材15は、板状部材である。なお、補強部材15の材質は、耐熱性に優れ、高温環境においても、分岐管体3の耐内圧特性を維持するものであればよく、例えば金属製や補強テープと同様の繊維製である。
【0047】
補強部材15は、分岐管体3の管部9の全周に渡って巻き付けることが可能な長さ(図3(a)における横方向を長手方向とする)を有する。補強部材15の略中央には、孔17が形成される。孔17は分岐管体3の分岐部10を挿通可能であり、補強部材15を丸めて分岐管体3(管部9)の外周に巻き付けた状態で、分岐部10の外径に応じた形状となる。
【0048】
孔17の長手方向に対向するそれぞれの縁部には、膨出部19が形成される。膨出部19は、補強部材15の一方の面方向に膨らんだ部位である。なお、孔17および膨出部19は、例えばプレスで一括して形成される。
【0049】
膨出部19の形状は、分岐管体3における、管部9と分岐部10との接合部近傍の外面形状に応じた形状である。すなわち、補強部材15を丸めて分岐管体3(管部9)の外周に巻き付けた状態で、管部9と分岐部10との接合部近傍の外面形状(分岐管体3の正面において、管部9に対して分岐部10を延長して重複する領域の分岐管体3の外面形状であって、分岐部10の外形と管部9下端部の外形とが三次元的に連続した形状)と略同一の形状に形成される。
【0050】
図4は、補強部材15を分岐管体3に取り付ける工程を示す図である。図4(a)に示すように、補強部材15の膨出部19を上面側にした状態で、補強部材15の孔17に分岐部10を挿通する(図中矢印B方向)。この際、補強部材15の孔17近傍を、分岐管体3の管部9の外面に対応するように折り曲げながら、孔17に分岐部10を挿通する。分岐部10の根元まで補強部材15が挿通された後、補強部材15の長手方向が管部9の外面に巻きつけられる(図中矢印C方向)。
【0051】
図5は、補強部材15が分岐管体3に取り付けられた状態を示す図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は図5(a)のD−D線断面図、図5(c)は図5(a)のE−E線断面図である。なお、補強部材15の端部同士にラップ部を形成してもよい。
【0052】
図5に示すように、膨出部19は、分岐部10の下端部であって、管部9と分岐部10との接合部近傍における外面形状と略同一の形状を有している。このため、膨出部19の内面が分岐部10の下端部における外周面に密着し、当該部位を補強部材15で完全に覆うことができる。また、膨出部19以外の部位が管部9の外周面に密着し、当該部位を補強部材15で完全に覆うことができる。したがって、分岐部10と管部9の接続部近傍の外周全面に渡って、補強部材15により被覆することができる。
【0053】
この状態から、図6(a)に示すように、分岐管体3(補強部材15)の外周面に補強テープ11が螺旋巻きされる。この際、前述の通り、分岐管体3の分岐部10と管部9との接合部近傍において、補強テープ11の巻きつけが困難な部位が生じるが、この部位には、補強部材15が設けられる。したがって、分岐管体3の外周面には、少なくとも補強テープ11または補強部材15の少なくとも一方が設けられ、分岐管体3の樹脂部が外面に露出することがない。
【0054】
また、管部9の外周面に巻き付けられた状態の補強部材15を、補強テープ11によって保持することができる。したがって、補強部材15が脱落したり、補強部材15内面と分岐管体3の外面との間に隙間が生じたりすることがない。
【0055】
なお、図6(b)に示すように、補強部材15を、補強テープ11の外周面に形成してもよい。この場合、まず、分岐管体3の外周面に補強テープ11を巻き付け、分岐部10と管部9の接続部近傍に形成される管体露出部を覆うように、補強部材15を設ければよい。この際、補強部材15の内面側に補強テープ11がはみ出さないように、補強テープ11を分岐管体3の外周に巻き付け、補強テープ11の巻きつけられない部位に補強部材15が配置される。
【0056】
但し、この場合には、補強部材15が補強テープ11で保持されないため、補強部材15を分岐管体3に設けた状態で、別途バンド21などの保持部材により補強部材15を保持する必要がある。バンド21は例えばステンレス等の金属製のバンドである。すなわち、補強部材15の外周面に保持部材を設け、補強部材15が分岐管体3から脱落したり、隙間が生じたりしないように保持部材によって補強部材15を保持すればよい。また、保持部材に代えて、接着剤等で補強部材15を保持してもよい。
【0057】
また、図7(a)に示すように、補強部材15を、補強テープ11の外周面に配置し、補強部材15の内面側に補強テープ11がはみ出すようにしてもよい。すなわち、補強部材15の内面の少なくとも一部に接するように、補強テープ11が管部9と分岐部10との接合部近傍に直接巻き付けて設けられていてもよい。
【0058】
また、図7(b)に示すように、補強部材15を、補強テープ11の外周面に配置し、さらに補強部材15の外周面に補強テープ11を巻き付けてもよい。この場合には、補強部材15は、補強テープ11によって保持される。すなわち、補強テープ11が保持部材として機能する。したがって、バンド21等の保持部材が不要である。
【0059】
また、図8に示すように、補強テープ11aを用いてもよい。図8(a)に示すように、補強テープ11aは、分岐管体3の外周面に補強テープ11を巻き付けた際に、管部9と分岐部11との接合部近傍であって、補強テープ11が巻きつけられず、内部の分岐管体3が外表面に露出する部位の形状に合わせて切断される。その後、補強テープ11aは、当該分岐管体3の露出部に貼り付けられる。
【0060】
この状態から、図8(b)に示すように、補強テープ11aおよび補強テープ11外周面に補強部材15を配置し、バンド21等で固定される。このようにすることで、補強部材15の内面において、補強テープ11によって、補強部材15の内面と分岐管体3との間に空隙が生じず、確実に当該部位の補強を行うことができる。なお、補強テープ11aに代えて、他のテープ部材やフィルムを用いてもよい。この場合には、当該テープまたはフィルム部材の厚みが、補強テープ11の厚みと略同一であることが望ましい。
【0061】
なお、トンネル消火配管構造は、例えば以下のように施工される。まず、トンネル側部に送水配管5の設置部として、たとえばコンクリートにより溝を形成する。送水配管5の設置部の所定距離ごとにハンドホールを形成する。ハンドホール7は、例えば、設置される消火栓の設置間隔で設置される。例えば、ハンドホール7は50m毎に設置される。なお、ハンドホール7はコンクリート製である。ハンドホール7は三方を側壁で囲まれており、開口側面がトンネル内壁面側に当接するように設置される。
【0062】
次に、送水配管5をトンネル長手方向に設置する。この場合、例えば送水配管5は内径100mmφであれば150m程度の長尺のものが使用できる。したがって、送水配管5をトンネル長手方向に設置し、ハンドホール設置部で切断すれば良い。このようにすることで、送水配管同士を接続する必要がないので、送水配管5の設置工事が容易で、工事費用の低下が可能になる。
【0063】
ハンドホール7内部には分岐管体3が設置される。分岐管体3は前述の送水配管5と接続される。ハンドホール7内部の分岐管体3には、補強部材15および補強テープ11によって補強層が形成される。送水配管5と分岐管体3とが接続されたのち、送水配管5は河砂等で埋設される。また、分岐部10と鋼管13とが接続される。ハンドホール7上方には消火栓が設置され、鋼管13と接続される。なお、送水配管5の埋設部上方にはコンクリート等の蓋が設けられ、ハンドホール7の上方には鉄製等の蓋が設けられる。以上により、トンネル消火配管構造が構築される。
【0064】
以上説明したように、第1の実施の形態にかかる分岐構造1によれば、分岐管体3の外周に補強テープ11および補強部材15によって補強層が形成されるため、補強層を容易に形成することができる。
【0065】
また、補強テープ11の巻きつけが困難な部位には、補強部材15が用いられる。このため、分岐管体3の外周の全面において、補強部材15または補強テープ11のいずれかで補強層が形成される。このため、分岐管体3の耐内圧特性を確実に確保することができる。
【0066】
特に、補強部材15には、あらかじめ分岐管体3の外面形状に応じた膨出部19が形成されるため、確実に補強部材15を分岐管体3の外面に密着させることができる。
【0067】
次に、第2の実施の形態について説明する。図9は、第2の実施の形態に用いられる補強部材15aを示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態にかかる分岐構造1と同様の機能を奏する構成については、図1〜図8等と同様の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0068】
補強部材15aは、補強部材15と略同様の構成であるが、一対の分離部材16に分離される点で異なる。補強部材15aは、膨出部19が形成される方向と略垂直な方向に分離される。すなわち、補強部材15における孔17は、分離部材16においては、それぞれの分離部材16の端部に形成される切欠き23となる。分離された一対の分離部材16を対向させ、切欠き23同士を突き合わせることで、孔17と同様の形状となる。
【0069】
なお、図9では、分離部材16が平板状の一対の板状部材である例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、板状部材である分離部材16を、あらかじめ管部の外面に対応した円弧状に形成してもよい。
【0070】
図10は、補強部材15aを分岐管体3に取り付ける工程を示す図であり、管部9の管軸方向側から見た図である。図10(a)に示す例では、一対の分離部材16は、管部9の外面形状に対応させて円弧状に形成されたものである。分離部材16はそれぞれの切欠き23で分岐部9を挟み込むように分岐管体3に取り付けられる(図中矢印F方向)。
【0071】
図10(b)に示すように、分離部材16が分岐管体3に完全に取り付けられると、補強部材15a(分離部材16)の膨出部19が、分岐部10と管部9との接合部近傍の外面形状と略一致するため、分岐部10下端の外面を被覆することができるとともに、分岐部10と管部9との接合部近傍における管部9の外周面を被覆することができる。なお、分離部材16の下端同士にラップ部を形成してもよい。
【0072】
この状態で、補強テープ11を外周に巻きつければ分岐構造1と略同様の構造を得ることができる。なお、分岐管体3の外周に補強テープ11を巻き付けた後、補強部材15aを配置する場合には、図示を省略した保持部材(例えば金属バンドなど)や接着剤等によって、補強部材15aを分岐管体3(補強テープ11)の外周面に保持すればよい。
【0073】
第2の実施の形態によれば、補強部材15を用いた場合と同様の効果を得ることができる。また、あらかじめ管部9の外形に応じた円弧状に形成しても、補強部材15aを容易に分岐管体3に取り付けることができる。
【0074】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
また、本発明の分岐構造は、トンネルの消火配管以外に用いることもできる。たとえば、一般の構造物の消火配管や、工場配管、上下水道配管、農水配管などいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1………分岐構造
3………分岐管体
5………送水配管
7………ハンドホール
9…………管部
10………分岐部
11、11a………補強テープ
13………鋼管
15、15a………補強部材
16………分離部材
17………孔
19………膨出部
21………バンド状保持部材
22………トンネル壁面
23………切欠き
100………トンネル消火配管構造
103………トンネル
105………送水管
107………ハンドホール
109………分岐部
113………消火栓
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トンネル等の消火配管や工場配管等に用いられる樹脂配管の分岐構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、トンネル内部における火災に対して、初期消火用の消火栓がトンネル内部に設置される。図11は、従来のトンネル消火配管構造100を示す概略図であり、図12は縦断面図である。トンネル消火配管構造100は、消火栓113と、消火栓113同士を接続し、各消火栓113に送水可能な送水配管105等から構成される。
【0003】
消火栓113は、トンネル内部において所定間隔で設置される。また、トンネル下部には送水配管105が敷設される。消火栓113同士は、トンネル外部からトンネル全長にわたって設けられる送水配管105で接続される。送水配管105を流れる消火用水は、消火栓113近傍の分岐管体109で分岐され、各消火栓113に送水される。送水配管105には、図示を省略した送水部がトンネル外部に接続されており、所定量の水を送水することができる。
【0004】
消火栓113は、たとえばトンネル内に50m毎に設置される。消火栓113は送水配管105と分岐管体109で接続されている。分岐管体109は、コンクリート製のハンドホール107内部に設置される。
【0005】
このような消火に用いられる消火配管構造(例えば特許文献1、特許文献2)の送水管としては、従来、ダクタイル鋳鉄管等の金属管が使用されてきた。このような金属管は、火災時の熱に対しても十分な耐熱性を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−571号公報
【特許文献2】特開2008−55024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような送水配管は、所定長さの金属管を接続しながらトンネル長手方向に対して設置される。しかしながら、金属管は重量があり、長いトンネル全長にわたって送水配管を設置する作業は、接続部が多く作業工数を要し、コスト、工期も要する。
【0008】
これに対し、送水配管を軽量かつ長尺で対応可能な樹脂製とする方法がある。樹脂製の送水配管とすることで、長手方向の接続箇所を大幅に削減することが可能であるため、接続作業が削減され、継手等の部材も削減できる。また、軽量であるため取り扱い性にも優れ、設置後の地盤変化によって送水配管に力が付与された際にも、ある程度の範囲であれば、配管自体の変形能によってこれを吸収できる。
【0009】
しかしながら、樹脂製の送水配管は、金属管ほどの耐熱性を有しないため、火災時に送水配管自体の強度低下等によって、内圧で送水配管が破れるなどの恐れがある。このため、樹脂製の送水配管の外周には、補強テープが螺旋巻きされ、耐内圧特性を高めるための補強層が形成される。
【0010】
このような補強テープは、直管である管体に対しては、全周にわたって完全に被覆することが容易である。しかし、分岐部においては、その形状のため、通常の螺旋巻きでは、補強テープを分岐管体の外周全面に完全に巻きつけることが困難である。
【0011】
図13は、分岐管体109に補強テープ119を巻き付けた状態を示す図である。図に示すように、分岐管体109は、直管部115と、この略中央に直管部115に対して略垂直に形成される分岐部117とから構成される。なお、直管部115と分岐部117とは、略同一の外径の筒状部材である。このような分岐管体109に補強テープ119を巻き付けると、直管部115と分岐部117との接合部近傍(図中X)の一部に、補強テープ115が巻きつけられず、内部の管体が露出する管体露出部121が形成される恐れがある。
【0012】
すなわち、このような分岐管体109に通常の方法で補強テープ119を巻き付けたのでは、補強テープ115により形成される補強層に隙間が形成される恐れがある。このような隙間が形成されると、管体露出部121の耐内圧特性が十分でなく、たとえば火災時に樹脂管が軟化し、管体露出部121が破損する恐れがある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性に優れ、トンネル火災消火用の送水配管等として使用しても耐内圧特性を確保することが可能な樹脂配管の分岐構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達するために第1の発明は、樹脂配管の分岐構造であって、樹脂配管と、前記樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体と、前記分岐管体の外周に設けられる補強層と、を具備し、前記補強層は、前記管部と前記分岐部との接合部近傍の外面形状に対応した形状に沿って配置され、前記接合部近傍の外面全周に渡って覆う補強部材と、少なくとも前記補強部材が配置される部位以外の前記分岐管体の外周面に巻きつけられる繊維補強テープと、を有し、前記補強部材は、前記補強部材の外周に設けられる保持部材で固定されることを特徴とする樹脂配管の分岐構造である。この発明によれば、分岐部は1個所とは限らず、複数個所でも良い。また、補強部材は管体に1つ取り付けても良いし複数個取り付けることもできる。
【0015】
ここで、管部と分岐部との接合部近傍とは、分岐管体の正面において、管部に対して分岐部を延長して重複する領域の分岐管体の外面形状であって、分岐部の外形と管部の下端部の外形とが三次元的に連続した形状をいう。
【0016】
前記補強部材は、板状部材であり、前記分岐部を挿通可能な孔が形成され、前記孔の対向する縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部が形成され、前記孔に前記分岐部が挿通されて前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着してもよい。
【0017】
前記補強部材は、一対の板状部材であり、前記分岐部に対応する切欠きが形成され、前記切欠きの縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部が形成され、一対の前記板状部材を対向させて前記切欠きによって前記分岐部を挟み込み、前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着してもよい。
【0018】
前記繊維補強テープは、前記補強部材の外周面の一部を覆うように巻き付けられており、前記繊維補強テープが前記保持部材として機能して、前記繊維補強テープによって前記補強部材が固定されてもよい。前記保持部材は、前記補強部材の外周面に設けられるバンド状部材であってもよい。
【0019】
さらに前記補強部材の内面の少なくとも一部に接するように、前記繊維補強テープが前記管部と前記分岐部との接合部近傍に直接巻き付けて設けられてもよい。この場合、前記補強部材の内面において前記繊維補強テープを巻き付けることができない部位には、テープや樹脂フィルムが接着剤で貼り付けられてもよい。
【0020】
このような構造とすることで、分岐管体に直接巻き付けた補強テープによる補強効果に加えて、補強部材で分岐管体の内面に接するように巻き付けられた補強テープを締め付けることができ、分岐管体の分岐部をより強固に補強部材で保持することができる。前記分岐管体には、前記分岐部が同一角度で互いに平行に複数個形成され、一つの前記補強部材によって、複数の前記分岐部に対して一括して配置されてもよい。
【0021】
第1の発明によれば、樹脂製の送水配管および分岐管体の外周に、補強層が設けられるため、例えばトンネル内部の火災の熱による送水配管や分岐管体の強度低下を補強層によって補強し、送水配管や分岐管体が破損することを防止することができる。
【0022】
また、分岐管体は、管部と分岐部とがT字状に接合されて形成されるが、この場合に管部と分岐部との接合部近傍には、繊維補強テープを巻き付けることが困難である。しかし、本発明によれば、従来繊維補強テープを巻き付けることが困難である部位に対して、当該部位の外形に応じた形状を有する補強部材を別途用いるため、分岐管体の全周にわたって補強層を形成することができる。このため、分岐管体の破損等を防止することができる。尚、分岐管体の分岐部は略垂直のT字としたが、必ずしも垂直である必要はなく、斜めのV字状に交わるようにしても良い。また、分岐部の位置は、必ずしも中央である必要はなく、管部の途中であれば、中央からいずれかの側に偏った位置に設定することも可能である。また、特に図示しないが管部に形成された複数個の分岐部が同一角度で互いに平行に形成されていれば、1つの補強部材で、複数の分岐部とその接合部近傍を全周に渡って補強することができる。すなわち、分岐部を挿入する孔や切欠きを複数個所形成し、一つの補強部材を複数の分岐部に同時に挿入して配置すればよい。
【0023】
また、補強部材の外周に繊維補強テープを巻き付けることで、補強部材を分岐管体の外面に保持し、固定することができる。このため、この場合には、別途補強部材を保持するための保持部材が不要である。また、別途補強部材の外周をSUSバンドや耐熱性の高い樹脂バンド状の保持部材で固定することもできる。このように、補強部材の外周をバンドで締め付けて固定することで、補強テープを用いずに、補強部材を保持固定することも可能である。
【0024】
また、補強部材に孔を設け、孔に分岐部を挿通して分岐管体の外周に補強部材を巻き付ければ、補強部材の取り付け性にも優れる。また、管部と分岐部との接合部近傍の外面形状に応じた形状にあらかじめ形成することで、確実に、管部と分岐部との接合部近傍の外周全面を補強部材で覆うことができる。
【0025】
また、補強部材を一対の分離部材に分離し、切欠き部で分岐部を挟むように取り付けることで、あらかじめ管部の外面に沿うように、円弧状に曲げておいても、分岐管体に補強部材を容易に取り付けることができる。
【0026】
さらに前記補強部材の補強部材の内面に接するように、補強テープが分岐管体の分岐部に直接巻き付けて設けることができる。このように、管部と分岐部の接合部に管体露出部を有する状態で、補強テープを分岐管体に直接巻き付けた後、さらに前記補強部材を分岐部に配置し、補強部材の外周に繊維補強テープを巻き付けて固定するか、あるいは別途補強部材の外周をSUSバンド等金属バンドの保持部材で固定する構造とすることもできる。
【0027】
このような構成にすることで、分岐管体に直接巻き付けた補強テープの補強効果に加えて、補強部材を介して、繊維補強テープ又は保持部材で締め付けられるため、分岐管体の耐内圧性をより高めることができる。特に、補強テープを分岐管体に直接巻き付けた場合には、補強部材を管体に直接巻き付けた補強テープの外周に設けるため、保持部材あるいは補強テープで補強部材を分岐管体に確実に保持し、補強部材を締め付けて保持して固定することができる。
【0028】
テープを巻き付けることができない分岐管体の管体露出部にテープや樹脂フィルムが接着剤で貼り付けることで、補強部材により分岐管体の分岐部の全体をほぼ均等に締め付けることができる。
【0029】
以上の他、分岐管体に直接テープを巻着付けた後で、テープを巻き付けることができない分岐管体の管体露出部に合わせた形状にテープや樹脂フィルムを切断して接着剤で貼り付けるなどした後に、分岐管体に補強部材を配置する方が、分岐管体の補強部材が接するほぼ全ての表面にテープを配置することができるため、補強部材により、分岐管体により均一な締め付け効果を及ぼすことができる。
【0030】
また、管部に2つの分岐部を設けて、一つ又は複数の補強部材で補強する分岐構造も必要に応じて設計することができる。たとえば、管部に垂直あるいは同方向に同一の傾斜角で設けられている場合には、2つの分岐部を設けた分岐構造に対して、2つの膨出部を有する補強部材を使用することで、必要とする分岐構造を得ることができるが、分岐部が異なる方向あるいは、異なる角度で設けられた場合には、複数の補強部材を用いる必要がある。つまり、このようにすることで、管体が複数の分岐部を有する場合でも、補強部材による補強構造を構成することが可能にすることができる。
【0031】
第2の発明は、樹脂配管の分岐構造の形成方法であって、樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が少なくとも一つ所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体に対し、板状部材に孔が形成され、前記孔の対向する縁部に膨出部が形成された補強部材を用い、前記膨出部は、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部があらかじめ形成され、前記補強部材の前記孔に前記分岐部を挿通し、前記膨出部を前記分岐部の接続部近傍外面に密着するように、前記補強部材を前記管部の外周に巻きつけ、前記補強部材と、前記管部および前記分岐部の外周面に、繊維補強テープを巻き付けることを特徴とする樹脂配管の分岐構造の形成方法である。
【0032】
第2の発明によれば、管部と分岐部との接続部近傍の三次元的な外面形状に対応した形状の保持部材を用いることで、容易に、かつ確実に分岐管体の耐内圧補強を行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、作業性に優れ、トンネル火災消火用の送水配管等として使用しても耐内圧特性を確保することが可能な樹脂配管の分岐構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】分岐構造1を示す図であり、(a)は立面図、(b)は平面図。
【図2】補強部材15を示す斜視図。
【図3】補強部材15を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図4】補強部材15を分岐管体3に取り付ける工程を示す図。
【図5】補強部材15が分岐管体3に取り付けられた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は(a)のE−E線断面図。
【図6】(a)は補強部材15の外周に補強テープ11を巻き付けた状態を示す正面図、(b)は補強部材15を補強テープ11の外周に取り付けた状態を示す正面図。
【図7】(a)は補強部材15の内面に補強テープ11を巻き付けた状態を示す正面図、(b)は補強部材15の内外面に補強テープ11を巻き付けた状態を示す正面図。
【図8】(a)は分岐管体3の露出部に補強テープ11aを配置した状態を示す正面図、(b)は補強部材15を補強テープ11の外周に取り付けた状態を示す正面図。
【図9】補強部材15aを示す斜視図。
【図10】補強部材15aを分岐管体3に取り付ける工程を示す図。
【図11】トンネル消火配管構造100を示す斜視図。
【図12】トンネル消火配管構造100を示す断面図。
【図13】分岐管体109の外周に補強テープ119を巻き付けた状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、分岐構造1を示す図で、図1(a)は正面図、図1(b)は平面図である。なお、図1に示す分岐構造1は、例えば、図9、図10で示したトンネル消火配管構造等における一部である。
【0036】
送水配管5は、主に、樹脂製の管体の外周に補強層が形成され、補強層の外周に保護層が設けられる。管体は、例えば耐熱性のある架橋ポリエチレン製である。補強層は、例えば、補強帯状体が螺旋状に巻きつけられて形成される。補強帯状体としては、ポリアリレート繊維などの繊維補強テープを用いることができ、また、スーパ繊維製のテープであるクラレ社製のベクトラン(登録商標)を使用することができる。
【0037】
ベクトラン(登録商標)は、難燃性で、耐クリープ性にも優れていて、熱分解温度も450℃以上と高く、火災発生時、分岐部温度が80℃の温度でも、消火配管の耐圧性を保つのに十分な強度(たとえば約1200MPa)を有する。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付けは、例えば、テープ幅方向の端部同士をラップさせるように巻きつけてもよく、または、多少のギャップを設けて巻きつけてもよい。また、ポリアリレート繊維製テープを正逆2重に巻きつけるなど、複数回巻きつけて補強層を形成してもよい。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付け方法は、ポリアリレート繊維製テープの強度や必要とされる耐内圧に応じて適宜決定される。
【0038】
保護層は、樹脂製であり、例えば難燃性ポリオレフィンが用いられる。保護層は、送水配管5の敷設作業時における外傷防止のために用いられる。また、送水配管5を露出配管する場合には、送水配管5として耐候性が要求される。このため、保護層には、カーボンブラックを1%以上配合することが望ましい。
【0039】
送水配管は、EF(Electro Fusion)接続や、突き合わせ接続、機械継手による接続等で、複数本が接続されて長手方向に敷設される。トンネル消火配管においては、前述の通り、所定間隔で消火栓が接続される。消火栓との接続部には、ハンドホール7が設けられ、ハンドホール7の内部で分岐管体3と送水配管5とが接続される。
【0040】
図1(b)に示すように、分岐管体3は、略T字状の部材である。分岐管体3を構成する管体は送水配管5と同様に樹脂製であり、管部9と、管部の長手方向の略中央に、管部9と略垂直に形成される分岐部10とから構成される。分岐管体3の管部9の両側端がハンドホール7の側壁部(側面)を貫通する送水配管5とハンドホール7内部で接続される。
【0041】
分岐管体3は例えばポリエチレン製である。分岐管体3の外周には、送水配管5と同様に補強層が形成される。分岐管体3に形成される補強層は、分岐管体の耐内圧特性を向上するためのものである。なお、分岐管体3の補強層は、前述した送水配管5の補強層と同様のものを使用でき、たとえばポリアリレート繊維の補強テープ11が巻きつけられる。
【0042】
分岐管体3の正面図(図1(b)の分岐構造1の平面視における分岐管体3を、分岐管体3の正面図とする)において、管部9に対して分岐部10を延長して重複する領域には、分岐部10の外形と管部9の外形とが三次元的に連続した領域が形成される。この領域には、補強テープ11を全周に渡って隙間なく螺旋巻きすることが困難である。すなわち、分岐管体3に補強テープ11が巻き付けられた状態では、図11に示したように、補強テープが巻きつけられない部位が生じる。本発明では、この領域における補強テープ11の下層側に補強部材15が設けられる。なお、補強部材15については詳細を後述する。
【0043】
なお、補強層の外周には、断熱層を形成してもよい。断熱層は、トンネル内の温度がハンドホール7内に伝達した際に、分岐管体3の温度上昇を抑制するためのものである。さらに、断熱層の外周には、必要に応じて防水層を設けても良い。防水層は、外部の水が断熱層に侵入することを防止するためのものである。防水層としては、耐熱性の高いポリイミド、フッ化樹脂製等のテープや、架橋ポリエチレンの熱収縮チューブ等を用いることができる。
【0044】
分岐管体3の分岐部10の端部(T字状の分岐部でありトンネル壁面方向に向いて配置される)は、鋼管13と、例えば互いのフランジ同士で接続される。ハンドホール7内部で分岐管体3と接続される鋼管13は、ハンドホール7内でトンネル壁面方向に配設され、トンネル壁面に沿って上方に屈曲されてハンドホール7の外部(トンネル内部)に導出される。なお、トンネル壁面(内壁面)は、ハンドホール7設置部においてやや窪んでおり、ハンドホール7との間に鋼管13が導出可能な空間が形成される。鋼管13は、ハンドホール7の上方の図示を省略した消火栓と接続される。
【0045】
また、トンネル内部とハンドホール7内部との間(隙間や蓋部)には、必要に応じて断熱材が設けられる。断熱材は、トンネル内部側とハンドホール内部側との境界部を通じて、トンネルからの熱がハンドホール7内部に伝達することを抑制する。断熱材はセラミックファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系断熱材や、架橋発泡ポリエチレン、発泡ウレタン等の発泡系断熱材、ケイ酸カルシウム等の無機系断熱材が使用できる。
【0046】
次に、補強部材15について説明する。図2は補強部材15を示す斜視図、図3(a)は補強部材15の平面図、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。補強部材15は、板状部材である。なお、補強部材15の材質は、耐熱性に優れ、高温環境においても、分岐管体3の耐内圧特性を維持するものであればよく、例えば金属製や補強テープと同様の繊維製である。
【0047】
補強部材15は、分岐管体3の管部9の全周に渡って巻き付けることが可能な長さ(図3(a)における横方向を長手方向とする)を有する。補強部材15の略中央には、孔17が形成される。孔17は分岐管体3の分岐部10を挿通可能であり、補強部材15を丸めて分岐管体3(管部9)の外周に巻き付けた状態で、分岐部10の外径に応じた形状となる。
【0048】
孔17の長手方向に対向するそれぞれの縁部には、膨出部19が形成される。膨出部19は、補強部材15の一方の面方向に膨らんだ部位である。なお、孔17および膨出部19は、例えばプレスで一括して形成される。
【0049】
膨出部19の形状は、分岐管体3における、管部9と分岐部10との接合部近傍の外面形状に応じた形状である。すなわち、補強部材15を丸めて分岐管体3(管部9)の外周に巻き付けた状態で、管部9と分岐部10との接合部近傍の外面形状(分岐管体3の正面において、管部9に対して分岐部10を延長して重複する領域の分岐管体3の外面形状であって、分岐部10の外形と管部9下端部の外形とが三次元的に連続した形状)と略同一の形状に形成される。
【0050】
図4は、補強部材15を分岐管体3に取り付ける工程を示す図である。図4(a)に示すように、補強部材15の膨出部19を上面側にした状態で、補強部材15の孔17に分岐部10を挿通する(図中矢印B方向)。この際、補強部材15の孔17近傍を、分岐管体3の管部9の外面に対応するように折り曲げながら、孔17に分岐部10を挿通する。分岐部10の根元まで補強部材15が挿通された後、補強部材15の長手方向が管部9の外面に巻きつけられる(図中矢印C方向)。
【0051】
図5は、補強部材15が分岐管体3に取り付けられた状態を示す図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は図5(a)のD−D線断面図、図5(c)は図5(a)のE−E線断面図である。なお、補強部材15の端部同士にラップ部を形成してもよい。
【0052】
図5に示すように、膨出部19は、分岐部10の下端部であって、管部9と分岐部10との接合部近傍における外面形状と略同一の形状を有している。このため、膨出部19の内面が分岐部10の下端部における外周面に密着し、当該部位を補強部材15で完全に覆うことができる。また、膨出部19以外の部位が管部9の外周面に密着し、当該部位を補強部材15で完全に覆うことができる。したがって、分岐部10と管部9の接続部近傍の外周全面に渡って、補強部材15により被覆することができる。
【0053】
この状態から、図6(a)に示すように、分岐管体3(補強部材15)の外周面に補強テープ11が螺旋巻きされる。この際、前述の通り、分岐管体3の分岐部10と管部9との接合部近傍において、補強テープ11の巻きつけが困難な部位が生じるが、この部位には、補強部材15が設けられる。したがって、分岐管体3の外周面には、少なくとも補強テープ11または補強部材15の少なくとも一方が設けられ、分岐管体3の樹脂部が外面に露出することがない。
【0054】
また、管部9の外周面に巻き付けられた状態の補強部材15を、補強テープ11によって保持することができる。したがって、補強部材15が脱落したり、補強部材15内面と分岐管体3の外面との間に隙間が生じたりすることがない。
【0055】
なお、図6(b)に示すように、補強部材15を、補強テープ11の外周面に形成してもよい。この場合、まず、分岐管体3の外周面に補強テープ11を巻き付け、分岐部10と管部9の接続部近傍に形成される管体露出部を覆うように、補強部材15を設ければよい。この際、補強部材15の内面側に補強テープ11がはみ出さないように、補強テープ11を分岐管体3の外周に巻き付け、補強テープ11の巻きつけられない部位に補強部材15が配置される。
【0056】
但し、この場合には、補強部材15が補強テープ11で保持されないため、補強部材15を分岐管体3に設けた状態で、別途バンド21などの保持部材により補強部材15を保持する必要がある。バンド21は例えばステンレス等の金属製のバンドである。すなわち、補強部材15の外周面に保持部材を設け、補強部材15が分岐管体3から脱落したり、隙間が生じたりしないように保持部材によって補強部材15を保持すればよい。また、保持部材に代えて、接着剤等で補強部材15を保持してもよい。
【0057】
また、図7(a)に示すように、補強部材15を、補強テープ11の外周面に配置し、補強部材15の内面側に補強テープ11がはみ出すようにしてもよい。すなわち、補強部材15の内面の少なくとも一部に接するように、補強テープ11が管部9と分岐部10との接合部近傍に直接巻き付けて設けられていてもよい。
【0058】
また、図7(b)に示すように、補強部材15を、補強テープ11の外周面に配置し、さらに補強部材15の外周面に補強テープ11を巻き付けてもよい。この場合には、補強部材15は、補強テープ11によって保持される。すなわち、補強テープ11が保持部材として機能する。したがって、バンド21等の保持部材が不要である。
【0059】
また、図8に示すように、補強テープ11aを用いてもよい。図8(a)に示すように、補強テープ11aは、分岐管体3の外周面に補強テープ11を巻き付けた際に、管部9と分岐部11との接合部近傍であって、補強テープ11が巻きつけられず、内部の分岐管体3が外表面に露出する部位の形状に合わせて切断される。その後、補強テープ11aは、当該分岐管体3の露出部に貼り付けられる。
【0060】
この状態から、図8(b)に示すように、補強テープ11aおよび補強テープ11外周面に補強部材15を配置し、バンド21等で固定される。このようにすることで、補強部材15の内面において、補強テープ11によって、補強部材15の内面と分岐管体3との間に空隙が生じず、確実に当該部位の補強を行うことができる。なお、補強テープ11aに代えて、他のテープ部材やフィルムを用いてもよい。この場合には、当該テープまたはフィルム部材の厚みが、補強テープ11の厚みと略同一であることが望ましい。
【0061】
なお、トンネル消火配管構造は、例えば以下のように施工される。まず、トンネル側部に送水配管5の設置部として、たとえばコンクリートにより溝を形成する。送水配管5の設置部の所定距離ごとにハンドホールを形成する。ハンドホール7は、例えば、設置される消火栓の設置間隔で設置される。例えば、ハンドホール7は50m毎に設置される。なお、ハンドホール7はコンクリート製である。ハンドホール7は三方を側壁で囲まれており、開口側面がトンネル内壁面側に当接するように設置される。
【0062】
次に、送水配管5をトンネル長手方向に設置する。この場合、例えば送水配管5は内径100mmφであれば150m程度の長尺のものが使用できる。したがって、送水配管5をトンネル長手方向に設置し、ハンドホール設置部で切断すれば良い。このようにすることで、送水配管同士を接続する必要がないので、送水配管5の設置工事が容易で、工事費用の低下が可能になる。
【0063】
ハンドホール7内部には分岐管体3が設置される。分岐管体3は前述の送水配管5と接続される。ハンドホール7内部の分岐管体3には、補強部材15および補強テープ11によって補強層が形成される。送水配管5と分岐管体3とが接続されたのち、送水配管5は河砂等で埋設される。また、分岐部10と鋼管13とが接続される。ハンドホール7上方には消火栓が設置され、鋼管13と接続される。なお、送水配管5の埋設部上方にはコンクリート等の蓋が設けられ、ハンドホール7の上方には鉄製等の蓋が設けられる。以上により、トンネル消火配管構造が構築される。
【0064】
以上説明したように、第1の実施の形態にかかる分岐構造1によれば、分岐管体3の外周に補強テープ11および補強部材15によって補強層が形成されるため、補強層を容易に形成することができる。
【0065】
また、補強テープ11の巻きつけが困難な部位には、補強部材15が用いられる。このため、分岐管体3の外周の全面において、補強部材15または補強テープ11のいずれかで補強層が形成される。このため、分岐管体3の耐内圧特性を確実に確保することができる。
【0066】
特に、補強部材15には、あらかじめ分岐管体3の外面形状に応じた膨出部19が形成されるため、確実に補強部材15を分岐管体3の外面に密着させることができる。
【0067】
次に、第2の実施の形態について説明する。図9は、第2の実施の形態に用いられる補強部材15aを示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態にかかる分岐構造1と同様の機能を奏する構成については、図1〜図8等と同様の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0068】
補強部材15aは、補強部材15と略同様の構成であるが、一対の分離部材16に分離される点で異なる。補強部材15aは、膨出部19が形成される方向と略垂直な方向に分離される。すなわち、補強部材15における孔17は、分離部材16においては、それぞれの分離部材16の端部に形成される切欠き23となる。分離された一対の分離部材16を対向させ、切欠き23同士を突き合わせることで、孔17と同様の形状となる。
【0069】
なお、図9では、分離部材16が平板状の一対の板状部材である例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、板状部材である分離部材16を、あらかじめ管部の外面に対応した円弧状に形成してもよい。
【0070】
図10は、補強部材15aを分岐管体3に取り付ける工程を示す図であり、管部9の管軸方向側から見た図である。図10(a)に示す例では、一対の分離部材16は、管部9の外面形状に対応させて円弧状に形成されたものである。分離部材16はそれぞれの切欠き23で分岐部9を挟み込むように分岐管体3に取り付けられる(図中矢印F方向)。
【0071】
図10(b)に示すように、分離部材16が分岐管体3に完全に取り付けられると、補強部材15a(分離部材16)の膨出部19が、分岐部10と管部9との接合部近傍の外面形状と略一致するため、分岐部10下端の外面を被覆することができるとともに、分岐部10と管部9との接合部近傍における管部9の外周面を被覆することができる。なお、分離部材16の下端同士にラップ部を形成してもよい。
【0072】
この状態で、補強テープ11を外周に巻きつければ分岐構造1と略同様の構造を得ることができる。なお、分岐管体3の外周に補強テープ11を巻き付けた後、補強部材15aを配置する場合には、図示を省略した保持部材(例えば金属バンドなど)や接着剤等によって、補強部材15aを分岐管体3(補強テープ11)の外周面に保持すればよい。
【0073】
第2の実施の形態によれば、補強部材15を用いた場合と同様の効果を得ることができる。また、あらかじめ管部9の外形に応じた円弧状に形成しても、補強部材15aを容易に分岐管体3に取り付けることができる。
【0074】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
また、本発明の分岐構造は、トンネルの消火配管以外に用いることもできる。たとえば、一般の構造物の消火配管や、工場配管、上下水道配管、農水配管などいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1………分岐構造
3………分岐管体
5………送水配管
7………ハンドホール
9…………管部
10………分岐部
11、11a………補強テープ
13………鋼管
15、15a………補強部材
16………分離部材
17………孔
19………膨出部
21………バンド状保持部材
22………トンネル壁面
23………切欠き
100………トンネル消火配管構造
103………トンネル
105………送水管
107………ハンドホール
109………分岐部
113………消火栓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂配管の分岐構造であって、
樹脂配管と、
前記樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体と、
前記分岐管体の外周に設けられる補強層と、を具備し、
前記補強層は、前記管部と前記分岐部との接合部近傍の外面形状に対応した形状に沿って配置され、前記接合部近傍の外面全周に渡って覆う補強部材と、少なくとも前記補強部材が配置される部位以外の前記分岐管体の外周面に巻きつけられる繊維補強テープと、を有し、
前記補強部材は、前記補強部材の外周に設けられる保持部材で固定されることを特徴とする樹脂配管の分岐構造。
【請求項2】
前記補強部材は、板状部材であり、前記分岐部が挿通可能な孔が形成され、前記孔の対向する縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部があらかじめ形成され、前記孔に前記分岐部が挿通されて前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着することを特徴とする請求項1に記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項3】
前記補強部材は、一対の板状部材であり、前記分岐部に対応する切欠きが形成され、前記切欠きの縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部が形成され、一対の前記板状部材を対向させて前記切欠きによって前記分岐部を挟み込み、前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項4】
前記繊維補強テープは、前記補強部材の外周面の一部を覆うように巻き付けられており、前記繊維補強テープが前記保持部材として機能して、前記繊維補強テープによって前記補強部材が固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項5】
前記保持部材は、前記補強部材の外周面に設けられるバンド状部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項6】
さらに前記補強部材の内面の少なくとも一部に接するように、前記繊維補強テープが前記管部と前記分岐部との接合部近傍に直接巻き付けて設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項7】
前記補強部材の内面において前記繊維補強テープを巻き付けることができない部位には、テープまたは樹脂フィルムが接着剤で貼り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項8】
前記分岐管体には、前記分岐部が同一角度で互いに平行に複数個形成され、一つの前記補強部材が、複数の前記分岐部に対して一括して配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項9】
樹脂配管の分岐構造の形成方法であって、
樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が少なくとも一つ所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体に対し、
板状部材に孔が形成され、前記孔の対向する縁部に膨出部が形成された補強部材を用い、
前記膨出部は、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部があらかじめ形成され、
前記補強部材の前記孔に前記分岐部を挿通し、
前記膨出部を前記分岐部の接続部近傍外面に密着するように、前記補強部材を前記管部の外周に巻きつけ、
前記補強部材と、前記管部および前記分岐部の外周面に、繊維補強テープを巻き付けることを特徴とする樹脂配管の分岐構造の形成方法。
【請求項1】
樹脂配管の分岐構造であって、
樹脂配管と、
前記樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体と、
前記分岐管体の外周に設けられる補強層と、を具備し、
前記補強層は、前記管部と前記分岐部との接合部近傍の外面形状に対応した形状に沿って配置され、前記接合部近傍の外面全周に渡って覆う補強部材と、少なくとも前記補強部材が配置される部位以外の前記分岐管体の外周面に巻きつけられる繊維補強テープと、を有し、
前記補強部材は、前記補強部材の外周に設けられる保持部材で固定されることを特徴とする樹脂配管の分岐構造。
【請求項2】
前記補強部材は、板状部材であり、前記分岐部が挿通可能な孔が形成され、前記孔の対向する縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部があらかじめ形成され、前記孔に前記分岐部が挿通されて前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着することを特徴とする請求項1に記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項3】
前記補強部材は、一対の板状部材であり、前記分岐部に対応する切欠きが形成され、前記切欠きの縁部に、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部が形成され、一対の前記板状部材を対向させて前記切欠きによって前記分岐部を挟み込み、前記補強部材が前記管部の外周に巻きつけられ、前記膨出部が、前記分岐部の下端部外面に密着することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項4】
前記繊維補強テープは、前記補強部材の外周面の一部を覆うように巻き付けられており、前記繊維補強テープが前記保持部材として機能して、前記繊維補強テープによって前記補強部材が固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項5】
前記保持部材は、前記補強部材の外周面に設けられるバンド状部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項6】
さらに前記補強部材の内面の少なくとも一部に接するように、前記繊維補強テープが前記管部と前記分岐部との接合部近傍に直接巻き付けて設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項7】
前記補強部材の内面において前記繊維補強テープを巻き付けることができない部位には、テープまたは樹脂フィルムが接着剤で貼り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項8】
前記分岐管体には、前記分岐部が同一角度で互いに平行に複数個形成され、一つの前記補強部材が、複数の前記分岐部に対して一括して配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の樹脂配管の分岐構造。
【請求項9】
樹脂配管の分岐構造の形成方法であって、
樹脂配管と接続され、管部の少なくとも一部に分岐部が少なくとも一つ所定角度で接合されて構成される樹脂製の分岐管体に対し、
板状部材に孔が形成され、前記孔の対向する縁部に膨出部が形成された補強部材を用い、
前記膨出部は、前記分岐部と前記管部との接合部の外面形状に対応する膨出部があらかじめ形成され、
前記補強部材の前記孔に前記分岐部を挿通し、
前記膨出部を前記分岐部の接続部近傍外面に密着するように、前記補強部材を前記管部の外周に巻きつけ、
前記補強部材と、前記管部および前記分岐部の外周面に、繊維補強テープを巻き付けることを特徴とする樹脂配管の分岐構造の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−2489(P2013−2489A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131848(P2011−131848)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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