説明

橋梁における樹脂配管の敷設構造および樹脂配管の応力緩和方法

【課題】 伸縮管や伸縮継ぎ手を用いることなく、橋梁に対して樹脂配管を適用可能な樹脂配管の敷設構造等を提供する。
【解決手段】 橋梁3は複数の橋桁および橋脚から構成される。橋梁3の橋桁同士の間には、伸縮吸収機構5が設けられる。伸縮吸収機構5は、例えば、櫛形の金属部材で構成され、互いに噛み合うように構成される。伸縮吸収機構5の近傍では、支持部であるガイド機構9が設けられる。ガイド機構11は、例えばローラ13で構成される。ローラ13は、樹脂配管7の長手方向に垂直な回転軸で回転可能であり、ローラ13上には樹脂配管7が設置される。すなわち、ローラ13が所定間隔で配置され、樹脂配管7はローラ13によって支持される。樹脂配管7がその長手方向に応力が付与されると、ローラ13によって、樹脂配管7は容易に移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋梁等に敷設される樹脂配管の敷設構造および樹脂配管の応力緩和方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送水用の配管としては主に鋼管が用いられてきた。しかし、鋼管に代わって、より軽量であり、長尺での運搬・敷設が可能な樹脂配管が用いられる場合がある。一方、橋梁に送水等の目的で配管が敷設される場合がある。このような橋梁における送水配管に対しても、樹脂配管の適用が検討されている。
【0003】
図8(a)は、従来の橋梁における配管敷設構造100に樹脂配管を適用した状態を示す概略図である。配管敷設構造100では、樹脂配管107が橋梁103に沿って敷設される。樹脂配管107は、橋梁103に対して固定部111によって固定される。固定部111は、橋梁103に沿って、所定ピッチで配置されるため、樹脂配管107は、橋梁103に対して所定ピッチで固定される。
【0004】
一般的に、ある程度の長さの橋梁は、複数の橋桁によって構成される。橋桁は通常コンクリートで構成されるが、気温等の変化の影響等により橋桁の全長が伸縮する。このため、橋梁103には、橋桁同士の伸縮に追従するように、所定間隔で伸縮吸収機構105が設けられる。
【0005】
図8(b)は、伸縮吸収機構105近傍の拡大図である。伸縮吸収機構105は、例えば、弾性部材や、櫛形の金物を噛み合わせて構成される。伸縮吸収機構105によって、仮に橋桁が伸びても、橋桁同士が直接付き合わさって破損することがない。また、仮に橋桁が収縮しても、橋桁間に大きな隙間が形成されることが防止される。
【0006】
一方、前述の通り、樹脂配管107は橋梁103に対して所定間隔で固定部111により固定される。したがって、樹脂配管103は、伸縮吸収機構105の近傍においても固定される。
【0007】
図8(c)は、例えば橋梁103を構成する橋桁が伸長した状態を示す図である。橋桁が伸長することで、互いの、間隔が狭くなり(図中矢印D方向)、この際、伸縮吸収機構105は、この変位を吸収する。一方、樹脂配管107は、この伸縮吸収機構105をまたいで橋梁103に固定される。したがって、樹脂配管107も、橋梁103の変位と同様に変位する(図中矢印E方向)。すなわち、固定部111の間隔(図中矢印F)が変化する。
【0008】
しかしながら、伸縮吸収機構105を挟んで配置される固定部111同士の間隔は、橋桁の長さと比較して極めて短いため、この部位の樹脂配管107には大きな圧縮応力(橋桁が収縮する場合には、引張応力)が生じる。このため、樹脂配管107が破損する恐れがある。
【0009】
したがって、送水配管などにおいて、このような伸縮が繰り返される部位には、伸縮管や伸縮継ぎ手などの機械的に伸縮が可能な部材が設けられる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−96833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、このような伸縮管や伸縮継ぎ手は、構造が複雑であり高価である。また、樹脂配管は、長尺での敷設が可能であるが、このような伸縮管を接続して用いると、樹脂配管の接続箇所が多くなり、接続作業工数を要する。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、伸縮管や伸縮継ぎ手を用いることなく、橋梁に対して樹脂配管を適用可能な樹脂配管の敷設構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、橋梁に敷設される樹脂配管の敷設構造であって、橋梁の長手方向に敷設される樹脂配管と、前記樹脂配管を橋梁の長手方向の所定のピッチで支持する複数の支持部と、を有し、橋梁の少なくとも一部には、橋桁の長さ変化を吸収するための伸縮吸収構造が設けられ、少なくとも前記伸縮吸収構造近傍における前記支持部は、前記支持部で支持される前記樹脂配管が、前記支持部において長手方向に移動することを許容するガイド機構を有することを特徴とする橋梁における樹脂配管の敷設構造である。
【0014】
前記ガイド機構は、ローラであり、前記樹脂配管が前記ローラ上に設置されてもよい。
【0015】
前記支持部は、前記伸縮吸収構造近傍の所定区間に設けられる前記ガイド機構と、前記所定区間外に形成され、前記樹脂配管の位置を前記橋梁に固定する固定部とを有してもよい。
【0016】
前記樹脂配管はポリエチレン製であり、前記樹脂配管の線膨張係数を0.00013/℃、ヤング率を555MPa、許容応力を5MPaとし、想定される温度変化をΔT(℃)、ΔTに対する前記伸縮吸収構造における前記橋梁の長さ変動をΔLe(mm)とすると、前記ガイド機構が設けられる区間長L(m)は、(555・ΔLe)/(5−0.072・ΔT)/1000以上であってもよい。
【0017】
第1の発明によれば、橋梁に敷設される樹脂配管が支持部で支持され、支持部で樹脂配管がその長手方向に移動可能であるため、橋梁において橋桁の伸縮が生じても、その伸縮長を樹脂配管の長い範囲で吸収することができる。このため、樹脂配管の一部に応力が集中することがない。
【0018】
例えば、前述したように、図5(c)のように橋梁の変位が100mmであったとし、例えば1mの固定ピッチで樹脂配管を固定すると、伸縮吸収機構近傍において、1mの樹脂配管に100mmの変形が付与される。このため、樹脂配管に付与される応力が、その許容応力を超え、樹脂配管が破損する恐れがある。
【0019】
これに対し、本発明では、樹脂配管は支持部で支持され、長手方向に移動可能なガイド機構を有するため、ガイド機構の範囲全体で、この橋梁の伸縮量を吸収することができる。例えば、ガイド機構が20mの範囲に形成されれば、20mの樹脂配管に対して100mmの変形が付与されることとなる。このため、樹脂配管の全体を固定する場合と比較して、応力を広範囲に分散することができる。このため、樹脂配管の破損を防止することができる。
【0020】
また、ガイド機構がローラであれば、容易に樹脂配管の移動を許容することができる。なお、ガイド機構は所定範囲内のみに形成されればよく、それ以外の部位に対しては通常通り固定部で固定することもできる。
【0021】
なお、樹脂配管の線膨張係数を0.00013/℃、ヤング率を555MPa、許容応力を5MPaとし、想定される温度変化をΔT(℃)、ΔTに対する伸縮吸収構造における橋梁の長さ変動をΔLe(mm)とした場合に、ガイド機構が設けられる区間長L(m)を、(555・ΔLe)/(5−0.072・ΔT)/1000以上と設定することにより、確実に樹脂配管の破損を防止することができる。
【0022】
第2の発明は、橋梁に敷設される樹脂配管の応力緩和方法であって、橋梁の長手方向に敷設される樹脂配管と、前記樹脂配管を橋梁の長手方向の所定のピッチで支持する複数の支持部と、を有し、橋梁の少なくとも一部には、橋桁の長さ変化を吸収するための伸縮吸収構造が設けられ、少なくとも前記伸縮吸収構造近傍における前記支持部は、前記支持部で支持される前記樹脂配管が、前記支持部において長手方向に移動することを許容するローラであり、前記橋梁が前記伸縮吸収構造で伸縮する際に、前記ローラによって、前記樹脂配管の伸縮を分散させることで、局所的な応力を緩和することを特徴とする橋梁における樹脂配管の応力緩和方法である。
【0023】
第2の発明によれば、橋梁に樹脂配管を敷設した際に、橋梁の伸縮に応じて樹脂配管に生じる局部的な応力を緩和することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、伸縮管や伸縮継ぎ手を用いることなく、橋梁に対して樹脂配管を適用可能な樹脂配管の敷設構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】配管敷設構造1を示す図。
【図2】伸縮吸収機構5の一例を示す図。
【図3】ガイド機構11を示す正面図。
【図4】ガイド機構11を示す断面図であり、(a)は図3のC−C線断面図、(b)は他の実施形態を示す図。
【図5】ローラ13aを用いたガイド機構11を示す図。
【図6】ガイド機構11aを示す正面図。
【図7】ガイド機構11aを示す断面図であり、(a)は図6のE−E線断面図、(b)は他の実施形態を示す図。
【図8】従来の配管敷設構造100を示す図であり、(a)は全体図、(b)は伸縮吸収機構105近傍を示す図、(c)は橋梁が伸長した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、配管敷設構造1を示す図である。配管敷設構造1は、主に、橋梁3、伸縮吸収機構5、樹脂配管7、固定部9、ガイド機構11等から構成される。
【0027】
前述の通り、橋梁3は複数の橋桁および橋脚から構成される。橋梁3の橋桁同士の間には、伸縮吸収機構5が設けられる。
【0028】
図2は、伸縮吸収機構5の一例を示す図である。伸縮吸収機構5は、橋桁同士の対向部に設けられる。伸縮吸収機構5は、例えば、櫛形の金属部材で構成され、互いに噛み合うように構成される。
【0029】
図2(a)は、伸縮吸収機構5の基準温度(例えば20℃)における状態を示す。この際の橋桁間の距離をLe0とする。これに対し、設計温度範囲(例えば−20℃〜+60℃であれば、基準温度±40℃の温度範囲)に対して橋桁の長さが変動する。
【0030】
図2(b)は、例えば、60℃(基準温度+40℃)における伸縮吸収機構5近傍を示す図である。この状態では、橋桁同士が伸長する(図中矢印A方向)。このため、橋桁間の距離Le1はLe0に対して狭くなる。なお、伸縮吸収機構5では、設計温度範囲において、橋桁同士が接触して破損することを防止することができるように、橋桁間距離が設定される。
【0031】
また、さらに、伸縮吸収機構5は、例えば地震等の揺れに対する変位も吸収することができる。このため、伸縮吸収機構5は、最も高温状態で地震が生じても、橋桁同士が付き合わさり、破損することを防止する。なお、以下の説明では、温度変化に伴う橋桁間距離変動について説明する。
【0032】
図1に示すように、伸縮吸収機構5の近傍では、支持部であるガイド機構9が設けられる。図1では、伸縮吸収機構5を中心として、樹脂配管の長手方向に対して長さLの範囲だけガイド機構11が設けられる。ガイド機構11の範囲外(伸縮吸収機構5からL/2以上離れた部位)は支持部である固定部9が設けられる。
【0033】
固定部9は、図5で示した従来の固定構造と同様に、橋梁3に対して樹脂配管7を固定するものである。なお、ガイド機構11および固定部9は、樹脂配管の長手方向に対してそれぞれ所定間隔で配置される。すなわち、配管敷設構造1においては、従来の樹脂配管敷設構造の固定部の一部が、ガイド機構11に置き換えられた構造となる。
【0034】
図3はガイド機構11の正面図、図4(a)はガイド機構11の断面図であり、図3のC−C線断面図である。ガイド機構11は、例えばローラ13で構成される。ローラ13は、樹脂配管7の長手方向に垂直な回転軸で回転可能である。ローラ13上には樹脂配管7が設置される。すなわち、ローラ13が所定間隔で配置され、樹脂配管7はローラ13によって支持される。
【0035】
なお、図4(b)に示すように、ローラ13上の樹脂配管7を覆うように、保持部材15を設けてもよい。保持部材15は、樹脂配管7が上方に屈曲しようとする際に、上方から樹脂配管7を押さえつける部材である。すなわち、樹脂配管7は、ローラ13と保持部材15との間に挿通される。なお、保持部材15は、各ローラ13の配置ピッチに合わせて配置すればよい。
【0036】
また、図5に示すように、中央部が縮径されたローラ13aを用いてもよい。すなわち、ローラ13aは、中央が窪んだ略つづみ形である。ローラ13aの正面視における円弧形状のRは、樹脂配管7の外径に対して十分に大きい。ローラ13aのような形状とすることで、樹脂配管7がローラから脱落することを防止することができる。なお、図4(b)に示した保持部材15と組みわせてもよい。
【0037】
樹脂配管7がその長手方向に応力が付与されると(図3の矢印B方向)、ローラ13によって、樹脂配管7は容易に移動することができる。したがって、伸縮吸収機構5での距離変化量を、ガイド機構9の設置範囲(図1の範囲L)の長さに分散することができる。したがって、樹脂配管7に対して、局所的な応力の発生を防止することができる。
【0038】
ここで、伸縮吸収機構5から離れた部位においては、橋梁3および樹脂配管7がその線膨張係数に応じて伸縮する。すなわち、樹脂配管に生じる応力σpは、(αp−αb)×ΔT×Epとなる。
【0039】
なお、αpは樹脂配管の線膨張係数(/℃)、αbは橋梁(橋桁)の線膨張係数(/℃)である。また、ΔT(℃)は想定される温度範囲であり、例えば、−20℃〜+60℃であれば、ΔTは40℃となる。また、Epは樹脂配管のヤング率である。
【0040】
すなわち、伸縮吸収機構5から離れた位置においては、樹脂配管を地上に敷設した場合に対して、橋梁自体の伸縮が加味され、これにより樹脂配管に発生する応力はむしろ緩和される。したがって、伸縮吸収機構5から離れた部位(具体的には、後述するガイド機構設置範囲以外の部位)は、通常の地上における樹脂配管の固定ピッチと同等のピッチで固定しても、それにより樹脂配管が破損することはない。
【0041】
一方、伸縮吸収機構5近傍では、樹脂配管7の熱による伸縮の応力σp1は、(αp)×ΔT×Epとなる。また、橋梁の変位量をΔLe(mm)とし、前述のガイド機構範囲長(図1におけるL)をL(mm)とすると、橋梁の長さ変化に伴う樹脂配管の応力σp2は、ΔLe×Ep/Lとなる。この応力の和σp1+σp2が、樹脂配管の許容応力以下となるようにすれば、樹脂配管の破損を防止することができる。
【0042】
例えば、樹脂配管7がポリエチレン製である場合、樹脂配管7の線膨張係数αpは0.00013/℃、ヤング率Epは555MPa、許容応力は5MPa程度である。
【0043】
したがって、σp1(MPa)=αp×ΔT×Ep=0.00013×ΔT×555≒0.072・ΔTとなる。また、σp2(N/mm)=ΔLe×Ep/L=555・ΔLe/Lとなる。したがって、σp1+σp2=(0.072・ΔT+555・ΔLe/L)≦5MPaとなるようにすればよい。
【0044】
上式から、ガイド機構の設置範囲L(m)を、(555・ΔLe)/(5−0.072・ΔT)/1000以上とすることにより、温度変化に伴い樹脂配管に生じる応力を、樹脂配管の許容応力以下とすることができる。
【0045】
例えば、温度範囲が±40℃、橋梁の伸縮量が100mmであれば、ガイド機構9は伸縮吸収機構5を中心として27m程度の範囲に設置すればよい。すなわち、これ以外の部位に対しては、ガイド機構9ではなく、通常の固定部11を設置し、樹脂配管7を橋梁3に対して固定すればよい。
【0046】
以上、本発明によれば、橋梁3の伸縮吸収機構5近傍において、樹脂配管7がガイド機構9で支持されるため、樹脂配管7がその長手方向に容易に移動することができる。このため、伸縮吸収機構5における橋梁長変化により、樹脂配管7に局所的な応力が付与されることがない。このため、樹脂配管が破損することがない。
【0047】
また、ガイド機構9がローラ13であるため、機構が複雑ではなく、樹脂配管7の外表面の摩耗を抑制することができる。また、ガイド機構9以外の部位は、固定部11によって樹脂配管9が橋梁3に固定されるため、樹脂配管7の脱落等を防止することができる。
【0048】
また、ガイド機構9の敷設範囲を(555・ΔLe)/(5−0.072・ΔT)/1000(m)以上とすることで、樹脂配管をポリエチレンとした場合において、確実に樹脂配管の破損を防止することができる。
【0049】
なお、樹脂配管の線膨張係数、ヤング率および許容応力に基づいて、(αp×ΔT×Ep+ΔLe×Ep/L)が許容応力以下(σb)以下となるようにすれば、樹脂配管がポリエチレン以外の場合であっても、樹脂配管の材質に応じて、適切なガイド機構設置範囲を設定することができる。
【0050】
また、橋梁の伸縮量であるΔLeとしては、温度変化による伸縮のみを考慮したが、本発明はこれに限られない。例えば、地震等の揺れによる変位量をこれに加えることできる。このようにすることで、地震時の変位によっても樹脂配管の破損を確実に防止することができる。
【0051】
例えば、40℃の温度変化に伴う橋梁の伸縮吸収機構における伸縮量が70mm(基準温度からの温度変化が大きい側であり、その際の応力が大きな側であって、例えば伸び側)であり、想定される地震による変位量が90mm(例えば伸び側)である場合には、橋梁の伸縮量ΔLeを70mm+90mm=160mmと設定すればよい。このように設定することで、温度変化と地震による揺れの両者を加味して、樹脂配管の破損を確実に防止することができる。
【0052】
次に、他の実施形態について説明する。図6は、ガイド機構11aの正面図、図7(a)はガイド機構11aの断面図であり、図6のE−E線断面図である。管枕17を用いた樹脂配管の敷設構造を示す図である。なお、以下の説明において、図1〜図5等で示した構成と同様の機能を奏する構成については、図1〜図5と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0053】
図6に示す例では、ローラに代えて、管枕17が設けられる。管枕17は、低摩擦係数の部材であり、例えば樹脂製である。管枕17と樹脂配管7とは容易に摺動可能である。したがって、樹脂配管7は、その長手方向に容易に移動可能である(図6の矢印D方向)
【0054】
なお、管枕17としては、正面視において上面を直線状に形成してもよく、図7(b)に示すように、凹形状としてもよい。すなわち、管枕17aは、先端が管枕の軸方向が窪んだ鞍型形状である。凹形状を有する管枕17aの正面視における円弧形状のRは、樹脂配管7の外径に対して十分に大きい。管枕17aのような形状とすることで、樹脂配管7が管枕から脱落することを防止することができる。なお、さらに図4(b)に示した保持部材15と組みわせてもよい。
【0055】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
たとえば、ガイド機構9としては、ローラ13等を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。樹脂配管7がその長手方向に容易に移動可能であればその他の構成でもよい。例えば、互いの摩擦係数の小さな部材同士を摺動させ、その上方に樹脂配管7を配置してもよい。
【0057】
また、ローラ13としては円柱状のものを示したが本発明はこれに限られない。例えば、ローラ13の中央部を縮径させて、樹脂配管7がローラ13上の所定の位置となるようにしてもよい。また、複数の樹脂配管をガイド機構9上に併設してもよい。
【0058】
また、ガイド機構9の両脇に、樹脂配管7の脱落を防止するための脱落防止機構を設けてもよい。また、ガイド機構9を橋梁3の全長に渡って設けてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1………配管敷設構造
3………橋梁
5………伸縮吸収機構
7………樹脂配管
9………固定部
11、11a………ガイド機構
13、13a………ローラ
15………保持部材
17、17a………管枕
100………配管敷設構造
103………橋梁
105………伸縮吸収機構
107………樹脂配管
111………固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に敷設される樹脂配管の敷設構造であって、
橋梁の長手方向に、橋梁の敷設方向に略並行に敷設される樹脂配管と、
前記樹脂配管を橋梁の長手方向の所定のピッチで支持する複数の支持部と、
を有し、
橋梁の少なくとも一部には、橋桁の長さ変化を吸収するための伸縮吸収構造が設けられ、
少なくとも前記伸縮吸収構造近傍における前記支持部は、前記支持部で支持される前記樹脂配管が、前記支持部において長手方向に移動することを許容するガイド機構としてローラまたは低摩擦の管枕が設けられ、前記樹脂配管が前記ローラまたは管枕上に設置されていることを特徴とする橋梁における樹脂配管の敷設構造。
【請求項2】
前記支持部は、橋梁の前記伸縮吸収構造近傍に、前記伸縮吸収構造を含む所定区間に設けられる前記ガイド機構と、前記所定区間外に形成され、前記樹脂配管の位置を前記橋梁に固定する固定部とを有することを特徴とする請求項1に記載の橋梁における樹脂配管の敷設構造。
【請求項3】
前記ガイド機構は、前記伸縮吸収構造を含む所定区間に、前記伸縮吸収構造の中心位置を含み、前記伸縮吸収構造の中心位置を挟むように略対称に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の橋梁における樹脂配管の敷設構造。
【請求項4】
前記ガイド機構は、前記伸縮吸収構造を含むように設けられるため、前記ガイド機構の両端の固定部間の樹脂配管の歪を均等化できることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の橋梁における樹脂配管の敷設構造。
【請求項5】
前記ガイド機構としてのローラの形状は、中央が窪んだ略つづみ形であり、管枕の形状は、先端が管枕の軸方向が窪んだ鞍型をしていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の橋梁における樹脂配管の敷設構造。
【請求項6】
前記支持部間には、ガイド機構の他に、前記樹脂配管の膨張伸縮時に管の変形を防止する保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の橋梁における樹脂配管の敷設構造。
【請求項7】
前記樹脂配管はポリエチレン製であり、
前記樹脂配管の線膨張係数を0.00013/℃、ヤング率を555MPa、許容応力を5MPaとし、
想定される温度変化をΔT(℃)、ΔTに対する前記伸縮吸収構造における前記橋梁の長さ変動をΔLe(mm)とすると、
前記ガイド機構が設けられる区間長L(m)は、(555・ΔLe)/(5−0.072・ΔT)/1000以上であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の橋梁における樹脂配管の敷設構造。
【請求項8】
橋梁に敷設される樹脂配管の応力緩和方法であって、
橋梁の長手方向に敷設される樹脂配管と、前記樹脂配管を橋梁の長手方向の所定のピッチで支持する複数の支持部と、を有し、
橋梁の少なくとも一部には、橋桁の長さ変化を吸収するための伸縮吸収構造が設けられ、
少なくとも前記伸縮吸収構造近傍における前記支持部は、前記支持部で支持される前記樹脂配管が、前記支持部において長手方向に移動することを許容するローラであり、
前記橋梁が前記伸縮吸収構造で伸縮する際に、前記ローラによって、前記樹脂配管の伸縮を分散させることで、局所的な応力を緩和することを特徴とする橋梁における樹脂配管の応力緩和方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−36552(P2013−36552A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173668(P2011−173668)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【特許番号】特許第5053451号(P5053451)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】