橋梁点検設備
【課題】 電波法に抵触することなく長距離に渡って通信信号を確実に伝送することのできる橋梁点検設備を提供する。
【解決手段】 レール2に沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブル8を敷設するとともに、巡視ロボット3には密結合ケーブル8に非接触で近接するアンテナ6を設けて、巡視ロボット3とロボット制御装置9との間で密結合ケーブル8を介して通信信号を送受信する。なお、レール2面に密結合ケーブル8の径より幅広の凹溝部21を形成し、密結合ケーブル8を凹溝部21に立設した支持部材23に支持させることにより、密結合ケーブル8とレール2との間に空間を確保するとともに、レール2面からの突出高さを低くして密結合ケーブル8を敷設することができる。
【解決手段】 レール2に沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブル8を敷設するとともに、巡視ロボット3には密結合ケーブル8に非接触で近接するアンテナ6を設けて、巡視ロボット3とロボット制御装置9との間で密結合ケーブル8を介して通信信号を送受信する。なお、レール2面に密結合ケーブル8の径より幅広の凹溝部21を形成し、密結合ケーブル8を凹溝部21に立設した支持部材23に支持させることにより、密結合ケーブル8とレール2との間に空間を確保するとともに、レール2面からの突出高さを低くして密結合ケーブル8を敷設することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架橋などの橋梁の裏面を点検するための橋梁点検設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高架橋などの橋梁は長年の供用により老朽化したり損傷が発生したりする。橋梁に損傷などが発生した場合には安全性が低下して重大な事故につながる恐れがあるので、定期的に点検などを行って保守管理することが重要である。しかし、橋梁の裏側には鉄骨などが交錯していて隙間が狭く人の立ち入りを阻んでおり、また、高所であるために人による直接点検を行うことが極めて困難である。橋梁の点検を人手によらず行うための橋梁点検設備として、特許文献1には、本明細書の図10に示すような橋梁1下部に設けたレール2上に巡視ロボット3を走行させて点検する点検設備が開示されている。この巡視ロボット3はカメラ4を備えており、無線コントローラ5により操作されて、カメラ4にて撮影した橋梁裏面画像等をアンテナ6から送信する。無線コントローラ5は送信された信号をアンテナ51から受信して、画像等をモニタリングテレビ7に表示することにより、橋梁1の点検を行うことができる。
【0003】
しかしながら、橋梁1の裏側には鉄骨などの構造部材が狭い空間に錯綜しているので電波の伝送上大きな障害となる。この電波障害を克服してしかも長距離に渡って信号を送受信するには強力な電波を必要とするが、他の設備に対して不要な電波を輻射することになるので電波法の規制を受けねばならない。したがって、従来は電波法に抵触することなく、しかも400m程度の比較的長距離に渡って通信信号を伝送して橋梁を点検することははなはだ困難なことであった。
【特許文献1】特開平8‐128015号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、電波法に抵触することのない微弱電波により、しかも構造部材に阻害されることなく長距離に渡って点検結果を確実に伝送することのできる橋梁点検設備を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、橋梁の下部に敷設されたレールと、該レール上を走行して橋梁を点検する巡視ロボットと、巡視ロボットを操作してその点検結果をモニタ表示するロボット制御装置とからなる橋梁点検設備において、前記レールに沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブルを敷設するとともに、巡視ロボットには密結合ケーブルに非接触で近接するアンテナを設けて、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を送受信するようにしたことを特徴とするものである。なお、レール面に密結合ケーブルの径より幅広の凹溝部を形成し、密結合ケーブルを前記凹溝部に設けた支持部材に支持させることにより、密結合ケーブルとレールとの間に空間を確保するとともに、レール面からの突出高さを低くして密結合ケーブルを敷設するのが望ましい。
【0006】
また、巡視ロボットのデジタル無線装置にQPSK周波数可変型局部発振器を備えてスイッチにより伝送路の送受信周波数をf01又はf02に切り換え可能なものとし、伝送線路の敷設環境による特定周波数での干渉妨害を周波数の切り替え手段により防止するのが望ましく、或いは、ロボット制御装置にFSK変調器を設け、巡視ロボットのデジタル無線装置にはFSK復調器を設けて、ロボット制御装置から巡視ロボットにFSK制御信号を通して通信周波数の切り換え指示を行うとともに、ロボット制御装置の通信周波数の切り換えを内蔵したCPUにより同時に行うのが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の橋梁点検設備は、橋梁の下部に敷設されたレールと、該レール上を走行して橋梁を点検する巡視ロボットと、巡視ロボットを操作してその点検結果を受信するロボット制御装置とからなる橋梁点検設備において、前記レールに沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブルを敷設するとともに、巡視ロボットには密結合ケーブルに非接触で近接するアンテナを設けたので、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を確実に送受信することができる。また、レール面に密結合ケーブルの径より幅広の凹溝部を形成し、密結合ケーブルをこの凹溝部に設けた支持部材に支持させるようにしたので、密結合ケーブルとレールとの間に必要な空間を確保するとともに、レール面からの突出高さを低くして橋梁構造部材との間にも空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は本発明の橋梁点検設備の概略構成を示す図であって、橋梁1の下部にレール2が敷設され、このレール2には微弱電波を漏洩する密結合ケーブル8が並設されている。そして、レール2上をカメラ4を備えた巡視ロボット(移動局)3が走行するが、巡視ロボット3の裏側には結合器と呼ばれるアンテナ6が密結合ケーブル8の至近距離に非接触で配設されていて、このアンテナ6には映像変調機41とカメラ4が接続されている。さらにもう1つのアンテナ6には共用器42、無線モデム45、マイコン46が順に接続されている。また、密結合ケーブル8は一端に給電器81、他端に終端器82を備えており、給電器81はロボット制御装置(固定局)9に接続されている。ロボット制御装置9には、ホストコンピュータ91、無線モデム92、共用器93、93a、映像復調器94、モニター画面95が適切に接続されて備えられている。
【0009】
巡視ロボット3は、密結合ケーブル8を介してロボット制御装置9との間で通信信号を送受信する。すなわち、ホストコンピュータ9からの走行、カメラ角度のチルト・パン調整などの指令を受けて橋梁1の裏側を点検し、カメラ4の点検結果を映像変調器41で変調してロボット制御装置9に送信する。ロボット制御装置9はモニター画面95に映像を表示したり、映像、点検位置、点検日時などの必要事項をデータ解析のために記憶する。以上のような構成の橋梁点検設備により、橋梁1の下部に設けたレール2上を巡視ロボット3を走行させることによって、橋梁1の点検を行うことができる。
【0010】
なお、巡視ロボット3には音声変調器43を介してマイク44が配設されている。これに対応してロボット制御装置9には、共用器93aに音声復調器96とスピーカー97とが順に接続されている。したがって、現場に作業員がいるような場合には現場の状況等を固定局側に伝達することができる。
【0011】
密結合ケーブル8は図2に示すような構造のものであって、PE(ポリエチレン)被覆83aされた2本の心線83が対よりされて介在線84とともにPEシース85に収納されたものであって、吊線86により補強されている。PEシース85の心線が埋め込まれた部分はT字形に形成されていて後述の支持部材23による挟持を容易にしている。密結合ケーブル8は平衡型ケーブルのため、ケーブルの伝送モードの電磁界がケーブルの周囲に分布し、このためケーブルの周囲の金属等電導物(レールや橋梁構造部材など)の存在によって伝送特性の劣化という影響を受ける。
【0012】
そこで密結合ケーブル8を、図3に示すようにレール2に凹溝部21を形成してこの内部に敷設する。すなわち、アルミニウム製などの角型管状レール2の上面に長手方向に沿って密結合ケーブル8の直径より十分幅の広い凹溝部21を形成し、この凹溝部21の底面22にケーブル支持用の支持部材(ハンガー)23を立設する。支持部材23は基体24の上部にケーブルの挟持部25を有し、下部にはボルト26を有している。そして、凹溝部21の底面22に設けた取付け穴にボルト26が差し込まれてナット28により所要の間隔(例えば1m間隔)で固定されている。支持部材23の挟持部25に密結合ケーブル8を支持させることにより、密結合ケーブル8とレール2との間に必要な空間を確保することができる。また、レール2上面からの突出高さを低くすることができるので橋梁構造部材との間隔を広くすることができる。したがって、周辺金属製部材との間隔を大きく取ることができて伝送特性の劣化を小さく抑えることができる。
【0013】
一方、巡視ロボット3は図4〜7に示すようなものとすることができ、この巡視ロボット3のシャーシ30には、カメラ部31と電源部32と制御部33とが搭載されている。シャーシ30の内側には、図6に示すように結合器と呼ばれるアンテナ6が下向きに設けられている。アンテナ6は密結合ケーブル8と10mm程度の極めて至近な距離に配設されているので、密結合ケーブル8の漏洩する微弱電波を検知することができる。また、シャーシ30の下側にはレール2の上面に接する走行車輪34とレール2の側面に接する脱輪防止用の車輪35とがシャーシ30の前後左右に4つずつ設けられている。
【0014】
電源部32には電源基板320が設けられ、これにカメラ角度制御用、走行用のバッテリー321が四台とマイク44が配設されている。また、カメラ部31には点検用のカメラ4とスポットライト312とが並設されており、バッテリー321を電源としてモーター、プーリ−などにより軸313によりチルト方向に、軸314によりパン方向に回動される。
【0015】
制御部33にはロボット制御基板331に接続された駆動器332が配設されており、駆動器332には走行用のDCモータードライバー333、チルト制御用のDCモータードライバー334、パン制御用のDCモータードライバー335が内蔵されているので、巡視ロボット3を走行させたりカメラ4の姿勢を調整したりすることができる。なお、駆動器332の上部には電源オンオフ用スイッチ336が備えられている。シャーシ30の前後には障害物センサー36が配置されていて、走行の障害物を検知した時に巡視ロボット3の走行を停止させる。また、給電器81、終端器82等の付属品部分のRED337による表示により密結合ケーブル8の断線、短絡の検知が可能である。
【0016】
アンテナ6の取り付け構造の詳細を図8、9に示すが、アンテナ6はシャーシ30の下面にねじにより固定されている。既記したようにアンテナ6は密結合ケーブル8に対して極めて至近距離に配設されているので、密結合ケーブル8の漏洩する微弱電波を検知することができる。したがって、電波法に抵触することなく橋梁1の構造部材が錯綜した狭小空間で、しかも400m程度の比較的長い距離に渡って橋梁1を点検することができる。密結合ケーブル8とアンテナ6とは非接触であるので、磨耗部分がなくメンテナンスが容易である。
【0017】
以上のように、巡視ロボット3を上下左右の回転が自在なカメラ4を有しレール2上を走行する方式のものとしたので、最も重要な点検個所である橋梁1の床板を中心として死角なく容易に点検を行うことができる。そして、巡視ロボット3の点検結果をロボット制御装置9に取り込むことができるので、点検結果を蓄積して重要個所の経年変化を確実に把握することができる。さらに、巡視ロボット3をシャーシ30とこれに据え付けられるカメラ部31や制御部33などから構成したので、これらを解体したうえにトランクに入れて大人1人で容易に運搬することができ、且つ現地において迅速に組立、運転、撤去を行うことができる。
【0018】
また、本発明における巡視ロボット3は、図11に示すような構成のものとすることができる。ここで、2Aはロボット制御装置9と信号のやり取りを行う無線装置、3AはMPEGエンコーダー、10Aは映像撮影、集音、走行等の制御を行うコントローラ部、13Aは走行用モータである。CPU11Aはロボット制御装置9側から送られる制御信号を処理して、カメラ4、照明用コントローラ7A、マイク44を操作し、且つ、コントローラ部10Aへの点検指示、ロボット駆動用制御装置9Aへの走行制御、及び無線部2Aへの指示等を行う。そして、カメラ4から取り込んだ映像情報はデジタルの映像信号としてMPEGエンコーダ−3Aに送られて圧縮されたのち、無線部2Aに送られる。無線部2Aで処理された信号はアンテナ6、密結合ケーブル8を介してロボット制御装置9に伝送される。
【0019】
図12は無線部2A周辺の構成を示す図であって、71はリードソロモン誤り訂正符号器、72はプリアンブル発生器、73はランダマイザ、74はモデュラス加算器、75はQPSK変調用差動符号器である。ロボット制御装置9から送られた信号はFSKモデム34Aからコントローラ部10A、ロボット駆動用制御装置9Aに送られてカメラ4を操作する。カメラ4の点検した映像はMPEGエンコーダー3Aで圧縮され、フレーム化されたデータのビットストリーム(DATA)、データに同期したクロック信号(CLK)及びフレームデータ取り込みのための送信エネーブル(TX ENABLE)の3種類の信号がMPEGエンコーダー3Aから無線部2Aに送られる。無線部2Aでは、このフレーム信号の先頭に受信側でビット同期及びフレーム同期を取るためのプリアンブル信号がプリアンブル発生器72により付加され、フレーム信号の最後尾では伝送路での誤り訂正を行うためのリードソロモン誤り訂正符号が訂正符号器71により付加される。ラマンタイザー73は同一のビット列が続くことによるビット同期を取り易くするためにモデュラス加算器74でデータをランダム化する。差動符号器75ではデータビット列の差動符号化及びQPSK変調のための同相信号と直交信号とへの変換を行う。そして、ロールオフフィルター76においてスペクトルの拡散防止と信号間干渉の防止のためにロールオフ特性を持たせる。データ列は直交変調器77でQPSK信号に変換され、アップコンバータ80で所定の周波数に変換されたのち、増幅器82Aで増幅されてアンテナ6から送信される。送信された信号はロボット制御装置9側の映像復調器94にてQPSK復調される。なお、78はCPU11Aからの命令により無線部2Aを動作させるインターフェース回路、81Aはアップコンバータ80の局部発振器である。
【0020】
図13はデジタル化した映像信号および音声信号をロボット制御装置(コントローラ)にて復調するためのデジタル信号処理構成図である。送信されてDQPSK復調器87aに入力したQPSKデジタル変調信号はDQPSK復調器87aによりデータビット列に復調される。この信号はフレーム化された信号であるためプリアンブル処理装置88aによりプリアンブルが取り除かれ、デランダマイザ89aによりランダマイズ化された信号を元の信号に戻す。その後RS(リードソロモン)誤り訂正器90aによりフレーム毎の誤り訂正が行われる。フィルタ91aにおいて帯域制限用のFIRフィルタで符号間干渉が解消され、FIFO(First In First Out)92aからフレーム毎の有効なデータが外部クロックに同期して出力される。なお、93bはQPSK変調された信号からデータを復調するための搬送波再生と同期再生を行うためのタイミング回路である。また、94aはCPU95aの制御により上記DQPSK復調器87a〜タイミング回路93aの機能動作を行わせるためのインターフェース回路である。通常はPSIもしくはI2Cバスが用いられる。
【0021】
図14に本システムのフレーム構成を示す。このフレーム構成ではデータのフレームはATM UTOPIA準拠の1フレーム当たり映像・音声データを188バイトとし、フレームの全バイト数を204バイトとした。プリアンブルのビット数は本システムでは伝送路の変動が大きいためビット同期を確実に取るため10バイトとし、RS訂正符号は4バイト、ガードビットは2バイトとした。RS訂正符号は4バイトにより理論上1フレーム当たり2バイトのデータの誤り訂正が可能となる。
【0022】
図15はロボット制御装置側に採用したAGC回路を示す図である。本回路において、ハイブリッド回路95aに入力された信号は帯域通過フィルタ100aと電力増幅器96aに入る。電力増幅器96aは出力信号より遙かに低いレベルでこの増幅器96aの出力側に入力されるためこの信号による影響を受けることはない。一方、帯域通過フィルタ100aではQPSK信号fpとロボットからの情報信号fiのみを通過させ、電力増幅器96aからの音声信号fcを減衰させる。帯域通過フィルタ100aは並直列型帯域通過フィルタを採用しているため信号fcのみを急峻に減衰させると共に、ハイブリッド回路95aのアイソレーション(20〜25dBのアイソレーション)と相まって回り込みによる干渉を防ぐ効果がある。また、希望信号であるロボットからのFSK変調された情報信号とQPSK変調信号は互いに相互関係のある信号であり、独立していないため、周波数fpとfiを20MHz〜50MHzの帯域内に入るように設定する。
【0023】
そして、図22に示すように密結合ケーブルおよび結合器を通した信号の周波数特性では周波数fpとfiはほぼ同レベルで変動するため、この2波の周波数のみを共通に通過する帯域通過フィルタ100aを設けておく。前記レベルでAGCをかけると同レベルで1stAGC増幅器101aに入るため、2波のレベルによる歪みは最小になる。また、密結合ケーブル伝送のような極めて変動の大きい入力信号レベルを取り扱うためにはダイナミックレンジの広いAGC増幅器が要求される。この対応として、AGC回路を2段構成にしており、信号レベルが小さい時はS/Nを劣化させないように2ndAGC増幅器103aが早く減衰し、強入力時には2波による3次歪みの影響を小さくするため、1stAGC101aが動作する遅延回路104aを採用した。なお、102aは低雑音増幅器、105aは分波器である。
【0024】
図16に従来の分波器の構成を本発明の実施例との比較のために示す。図において、低域通過フィルタ106aはfpとfiを取り出して、このfpとfiは低雑音増幅器98aにより増幅されて出力される。107aは高域通過フィルタで出力用電力増幅器96aによりfcが増幅され出力される。
図17に低域通過フィルタ106aの周波数特性を示す。fpとfiは通過するが、阻止域のfc付近で低域通過フィルタ106aの反射の影響で周波数が充分に離れていない場合、減衰特性が悪化する。また、図18に高域通過フィルタ107aの周波数特性を示すが、fi、fp付近で減衰特性が悪化する。
図19は、低域通過フィルタ108aと高域通過フィルタ109aを備えた本発明に係る分波器の構成を示す図であるが、図20に示すように、ハイブリッド回路95aの高域周波数特性とアイソレーション特性により減衰域での跳ね返りを小さくすることができるし、図21に示すように、高域通過フィルタ109aにてfiとfpを減衰させることができる。
【0025】
橋梁点検ロボットとコントローラ側の無線信号の伝送線路(密結合ケーブル)と結合器とを組み合わせたVHF帯での周波数特性を図23に、また、その位相特性を図24に示す。伝送線路は結合器内で振幅位相合成を行っているが、その内部の結合用ループの配置位置と合成方法および密結合ケーブルのツイストペア線のよりピッチにより、特定の周波数間隔で振幅・位相変化点が現れる。実測例では、撚りピッチ約80mm、結合器のループ間の配置約80mmでは16MHz〜20MHzの周波数間隔で現れる。また、この周波数は敷設ケーブルの設置条件、監視用に引き出している同軸ケーブルとの不整合等により変化する。この特性を持った伝送路で帯域6〜10MHzのデジタル映像信号を伝送する場合、振幅あるいは位相の変化点で伝送誤りが発生する。特にQPSK変調を用いた場合、位相が45°以上変化すると誤りが発生する。このため、伝送用無線周波数帯域が振幅・位相変化点に入らないように周波数を選ばなければならない。また、周波数を最適に設定したとしても環境条件が変わると周波数変化点が変わるため周波数の切り換えが必要になってくる。この切り換え方式について以下に説明する。
【0026】
図23において、送信周波数をf01,f02に選ぶ場合、f01,f02の関係を以下のように選ぶとこの変化点を避けることができる。すなわち、
f02=f01+△fs/2
ここで△fsは周波数の変化点の現れる周波数間隔である。
図25には、巡視ロボット側及びロボット制御装置(コントローラ)側の無線機構成を示す。109aはQPSK変調器、80aはアップコンバータ、110aはf01とf02の周波数可変型局部発振器であり、111aはf01、f02共に通過可能な帯域を持った帯域通過フィルタ、82aは出力用電力増幅器である。送信周波数をスイッチSWにより巡視ロボット側で切り換える。
【0027】
ロボット側無線機で送信周波数を変える方法として、周波数可変型局部発振器110aの周波数をスイッチSWによりf01とf02に切り換える。帯域通過フィルタ111aをf01、f02共に通過し、電力増幅器82aからRF信号が密結合ケーブルを通して送出される。コントローラ側無線機では送受分離用ハイブリッド37aでRF信号を受信した後低雑音増幅器38a、ダウンコンバータ42aを通してIF信号に変換される。この信号の一部を分配器112aで取り出した後、周波数検出器113aにより周波数を判別し、周波数可変型局部発振器114aにより自動的に周波数を切り換える。このようにすることによりロボット側の送信周波数のみの切り換えで切り替え作業を行うことができるので、コントローラ側の周波数切り換え忘れを防ぐことができる。切り替える周波数はf01とf02の二つに限定されず多数の周波数でもよい。
【0028】
図26はコントローラ側無線装置から制御用FSK変調器を用いて周波数を任意に切り換える方法を採用した無線機の構成を示したものである。33aはCPU、34aはFSK復調器、35aは送受分離用ハイブリッドである。コントローラ側無線装置では110aはシンセサイザー型局部発振器、85aはCPU、68aはFSK変調器である。これらの無線機においては、コントローラ側でCPU85aによりダウンコンバータ42aのIF信号周波数を局部発振器110aにより切り換えると共に、FSK変調器68aによりロボット側にも周波数設定情報を送信する。一方、ロボット側ではこの制御信号によりシンセサイザー型局部発振器115aの周波数を切り換える。このようにすることによりロボット運転中でも即座に周波数を切り換えることができる利点がある。なお、切り換える周波数はf01とf02に拘らず受信帯域内であれば任意の周波数でも良い。
【0029】
以上のように、カメラ4で撮影した映像をデジタル信号とし、このデジタル映像信号をデジタル無線変調であるQPSK変調するようにしたので、S/N比(信号対雑音の比)を十分取ることができ、通信距離を長くすることができた。また、画像を再加工する場合や映像を繰り返し再生したり複製したりする場合に起こる画質の劣化を小さいものに改善することができた。また、リードソロモン誤り訂正符号器71により訂正方式を最適化したことにより、ロボット制御装置9側からの制御、映像の応答における信号の遅延を大幅に改善することができた。
【0030】
以上に説明したように、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を確実に送受信することができる。
したがって、本発明は電波法に抵触しない微弱電波により橋梁を点検することができるという大きな価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の橋梁点検設備の概略構成図である。
【図2】密結合ケーブルの構造を示す斜視図である。
【図3】密結合ケーブルのレールへの取り付け状態を示す斜視図である。
【図4】巡視ロボットの内部を示す側面図である。
【図5】巡視ロボットの内部を示す平面図である。
【図6】レール上の巡視ロボットを示す正面図である。
【図7】図5のA−A部における断面図である。
【図8】巡視ロボットの底面図である。
【図9】巡視ロボットのシャーシの内部を示す側面図である。
【図10】従来の橋梁点検設備を示す概略構成図である。
【図11】巡視ロボットの内部構成図である。
【図12】無線装置周辺の構成図である。
【図13】ロボット制御装置におけるデジタル信号処理器の構成図である。
【図14】図13のデジタル信号処理器のフレーム構成を示す図である。
【図15】AGC回路の構成図である。
【図16】従来の分波器の構成図である。
【図17】従来の低域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図18】従来の高域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図19】本発明に係る分波器の構成図である。
【図20】本発明に係る低域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図21】本発明に係る高域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図22】密結合ケーブルの周波数特性を示すグラフである。
【図23】長距離伝送時において密結合ケーブル及び結合器を通した信号の周波数特性を示すグラフである。
【図24】長距離伝送時において密結合ケーブル及び結合器を通した信号の位相特性を示すグラフである。
【図25】巡視ロボット側及びロボット制御装置側の無線装置の構成図である。
【図26】FSK変調器を用いて周波数を任意に切り換えるための無線装置の構成図である。
【符号の説明】
【0032】
2 レール
3 巡視ロボット
6 アンテナ
8 密結合ケーブル
9 ロボット制御装置
21 凹溝部
23 支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架橋などの橋梁の裏面を点検するための橋梁点検設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高架橋などの橋梁は長年の供用により老朽化したり損傷が発生したりする。橋梁に損傷などが発生した場合には安全性が低下して重大な事故につながる恐れがあるので、定期的に点検などを行って保守管理することが重要である。しかし、橋梁の裏側には鉄骨などが交錯していて隙間が狭く人の立ち入りを阻んでおり、また、高所であるために人による直接点検を行うことが極めて困難である。橋梁の点検を人手によらず行うための橋梁点検設備として、特許文献1には、本明細書の図10に示すような橋梁1下部に設けたレール2上に巡視ロボット3を走行させて点検する点検設備が開示されている。この巡視ロボット3はカメラ4を備えており、無線コントローラ5により操作されて、カメラ4にて撮影した橋梁裏面画像等をアンテナ6から送信する。無線コントローラ5は送信された信号をアンテナ51から受信して、画像等をモニタリングテレビ7に表示することにより、橋梁1の点検を行うことができる。
【0003】
しかしながら、橋梁1の裏側には鉄骨などの構造部材が狭い空間に錯綜しているので電波の伝送上大きな障害となる。この電波障害を克服してしかも長距離に渡って信号を送受信するには強力な電波を必要とするが、他の設備に対して不要な電波を輻射することになるので電波法の規制を受けねばならない。したがって、従来は電波法に抵触することなく、しかも400m程度の比較的長距離に渡って通信信号を伝送して橋梁を点検することははなはだ困難なことであった。
【特許文献1】特開平8‐128015号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、電波法に抵触することのない微弱電波により、しかも構造部材に阻害されることなく長距離に渡って点検結果を確実に伝送することのできる橋梁点検設備を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、橋梁の下部に敷設されたレールと、該レール上を走行して橋梁を点検する巡視ロボットと、巡視ロボットを操作してその点検結果をモニタ表示するロボット制御装置とからなる橋梁点検設備において、前記レールに沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブルを敷設するとともに、巡視ロボットには密結合ケーブルに非接触で近接するアンテナを設けて、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を送受信するようにしたことを特徴とするものである。なお、レール面に密結合ケーブルの径より幅広の凹溝部を形成し、密結合ケーブルを前記凹溝部に設けた支持部材に支持させることにより、密結合ケーブルとレールとの間に空間を確保するとともに、レール面からの突出高さを低くして密結合ケーブルを敷設するのが望ましい。
【0006】
また、巡視ロボットのデジタル無線装置にQPSK周波数可変型局部発振器を備えてスイッチにより伝送路の送受信周波数をf01又はf02に切り換え可能なものとし、伝送線路の敷設環境による特定周波数での干渉妨害を周波数の切り替え手段により防止するのが望ましく、或いは、ロボット制御装置にFSK変調器を設け、巡視ロボットのデジタル無線装置にはFSK復調器を設けて、ロボット制御装置から巡視ロボットにFSK制御信号を通して通信周波数の切り換え指示を行うとともに、ロボット制御装置の通信周波数の切り換えを内蔵したCPUにより同時に行うのが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の橋梁点検設備は、橋梁の下部に敷設されたレールと、該レール上を走行して橋梁を点検する巡視ロボットと、巡視ロボットを操作してその点検結果を受信するロボット制御装置とからなる橋梁点検設備において、前記レールに沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブルを敷設するとともに、巡視ロボットには密結合ケーブルに非接触で近接するアンテナを設けたので、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を確実に送受信することができる。また、レール面に密結合ケーブルの径より幅広の凹溝部を形成し、密結合ケーブルをこの凹溝部に設けた支持部材に支持させるようにしたので、密結合ケーブルとレールとの間に必要な空間を確保するとともに、レール面からの突出高さを低くして橋梁構造部材との間にも空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は本発明の橋梁点検設備の概略構成を示す図であって、橋梁1の下部にレール2が敷設され、このレール2には微弱電波を漏洩する密結合ケーブル8が並設されている。そして、レール2上をカメラ4を備えた巡視ロボット(移動局)3が走行するが、巡視ロボット3の裏側には結合器と呼ばれるアンテナ6が密結合ケーブル8の至近距離に非接触で配設されていて、このアンテナ6には映像変調機41とカメラ4が接続されている。さらにもう1つのアンテナ6には共用器42、無線モデム45、マイコン46が順に接続されている。また、密結合ケーブル8は一端に給電器81、他端に終端器82を備えており、給電器81はロボット制御装置(固定局)9に接続されている。ロボット制御装置9には、ホストコンピュータ91、無線モデム92、共用器93、93a、映像復調器94、モニター画面95が適切に接続されて備えられている。
【0009】
巡視ロボット3は、密結合ケーブル8を介してロボット制御装置9との間で通信信号を送受信する。すなわち、ホストコンピュータ9からの走行、カメラ角度のチルト・パン調整などの指令を受けて橋梁1の裏側を点検し、カメラ4の点検結果を映像変調器41で変調してロボット制御装置9に送信する。ロボット制御装置9はモニター画面95に映像を表示したり、映像、点検位置、点検日時などの必要事項をデータ解析のために記憶する。以上のような構成の橋梁点検設備により、橋梁1の下部に設けたレール2上を巡視ロボット3を走行させることによって、橋梁1の点検を行うことができる。
【0010】
なお、巡視ロボット3には音声変調器43を介してマイク44が配設されている。これに対応してロボット制御装置9には、共用器93aに音声復調器96とスピーカー97とが順に接続されている。したがって、現場に作業員がいるような場合には現場の状況等を固定局側に伝達することができる。
【0011】
密結合ケーブル8は図2に示すような構造のものであって、PE(ポリエチレン)被覆83aされた2本の心線83が対よりされて介在線84とともにPEシース85に収納されたものであって、吊線86により補強されている。PEシース85の心線が埋め込まれた部分はT字形に形成されていて後述の支持部材23による挟持を容易にしている。密結合ケーブル8は平衡型ケーブルのため、ケーブルの伝送モードの電磁界がケーブルの周囲に分布し、このためケーブルの周囲の金属等電導物(レールや橋梁構造部材など)の存在によって伝送特性の劣化という影響を受ける。
【0012】
そこで密結合ケーブル8を、図3に示すようにレール2に凹溝部21を形成してこの内部に敷設する。すなわち、アルミニウム製などの角型管状レール2の上面に長手方向に沿って密結合ケーブル8の直径より十分幅の広い凹溝部21を形成し、この凹溝部21の底面22にケーブル支持用の支持部材(ハンガー)23を立設する。支持部材23は基体24の上部にケーブルの挟持部25を有し、下部にはボルト26を有している。そして、凹溝部21の底面22に設けた取付け穴にボルト26が差し込まれてナット28により所要の間隔(例えば1m間隔)で固定されている。支持部材23の挟持部25に密結合ケーブル8を支持させることにより、密結合ケーブル8とレール2との間に必要な空間を確保することができる。また、レール2上面からの突出高さを低くすることができるので橋梁構造部材との間隔を広くすることができる。したがって、周辺金属製部材との間隔を大きく取ることができて伝送特性の劣化を小さく抑えることができる。
【0013】
一方、巡視ロボット3は図4〜7に示すようなものとすることができ、この巡視ロボット3のシャーシ30には、カメラ部31と電源部32と制御部33とが搭載されている。シャーシ30の内側には、図6に示すように結合器と呼ばれるアンテナ6が下向きに設けられている。アンテナ6は密結合ケーブル8と10mm程度の極めて至近な距離に配設されているので、密結合ケーブル8の漏洩する微弱電波を検知することができる。また、シャーシ30の下側にはレール2の上面に接する走行車輪34とレール2の側面に接する脱輪防止用の車輪35とがシャーシ30の前後左右に4つずつ設けられている。
【0014】
電源部32には電源基板320が設けられ、これにカメラ角度制御用、走行用のバッテリー321が四台とマイク44が配設されている。また、カメラ部31には点検用のカメラ4とスポットライト312とが並設されており、バッテリー321を電源としてモーター、プーリ−などにより軸313によりチルト方向に、軸314によりパン方向に回動される。
【0015】
制御部33にはロボット制御基板331に接続された駆動器332が配設されており、駆動器332には走行用のDCモータードライバー333、チルト制御用のDCモータードライバー334、パン制御用のDCモータードライバー335が内蔵されているので、巡視ロボット3を走行させたりカメラ4の姿勢を調整したりすることができる。なお、駆動器332の上部には電源オンオフ用スイッチ336が備えられている。シャーシ30の前後には障害物センサー36が配置されていて、走行の障害物を検知した時に巡視ロボット3の走行を停止させる。また、給電器81、終端器82等の付属品部分のRED337による表示により密結合ケーブル8の断線、短絡の検知が可能である。
【0016】
アンテナ6の取り付け構造の詳細を図8、9に示すが、アンテナ6はシャーシ30の下面にねじにより固定されている。既記したようにアンテナ6は密結合ケーブル8に対して極めて至近距離に配設されているので、密結合ケーブル8の漏洩する微弱電波を検知することができる。したがって、電波法に抵触することなく橋梁1の構造部材が錯綜した狭小空間で、しかも400m程度の比較的長い距離に渡って橋梁1を点検することができる。密結合ケーブル8とアンテナ6とは非接触であるので、磨耗部分がなくメンテナンスが容易である。
【0017】
以上のように、巡視ロボット3を上下左右の回転が自在なカメラ4を有しレール2上を走行する方式のものとしたので、最も重要な点検個所である橋梁1の床板を中心として死角なく容易に点検を行うことができる。そして、巡視ロボット3の点検結果をロボット制御装置9に取り込むことができるので、点検結果を蓄積して重要個所の経年変化を確実に把握することができる。さらに、巡視ロボット3をシャーシ30とこれに据え付けられるカメラ部31や制御部33などから構成したので、これらを解体したうえにトランクに入れて大人1人で容易に運搬することができ、且つ現地において迅速に組立、運転、撤去を行うことができる。
【0018】
また、本発明における巡視ロボット3は、図11に示すような構成のものとすることができる。ここで、2Aはロボット制御装置9と信号のやり取りを行う無線装置、3AはMPEGエンコーダー、10Aは映像撮影、集音、走行等の制御を行うコントローラ部、13Aは走行用モータである。CPU11Aはロボット制御装置9側から送られる制御信号を処理して、カメラ4、照明用コントローラ7A、マイク44を操作し、且つ、コントローラ部10Aへの点検指示、ロボット駆動用制御装置9Aへの走行制御、及び無線部2Aへの指示等を行う。そして、カメラ4から取り込んだ映像情報はデジタルの映像信号としてMPEGエンコーダ−3Aに送られて圧縮されたのち、無線部2Aに送られる。無線部2Aで処理された信号はアンテナ6、密結合ケーブル8を介してロボット制御装置9に伝送される。
【0019】
図12は無線部2A周辺の構成を示す図であって、71はリードソロモン誤り訂正符号器、72はプリアンブル発生器、73はランダマイザ、74はモデュラス加算器、75はQPSK変調用差動符号器である。ロボット制御装置9から送られた信号はFSKモデム34Aからコントローラ部10A、ロボット駆動用制御装置9Aに送られてカメラ4を操作する。カメラ4の点検した映像はMPEGエンコーダー3Aで圧縮され、フレーム化されたデータのビットストリーム(DATA)、データに同期したクロック信号(CLK)及びフレームデータ取り込みのための送信エネーブル(TX ENABLE)の3種類の信号がMPEGエンコーダー3Aから無線部2Aに送られる。無線部2Aでは、このフレーム信号の先頭に受信側でビット同期及びフレーム同期を取るためのプリアンブル信号がプリアンブル発生器72により付加され、フレーム信号の最後尾では伝送路での誤り訂正を行うためのリードソロモン誤り訂正符号が訂正符号器71により付加される。ラマンタイザー73は同一のビット列が続くことによるビット同期を取り易くするためにモデュラス加算器74でデータをランダム化する。差動符号器75ではデータビット列の差動符号化及びQPSK変調のための同相信号と直交信号とへの変換を行う。そして、ロールオフフィルター76においてスペクトルの拡散防止と信号間干渉の防止のためにロールオフ特性を持たせる。データ列は直交変調器77でQPSK信号に変換され、アップコンバータ80で所定の周波数に変換されたのち、増幅器82Aで増幅されてアンテナ6から送信される。送信された信号はロボット制御装置9側の映像復調器94にてQPSK復調される。なお、78はCPU11Aからの命令により無線部2Aを動作させるインターフェース回路、81Aはアップコンバータ80の局部発振器である。
【0020】
図13はデジタル化した映像信号および音声信号をロボット制御装置(コントローラ)にて復調するためのデジタル信号処理構成図である。送信されてDQPSK復調器87aに入力したQPSKデジタル変調信号はDQPSK復調器87aによりデータビット列に復調される。この信号はフレーム化された信号であるためプリアンブル処理装置88aによりプリアンブルが取り除かれ、デランダマイザ89aによりランダマイズ化された信号を元の信号に戻す。その後RS(リードソロモン)誤り訂正器90aによりフレーム毎の誤り訂正が行われる。フィルタ91aにおいて帯域制限用のFIRフィルタで符号間干渉が解消され、FIFO(First In First Out)92aからフレーム毎の有効なデータが外部クロックに同期して出力される。なお、93bはQPSK変調された信号からデータを復調するための搬送波再生と同期再生を行うためのタイミング回路である。また、94aはCPU95aの制御により上記DQPSK復調器87a〜タイミング回路93aの機能動作を行わせるためのインターフェース回路である。通常はPSIもしくはI2Cバスが用いられる。
【0021】
図14に本システムのフレーム構成を示す。このフレーム構成ではデータのフレームはATM UTOPIA準拠の1フレーム当たり映像・音声データを188バイトとし、フレームの全バイト数を204バイトとした。プリアンブルのビット数は本システムでは伝送路の変動が大きいためビット同期を確実に取るため10バイトとし、RS訂正符号は4バイト、ガードビットは2バイトとした。RS訂正符号は4バイトにより理論上1フレーム当たり2バイトのデータの誤り訂正が可能となる。
【0022】
図15はロボット制御装置側に採用したAGC回路を示す図である。本回路において、ハイブリッド回路95aに入力された信号は帯域通過フィルタ100aと電力増幅器96aに入る。電力増幅器96aは出力信号より遙かに低いレベルでこの増幅器96aの出力側に入力されるためこの信号による影響を受けることはない。一方、帯域通過フィルタ100aではQPSK信号fpとロボットからの情報信号fiのみを通過させ、電力増幅器96aからの音声信号fcを減衰させる。帯域通過フィルタ100aは並直列型帯域通過フィルタを採用しているため信号fcのみを急峻に減衰させると共に、ハイブリッド回路95aのアイソレーション(20〜25dBのアイソレーション)と相まって回り込みによる干渉を防ぐ効果がある。また、希望信号であるロボットからのFSK変調された情報信号とQPSK変調信号は互いに相互関係のある信号であり、独立していないため、周波数fpとfiを20MHz〜50MHzの帯域内に入るように設定する。
【0023】
そして、図22に示すように密結合ケーブルおよび結合器を通した信号の周波数特性では周波数fpとfiはほぼ同レベルで変動するため、この2波の周波数のみを共通に通過する帯域通過フィルタ100aを設けておく。前記レベルでAGCをかけると同レベルで1stAGC増幅器101aに入るため、2波のレベルによる歪みは最小になる。また、密結合ケーブル伝送のような極めて変動の大きい入力信号レベルを取り扱うためにはダイナミックレンジの広いAGC増幅器が要求される。この対応として、AGC回路を2段構成にしており、信号レベルが小さい時はS/Nを劣化させないように2ndAGC増幅器103aが早く減衰し、強入力時には2波による3次歪みの影響を小さくするため、1stAGC101aが動作する遅延回路104aを採用した。なお、102aは低雑音増幅器、105aは分波器である。
【0024】
図16に従来の分波器の構成を本発明の実施例との比較のために示す。図において、低域通過フィルタ106aはfpとfiを取り出して、このfpとfiは低雑音増幅器98aにより増幅されて出力される。107aは高域通過フィルタで出力用電力増幅器96aによりfcが増幅され出力される。
図17に低域通過フィルタ106aの周波数特性を示す。fpとfiは通過するが、阻止域のfc付近で低域通過フィルタ106aの反射の影響で周波数が充分に離れていない場合、減衰特性が悪化する。また、図18に高域通過フィルタ107aの周波数特性を示すが、fi、fp付近で減衰特性が悪化する。
図19は、低域通過フィルタ108aと高域通過フィルタ109aを備えた本発明に係る分波器の構成を示す図であるが、図20に示すように、ハイブリッド回路95aの高域周波数特性とアイソレーション特性により減衰域での跳ね返りを小さくすることができるし、図21に示すように、高域通過フィルタ109aにてfiとfpを減衰させることができる。
【0025】
橋梁点検ロボットとコントローラ側の無線信号の伝送線路(密結合ケーブル)と結合器とを組み合わせたVHF帯での周波数特性を図23に、また、その位相特性を図24に示す。伝送線路は結合器内で振幅位相合成を行っているが、その内部の結合用ループの配置位置と合成方法および密結合ケーブルのツイストペア線のよりピッチにより、特定の周波数間隔で振幅・位相変化点が現れる。実測例では、撚りピッチ約80mm、結合器のループ間の配置約80mmでは16MHz〜20MHzの周波数間隔で現れる。また、この周波数は敷設ケーブルの設置条件、監視用に引き出している同軸ケーブルとの不整合等により変化する。この特性を持った伝送路で帯域6〜10MHzのデジタル映像信号を伝送する場合、振幅あるいは位相の変化点で伝送誤りが発生する。特にQPSK変調を用いた場合、位相が45°以上変化すると誤りが発生する。このため、伝送用無線周波数帯域が振幅・位相変化点に入らないように周波数を選ばなければならない。また、周波数を最適に設定したとしても環境条件が変わると周波数変化点が変わるため周波数の切り換えが必要になってくる。この切り換え方式について以下に説明する。
【0026】
図23において、送信周波数をf01,f02に選ぶ場合、f01,f02の関係を以下のように選ぶとこの変化点を避けることができる。すなわち、
f02=f01+△fs/2
ここで△fsは周波数の変化点の現れる周波数間隔である。
図25には、巡視ロボット側及びロボット制御装置(コントローラ)側の無線機構成を示す。109aはQPSK変調器、80aはアップコンバータ、110aはf01とf02の周波数可変型局部発振器であり、111aはf01、f02共に通過可能な帯域を持った帯域通過フィルタ、82aは出力用電力増幅器である。送信周波数をスイッチSWにより巡視ロボット側で切り換える。
【0027】
ロボット側無線機で送信周波数を変える方法として、周波数可変型局部発振器110aの周波数をスイッチSWによりf01とf02に切り換える。帯域通過フィルタ111aをf01、f02共に通過し、電力増幅器82aからRF信号が密結合ケーブルを通して送出される。コントローラ側無線機では送受分離用ハイブリッド37aでRF信号を受信した後低雑音増幅器38a、ダウンコンバータ42aを通してIF信号に変換される。この信号の一部を分配器112aで取り出した後、周波数検出器113aにより周波数を判別し、周波数可変型局部発振器114aにより自動的に周波数を切り換える。このようにすることによりロボット側の送信周波数のみの切り換えで切り替え作業を行うことができるので、コントローラ側の周波数切り換え忘れを防ぐことができる。切り替える周波数はf01とf02の二つに限定されず多数の周波数でもよい。
【0028】
図26はコントローラ側無線装置から制御用FSK変調器を用いて周波数を任意に切り換える方法を採用した無線機の構成を示したものである。33aはCPU、34aはFSK復調器、35aは送受分離用ハイブリッドである。コントローラ側無線装置では110aはシンセサイザー型局部発振器、85aはCPU、68aはFSK変調器である。これらの無線機においては、コントローラ側でCPU85aによりダウンコンバータ42aのIF信号周波数を局部発振器110aにより切り換えると共に、FSK変調器68aによりロボット側にも周波数設定情報を送信する。一方、ロボット側ではこの制御信号によりシンセサイザー型局部発振器115aの周波数を切り換える。このようにすることによりロボット運転中でも即座に周波数を切り換えることができる利点がある。なお、切り換える周波数はf01とf02に拘らず受信帯域内であれば任意の周波数でも良い。
【0029】
以上のように、カメラ4で撮影した映像をデジタル信号とし、このデジタル映像信号をデジタル無線変調であるQPSK変調するようにしたので、S/N比(信号対雑音の比)を十分取ることができ、通信距離を長くすることができた。また、画像を再加工する場合や映像を繰り返し再生したり複製したりする場合に起こる画質の劣化を小さいものに改善することができた。また、リードソロモン誤り訂正符号器71により訂正方式を最適化したことにより、ロボット制御装置9側からの制御、映像の応答における信号の遅延を大幅に改善することができた。
【0030】
以上に説明したように、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を確実に送受信することができる。
したがって、本発明は電波法に抵触しない微弱電波により橋梁を点検することができるという大きな価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の橋梁点検設備の概略構成図である。
【図2】密結合ケーブルの構造を示す斜視図である。
【図3】密結合ケーブルのレールへの取り付け状態を示す斜視図である。
【図4】巡視ロボットの内部を示す側面図である。
【図5】巡視ロボットの内部を示す平面図である。
【図6】レール上の巡視ロボットを示す正面図である。
【図7】図5のA−A部における断面図である。
【図8】巡視ロボットの底面図である。
【図9】巡視ロボットのシャーシの内部を示す側面図である。
【図10】従来の橋梁点検設備を示す概略構成図である。
【図11】巡視ロボットの内部構成図である。
【図12】無線装置周辺の構成図である。
【図13】ロボット制御装置におけるデジタル信号処理器の構成図である。
【図14】図13のデジタル信号処理器のフレーム構成を示す図である。
【図15】AGC回路の構成図である。
【図16】従来の分波器の構成図である。
【図17】従来の低域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図18】従来の高域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図19】本発明に係る分波器の構成図である。
【図20】本発明に係る低域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図21】本発明に係る高域通過フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図22】密結合ケーブルの周波数特性を示すグラフである。
【図23】長距離伝送時において密結合ケーブル及び結合器を通した信号の周波数特性を示すグラフである。
【図24】長距離伝送時において密結合ケーブル及び結合器を通した信号の位相特性を示すグラフである。
【図25】巡視ロボット側及びロボット制御装置側の無線装置の構成図である。
【図26】FSK変調器を用いて周波数を任意に切り換えるための無線装置の構成図である。
【符号の説明】
【0032】
2 レール
3 巡視ロボット
6 アンテナ
8 密結合ケーブル
9 ロボット制御装置
21 凹溝部
23 支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の下部に敷設されたレールと、デジタル無線装置を有し前記レール上を走行して橋梁を点検する巡視ロボットと、巡視ロボットを操作してその点検結果を受信するロボット制御装置とからなる橋梁点検設備において、前記レールに沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブルを敷設するとともに、巡視ロボットには密結合ケーブルに非接触で近接するアンテナである結合器を設けて、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を送受信するようにしたことを特徴とする橋梁点検設備。
【請求項2】
レール面に密結合ケーブルの径より幅広の凹溝部を形成し、密結合ケーブルを前記凹溝部に設けた支持部材に支持させることにより、密結合ケーブルとレールとの間に空間を確保するとともに、レール面からの突出高さを低くして密結合ケーブルを敷設した請求項1に記載の橋梁点検設備。
【請求項3】
巡視ロボットのデジタル無線装置にQPSK周波数可変型局部発振器を備えてスイッチにより伝送路の送受信周波数をf01又はf02に切り換え可能なものとし、伝送線路の敷設環境による特定周波数での干渉妨害を周波数の切り替え手段により防止した請求項1又は2に記載の橋梁点検設備。
【請求項4】
ロボット制御装置にFSK変調器を設け、巡視ロボットのデジタル無線装置にはFSK復調器を設けて、ロボット制御装置から巡視ロボットにFSK制御信号を通して通信周波数の切り換え指示を行うとともに、ロボット制御装置の通信周波数の切り換えを内蔵したCPUにより同時に行うようにした請求項1又は2に記載の橋梁点検設備。
【請求項1】
橋梁の下部に敷設されたレールと、デジタル無線装置を有し前記レール上を走行して橋梁を点検する巡視ロボットと、巡視ロボットを操作してその点検結果を受信するロボット制御装置とからなる橋梁点検設備において、前記レールに沿って微弱電波を漏洩する密結合ケーブルを敷設するとともに、巡視ロボットには密結合ケーブルに非接触で近接するアンテナである結合器を設けて、巡視ロボットとロボット制御装置との間で密結合ケーブルを介して通信信号を送受信するようにしたことを特徴とする橋梁点検設備。
【請求項2】
レール面に密結合ケーブルの径より幅広の凹溝部を形成し、密結合ケーブルを前記凹溝部に設けた支持部材に支持させることにより、密結合ケーブルとレールとの間に空間を確保するとともに、レール面からの突出高さを低くして密結合ケーブルを敷設した請求項1に記載の橋梁点検設備。
【請求項3】
巡視ロボットのデジタル無線装置にQPSK周波数可変型局部発振器を備えてスイッチにより伝送路の送受信周波数をf01又はf02に切り換え可能なものとし、伝送線路の敷設環境による特定周波数での干渉妨害を周波数の切り替え手段により防止した請求項1又は2に記載の橋梁点検設備。
【請求項4】
ロボット制御装置にFSK変調器を設け、巡視ロボットのデジタル無線装置にはFSK復調器を設けて、ロボット制御装置から巡視ロボットにFSK制御信号を通して通信周波数の切り換え指示を行うとともに、ロボット制御装置の通信周波数の切り換えを内蔵したCPUにより同時に行うようにした請求項1又は2に記載の橋梁点検設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−37557(P2006−37557A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220270(P2004−220270)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(391007460)名古屋道路エンジニア株式会社 (47)
【出願人】(592212858)住友電工ハイテックス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(391007460)名古屋道路エンジニア株式会社 (47)
【出願人】(592212858)住友電工ハイテックス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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