橋梁通過車両の車重計測システム、橋梁通過車両の車重計測方法、およびコンピュータプログラム
【課題】車両の走行速度に影響を受けることなく、精度良く車両重量を算出する車両重量算出システムを提供する。
【解決手段】車両検知処理部21は、カメラ5が撮影した監視映像データ31と車軸検知用ひずみ計9により計測された進入データ32を基に検知車両画像データ33を出力する。軸位置特定処理部23は、予め決められた時間ごとの監視映像データ31から検知車両画像データ33を追跡し、軸間隔データを基に先頭軸の位置特定を行う。影響線データ変換処理部24は、軸間隔データを基に、影響線データ40を時間軸影響線データ35に変換する。車重算出部25は、軸重算出用ひずみ計7によって計測された軸重算出用データ36と時間軸影響線データ35を基に、車重量算出処理を行い、車両10の車重を求める。
【解決手段】車両検知処理部21は、カメラ5が撮影した監視映像データ31と車軸検知用ひずみ計9により計測された進入データ32を基に検知車両画像データ33を出力する。軸位置特定処理部23は、予め決められた時間ごとの監視映像データ31から検知車両画像データ33を追跡し、軸間隔データを基に先頭軸の位置特定を行う。影響線データ変換処理部24は、軸間隔データを基に、影響線データ40を時間軸影響線データ35に変換する。車重算出部25は、軸重算出用ひずみ計7によって計測された軸重算出用データ36と時間軸影響線データ35を基に、車重量算出処理を行い、車両10の車重を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行する車両、特に、重量車両の車両重量を算出する車両重量算出システム、車両重量算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の維持管理をする上で、橋梁を通過する重量車両の車軸重量(軸重)が橋梁の損傷を予測するために重要な情報となる。軸重測定ため、橋梁の主桁に設置したひずみ計(以下、軸重算出用ひずみ計)から車両通過時のひずみ値を連続測定し,軸重を算出する手法(Weigh In Motion)が提案されている。この手法では、車両が軸重算出用ひずみ計の直上を通過する時刻Tを求めることが必要となる。図28は、橋梁の主桁に設置した軸重算出用ひずみ計および車軸検知用ひずみ計を示す図である。例えば、非特許文献1に記載された手法では、車線ごとに、軸重算出用ひずみ計2001以外に車軸通過に鋭敏な2つの箇所に車軸検知用ひずみ計2002a、2002bを追加設置し,以下の手法で車軸通過時刻Tを特定する。
【0003】
ひずみは車軸が通過する前は徐々に増大し,車軸が通過した後は徐々に減少する。図29は、車軸検知用ひずみ計2002a、2002bで検出したひずみの時間変化を示す図である。図29に示す歪波形からピーク検出を行い、1番目のピークの時間を1軸目通過のタイミングT1とし、2番目のピークの時間を2軸目通過のタイミングT2とする。
図28に示すように、2つの車軸検知用ひずみ計2002a、2002bと軸重算出用ひずみ計2001の設置間隔をそれぞれD1、D2とすると、前記の通過タイミングT1、T2から、車軸が軸重算出用ひずみ計の直上を通過した時刻Tは、例えば次式(1)、(2)で算出される。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】
ただし、式(1)、式(2)において、vは車両通過速度である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「リアルタイム全自動処理Weight-In-Motionによる長期交通加重モニタリング」 土木学会論文集 2004年10月、No.773/I−69、pp.99−112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載された手法は、車両の等速走行を仮定して時刻Tを求める手法であり、道路の渋滞などにより通過速度が低下するなど車両速度に加減速が生じた場合に適用することが難しいという問題がある。図30は、渋滞時における車軸検知用ひずみ計2002a、2002bで検出したひずみの時間変化を示す図である。図30に示すように、渋滞時には、車軸検知用ひずみ計2002a、2002bの計測結果が時間軸を引き延ばした形状となり、車軸通過時のピークが鈍くなるため、通過タイミング(T1、T2)を正しく検出できなくなってしまう。結果として車軸が軸重算出用ひずみ計の直上を通過する時刻Tを正しく算出できなくなり、正確な車両重量を算出できないという問題が生じる。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、車両の走行速度に影響を受けることなく、精度良く車両重量を算出することが可能な車両重量算出システム、車両重量算出方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために本発明は、道路のひずみを計測するひずみ計と、前記ひずみにより前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出装置とを備えた車両重量算出システムであって、前記車両重量算出装置は、前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め記憶する軸間隔データ記憶部と、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定する軸間隔特定処理部と、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定する軸位置特定処理部と、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成する影響線データ変換処理部と、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出する車両重量算出部と、を備えることを特徴とする車両重量算出システムである。
【0011】
また、本発明は、上記に記載の発明において、複数の車種の車両画像を記憶する車両画像記憶部を更に備え、前記軸間隔特定処理部は、前記監視映像データから検出した当該車両の車両画像と、前記車両画像記憶部に記憶された車両画像との類似度を算出し、最も類似度が高い車両画像の車種を、当該車両の車種と特定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記車両が前記荷重計測範囲に進入した場合の前記監視映像データから当該車両の検知車両画像を求める車両検知処理部を更に備え、前記軸位置特定処理部は、前記予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データにおいて、前記車両検知処理部が求めた検知車両画像と類似する領域を検出し、前記予め決められた時間ごとの領域の移動画素数を求め、前記移動画素数に対応した距離から前記予め決められた時間ごとの車軸の位置を特定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記車両重量算出部は、前記ひずみ計によって計測されたひずみに、車軸ごとの時間軸影響線データを最も適合させるパラメータを求め、前記パラメータから車軸ごとの重量を算出し、算出された車軸ごとの重量の総和を当該車両の車両重量とすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出方法であって、前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、軸間隔特定処理部が、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、軸位置特定処理部が、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、影響線データ変換処理部が、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、車両重量算出部が、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、を含むことを特徴とする車両重量算出方法である。
【0015】
また、本発明は、道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出するコンピュータに、前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両の走行速度に影響を受けることなく、精度良く車両重量を算出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車両重量算出システムの概略構成図である。
【図2】同実施形態に係る軸重による橋梁のひずみの計測を示す図である。
【図3】同実施形態に係る2車線の道路における軸重算出用ひずみ計及び車軸検知用ひずみ計の設置例を示す図である。
【図4】同実施形態に係る2車線の道路における座標の定義を示す図である。
【図5】同実施形態に係る影響度データを示す図である。
【図6】同実施形態に係る車両画像データベースに記憶される辞書画像データの作成手法を示す図である。
【図7】同実施形態に係る辞書画像データを作成する際に利用する部分空間法を示す図である。
【図8】同実施形態に係る軸間隔データを示す図である。
【図9】同実施形態に係る車両重量算出システムの動作を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態に係る車両検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】同実施形態に係る車両検知処理を示す図である。
【図12】同実施形態に係る車両検知処理において検知車両画像の切り出し方を示す図である。
【図13】同実施形態に係る軸間隔特定処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】同実施形態に係る軸間隔特定処理を示す図である。
【図15】同実施形態に係る軸位置特定処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】同実施形態に係る軸位置特定処理における検知車両画像の追跡手法を示す図である。
【図17】同実施形態に係る影響線データの概念を示す図(その1)である。
【図18】同実施形態に係る影響線データの概念を示す図(その1)である。
【図19】同実施形態に係る影響線データ変換処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】同実施形態に係る影響線データの一例を示す図である。
【図21】同実施形態に係る車軸に対応した時間軸影響線データの一例を示す図である。
【図22】同実施形態に係る車重算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図23】同実施形態に係る比較用データを示す図である。
【図24】同実施形態に係る車軸に対応した時間軸影響線データを示す図である。
【図25】同実施形態に係る車軸に対応した時間軸影響線データとパラメータの関係を示す図である。
【図26】同実施形態により得られた車重別の統計データの一例を示した図である。
【図27】本発明に係る他の実施形態における複数車線におけるひずみ計の設置の一例を示す図である。
【図28】橋梁におけるひずみ計の設置例を示す図である。
【図29】車軸検知用ひずみ計の計測データを示す図である。
【図30】減速走行した車両の車軸検知用ひずみ計の計測データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、車両重量算出システム1の概略構成図である。車両重量算出システム1は、車両重量算出装置3、カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9から構成される。カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9のそれぞれと、車両重量算出装置3は、ネットワーク2を介してデータ送受信可能である。ネットワーク2は、例えば、インターネット等であり、データ送受信は無線通信でも有線通信であってもかまわない。
【0020】
車両重量算出装置3は、例えば、コンピュータ等であり、監視センター等に設置され、制御部11、入力部12、表示部13、通信部14、記憶部15を有する。制御部11は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ等であり、車両重量算出装置3の各部の制御を行うとともに、後述する各機能部を備える。入力部12は、例えば、キーボードやマウスなどであり、車両重量算出装置3の操作者の操作を受けて情報の入力を行う。表示部13は、例えば、ディスプレイ装置やスピーカなどであり、記憶部15に記憶されるデータなどの出力を行う。通信部14は、ネットワーク2を介してカメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9のそれぞれとのデータの送受信等を行う。記憶部15は、例えば、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、ハードディスクなどであり、後述するデータなどを記憶する。
【0021】
カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9は道路に設置される。カメラ5は、道路を通行する車両10を撮影し、撮影した画像を監視映像データ31として車両重量算出装置3に送信する。
なお、前記のように、橋梁の維持管理をする上で重要なのは橋梁を通過する重量車両の車両重量を求めることである。したがって、本システムで検知する車両10は主に、トレーラーなどの重量車両となる。
【0022】
図2は、本実施形態に係る原理を示した図である。本実施形態では、橋桁の下面に軸重算出用ひずみ計7を設置し、その部分の伸びひずみを計測する。具体的には、図2の上図に示すように、車両10の通過により、橋桁が下に凸にたわみ、それによって橋桁の下面が引き伸ばされ、その伸びひずみを計測することとなる。図2の下図が、実際に計測されたひずみを示したグラフである。本実施形態に係る軸重算出用ひずみ計7は、例えば、光ファイバひずみ計によって構成され、1/100秒(すなわち、100Hz)で、ひずみを計測する。
【0023】
ここで、ひずみとは、物質の形状の変形であり、局所的には、計測箇所の伸び縮みの量となる。例えば、ある箇所のひずみが0.1であるとき、その箇所が、0.9倍の長さになっていることを示す。これは、つまり、10%の縮小が生じたことを示している。したがって、ひずみとは、比率であり、単位が存在しない値である。単位が存在しないものの、一般には、1/100のひずみを「%」で、1/1000000のひずみを「μ」で表すことが多く、伸び方向のひずみを「+」として表すことが多い。本実施形態おけるひずみもこの表記に従うこととする。
【0024】
次に、図3及び図4を参照しつつ、2車線の道路における軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9の設置例と、以下の説明で用いる座標軸の定義について説明する。
図3に示すように、軸重算出用ひずみ計7は、道路を支える橋脚61a、61bの間の桁63に設置される。軸重算出用ひずみ計7によって計測されたひずみは、軸重算出用データ36として車両重量算出装置3に送信される。
車軸検知用ひずみ計9は、桁63の桁端に設置される。図4に示すように、車線ごとの車両方向ごとに座標軸Xを設定した場合、車軸検知用ひずみ計9は、車両が荷重計測範囲(X=0[m]からX=L[m]の範囲)に進入したときのひずみを計測し、進入データ32として車両重量算出装置3に送信する。ここで、荷重計測範囲とは、橋梁上において軸重算出用ひずみ計7にひずみが計測される範囲であり、荷重を支える部材の間隔に等しく、桁と橋脚から成る単純な構造の橋では桁の長さになる。よってこの場合は、橋脚61a、61b間の桁63の長さL[m]となる。
【0025】
図1に戻り、車両重量算出装置3の制御部11は、車両検知処理部21、軸間隔特定処理部22、軸位置特定処理部23、影響線データ変換処理部24、車重算出部25を有する。各処理部は、制御部11が各処理を行うプログラムを読み出して実行することにより構成される。プログラムは、例えば、記憶部15に記憶されているものとする。
【0026】
車両検知処理部21は、カメラ5で撮影した監視映像データ31から車両10を検知する。軸間隔特定処理部22は、検知された車両10の画像である検知車両画像から車種を特定し、特定した車種から車軸の間隔を特定する。軸位置特定処理部23は、検知車両画像から道路上での車両10の先頭の車軸の位置を特定する。影響線データ変換処理部24は、基準となるひずみの変化を示した影響線データ40を、先頭軸の位置と車軸の間隔に基づいて、車両10が通過に要する時間による影響を反映した時間軸影響線データ35に変換する。車重算出部25は、時間軸影響線データ35と、軸重算出用ひずみ計7により計測された軸重算出用データとから車両10の車重を算出する。
【0027】
記憶部15は、監視映像データ31、進入データ32、検知車両画像データ33、先頭軸位置データ34、時間軸影響線データ35、軸重算出用データ36、通過車両重量記憶部37、影響線データ40、車両画像データベース(DB)41、軸間隔データベース(DB)42、位置対応表データ43を記憶する。
【0028】
これらのデータのうち、監視映像データ31、進入データ32、検知車両画像データ33、先頭軸位置データ34、時間軸影響線データ35、軸重算出用データ36、及び通過車両重量記憶部37に記憶される車重は、カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9、及び制御部11の各処理部による処理の入力データあるいは出力データである。
【0029】
影響線データ40は、図5に示すように、図3及び図4に示す橋桁上の位置X(0≦X≦L)に1[t(トン)]の1軸の車軸を載せたときに軸重算出用ひずみ計7で計測されるひずみεを示し、これを、位置Xの関数として定義することにより得られるデータである。荷重計測範囲外では、「0」となる。記憶部15に記憶させる影響線データ40は、予め軸重が既知の試験車両を通行させて取得したひずみを、1[t]の1軸の車軸を載せた場合に換算することにより求められる。
なお、影響線データ40は、橋梁の個々の荷重計測範囲ごとに異なるため、複数の荷重計測範囲について処理を行う場合には、それぞれの影響線データを記憶しておく必要がある。
【0030】
車両画像データベース(DB)41は、車両検知処理部21によって、車種を特定する際に、参照される、車両の種類ごとの辞書画像データを予め記憶する。
ここで、車両画像データベース41に記憶される辞書画像データの生成について図6及び図7を参照しつつ説明する。図6に示すように、ある車種G、例えば、「トレーラー」の学習用サンプル画像データを複数集め、例えばエッジ点抽出による2値化などの特徴画像に加工する。全ての加工済み画像を1次元のベクトルとみなし、個々の共分散行列を作成して全て足し合わせ、足し合わせた行列について固有値と固有ベクトルを求める。求めた固有値の大きい順にd個の固有ベクトルを足し合わせ、足し合わせたベクトルを元の画像のサイズに変換し、車種Gの辞書画像データとする。
【0031】
図6の演算は、部分空間法といわれる演算手法であり、図7は、この演算の概念を示した図である。図7に示すように、トレーラーの学習用サンプル画像データを、ある空間上(図7では、一例として二次元空間上としている)に分布させ、その中で、この分布を最もよく表すベクトルを選択し、選択したベクトルを元の画像のサイズに変換することによって辞書画像データが生成される。
以上の処理をすべての車種、例えば、「大型トラック」、「タンクローリー」、「ミキサ車」、「大型ダンプ」などに対して行い、全ての車種の辞書画像データを作成し、車両画像データベース41に記憶させる。
【0032】
軸間隔データベース(DB)42は、図8に示されるようなデータ構成を有しており、車種、及び車種ごとの軸間隔データを記憶する。例えば、車種が「3軸車大型トラック」であれば、軸が3本あり、1‐2軸間の軸間隔は「5870[mm]」、2−3軸間の軸間隔は「7070[mm]」として記憶されることになる。
【0033】
位置対応表データ43は、画像フレームでの移動画素数(画素)と実際の距離(位置)の対応を示すデータである。一般に、監視カメラ5と道路面の相対的な位置関係は一定であると考えられる。そして、車線の方向は既知である。この前提の下、車線上で実際の距離を計測することで、監視映像データ31の画像フレームにおいて車線方向にA[画素]移動したら、実際の路面上でB[m]移動したことになる、という対応関係を事前に求めておくことが可能である。この画素Aと実際の距離(位置)Bの対応関係を、車軸検知用ひずみ計9の設置位置を起点とした位置対応表データ43として記憶部15に予め記憶させておく。
なお、監視カメラ5の撮影方向やズームなどが遠隔操作可能で、路面との相対的な位置関係が変化する場合には、撮影方向やズームなどの情報から、位置対応表データ43の情報を再計算することとなる。
【0034】
(車両重量算出システムの動作)
次に、車両重量算出システム1の動作について説明する。
図9は、車両重量算出システム1の処理全体の流れを示す概略フローチャートである。
車両検知処理部21は、カメラ5が撮影した監視映像データ31と車軸検知用ひずみ計9により計測された進入データ32を基にカメラ5が撮影した車両10の車両検知処理を行い(ステップS101)、検知車両画像データ33を出力して記憶部15に記憶させる。
【0035】
軸間隔特定処理部22は、車両検知処理部21が検知した検知車両画像データ33と車両画像データベース41に記憶されている辞書画像データから車両10の車種を特定し、特定した車種を基に軸間隔データベース42を参照し、車両10の軸間隔データを検出する軸間隔特定処理を行う(ステップS102)。軸位置特定処理部23は、カメラ5が撮影した監視映像データ31と、軸間隔特定処理部22が検出する軸間隔データを基に軸位置特定処理を行い、先頭軸位置データ34を出力して記憶部15に記憶させる(ステップS103)。
【0036】
影響線データ変換処理部24は、軸位置特定処理部23が求めた先頭軸位置データ34と、軸間隔特定処理部22が求めた軸間隔データを基に、記憶部15に予め記憶されている影響線データ40を変換して、時間に対応した時間軸影響線データ35を生成する影響線データ変換処理を行い、生成した時間軸影響線データ35を記憶部15に記憶させる(ステップS104)。車重算出部25は、軸重算出用ひずみ計7によって計測された軸重算出用データ36と、影響線データ変換処理部24が生成した時間軸影響線データ35を基に、車重量算出処理を行い、車両10の車重を算出する車重算出処理を行う(ステップS105)。以下、ステップS101〜S105の各処理について詳細に説明する。
【0037】
(車両検知処理S101)
次に、図10から図12を参照しつつ、車両検知処理(ステップS101)について説明する。
図10に示すように、まず、車両検知処理部21は、カメラ5によって撮影された監視映像データ31を記憶部15から読み出し、背景画像を作成する(ステップS201)。
ここで、監視映像データ31を取得する監視カメラ5の撮影方向は、監視領域となる道路面に対して固定されており、その相対的な位置関係は不変であるか、もしくは、撮影方向とカメラの位置を把握できるものとする。監視映像データ31は、一定時間毎に画像フレームを取得することで得られ、各画像フレームには取得時刻が付与される。通常利用される監視映像は、例えばNTSC(National Television System Committee)規格に従っており、毎秒30枚の画像フレームが取得される。
【0038】
車両検知処理部21は、図11に示すように、監視映像データ31から一定時間毎に画像フレームを一定枚数読み込み、それらの画像フレームの平均画像を作成することで、画像フレーム間で変化があった部分を消し去る、即ち、監視映像データ31から移動している車両部分を消し去り、背景の道路面だけの背景画像81を作成する。
背景画像81の作成は一定時間毎に行われ、他の処理とは関係なく常時更新するものとする。一定時間毎に背景画像81を更新していくことで、天候や時間による明るさの変動なども適宜反映することが可能になる。
【0039】
車両検知処理部21は、車軸検知用ひずみ計9により計測された車両10の進入データ32を記憶部15から読み出し、予め決められた閾値以上であるかどうかを判定し、重量車両であるかどうかを判定する(ステップS202)。
前述した図3に示す橋梁では、進入データを計測する荷重計測範囲は橋桁63全体であり、車軸検知用ひずみ計9は車両10の進入方向の桁端に設置される。つまり、車軸検知用ひずみ計9で重量車両の進入を検知した時点で、車両10が荷重計測範囲に入ったとみなす。荷重計測範囲は桁63と平行なX軸を考えると桁63上の位置X=0[m]からX=L[m]までとなる。
【0040】
なお、荷重計測範囲前の地点に車軸検知用ひずみ計9を設置した場合でも、後述の軸位置特定処理によって荷重計測範囲に入った時刻を特定できるため、実用上の問題は生じない。
また、監視映像データ31と進入データ32の計測タイミングは同期されており、一定の間隔Δt[秒]で、毎秒一定数(1/Δt)のデータが取得されているものとする。
判定基準となる進入データ32の閾値は、例えば、事前に軸重の判明している車両を車軸検知用ひずみ計9を設置した橋梁を通過させることによって値を決定し、入力部12より入力を受け付け、予め記憶部15に記憶される。
【0041】
ステップS202において、車両検知処理部21が、車両10を重量車両と判定しなかった場合、車両検知処理部21は、次の進入データ32を取得し、重量車両であるかどうかの判定を行う。一方、ステップ202において、車両検知処理部21が、車両10を重量車両と判定した場合、車両10が荷重計測範囲に進入した時刻の監視映像データ31を記憶部15から読み出し、図11に示すように、その時点での背景画像81を引き算処理することで、車両部分のみの検知車両画像データ33を抽出する(ステップS203)。
【0042】
なお、ステップS203の車両画像抽出処理について、動いている車両は他にも存在するため、検知した車両のみを切り出す必要がある。これには以下の手法を用いる。
図12に示すように、カメラ5と路面の位置関係は固定であることから、監視画像フレーム中の車軸検知用ひずみ計9の設置位置を事前に特定しておくことは可能である。そして、進入データ32の取得によって重量車両の先頭の車軸が車軸検知用ひずみ計9上に乗っていることが分かるため、前記監視画像フレーム中の位置から後方一定範囲の領域を切り出す。なお、この処理の時点では車両の大きさが分からないため、検知した車両の全体が入らない場合がある。このような場合でも、検知車両画像の利用目的は、車両画像データベース41との照合による車両の型番特定、監視映像データ31における車両領域の追跡による車軸位置を特定に検知車両画像を用いることにあるため、この利用目的においては、車両10の全体が検知車両画像に含まれていなくてもよく、上記で定めた一定範囲の大きさで作成しておけばよいこととなる。
【0043】
(軸間隔特定処理S103)
次に、図13、図14を参照しつつ、軸間隔特定処理部22による軸間隔特定処理について説明する。
図13に示すように、まず、軸間隔特定処理部22は、車両検知処理によって求められた検知車両画像データ33を車両画像データベース41に記憶されている辞書画像データと照合して、検知車両の車種を特定する(ステップS301)。車種の特定は、図14に示される手法により行う、軸間隔特定処理部22は、検知車両画像データ33に対して、辞書画像データと同様の加工を行い特徴画像とし、この特徴画像をベクトルAとする。そして、軸間隔特定処理部22は、軸間隔特定処理部22ベクトルAと、車両画像データベース41に記憶された全ての辞書画像データのベクトルB(固有値の大きい順にd個の固有ベクトルを足し合わせたベクトル)との内積を算出して、これを、ベクトルAの大きさの値(|A|)とベクトルBの大きさの値(|B|)の積で除することにより類似度(cosθ)を算出する。
【0044】
軸間隔特定処理部22は、類似度が最も大きかった車種を、検知車両画像データ33、すなわち車両10の車種と決定する。例えば、図14に示す類似度の中では、「トレーラー」の類似度が「0.71」と最も大きいため、検知車両画像データ33の車種は「トレーラー」であると特定される。そして、軸間隔特定処理部22は、特定された車種を軸間隔データベース42と照合し、軸間隔を特定し、軸間隔データを取得する(ステップS302)。
【0045】
(軸位置特定処理S103)
次に、図15、図16を参照しつつ、ステップS103の軸位置特定処理について説明する。
軸位置特定処理は、監視映像データ31に対して、検知車両画像データ33を時系列的に追跡することで、車両の位置、即ち、検知した車軸の位置を一定時間毎に検出するものである。なお、先頭の車軸の位置が検出できれば、他の車軸は軸間隔データから算出可能であるため、軸位置特定処理の対象となるのは、検知車両の先頭の車軸のみである。
【0046】
図15に示すように、軸位置特定処理部23は、監視映像データ31において検知車両画像データ33を時間ごとに追跡、すなわち時間ごとに検知車両画像データ33に示される車両10の監視映像データ31が示す画像内での位置を検出することにより位置データを求める(ステップS401)。この位置データを求める処理は、図16に示す手順により行われる。
【0047】
図16において、監視映像データ31は、Δt秒ごとに画像フレームが保存されているとし、以下の説明では時刻Tに保存した画像フレームをF(T)で示す。まず、入力となる検知車両画像データ33が最初に切り出された画像フレームR0の保存時刻をT=tとしたとき、軸位置特定処理部23は、次の画像フレームF(t+Δt)において、検知車両画像データ33とマッチングする領域R1を探し出す。この画像のマッチング処理は、監視映像データ31の各時間の画像フレームから検知車両画像データ33との差がもっとも小さい領域を見つけることで行われる。そして、F(t)における検知車両画像データ33の位置(x0,y0)と、F(t+Δt)における位置(x1,y1)の間の画像上での距離として移動画素数を算出し、位置データを求める。
なお、(x0,y0)は、入力となる検知車両画像データ33が最初に切り出された際の監視映像データ31における座標、つまり、車両10の先頭の軸が、車軸検知用ひずみ計9上に存在していることを示していることになり、ここを原点として距離を求めることで、車両の先頭軸の車軸検知用ひずみ計9からの距離が分かることになる。このことから、出力する位置データは、車軸検知用ひずみ計9から、先頭の車軸までの距離を移動画素数で示した値となる。
なお、車軸検知用ひずみ計9が、前述したように荷重計測範囲前に設置された場合には、荷重計測範囲までのずれの分を当該処理において補正することになる。
【0048】
そして、軸位置特定処理部23は、求めた位置データに基づいて、記憶部15に予め記憶された位置対応表データ43を参照することで、実際の先頭の車軸の位置を特定し、特定した先頭車軸の位置を示す先頭軸位置データ34を記憶部15に記憶させる(ステップS402)。
【0049】
次に、軸位置特定処理部23は、車両10の軸間隔データを読み込んで、先頭の車軸と最後尾の車軸の間の距離D[m]を算出する。荷重計測範囲の終わる位置をL[m]とすると、直前の軸位置特定処理で得られた先頭軸位置X[m]が(L+D)[m]よりも大きいか否かを判定することにより、軸位置特定処理部23は車両10が荷重計測範囲を退出したか否かを判定する(ステップS403)。車両10が退出していないと判定した場合はステップS401に戻り、次の時間ステップでの画像追跡を行う。車両10が荷重計測範囲を退出したと判定した場合は処理を終了する。
ステップS401、S402、S403の処理は当該車両10が荷重計測範囲を退出するまで繰り返し実行され、先頭軸の位置を示す位置データが記憶部15に追加して記憶されることになる。
【0050】
なお、画像フレーム中における車両の走行領域と方向が既知の場合には、マッチングの際の探索領域を車線上の進行方向にのみ限定でき、処理の低減を行うことができる。
【0051】
(影響線データ変換処理S104)
次に、図17から図21を参照しつつ、ステップS101の影響線データ変換処理について説明する。前述したように、影響線データ40とは、橋桁上の位置X(0≦X≦L)に1[t(トン)]の1軸の車軸を載せたときに軸重算出用ひずみ計7で計測されるひずみεを示し、これを、位置Xの関数として定義することにより得られるデータである。そして、記憶部15に記憶させる影響線データ40は、荷重が分かっている試験車両に橋梁を通過させた際のひずみのデータを1[t]の1軸の車軸の場合に換算することにより求められるものである。この換算は、図17に示すように、1[t]の1軸の車軸を載せた場合と、W[t]の1軸の車軸を載せた場合では、得られるひずみの特性が、W倍になるという関係を利用する。例えば、図18に示すように、4[t]の軸重の試験車両を通過させて計測した場合、得られたひずみのデータを1/4の値にすることにより、影響線データ40を求めることができることになる。
【0052】
図19は、影響線データ変換処理の流れを示すフローチャートである。影響線データ変換処理部24は、前述の処理で得られた車両10の軸間隔データと、先頭軸位置データ34と、影響線データ40を記憶部15から読み出し、影響線データ40を変換し、時間軸影響線データ35を生成する(ステップS501)。
【0053】
前述した軸位置特定処理で説明したように、記憶部15には、先頭軸位置データ34として、荷重計測範囲に車両10が進入した時間tから退出までΔt間隔でn個のデータが記憶されている。影響線データ変換処理部24は、影響線データ40において軸位置特定処理によって追跡した先頭軸の時間T(T=t+Δt×n、n=0,1,2,…,i,…,n)の位置Piにおけるひずみ値を読み出し、先頭軸の時間軸影響線データ35として記憶部15に記憶する。他の車軸に関しては、影響線データ変換処理部24は、軸間隔データを基に当該車軸と先頭軸までの距離Dを読み込み、位置を(Pi+D)として、上記と同様の処理を行い、全軸の時間軸影響線データ35を作成して記憶部15に記憶する。
【0054】
図20、図21は、影響線データ変換処理を説明するための図である。影響線データ変換処理部24は、図20に示す影響線データ40から軸位置特定処理によって追跡した時間T1、T2、T3、T4、T5、T6におけるひずみ値を取得し、図21に示すように、時間軸を横軸としてT1、T2、T3、T4、T5、T6の各々のひずみ値を並べることにより変換を行って、時間軸影響線データ35を生成する。これにより、車両10の通過に要した時間の影響を影響線データ40に反映した時間軸影響線データ35を生成することができる。
【0055】
(車重算出処理ステップS105)
次に、図22から図25を参照しつつ、車重算出処理について説明する。
車重算出処理では、Weigh In Motionとして広く知られている車重算出手法を利用し、影響線データ変換処理で作成した時間軸影響線データ35を、車軸の数だけ、時間軸上に配置し、最小二乗法によって実際に計測されたひずみデータと適合するような倍率を見つけることで、各車軸の重量を算出する。最終的に各軸重を合計して車重を得る。
【0056】
図22は、車重算出処理の流れを示すフローチャートである。
車重算出部25は、時間軸影響線データ35から、データが保存されている時刻の範囲(t≦T≦t+Δt×n)を取得し、対応する範囲のデータを軸重算出用ひずみ計7で計測された軸重算出用データ36から切り出して比較用データを生成し、生成した比較用データを記憶部15に記憶させる(ステップS601)。そして、車重算出部25は、最小二乗法を用いて、比較用データに最も適合する影響線データ変換処理で作成した各車軸の時間軸影響線データ35の各倍率を求めて、各軸の質量を算出し(ステップS602)、軸重総和を求めて車両10の車重を算出する(ステップS603)。
【0057】
図23は、比較用データの一例を示す図であり、以下の説明において比較用データをJ(t)とする。図24は、影響線データ変換処理で作成した時間軸影響線データ35を示す図であり、車両10を3軸車(車軸A、B、C)とし、時間軸上に配置した各車軸に対する時間軸影響線データ35をそれぞれ、JA(t)、JB(t)、JC(t)として示している。ステップS602の最小二乗最適化処理では、各車軸の時間軸影響線データ35のJA(t)、JB(t)、JC(t)を用いて、比較用データをJ(t)最もよく近似するパラメータa、b、cを求める。最小二乗誤差Eは、次式(3)で定義され、このEを最小とするパラメータa、b、cを数値計算最適化手法によって探索する。
【0058】
【数3】
【0059】
図25は、各倍率で倍化された各車軸の時間軸影響線データ35を示す図である。影響線データは1トン当たりに計測されるひずみデータであり、それをa倍、b倍、c倍した結果、実測のデータと最も近い値になったため、車重算出部25は、各車軸の質量をそれぞれa[トン]、b[トン]、c[トン]と算出し、少なくとも車両10が通過した日時、通過した車両10の車種とともに、算出した車重の値を通過車両重量記憶部37に記憶させる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、監視映像データ31から車軸の位置を時系列的に特定し、車軸の位置変化を反映した時間軸影響線データ35を作成することで、各車軸の軸重を精度よく算出し、車両重量を求めることができる。そして、本実施形態では、車両10の通過に要する時間を考慮した影響線変換処理を行うことから、渋滞時においても同様の効果を奏する。
【0061】
図26は、本実施形態に係る車両重量算出システム1により求めた車両重量を用いて、日付ごとに車両重量ごとの台数を示したグラフであり、このようなグラフを用いることにより、路線別の比較や、通過量の傾向の把握を行なうことができ、ひいては、橋梁劣化予測、点検、補修の必要箇所の特定や特定した箇所の工事の時期予測、道路増設計画、規制、指導強化方針の決定などに利用することができる。
【0062】
なお、上記の実施形態では、図3に示すように片側1車線の道路を例に説明したが、複数車線の道路においても適用可能である。図27は片側2車線上下4車線で主桁が6本ある場合のひずみ計の設置例を示す図である。この例に示されるように、それぞれの車線に対応した主桁に軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9を設置し、上記と同様の処理を行うことによって、複数車線の道路を通行する車両の車重を求めることが可能である。
また、本実施形態では、荷重計測範囲内には1台の車両10が存在するとして処理を説明したが、複数の重量車両を同時に考慮する場合には、上記の1台の場合の処理を複数、同時並行に実行すればよい。
【0063】
また、制御部11が行う処理を実現するプログラムを作成し、汎用のコンピュータがそのプログラムを読み込んで車両重量算出装置3を実現することも可能である。このプログラムは、CD−ROM等の記録媒体に記録されてもよいし、ネットワークを介して流通させることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1………車両重量算出システム
3………車両重量算出装置
5………カメラ
7………軸重算出用ひずみ計
9………車軸検知用ひずみ計
10………車両
11………制御部
15………記憶部
21………車両検知処理部
22………軸間隔特定処理部
23………軸位置特定処理部
24………影響線データ変換処理部
25………車重算出部
31………監視映像データ
32………進入データ
33………検知車両画像データ
34………先頭軸位置データ
35………時間軸影響線データ
36………軸重算出用データ
37………通過車両重量記憶部
40………影響線データ
41………車両画像データベース
42………軸間隔データベース
43………位置対応表データ
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行する車両、特に、重量車両の車両重量を算出する車両重量算出システム、車両重量算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の維持管理をする上で、橋梁を通過する重量車両の車軸重量(軸重)が橋梁の損傷を予測するために重要な情報となる。軸重測定ため、橋梁の主桁に設置したひずみ計(以下、軸重算出用ひずみ計)から車両通過時のひずみ値を連続測定し,軸重を算出する手法(Weigh In Motion)が提案されている。この手法では、車両が軸重算出用ひずみ計の直上を通過する時刻Tを求めることが必要となる。図28は、橋梁の主桁に設置した軸重算出用ひずみ計および車軸検知用ひずみ計を示す図である。例えば、非特許文献1に記載された手法では、車線ごとに、軸重算出用ひずみ計2001以外に車軸通過に鋭敏な2つの箇所に車軸検知用ひずみ計2002a、2002bを追加設置し,以下の手法で車軸通過時刻Tを特定する。
【0003】
ひずみは車軸が通過する前は徐々に増大し,車軸が通過した後は徐々に減少する。図29は、車軸検知用ひずみ計2002a、2002bで検出したひずみの時間変化を示す図である。図29に示す歪波形からピーク検出を行い、1番目のピークの時間を1軸目通過のタイミングT1とし、2番目のピークの時間を2軸目通過のタイミングT2とする。
図28に示すように、2つの車軸検知用ひずみ計2002a、2002bと軸重算出用ひずみ計2001の設置間隔をそれぞれD1、D2とすると、前記の通過タイミングT1、T2から、車軸が軸重算出用ひずみ計の直上を通過した時刻Tは、例えば次式(1)、(2)で算出される。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】
ただし、式(1)、式(2)において、vは車両通過速度である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「リアルタイム全自動処理Weight-In-Motionによる長期交通加重モニタリング」 土木学会論文集 2004年10月、No.773/I−69、pp.99−112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載された手法は、車両の等速走行を仮定して時刻Tを求める手法であり、道路の渋滞などにより通過速度が低下するなど車両速度に加減速が生じた場合に適用することが難しいという問題がある。図30は、渋滞時における車軸検知用ひずみ計2002a、2002bで検出したひずみの時間変化を示す図である。図30に示すように、渋滞時には、車軸検知用ひずみ計2002a、2002bの計測結果が時間軸を引き延ばした形状となり、車軸通過時のピークが鈍くなるため、通過タイミング(T1、T2)を正しく検出できなくなってしまう。結果として車軸が軸重算出用ひずみ計の直上を通過する時刻Tを正しく算出できなくなり、正確な車両重量を算出できないという問題が生じる。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、車両の走行速度に影響を受けることなく、精度良く車両重量を算出することが可能な車両重量算出システム、車両重量算出方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために本発明は、道路のひずみを計測するひずみ計と、前記ひずみにより前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出装置とを備えた車両重量算出システムであって、前記車両重量算出装置は、前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め記憶する軸間隔データ記憶部と、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定する軸間隔特定処理部と、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定する軸位置特定処理部と、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成する影響線データ変換処理部と、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出する車両重量算出部と、を備えることを特徴とする車両重量算出システムである。
【0011】
また、本発明は、上記に記載の発明において、複数の車種の車両画像を記憶する車両画像記憶部を更に備え、前記軸間隔特定処理部は、前記監視映像データから検出した当該車両の車両画像と、前記車両画像記憶部に記憶された車両画像との類似度を算出し、最も類似度が高い車両画像の車種を、当該車両の車種と特定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記車両が前記荷重計測範囲に進入した場合の前記監視映像データから当該車両の検知車両画像を求める車両検知処理部を更に備え、前記軸位置特定処理部は、前記予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データにおいて、前記車両検知処理部が求めた検知車両画像と類似する領域を検出し、前記予め決められた時間ごとの領域の移動画素数を求め、前記移動画素数に対応した距離から前記予め決められた時間ごとの車軸の位置を特定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記車両重量算出部は、前記ひずみ計によって計測されたひずみに、車軸ごとの時間軸影響線データを最も適合させるパラメータを求め、前記パラメータから車軸ごとの重量を算出し、算出された車軸ごとの重量の総和を当該車両の車両重量とすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出方法であって、前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、軸間隔特定処理部が、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、軸位置特定処理部が、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、影響線データ変換処理部が、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、車両重量算出部が、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、を含むことを特徴とする車両重量算出方法である。
【0015】
また、本発明は、道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出するコンピュータに、前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両の走行速度に影響を受けることなく、精度良く車両重量を算出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車両重量算出システムの概略構成図である。
【図2】同実施形態に係る軸重による橋梁のひずみの計測を示す図である。
【図3】同実施形態に係る2車線の道路における軸重算出用ひずみ計及び車軸検知用ひずみ計の設置例を示す図である。
【図4】同実施形態に係る2車線の道路における座標の定義を示す図である。
【図5】同実施形態に係る影響度データを示す図である。
【図6】同実施形態に係る車両画像データベースに記憶される辞書画像データの作成手法を示す図である。
【図7】同実施形態に係る辞書画像データを作成する際に利用する部分空間法を示す図である。
【図8】同実施形態に係る軸間隔データを示す図である。
【図9】同実施形態に係る車両重量算出システムの動作を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態に係る車両検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】同実施形態に係る車両検知処理を示す図である。
【図12】同実施形態に係る車両検知処理において検知車両画像の切り出し方を示す図である。
【図13】同実施形態に係る軸間隔特定処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】同実施形態に係る軸間隔特定処理を示す図である。
【図15】同実施形態に係る軸位置特定処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】同実施形態に係る軸位置特定処理における検知車両画像の追跡手法を示す図である。
【図17】同実施形態に係る影響線データの概念を示す図(その1)である。
【図18】同実施形態に係る影響線データの概念を示す図(その1)である。
【図19】同実施形態に係る影響線データ変換処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】同実施形態に係る影響線データの一例を示す図である。
【図21】同実施形態に係る車軸に対応した時間軸影響線データの一例を示す図である。
【図22】同実施形態に係る車重算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図23】同実施形態に係る比較用データを示す図である。
【図24】同実施形態に係る車軸に対応した時間軸影響線データを示す図である。
【図25】同実施形態に係る車軸に対応した時間軸影響線データとパラメータの関係を示す図である。
【図26】同実施形態により得られた車重別の統計データの一例を示した図である。
【図27】本発明に係る他の実施形態における複数車線におけるひずみ計の設置の一例を示す図である。
【図28】橋梁におけるひずみ計の設置例を示す図である。
【図29】車軸検知用ひずみ計の計測データを示す図である。
【図30】減速走行した車両の車軸検知用ひずみ計の計測データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、車両重量算出システム1の概略構成図である。車両重量算出システム1は、車両重量算出装置3、カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9から構成される。カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9のそれぞれと、車両重量算出装置3は、ネットワーク2を介してデータ送受信可能である。ネットワーク2は、例えば、インターネット等であり、データ送受信は無線通信でも有線通信であってもかまわない。
【0020】
車両重量算出装置3は、例えば、コンピュータ等であり、監視センター等に設置され、制御部11、入力部12、表示部13、通信部14、記憶部15を有する。制御部11は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ等であり、車両重量算出装置3の各部の制御を行うとともに、後述する各機能部を備える。入力部12は、例えば、キーボードやマウスなどであり、車両重量算出装置3の操作者の操作を受けて情報の入力を行う。表示部13は、例えば、ディスプレイ装置やスピーカなどであり、記憶部15に記憶されるデータなどの出力を行う。通信部14は、ネットワーク2を介してカメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9のそれぞれとのデータの送受信等を行う。記憶部15は、例えば、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、ハードディスクなどであり、後述するデータなどを記憶する。
【0021】
カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9は道路に設置される。カメラ5は、道路を通行する車両10を撮影し、撮影した画像を監視映像データ31として車両重量算出装置3に送信する。
なお、前記のように、橋梁の維持管理をする上で重要なのは橋梁を通過する重量車両の車両重量を求めることである。したがって、本システムで検知する車両10は主に、トレーラーなどの重量車両となる。
【0022】
図2は、本実施形態に係る原理を示した図である。本実施形態では、橋桁の下面に軸重算出用ひずみ計7を設置し、その部分の伸びひずみを計測する。具体的には、図2の上図に示すように、車両10の通過により、橋桁が下に凸にたわみ、それによって橋桁の下面が引き伸ばされ、その伸びひずみを計測することとなる。図2の下図が、実際に計測されたひずみを示したグラフである。本実施形態に係る軸重算出用ひずみ計7は、例えば、光ファイバひずみ計によって構成され、1/100秒(すなわち、100Hz)で、ひずみを計測する。
【0023】
ここで、ひずみとは、物質の形状の変形であり、局所的には、計測箇所の伸び縮みの量となる。例えば、ある箇所のひずみが0.1であるとき、その箇所が、0.9倍の長さになっていることを示す。これは、つまり、10%の縮小が生じたことを示している。したがって、ひずみとは、比率であり、単位が存在しない値である。単位が存在しないものの、一般には、1/100のひずみを「%」で、1/1000000のひずみを「μ」で表すことが多く、伸び方向のひずみを「+」として表すことが多い。本実施形態おけるひずみもこの表記に従うこととする。
【0024】
次に、図3及び図4を参照しつつ、2車線の道路における軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9の設置例と、以下の説明で用いる座標軸の定義について説明する。
図3に示すように、軸重算出用ひずみ計7は、道路を支える橋脚61a、61bの間の桁63に設置される。軸重算出用ひずみ計7によって計測されたひずみは、軸重算出用データ36として車両重量算出装置3に送信される。
車軸検知用ひずみ計9は、桁63の桁端に設置される。図4に示すように、車線ごとの車両方向ごとに座標軸Xを設定した場合、車軸検知用ひずみ計9は、車両が荷重計測範囲(X=0[m]からX=L[m]の範囲)に進入したときのひずみを計測し、進入データ32として車両重量算出装置3に送信する。ここで、荷重計測範囲とは、橋梁上において軸重算出用ひずみ計7にひずみが計測される範囲であり、荷重を支える部材の間隔に等しく、桁と橋脚から成る単純な構造の橋では桁の長さになる。よってこの場合は、橋脚61a、61b間の桁63の長さL[m]となる。
【0025】
図1に戻り、車両重量算出装置3の制御部11は、車両検知処理部21、軸間隔特定処理部22、軸位置特定処理部23、影響線データ変換処理部24、車重算出部25を有する。各処理部は、制御部11が各処理を行うプログラムを読み出して実行することにより構成される。プログラムは、例えば、記憶部15に記憶されているものとする。
【0026】
車両検知処理部21は、カメラ5で撮影した監視映像データ31から車両10を検知する。軸間隔特定処理部22は、検知された車両10の画像である検知車両画像から車種を特定し、特定した車種から車軸の間隔を特定する。軸位置特定処理部23は、検知車両画像から道路上での車両10の先頭の車軸の位置を特定する。影響線データ変換処理部24は、基準となるひずみの変化を示した影響線データ40を、先頭軸の位置と車軸の間隔に基づいて、車両10が通過に要する時間による影響を反映した時間軸影響線データ35に変換する。車重算出部25は、時間軸影響線データ35と、軸重算出用ひずみ計7により計測された軸重算出用データとから車両10の車重を算出する。
【0027】
記憶部15は、監視映像データ31、進入データ32、検知車両画像データ33、先頭軸位置データ34、時間軸影響線データ35、軸重算出用データ36、通過車両重量記憶部37、影響線データ40、車両画像データベース(DB)41、軸間隔データベース(DB)42、位置対応表データ43を記憶する。
【0028】
これらのデータのうち、監視映像データ31、進入データ32、検知車両画像データ33、先頭軸位置データ34、時間軸影響線データ35、軸重算出用データ36、及び通過車両重量記憶部37に記憶される車重は、カメラ5、軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9、及び制御部11の各処理部による処理の入力データあるいは出力データである。
【0029】
影響線データ40は、図5に示すように、図3及び図4に示す橋桁上の位置X(0≦X≦L)に1[t(トン)]の1軸の車軸を載せたときに軸重算出用ひずみ計7で計測されるひずみεを示し、これを、位置Xの関数として定義することにより得られるデータである。荷重計測範囲外では、「0」となる。記憶部15に記憶させる影響線データ40は、予め軸重が既知の試験車両を通行させて取得したひずみを、1[t]の1軸の車軸を載せた場合に換算することにより求められる。
なお、影響線データ40は、橋梁の個々の荷重計測範囲ごとに異なるため、複数の荷重計測範囲について処理を行う場合には、それぞれの影響線データを記憶しておく必要がある。
【0030】
車両画像データベース(DB)41は、車両検知処理部21によって、車種を特定する際に、参照される、車両の種類ごとの辞書画像データを予め記憶する。
ここで、車両画像データベース41に記憶される辞書画像データの生成について図6及び図7を参照しつつ説明する。図6に示すように、ある車種G、例えば、「トレーラー」の学習用サンプル画像データを複数集め、例えばエッジ点抽出による2値化などの特徴画像に加工する。全ての加工済み画像を1次元のベクトルとみなし、個々の共分散行列を作成して全て足し合わせ、足し合わせた行列について固有値と固有ベクトルを求める。求めた固有値の大きい順にd個の固有ベクトルを足し合わせ、足し合わせたベクトルを元の画像のサイズに変換し、車種Gの辞書画像データとする。
【0031】
図6の演算は、部分空間法といわれる演算手法であり、図7は、この演算の概念を示した図である。図7に示すように、トレーラーの学習用サンプル画像データを、ある空間上(図7では、一例として二次元空間上としている)に分布させ、その中で、この分布を最もよく表すベクトルを選択し、選択したベクトルを元の画像のサイズに変換することによって辞書画像データが生成される。
以上の処理をすべての車種、例えば、「大型トラック」、「タンクローリー」、「ミキサ車」、「大型ダンプ」などに対して行い、全ての車種の辞書画像データを作成し、車両画像データベース41に記憶させる。
【0032】
軸間隔データベース(DB)42は、図8に示されるようなデータ構成を有しており、車種、及び車種ごとの軸間隔データを記憶する。例えば、車種が「3軸車大型トラック」であれば、軸が3本あり、1‐2軸間の軸間隔は「5870[mm]」、2−3軸間の軸間隔は「7070[mm]」として記憶されることになる。
【0033】
位置対応表データ43は、画像フレームでの移動画素数(画素)と実際の距離(位置)の対応を示すデータである。一般に、監視カメラ5と道路面の相対的な位置関係は一定であると考えられる。そして、車線の方向は既知である。この前提の下、車線上で実際の距離を計測することで、監視映像データ31の画像フレームにおいて車線方向にA[画素]移動したら、実際の路面上でB[m]移動したことになる、という対応関係を事前に求めておくことが可能である。この画素Aと実際の距離(位置)Bの対応関係を、車軸検知用ひずみ計9の設置位置を起点とした位置対応表データ43として記憶部15に予め記憶させておく。
なお、監視カメラ5の撮影方向やズームなどが遠隔操作可能で、路面との相対的な位置関係が変化する場合には、撮影方向やズームなどの情報から、位置対応表データ43の情報を再計算することとなる。
【0034】
(車両重量算出システムの動作)
次に、車両重量算出システム1の動作について説明する。
図9は、車両重量算出システム1の処理全体の流れを示す概略フローチャートである。
車両検知処理部21は、カメラ5が撮影した監視映像データ31と車軸検知用ひずみ計9により計測された進入データ32を基にカメラ5が撮影した車両10の車両検知処理を行い(ステップS101)、検知車両画像データ33を出力して記憶部15に記憶させる。
【0035】
軸間隔特定処理部22は、車両検知処理部21が検知した検知車両画像データ33と車両画像データベース41に記憶されている辞書画像データから車両10の車種を特定し、特定した車種を基に軸間隔データベース42を参照し、車両10の軸間隔データを検出する軸間隔特定処理を行う(ステップS102)。軸位置特定処理部23は、カメラ5が撮影した監視映像データ31と、軸間隔特定処理部22が検出する軸間隔データを基に軸位置特定処理を行い、先頭軸位置データ34を出力して記憶部15に記憶させる(ステップS103)。
【0036】
影響線データ変換処理部24は、軸位置特定処理部23が求めた先頭軸位置データ34と、軸間隔特定処理部22が求めた軸間隔データを基に、記憶部15に予め記憶されている影響線データ40を変換して、時間に対応した時間軸影響線データ35を生成する影響線データ変換処理を行い、生成した時間軸影響線データ35を記憶部15に記憶させる(ステップS104)。車重算出部25は、軸重算出用ひずみ計7によって計測された軸重算出用データ36と、影響線データ変換処理部24が生成した時間軸影響線データ35を基に、車重量算出処理を行い、車両10の車重を算出する車重算出処理を行う(ステップS105)。以下、ステップS101〜S105の各処理について詳細に説明する。
【0037】
(車両検知処理S101)
次に、図10から図12を参照しつつ、車両検知処理(ステップS101)について説明する。
図10に示すように、まず、車両検知処理部21は、カメラ5によって撮影された監視映像データ31を記憶部15から読み出し、背景画像を作成する(ステップS201)。
ここで、監視映像データ31を取得する監視カメラ5の撮影方向は、監視領域となる道路面に対して固定されており、その相対的な位置関係は不変であるか、もしくは、撮影方向とカメラの位置を把握できるものとする。監視映像データ31は、一定時間毎に画像フレームを取得することで得られ、各画像フレームには取得時刻が付与される。通常利用される監視映像は、例えばNTSC(National Television System Committee)規格に従っており、毎秒30枚の画像フレームが取得される。
【0038】
車両検知処理部21は、図11に示すように、監視映像データ31から一定時間毎に画像フレームを一定枚数読み込み、それらの画像フレームの平均画像を作成することで、画像フレーム間で変化があった部分を消し去る、即ち、監視映像データ31から移動している車両部分を消し去り、背景の道路面だけの背景画像81を作成する。
背景画像81の作成は一定時間毎に行われ、他の処理とは関係なく常時更新するものとする。一定時間毎に背景画像81を更新していくことで、天候や時間による明るさの変動なども適宜反映することが可能になる。
【0039】
車両検知処理部21は、車軸検知用ひずみ計9により計測された車両10の進入データ32を記憶部15から読み出し、予め決められた閾値以上であるかどうかを判定し、重量車両であるかどうかを判定する(ステップS202)。
前述した図3に示す橋梁では、進入データを計測する荷重計測範囲は橋桁63全体であり、車軸検知用ひずみ計9は車両10の進入方向の桁端に設置される。つまり、車軸検知用ひずみ計9で重量車両の進入を検知した時点で、車両10が荷重計測範囲に入ったとみなす。荷重計測範囲は桁63と平行なX軸を考えると桁63上の位置X=0[m]からX=L[m]までとなる。
【0040】
なお、荷重計測範囲前の地点に車軸検知用ひずみ計9を設置した場合でも、後述の軸位置特定処理によって荷重計測範囲に入った時刻を特定できるため、実用上の問題は生じない。
また、監視映像データ31と進入データ32の計測タイミングは同期されており、一定の間隔Δt[秒]で、毎秒一定数(1/Δt)のデータが取得されているものとする。
判定基準となる進入データ32の閾値は、例えば、事前に軸重の判明している車両を車軸検知用ひずみ計9を設置した橋梁を通過させることによって値を決定し、入力部12より入力を受け付け、予め記憶部15に記憶される。
【0041】
ステップS202において、車両検知処理部21が、車両10を重量車両と判定しなかった場合、車両検知処理部21は、次の進入データ32を取得し、重量車両であるかどうかの判定を行う。一方、ステップ202において、車両検知処理部21が、車両10を重量車両と判定した場合、車両10が荷重計測範囲に進入した時刻の監視映像データ31を記憶部15から読み出し、図11に示すように、その時点での背景画像81を引き算処理することで、車両部分のみの検知車両画像データ33を抽出する(ステップS203)。
【0042】
なお、ステップS203の車両画像抽出処理について、動いている車両は他にも存在するため、検知した車両のみを切り出す必要がある。これには以下の手法を用いる。
図12に示すように、カメラ5と路面の位置関係は固定であることから、監視画像フレーム中の車軸検知用ひずみ計9の設置位置を事前に特定しておくことは可能である。そして、進入データ32の取得によって重量車両の先頭の車軸が車軸検知用ひずみ計9上に乗っていることが分かるため、前記監視画像フレーム中の位置から後方一定範囲の領域を切り出す。なお、この処理の時点では車両の大きさが分からないため、検知した車両の全体が入らない場合がある。このような場合でも、検知車両画像の利用目的は、車両画像データベース41との照合による車両の型番特定、監視映像データ31における車両領域の追跡による車軸位置を特定に検知車両画像を用いることにあるため、この利用目的においては、車両10の全体が検知車両画像に含まれていなくてもよく、上記で定めた一定範囲の大きさで作成しておけばよいこととなる。
【0043】
(軸間隔特定処理S103)
次に、図13、図14を参照しつつ、軸間隔特定処理部22による軸間隔特定処理について説明する。
図13に示すように、まず、軸間隔特定処理部22は、車両検知処理によって求められた検知車両画像データ33を車両画像データベース41に記憶されている辞書画像データと照合して、検知車両の車種を特定する(ステップS301)。車種の特定は、図14に示される手法により行う、軸間隔特定処理部22は、検知車両画像データ33に対して、辞書画像データと同様の加工を行い特徴画像とし、この特徴画像をベクトルAとする。そして、軸間隔特定処理部22は、軸間隔特定処理部22ベクトルAと、車両画像データベース41に記憶された全ての辞書画像データのベクトルB(固有値の大きい順にd個の固有ベクトルを足し合わせたベクトル)との内積を算出して、これを、ベクトルAの大きさの値(|A|)とベクトルBの大きさの値(|B|)の積で除することにより類似度(cosθ)を算出する。
【0044】
軸間隔特定処理部22は、類似度が最も大きかった車種を、検知車両画像データ33、すなわち車両10の車種と決定する。例えば、図14に示す類似度の中では、「トレーラー」の類似度が「0.71」と最も大きいため、検知車両画像データ33の車種は「トレーラー」であると特定される。そして、軸間隔特定処理部22は、特定された車種を軸間隔データベース42と照合し、軸間隔を特定し、軸間隔データを取得する(ステップS302)。
【0045】
(軸位置特定処理S103)
次に、図15、図16を参照しつつ、ステップS103の軸位置特定処理について説明する。
軸位置特定処理は、監視映像データ31に対して、検知車両画像データ33を時系列的に追跡することで、車両の位置、即ち、検知した車軸の位置を一定時間毎に検出するものである。なお、先頭の車軸の位置が検出できれば、他の車軸は軸間隔データから算出可能であるため、軸位置特定処理の対象となるのは、検知車両の先頭の車軸のみである。
【0046】
図15に示すように、軸位置特定処理部23は、監視映像データ31において検知車両画像データ33を時間ごとに追跡、すなわち時間ごとに検知車両画像データ33に示される車両10の監視映像データ31が示す画像内での位置を検出することにより位置データを求める(ステップS401)。この位置データを求める処理は、図16に示す手順により行われる。
【0047】
図16において、監視映像データ31は、Δt秒ごとに画像フレームが保存されているとし、以下の説明では時刻Tに保存した画像フレームをF(T)で示す。まず、入力となる検知車両画像データ33が最初に切り出された画像フレームR0の保存時刻をT=tとしたとき、軸位置特定処理部23は、次の画像フレームF(t+Δt)において、検知車両画像データ33とマッチングする領域R1を探し出す。この画像のマッチング処理は、監視映像データ31の各時間の画像フレームから検知車両画像データ33との差がもっとも小さい領域を見つけることで行われる。そして、F(t)における検知車両画像データ33の位置(x0,y0)と、F(t+Δt)における位置(x1,y1)の間の画像上での距離として移動画素数を算出し、位置データを求める。
なお、(x0,y0)は、入力となる検知車両画像データ33が最初に切り出された際の監視映像データ31における座標、つまり、車両10の先頭の軸が、車軸検知用ひずみ計9上に存在していることを示していることになり、ここを原点として距離を求めることで、車両の先頭軸の車軸検知用ひずみ計9からの距離が分かることになる。このことから、出力する位置データは、車軸検知用ひずみ計9から、先頭の車軸までの距離を移動画素数で示した値となる。
なお、車軸検知用ひずみ計9が、前述したように荷重計測範囲前に設置された場合には、荷重計測範囲までのずれの分を当該処理において補正することになる。
【0048】
そして、軸位置特定処理部23は、求めた位置データに基づいて、記憶部15に予め記憶された位置対応表データ43を参照することで、実際の先頭の車軸の位置を特定し、特定した先頭車軸の位置を示す先頭軸位置データ34を記憶部15に記憶させる(ステップS402)。
【0049】
次に、軸位置特定処理部23は、車両10の軸間隔データを読み込んで、先頭の車軸と最後尾の車軸の間の距離D[m]を算出する。荷重計測範囲の終わる位置をL[m]とすると、直前の軸位置特定処理で得られた先頭軸位置X[m]が(L+D)[m]よりも大きいか否かを判定することにより、軸位置特定処理部23は車両10が荷重計測範囲を退出したか否かを判定する(ステップS403)。車両10が退出していないと判定した場合はステップS401に戻り、次の時間ステップでの画像追跡を行う。車両10が荷重計測範囲を退出したと判定した場合は処理を終了する。
ステップS401、S402、S403の処理は当該車両10が荷重計測範囲を退出するまで繰り返し実行され、先頭軸の位置を示す位置データが記憶部15に追加して記憶されることになる。
【0050】
なお、画像フレーム中における車両の走行領域と方向が既知の場合には、マッチングの際の探索領域を車線上の進行方向にのみ限定でき、処理の低減を行うことができる。
【0051】
(影響線データ変換処理S104)
次に、図17から図21を参照しつつ、ステップS101の影響線データ変換処理について説明する。前述したように、影響線データ40とは、橋桁上の位置X(0≦X≦L)に1[t(トン)]の1軸の車軸を載せたときに軸重算出用ひずみ計7で計測されるひずみεを示し、これを、位置Xの関数として定義することにより得られるデータである。そして、記憶部15に記憶させる影響線データ40は、荷重が分かっている試験車両に橋梁を通過させた際のひずみのデータを1[t]の1軸の車軸の場合に換算することにより求められるものである。この換算は、図17に示すように、1[t]の1軸の車軸を載せた場合と、W[t]の1軸の車軸を載せた場合では、得られるひずみの特性が、W倍になるという関係を利用する。例えば、図18に示すように、4[t]の軸重の試験車両を通過させて計測した場合、得られたひずみのデータを1/4の値にすることにより、影響線データ40を求めることができることになる。
【0052】
図19は、影響線データ変換処理の流れを示すフローチャートである。影響線データ変換処理部24は、前述の処理で得られた車両10の軸間隔データと、先頭軸位置データ34と、影響線データ40を記憶部15から読み出し、影響線データ40を変換し、時間軸影響線データ35を生成する(ステップS501)。
【0053】
前述した軸位置特定処理で説明したように、記憶部15には、先頭軸位置データ34として、荷重計測範囲に車両10が進入した時間tから退出までΔt間隔でn個のデータが記憶されている。影響線データ変換処理部24は、影響線データ40において軸位置特定処理によって追跡した先頭軸の時間T(T=t+Δt×n、n=0,1,2,…,i,…,n)の位置Piにおけるひずみ値を読み出し、先頭軸の時間軸影響線データ35として記憶部15に記憶する。他の車軸に関しては、影響線データ変換処理部24は、軸間隔データを基に当該車軸と先頭軸までの距離Dを読み込み、位置を(Pi+D)として、上記と同様の処理を行い、全軸の時間軸影響線データ35を作成して記憶部15に記憶する。
【0054】
図20、図21は、影響線データ変換処理を説明するための図である。影響線データ変換処理部24は、図20に示す影響線データ40から軸位置特定処理によって追跡した時間T1、T2、T3、T4、T5、T6におけるひずみ値を取得し、図21に示すように、時間軸を横軸としてT1、T2、T3、T4、T5、T6の各々のひずみ値を並べることにより変換を行って、時間軸影響線データ35を生成する。これにより、車両10の通過に要した時間の影響を影響線データ40に反映した時間軸影響線データ35を生成することができる。
【0055】
(車重算出処理ステップS105)
次に、図22から図25を参照しつつ、車重算出処理について説明する。
車重算出処理では、Weigh In Motionとして広く知られている車重算出手法を利用し、影響線データ変換処理で作成した時間軸影響線データ35を、車軸の数だけ、時間軸上に配置し、最小二乗法によって実際に計測されたひずみデータと適合するような倍率を見つけることで、各車軸の重量を算出する。最終的に各軸重を合計して車重を得る。
【0056】
図22は、車重算出処理の流れを示すフローチャートである。
車重算出部25は、時間軸影響線データ35から、データが保存されている時刻の範囲(t≦T≦t+Δt×n)を取得し、対応する範囲のデータを軸重算出用ひずみ計7で計測された軸重算出用データ36から切り出して比較用データを生成し、生成した比較用データを記憶部15に記憶させる(ステップS601)。そして、車重算出部25は、最小二乗法を用いて、比較用データに最も適合する影響線データ変換処理で作成した各車軸の時間軸影響線データ35の各倍率を求めて、各軸の質量を算出し(ステップS602)、軸重総和を求めて車両10の車重を算出する(ステップS603)。
【0057】
図23は、比較用データの一例を示す図であり、以下の説明において比較用データをJ(t)とする。図24は、影響線データ変換処理で作成した時間軸影響線データ35を示す図であり、車両10を3軸車(車軸A、B、C)とし、時間軸上に配置した各車軸に対する時間軸影響線データ35をそれぞれ、JA(t)、JB(t)、JC(t)として示している。ステップS602の最小二乗最適化処理では、各車軸の時間軸影響線データ35のJA(t)、JB(t)、JC(t)を用いて、比較用データをJ(t)最もよく近似するパラメータa、b、cを求める。最小二乗誤差Eは、次式(3)で定義され、このEを最小とするパラメータa、b、cを数値計算最適化手法によって探索する。
【0058】
【数3】
【0059】
図25は、各倍率で倍化された各車軸の時間軸影響線データ35を示す図である。影響線データは1トン当たりに計測されるひずみデータであり、それをa倍、b倍、c倍した結果、実測のデータと最も近い値になったため、車重算出部25は、各車軸の質量をそれぞれa[トン]、b[トン]、c[トン]と算出し、少なくとも車両10が通過した日時、通過した車両10の車種とともに、算出した車重の値を通過車両重量記憶部37に記憶させる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、監視映像データ31から車軸の位置を時系列的に特定し、車軸の位置変化を反映した時間軸影響線データ35を作成することで、各車軸の軸重を精度よく算出し、車両重量を求めることができる。そして、本実施形態では、車両10の通過に要する時間を考慮した影響線変換処理を行うことから、渋滞時においても同様の効果を奏する。
【0061】
図26は、本実施形態に係る車両重量算出システム1により求めた車両重量を用いて、日付ごとに車両重量ごとの台数を示したグラフであり、このようなグラフを用いることにより、路線別の比較や、通過量の傾向の把握を行なうことができ、ひいては、橋梁劣化予測、点検、補修の必要箇所の特定や特定した箇所の工事の時期予測、道路増設計画、規制、指導強化方針の決定などに利用することができる。
【0062】
なお、上記の実施形態では、図3に示すように片側1車線の道路を例に説明したが、複数車線の道路においても適用可能である。図27は片側2車線上下4車線で主桁が6本ある場合のひずみ計の設置例を示す図である。この例に示されるように、それぞれの車線に対応した主桁に軸重算出用ひずみ計7、車軸検知用ひずみ計9を設置し、上記と同様の処理を行うことによって、複数車線の道路を通行する車両の車重を求めることが可能である。
また、本実施形態では、荷重計測範囲内には1台の車両10が存在するとして処理を説明したが、複数の重量車両を同時に考慮する場合には、上記の1台の場合の処理を複数、同時並行に実行すればよい。
【0063】
また、制御部11が行う処理を実現するプログラムを作成し、汎用のコンピュータがそのプログラムを読み込んで車両重量算出装置3を実現することも可能である。このプログラムは、CD−ROM等の記録媒体に記録されてもよいし、ネットワークを介して流通させることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1………車両重量算出システム
3………車両重量算出装置
5………カメラ
7………軸重算出用ひずみ計
9………車軸検知用ひずみ計
10………車両
11………制御部
15………記憶部
21………車両検知処理部
22………軸間隔特定処理部
23………軸位置特定処理部
24………影響線データ変換処理部
25………車重算出部
31………監視映像データ
32………進入データ
33………検知車両画像データ
34………先頭軸位置データ
35………時間軸影響線データ
36………軸重算出用データ
37………通過車両重量記憶部
40………影響線データ
41………車両画像データベース
42………軸間隔データベース
43………位置対応表データ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路のひずみを計測するひずみ計と、前記ひずみにより前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出装置とを備えた車両重量算出システムであって、
前記車両重量算出装置は、
前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め記憶する軸間隔データ記憶部と、
前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定する軸間隔特定処理部と、
前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定する軸位置特定処理部と、
基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成する影響線データ変換処理部と、
前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出する車両重量算出部と、
を備えることを特徴とする車両重量算出システム。
【請求項2】
複数の車種の車両画像を記憶する車両画像記憶部を更に備え、
前記軸間隔特定処理部は、
前記監視映像データから検出した当該車両の車両画像と、前記車両画像記憶部に記憶された車両画像との類似度を算出し、最も類似度が高い車両画像の車種を、当該車両の車種と特定することを特徴とする請求項1に記載の車両重量算出システム。
【請求項3】
前記車両が前記荷重計測範囲に進入した場合の前記監視映像データから当該車両の検知車両画像を求める車両検知処理部を更に備え、
前記軸位置特定処理部は、
前記予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データにおいて、前記車両検知処理部が求めた検知車両画像と類似する領域を検出し、前記予め決められた時間ごとの領域の移動画素数を求め、前記移動画素数に対応した距離から前記予め決められた時間ごとの車軸の位置を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両重量算出システム。
【請求項4】
前記車両重量算出部は、前記ひずみ計によって計測されたひずみに、車軸ごとの時間軸影響線データを最も適合させるパラメータを求め、前記パラメータから車軸ごとの重量を算出し、算出された車軸ごとの重量の総和を当該車両の車両重量とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の車両重量算出システム。
【請求項5】
道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出方法であって、
前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、
軸間隔特定処理部が、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、
軸位置特定処理部が、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、
影響線データ変換処理部が、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、
車両重量算出部が、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、
を含むことを特徴とする車両重量算出方法。
【請求項6】
道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出するコンピュータに、
前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、
前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、
前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、
基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、
前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
道路のひずみを計測するひずみ計と、前記ひずみにより前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出装置とを備えた車両重量算出システムであって、
前記車両重量算出装置は、
前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め記憶する軸間隔データ記憶部と、
前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定する軸間隔特定処理部と、
前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定する軸位置特定処理部と、
基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成する影響線データ変換処理部と、
前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出する車両重量算出部と、
を備えることを特徴とする車両重量算出システム。
【請求項2】
複数の車種の車両画像を記憶する車両画像記憶部を更に備え、
前記軸間隔特定処理部は、
前記監視映像データから検出した当該車両の車両画像と、前記車両画像記憶部に記憶された車両画像との類似度を算出し、最も類似度が高い車両画像の車種を、当該車両の車種と特定することを特徴とする請求項1に記載の車両重量算出システム。
【請求項3】
前記車両が前記荷重計測範囲に進入した場合の前記監視映像データから当該車両の検知車両画像を求める車両検知処理部を更に備え、
前記軸位置特定処理部は、
前記予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データにおいて、前記車両検知処理部が求めた検知車両画像と類似する領域を検出し、前記予め決められた時間ごとの領域の移動画素数を求め、前記移動画素数に対応した距離から前記予め決められた時間ごとの車軸の位置を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両重量算出システム。
【請求項4】
前記車両重量算出部は、前記ひずみ計によって計測されたひずみに、車軸ごとの時間軸影響線データを最も適合させるパラメータを求め、前記パラメータから車軸ごとの重量を算出し、算出された車軸ごとの重量の総和を当該車両の車両重量とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の車両重量算出システム。
【請求項5】
道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出する車両重量算出方法であって、
前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、
軸間隔特定処理部が、前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、
軸位置特定処理部が、前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、
影響線データ変換処理部が、基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、
車両重量算出部が、前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、
を含むことを特徴とする車両重量算出方法。
【請求項6】
道路のひずみを計測するひずみ計により、前記道路を走行する複数の車軸を有する車両の車両重量を算出するコンピュータに、
前記車両の車種に対応した軸間隔データを、前記車種に対応付けて予め軸間隔データ記憶部に記憶させるステップと、
前記ひずみ計によってひずみが計測される荷重計測範囲に進入した前記車両を予め決められた時間ごとに撮影した監視映像データを用いて当該車両の車種を特定し、前記軸間隔データ記憶部を参照して当該車両の軸間隔データを特定するステップと、
前記監視映像データと前記軸間隔データとを基に、前記予め決められた時間ごとの前記車両の車軸の位置を特定するステップと、
基準となる軸重を有する車軸が定速で前記道路を通過した際のひずみを当該車軸の位置ごとに示した影響線データを、前記軸位置特定処理部によって特定された前記予め決められた時間ごとの車軸の位置に基づいて変換し、前記車両の通過に要した時間の影響を前記影響線データに反映した時間軸影響線データを生成するステップと、
前記ひずみ計によって計測された前記車両のひずみと前記時間軸影響線データとに基づいて当該車両の車両重量を算出するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2010−197249(P2010−197249A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43124(P2009−43124)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月25日 社団法人土木学会発行の「応用力学論文集(Vol.11 2008)」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成17年度、科学技術振興機構 独創的シーズ展開事業 委託開発 「鋼構造道路橋のリアルタイムモニタリング・診断システム」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月25日 社団法人土木学会発行の「応用力学論文集(Vol.11 2008)」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成17年度、科学技術振興機構 独創的シーズ展開事業 委託開発 「鋼構造道路橋のリアルタイムモニタリング・診断システム」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
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