説明

機器の支持装置用引手の軸受抜取装置

【課題】取り扱いが容易で、効率よく、安全かつ確実に軸受の抜取を行うことができる装置を提供する。
【解決手段】軸受抜取装置は、油圧シリンダ1と、支持フレーム3と、押出部材5とを具備する。支持フレーム3は、シリンダ本体2に固着され制振装置の引手Eを所定位置に保持する。押出部材5は、油圧シリンダのロッド6に結合され支持フレーム3にガイドされて当該支持フレーム3に保持された引手Eの軸受Bを当該引手Eから押し出し可能に往復動する。支持フレーム3は、ロッドガイド部材6と、エンド部材7と、受け部材8と、位置決め部材9,10,11とを具備する。ロッドガイド部材6は、結合部12と、受容部13とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電所等において、配管系を支持するために用いられる制振装置のような支持装置のメンテナンス作業において、引手に取り付けられた軸受を抜き取るための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧制振機構が組み込まれたシリンダとロッドに引手を備える油圧制振装置が知られている(例えば特許文献1の図1参照)。この種の油圧制振装置は、構築物のような支持体と配管系のような被支持体との間に引手を介して連結される。引手は、連結用のピンを受ける軸受部を備えており、この軸受部には球面軸受が取り付けられる。ばね式のハンガ、機械式制振装置、オイルダンパ等の他の支持装置にも同様の引手を備えるものが多い。
このような支持装置のメンテナンス作業においては、球面軸受を引手から抜き取る必要がある。従来は、この軸受の抜取作業に、汎用プレス機が用いられている。すなわち、支持装置を汎用プレス機のテーブルに載せ、当て板となる所要寸法の鋼板を選定して引手の下に当てがうと共に、プレス機と軸受とのセンターを合わせたうえで、プレス機を動作させて軸受を押し抜く。
【特許文献1】特開2000−291715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の支持装置のメンテナンス作業における軸受の抜取作業では、支持装置を汎用プレス機まで運び、テーブルに載せる作業、他種類ある支持装置に適合する当て板の選定、軸受のセンター合わせ等の作業に多くの手間がかかるという問題点がある。当て板の選定は慎重に行わねばならず、この選定が不適切であると、汎用プレス機のシリンダが曲がり、作業中にセンターが外れて当て板が飛散する危険もある。
したがって、この出願に係る発明は、取り扱いが容易で、効率よく、安全かつ確実に軸受の抜取を行うことができる装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の軸受抜取装置は、油圧シリンダ1と、この油圧シリンダのシリンダ本体2に固着され制振装置の引手Eを所定位置に保持する支持フレーム3と、油圧シリンダのロッド6に結合され支持フレーム3にガイドされて当該支持フレーム3に保持された引手Eの軸受Bを当該引手Eから押し出し可能に往復動する押出部材5とを具備する。
好ましくは、前記支持フレーム3は、油圧シリンダ1のシリンダ本体2に固着されるロッドガイド部材6と、このロッドガイド部材6に所定間隔を置いて対向し、当該ロッドガイド部材6に固着されるエンド部材7と、このエンド部材7におけるロッドガイド部材6側に固着され、引手Eにおける軸受押し出し側の軸受周りの面を受ける受け部材8と、エンド部材7に支持され、引手Eの先端面に当接してその位置を規制する先端位置決め部材9と、エンド部材に支持され、引手Eの上下面に当接してその位置を規制する上部および下部位置決め部材10,11とを具備し、ロッドガイド部材6は、シリンダ本体2に結合される結合部12と、押出部材5をロッドの軸線に沿って往復移動可能に受容する受容部13とを具備する。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明の装置によれば、取り扱いが容易で、効率よく、安全かつ確実に軸受の抜取を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は軸受抜取装置の断面図、図2は図1におけるII−II断面図、図3は図1の軸受抜取装置の平面図、図4は図1の軸受抜取装置の斜視図である。
【0007】
図示の実施形態の軸受抜取装置は、支持構造物と支持対象との間に介設される支持装置における、当該支持構造物又は支持対象に接続される引手に嵌め込まれた軸受を、当該引手から抜き取るための装置である。
【0008】
軸受抜取装置は、シリンダ本体2とロッド4とを有する油圧シリンダ1と、シリンダ本体2に固着される支持フレーム3と、ロッド4に結合される押出部材5とを具備する。支持フレーム3は、支持装置の引手Eを所定位置に保持する。押出部材5は、支持フレーム3にガイドされて当該支持フレーム3に保持された引手Eの軸受Bを当該引手から押し出し可能に往復動する。なお、この出願においては、図1における押出部材5の往復方向と直交する方向を便宜上、上下と定義する。
【0009】
支持フレーム3は、ロッドガイド部材6と、エンド部材7と、受け部材8と、先端位置決め部材9と、上部および下部位置決め部材10,11とを具備する。
支持フレーム3のロッドガイド部材6は、シリンダ本体の外周に螺合される円筒状の結合部12と、この結合部12に連続する円筒状で内側に押出部材5を受容する受容部13と、この受容部13の外周に広がるほぼ矩形のフランジ部14とを具備する。受容部13は、押出部材5をロッド6の軸線に沿って往復移動可能に受容する。
【0010】
支持フレーム3のエンド部材7は、ロッドガイド部材6に所定間隔を置いて対向するように、4本のタイロッド15で当該ロッドガイド部材6に固着される。これらのタイロッド15の間から引手Eを支持フレーム3内の所定位置へ挿入可能に構成される。エンド部材7は、フランジ部14と外形が同一のほぼ矩形のエンドプレート7からなる。エンドプレート7は、中央にシリンダ本体2と同心の円口16を有する
【0011】
支持フレーム3の受け部材8は、エンドプレート7の円口16に嵌合する装着筒部17と、エンドプレート7の内側面にボルト18で止められるフランジ部19と、当接筒部20とを具備する。当接筒部20は、装着筒部17と同心で、先端が、引手Eの軸受周りの一方の面に当接してその位置を規制する。
【0012】
先端位置決め部材9は、エンドプレート7とフランジ部14との一側面間を接続するように固着された接続プレート21に螺挿された位置決めボルトからなる。位置決めボルト9は、接続プレート21から直角に支持フレーム3内へ突出し、その先端が引手Eの先端に当接することで、引手Eの先端位置を規制する。接続プレート21には、そこから直角に支持フレーム3の外側に突出するハンドル24が設けられる。
【0013】
上部位置決め部材10と下部位置決め部材11は、エンドプレート7の内側面に、台座22,23を介して取り付けられた位置決めボルトからなる。位置決めボルト10,11は、それぞれ台座22,23から相対向して、先端位置決めボルト9に対して直角に支持フレーム3内へ突出し、その先端が引手Eの上下の側面に当接することで、引手Eの上下位置を規制する。
【0014】
この軸受抜取装置を用いて油圧制振装置のような支持装置の引手Eから球面軸受を抜き取る場合には、本装置を、必要に応じて所要の作業場に搬送し、ハンドル24とシリンダ1を持って操作する。寝かせて置かれた支持装置の引手Eを支持フレーム3内に挿入して、ベアリングBの位置決めを行い、本装置を起動させると、押出部材5がロッド4に押されて支持フレーム3内へ進行し、ベアリングBを引手Eから押し出す。位置決めは、位置決めボルト9,10,11に引手Eの先端と上下端を当接させることで容易に行うことができる。なお、支持装置の引手Eの仕様に合わせて予め位置決めボルト9,10,11の位置を調整しておく。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】軸受抜取装置の断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】図1の軸受抜取装置の平面図である。
【図4】図1の軸受抜取装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 油圧シリンダ
2 シリンダ本体
3 支持フレーム
4 ロッド
5 押出部材
6 ロッドガイド部材
7 エンド部材(エンドプレート)
8 受け部材
9 先端位置決め部材(位置決めボルト)
10 上部位置決め部材(位置決めボルト)
11 下部位置決め部材(位置決めボルト)
12 結合部
13 受容部
14 フランジ部
15 タイロッド
16 円口
17 装着筒部
18 ボルト
19 フランジ部
20 当接筒部
21 接続プレート
22 台座
23 台座
24 ハンドル
B 軸受
E 引手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造物と支持対象との間に介設される支持装置において、当該支持構造物又は支持対象に接続される引手に嵌め込まれた軸受を、当該引手から抜き取るための装置であって、
油圧シリンダと、この油圧シリンダのシリンダ本体に固着され前記支持装置の引手を所定位置に保持する支持フレームと、前記油圧シリンダのロッドに結合され前記支持フレームにガイドされて当該支持フレームに保持された引手の軸受を当該引手から押し出し可能に往復動する押出部材とを具備することを特徴とする機器の支持装置用引手の軸受抜取装置。
【請求項2】
前記支持フレームは、前記油圧シリンダのシリンダ本体に固着されるロッドガイド部材と、
このロッドガイド部材に所定間隔を置いて対向し、当該ロッドガイド部材に固着されるエンド部材と、
このエンド部材における前記ロッドガイド部材側に固着され、前記引手における前記軸受の押し出し側の軸受周りの面を受ける受け部材と、
前記エンド部材に支持され、前記引手の先端面に当接してその位置を規制する先端位置決め部材と、
前記エンド部材に支持され、前記引手の上下面に当接してその位置を規制する上部および下部位置決め部材と、を具備し、
前記ロッドガイド部材は、前記シリンダ本体に結合される結合部と、前記押出部材を前記ロッドの軸線に沿って往復移動可能に受容する受容部と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の機器の支持装置用引手の軸受抜取装置。
【請求項3】
前記ロッドガイド部材と前記エンド部材との間が、複数のタイロッドで結合され、これらのタイロッドの間から前記引手を前記支持フレーム内の所定位置へ挿入可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の機器の支持装置用引手の軸受抜取装置。
【請求項4】
前記先端位置決め部材、上部位置決め部材および下部位置決め部材が、それぞれ前記エンド部材に支持される位置決めボルトで位置調整自在に構成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の機器の支持装置用引手の軸受抜取装置。
【請求項5】
前記ロッドガイド部材は、前記シリンダ本体の外周に螺合される円筒状の結合部と、この結合部に連続する円筒状で内側に前記押出部材を前記ロッドの軸線に沿って往復移動可能に受容する受容部と、この受容部の外周に広がるフランジ部と、を具備し、
前記エンド部材は、中央に前記シリンダ本体と同心の円口を有するエンドプレートからなり、前記ロッドガイド部材のフランジ部との間が、複数のタイロッドで結合され、これらのタイロッドの間から前記引手を前記支持フレーム内の所定位置へ挿入可能に構成され、
前記受け部材は、前記エンドプレートの円口に嵌合する装着筒部と、エンドプレートの内側面にボルト止めされるフランジ部と、前記引手における前記軸受の押し出し側の軸受周りの面に先端が当接する当接筒部と、を具備することを特徴とする請求項2に記載の機器の支持装置用引手の軸受抜取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−94778(P2010−94778A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267885(P2008−267885)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】