説明

機器療法の疼痛を軽減するためのシステム

【課題】改良された機器療法の疼痛を軽減するためのシステムを提供する。
【解決手段】システムおよび方法は、心臓へのショックが必要とされるか否かを感知することと、ショックの供給前に、胸部における筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらすことと、筋系が少なくとも部分的に収縮されている間にショックを供給することとを含む。上記胸部の上記筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらすことは、該胸部の筋肉の該少なくとも部分的な収縮をもたらすように誘導される1つ以上の療法前調整電気パルスを印加することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
2006年8月31日に出願された米国特許出願第11/469,110号に対して、優先権の利益が、本明細書によって主張される。上記特許出願は本明細書において参考により援用される。
【0002】
(技術分野)
本出願は、概して、医療機器に関し、より具体的には、機器療法の疼痛を軽減するためのシステム、機器、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
医療機器は、特定の病状の緩和に役立てるために、身体の部位に電気療法を提供するように埋め込み可能である。電気療法により利益を受けることができるいくつかの病状には、心房性頻脈性不整脈および/または心室頻脈が含まれてもよい。例えば、埋め込み式電極は、パルス発生器に連結可能である。電極は、心臓または心臓近傍に埋め込み可能であり、電気除細動(cardioversion)ショックまたは緊急除細動(defibrillation)ショック等の電気療法は、パルス発生器から電極を介して心臓へ供給可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなショックによって、生理学的ストレス、心配、および疼痛が患者に引き起こされ得る。ショックを予測することによって、不安および苦痛がもたらされ得る。また、ショック自体が痛みを伴う可能性がある。機器療法の疼痛を軽減する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
一側面は、心臓へのショックが必要とされるか否かを感知することと、ショックの供給前に、胸部における筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらすことと、筋系が少なくとも部分的に収縮されている間にショックを供給することとを含む。
【0006】
一側面は、心臓に対する治療的ショックが必要とされるか否かを感知することと、治療的ショックの供給前に、皮下電気神経性刺激を大胸筋近傍に印加することとを含む。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
心臓へのショックが必要とされるか否かを感知することと、
該ショックの供給前に、胸部の筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらすことと、
該筋系が少なくとも部分的に収縮されている間に上記ショックを供給することと
を含む、方法。
(項目2)
上記胸部の上記筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらすことは、該胸部の筋肉の該少なくとも部分的な収縮をもたらすように誘導される1つ以上の療法前調整電気パルスを印加することを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記1つ以上の療法前調整電気パルスは、少なくとも上記ショックが供給されるまで印加される、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記1つ以上の療法前調整電気パルスを印加することは、上記胸部の上記筋系に誘導される電気パルスを印加することを含む、項目2に記載の方法。
(項目5)
上記1つ以上の療法前調整電気パルスを印加することは、体性神経が融合強縮状態をもたらすように、1つ以上の体性神経に誘導される電気パルスを印加することを含む、項目2に記載の方法。
(項目6)
上記ショックは、緊急除細動ショックを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記ショックは、電気除細動ショックを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記1つ以上の療法前調整電気パルスは、上記心臓内から供給される、項目2に記載の方法。
(項目9)
上記1つ以上の療法前調整電気パルスは、約5Vから約200Vの間のパルスを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記1つ以上の療法前調整電気パルスは、約20ミリ秒から約30ミリ秒の間のパルスを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
パルス発生器と、
該パルス発生器と動作可能に連結される少なくとも1つの電極と
を備えるシステムであって、
ショック療法の必要性に応答して、該パルス発生器は、胸部の筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらすように、電極を介して1つ以上の療法前調整電気パルスを供給するように適合され、該パルス発生器は、該ショック療法の供給前の時間から、少なくとも該ショック療法が供給されるまで、該1つ以上の療法前調整電気パルスを印加する、システム。(項目12)
上記パルス発生器はまた、上記ショック療法も供給する、項目11に記載のシステム。
(項目13)
上記1つ以上の療法前調整電気パルスは、上記胸部の上記筋系に誘導される、項目11に記載のシステム。
(項目14)
上記療法前調整電気パルスは、体性神経が融合強縮状態をもたらすように、1つ以上の体性神経に誘導される、項目11に記載のシステム。
(項目15)
上記パルス発生器は、上記ショック療法が印加されるまで、上記1つ以上の療法前調整電気パルスを反復的に供給するように適合される、項目11に記載のシステム。
(項目16)
上記システムによって提供される上記ショック療法は、緊急除細動ショックを含む、項目11に記載のシステム。
(項目17)
上記システムによって提供される上記ショック療法は、電気除細動ショックを含む、項目11に記載のシステム。
(項目18)
上記パルス発生器からの上記1つ以上の療法前調整電気パルスは、約5Vから約200Vの間のパルスを含む、項目11に記載のシステム。
(項目19)
上記パルス発生器からの上記1つ以上の療法前調整電気パルスは、約20ミリ秒から約30ミリ秒の間のパルスを含む、項目11に記載のシステム。
(項目20)
心臓への治療的ショックが必要とされるか否かを感知することと、
該治療的ショックの供給前に、皮下電気神経性刺激を大胸筋近傍に印加することと、
該治療的ショックを供給することと
を含む、方法。
(項目21)
上記皮下電気神経性刺激は、上記大胸筋近傍に埋め込まれる電気メッシュを介して印加される、項目20に記載の方法。
(項目22)
上記皮下電気神経性刺激は、上記大胸筋近傍に埋め込まれる電極アレイを介して印加される、項目20に記載の方法。
(項目23)
皮下電気神経性刺激を印加することは、痛覚神経繊維を刺激するレベルで電気パルスを印加することを含む、項目20に記載の方法。
(項目24)
皮下電気神経性刺激を印加することは、約40Hzから約150Hzの周波数において約10mAから約30mAで電気パルスを供給することを含み、この電気パルスは少なくとも上記治療的ショックが供給されるまで供給される、項目20に記載の方法。
(項目25)
皮下電気神経性刺激を印加することは、疼痛信号伝導ブロックを提供するようなレベルで、痛覚神経繊維を刺激する1つ以上の電気パルスを印加することを含む、項目20に記載の方法。
(項目26)
皮下電気神経性刺激を印加することは、痛覚信号伝送を変調するようなレベルで痛覚神経繊維を刺激する電気パルスを印加することを含む、項目20に記載の方法。
(項目27)
皮下電気神経性刺激を印加することは、内因性鎮痛剤を誘起するようなレベルで痛覚神経繊維を刺激する電気パルスを印加することを含む、項目20に記載の方法。
(項目28)
ショック療法の必要性に応じて、該ショック療法の供給前に、皮下電気神経性刺激を大胸筋に印加するように適合されるパルス発生器を備える装置を備えている、システム。
(項目29)
上記皮下電気神経性刺激は、電気メッシュを介して印加される、項目28に記載のシステム。
(項目30) 上記皮下電気神経性刺激は、電極アレイを介して印加される、項目28に記載のシステム。
(項目31)
皮下電気神経性刺激を印加することが、約40Hzから約150Hzの周波数において約10mAから約30mAで電気パルスを供給することを含む、項目28に記載のシステム。
(項目32)
上記パルス発生器はまた、上記ショック療法を供給するようにも適合される、項目28に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、特定の実施形態に従う、機器療法の疼痛を軽減するためのシステムを示す。
【図2】図2は、特定の実施形態に従う、機器療法の疼痛を軽減するためのシステムを示す。
【図3】図3は、特定の実施形態に従う、機器療法の疼痛を軽減するための方法を示す。
【図4】図4は、特定の実施形態に従う、機器療法の疼痛を軽減するためのシステムを示す。
【図5】図5は、特定の実施形態に従う、機器療法の疼痛を軽減するためのシステムを示す。
【図6】図6は、特定の実施形態に従い、機器療法の疼痛を軽減するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
以下の発明を実施するための最良の形態および添付の図面は、本発明が実用化され得る具体的な実施形態を示す。当業者が本発明を実用化できるように、これらの実施形態について十分詳細に説明する。これらの実施形態の側面は組み合わせ可能であり、その他の実施形態を利用してもよく、また、本発明の範囲から逸脱することなく構造変更を加えてもよい。
【0009】
図1は、機器療法中の疼痛を軽減するためのシステム100を示す。システム100は、概して、パルス発生器に動作可能に連結される少なくとも1つの電極120を含むパルス発生器110を備える。例えば、電極120は、緊急除細動パルスを心臓10に供給するための、緊急除細動電極または電気除細動電極であることが可能である。電極は、心室12または心房14に位置することが可能である。その他の実施形態は、第2の緊急除細動電極130、および/または感知電極等の第3の電極140を含むことが可能である。4つ以上の電極を使用することが可能である。電極120、130、および140は、パルス発生器110に連結されるリード105に沿って配置可能である。
【0010】
パルス発生器110は、パルス発生器の機能を制御するための制御回路112を含む。制御回路112は、電極120、130、および140のうちの1つ以上を介して、心房または心室の緊急除細動ショックまたは電気除細動ショック等の、心臓10への療法ショックを供給するようにプログラミングされるハードウェア、ソフトウェア、ならびに/あるいはハードェアおよびソフトウェアの組み合わせを含むことが可能である。特定の実施形態において、パルス発生器ハウジング111も電極としての役割を果たすことが可能である。
【0011】
特定の実施形態において、パルス発生器110は、ショックによる筋肉収縮からの驚愕影響を軽減して、上述の療法ショックによりもたらされる疼痛および/または心配を軽減するように、胸部筋系を刺激するための1つ以上の療法前調整電気パルスまたは複数の療法前調整電気パルスを供給するようにさらに適合される。
【0012】
特定の実施形態において、パルス発生器110は、1つ以上の療法前調整電気パルスを供給し、このパルスは、胸部30における筋系の融合強縮状態に類似する胸部筋系の事前調整をもたらすように誘導可能である。融合強縮状態は、胸部筋系が少なくとも部分的に収縮される場合に存在する。したがって、1つ以上の療法前調整電気パルスは、胸部の筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらす。1つ以上の療法前調整電気パルスまたは複数の療法前調整電気パルスは、療法ショックの供給時に胸部筋系が依然として少なくとも部分的に収縮された状態であるように印加される。特定の実施形態において、1つ以上の療法前調整電気パルスまたは複数の療法前調整電気パルスは、少なくともショック療法が供給されるまで、反復的または継続的に印加される。特定の実施形態において、療法前調整電気パルスまたは複数の療法前調整電気パルスは、療法ショック前の時間から反復的または継続的に印加可能であり、また、パルスが療法ショックと部分的または完全に重複するように継続可能である。このような胸部筋肉収縮により、胸部が事前に収縮されるため、療法ショックの供給時の疼痛が緩和される。したがって、療法ショックによる患者への驚愕が緩和され、筋肉は、療法ショック自体がもたらすほど収縮しない。
【0013】
1つ以上の療法前調整電気パルスは、異なる様式で誘導可能である。特定の実施形態において、療法前調整電気パルス150は、電極120からパルス発生器ハウジング111に向けて胸部の筋系に直接誘導される。特定の実施形態において、療法前調整電気パルス160は、電極130からパルス発生器ハウジング111へ向けて胸部の筋系に誘導される。特定の実施形態において、療法前調整電気パルス170は、電極130から電極120へ向けて胸部の筋系に誘導される。電気パルスは、胸部の右側、胸部の左側、または両側の筋系に誘導可能である。
【0014】
いくつかの実施形態において、別々のパルス発生器を使用して、療法ショックを供給し、療法前調整パルスを印加する。
【0015】
図2は、特定の実施形態に従い、機器療法の疼痛を軽減するためのシステム200を示す。本例において、パルス発生器110および電極120は、上述のように埋め込み可能である。本実施形態において、第2のリード230に沿って配置される電極235を使用して、1つ以上の療法前調整電気パルスを印加する。本例において、療法前調整電気パルスまたは複数の療法前調整電気パルスは、前胸神経205等の1つ以上の体性神経に誘導される。体性神経が信号を受けると、体性神経は、上述のように融合強縮状態または胸部筋肉収縮をもたらすことが可能である。体性神経は、胸部筋肉の収縮を制御し、少なくとも療法ショックが供給されるまで胸部筋肉を刺激することによって、患者の胸部筋肉が少なくとも部分的に収縮され、これによって驚愕が緩和され、ショック療法自体がもたらす収縮の疼痛が緩和される。
【0016】
電極235は、身体の任意の場所に位置する体性神経に療法を供給するように配置可能である。種々の実施形態において、例えば、電極235は、後頸部(例えば、C7上肩甲下神経215、またはC8神経216)、第1胸神経T1 225、または前胸神経205近傍における1つ以上の体性神経近傍に埋め込み可能であり、またはそこに療法を供給するように誘導可能である。その他の実施形態は、その他の体性神経位置を対象とすることが可能である。電極235には、例えば、チップ電極、リング電極、または神経カフ電極が含まれることが可能である。特定の実施形態において、硬膜外神経根刺激リードを使用することが可能である。
【0017】
いくつかの実施形態において、別々のパルス発生器または電極を使用して、療法ショックを供給し、療法前調整パルス印加する。
【0018】
図3は、特定の実施形態に従う方法300を示す。方法300は、胸部におけるショックが必要とされるか否かを感知すること(302)と、ショックの供給前に、胸部における筋系の少なくとも部分的な収縮をもたらすこと(304)と、筋系が少なくとも部分的に収縮されている間に治療的ショックを供給すること(306)と含む。
【0019】
一例において、図1で上述のように、療法前調整パルスは、胸部の筋系に誘導され、胸部筋肉において少なくとも部分的に収縮される状態をもたらすレベルにある。特定の実施形態において、図2で上述のように、療法前調整電気パルスは、体性神経が融合強縮状態をもたらすように体性神経に誘導される電気パルスを含む。いくつかの実施形態は、これらの2つの技法を組み合わせる。後頸部(例えば、C7上肩甲下神経またはC8神経)、第1胸神経(T1)、または前胸神経における体性神経を刺激することが可能である。
【0020】
胸部筋肉、体性神経、またはその両方のいずれか誘導される療法前調整パルスは、胸部筋系を融合強縮状態に少なくとも部分的に収縮するように設計される。上述のように、この胸部筋肉の事前収縮は、筋肉に療法ショックの準備をさせて、療法ショックの供給時に患者が感じる驚愕反応および/または痛みを伴う筋肉収縮の軽減に役立つ。療法前調整パルスまたは複数の療法前調整パルスは、胸部筋肉が療法ショックの供給時に依然として収縮されるレベルおよび/または時間に供給される。胸部筋肉が、ショック療法が供給される直前まで収縮されるため、筋系に対する療法ショックの衝撃は軽減される。いくつかの例において、筋繊維が収縮したままであることから、1つ以上の療法前パルスの最後と治療的ショックの開始との間に最大約25msの隔たりが存在可能である。
【0021】
特定の実施形態において、ショックが必要とされるか否かを感知すること(302)は、療法が必要とされるか否かを判断するために、心臓の1つ以上の電気信号を感知するステップを含む。例えば、パルス発生器は、心房緊急除細動もしくは心室緊急除細動、またはその他の任意のショック療法の必要性を認識するためにプログラミングするステップを含むことが可能である。パルス発生器がこのような必要性を認識する場合、パルス発生器は、ショック療法を供給するためにコンデンサを充電することによって、例えば、典型的には、1ジュールから25ジュール間であるショックを供給する準備を開始する。ショック療法には、例えば、電気除細動ショックまたは緊急除細動ショックが含まれることが可能である。
【0022】
特定の実施形態において、システムは、療法ショックが成功したか否かを感知することが可能である。療法が失敗であった場合、システムは、手順を繰り返し、必要な回数だけ1つ以上の療法前調整パルスを提供することが可能である。
【0023】
一実施形態において、上述の実施形態のいずれかの事前調整パルスは、約20ミリ秒から約30ミリ秒の範囲であることが可能であるが、パルスのエネルギーは、使用する電極の種類に依存する。最小エネルギーを使用して収縮をもたらすことが望ましい。電圧知覚は、患者によって変動し(例えば、5V〜50V)、および、疼痛知覚も変動する(例えば、50V〜200V)ため、最小エネルギーは、人および使用電極によって変動可能である。したがって、一実施形態において、機器は、約5Vから約200Vの間で供給するようにプログラム可能である。いくつかの実施形態において、療法前調整は、約10Hzから約100Hzの任意のヘルツでプログラム可能である。
【0024】
図4は、特定の実施形態に従い、機器療法の疼痛を軽減するためのシステム400を示す。システム400は、パルス発生器410と、ショック療法の供給前に皮下電気神経性刺激を供給するように適合される電気メッシュ402とを含む。電極120は、療法ショックを供給するために、パルス発生器410にさらに連結可能である。いくつかの実施形態において、別々のパルス発生器または電極を使用して、療法ショックを供給し、皮下電気神経性刺激を印加する。
【0025】
特定の実施形態において、システム400は、大胸筋405近傍または大胸筋405に埋め込まれる電気メッシュ420を含む。特定の実施形態において、皮下電気神経性刺激を印加するステップは、大胸筋405の痛覚神経繊維406を刺激する電気パルスを印加するステップを含む。その他の実施形態において、メッシュ420は、胸部の反対側に存在することが可能であり、または胸部の両側に電気メッシュが存在することが可能である。これらの神経繊維を刺激することによって、システム400は、療法ショックの前および/またはその間ならびにその後に鎮静療法を提供する。例えば、システムは、疼痛信号伝導ブロックを提供することが可能であり、または疼痛信号伝送を変調することが可能であり、および/または内因性鎮痛剤を誘起するようなレベルで疼痛神経繊維を刺激する。これによって、疼痛が遮蔽され、後続の療法ショックによる疼痛が緩和される。この手法は、胸部筋肉における疼痛、けいれん、および/または強縮の軽減に役立つ。
【0026】
図5は、特定の実施形態に従う、機器療法の疼痛を軽減するためのシステム500を示す。システム500は、パルス発生器510と、ショック療法の供給前に皮下電気神経性刺激を供給するように適合される電極アレイ520とを含む。電極120は、上述のように、療法ショックを供給するために、パルス発生器510にさらに連結可能である。いくつかの実施形態において、別々のパルス発生器または電極を使用して、療法ショックを供給し、皮下電気神経性刺激を印加する。
【0027】
特定の実施形態において、システム500は、大胸筋405近傍または大胸筋405に埋め込まれる電極アレイ520を含む。特定の実施形態において、皮下電気神経性刺激を印加するステップは、大胸筋405の痛覚神経繊維406を刺激する電気パルスを印加するステップを含む。これらの神経繊維を刺激することによって、システムは、疼痛信号伝導ブロックを提供し、疼痛信号伝送を変調し、および/または内因性鎮痛剤を誘起するようなレベルで疼痛神経繊維を刺激する。これによって、後続の療法ショックによる疼痛が緩和される。
【0028】
図4および図5の両方を参照すると、皮下電気神経性刺激を印加するステップは、閾値のすぐ上の低強度における振幅電流と、約10ミリ秒〜1000ミリ秒のパルス幅(持続時間)と、毎秒約40インパルス(Hz)〜150インパルス(Hz)のパルスレート(周波数)と、に関する刺激パラメータを含むことが可能である。一実施形態は、約80Hz〜100Hzの周波数、または刺激振幅電流が高強度に設定される場合、約0.5Hz〜10Hzのパルスレートを使用する。一実施形態は、約10mA〜30mA間で設定される電流で、高刺激周波数(約40Hz〜150Hz)および閾値のすぐ上の低強度を使用する。パルス持続時間は、短い(例えば、最大約50ミリ秒)ことが可能である。本設定の鎮痛剤の発現は、ほぼ即時である。鎮痛は、刺激が加えられている間持続し、通常、刺激が停止すると減少する。
【0029】
図6は、療法疼痛を軽減する方法600を示す。方法600は、治療的ショックが必要とされるか否かを感知すること(602)と、治療的ショックの供給前に、皮下電気神経性刺激を印加すること(604)と、治療的ショックを供給すること(606)と、治療的ショック後に皮下電気神経性刺激を供給し続けること(608)とを含む。特定の実施形態は、治療的ショック後に皮下電気神経性刺激を供給し続けることを省略する。
【0030】
上述のように、治療的ショックが必要とされるか否かを感知することは、心臓の電気信号を感知することを含む。例えば、パルス発生器は、心房または心室の緊急除細動野の必要性を認識するようにプログラミングすることを含むことが可能である。パルス発生器がこのような必要性を認識する場合、パルス発生器は、ショック療法を供給するためにコンデンサを充電することによって、例えば、典型的には、1ジュールから25ジュールの間であるショックを供給する準備を開始する。ショック療法には、例えば、電気除細動ショックまたは緊急除細動ショックが含まれることが可能である。
【0031】
上述のように、皮下電気神経性刺激は、例えば、大胸筋405近傍に埋め込まれる電気メッシュを介して、または電極アレイによって印加可能である。特定の実施形態において、皮下電気神経性刺激を印加することは、大胸筋の痛覚神経繊維を刺激する電気パルスを印加することを含む。これらの神経繊維を刺激することによって、本方法は、疼痛信号伝導ブロックを提供し、または疼痛信号伝送を変調し、および/または内因性鎮痛剤を誘起するようなレベルで疼痛神経繊維を刺激する。
【0032】
その他の実施形態において、上述のパルス発生器制御回路は、パルス発生器内に存在することが可能であり、またはパルス発生器と無線通信する別々のシステムであることが可能である。いくつかの実施形態において、パルス発生器は、プログラマまたは別の外部もしくは内部機器との通信に使用する送受信機および関連の回路を含むことが可能である。種々の実施形態は、無線通信能力を含むことが可能である。例えば、いくつかの送受信機の実施形態は、テレメトリコイルを使用して、プログラマまたは別の外部もしくは内部機器と無線通信する。特定の実施形態は、遠距離ICDを利用することが可能である。
【0033】
上の説明は、制限的ではなく、例示的であるように意図される。多数のその他の実施形態は、上の説明の精査後に当業者に明白となるだろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項を参照し、このような請求項が権利を有する均等物の範囲とともに決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショック療法の必要性に応じて、該ショック療法の供給前に、皮下電気神経性刺激を大胸筋に印加するように適合されるパルス発生器を備える、システムであって、
該皮下電気神経性刺激は、該パルス発生器が痛覚神経繊維を刺激するレベルで電気パルスを印加することを含む、システム。
【請求項2】
前記皮下電気神経性刺激は、電気メッシュを介して印加される、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記皮下電気神経性刺激は、電極アレイを介して印加される、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
皮下電気神経性刺激を印加することが、約40Hzから約150Hzの周波数において約10mAから約30mAで電気パルスを供給することを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記パルス発生器はまた、前記ショック療法を供給するようにも適合される、請求項に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−161629(P2012−161629A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−92011(P2012−92011)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2009−526774(P2009−526774)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】