説明

機密保持要素としてのホログラムを製造するための方法および装置

本発明は、機密保持文書としてのホログラム(15)を製造するための方法と装置、ならびにホログラム(15)、そしてこのようなホログラム(15)を備えた機密保持文書に関する。好ましくは個別化されていて、かつ様々なスペクトル色により製造されあい並んで設けられた部分ホログラムから構成されたホログラム(15)を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機密保持要素としてのホログラム、機密保持要素としてのこのようなホログラムを備えた機密保持文書、ならびにこのようなホログラムと機密保持文書を製造するための方法ならびに機密保持要素としてのホログラムを製造するための装置、そしてこのようなホログラムあるいは機密保持文書を立証するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機密保持要素は、有価文書も含んだ機密保持文書を偽造あるいは模造から保護するために使用されている。機密保持要素の様式はホログラムである。機密保持要素においては、個別化している詳細データ、例えば通し番号、証明書番号、生体情報、写真(旅券用写真の)画像等も含んでいる。これらのデータは平の原文あるいは画像形態でまたは光学的に、符号化されているかあるいは読取り可能に設けられていてもよい。
【0003】
ホログラムを製造する際の基本的な方法は例えば特許文献1に記載されている。基本的特徴を以下に説明する。第一に、ホログラフィーマスターをマスターホログラムにより製造する。次いでホログラフィーマスターをホログラフィー記録材料の後方に位置決めする。例えばレーザーからできたコヒーレント光を、ホログラフィーマスターにより再現されるべきホログラフィーパターンに応じて、ホログラフィーマスターとは反対側である、ホログラフィー記録材料の側へ放射する。コヒーレント光はホログラフィー記録材料を貫通して、かつマスターにより回折されるかあるいは反射され、これによりホログラムが入射する光との干渉により製造され、ホログラムはホログラフィー記録材料の中に具現され、光化学もしくは光物理上の工程を通してホログラフィー記録材料の中に記録される。その際、
ホログラフィーマスターは多くの波長に感度が高く、これらの波長に相応するように回折するように設計することができる。ホログラムを製造するのに、記載された配設とは別の配設も使用することができる。ホログラムを個別化するために、コヒーレント光は空間光変調素子により変調することができる。これによりホログラムには個別化パターンがエンボス加工される。
【0004】
実際のところ、液晶ディスプレー(LCD)の形式の空間光変調素子により機能するデジタルプロジェクタが知られている。その機能性は例えばスライドの投影に相当しており、空間光変調素子はスライドの代わりに使用される。
【0005】
実際のところ、さらにDMD(デジタル・マイクロ・ミラー装置)を空間光変調素子として備えているデジタルプロジェクタが知られている。特許文献2からは、対象物に標識を付すためのデジタルマイクロミラー装置(DMD)の形式の空間光変調素子が使用されていることが知られている。
【0006】
現代の旅券および身分証明書は機密保持要素として、 旅券用写真を示す個別化パターンにより個別化されているホログラムを備えている。ホログラム、特に個別化されたホログラムを製造するために必要である技術的機器の普及が進むと、偽造文書がこのような個別化されたホログラムを製造する恐れがあることが懸念される。従ってホログラムが必要とされるときに、その製造コストは偽造のために上昇する。例えばいわゆるレインボーホログラムが知られているが、このレインボーホログラムの場合、そのテーマは様々な角度の下で、すなわち様々な再生幾何学配置の下で様々な色の様式で再生する。このようなホログラムが白色光により照明され、観察中に傾斜すると、観察者にとってホログラムの色彩効果は変化する。なぜなら観察角に応じてホログラムは各々、様々なスペクトル色の一つで見えるからである。
【0007】
このようなレインボーホログラムにより偽造コストは明らかに上昇するにもかかわらず、このホログラムには一般的に金属被膜を付されたエンボス構造として文書構想に一体化できる一方、例えば透明な材料はホログラフィー媒体の下では機密保持印刷物、発光性の色等のような他の機密保持識別体を許容するのが困難であるという短所を有している。その上、個別化されかつエンボス加工されたレインボーホログラムは一切知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0896260号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2005054396号明細書
【特許文献3】欧州特許第0919961号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102006048464号明細書
【特許文献5】独国実用新案第20200706796号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の根底をなす技術課題は、ホログラムを製造するための製造方法ならびに装置、ならびにこのようなホログラムと機密保持文書、ならびに機密保持識別体としてのホログラムを備えたこのような機密保持文書を作成するための方法を提供することである。本発明のホログラムは公知のホログラムと比べて、偽造者により製造されることは困難であり、それでも尚信頼性の高い検証を可能にする。さらに本発明の課題は、このような改良されたホログラムを検証するための方法および装置、あるいはこのようなホログラムを備えた機密保持文書を提供することである。
[定義]
【0010】
機密保持要素は少なくとも一つの機密保持識別体を備えた構造上のユニットである。機密保持要素は有価文書でもよい機密保持文書と結合している、例えば糊で貼り付けられていてもよい、独立した構造上のユニットであってもよい。しかしながら、機密保持文書の一体化された構成要素であってもよい。第一の例は、機密保持文書に貼付け可能なビザである。究極の例は、紙幣あるいは証明書内に一体化された、例えば積層されたホログラムである。
【0011】
機密保持識別体は(簡易コピーに比べて)高いコストでもって、あるいは完全には認可されない状態で製造可能であるかあるいは再生可能である構造である。
【0012】
パターンは多数の相並んで配置されたパターン単位あるいはピクセルから成っているのが一般的である。パターンのパターン単位あるいはピクセルは、互いに相手に帰属しており、かつ限定された方法で側方で相対して、一般的には一つあるいは二つの空間次元の形態で配置されており、観察全体において描写、例えば画像、ロゴ、文字(アルファベット、数字、文字数字併用方式のもの)あるいは符号(例えばバーコード)を生み出す。個別化パターンは個別化するために使用されるパターンである。
【0013】
機密保持文書および/または有価文書として、模範的に挙げると、(国民としての)身分証明書、旅券、IDカード、入場許可証、ビザ、制御文字、切符、運転免許証、自動車の検査証と登録証、銀行券、小切手、郵便切手、クレジットカード、任意のチップカードおよび(例えば製品保護のための)ラベルがある。このような機密保持文書および/または有価文書は、基層、印刷層および選択で透明な最上層を有している。基層は、情報、画像、パターン等を備えた印刷層が塗布された担持構造体である。基層のための材料として、紙ベースおよび/または樹脂ベースのこの専門分野の一般的な材料がすべて対象になる。
【0014】
空間光変調素子(SLM)により、変調された強度を備えた大部分平坦な対象の照明あるいは照射を二次元的に空間分解することができる。この場合、例えばDMD(デジタルマイクロミラー装置)チップ、LCD(液晶ディスプレー)トランスミッションディスプレーあるいはLCoS(エルコス)ディスプレーであってもよい。多数のSLMピクセルが形成されていることはすべてに共通しており、その際SLMピクセルはいずれも他のSLMピクセルとは関係なく活性化可能であるかあるいは不活性可能であり(中間段階も可能であり)、それによってSLMピクセルの相応する制御により、パターンあるいは画像を投射することができる。制御性が自在であることにより、何の問題も無く、様々な画像あるいはパターンが時系列で、例えば旅行用写真の形態で相前後して生成できる。
【0015】
符号あるいはパターンは、比類なく、一人の人あるいは一つの対象、もしくは人のグループあるいは人あるいは対象の大きな全体量から成る対象である場合に個別化している。国家の住民の全体人数の中の人のグループのために個別化された符号は、例えば居住地の都市である。人一人のために個別化された符号は、例えば身分証明書の番号もしくは旅券用写真である。紙幣の枚数全体の中の紙幣のグループのために個別化された符号は価値である。紙幣のために通し番号は個別化してある。例えば個別化していない符号あるいはパターンとしては紋章、印章、国章等である。
【0016】
ホログラフィー記録材料は、感光性であり、かつホログラフィーが露光することによる光化学的もしくは光物理学的な工程により蓄積できる被膜である。単に模範的ではあるが、
ホログラフィーによく使用される感光樹脂を挙げておく。
【0017】
色の概念は本発明の範囲では波長もしくはスペクトル線として解釈される。混合色は多くの様々な波長もしくはスペクトル線を備えている。したがって色の概念は可視領域以外にUVとIRを含んでいる。
【0018】
体積型ホログラムは、干渉により形成されかつ描写される構造体が、ホログラムもしくはホログラフィー記録材料の表面からその中へ拡がるホログラムである。この構造体はホログラフィー記録材料内の多数のブラッグ面とみなされている。したがって体積型ホログラムは、高い波長選択性を有しており、かつスペクトル色だけでもって再生でき、スペクトル色でもって体積型ホログラムは露光される。
【0019】
多くのホログラフィー記録材料は定着の際に、再生波長をずらす収縮工程あるいは膨張工程(Schwellprozess)を備えている。さらにこの効果は特許文献3に記載されているように、目的に合致した状態でもたらすことができる。この場合、再生は露光される色とは別の色で行なわれる。
【0020】
ホログラムあるいはホログラムの領域がスペクトル色を備えているという表現は、ホログラムあるいは領域がスペクトル色によってのみ再生できることを示している。体積反射型ホログラムの場合、このことはホログラムが白色光源により露光された際に、ホログラムが対応する色の中で観察される場合に感知されることを意味している。白色光源の光は、
ホログラムあるいはホログラムの領域を備えている、すなわちホログラムあるいはホログラムの領域が露光されるスペクトル色を含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記技術的課題を解決するために、体積ホログラムとして形成されており、かつ少なくとも一方向に沿った、所定の色見本に従った様々なスペクトル色の領域を備えている、機密保持要素としてのホログラムを提供することを提案する。機密保持識別体としてのこのようなホログラムを製造するための方法は、以下の工程、すなわちホログラムを露光する工程と、マスターホログラムの手前にホログラフィー記録材料を配設する工程と、コヒーレント光によりホログラフィー記録材料を透過させる工程を備えており、従ってホログラフィー記録材料内にホログラムを露光させるために、コヒーレント光の少なくとも一部は、マスターホログラムで反射および/または回折され、前記コヒーレント光の少なくとも一部と、ホログラフィー記録材料を透過するコヒーレント光は干渉し、その際マスターホログラムの準備は、どの位置においても様々なスペクトル色のコヒーレント光が回折およびまたは反射するマスターホログラムの準備を含んでおり、
コヒーレント光は単色で作られるかあるいは単色化され、
ホログラフィー記録材料は、少なくとも一つの表示される方向に沿った様々な箇所で、所定の色見本に従った様々なスペクトル色の単色光により露光され、
従って様々なスペクトル色の互いに隣接した領域を備えたホログラムが生じ、
その際、それらの領域はいずれも、様々なスペクトル色の一つを忠実に提示している。
【0022】
このことは、少なくとも一つの表示される方向に沿った互いに隣接したホログラムの領域は、所定の色見本に従った様々なスペクトル色の様々な単色のコヒーレント光により露光されるということである。互いに隣接した領域は、表示される方向に沿って同一の長さあるいは様々な長さを備えている。長さと色配列は、所定の色見本により確定されている。機密保持識別体としてのホログラムを製造するためのこのために使用される装置は、マスターホログラム、ホログラフィー記録材料用の収容部および/または案内部およびコヒーレント光を放出する光源、ならびにホログラフィー記録材料用をコヒーレント光で透過させるためにコヒーレント光を案内するための投写レンズ(Abbildungsoptik)を備えている。従って、ホログラフィー記録材料を透過するコヒーレント光により、ホログラフィー記録材料内で干渉させるために、コヒーレント光の少なくとも一部は、マスターホログラムで回折および/または反射される。その際、マスターホログラムはいずれの位置においても様々なスペクトル色のコヒーレント光を回折および/または反射し、様々なスペクトル色の光を単色で作るように光源が構成されており、従ってホログラフィー記録材料の様々な領域は、所定の色見本に応じたホログラムの表示される方向に沿った位置に依存した、様々なスペクトル色の光により透過されかつ露光される。従って、様々なスペクトル色を有する少なくとも一つの表示される方向に沿った、互いに隣接した領域を備えたホログラム生じる。個々の領域は各々スペクトル色を忠実に備えているので、個々の領域の露光は、対応するスペクトル色のための最適な回折効率が各々達せられるように可能である。これにより、反射型配置の下で単純に多色で、例えば白色光源により見ることができる多色の反射型ホログラムが確実に生じる。従って、改善された機密保持文書を製造するための好ましい方法は、たった今記載した方法と反射型ホログラムを機密保持文書内に一体化する方法ステップによる、反射型ホログラムの製造を含んでいる。露光は所定の色見本に基いた様々なスペクトル色で行なわれるので、ホログラムもしくはこのようなホログラムによる機密保持文書の好ましい立証は、ホログラムが様々なスペクトル色を備えた光により反射され、かつスペクトルに分解された状態で検出され、色配列と、少なくとも一つのホログラムの方向に沿った領域の長さを規定する色見本が検出され、この検出された色見本が所定の色見本と比較されることを定めている。
【0023】
ホログラムおよび/またはこのようなホログラムを備えた機密保持文書のための相応する立証装置は、様々なスペクトル色を備えた光を作ることができる光源と、再生されたホログラムをスペクトルに分解された状態で検出できる検出ユニットと、スペクトルに分解された状態で検出された再生されたホログラムから、少なくとも1つの表示されたホログラムの方向に沿った領域の色配列と長さを規定する色見本を検出する判定ユニットと、所定の色見本と色見本を比較するための比較ユニットとを備えている。
【0024】
本発明は、一方においては、偽造に関して、様々なスペクトル色のコヒーレント光が必要とされる多色のホログラムが生じるが、他方ではホログラムの検出がさらに容易に完全に可能であるという長所を備えている。様々なスペクトル色を備えた領域は全て、各々対応する色を効率的に回折する。というのも、個々の領域が各々体積ホログラムとして構成されており、かつ良好な波長選択性を有しているからである。このように製造されるホログラムのコンタクトプリントは、原理的に可能であるが、その場合は各位置での露光が、コヒーレント光で行なわれる場合だけであり、このコヒーレント光は対応する領域の、ホログラムが最初に製造されたスペクトル色に精確に一致する。そうでなければ、偽造されたホログラムを再生する際に、はっきりと知覚可能な輝度変動が生じる。
【0025】
ホログラムは、表示される方向に沿って、様々なスペクトル色の単色部分ホログラムから作成されるのが好ましい。これらの部分ホログラムは縞状であり、かつ体積反射ホログラムとして形成されているのが好ましい。これは、コヒーレント光が縞として生じ、かつマスターホログラムをその都度縞状に再生するということである。
【0026】
様々なスペクトル色は、赤外波長領域においても、紫外波長領域においても、可視波長領域においてもおよび/またはこれらの混合波長領域においても選択できる。好ましい実施形態において、様々なスペクトル色は可視波長領域にあり、様々なスペクトル色の波長の光を備えた白色光源により再生する場合、被観察者により所定の照明角度幾何学/観察角度幾何学の下で、様々なスペクトル色を有する領域が同時に多色の全体ホログラムとして認められる。
【0027】
従って、好ましい実施形態にあって、様々なスペクトル色に関するホログラムの回折効率はほぼ同一である。これにより、様々なスペクトル領域内での様々なスペクトル色のための回折効率は、マスターホログラムが領域に関して対応している部分内で同一の構造を備えている限りおなじであることがわかる。このことは、マスターホログラムの領域あるいは部分が、様々なスペクトル色を備えた様々なホログラム内に形成される複数の異なるホログラムが、すなわち様々なホログラムが、同じ領域内で各々使用されるスペクトル色に依存した同じ回折効率を有していることを意味する。しかしながら、使用されるホログラフィー記録材料の肉厚に依存して、色に依存した軽度の偏向が生じることがある。最大回折効率は、ホログラムのブラッグ面がホログラフィー記録材料の肉厚全体を介して広がっている場合、ホログラフィー記録材料の肉厚が僅かであると波長に依存する。ホログラフィー記録材料内のブラッグ面の数はこの場合、波長に依存する。
【0028】
ホログラムが本物であることを実証するために、個々の色の回折効率を評価し、かつ設定値および/または期待値と比較することができる。これは機械的に行なわれる。個々のもしくは全ての色が真のホログラムに比べて回折効率が小さい偽造ホログラムは、目視チェックにおいても人間特有のチェック(Kontrollpersonal)により識別できる。というのも、個々の色は期待されたのと比べて弱く光るように認められるからである。偽造品に使用される光の波長が、本物のホログラム再生用に使用される波長と最適に一致しない、本物のホログラムのべた焼き(Kontaktabzug)を用いて製造された偽造品は、本物のホログラムに比べてこの波長のための回折効率が低い。この回折効率の相違点は、本物と偽造品を比べた場合、および熟達した人が、偽造品を期待された色の印象と比べた場合でも識別可能である。
【0029】
この場合、相応する領域の露光、特に露光時間は、相応するスペクトル色のためにその都度最適に選択されており、したがってこのような露光にとって最適でかつ所望な回折効率が得られるのを前提とするのは自明である。
【0030】
様々なスペクトル色に関する公知のホログラフィー記録材料は、少なくとも1つの異なる感度を有しているので、様々なスペクトル色のための露光時間をその都度合わせねばならない。好ましい本発明の実施形態の場合、マスターホログラムはホログラムの露光の際、徐々に走査され、したがってホログラムは部分ホログラムから構成される。
【0031】
一方ではホログラフィー記録材料とマスターホログラムが、他方では光源のコヒーレント光が、互いに相対的に動かされ、その際、相対速度は露光にその都度使用されるコヒーレント光のスペクトル色のための、ホログラフィー記録材料の分光感度に適応した状態で合わせられる。
【0032】
したがって、様々なスペクトル色のコヒーレント光の強度および/または露光時間を、その都度ホログラフィー記録材料の相応する分光感度に合わせることが可能であることは自明である。その際、露光時間は例えば相対速度に関して制御することができる。したがって、本発明の装置は、一方ではコヒーレント光、他方ではホログラフィー記録材料とマスターホログラムの相対運動を生じさせるように形成されている駆動ユニットを備えているのが好ましい。
【0033】
好ましい実施形態において、前記相対運動、および/または相応するように使用されるスペクトル色に関する、ホログラフィー記録材料の分光感度に依存した光の強度を制御するために制御ユニットが設けられている。説明したように、これに関しては、好ましくは各々が単色の部分ホログラムである各領域内で、ホログラム内で相応するスペクトル色に関する最適な回折効率が得られるように露光が行なわれる。
【0034】
ホログラムの露光を連続的な相対運動と一緒に行なわねばならない場合、スペクトルの切替えは、様々なスペクトル色のためのホログラフィー記録材料の露光時間に比べて短い時間内で行なわねばならない。異なる領域間の移行部分におけるホログラムの個々の領域は、各々様々なスペクトル色のための高い回折効率を備えていることが保証される。
【0035】
ホログラムの偽造は、ホログラムが個別パターンを備えている場合は、極めて困難になっている。このような個別見本を作るために、コヒーレント光は、個別パターンを形成するためのホログラフィー記録材料を透過する手前の空間光変調素子を介して変調される。したがって、空間光変調素子はホログラフィー記録材料を透過する前に、かつマスターホログラム内で回折および/または反射する前に位置している。空間光変調素子としては、反射型液晶素子、DMDおよび液晶ディスプレーが考慮に値する。
【0036】
しかしながら、様々なスペクトル色によるホログラムの露光は、ステップアンドリピート法で行なわれる。このような方法の場合、露光に使用される縞状コヒーレント光の幅に適合している空間光変調素子を使用することができる。例えば、1つあるいは複数の画素列を備えたラインディスプレイを使用することができる。このラインディスプレイは、露光されるホログラムの相応する部分に相応した、個別パターンの部分領域が示されるようにその都度制御される。このような実施形態の場合、一方ではホログラフィー記録材料とマスターホログラム、他方では光源のコヒーレント光は、空間光変調素子がラインディスプレイとして形成されていると、空間光変調素子の変化する作動と徐々に同期した状態で互いに相対的に動かされる。扁平な空間光変調素子を使用すると、ラインディスプレイによる空間光変調素子を介した、コヒーレント光の動きの同期調整は必要ではない。したがって、制御は容易に行ないうる。ホログラフィー記録材料とマスターホログラムに対するコヒーレント光の相対運動は、簡易な方法で、同時に扁平に形成された空間光変調素子のスキャンオフ(Abscannen)を生じさせる収束光学系(Abbildungsoptik)を介して行なわれる。ホログラムとホログラムに装備された機密保持文書の偽造に対する安全性は、特に様々なスペクトル色を備えた、ホログラムの領域を用いて、個別化された識別体が符号化されているかあるいはされるかによって高められる。様々な領域の色順序と方向に沿った様々な領域の長さにより色見本は定義される。色見本はホログラム毎に予め設定するのが好ましい。
【0037】
所定の色見本が、ホログラム、あるいは例えば機密保持文書に割当てられた第一の識別体、特に個別化識別体から、明確であるが、可逆でない演算アルゴリズムにより得られる場合に、特に高い偽造への安全性が達せられる。最重要な識別体として、機密保持文書の場合、機密保持文書内に符号化される、識別番号、名前、出生日等、もしくは旅券用写真、あるいは他の生体立証情報、あるいはこれによる組合せを利用することができる。
【0038】
個別化パターンが第一の識別体として使用される自明であると考えられ、かつ特に有利である。
【0039】
このようにして、個別化パターンと色見本の間の結び付きは確立されており、この色見本により、ホログラムの方向に沿って相前後して続く、様々なスペクトル色の領域の順序と長さが定められている。個別化パターン、例えば旅券を変更すると、付属する色見本も変わり、これに伴ってホログラムが製造される。明確であるが、可逆でない演算アルゴリズムを使用することにより、演算アルゴリズムあるいは秘密鍵を機密にした場合、正しい色見本を得ることは偽造者にはできない。
【0040】
演算アルゴリズムは、個別化パターン毎に色見本が厳密に割当てられているという具合に、当然明確である必要はない。むしろ似たような個別化パターンは同じ色見本に割当てられていてもよい。同様に、それ自体極めて異なる個別化パターンが同じ色見本に割当てられていることも可能である。使用される色見本の数が十分多いと、特有の個別化パターンに対して演算アルゴリズムを介して割当てられる色見本を推測できる確立は極めて小さいく、したがって個別化されたホログラムの偽造はほとんど不可能である。
【0041】
色見本が第一の識別体、特にホログラムの個別化パターンから導くことができるホログラムを立証するために、第一の識別体が検出され、所定の色見本が算出され、検出された色見本と比較される。
【0042】
しかしながら個別のチェックポイント(Pruefstellen)に演算アルゴリズムを準備する必要がないように、例えば符号化を経由してチップ内へ、第一の識別体から導き出される色見本あるいはその他に設定された、機密保持文書内の色見本を符号化してメモリすることは有利である。符号化された状態でメモリされた色見本が、符号化された形式で、および/または無資格者のアクセスに対して保護された状態で、例えば機密保持文書内へ一体化されたチップ内でメモリされているのは有利である。たとえ色見本の符号化が偽造者により解読されれば、偽造者は関連している機密保持文書内のホログラムを交換することができる(別の機密保持文書が破損すること(Beschaedigung)なく一般に可能である限り)。だがホログラムにおいて、偽造者は、機密保持文書内で符号化された色見本を備えた、偽造された個別化パターンを備えたホログラムを製造にも、計算アルゴリズムに基づいた“正しい色見本”が規定され、実際の使用される色見本と比較された際に、ホログラムの偽造はこのような場合でも証明されるだろうか。
【0043】
目視検査によるホログラムの検査を簡単に行なうために、本発明の好ましい実施形態においては、ホログラムは様々なスペクトル色のための再生に関して同一の角度選択性を備えている。したがって、再生に関する幾何学配置に対するホログラムの軽度な傾倒は、その都度同じやり方の様々なスペクトル色の領域に関する。
【0044】
さらに様々なスペクトル色のためのホログラムの個別の領域が、各々同じ再現幾何学配置を有していると有利である。このことは、様々なスペクトル色が再現する際にホログラムに光を当てる照明角度と、様々なスペクトル色のための視野角は各々同一であることを意味している。これにより、簡単な視野の制御が様々なスペクトル色の光を含む白色光源により実施できることが長所であることがわかる。このようなホログラムの製造は、特にそれ自体ホログラフィーによるすりガラススクリーンの結像(Abbildung)であるマスターホログラムにより可能であり、前記すりガラススクリーンは様々なスペクトル色の光を各々一つのかつ同じ場所にほぼ均一に散乱させる。したがって、ホログラムを製造するための方法の好ましい実施形態において、マスターホログラムは、様々なスペクトル色の光をある場所に各々均等に散乱させるホログラフィーによるすりガラススクリーンの結像により製造される。すなわち様々なスペクトル色の光は同一の幾何学上の条件下で結像する。製造の際、すりガラススクリーンはまず第一に透過型ホログラム内に結像されるのが好ましい。これは再生がホログラフィー記録材料内で行なわれ、そこでマスターホログラムである反射型ホログラム内に露光される。
【0045】
ホログラムをできるだけ偽造される恐れなく機密保持文書内で一体化するために、ホログラムを製造するのが好ましく、ホログラムはそのあと場合によっては別の被膜と一緒に積層されて文書体になる。代替えとして、ホログラムは文書体上で貼り付けられ、かつ場合によっては引掻き傷保護フィルム(Kratzschutzfoil)あるいは引掻き傷保護メッキ(Kratzschutzlack)により被膜を付されてもよい。このための方法は、例えばまだ公開されていない特許文献4に記載されている。
【0046】
機密保持文書においては、別の機密保持要素および機密保持識別体も一体化できるのは言うまでもない。
【0047】
本発明を以下に図に関連付けて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ホログラムを製造するための装置の概略説明図である。
【図2】ホログラムの概略説明図である。
【図3】ホログラムを製造するための装置を含んだ、機密文書を製造するための方法の概略説明図である。
【図4】ホログラムあるいは機密文書を装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0049】
図1にはホログラムを製造するための装置が概略的に示してある。マスターホログラム2の手前には、案内部3上にホログラフィー記録材料4が設けられている。案内部3はマスターホログラム2に対して、ホログラフィー記録材料4が好ましくはマスターホログラム2と全面で接触しているように配置されている。当業者にとって、ここでは(図示していない)好ましくはポリエチレンテレフタレート(PE)から成る透明な保護被膜を、ホログラフィー記録材料4とマスターホログラム2の間に設けてもよいことは自明である。ホログラムがホログラフィー記録材料4内で完全に露光された後に、この保護被膜によりマスターホログラム2によるホログラフィー記録材料4の剥離は減る。
【0050】
マスターホログラム2は、ホログラフィーで作られた構造体であるのが好ましく、この
構造体は、様々なスペクトル色を備えた、ホログラフィーによるすりガラススクリーンの結像により製造されており、かつ全ての位置において様々なスペクトル色の光を特に同一の角度の下でほぼ同一に回折させるという性質を備えている。
【0051】
本装置1はさらに様々なスペクトル色を作り出すことができるコヒーレント光源5を備えている。これに関して、光源5は例えば様々なスペクトル色を作り出すことができる複数のレーザー6を備えることができる。光源5は合成ユニット兼選択ユニット7を経由して、様々なスペクトル色の選択されるスペクトル色を各々選択的に制御された状態で供給するように構成されている。
【0052】
コヒーレント光8は、光源5から好ましくは縞状の光線として供給される。このことは、光線が伝播方向に対して横方向に空間的次元に沿って拡張されていることを意味する。この拡張は好ましくは製造されるべきホログラムの少なくとも一つの幅もしくは高さに対応している。図示した実施例において、コヒーレント光8は、図の平面に対して垂直に縞状に拡張されている。
【0053】
さらに装置1は反射鏡9として簡略化して図示されている収束光学系を備えている。投写レンズは、コヒーレント光8が空間的に変調される空間光変調素子10を通って案内されるように形成されている。このことは、コヒーレント光8の縞状の拡張に沿った様々な位置が、伝播方向に対して横方向に様々に変調されることを意味する。変調はホログラムのための個別化パターンに相応するように行なわれる。変調されたコヒーレント光8は、ホログラフィー記録材料4を透過し、かつ変調されたコヒーレント光の少なくとも一部はマスターホログラムで回折および/または反射される。反射および/または回折された光は、ホログラフィー記録材料を透過する光11と干渉し、従ってホログラムをホログラフィー記録材料4内に露光する。
【0054】
装置1の制御ユニット12は光源のスペクトル色の1つの選択を制御し、さらにまた一方においてはコヒーレント光8と変調されたコヒーレント光11の間の相対運動を制御し、他方においてはホログラフィー記録材料4とマスターホログラム2の間の相対運動を制御するように構成されている。このために制御ユニット12は駆動ユニット13と接続している。駆動ユニットは図示した実施形態において、投写レンズ、すなわち反射鏡9と、
反射鏡の移動を介して同期した状態で、空間光変調素子10ならびにマスターホログラム2が縞状に走査されるように結合されている。さらに制御ユニット12は、ホログラフィー記録材料内での露光時間がその都度ホログラフィー記録材料の分光感度に適合しており、かつホログラムの露光に対してその都度使用され、選択されるコヒーレント光8,11のスペクトル色に適合しているように構成されている。必要な露光時間は、コヒーレント光の強度とホログラフィー記録材料4の感度に依存している。したがって、制御ユニット12は、光源の強度および/または走査光の相対速度および/またはホログラフィー記録材料4の位置における露光時間のいずれかを制御する。
【0055】
色の選択は所定の色見本にしたがって実施される。このために、ホログラフィー記録材料4およびマスターホログラム2に対する光の相対運動が制御される。相対運動は少しずつ行なわれるのが好ましい。
【0056】
制御ユニット12は、明らかではあるが可逆的ではないアルゴリズムを備えた第一の識別体に関する情報を所定の色見本に変換するように構成されている計算ユニット14を備えている。所定の色見本には、様々なスペクトル色の配色ならびに色見本の多色の領域が提示されている。所定の色見本は個別化パターンあるいはその一部から出発して計算されるのが好ましく、この個別化パターンは、空間光変調素子を制御し、かつホログラムを個別化するために、制御ユニットを使用する。
【0057】
図2には一般的なホログラム15が概略的に示してある。ホログラム15は、名称16、顔面17の具象的な描写(旅券用写真)ならびにここでは一般的に正方形として構成された構成部分18を、個別化された識別体として備えている。個々の構成要素、例えば構成部分18は、例えば様々な旅客列車の旅券用に製造される、多数の製造されるホログラムのために同一であってもよく、例えば紋章を描写してもよい。
【0058】
ホログラム15は、様々なスペクトル色を備えた多数の縞状の領域19で分割されており、前記スペクトル色は領域19にわたって設けられた赤を表すRと、緑を表すGと、青を表すBを備えていることを特徴としている。ホログラムの長手方向に対して平行に整向されている、表示される方向20に沿って、これらの様々なスペクトル色は明示してある領域に互いに隣接しており、かつホログラム15を形成している。個別の領域19は部分ホログラムを示しており、これらの部分ホログラムは各々、対応するスペクトル色で露光されたホログラム15の一部を示している。スペクトル色と、表示される方向20に沿った個別領域の長さは、色見本を定めている。この際、表示される方向20は、走査方向22と一致しており(図1と比較)、この方向に沿って、コヒーレント光8はホログラムを少しずつホログラフィー記録材料4内に露光するのが好ましい。個別の領域19により定められた色見本が、個別化パターンあるいは個別化パターンの一部に基いて計算されている場合、色見本が目に見える個別化パターンに所属するのかどうか、あるいはホログラムが正しく製造されず、したがって偽造品であるのかどうかが立証できる。二色もしくは三色以上およびまたはここで挙げた以外の別の色、特に紫外線スペクトル領域あるいは赤外線スペクトル領域の色が使用されることがあり得ることがわかる。
【0059】
図3を基にして、ホログラムあるいは機密保持文書を製造するための方法をもう一度説明しなくてはいけない。図3には、ホログラムを製造するための方法を含んだ、ブロックダイヤグラムとしての機密保持文書を製造するための方法が示してある。ホログラムを製造するために、差当たりマスターホログラムを準備する(31)。このことは本発明の一実施例においては、すりガラススクリーン32のホログラフィーの製造の一回限りの工程を含んでいる。このような方法は、特許文献1に記載されているのが典型的である。差当たり、すりガラススクリーンの透過型ホログラムは、様々なスペクトル波長(色)を備えた透過型ホログラムにおいて表示される。引続いて、透過型ホログラムは同様に、再生が別のホログラフィー記録材料内で行なわれ、かつ様々なスペクトル波長(色)のためのすりガラススクリーンの透過型ホログラムを作るのに役立つように再生される。代替え的には、特許文献5に記載されている、反射する鋸歯状の構造を製造することができる。金属被覆を施した鋸歯面は、ホログラムを製造するために使用すべき光の波長に比べて大きい寸法を備えている。 このような鋸歯状の構造は、マスターホログラムとしてすりガラススクリーンの透過型ホログラムに匹敵する機能を満たしている。
【0060】
準備されたマスターホログラムの手前に、ホログラフィー記録材料を設ける(33)。ホログラムを個別化できるように、個別化パターンを34検出する。個別化パターンあるいはその一部は、色見本を算出するために、明白ではあるが、可逆ではない計算アルゴリズムにより計算される第一の識別体として使用することができる(35)。個別化パターンを第一の識別体として使用すべきではない場合、所定の色見本を算出する前に、第一の識別体を検出することができる(36)。代替え的に、色見本は直接規定してもあるいは検出してもよい。算出した所定の色見本に基いて、多数の様々なスペクトル色の一つを選択する(37)。光源を用いて選択したスペクトル色の単色コヒーレント光を作る(38)。一般的に、光は単色光を作るレーザーにおいて作られる。さらにコヒーレント光は単色化される。スペクトル色の選択は、単色光をスペクトル領域から選択した状態で作るいわゆる同調可能なレーザーの場合、制御を通じて行なわれる。様々なスペクトル色の光が多数のレーザーを使用して作られる場合、このことは切換え状態で操作することができる。選択は光学要素、絞り、カラーホイールあるいはこれらに類するもの介しても行なわれる。代替えあるいは追加的に、一つあるいはそれより多くのレーザーを使用してもよい。このことは例えば光パラメトリック発振器を使用して実現できる。
【0061】
選択されるスペクトル色の単色コヒーレント光は、空間光変調素子、例えば個別化パターンにより制御されるLCDディスプレーによって変調される(39)。変調されたコヒーレント光により、ホログラフィー記録材料は透過され、光の一部はマスターホログラムで回折、および/または反射され、従ってホログラムは干渉を経てホログラフィー記録材料内で露光される。露光は使用されるスペクトル色に相応してホログラフィー記録材料の分光感度に適合させるように行なわれる(40)。引続いて、ホログラフィー記録材料とマスターホログラムに対する(光の)光路の相対的移動が行なわれ(41)、かつホログラム、すなわち色見本が完全に準備されているかが点検される(42)。もし準備されていないと、色見本に基いたスペクトル色の選択の処理工程37による方法が継続される。ホログラムがそれとは逆に完全に露光されていると、ホログラフィー記録材料は現像される(43)。
【0062】
引続いて完成したホログラムは機密保持文書に組み込まれる(44)。このためにホログラムは特に層間に設けられており(45)、これらの層は文書体に引続いて積層される(46)。機密保持文書においては、他の機密保持識別体を組み込んでもよい。さらに加えて、好ましい実施形態の場合、第一の識別体および/または所定の色見本は、機密保持文書体へホログラムから分離される、すなわち機密保持文書内へコード化される(47)。これにより、色見本および/または色見本が算出できる第一の識別体が、機密保持文書による立証のために準備されることが保障されている。所定の色見本を算出するための個別化パターンあるいはその一部が使用されると、分離した符号化は機密保持文書内で行なうことはできない。
【0063】
本方法は、マスターホログラム33の手前のホログラフィー記録材料の配設の方法工程にとりかかるように継続されるのが好ましい。このことは、例えばローラに巻き付けられた、マスターホログラムの手前のホログラフィー記録材料の新しい部分が動かされることにより行なわれる。
【0064】
これとは別の実施形態の場合、マスターホログラムはドラム内に組み込まれるており、このドラムを覆って、ホログラフィー記録材料は案内される。このような実施形態の場合、
ホログラフィー記録材料と一方ではマスターホログラムとの間の、他方ではコヒーレント(場合によっては変調した)光との間の相対運動はドラムの回転運動により生じる。どの場合においても、露光場所における、ホログラフィー記録材料とマスターホログラムは互いに並んでいる。
【0065】
図4には、ホログラム51が組み込まれている、ホログラム51あるいは機密保持文書52を立証するための装置50の模範的な実施形態が示してある。立証するための装置50は、光源53を備えており、この光源は様々なスペクトル色の光を同時にもしくは時間をずらして放射することができる。再生されるホログラムが、例えばカメラあるいはCCDとして形成されている検出ユニット54によりスペクトルで検出できるように、光源53はホログラム51に対して配置されている。制御部55は光源も、検出ユニットも制御している。さらに、制御部は、スペクトルに分解された状態で検出されたホログラムに基いて、色見本を検出できる選択ユニット56を備えている。ある一実施形態の場合、制御部55は計算ユニット57を備えており、この計算ユニットは第一の識別体、例えば検出された個別化パターンに基いて、所属する色見本を算出することができる。比較ユニット58を介して、確定された色見本は算出された色見本と比較される。両者が一致していると、ホログラム51あるいは機密保持文書の機密保持識別体は本物であると立証される。計算ユニットに加えて、もしくは計算ユニットの代替えとして、装置50は、図示した実施例では例えば機密保持文書52のチップ60から情報を読取りできるように、
例えばSIMカード読取り機として形成されている前記検出ユニットとは別の検出ユニット59を備えていてもよい。チップ60から読み取られる情報は、例えば暗号で符号化された状態で色見本を備えていてもよく、この色見本は機密保持文書52の正確なホログラム51を備えていなければならない。全く同様に、チップ60は第一の識別体に関する情報を備えていることも可能であり、この情報は算出された色見本を観測された色見本と比較し、これについてホログラム51あるいは機密保持文書52を構成するために、色見本を算出する目的で参照される。
【符号の説明】
【0066】
1 ホログラムを製造するための方向
2 マスターホログラム
3 案内部
4 ホログラフィー記録材料
8 コヒーレント光
9 反射鏡
10 空間光変調素子
11 変調されたコヒーレント光
12 制御ユニット
13 駆動ユニット
14 計算ユニット
15 ホログラム
16 名称
17 顔面
18 構成部分
19 領域
20 表示される方向
21 長手方向側
22 走査方向
31 ホログラムの準備
32 すりガラススクリーンのホログラフィーの製造
33 ホログラフィーの手前のホログラフィー記録材料の配設
34 個別化パターンの検出
35 第一の識別体の検出
36 色見本の計算
37 色見本に基づいたスペクトル色の選択
38 選択されたスペクトル色のコヒーレント光の生成
39 個別化パターンに基づいた光の変調
40 ホログラフィー記録材料の透過とマスターホログラムにおける光の一部の回折および/または反射
41 ホログラフィー記録材料/マスターホログラムに対する光路の相対変位
42 ホログラム/色見本が完成状態になっているかどうかの確認
43 ホログラフィー記録材料の現像
44 ホログラムの機密保持文書内への一体化
45 層間への配設
46 層を積層して文書体にすること
47 ホログラムから分離された状態で機密保持文書内へ第一の識別体/色見本を符号化すること
50 ホログラム/機密保持文書を検証するための装置
51 ホログラム
52 機密保持文書
53 光源
54 検出ユニット
55 制御部
56 選択ユニット
57 計算ユニット
58 比較ユニット
59 別の検出ユニット
60 チップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機密保持の徴標としてのホログラム(15)を製造するための方法であって、この製造方法が以下の工程、すなわち
マスターホログラム(2)を準備する工程と、
マスターホログラム(2)の手前に、ホログラフィー記録材料(4)を配設する工程と、
コヒーレント光(8,11)を使用して、ホログラフィー記録材料(4)を照射する工程を備えており、
従って、コヒーレント光(8,11)の少なくとも一部が、マスターホログラム(2)において反射および/または回折され、このマスターホログラムによりホログラフィー記録材料(4)が、ホログラフィー記録材料(4)内にホログラム(15)を露光させるために、照射しているコヒーレント光(8,11)に干渉する方法において、
マスターホログラム(2)の準備状態が、各位置において様々なスペクトル色のコヒーレント光(8,11)を回折させ、および/または反射するマスターホログラム(2)の準備状態を備えており、
前記コヒーレント光(8)が単色で作られるかあるいは単色化され、
前記ホログラフィー記録材料が、少なくとも一つの表示された方向(20)に沿った様々な位置において、所定の色見本に従った様々なスペクトル色の単色光により露光され、
従って、互いに隣接した、様々なスペクトル色の領域(19)を備えたホログラム(15)が生じ、その際前記領域がいずれも様々なスペクトル色の一つを忠実に備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
マスターホログラム(2)が、徐々に走査され、したがってホログラム(15)が部分ホログラムから構成されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
一方においては、ホログラフィー記録材料(4)とマスターホログラム(2)が、他方においては、光源(5)のコヒーレント光(8,11)が、互いに相対的に動かされ、この場合、相対速度は、露光に対して各々使用される、コヒーレント光(8,11)のスペクトル色のための、ホログラフィー記録材料(4)の分光感度に適合した状態で合わせられることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
様々なスペクトル色のコヒーレント光(8,11)の強度および/または露光時間がその都度、対応するホログラフィー記録材料(4)の分光感度に合わせられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
コヒーレント光(8,11)が、個別化パターンを形成するためのホログラフィー記録材料(4)を透過する手前の空間光変調素子を介してホログラム(15)内で変調されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
様々なスペクトル色によるホログラム(15)の露光が、ステップアンドリピート法により行なわれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
露光が連続的である場合、スペクトルの選択が、様々なスペクトル色のためのホログラフィー記録材料の露光時間と比べて短い時間内で行なわれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
個別領域(19)のスペクトル色の順序と表示される方向(20)に沿った個別領域(19)の長さを規定する所定の色見本は、第一の機密保持識別体から、明白ではあるが、可逆ではない計算アルゴリズムにより算出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
第一の識別体として、個別化パターンが使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
マスターホログラム(2)がすりガラススクリーンのホログラフィー結像により製造され、このすりガラススクリーンが様々なスペクトル色のコヒーレント光(8,11)を一つの場所に各々均一に散乱させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ホログラム(15)が請求項1〜10のいずれか一つにより製造され、かつ文書体内に一体化されることを特徴とする機密保持文書を製造するための方法。
【請求項12】
ホログラム(15)が一体化の際、積層されて文書体になる層間に配設されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ホログラム(15)が一体化の際、文書体上で貼り付けられることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
第一の機密保持識別体がホログラム(15)から分離された状態で機密保持文書内へ符号化されることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一つ記載の方法。
【請求項15】
機密保持文書の機密保持識別体としてのホログラム(15)を製造するための装置であって、
マスターホログラム(2)、ホログラフィー記録材料(4)用の収容部および/または案内部およびコヒーレント光を放出する光源(5)、ならびにホログラフィー記録材料(4)をコヒーレント光(8,11)で透過させるためにコヒーレント光(8,11)を案内するための投写レンズを備えており、
したがって、ホログラフィー記録材料(4)を透過するコヒーレント光(8,11)により、ホログラフィー記録材料(4)内で干渉させるために、コヒーレント光(8,11)の少なくとも一部は、マスターホログラム(2)で回折および/または反射される様式の装置において、
マスターホログラム(2)が、いずれの位置においても様々なスペクトル色のコヒーレント光(8,11)を回折および/または反射し、様々なスペクトル色のコヒーレント光(8,11)を単色で作るように光源(5)が構成されており、
したがって、ホログラフィー記録材料(4)の様々な領域(19)が、ホログラム(15)の所定の色見本に応じた、ホログラムの表示される方向(20)に沿った位置に依存した様々なスペクトル色の光により透過されかつ露光されることを特徴とする装置。
【請求項16】
コヒーレント光(8,11)を個別化パターンでもって変調させるために、コヒーレント光(8,11)の光路内に空間光変調素子(10)(SLM)が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
空間光変調素子(10)がLCoS、DMDあるいはLCDであることを特徴とする請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
一方においてはコヒーレント光(8,11)と、他方においてはホログラフィー記録材料(4)およびマスターホログラム(2)との間の相対運動を生じさせるように形成されている駆動ユニットが設けられていることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一つに記載の装置(1)。
【請求項19】
前記相対運動、および/または相応するように使用されるスペクトル色に関する、ホログラフィー記録材料(4)の分光感度に依存したコヒーレント光(8,11)の強度を制御するために、制御ユニット(12)が構成されていることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一つに記載の装置(1)。
【請求項20】
前記相対運動、および様々な領域(19)の色順序と方向(20)に沿った様々な領域の長さを規定する所定の色見本に依存した、光源(5)の様々なスペクトル色の選択を制御するために制御ユニット(12)が設けられていることを特徴とする請求項15〜19のいずれか一つに記載の装置(1)。
【請求項21】
制御ユニット(12)と計算ユニット(14)が結合しており、この計算ユニットが第一の識別体から明白ではあるが、可逆ではない計算アルゴリズムにより所定の色見本を算出することを特徴とする請求項15〜20のいずれか一つに記載の装置(1)。
【請求項22】
個別化パターンが第一の識別体であることを特徴とする請求項15〜21のいずれか一つに記載の装置(1)。
【請求項23】
請求項26〜36のいずれか一つによるホログラム(51)および請求項37〜39のいずれか一つによる機密保持文書(52)のための立証装置(50)であって、
様々なスペクトル色を備えた光を作ることができる光源(53)と、
再生されたホログラムをスペクトルに分解された状態で検出できる検出ユニット(54)と、
スペクトルに分解された状態で検出され、再生されたホログラムから、少なくとも1つの表示されたホログラムの方向に沿った領域の色配列と長さを規定する色見本を検出する判定ユニット(56)と、
所定の色見本と色見本を比較するための比較ユニット(58)とを備えていることを特徴とする立証装置(50)。
【請求項24】
計算ユニット(57)が比較ユニット(58)と結合しており、この計算ユニットが第一の識別体から所定の色見本を、明白ではあるが、可逆ではない計算アルゴリズムを用いて算出することを特徴とする請求項23に記載の立証装置。
【請求項25】
判定ユニット(56)が、ホログラム(15)の個別化パターンを第一の識別体として検出する分析のジュールを備えていることを特徴とする請求項23または24に記載の立証装置。
【請求項26】
ホログラム(15)が少なくとも表示される方向(20)に沿って、所定の色見本に従った様々なスペクトル色の領域(19)を備えていることを特徴とする機密保持識別体としてのホログラム(15)。
【請求項27】
ホログラム(15)が表示される方向(20)に沿って、様々なスペクトル色の単色部分ホログラムから成っていることを特徴とする請求項26に記載のホログラム(15)。
【請求項28】
部分ホログラムが縞状であることを特徴とする請求項26または27に記載のホログラム(15)。
【請求項29】
ホログラム(15)の様々なスペクトル色が可視スペクトル領域内にあり、
様々なスペクトル色の波長のコヒーレント光(8,11)を備えた白色光源(5)により再生する場合、被観察者により所定の照明角度幾何学/観察角度幾何学の下で、様々なスペクトル色を有する領域(19)が同時に多色の全体ホログラムとして認められることを特徴とする請求項26〜28のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項30】
様々なスペクトル色に関するホログラム(15)の回折効率がほぼ同一であることを特徴とする請求項26〜29のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項31】
ホログラム(15)が個別化パターンを備えていることを特徴とする請求項26〜30のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項32】
個別化パターンが人の旅券用写真であることを特徴とする請求項26〜31のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項33】
少なくとも一つの方向(20)に沿った個別の様々なスペクトル色の順序および/または長さにおいて、第二の機密保持識別体が符号化されていることを特徴とする請求項26〜32のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項34】
第二の機密保持識別体が第一の機密保持識別体から明白に、明白ではあるが、可逆ではない方法で算出可能であることを特徴とする請求項26〜33のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項35】
ホログラム(15)が様々なスペクトル色の再生に関して同じ角度選択性を備えていることを特徴とする請求項26〜34のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項36】
様々なスペクトル色のためのホログラム(15)の個別の領域(19)が各々、同じ幾何学配置をそなえていることを特徴とする請求項26〜35のいずれか一つに記載のホログラム(15)。
【請求項37】
請求項26〜36のいずれか一つに記載のホログラム(15)を備えた機密保持文書
【請求項38】
第一の機密保持識別体が、個別化パターン、すなわち文字数字併用方式で書かれたテキスト、特に機密保持文書を同定する人の苗字、誕生日、ファーストネーム、居住地、バーコード、チップに入力されたデータ列あるいはこれらの組合せであることを特徴とする請求項37記載の機密保持文書。
【請求項39】
第一の機密保持識別体が、ホログラム(15)から分離した状態で機密保持文書内に記憶されていることを特徴とする請求項37または38に記載の機密保持文書。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−502279(P2011−502279A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531468(P2010−531468)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009346
【国際公開番号】WO2009/056356
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510058829)ブンデスドルッケライ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (10)
【Fターム(参考)】