説明

機械式駐車場

【課題】段積み方式による空パレットの保管では、空パレットの取り扱いに手間がかかる。
【解決手段】機械式駐車場10は、車両20をパレットに搭載して格納棚に格納する。機械式駐車場10は、車両20が搭載されていない複数の空パレット34を上下方向に離間して収容可能なパレット待機スペース100を備える。パレット待機スペース100は、空パレット34が待機している間はその空パレット34を支持すると共に空パレット34の出し入れの際はその空パレット34を移動させる第3移載装置102を空パレット34ごとに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット式の機械式駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
人口密度の高い都心部や複合商業施設や集合住宅などでは、複数層の格納棚を有することで駐車効率を高め、車両の搬送にパレットを使用するパレット式の機械式駐車場が多く使用されている。機械式駐車場は一般に、ドライバが車両に乗車または車両から降車するための乗降室と、地上または地下に設けられた格納棚と、を備える。機械式駐車場はエレベータなどの昇降装置によって乗降室と格納棚との間でパレットを移動させる。
【0003】
格納棚におけるパレットの移動にはパズル方式が採用されることが多い。このパズル方式について、例えば本出願人は平面パズル方式の駐車装置を特許文献1や特許文献2で提案している。この平面パズル方式では、格納棚に碁盤目状に多数の駐車スペースを配置する。各駐車スペースにパレットを前後左右に搬送する4方向搬送機能を持たせる。さらに駐車スペース数より1つ少ない数のパレットを駐車スペース上に置く。入出庫時は入出庫車両を載せたパレットの搬送方向にパレットを載せていない空スペースを作りながら、各駐車スペース上のパレットを前後左右に動かすことにより、入出庫作業を行うようにする。
【0004】
このような平面パズル方式の駐車装置は、台車走行レーンのような車両を収容しないスペースが少ないことから高い駐車効率を有するのであるが、パズル動作は搬送経路が長くなったり、方向変換することが多いので、入出庫のための待機時間が比較的長くなりうる。
【0005】
パズル方式における待機時間を短縮するために、従来では車両が搭載されていないパレットを所定のスペースに段積みしておくことで空スペースを増やすことが提案されている(例えば、特許文献3、4、5参照)。パレットの段積みについては特許文献6、7にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−74804号公報
【特許文献2】特開昭63−74805号公報
【特許文献3】特開2000−220314号公報
【特許文献4】特開2001−98787号公報
【特許文献5】特開2001−152687号公報
【特許文献6】特開平6−257311号公報
【特許文献7】実用新案登録第3165190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基本的に段積みされたパレットは互いに接触している。したがって、段積みされたパレット群からパレットを取り出す際には取り出し対象のパレットを他のパレットから分離してから取り出す必要があり、手間がかかる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パレット式の機械式駐車場において、車両が搭載されていないパレットを所定のスペースに集めるときの動作をより効率化できる機械式駐車場の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は機械式駐車場に関する。この機械式駐車場は、車両をパレットに搭載して格納棚に格納する機械式駐車場であって、車両が搭載されていない複数の空パレットを上下方向に離間して収容可能なパレット待機スペースを備え、そのパレット待機スペースは、空パレットが待機している間はその空パレットを支持すると共に空パレットの出し入れの際はその空パレットを移動させるパレット取り扱い装置を空パレットごとに有する。
【0010】
この態様によると、パレット待機スペースにおいて空パレットを他の空パレットとは独立に扱うことができる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パレット式の機械式駐車場において、車両が搭載されていないパレットを所定のスペースに集めるときの動作をより効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る機械式駐車場の断面図である。
【図2】図1のB1F格納棚の平面図である。
【図3】空パレットをパレット待機スペースに入れる際の動作を説明するための説明図である。
【図4】第1変形例に係るパレット待機スペースの側面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、第2変形例に係る機械式駐車場を使用して空スペースの数とパズル動作の手数との関係を説明するための説明図である。
【図6】図6(a)、(b)は、格納棚の空スペース数を最適数までとするという形で運用されている第3変形例に係る機械式駐車場を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
本実施の形態に係る機械式駐車場は、自動車などの車両をパレットに搭載して格納棚に格納するパレット式の駐車場である。この機械式駐車場では、格納棚においてパレットが存在しないスペースを増やすため、満車状態でなければ、車両が搭載されていない空パレットをパレット待機スペースで待機させる。
【0016】
このパレット待機スペースでは各空パレットは他の空パレットとは独立に支持される。これにより、例えば段積みの場合と比較して、空パレット取り出しの際に空パレットを他の空パレットから分離する動作を行う必要がなくなる。また、空パレットをパレット待機スペースに収容する際も空パレットを移動させるだけでよく、段積みの場合のように移動させた後他の空パレットと接触させる動作を行う必要はない。したがって、より素早く空パレットを出し入れできる。その結果、格納棚の空パレットの数を変更する際の待ち時間を短縮できる。
【0017】
図1は、実施の形態に係る機械式駐車場10の断面図である。図2は、B1F格納棚14の平面図である。機械式駐車場10は、地上に設けられた建物24の地下に地下3階まで設けられた、いわゆる地下式の機械式駐車場である。機械式駐車場10は、地下1階、地下2階、地下3階のそれぞれに設けられたB1F格納棚14、B2F格納棚16、B3F格納棚18を備える。各格納棚は車両20を格納する。B1F格納棚14、B2F格納棚16は鉛直方向に設けられた支柱92により支えられる。図2では説明をより分かりやすくするため、支柱92の表示は省略される。
【0018】
機械式駐車場10は複数のパレットを備える。パレットは平面視で略長方形の平板状の部材である。パレット式の機械式駐車場10は、リフトを用いて車両20が搭載された状態のパレット(以下、搭載パレット32と称す)や車両が搭載されていないパレット(以下、空パレット34と称す)を昇降させたり、あるいは第1移載装置56や第2移載装置58や第3移載装置102を用いて水平面内で移動させたりすることにより、格納棚に車両20を駐車させる構成とされている。
【0019】
B1F格納棚14、B2F格納棚16、B3F格納棚18はそれぞれ18の駐車スペースを含む。それら18の駐車スペースはマトリクス状に配列される。各駐車スペースはパレットを収容可能に構成される。駐車スペースはパレットと共に車両20が駐車されうる格納棚内の1駐車領域(駐車の1単位)である。以下、パレットが収容されていない状態の駐車スペースを空スペースと称す。
【0020】
乗降室12は建物24内に設けられている。昇降路96は鉛直方向に沿って設けられている。昇降路96は、B1F格納棚14、B2F格納棚16、B3F格納棚18のそれぞれと連通し、その上端に乗降室12が設けられている。昇降路96の下端には昇降機94が設置されている。乗降室12と昇降路96とは、平面視でパレットより大きな略長方形の連通孔26を介して連結されている。
【0021】
リフトは、リフトフレーム88と、第1移載装置56と、4本のマスト90と、昇降機94と、を含み、昇降路96に沿ってパレットを昇降させる。4本のマスト90は、昇降路の四隅に配置されており、機械式駐車場10の底部の昇降機94が収まる凹部22から昇降路96を通って乗降室12の下方に至るまで鉛直方向に沿って立設される支柱である。リフトフレーム88は4本のマスト90に昇降自在に取り付けられる。昇降機94はリフトフレーム88を昇降路96に沿って昇降させる。リフトは後述のパレット待機スペース100との間で空パレット34の出し入れを行う。
【0022】
第1移載装置56は、リフトフレーム88の上側に取り付けられる。パレットは第1移載装置56の上部に搭載される。第1移載装置56は、格納棚またはパレット待機スペース100との間でパレットの受け渡しを行う。
【0023】
第2移載装置58は各駐車スペースに設けられており、駐車スペースをまたいでパレットを移動させる。駐車スペースと駐車スペースとの間には、駐車スペースをまたいでパレットが移動する際にそれを支持する転倒防止ローラが設置されてもよい。なお、第2移載装置58には、例えば本出願人が先に出願した特公平7−29681号公報に記載の搬送装置を適用することができる。特に第2移載装置58は水平面内の直交する2方向にパレットを移動可能に構成される。
【0024】
各格納棚においてパレットは、例えば特許文献1や2に開示される公知のパズル動作のアルゴリズムに従い移動する。通常、格納棚には駐車スペースの数よりも1つ以上少ない数のパレットが配置されており、したがって1つ以上の空スペースがパズル動作のために確保されている。さらに本実施の形態では、駐車量が少なくなると共に発生する空パレット34のうちのいくつかを格納棚から除去してパレット待機スペース100に待機させるので、格納棚の空スペースの数を増やすことができる。その結果、入出庫に要するパレット入れ替え回数すなわちパズル動作のパズル解き手数を減らして入出庫のための待機時間を低減できる。また、入出庫に関係のない空パレット34を移動させないで済むので、電力節減にも効果がある。
【0025】
パレット待機スペース100は複数の空パレット34を上下方向に離間して収容可能に構成される。パレット待機スペース100は機械式駐車場10の3つの階層にわたり、昇降路96に隣接して設けられる。パレット待機スペース100は、B1F格納棚14、B2F格納棚16、B3F格納棚18のそれぞれの昇降路96に隣接する駐車スペースの代わりに設けられたB1F部分100a、B2F部分100b、B3F部分100cを有する。
【0026】
B1F部分100aは、空パレット34が待機している間はその空パレット34を支持すると共に空パレット34の出し入れの際はその空パレット34を移動させるパレット取り扱い装置すなわち第3移載装置102を空パレット34ごとに有する。B1F部分100aは、鉛直方向に連なる形で3つの第3移載装置102を有する。3つの第3移載装置102のそれぞれは、他の第3移載装置102に空パレット34が支持されているか否かにかかわらず、空パレット34を支持しかつ移動させることができるよう構成される。
【0027】
最も下側の第3移載装置102はB1F格納棚14の床に設置され、残り2つの第3移載装置102はそれぞれ支柱92によって支持される追加棚104の上に設置される。追加棚104の段ピッチH1は、隣接する2つの追加棚104の間で第3移載装置102が空パレット34を支持できる範囲でできるだけ小さく設定される。追加棚104の段ピッチH1は格納棚の段ピッチH2よりも小さく、図1の例では段ピッチH2の三分の一程度とされる。
【0028】
第3移載装置102は、リフトの第1移載装置56との間で空パレット34の出し入れの方向にのみ空パレット34を移動させる。本実施の形態の場合、空パレット34の出し入れの方向は空パレット34の短手方向である。第3移載装置102は、水平面内の2つの異なる方向にパレットを移動可能に構成される第2移載装置58よりも安価に構成できる。
B2F部分100bおよびB3F部分100cはそれぞれB1F部分100aと同様に構成される。
【0029】
以上の構成による機械式駐車場10の動作を説明する。
図3は、空パレット34をパレット待機スペース100に入れる際の動作を説明するための説明図である。図3は図1に示される断面図に対応する。リフトは、パレットが搭載されていない第1移載装置56をB3F格納棚18のレベルまで移動させる。昇降路96に隣接するB3F格納棚18の駐車スペース18aから、第2移載装置58および第1移載装置56の作用により空パレット34が第1移載装置56に渡される。リフトは、空パレット34を搭載した状態の第1移載装置56を、空パレット34を支持していない第3移載装置102が設置されている追加棚104のレベルまで移動させる。図3の例では、リフトは、空パレット34を搭載した状態の第1移載装置56を、パレット待機スペース100のB1F部分100aの下から2段目の追加棚104のレベルまで移動させる。第1移載装置56から第3移載装置102へ空パレット34が渡される。
パレット待機スペース100から空パレット34を出す際の動作は基本的に入れる際の動作の逆である。
【0030】
本実施の形態に係る機械式駐車場10によると、パレット待機スペース100は空パレット34ごとに第3移載装置102を有するので、パレット待機スペース100との間でより容易にかつ素早く空パレット34を出し入れすることができる。
【0031】
また、パレット待機スペース100は例えば段積み構成と比較して、空パレット34の収容密度よりも空パレット34の出し入れの際のスピードを優先した構成とされている。後述する通りパレット式の機械式駐車場においては、空スペース数が少なければ少ないほど、空スペースをひとつ増やしたことによるパズル動作の手数低減量は大きくなる。したがって本実施の形態に係る機械式駐車場10では、入出庫時の待機時間を短縮する効果を十分に維持しつつ空パレット34の出し入れにかかる時間も短縮できる。その結果、機械式駐車場10は全体的により効率良く速く動作する。
【0032】
また、本実施の形態に係る機械式駐車場10では、リフトと各第3移載装置102との間で空パレット34の出し入れが行われる。したがって、乗降室12と格納棚との間でパレットを移動させるリフトを、パレット待機スペース100との間で空パレット34を出し入れする装置としても利用することができる。これにより、そのような装置を別途設ける必要がなくなるので、コスト的にもスペース的にも有利となりうる。
【0033】
以上、実施の形態に係る機械式駐車場10の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0034】
図4は、第1変形例に係るパレット待機スペース200の側面図である。パレット待機スペース200は、B1F格納棚202、B2F格納棚204、B3F格納棚206にわたって設けられる。パレット待機スペース200のB1F部分212、B2F部分214、B3F部分216はそれぞれ、支柱210に支持される3つの追加棚208を有する。パレット待機スペース200で待機する空パレット34は、格納棚、追加棚に設けられたローラの上に載置される。
【0035】
格納棚の段ピッチH3は約2000mm、追加棚208の段ピッチH4は約500mmとされる。このように設定することにより、車両高さ1550mmの空間に3枚の空パレット34を保管することができ、パレット待機スペース200の各階層部分に4枚の空パレット34を保管することができる。
【0036】
空パレット34をパレット待機スペースにどの程度収容するかについては少なくとも以下の2通りの方法がある。
(1)空パレット34をできる限り収容
機械式駐車場は、空パレット34をできる限りパレット待機スペースに収容するよう構成されてもよい。パレット待機スペースの大きさに制限がなければ、パレット待機スペースは、機械式駐車場内の全てのパレットを空パレットとして収容可能なように密にかつ大きく構成されてもよい。パレット待機スペースとして使用される空間が定められている場合は、パレット待機スペースはその空間にできるだけ密に空パレット34を収容できるよう構成されてもよい。機械式駐車場が満車に近い場合でも空車に近い場合でも、パレット待機スペースは空パレット34をできる限り収容してもよい。この場合、パレット待機スペースに収容余力があるのに空パレット34が格納棚に存在する状態は起こらない。
【0037】
この方法によると、格納棚における空スペースの数を駐車量によらずに最大化できるので、入出庫の際の待機時間はより短縮される。しかしながら、機械式駐車場が大規模であるほどパレット待機スペースが大きくなりがちなので、比較的小規模な機械式駐車場に適している。
【0038】
(2)好適な空スペース数の維持
本発明者の検討によると、空スペースの数とパズル動作の手数とは単純な比例関係にあるわけではない。図5(a)〜(d)は、第2変形例に係る機械式駐車場を使用して空スペースの数とパズル動作の手数との関係を説明するための説明図である。図5(a)は満車状態の格納棚300を模式的に示す平面図である。図5(b)は格納棚300が満車状態のときのパレット待機スペース302の側面図である。図5(c)は満車状態ではない格納棚300を模式的に示す平面図である。図5(d)は格納棚300が満車状態ではないときのパレット待機スペース302の側面図である。
【0039】
本変形例に係る機械式駐車場はひとつの格納棚300を有し、乗降室と格納棚300とは昇降路304によって接続され、リフトは昇降路304に沿ってパレットを昇降させる。機械式駐車場は昇降路304に隣接する駐車スペースをパレット待機スペース302として使用する。図5(a)、(c)において、「○」は駐車スペースに搭載パレット32が収容されていることを、「△」は駐車スペースに空パレット34が収容されていることを、「×」は駐車スペースが空スペースであることを、示す。
【0040】
図5(a)、(b)に示されるように、格納棚300の満車状態では、格納棚300は空スペースを2つ有する。これは、図5(a)に示される平面構成を有する格納棚300においてパズル動作を行うために必要な最低限の数である。パレット待機スペース302からは全てのパレットが出払っており、パレット待機スペース302は空パレット34を有さない。
【0041】
図5(c)、(d)に示されるように、格納棚300が満車状態ではない場合、空パレット34のうちのいくつかがパレット待機スペース302に収容される。本発明者の検討によると、例えば図5(a)、(c)に示される格納棚300の平面構成については、空スペースを3つさらに設けて合計5つとすれば、パズル動作の手数は空スペースが2つの場合と比べて略半減される。一般化すると、空スペース数が少なければ少ないほど、空スペースをひとつ増やしたときのパズル動作の手数低減量は大きくなる。
【0042】
入出庫時の待機時間に寄与する要因としては、パズル動作の手数以外にも例えばリフトと格納棚との間のパレット受け渡しやリフトの昇降動作などが存在する。したがって、空スペースをそれ以上増やしても待機時間が実質的に短縮されない空スペースの最適数が存在する。空スペースの最適数は、パズル動作の手数が待機時間を短縮する際のボトルネックとならなくなる数であるとも言える。図5(a)〜(d)の例では最適数は例えば5である。
【0043】
したがって、パレット待機スペースは、格納棚の空スペースの数を最適数とするために格納棚から取り除く必要があるパレットの数以上の数の空パレット34を収容可能に構成されてもよい。格納棚の空スペース数は満車状態から空車状態に近づくにつれて必要最小限の数から最適数に達するまで増やされる。空スペース数が最適数に達すると、さらに駐車車両が減って格納棚の空パレット34の数が増えたとしてもパレット待機スペースへの収容は行われない。
【0044】
図5(c)、(d)に示されるように、パレット待機スペース302ができる限り空パレット34を収容できるよう密に構成される場合、格納棚300の空スペースの数が最適数となっても、パレット待機スペース302はさらに空パレット34を収容できる状態にある場合がある。すなわち、パレット待機スペース302は5枚の空パレット34を収容可能であるが、格納棚300の空スペースの数が最適数の5となったとき、パレット待機スペース302には3枚の空パレット34が収容されている。この状態ではパレット待機スペース302はさらに2枚の空パレット34を収容可能である。
【0045】
したがって、機械式駐車場が格納棚300の空スペース数を最適数までとするという形で運用されている場合、駐車量が比較的少なくなると、パレット待機スペース302にさらに空パレット34を収容可能な場合でも、少なくともひとつの空パレット34が格納棚300に残されることとなる。
【0046】
図6(a)、(b)は、格納棚400の空スペース数を最適数までとするという形で運用されている第3変形例に係る機械式駐車場を説明するための説明図である。本変形例に係る機械式駐車場は、パレット待機スペース402の構成を除いて第2変形例に係る機械式駐車場と同様に構成される。図6(a)は満車状態ではない格納棚400を模式的に示す平面図である。図6(b)は格納棚400が満車状態ではないときのパレット待機スペース402の側面図である。
【0047】
格納棚400の空スペースの数を最適数である5とするために、パレット待機スペース402に収容する必要がある空パレット34の数は3である。パレット待機スペース402はパレット移載用ローラ404を上下方向に離間して最大5個設けることができる高さを有している。しかしながら、パレット待機スペース402はパレット移載用ローラを3個有する。一般化すると、Nを2以上の自然数とするとき、パレット待機スペースにパレット移載ローラなどのパレット取り扱い装置を上下方向に離間して最大N個設けることができる場合でも、パレット待機スペースはパレット取り扱い装置をN−1個以下有する。
【0048】
特にパレット待機スペースは、格納棚の空スペースの数を最適数とするために格納棚から取り除く必要があるパレットの数だけパレット取り扱い装置を有する。格納棚が複数ある場合は、パレット待機スペースはそのようなパレットの数を複数の格納棚について合計した数だけパレット取り扱い装置を有する。これは、機械式駐車場が格納棚の空スペース数を最適数までとするという形で運用されている場合に、パレット待機スペースに必要な数だけパレット取り扱い装置を設けるという思想である。この場合、パレット待機スペースを構成するために必要な機材の数を低減でき、コスト的に有利となりうる。
【0049】
第2変形例、第3変形例のいずれにおいても機械式駐車場は格納棚の空スペース数を最適数までとするという形で運用される。したがって、駐車量が比較的少なくなるとパレット待機スペースとリフトとの間での空パレット34のやりとりが行われなくなる。その結果、入出庫の待機時間短縮にあまり寄与しない無駄な空パレット34のやりとりを抑制できる。
【0050】
実施の形態および各変形例では、乗降室が昇降路の上端に位置する地下式の機械式駐車場について説明したが、これに限られず、実施の形態または変形例の技術的思想は乗降室が昇降路の下端に位置する場合や、昇降路の中間に乗降室を設ける場合にも適用できる。
【0051】
実施の形態および各変形例では、平板状のパレットを使用する場合について説明したが、これに限られない。例えば、轍状の溝を形成したパレットや、櫛歯型のパレットなど、車両を積載することができる形状を有するパレットであればいかなる形状のパレットでも採用することができる。
【0052】
実施の形態および各変形例では、パレット待機スペースは昇降路に隣接して設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、パレット待機スペースと昇降路とは離間して設けられてもよい。この場合、パレット待機スペースとの間で空パレット34を出し入れする別のリフトを設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 機械式駐車場、 12 乗降室、 20 車両、 34 空パレット、 96 昇降路、 100 パレット待機スペース、 102 第3移載装置、 104 追加棚。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両をパレットに搭載して格納棚に格納する機械式駐車場であって、車両が搭載されていない複数の空パレットを上下方向に離間して収容可能なパレット待機スペースを備え、そのパレット待機スペースは、空パレットが待機している間はその空パレットを支持すると共に空パレットの出し入れの際はその空パレットを移動させるパレット取り扱い装置を空パレットごとに有することを特徴とする機械式駐車場。
【請求項2】
乗降室と格納棚とを接続する昇降路に沿ってパレットを昇降させる昇降装置をさらに備え、パレット待機スペースは昇降路に隣接して設けられ、昇降装置は各パレット取り扱い装置との間で空パレットの出し入れを行うことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車場。
【請求項3】
各パレット取り扱い装置は昇降装置との間で空パレットの出し入れの方向に空パレットを移動させることを特徴とする請求項2に記載の機械式駐車場。
【請求項4】
パレット待機スペースにさらに空パレットを収容可能な場合でも、少なくともひとつの空パレットが格納棚に残されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の機械式駐車場。
【請求項5】
Nを2以上の自然数とするとき、パレット待機スペースにパレット取り扱い装置を上下方向に離間して最大N個設けることができる場合でも、パレット待機スペースはパレット取り扱い装置をN−1個以下有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の機械式駐車場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32630(P2013−32630A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168523(P2011−168523)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)