説明

機械的表皮破壊を介したポックスウイルスベクターによるワクチン接種

本発明は、被験体において抗原に対する免疫応答を刺激するための方法を提供し、該方法は、抗原を含む生の改変されたおよび/または組換え複製障害性もしくは非複製性ポックスウイルスを免疫応答を刺激するのに十分な量でそれを必要とする被験体に投与することを含み、ウイルスは表皮の機械的破壊により投与される。本発明は、そのようなウイルスおよび表皮破壊デバイスを含むキットをさらに提供する。上記免疫応答は、体液性応答および/または細胞性応答である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府によって支援された研究)
本発明は、一部、国立衛生研究所(National Institute of Health (NIH))の国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID))によって与えられた交付金番号U19 AI057330および5U54AI057159−05のもとで政府支援によってなされた。米国政府は本発明に対し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ワクチンは伝統的に、弱毒化された生の病原体、全不活化生物または不活化毒素からなっていた。多くの場合、これらのアプローチは、抗体媒介応答に基づいた免疫防御を誘導することに成功してきた。しかし、ある種の病原体、例えば、HIV、HCV、TB、マラリアおよびがんは細胞媒介免疫(CMI)の誘導が必要である。非生ワクチンは、一般に、CMIを生み出すことには無効であることが判明している。さらに、生ワクチンはCMIを誘導し得るが、一部の弱毒化生ワクチンは免疫抑制被験体に疾患を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、増強された治療効果および防御免疫応答をもたらす、より効果的なワクチンおよびワクチンのより効果的な送達手段に対する満たされていない必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)株などの弱毒化複製欠損性ワクシニアウイルスは、目覚ましい安全性および免疫原性プロファイルを有するので有望な生ウイルスワクチンベクターとして既に提案されており、前臨床試験でも臨床試験でも試されてきた。しかし、MVAなどのウイルスワクチンは、これまで注射経路を介してのみ投与され、現在まで皮膚乱切(skin scarification)を介して投与されることはなかった。これは、ポックス病変の発生およびそれに続く抗原チャレンジ(challenge)に対する強力な防御には表皮中でのウイルス複製が必要であるという仮定によるだろう。にもかかわらず、発明者らは皮膚乱切を介してマウスをMVAで免疫化し、驚いたことに、MVA皮膚乱切は用量依存様式で特徴的なポックス病変を誘導し、ワクシニアウイルス(VV)抗原に対する用量依存的細胞性および体液性免疫応答を生み出した。どんな特定の機構または理論にも縛られるつもりはないが、発明者らは、皮膚乱切を介した免疫化により強力な免疫応答を誘発するのにウイルス複製は必要ではないと考えている。
【0005】
MVA皮膚乱切は、従来の注射経路を介する複製VV免疫化ではマウスを致死的チャレンジから防御することができない用量で、鼻腔内ウエスタンリザーブワクシニアウイルス(WR−VV)感染でチャレンジされるマウスにおいて死亡率および疾病に対する完全な防御を提供した。匹敵する用量のMVA免疫化では、従来の注射経路は、二次ウイルスチャレンジの後でも弱く検出可能なT細胞および抗体応答を誘発しただけであり、WR−VV鼻腔内チャレンジに対して弱い防御を提供したが、MVAまたはVVのどちらかを用いた皮膚乱切により強力な免疫防御が提供された。したがって、皮膚の機械的破壊(mechanical disruption)を使用する、複製欠損性ポックスウイルス(例えば、MVA)などの生ウイルスワクチンを用いる表皮免疫化では、高用量および複数の注射レジメンを必要とする現在診療所で使用されている注射経路と比べて、はるかに低用量で免疫宿主のより強力な免疫応答およびより強力な防御が生み出される。
【0006】
したがって、本発明は、一部には、被験体の機械的に破壊された表皮に適用される抗原を含有する改変された複製欠損性ポックスウイルスベクターを使用して、感染(もしくは感染性疾患)またはがんに対して被験体を免疫化するための新規の方法を目的とする。複製欠損性であるかまたは感染性が少ないように改変され、抗原(複数可)をコードするcDNAを含有するよう遺伝的に改変されている改変体ワクシニアウイルスを使用し得る。
【0007】
本発明の一態様では、免疫応答を刺激するための方法が提供される。該方法は、免疫応答を刺激するのに十分な量で抗原を含む生の改変された非複製性または複製障害性ポックスウイルスを被験体に投与することを含み、ポックスウイルスは、被験体の機械的に破壊された表皮に投与される。免疫応答は体液性応答および/または細胞性応答であり得る。いくつかの実施形態では、細胞性応答は、CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞および/またはB細胞により誘発される。
【0008】
ポックスウイルスは、オルソポックス、スイポックス、トリポックス(avipoxvirus)、カプリポックス、レポリポックス、パラポックスウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、またはヤタポックスウイルスでよい。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスはTRICOMTMである。
【0009】
いくつかの実施形態では、オルソポックスウイルスはワクシニアウイルスである。ワクシニアウイルスは、改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)、WR株、NYCBH株、Wyeth株、ACAM2000、Lister株、LC16m8、Elstree−BNm、Copenhagen株、またはTiantan株でもよい。
【0010】
表皮は、乱切針、皮下針、または擦過デバイスにより機械的に破壊してよい。表皮は、ポックスウイルスの投与と本質的に同時にまたはポックスウイルスの投与前に機械的に破壊してよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、被験体はがんを有するかまたはがんを発症する危険がある。がんは、皮膚がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、腎臓がん、膀胱がん、および甲状腺がんまたは結腸直腸がんであり得る。いくつかの実施形態では、がんは、前立腺腺癌、前立腺上皮新形成、肺扁平上皮癌、肺腺癌、小細胞肺癌、上皮由来の卵巣がん、結腸直腸腺癌および平滑筋肉種、胃腺癌および平滑筋肉腫、肝細胞癌、胆管癌、膵臓の管腺癌、膵内分泌部腫瘍、腎細胞癌、腎臓および膀胱の移行上皮癌、膀胱扁平上皮癌、乳頭様甲状腺がん、濾胞性甲状腺がん、星状細胞腫、または多形神経膠芽腫である。皮膚がんは、メラノーマ、皮膚扁平上皮癌、または基底細胞癌であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、被験体は感染を有するかまたは感染を発症する危険がある。感染は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または原虫感染であり得る。ウイルス感染の例には、HIV、インフルエンザ、デング熱、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラ、マールブルグ、狂犬病、ハンタウイルス感染、ウエストナイルウイルス、SARS様コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、アルファウイルス、およびセントルイス脳炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
細菌感染は、Mycobacterium tuberculosis、Salmonella typhi、Bacillus anthracis、Yersinia perstis、Francisella tularensis、Legionella、Chlamydia、Rickettsia typhi、またはTreponema pallidumであり得る。
【0014】
真菌感染の例には、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Cryptococcus neoformans、Candida albicans、およびAspergillus種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
原虫感染の例には、Malaria(Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariae)、Leishmania種、Trypanosome種(アフリカおよびアメリカ)、クリプトスポリジウム、イソスポラ種、Naegleria fowleri、Acanthamoeba種、Balamuthia mandrillaris、Toxoplasma gondii、Pneumocystis cariniiが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異抗原(TSA)、または組織特異抗原である。TAA、TSAまたは組織特異抗原は、ムチン1(MUC1)、ムチン2(MUC2)、BAGE−1、GAGE−1〜8;GnTV、HERV−K−MEL、KK−LC−1、KM−HN−1、LAGE−1、MAGE−A1〜A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−C3、NA88、NY−ESO−1/LAGE−2、SAGE、Sp17、SSX−2、SSX−4、TAG−1、TAG−2、TRAG−3、TRP2−INT2、XAGE−1b、癌胎児抗原(carcinoembriogenic)(CEA)、CA−125、gp100/Pmel17、カリクレイン4、マンマグロビン−A、メラン−A/MART−1、NY−BR−1、OA−1、前立腺特異抗原(PSA)、RAB38/NY−MEL−1、TRP−1/gp75、TRP−2、チロシナーゼ、アディポフィリン、AIM−2、ALDH1A1、BCLX(L)、BING−4、CPSF、サイクリンD1、DKK1、ENAH(hMena)、Ep−CAM、EphA3、EZH2、FGF5、G250/MN/CAIX、HER−2/neu、IL13Rアルファ2、腸カルボキシルエステラーゼ、アルファ−フェトプロテイン(AFP)、M−CSF、MCSP、mdm−2、MMP−2、MUC1、PBF、PRAME、PSMA、RAGE−1、RGS5、RNF43、RU2AS、セセルニン1、SOX10、STEAP1、サバイビン、テロメラーゼ、VEGF、WT1、アルファアクチニン−4、ARTC1、BCR−ABL融合タンパク質、B−RAF、CASP−5、CASP−8、ベータカテニン、Cdc27、CDK4、CDKN2A、COA−1、dek−can融合タンパク質、EFTUD2、伸長因子2、ETV6−AML1融合タンパク質、FLT3−ITD、FN1、GPNMB、LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA−A2、HLA−Al1、hsp70−2、KIAAO205、MART2、ME1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、neo−PAP、ミオシンクラスI、NFYC、OGT、OS−9、p53、pml−RARアルファ融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K−ras、N−ras、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、SYT−SSX1もしくは−SSX2融合タンパク質、TGF−ベータRlIまたはトリオースリン酸イソメラーゼであり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原または原虫抗原である。抗原は、HIV Gag、プロテアーゼ、逆転写酵素、完全長エンベロープタンパク質、Vpu、TatおよびRev;インフルエンザ赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスタンパク質1(M1)、非構造タンパク質1(NS−1);あらゆる主要セロタイプのウイルスに共有されているデングウイルス交差防御抗原(例えば、非構造タンパク質1もしくはNS1、エンベロープドメインIIIもしくはEDIII)、A型肝炎ウイルスカプシドタンパク質1(VP−1)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)およびコア抗原(HBcAg)、C型肝炎コア抗原、E1、E2、p7、NS2、NS4およびNS4タンパク質、HPV E1、E2、L1、L2、エボラおよびマールブルグウイルス糖タンパク質、核タンパク質およびマトリックスタンパク質、狂犬病糖タンパク質、ハンタウイルス核タンパク質、エンベロープ糖タンパク質およびG1タンパク質、ウエストナイルウイルス前膜(prM)およびエンベロープ(E)糖タンパク質、SARS様コロナウイルスOrf3、スパイクタンパク質、ヌクレオカプシドおよび膜タンパク質、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質BおよびD;水痘帯状疱疹ウイルスエンベロープ糖タンパク質EおよびB(gE、gB)、前初期タンパク質63(IE63)、エプスタインバーウイルスgp350、gp110、核内抗原1(EBNA−1)、EBNA2およびEBNA−3C、ヒトヘルペスウイルス8補体制御タンパク質(KCP)、糖タンパク質B、ORF6、ORF61、およびORF65、M.tuberculosis抗原85A、85B、MPT51、PPE44、マイコバクテリア65−kDa熱ショックタンパク質(DNA−hsp65)、6−kDa初期分泌抗原標的(ESAT−6)、Salmonella SpaO、Hla、外膜タンパク質(OMP)、P.aeruginosa OMP、PcrV、OprF、OprI、PilAおよび変異ToxA、B.anthracis防御抗原(PA)、Y.pestis低カルシウム応答タンパク質V(LcrV)、F1およびF1−V融合タンパク質、Legionellaペプチドグリカン関連リポタンパク質(PAL)、mip、鞭毛、OmpS、hsp60、主要分泌タンパク質(MSP)、Chlamydiaプロテアーゼ様活性因子(CPAF)、主要外膜タンパク質(MOMP)、T.pallidum外膜リポタンパク質、CoccidioidesAg2/Pra106、Prp2、ホスホリパーゼ(P1b)、アルファマンノシダーゼ(Amn1)、アスパルチルプロテアーゼ、Gel1、Blastomyces dermatitidis表面アドヘシンWI−1、Cryptococcus neoformans GXM、Cryptococcus neoformans GXMのペプチドミモトープ(mimotope)もしくはマンノプロテイン、Candida albicans hsp90−CA、65−kDaマンノプロテイン(MP65)、分泌アスパルチルプロテイナーゼ(Sap)、Als1p−N、Als3p−N、Aspergillus Asp f16、Asp f2、Der p1、およびFel d1、rodlet A、PEP2、Aspergillus HSP90、90−kDaカタラーゼ、Plasmodium apical膜抗原1(AMA1)、25−kDa有性世代タンパク質(Pfs25)、赤血球膜タンパク質1(PfEMP1)、スポロゾイト周囲タンパク質(CSP)、メロゾイト表面タンパク質−1(MSP−1)、LeishmaniaシステインプロテイナーゼIII型(CPC)、リボソームタンパク質(LRP)、A2抗原、ヌクレオソームヒストン、HSP20、G46/M−2/PSA−2前鞭毛型表面タンパク質、L infantum LACK抗原、GP63、LmSTI1、TSA、P4、NH36、papLe22、Trypanosomeベータチューブリン(STIB806)、微小管結合タンパク質(MAPp15)、システインプロテアーゼ(CP)、クリプトスポリジウム表面タンパク質gp15およびgp40、Cp23抗原、p23、Toxoplasma gondii表面抗原1(TgSAG1)、プロテアーゼインヒビター−1(TgPI−1)、表面結合タンパク質MIC2、MIC3、ROP2、GRA1〜GRA7、Pneumocystis carinii主要表面糖タンパク質(MSG)、p55抗原、Schistosomiasis mansoni Sm14、21.7およびSmFim抗原、テグメントタンパク質Sm29、26kDa GST、Schistosoma japonicum、SjCTPI、SjC23、Sj22.7、またはSjGST−32であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される免疫応答を刺激するための方法は、共刺激(co−stimulatory)分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインを投与することをさらに含む。共刺激分子、増殖因子、アジュバンドまたはサイトカインの例には、IL−1、IL−2、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18、IL−23、IL−27、B7−1、B7−2、LFA−3、B7−H3、CD40、CD40L、ICOS−リガンド、OX−40L、4−1BBL、GM−CSF、SCF、FGF、Flt3−リガンド、CCR4、QS−7、QS−17、QS−21、CpGオリゴヌクレオチド、ST−246、AS−04、LT R192G変異体、モンタニドISA720、熱ショックタンパク質、合成マイコバクテリアコードファクター(CAF01)、リピドA模倣物、Salmonella enterica血液型亜型、Typhimuriumフラゲリン(FliC)、モンタニド720、レバミソール(LMS)、イミキモド、ジフテリア毒素、IMP321、AS02A、AS01B、AS15−SB、アルハイドロゲル、モンタニドISA、水酸化アルミニウム、MF59、ISCOMATRIX、MLPA、MPLおよび他のTLR−4リガンド、MDP、他のTLR−2リガンド、AS02A、AS01B、熱不安定性毒素LTK63およびLT−R192Gが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施形態では、共刺激分子は、ポックスウイルスにより抗原と共発現(co−express)される。共発現される共刺激分子は、IL−1、IL−2、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18、IL−23、IL−27、B7−2、B7−H3、CD40、CD40L、ICOS−リガンド、OX−40L、4−1BBL、GM−CSF、SCF、FGF、Flt3−リガンド、またはCCR4であり得る。
【0020】
共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインは、抗原と本質的に同時に投与されてもよく、または抗原の投与前もしくは投与後に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインは、抗原と本質的に同じ部位に投与され、または抗原とは異なる部位に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、抗原の第1の投与後のある時期における抗原の第2の投与をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、非複製性または複製障害性ポックスウイルスは、抗原をコードする核酸を含むウイルスベクターを含む。抗原をコードする核酸はプロモーターに作動可能に連結され得る。プロモーターは構成的に活性なプロモーターでも誘導性プロモーターでもよい。プロモーターは、エンハンサーまたは別の転写調節エレメント(TRE)をさらに含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、被験体は抗原を含むポックスウイルスの投与に先立って抗原でチャレンジされておらず、被験体は抗原にチャレンジされる危険がある。これらの実施形態では、免疫応答を刺激すれば、抗原を提示する作用因子により引き起こされる疾患に対する被験体の防御が与えられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、被験体は抗原を含むポックスウイルスの投与に先立って既に抗原でチャレンジされている。これらの実施形態では、免疫応答を刺激すれば、抗原を提示する作用因子により引き起こされる被験体の疾患が処置される。
【0025】
いくつかの実施形態では、免疫応答を刺激すれば、疾患から防御し、または疾患を処置する。疾患はがんでも感染でもよい。がんは、メラノーマ、皮膚扁平上皮癌、基底細胞癌、乳がん、前立腺腺癌、前立腺上皮新形成、肺扁平上皮癌、肺腺癌、小細胞肺癌、上皮由来の卵巣がん、結腸直腸腺癌および平滑筋肉腫、胃腺癌および平滑筋肉腫、肝細胞癌、胆管癌、膵臓の管腺癌、膵内分泌部腫瘍、腎細胞癌、腎臓および膀胱の移行上皮癌、膀胱扁平上皮癌、乳頭様甲状腺がん、濾胞性甲状腺がん、星状細胞腫、または多形神経膠芽腫であり得る。
【0026】
感染は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または原虫感染であり得る。感染は、HIV、インフルエンザ、デング熱、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラ、マールブルグ、狂犬病、ハンタウイルス感染、ウエストナイルウイルス、SARS様コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、アルファウイルス、セントルイス脳炎、Mycobacterium tuberculosis、Salmonella typhi、Bacillus anthracis、Yersinia perstis、Francisella tularensis、Legionella、Chlamydia、Rickettsia typhi、Treponema pallidum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Cryptococcus neoformans、Candida albicans、Aspergillus種、Malaria(Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariae)、Leishmania種、Trypanosome種(アフリカおよびアメリカ)、クリプトスポリジウム、イソスポラ種、Naegleria fowleri、Acanthamoeba種、Balamuthia mandrillaris、Toxoplasma gondii、またはPneumocystis cariniiであり得る。
【0027】
本発明の別の態様に従えば、キットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、被験体の表皮を破壊するためのデバイスおよび生の改変された非複製性または複製障害性ポックスウイルスを含む。デバイスは、乱切針、皮下針または擦過器(abrader)であり得る。
【0028】
ポックスウイルスはデバイスに付着しているか、または溶液中に混合されていてよい。溶液は、被験体の表皮を介した被験体へのポックスウイルスの送達を増強する作用因子をさらに含んでいてよい。溶液は、被験体における免疫応答を増強する作用因子をさらに含んでいてよい。
【0029】
本明細書に記載されるキットは、キットを使用するための説明書をさらに含んでいてよい。
【0030】
本発明の限定のそれぞれは、本発明の様々な実施形態を包含することができる。したがって、任意の1つの要素または要素の組合せを含む本発明の限定のそれぞれは、本発明の各態様に含めることが可能なことが予測される。本発明は、構成の詳細および以下の説明に記載されるかまたは図に例証される成分の配置へのその適用に限定されない。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行、または実施されることができる。その上、本明細書において使用される表現および専門用語は、説明を目的とし、限定的と見なされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、または、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」およびその変化の使用は、その後に収載される項目およびその等価物ならびに追加の項目も包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1−1】図1は、皮膚乱切によるワクシニアウイルス接種が、他の免疫化経路と比較して優れた免疫原性であることを示す図である。C57BL/6(B6)マウスを、指示された経路によって、2×10pfuの用量でVVにより免疫化した。s.s.:皮膚乱切、i.p.:腹腔内注射、s.c.:皮下注射、i.d.:皮膚内注射(interdermal injection)、i.m.:筋肉内注射。(a)一次T細胞応答:免疫化(p.i.)して7日目に収集した脾細胞を、ブレフェルジン(brefelding)Aの存在下で6時間、VV感染した標的細胞(無処理のマウス由来の脾細胞)で再刺激し、細胞内サイトカインの染色によって、IFN−γ産生CD8T細胞の発生頻度を測定した。U1:免疫化していないマウス。(b)メモリーVV特異的T細胞活性を、p.i.5週間で評価した。免疫化したマウス由来の脾細胞を、VV感染した標的細胞で48時間再刺激し、懸濁物を収集した。懸濁物中のIFN−g産生を、ELISAによって測定した。(c−d)。血清VV特異的IgGレベルを、ELISAによって、p.i.後指示した時点で決定した。
【図1−2】図1は、皮膚乱切によるワクシニアウイルス接種が、他の免疫化経路と比較して優れた免疫原性であることを示す図である。C57BL/6(B6)マウスを、指示された経路によって、2×10pfuの用量でVVにより免疫化した。s.s.:皮膚乱切、i.p.:腹腔内注射、s.c.:皮下注射、i.d.:皮膚内注射(interdermal injection)、i.m.:筋肉内注射。(a)一次T細胞応答:免疫化(p.i.)して7日目に収集した脾細胞を、ブレフェルジン(brefelding)Aの存在下で6時間、VV感染した標的細胞(無処理のマウス由来の脾細胞)で再刺激し、細胞内サイトカインの染色によって、IFN−γ産生CD8T細胞の発生頻度を測定した。U1:免疫化していないマウス。(b)メモリーVV特異的T細胞活性を、p.i.5週間で評価した。免疫化したマウス由来の脾細胞を、VV感染した標的細胞で48時間再刺激し、懸濁物を収集した。懸濁物中のIFN−g産生を、ELISAによって測定した。(c−d)。血清VV特異的IgGレベルを、ELISAによって、p.i.後指示した時点で決定した。
【図2】図2は、VV皮膚乱切が、免疫化の他の経路と比較して、二次皮膚性ウイルスチャレンジに対する優れた保護を引き起こすことを示す図である。B6マウスは、示されるように、様々な経路によりVVで免疫化した。免疫化して8週間後、免疫マウスを二次皮膚性VV感染によりチャレンジした。チャレンジから6日後、チャレンジした部位でのウイルス負荷を、リアルタイムPCRによって測定した。免疫化していないマウスを対照として含めた。
【図3−1】図3は、皮膚乱切が、二次鼻腔内ウイルスチャレンジに対して優れた保護をもたらすことを示す図である。(a−b)B6マウスを、2c10pfuの用量で、様々な経路によりVVによって免疫化した。免疫マウスを、p.i.6週間で、WR−VVの鼻腔内感染により致死的にチャレンジした。生存率(a)および体重の変化(BW)(b)を、チャレンジ後、毎日モニターした。(c−d)B6マウスを、指示された用量で、皮膚乱切によりVVによって免疫化し、p.i.6週間で、鼻腔内WR−VV感染によって致死的にチャレンジした。生存率(c)およびBWの変化(d)を、チャレンジ後、毎日モニターした。免疫化していないマウスを対照として含めた。
【図3−2】図3は、皮膚乱切が、二次鼻腔内ウイルスチャレンジに対して優れた保護をもたらすことを示す図である。(a−b)B6マウスを、2c10pfuの用量で、様々な経路によりVVによって免疫化した。免疫マウスを、p.i.6週間で、WR−VVの鼻腔内感染により致死的にチャレンジした。生存率(a)および体重の変化(BW)(b)を、チャレンジ後、毎日モニターした。(c−d)B6マウスを、指示された用量で、皮膚乱切によりVVによって免疫化し、p.i.6週間で、鼻腔内WR−VV感染によって致死的にチャレンジした。生存率(c)およびBWの変化(d)を、チャレンジ後、毎日モニターした。免疫化していないマウスを対照として含めた。
【図4】図4は、VV皮膚乱切による免疫化が、皮内メラノーマチャレンジに対して優れた保護をもたらすことを示す図である。B6マウスを、指示された経路によりrVV−ovaで免疫化した。免疫マウスを、B16−ovaメラノーマ細胞の皮内注射により4週間後にチャレンジした。(a−e)腫瘍チャレンジしたマウスの写真を、腫瘍細胞移植して18日目に撮影した。(f)腫瘍増殖を、最大40日間、チャレンジしたマウスにおいてモニターした。
【図5−1】図5は、T細胞媒介性免疫応答が、VV皮膚乱切後の二次皮膚性チャレンジに対する優れた保護に必要であったことを示す図である。WTまたはB細胞欠乏性mMTマウスを、皮膚乱切またはi.p.注射によりVVで免疫化した。マウスを次いでp.i.6週間で、二次VV皮膚性感染によってチャレンジした。(a)チャレンジした部位でのウイルス負荷を、チャレンジして6日目に決定した。いくつかのwtマウス群において、CD4およびCD8T細胞の両方を、チャレンジの前に激減させた。(b−c)チャレンジしたwtおよびmMt免疫マウスにおける二次T細胞応答を、チャレンジした6日目に、皮膚排除鼠径部リンパ節(b)および脾臓(c)において評価した。(d)皮膚試料を、チャレンジして4日後に、チャレンジした部位から収集した。皮膚浸潤性CD3T細胞を、免疫組織化学的検査によって同定した。
【図5−2】図5は、T細胞媒介性免疫応答が、VV皮膚乱切後の二次皮膚性チャレンジに対する優れた保護に必要であったことを示す図である。WTまたはB細胞欠乏性mMTマウスを、皮膚乱切またはi.p.注射によりVVで免疫化した。マウスを次いでp.i.6週間で、二次VV皮膚性感染によってチャレンジした。(a)チャレンジした部位でのウイルス負荷を、チャレンジして6日目に決定した。いくつかのwtマウス群において、CD4およびCD8T細胞の両方を、チャレンジの前に激減させた。(b−c)チャレンジしたwtおよびmMt免疫マウスにおける二次T細胞応答を、チャレンジした6日目に、皮膚排除鼠径部リンパ節(b)および脾臓(c)において評価した。(d)皮膚試料を、チャレンジして4日後に、チャレンジした部位から収集した。皮膚浸潤性CD3T細胞を、免疫組織化学的検査によって同定した。
【図6−1】図6は、T細胞もB細胞も、致死的な鼻腔内WR−VVチャレンジ後の生存に必要ではなかったが、AbではなくT細胞が、疾病の予防に重要であったことを示す図である。野生型(wt)またはB細胞欠乏性μMTマウスを、皮膚乱切(a−b)またはi.p.注射(c−d)によりVVで免疫化した。マウスを、次いでp.i.6週間で、致死的なWR−VV鼻腔内感染によってチャレンジした。いくつかのwtマウス群において、大量の抗CD4および抗CD8mAb処置によって、CD4およびCD8T細胞の両方を、チャレンジの前および最中に激減させた。マウスの生存率(a、c)およびBWの変化(b、d)を、チャレンジ後、毎日モニターした。
【図6−2】図6は、T細胞もB細胞も、致死的な鼻腔内WR−VVチャレンジ後の生存に必要ではなかったが、AbではなくT細胞が、疾病の予防に重要であったことを示す図である。野生型(wt)またはB細胞欠乏性μMTマウスを、皮膚乱切(a−b)またはi.p.注射(c−d)によりVVで免疫化した。マウスを、次いでp.i.6週間で、致死的なWR−VV鼻腔内感染によってチャレンジした。いくつかのwtマウス群において、大量の抗CD4および抗CD8mAb処置によって、CD4およびCD8T細胞の両方を、チャレンジの前および最中に激減させた。マウスの生存率(a、c)およびBWの変化(b、d)を、チャレンジ後、毎日モニターした。
【図7−1】図7は、T細胞活性化のLNが、早ければ感染して60時間後に、CD8T細胞上の皮膚または腸ホーミング(homing)分子の差次的な発現をインプリンティング(imprint)することを示す図である。CFSE標識したThy1.1OT−1細胞を、Thy1.2B6マウス中に養子性移入した。レシピエントマウスを、次いで皮膚乱切またはi.p.注射のいずれかによって、rVV−ovaで感染させた。(a)感染して60時間後、ILNおよびMLNにおけるOT−1細胞の増殖を、Thy1.1ドナー細胞上でゲートするヒストグラムによって示した。(b−c)皮膚乱切したマウスのILN(b)およびi.p.感染したマウスのMLN(c)を、OT−1組織ホーミング表現型について、rVV−ova感染から60時間後に分析した。ドットプロットは、Thy1.1細胞上でゲートした。象限における数は、Thy1.1集団における割合を示す。(d)OT−1細胞上の示されたマーカーの幾何平均蛍光強度(GMF1)を、細胞分裂サイクルでプロットした。
【図7−2】図7は、T細胞活性化のLNが、早ければ感染して60時間後に、CD8T細胞上の皮膚または腸ホーミング(homing)分子の差次的な発現をインプリンティング(imprint)することを示す図である。CFSE標識したThy1.1OT−1細胞を、Thy1.2B6マウス中に養子性移入した。レシピエントマウスを、次いで皮膚乱切またはi.p.注射のいずれかによって、rVV−ovaで感染させた。(a)感染して60時間後、ILNおよびMLNにおけるOT−1細胞の増殖を、Thy1.1ドナー細胞上でゲートするヒストグラムによって示した。(b−c)皮膚乱切したマウスのILN(b)およびi.p.感染したマウスのMLN(c)を、OT−1組織ホーミング表現型について、rVV−ova感染から60時間後に分析した。ドットプロットは、Thy1.1細胞上でゲートした。象限における数は、Thy1.1集団における割合を示す。(d)OT−1細胞上の示されたマーカーの幾何平均蛍光強度(GMF1)を、細胞分裂サイクルでプロットした。
【図8】図8は、VV皮膚乱切して5日後に、皮膚排除ILNにおいて活性化したT細胞が、ウイルスまたはウイルス抗原のばらまきなしに、二次リンパ組織中に移動したことを示す図である。(a)リンパ球は、rVV−ova皮膚乱切して5日後に、指示された組織から調製した。OT−1細胞の増殖を、フローサイトメトリーによって分析した。(b)RNA試料は、VV乱切して5日後に、指示された組織から調製した。VV感染は、リアルタイムRT−PCTによって測定した。データは、1群につき3匹のマウスを用いる、4つの独立した実験の平均±s.d.を表す。(c)抗原提示細胞は、rVV−ovaで皮膚乱切して4日後に、B6マウスのILN、MLNおよび脾臓から、抗MHC クラスII磁気ビーズを用いて精製した。細胞を、CFSE標識したThy1.1OT−1細胞と共に60時間、共培養した。OT−1細胞の活性化および増殖を、フローサイトメーターによってモニターした。ヒストグラムは、Thy1.1集団においてゲートした。
【図9−1】図9は、rVV−ovaで皮膚乱切して5日後に、腸ホーミング分子α4β7が、二次ホーミングのインプリンティングによって、ばらまかれたOT−1 CD8細胞上で上方制御したことを示す図である。(a)ILNおよびMLNは、rVV−ovaで乱切して5日後に収集した。Thy1.1OT−1細胞上に示されたホーミングマーカーの発現は、フローサイトメトリーによって決定した。ドットプロットは、Thy1.1細胞においてゲートした。(b−d)Thy1.1OT−1細胞を受容したB6マウスに、rVV−ovaで乱切する24時間前に開始する、FTY720の毎日の注射を実行した。感染して5日目に、指示された組織からリンパ球を収集し、フローサイトメトリーによって分析した。(b)全体のリンパ球におけるThy1.1細胞の割合。(c)ILNにおけるOT−1細胞上のE−Ligおよび(d)α4β7の発現。ヒストグラムは、Thy1.1集団においてゲートした。
【図9−2】図9は、rVV−ovaで皮膚乱切して5日後に、腸ホーミング分子α4β7が、二次ホーミングのインプリンティングによって、ばらまかれたOT−1 CD8細胞上で上方制御したことを示す図である。(a)ILNおよびMLNは、rVV−ovaで乱切して5日後に収集した。Thy1.1OT−1細胞上に示されたホーミングマーカーの発現は、フローサイトメトリーによって決定した。ドットプロットは、Thy1.1細胞においてゲートした。(b−d)Thy1.1OT−1細胞を受容したB6マウスに、rVV−ovaで乱切する24時間前に開始する、FTY720の毎日の注射を実行した。感染して5日目に、指示された組織からリンパ球を収集し、フローサイトメトリーによって分析した。(b)全体のリンパ球におけるThy1.1細胞の割合。(c)ILNにおけるOT−1細胞上のE−Ligおよび(d)α4β7の発現。ヒストグラムは、Thy1.1集団においてゲートした。
【図10】図10は、急性ウイルス感染中の組織特異的ホーミング分子の一次および二次インプリンティングが、メモリー相中に維持されたことを示す図である。rVV−ova皮膚乱切から30日後に、リンパ球を指示された組織から収集した。Thy1.1OT−1細胞におけるE−Ligまたはα4β7細胞の割合を、フローサイトメトリーによって分析した。データは、6匹のマウスの平均±s.d.を表す。
【図11−1】図11は、皮膚乱切(s.s.)によるMVA免疫化が、用量依存的な免疫応答を誘発することを示す図である。(a)B6マウスは、異なる用量のMVA(左から右へ:1.8×10、1.8×10、1.8×10および1.8×10pfu)で、s.s.により免疫化した。免疫化して7日後に、ポックス病変を用量依存な様式で観察した。(b−c)B6マウスを、指示された用量(pfu/マウス)で、s.s.によってMVAまたはVVで免疫化した。(b)免疫化して7日後に、一次ワクシニア特異的T細胞応答を、脾臓において測定した。(c)血清ワクシニア特異的IgGを、免疫化して6週間後に測定した。(d)マウスを、免疫化して6週間後に、WR−VVによる致死的なi.n.感染でチャレンジした。生存率およびBWの変化を毎日モニターした。
【図11−2】図11は、皮膚乱切(s.s.)によるMVA免疫化が、用量依存的な免疫応答を誘発することを示す図である。(a)B6マウスは、異なる用量のMVA(左から右へ:1.8×10、1.8×10、1.8×10および1.8×10pfu)で、s.s.により免疫化した。免疫化して7日後に、ポックス病変を用量依存な様式で観察した。(b−c)B6マウスを、指示された用量(pfu/マウス)で、s.s.によってMVAまたはVVで免疫化した。(b)免疫化して7日後に、一次ワクシニア特異的T細胞応答を、脾臓において測定した。(c)血清ワクシニア特異的IgGを、免疫化して6週間後に測定した。(d)マウスを、免疫化して6週間後に、WR−VVによる致死的なi.n.感染でチャレンジした。生存率およびBWの変化を毎日モニターした。
【図12−1】図12は、MVAによる皮膚乱切が、注射経路と比較して、優れた免疫応答および保護効率をもたらすことを示す図である。B6マウスを、指示された経路によって、2×10pfuのMVAで免疫化した。(a)一次T細胞応答を、p.i.7日において測定した。(b)VV特異的IgGを、p.i.6週間で測定した。(c−f)メモリーマウスを、p.i.6週間で、致死的な用量のWR−VVで鼻腔内チャレンジし、二次T細胞応答(c)およびチャレンジ後のVV特異的IgGを、チャレンジから6日目に測定した(d)。生存率(e)およびBW変化(f)を、チャレンジ後、毎日モニターした。VV皮膚乱切したマウス(2×10pfu)マウスを対照として含めた。
【図12−2】図12は、MVAによる皮膚乱切が、注射経路と比較して、優れた免疫応答および保護効率をもたらすことを示す図である。B6マウスを、指示された経路によって、2×10pfuのMVAで免疫化した。(a)一次T細胞応答を、p.i.7日において測定した。(b)VV特異的IgGを、p.i.6週間で測定した。(c−f)メモリーマウスを、p.i.6週間で、致死的な用量のWR−VVで鼻腔内チャレンジし、二次T細胞応答(c)およびチャレンジ後のVV特異的IgGを、チャレンジから6日目に測定した(d)。生存率(e)およびBW変化(f)を、チャレンジ後、毎日モニターした。VV皮膚乱切したマウス(2×10pfu)マウスを対照として含めた。
【図12−3】図12は、MVAによる皮膚乱切が、注射経路と比較して、優れた免疫応答および保護効率をもたらすことを示す図である。B6マウスを、指示された経路によって、2×10pfuのMVAで免疫化した。(a)一次T細胞応答を、p.i.7日において測定した。(b)VV特異的IgGを、p.i.6週間で測定した。(c−f)メモリーマウスを、p.i.6週間で、致死的な用量のWR−VVで鼻腔内チャレンジし、二次T細胞応答(c)およびチャレンジ後のVV特異的IgGを、チャレンジから6日目に測定した(d)。生存率(e)およびBW変化(f)を、チャレンジ後、毎日モニターした。VV皮膚乱切したマウス(2×10pfu)マウスを対照として含めた。
【図13−1】図13は、MVA皮膚乱切が、免疫不全宿主でも安全であることを示す図である。Rag−/−マウスを、皮膚乱切によって、2×10pfuのMVAまたはVVで免疫化した。(a)ポックス病変の写真を、p.i.7および28日目に撮影した。(b)生存率および(c)BW変化を毎週モニターした。(d)MVA乱切して3カ月後に、Rag1−/−マウスから収集したウイルス負荷を、リアルタイムPCRによって決定した。無処理の皮膚および7日目のVV乱切したwtマウスの皮膚を対照として使用した。
【図13−2】図13は、MVA皮膚乱切が、免疫不全宿主でも安全であることを示す図である。Rag−/−マウスを、皮膚乱切によって、2×10pfuのMVAまたはVVで免疫化した。(a)ポックス病変の写真を、p.i.7および28日目に撮影した。(b)生存率および(c)BW変化を毎週モニターした。(d)MVA乱切して3カ月後に、Rag1−/−マウスから収集したウイルス負荷を、リアルタイムPCRによって決定した。無処理の皮膚および7日目のVV乱切したwtマウスの皮膚を対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(詳細な説明)
本発明の態様は、一部には、抗原に対する強力で持続性のある免疫応答は、抗原を含有する改変された複製欠損性または非複製性ポックスウイルスを被験体の機械的に破壊された表皮に投与することにより実現することができるという発見に基づいている。
【0033】
本明細書には、感染(もしくは感染性疾患)またはがんに対して免疫応答を刺激するおよび/または被験体を免疫化するための新規の方法が提供される。該方法は、抗原に対する免疫応答を刺激するのに十分な量で、抗原を含有する改変された複製欠損性または非複製性ポックスウイルスベクターをそれを必要とする被験体に投与することを含み、ここでポックスウイルスは、被験体の機械的に破壊された表皮に投与される。
【0034】
被験体とは、ヒトまたは、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シチメンチョウ、ニワトリ、霊長類(例えば、サルもしくはチンパンジー)、げっ歯類(例えば、マウス、ラットもしくはハムスター)および魚類を含むが、これらに限定されない脊椎動物のことである。好ましくは、被験体は哺乳動物であり、さらに好ましくはヒトである。
【0035】
本発明の方法は、免疫応答を刺激することおよび/またはそのような処置を必要とする被験体を免疫化することに有用である。処置を必要とする被験体は、がんに罹っているかもしくはがんに罹る危険がある被験体または感染しているかもしくは感染する危険がある被験体(例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染もしくは原虫感染しているかもしくは罹患する危険がある被験体)である。
【0036】
がんに罹っている被験体は、検出可能な癌細胞を有する被験体である。本明細書で使用される「がん」とは、身体器官および系の正常機能を妨害する制御されていない細胞増殖のことである。
【0037】
がんを発症する危険がある被験体は、がんを発症する正常より高い確率を有する被験体である。これらの被験体は、例えば、その存在ががんを発症するより高い可能性と相関関係にあることが実証されている遺伝的異常を有する被験体を含む。これらの被験体は、タバコ、アスベスト、もしくは他の化学的毒素などのがん原因物質(すなわち、発癌物質)に曝されている被験体、または既にがんの処置を受けたことがあり外見上寛解している被験体も含む。
【0038】
感染している被験体は、感染性微生物に曝されたことがあり、身体中に急性もしくは慢性の検出可能レベルの微生物を有するかまたは感染性微生物の徴候および症状を有する被験体である。被験体における感染を評価し検出する方法は、当業者には公知である。
【0039】
感染する危険がある被験体は、感染性微生物に接触することが予想され得る被験体である。そのような被験体の例は、医療従事者または世界の感染の発生率が高い地域への旅行者である。いくつかの実施形態では、被験体は、感染の1つまたは複数の危険因子を有するために、高い感染の危険がある。感染の危険因子の例には、例えば、免疫抑制、免疫無防備状態、年齢、外傷、やけど(例えば、熱傷)、手術、異物、がん、新生児、特に未熟児が挙げられる。感染の危険の程度は、被験体が有する危険因子の数の多さおよび重大性または大小の規模に依存する。危険因子の存在および重大性に基づいて被験体における感染の危険を評価するためのリスクチャートおよび予測アルゴリズムが利用可能である。被験体における感染の危険を評価する他の方法は、当業者には公知である。いくつかの実施形態では、感染の高い危険がある被験体は外見上健康な被験体であることもある。外見上健康な被験体は、疾患の徴候または症状がまったくない被験体である。
【0040】
本発明のいくつかの態様は、被験体に抗原を含む生の改変された複製障害性または非複製性ポックスウイルスを投与することを含む。
【0041】
ポックスウイルスは、様々な使用、例えば、免疫応答を生み出すワクチンに、新しいワクチンの開発に、所望のタンパク質の送達におよび遺伝子治療に有用なベクターである。これらのポックスウイルスベクターの利点には、(i)生成および作製の容易さ、(ii)複数の遺伝子の挿入を可能にする(すなわち、多価ベクターとしての)大きなサイズのゲノム、(iii)抗原提示細胞を含む複数の細胞型への遺伝子の効率的送達、(iv)高レベルのタンパク質発現、(v)免疫系への抗原の最適な提示、および(vi)細胞媒介免疫応答および抗体応答を誘発する能力、(vii)免疫学的に交差反応性ではないために、異なる属由来のポックスウイルスの組合せを使用する能力、および(viii)このベクターをヒトにおいて痘瘡ワクチンとして使用してきたことで得られた長期の経験が挙げられる。
【0042】
ポックスウイルスは、ウイルスの複製能力を損ねながら、または損ねることなく、外来DNAを含有し発現するように遺伝的に操作することが可能である。そのような外来DNAは、1つまたは複数の感染作用因子に対する防御を誘導する抗原などの広範囲のタンパク質、共刺激分子などの免疫調節タンパク質、または酵素タンパク質をコードすることができる。例えば、組換えワクシニアウイルスは、ヘルペスウイルス、B型肝炎、狂犬病、インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、および他のウイルスの免疫抗原を発現するよう操作されており(Kienyら、Nature 312巻:163〜6頁(1984年);Smithら、Nature 302巻:490〜5頁(1983年);Smithら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80巻:7155〜9頁(1983年);Zaguryら、Nature 326巻:249〜50頁(1987);Cooneyら、Lancet 337巻:567〜72頁(1991年);Grahamら、J. Infect. Dis. 166巻:244〜52頁(1992年))、インフルエンザウイルス、デングウイルス、RSウイルス、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して免疫応答を誘発することが明らかにされている。ポックスウイルスも使用されて、CEA、PSAおよびMUCなどの腫瘍関連抗原に対して免疫反応を生み出してきた。
【0043】
ポックスウイルスは周知の細胞質ウイルスである。そのようなウイルスベクターにより発現される遺伝物質は、典型的に、細胞質中に残り、特定のステップを踏まなければ、宿主細胞遺伝子へ遺伝物質が偶発的に組み込まれる可能性はない。ポックスウイルスの非組込み的な細胞質性の性質の結果、ポックスウイルスベクター系は、他の細胞内での期間持続性はないことになる。したがって、該ベクターおよび形質転換された細胞は、標的細胞から離れた位置では宿主動物内の細胞に悪影響を及ぼすことはないことになる。
【0044】
レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)、アデノウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルスベクターなどの他の系と比べると、ポックスウイルスの大きなゲノムは、大きな遺伝子がポックスベースベクターに組み込まれることを可能にする。有利なことに、ポックスウイルスは細胞質性の性質であるので、外来DNAが宿主細胞ゲノムに組み込まれることはない。
【0045】
異種タンパク質の発現のための生ウイルスベクターとしていくつかのポックスウイルス、例えば、弱毒化ワクシニアウイルス株改変ワクシニアAnkara(MVA)およびWyethが開発されている(Cepkoら、Cell37巻:1053〜1062頁(1984年);Morinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84巻:4626〜4630頁(1987年);Loweら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84巻:3896〜3900頁(1987年);Panicali & Paoletti、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、79巻:4927〜4931頁(1982);Mackettら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、79巻:7415〜7419頁(1982年))。他の弱毒化ワクシニアウイルス株には、WR株、NYCBH株、ACAM2000、Lister株、LC16m8、Elstree−BNm、Copenhagen株、およびTiantan株が挙げられる。
【0046】
ワクシニアウイルスは、オルソポックスウイルス属のプロトタイプである。ワクシニアウイルスは、実験条件下で広い宿主範囲を有する二本鎖DNA(デオキシリボ核酸)ウイルスである(Fennerら、Orthopoxviruses. San Diego, Calif.:Academic Press, Inc.、1989年;Damasoら、Virology 277巻:439〜49頁(2000年))。
【0047】
改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)またはその誘導体は、ニワトリ胚線維芽細胞でのワクシニアウイルスのAnkara株(CVA)の長期連続継代により生み出された(概説については、Mayr, A.ら、Infection、3巻:6〜14(1975年)を参照)。MVAウイルス自体は、いくつかの公共の貯蔵源から入手し得る。例えば、MVAは、ブタペスト条約の要件に従って1987年12月15日、CNCM(Institut Pasteur、Collection Nationale de Cultures Microorganisms、25、rue du Docteur Roux、75724 Paris Cedex 15)に寄託番号I−721下で寄託され(米国特許第5185146号);MVAウイルスは、ブタペスト条約に従って1994年1月27日、European Collection of Cell Cultures(ECACC)(CAMR、Porton Down、Salisbury、SP4 OJG、UK)に寄託番号V94012707下で寄託された(米国特許第6440422号および米国特許公開第2003/0013190号)。その上、米国特許公開第2003/0013190号は、ECACCに寄託番号99101431およびECACC仮アクセッション番号01021411下で寄託された特定のMVA株をさらに開示している。THERION−MVA、THERION PRIFREEベクターおよびTHERION M−SERIESベクター(Therion Biologics Corporation、MA)が市販されている。
【0048】
MVAは、ワクシニアウイルスのAnkara株(CVA)のニワトリ胚線維芽細胞での516連続継代により生み出された(概説は、Mayr,A.ら、Infection 3巻、6〜14頁[1975年]参照)。これらの長期継代の結果、約31キロベースのゲノム配列がウイルスから欠失し(欠失I、II、III、IV、V、およびVI)、したがって、こうして得られたMVAウイルスは宿主細胞がトリ細胞に高度に限定されるとして記載された(Meyer, H.ら、J. Gen. Virol. 72巻、1031〜1038頁[1991年])。こうして得られたMVAは著しく無発病性であることが様々な動物モデルで明らかにされた(Mayr, A. & Danner、K.[1978年]Dev. Biol. Stand. 41巻:225〜34)。さらに、このMVA株は、ヒト痘瘡疾患に対して免疫化するためのワクチンとして臨床試験で試験されてきた(Mayrら、Zbl. Bakt. Hyg. I、Abt. Org. B 167巻、375〜390頁[1987年]、Sticklら、Dtsch. med. Wschr. 99巻、2386〜2392頁[1974年])。これらの研究は、危険性が高い患者を含めて、120,000人を超えるヒトを含み、ワクシニアベースワクチンと比べて、MVAは毒性または感染性が減弱しているが、良好な特異的免疫応答を誘導することを証明した。一般に、ウイルス株は、それが宿主細胞において繁殖的に複製する能力を失っているか低い能力のみを有する場合には、弱毒化したと見なされる。
【0049】
本明細書で使用されるように、用語「非複製性」または「複製障害性」ポックスウイルスとは、大多数の正常哺乳動物細胞または正常な主要ヒト細胞において任意の有意な程度に複製することができないポックスウイルスのことである。本明細書で使用されるように、「有意な程度」は標準化アッセイにおいて野生型ワクシニアウイルスと比べて、75%またはそれ未満の複製能力を意味する。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスは野生型ワクシニアウイルスと比べて、65%、55%、45%、35%、25%、または15%の複製能力を有する。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスは野生型ワクシニアウイルスと比べて、5%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満の複製能力を有する。非複製性ウイルスは、正常な主要ヒト細胞において100%複製欠損である。
【0050】
ウイルス複製アッセイは当技術分野では公知であり、例えば、初代ケラチノサイト上でワクシニアウイルスについて実施することが可能であり、例えば、Liuら、J.Virol. 2005年、79巻:12号、7363〜70頁に記載されている。非複製性または複製障害性であるウイルスは、自然に(すなわち、それは自然から単離されている可能性がある)または人為的に、例えばインビトロで繁殖させることにより、もしくは、遺伝子操作、例えば、複製にとって極めて重要な遺伝子の欠失により、そうなった可能性がある。一般に、MVAについてはCEF細胞などの、ウイルスが増殖できる1つまたは少数の細胞型が存在する。
【0051】
本明細書で使用されるように、「改変された」ポックスウイルスとは、野生型ウイルスと比べて、改変されたウイルスの1つまたは複数の特徴を変更するある形で変化を加えられているポックスウイルスのことである。これらの変更は、自然にまたは工学的操作を通じて起きた可能性がある。いくつかの実施形態では、改変されたポックスウイルスは、免疫原性である(すなわち、宿主において免疫応答を誘導する)抗原(複数可)を含むように変化を加えられている。例えば、抗原は、がん抗原または微生物抗原を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポックスウイルスにおける変更には、例えば、ウイルスの遺伝子発現プロファイルの変化が挙げられる。いくつかの実施形態では、改変されたポックスウイルスは、ポックスウイルスにとっては外来性である、すなわち、野生型ポックスウイルスでは存在しないペプチドまたはポリペプチドをコードする遺伝子または遺伝子の一部を発現し得る。これらの外来性または異種ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、腫瘍特異的抗原(TSA)、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、および原虫抗原などの免疫原性である配列、またはポックスウイルス以外のウイルス由来の抗原性配列を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変されたポックスウイルスは、抗原を含む非ポックスウイルスポリペプチドを発現することができ、さらに、弱毒化されている。すなわち、これらの改変されたポックスウイルスが複製欠損性または非複製性であるように、ウイルス複製速度に影響を与える改変のため、伝播する能力が低い。
【0053】
ベクターとしてのポックスウイルスの利点の1つは、複数の遺伝子を含む広範囲の遺伝物質の挿入を可能にする(すなわち、多価ベクターとしての)そのゲノムサイズの大きさである。遺伝物質は、組換えウイルスが生存可能なままでいるように、ポックスウイルスゲノム内の適切な部位に挿入され得る。すなわち、遺伝物質は、組換えウイルスが望ましい免疫原性および減弱した毒性を維持しつつ外来細胞に感染しDNAを発現する能力を確実に保持するように、ウイルスDNAのある部位(例えば、ウイルスDNAの非必須な部位)に挿入され得る。例えば、上記のように、MVAは、挿入部位としての役割をすることが実証されている6つの天然の欠失部位を含有する。例えば、米国特許第5185146号、および米国特許第6440422号を参照されたい。本明細書に記載されるポックスウイルスは、本明細書においてウイルスベクターまたはウイルスベクター系と呼ばれることもある。
【0054】
いくつかの実施形態では、望ましい抗原をコードする遺伝子は、親ウイルスタンパク質の正常な補完物(complement)の発現と共にその遺伝子をポックスウイルスに発現させるような形でポックスウイルスのゲノムに挿入される。これは、先ずポックスウイルスとのインビボ組換えのためのDNAドナーベクターを構築することにより実現することが可能である。
【0055】
一般に、DNAドナーベクターは、以下のエレメント:(i)該ベクターが原核生物宿主において増幅され得るように、原核生物複製起点;(ii)該ベクターを含有する原核生物宿主細胞の選択を可能にするマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質耐性をコードする遺伝子);(iii)遺伝子の発現を指示することができる転写プロモーターに隣接して位置する望ましいタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子;および(iv)外来遺伝子(複数可)が挿入される親ウイルスゲノムの領域に相同なDNA配列(これは、エレメント(iii)の構築物に隣接する)を含有する。
【0056】
複数の外来遺伝子をポックスウイルスに導入するためのドナープラスミドを構築するための方法は、例えば、WO91/19803に記載されており、その技法は参照により本明細書に組み込まれている。一般に、転写プロモーターを含有する断片および外来遺伝子が挿入されることになる親ウイルスゲノムの領域に相同な配列を含有する断片を含む、ドナーベクターの構築のためのDNA断片は全て、ゲノムDNAまたはクローニングされたDNA断片から入手可能である。ドナープラスミドは、一価、二価または多価であることが可能である(すなわち、1つまたは複数の挿入された外来遺伝子配列を含有することが可能である)。
【0057】
ドナーベクターは、挿入された外来DNAを含有する組換えウイルスの同定を可能にするマーカーをコードする追加の遺伝子を含有し得る。数種のマーカー遺伝子を使用して、組換えウイルスの同定および単離を可能にすることができる。これらの遺伝子には、例えば、抗生物質耐性または化学物質耐性をコードする遺伝子(例えば、Spyropoulosら、J. Virol.、62巻:1046頁(1988年);FalknerおよびMoss.、J. Virol.、62巻:1849頁(1988年);Frankeら、Mol. Cell. Biol.、5巻:1918頁(1985年)参照)ならびに比色分析アッセイによる組換えウイルスプラークの同定を可能にするE.coli lacZ遺伝子などの遺伝子(Panicaliら、Gene、47巻:193〜199頁(1986年))が含まれる。
【0058】
感染細胞におけるドナープラスミドDNAとウイルスDNAとの間の相同組換えにより、望ましいエレメントを組み込んでいる組換えウイルスが形成される。インビボ組換えに適切な宿主細胞は、一般にウイルスが感染でき、プラスミドベクターによりトランスフェクトすることが可能な真核細胞である。ポックスウイルスを用いた使用に適したそのような細胞の例は、ニワトリ胚皮膚(CED)細胞、HuTK143(ヒト)細胞、ならびにCV−1およびBSC−40(ともにサル腎臓)細胞である。ポックスウイルスを用いた細胞の感染およびプラスミドベクターを用いたこれらの細胞のトランスフェクションは、当技術分野の標準技法により実現される(PanicaliおよびPaoletti、米国特許第4603112号、WO89/03429)。代わりに、ドナーDNAは親ウイルスゲノムの独自の制限部位に直接ライゲーションすることが可能である(Scheiflingerら、(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)89巻:9977〜9981頁)。
【0059】
インビボ組換えまたはライゲーションに続いて、組換えウイルス子孫は、当技術分野で周知のいくつかの技法により同定することが可能である。例えば、DNAドナーベクターが、外来遺伝子を親ウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子内に挿入するように設計されている場合、組み込まれたDNAを含有するウイルスはTKになり、これに基づいて選択することが可能である(Mackettら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、79巻:7415頁(1982年))。代わりに、上記のように、目的の外来遺伝子(複数可)と、マーカーをコードする遺伝子または指標遺伝子との共組込み(co−integration)を使用して、組換え子孫を同定することが可能である。1つの好ましい指標遺伝子は、E.coli lacZ遺伝子であり、βガラクトシダーゼを発現する組換えウイルスは、該酵素に対する色素形成基質を使用して選択することが可能である(Panicaliら、Gene、47巻:193頁(1986年))。
【0060】
組換えウイルスが同定されると、当技術分野で周知の様々な方法を使用して、挿入された遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現をアッセイすることが可能である。これらの方法には、例えば、ブラックプラークアッセイ(ウイルスプラーク上で実施されるインサイチュー酵素免疫アッセイ)、ウエスタンブロット分析、放射性免疫沈降法(RIPA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、またはCTLアッセイなどの機能アッセイが挙げられる。
【0061】
ポックスウイルスは大きなゲノムを有するために、複数の遺伝子を含む広範囲の遺伝物質を送達する(すなわち、多価ベクターとして作用する)のに容易に使用することが可能である。ポックスウイルスゲノムのサイズは、ウイルスの株に応じて約130〜300kbpの範囲であり、最大300遺伝子である。したがって、大きな断片の外来DNAをこれらのウイルスに挿入すること、それでもウイルスゲノムの安定性を維持することが可能である。
【0062】
いくつかの実施形態では、遺伝子をコードする少なくとも1つの核酸断片がポックスウイルスベクターに挿入される。別の実施形態では、異なる遺伝子をコードする少なくとも2つおよび最大約10の異なる核酸がポックスウイルスベクターに挿入される。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポックスウイルスは、疾患原因因子由来の抗原(複数可)または疾患状態に関連する抗原などの目的の疾患関連抗原をコードするDNAが挿入されており、その抗原(複数可)を発現する。
【0064】
ある種の実施形態では、ポックスウイルスは、共刺激分子(複数可)をコードするDNAが挿入されており、該共刺激分子(複数可)を発現する。
【0065】
ある種の実施形態では、ポックスウイルスは、目的の疾患関連抗原(複数可)および共刺激分子(複数可)をコードするDNAが挿入されており、該抗原(複数可)および共刺激分子(複数可)を発現する。
【0066】
目的の任意のDNAを、本明細書に記載されるポックスウイルスベクターに挿入することが可能である。ポックスウイルスのゲノムに発現可能な形で挿入するための外来遺伝子は、望ましい遺伝子を単離するための従来のどんな技法によっても入手することが可能である。
【0067】
DNAゲノムを含有する生物では、目的の抗原をコードする遺伝子はゲノムDNAから単離してよく、RNAゲノムを有する生物では、望ましい遺伝子は該ゲノムのcDNAコピーから単離してよい。ゲノムの制限地図が入手可能な場合には、制限エンドヌクレアーゼ消化によりゲノムDNAを切断して目的の遺伝子を含有するDNA断片を生じさせるための戦略を設計することが可能である。いくつかの場合、望ましい遺伝子を前もってクローニングしておいてよく、したがって、遺伝子は入手可能なクローンから得ることが可能である。代わりに、遺伝子のDNA配列が分かっている場合、ポリメラーゼ連鎖反応またはデオキシリボ核酸の合成のための従来の技法(例えば、リン酸または亜リン酸トリエステル技法)のいずれによっても遺伝子を合成することが可能である。
【0068】
目的の抗原をコードする遺伝子は、細菌宿主に該遺伝子をクローニングすることにより増幅することが可能である。この目的のために、様々な原核生物クローニングベクターを使用することができる。例は、プラスミドpBR322およびpEMBLである。
【0069】
標準技法によりポックスウイルスベクターに挿入するための目的の抗原をコードする遺伝子を調製することが可能である。一般には、クローニングした遺伝子は、制限酵素消化により原核生物クローニングベクターから切り取ることが可能である。クローニングされる遺伝子を担うDNA断片を、必要に応じて、例えば、断片の末端をポックスウイルスベクターの挿入部位と適合させるために改変し、次にこれらのベクターの制限エンドヌクレアーゼ切断部位(クローニング部位)への挿入に先立って精製することが可能である。遺伝子をウイルスに挿入する基本技法は当業者には公知であり、例えば、ドナープラスミドにおける遺伝子に隣接するウイルスDNA配列と親ウイルス中に存在する相同配列との間の組換えを伴なう(Mackettら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79巻:7415〜7419頁(1982年))。
【0070】
例えば、ウイルスに挿入されるDNA遺伝子配列は、DNA(ポックスウイルスのDNAなど)の一部分に相同なDNAが挿入されているプラスミド、例えば、E.coliプラスミド構築物に入れることが可能である。別個に、挿入されるDNA遺伝子配列はプロモーターにライゲーションされる。プロモーター−遺伝子結合は、該プロモーター−遺伝子結合が、望ましい挿入領域であるポックスDNAの領域に隣接しているDNA配列に相同なDNAと両末端で隣接するように、プラスミド構築物中に置かれる。次に、こうして得られたプラスミド構築物はE.coli細菌内部での増殖により増幅され単離される。好ましくは、プラスミドは、E.coli複製起点などの複製起点ならびにE.coliにおける選択および増殖のための抗生物質耐性遺伝子などのマーカーも含有する。挿入されるDNA遺伝子配列を含有する単離されたプラスミドは、ポックスウイルスと一緒に、細胞培養物、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞にトランスフェクトされる。それぞれプラスミド中の相同ポックスDNAとウイルスゲノムとの間の組換えにより、ポックスウイルスはそのゲノム中のウイルス生存能に影響を与えない部位でのプロモーター−遺伝子構築物の存在により改変される。
【0071】
ある種の実施形態では、2つ以上の核酸、例えば、1つまたは複数の抗原(複数可)および共刺激分子(複数可)を挿入する。
【0072】
いくつかの実施形態では、遺伝子(複数可)は、得られる組換えウイルスのウイルス生存能に大きな影響を与えないポックスウイルス中の部位または領域(挿入領域)、例えば、ウイルス遺伝子間、好ましくは非必須ウイルス遺伝子間の遺伝子内領域に挿入し得る。当業者であれば、例えば、組換え体のウイルス生存能に重大な影響を与えずに組換え体形成を可能にする領域についてウイルスDNAのセグメントを試験することにより、ウイルス内のそのような領域を容易に同定することができる。例えば、容易に使用することが可能であり多くのウイルスに存在する1つの領域は、試験されたあらゆるポックスウイルスゲノム中に見出されているチミジンキナーゼ遺伝子である(レポリポックスウイルス:Uptonら、J. Virology、60巻:920頁(1986年)(ショープ線維腫ウイルス);カプリポックスウイルス:Gershonら、J. Gen. Virol.、70巻:525頁(1989年)(ケニヤシープ(Kenya sheep)−1);オルソポックスウイルス:Weirら、J. Virol.、46巻:530頁(1983年)(ワクシニア);Espositoら、Virology、135巻:561頁(1984年)(サル痘および痘瘡ウイルス);Hrubyら、PNAS、80巻:3411頁(1983年)(ワクシニア);Kilpatrickら、Virology、143巻:399頁(1985年)(ヤバサル腫瘍ウイルス);トリポックスウイルス:Binnsら、J. Gen. Virol.69巻:1275頁(1988年)(鶏痘);Boyleら、Virology、156巻:355頁(1987年)(鶏痘);Schnitzleinら、J. Virological Methods、20巻:341頁(1988年)(鶏痘、ウズラポックス);エントモポックス(Lytvynら、J. Gen. Virol.73巻:3235〜3240頁(1992年))。鶏痘では、TK領域に加えて、他の挿入領域には、例えば、BamHI J(Jenkinsら、AIDS Research and Human−Retroviruses 7巻:991〜998頁(1991年))EcoRI−HindIII断片、BamHI断片、EcoRV−HindHIII断片、BamHI断片およびHindIII断片(欧州特許出願第0308220A1号に記載される)が挙げられる(Calvertら、J. of Virol. 67巻:3069〜3076頁(1993年);Taylorら、Vaccine 6巻:497〜503頁(1988年);Spehnerら、(1990年)およびBoursnellら、J. of Gen. Virol. 71巻:621〜628頁(1990年))。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポックスウイルスは、場合によっては、1つまたは複数の免疫刺激分子をコードする1つまたは複数の遺伝子またはその部分またはその遺伝子もしくはその部分をそのゲノムに既に組み込んでいてもよい。
【0074】
ある種の実施形態では、外来DNAはタンパク質全体をコードしておらず、タンパク質の抗原断片またはエピトープをコードしている。これらの断片は、免疫原性または抗原性であるのに十分であればどんな長さでもよい。断片は、少なくとも4アミノ酸長、好ましくは5〜9アミノ酸であってよいが、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、500アミノ酸長もしくはそれ以上、またはその間の任意の長さなど、さらに長くてもよい。好ましくは、本明細書に記載されるものなどの細菌、ウイルス、真菌および原虫などの、任意の様々な病原体への防御的免疫応答を誘導するエピトープが発現されてよく、サイトカイン、1型インターフェロン、ガンマインターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン−1、−2、−4、−5、−6、−12などの免疫調節活性を有するタンパク質をコードする異種遺伝子配列と組み合わせ得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、異種配列は腫瘍抗原に由来してよく、得られる組換えポックスウイルスを使用して、インビボで腫瘍退縮をもたらす腫瘍細胞に対する免疫応答を生み出し得る。組換えウイルスは、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異抗原(TSA)、または組織特異抗原を発現するように操作し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗原をコードする挿入された遺伝子(複数可)は、挿入された遺伝子を発現するプロモーターに作動可能に連結し得る。プロモーターは当技術分野では周知であり、標的にしたいと考えている宿主および細胞型に応じて容易に選択することが可能である。例えば、ポックスウイルスでは、ワクシニア7.5K、40K,鶏痘などのポックスウイルスプロモーターを使用し得る。ある種の実施形態では、エンハンサーエレメントは発現レベルを増加させるために組み合わせて使用することも可能である。ある種の実施形態では、誘導性プロモーター(当技術分野で周知である)も、使用し得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポックスウイルスプロモーターには、例えば、エントモポックスプロモーター、トリポックスプロモーター、または、オルソポックスプロモーター、例えば、ワクシニアプロモーター、例えば、HH、11KもしくはPiなどが挙げられる。例えば、Piプロモーターは、ワクシニアのAva IH領域由来であるが、Wachsmanら、J. of Inf. Dis. 155巻、1188〜1197頁、(1987年)に記載されている。さらに具体的には、このプロモーターはL−バリアントWRワクシニア株のAva IH(Xho IG)断片由来であり、そのプロモーターは転写を右から左に指示する。該プロモーターの地図位置はAva IHの5’末端からほぼ1.3Kbp(キロ塩基対)、ワクシニアゲノムの5’末端からほぼ12.5Kbp、およびHindIII C/Nジャンクションから約8.5Kbp 5’側である。HindIII Hプロモーター(本明細書では「HH」および「H6」も)配列は、Roselら、J. Virol. 60巻、436〜449頁(1986年)によればオープンリーディングフレームH6の上流である。11Kプロモーターは、Wittek、J. Virol. 49巻、371〜378頁(1984年)およびBertholet, C.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82巻、2096〜2100頁(1985年)により記載されている通りである。プロモーターが特定の遺伝子の時間発現に対して早期プロモーターなのか後期プロモーターなのかということの利点を利用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、ポックスウイルスベクターは、外部因子または外部キュー(cue)により調節されるプロモーターを含み、これは、その外部因子または外部キューを活性化することによるベクターにより産生されているポリペプチドのレベルの制御を可能にする。例えば、熱ショックタンパク質は、プロモーターが温度により調節される遺伝子によりコードされるタンパク質である。金属含有タンパク質のメタロチオニンをコードする遺伝子のプロモーターはCdイオンに応答性である。このプロモーターまたは外部キューにより影響される別のプロモーターを組み込めば、抗原を含むポリペプチドの産生を調節することも可能になる。
【0079】
いくつかの実施形態では、ポックスウイルスゲノムは、「誘導性」プロモーターに作動可能に連結されている、目的の少なくとも1つの遺伝子(これは、例えば、抗原をコードする)をコードする核酸を担うように改変される。そのような誘導系であれば、遺伝子発現の慎重な調節が可能になる。MillerおよびWhelan、Human Gene Therapy、8巻:803〜815頁(1997年)を参照されたい。本明細書で使用される語句「誘導性プロモーター」または「誘導系」は、プロモーター活性を外部から送達される作用因子を使用して調節することができる系を含む。そのような系には、例えば、転写モジュレーターとしてE.coli由来のlacリプレッサーを使用してlacオペレーターを有する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節する系(Brownら、Cell、49巻:603〜612頁、1987年);テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用する系(GossenおよびBujard、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:5547〜5551頁、1992年;Yaoら、Human Gene Ther. 9巻:1939〜1950頁、1998年;Shokeltら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92巻.6522〜6526頁、1995年)が挙げられる。他のそのような系には、FK506ダイマー、カストラジオールを使用するVP16もしくはp65、RU486/ミフェプリストン、ジフェノールムリステロンまたはラパマイシンが挙げられる(MillerおよびWhelan、上記、図2参照)。さらに別の例は、エクジソン誘導系である(例えば、Karnsら、MBC Biotechnology 1巻:11頁、2001年参照)。誘導系は、例えば、Invitrogen社、Clontech社、およびAriad社から入手可能である。オペロンと一緒にリプレッサーを使用する系が好ましい。これらのプロモーターは、哺乳動物プロモーターの代わりにポックスプロモーターの部分を使用することにより適応させ得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、「転写調節エレメント」または「TRE」が目的の遺伝子の調節のために導入される。本明細書で使用されるように、TREは、RNAポリメラーゼによる作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の転写を調節(すなわち、制御)しRNAを形成するポリヌクレオチド配列、好ましくはDNA配列である。本明細書で使用されるように、TREは、TREを機能させる宿主細胞において作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の転写を増加させる。TREはエンハンサーエレメントおよび/またはポックスプロモーターエレメントを含むが、これは同一遺伝子由来でも由来でなくてもよい。TREのプロモーターおよびエンハンサー成分は目的のコード配列からどんな配向および/または距離にあってもよく、望ましい転写活性が得られさえすれば、前述のマルチマーを含んでいてよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子の調節のための「エンハンサー」が提供される。エンハンサーは当技術分野でよく理解されている用語であり、遺伝子に作動可能に連結されているときに、プロモーター自体によりもたらされる転写活性化よりも大きな程度に、プロモーターに作動可能に連結されている遺伝子の転写を増加させる遺伝子由来のポリヌクレオチド配列である。すなわち、エンハンサーはプロモーターからの転写を増加させる。
【0082】
TREまたはエンハンサーなどの調節エレメントの活性は、一般に、転写調節因子の存在および/または転写調節阻害因子の不在に依存する。転写活性化は、当技術分野で公知のいくつかの方法で測定することが可能であるが、一般には、調節エレメントの制御下にある(すなわち、作動可能に連結されている)コード配列のmRNAまたはタンパク質産物の検出および/または定量化により測定される。調節エレメントは、様々な長さ、および様々な配列組成であることが可能である。転写活性化により、転写は、標的細胞における基礎レベルよりも、少なくとも約2倍、好ましくは、少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、さらに好ましくは少なくとも約20倍増加されることが意図されている。さらに好ましくは少なくとも約50倍、さらに好ましくは少なくとも約100倍、さらに好ましくは少なくとも約200倍、さらに好ましくは少なくとも約400〜約500倍、さらに好ましくは少なくとも約1000倍である。基礎レベルは、一般に、いくらかでもあれば、非標的細胞における活性レベルであり、または標的細胞型において試験される目的のTREもしくはエンハンサーを欠くレポーター構築物の(いくらかでもあれば)活性レベルである。
【0083】
TREの配列内のある種の点変異は、転写因子結合および遺伝子活性化を減少させることが明らかにされている。当業者であれば、公知の転写因子結合部位内およびその周辺の塩基のいくつかの変更は遺伝子活性化および細胞特異性に悪影響を与える可能性が高く、転写因子結合に関与していない塩基の変更はそのような効果を及ぼす可能性がそれほどないことを認識している。ある種の変異もTRE活性を増加させることができる。塩基を変更する効果の試験は、移動度シフトアッセイ、またはTRE機能的およびTRE非機能的細胞にこれらの変更を含有するベクターをトランスフェクトすること、などの当技術分野で公知の任意の方法によってインビトロまたはインビボで実施し得る。さらに、当業者であれば、転写を調節する配列の能力を変更せずに、TRE配列に点変異および欠失を加えることが可能であることを認識している。
【0084】
本明細書に記載されているように、本明細書に提供されるポックスウイルスベクターは、抗原性または免疫原性断片(抗原)をコードしている。目的の抗原は、病原性微生物由来の抗原または腫瘍(もしくはがん)抗原であることが可能である。抗原をコードする遺伝子または核酸断片は、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生生物、正常もしくは形質転換された細胞、または他の微生物を含む、どんな生物由来でも可能である。
【0085】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子は、病原性生物の免疫原性タンパク質をコードする遺伝子である。ある種の実施形態では、これらは、細菌細胞壁またはウイルスエンベロープなどの表面構造物のタンパク質成分でよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子は、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異抗原(TSA)、組織特異抗原、ウイルス腫瘍抗原、細胞発癌遺伝子タンパク質、および/または腫瘍関連分化抗原をコードする遺伝子である。
【0087】
いくつかの実施形態では、タンパク質の免疫原性断片またはサブユニットを使用し得る。様々なタンパク質の複数の免疫原性断片またはサブユニットを使用し得る。例えば、単一タンパク質の異なる部位由来の、または同一種の異なるタンパク質由来の、または異なる種由来のタンパク質オルソログ由来の、いくつかの異なるエピトープを発現し得る。
【0088】
がんの処置への免疫治療的アプローチは、ヒト腫瘍細胞は、典型的には正常細胞では発現されない様々な腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異抗原(TSA)を発現するという所見に基づいている。これらの抗原は、宿主免疫系の標的として働き、腫瘍破壊をもたらす応答を誘発することができる。この免疫応答は、主にリンパ球により媒介され、一般にT細胞、特にMHCクラスI拘束細胞傷害性Tリンパ球は腫瘍拒絶において中心的役割を果たしている。Hellstrom, K. E., ら、(1969年)Adv. Cancer Res. 12巻:167〜223頁;Greenberg、P. D.(1991年)Advances in Immunology、49巻(Dixon, D. J.、ed.)、281〜355頁、Academic Press, Inc.、Orlando、FL。がん免疫治療のためのTAAのクローニングは、例えば、Boon, T.ら、(1994年)Annu. Rev. Immunol. 12巻:337〜365頁;Brithcard, V.ら、(1993年)J. Exp. Med. 178巻:489〜495頁;Cox, A. L.ら、(1994年)Science 264巻:716〜719頁;Houghton, A. N.(1994年)J. Exp. Med. 180巻:1〜4頁;Pardoll, D. M.(1994年)Nature 369巻:357〜358頁;Kawakami, Y.ら、(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91巻:3515〜3519頁;Kawakami, Y.ら、(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91巻:6458〜6462頁に記載されている。
【0089】
抗腫瘍免疫治療のためのワクシニアウイルスの使用は、例えば、Hu, S. L.、Hellstrom, I.、および Hellstrom K. E.(1992年)Vaccines:New Approaches to Immunological Problems(R. W. Ellis、編)327〜343頁、Butterworth−Heinemann、Bostonに記載されている。抗腫瘍応答は、癌胎児性抗原(CEA)および前立腺(prostrate)特異抗原(PSA)などのTAAを発現する組換えポックスウイルスを使用して誘発されている(Muraro, R.ら、(1985年)Cancer Res. 4S:5769〜5780頁);(Kantor, 3.ら、(1992年)J. Natl. Cancer Inst. 84巻:1084〜1091頁);(Robbins, P. F.ら、(1991年)Cancer Res.51巻:3657〜3662頁)(Kantor, 3.ら、(1992年)Cancer Res. 52巻:6917〜6925頁)。これらのベクターに関して毒性は観察されなかった。
【0090】
一般に、ウイルスワクチンは、MHCクラスI拘束T細胞、特に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化することにより腫瘍拒絶を媒介すると考えられている。T細胞活性化は、適切な免疫調節因子(immunomodulator)、例えば、B7遺伝子ファミリーのものなどのT細胞共刺激因子を与えることにより増強されることが多い。例えば、Greenberg, P. D.(1991年) Advances in Immunology、49巻(Dixon, D. J.、編)、281〜355頁、Academic Press、Inc.、Orlando、Fla.;Fox B. A.ら、(1990年)J. Biol. Response Mod. 9巻:499〜511頁を参照されたい。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異抗原(TSA)および/または組織特異抗原からなる群より選択される。これらの抗原には、MART−1(Kawakamiら、J. Exp. Med. 180巻:347〜352頁、1994年)、MAGE−1、MAGE−3、GP−100、(Kawakamiら、Proc. Nat’l. Acad. Sci. U.S.A. 91巻:6458〜6462頁、1994年)、CEAおよびチロシナーゼ(Brichardら、J. Exp. Med. 178巻:489頁、1993年)を含むがこれらに限定されないメラノーマTAA、TAA、例えば、MUC−1、MUC−2、点変異ras発癌遺伝子および点変異p53発癌遺伝子(膵臓がん)、CA−125(卵巣がん)、PSA(前立腺がん)、c−erb/B2(乳がん)、KS 1/4汎癌(pan−carcinoma)抗原(PerezおよびWalker、1990年、J. Immunol. 142巻:3662〜3667頁;Bumal、1998年、Hybridoma 7巻(4号):407〜415頁)、卵巣癌抗原(CA125)(Yuら、1991年、Cancer Res. 51巻(2号):468〜475頁)、前立腺酸性ホスフェート(prostatic acid phosphate)(Tailorら、1990年、Nucl. Acids Res. 18巻(16号):4928頁)、前立腺特異的抗原(PSA)(HenttuおよびVihko、1989年、Biochem. Biophys. Res. Comm. 160巻(2号):903〜910頁;Israeliら、1993年、Cancer Res. 53巻:227〜230頁)、メラノーマ関連抗原p97(Estinら、1989年、J. Natl. Cancer Instit. 81巻(6号)445〜446頁)、メラノーマ抗原gp75(Vijayasardahlら、1990年、J. Exp. Med. 171巻(4号):1375〜1380頁)、高分子量メラノーマ抗原(HMW−MAA)(Nataliら、1987年、Cancer 59巻:55〜63頁;Mittelmanら、1990年、J. Clin. Invest. 86巻:2136〜2144頁)、前立腺特異的膜抗原、癌胎児性抗原(CEA)(Foonら、1994年、Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 13巻:294頁)、多形性上皮ムチン抗原、ヒト乳脂肪球抗原、結腸直腸腫瘍関連抗原、例えば、CEA、TAG−72(Yokataら、1992年、Cancer Res. 52巻:3402〜3408頁)、CO17−1A(Ragnhammarら、1993年、Int. J. Cancer 53巻:751〜758頁);GICA19−9(Herlynら、1982年、J. Clin. Immunol. 2巻:135頁)、CTA−1およびLEA、バーキットリンパ腫抗原−38.13、CD19(Ghetieら、1994年、Blood 83巻:1329〜1336頁)、ヒトBリンパ腫抗原−CD20(Reffetら、1994年、Blood 83巻:435〜445頁)、CD33(Sgourosら、1993年、J. Nucl. Med. 34巻:422〜430頁)、ガングリオシドGD2(Salehら、1993年、J. Immunol.、151巻、3390〜3398頁)、ガングリオシドGD3(Shitaraら、1993年、Cancer Immunol. Immunother. 36巻:373〜380頁)、ガングリオシドGM2(Livingstonら、1994年、J. Clin. Oncol. 12巻:1036〜1044頁)、ガングリオシドGM3(Hoonら、1993年Cancer Res. 53巻:5244〜5250頁)などのメラノーマ特異的抗原、T抗原DNA腫瘍ウイルスおよびRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原を含むウイルス誘導性腫瘍抗原などの腫瘍特異的移植タイプの細胞表面抗原(TSTA)、結腸のCEAなどの癌胎児性抗原アルファフェトプロテイン、膀胱腫瘍癌胎児性抗原(Hellstromら、1985年、Cancer. Res. 45巻:2210〜2188頁)、ヒト肺癌抗原L6、L20などの分化抗原(Hellstromら、1986年、Cancer Res. 46巻:3917〜3923頁)、線維肉腫の抗原、ヒト白血病T細胞抗原−Gp37(Bhattacharya−Chatterjeeら、1988年、J. of Immuno specifically. 141巻:1398〜1403頁)、ネオ糖タンパク質、スフィンゴ脂質、乳がん抗原、例えば、EGFR(表皮増殖因子受容体)、HER2抗原(p185HER2)、多形性上皮ムチン(PEM)(Hilkensら、1992年、Trends in Bio. Chem. Sci. 17巻:359頁)、悪性ヒトリンパ球抗原−APO−1(Bernhardら、1989年、Science 245巻:301〜304頁)、分化抗原(Feizi、1985年、Nature 314巻:53〜57頁)、例えば、胎児赤血球、初期内胚葉に見出されるI抗原、成人赤血球、着床前胚に見出されるI抗原、胃腺癌に見出されるI(Ma)、乳房上皮に見出されるM18、M39、骨髄系細胞に見出されるSSEA−1、結腸直腸がんに見出されるVEP8、VEP9、Myl、VIM−D5、D156−22、結腸腺癌に見出されるTRA−1−85(血液型群H)、C14、肺腺癌に見出されるF3、胃がんに見出されるAH6、胚性癌細胞に見出されるYハプテン、Le、A431細胞に見出されるTL5(血液型A群)、EGF受容体、膵臓がんに見出されるEシリーズ(血液型B群)、胚性癌細胞に見出されるFC10.2、胃腺癌抗原、腺癌に見出されるCO−514(血液型Le群)、腺癌に見出されるNS−10、CO−43(血液型Le群)、A431細胞のEGF受容体に見出されるG49、結腸腺癌に見出されるMH2(血液型ALe/Le群)、結腸がんに見出される19.9、胃がんムチン、骨髄系細胞に見出されるT5A7、メラノーマに見出されるR24、胚性癌細胞に見出される4.2、GD3、D1.1、OFA−1、GM2、OFA−2、GD2およびM1:22:25:8、ならびに皮膚T細胞リンパ腫由来4〜8細胞段階胚T細胞受容体由来ペプチドに見出されるSSEA−3およびSSEA−4(Edelson、1998年、The Cancer Journal 4巻:62頁)、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IFN−α、IFN−β、IFN−β17変異体、IFN−65、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11a、CD11b、CD11c、CD16、CD18、CD21、CD28、CD32、CD34、CD35、CD40、CD44、CD45、CD54、CD56、OX40L、4−1BBL、K2、K1、Pβ、Oα、Mα、Mβ2、Mβ1、ヘプシン、Pim−1、LMP1、TAP2、LMP7、TAP1、TRP、Oβ、IAβ、IAα、IEβ、IEβ2、IEα、CYP21、C4B、CYP21P、C4A、Bf、C2、HSP、G7a/b、TNF−α、TNF−β、D、L、Qa、T1a、COL11A2、DPβ2、DPα2、DPβ1、DPα1、DNα、DMα、DMβ、LMP2、TAPi1、LMP7、DOβ、DQβ2、DQα2、DQβ3、DQβ1、DQα1、DRβ、DRα、G250、HSP−70、HLA−B、HLA−C、HLA−X、HLA−E、HLA−J、HLA−A、HLA−H、HLA−G、HLA−F、神経成長因子、ソマトトロピン、ソマトメジン、パラトルモン、FSH、LH、EGF、TSH、THS放出因子、HGH、GRHR、PDGF、IGF−I、IGF−II、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF1、エリスロポエチン、β−HCG、4−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、GM2、GD2、GD3、JADE、MART、BAGE、GAGE、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、XAGE、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4、MUC−18、ICAM−1、C−CAM、V−CAM、ELAM、NM23、EGFR、E−カドヘリン、N−CAM、LFA−3(CD58)、EpCAM、B7.1、CEA、DCC、PSA、Her2−neu、UTAA、メラノーマ抗原p75、K19、HKer8、pMel17、TP10、チロシナーゼ関連タンパク質1および2、p97、p53、RB、APC、DCC、NF−1、NF−2、WT−1、MEN−I、MEN−II、BRCA1、VHL、FCCおよびMCC、ras、myc、neu、raf、erb、src、fms、jun、trk、ret、gsp、hst、bclおよびabl、C1q、C1r、C1s、C4、C2、D因子、B因子、プロパージン、C3、C5、C6、C7、C8、C9、C1Inh、H因子、C4b結合タンパク質、DAF、膜補因子タンパク質、アナフィラトキシン不活性化因子Sタンパク質、HRF、MIRL、CR1、CR2、CR3、CR4、C3a/C4aレセプター、C5aレセプター、エプスタインバーウイルス抗原(EBNA)、BZLF−1、BXLF−1および核マトリックスタンパク質、改変TAAまたはTSA、TAAまたはTSAのスプライスバリアント、機能性エピトープ、エピトープアゴニスト、およびその縮重核酸変種を含むがこれらに限定されない。
【0092】
いくつかの重要な実施形態では、抗原には、ムチン1(MUC1)、ムチン2(MUC2)、BAGE−1、GAGE−1〜8、GnTV、HERV−K−MEL、KK−LC−1、KM−HN−1、LAGE−1、MAGE−A1〜A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−C3、NA88、NY−ESO−1/LAGE−2、SAGE、Sp17、SSX−2、SSX−4、TAG−1、TAG−2、TRAG−3、TRP2−INT2、XAGE−1b、癌胎児性(carcinoembriogenic)抗原(CEA)、CA−125、gp100/Pmel17、カリクレイン4、マンマグロビン−A、メラン−A/MART−1、NY−BR−1、OA−1、前立腺特異抗原(PSA)、RAB38/NY−MEL−1、TRP−1/gp75、TRP−2、チロシナーゼ、アディポフィリン、AIM−2、ALDH1A1、BCLX(L)、BING−4、CPSF、サイクリンD1、DKK1、ENAH(hMena)、Ep−CAM、EphA3、EZH2、FGF5、G250/MN/CAIX、HER−2/neu、IL13Rアルファ2、腸カルボキシルエステラーゼ、アルファフェトプロテイン(AFP)、M−CSF、MCSP、mdm−2、MMP−2、MUC1、PBF、PRAME、PSMA、RAGE−1、RGS5、RNF43、RU2AS、セセルニン1、SOX10、STEAP1、サバイビン、テロメラーゼ、VEGF、WT1、アルファアクチニン−4、ARTC1、BCR−ABL融合タンパク質、B−RAF、CASP−5、CASP−8、ベータカテニン、Cdc27、CDK4、CDKN2A、COA−1、dek−can融合タンパク質、EFTUD2、伸長因子2、ETV6−AML1融合タンパク質、FLT3−ITD、FN1、GPNMB、LDLRフコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA−A2、HLA−A11、hsp70−2、KIAAO205、MART2、ME1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、neo−PAP、ミオシンクラスI、NFYC、OGT、OS−9、p53、pml−RARアルファ融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K−ras、N−ras、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、SYT−SSX1または−SSX2融合タンパク質、TGF−ベータRII、およびトリオースリン酸イソメラーゼが挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子は、疾患を引き起こす病原性微生物の抗原をコードする遺伝子である。これらには、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(Genbank アクセッション番号 JO2132;Air、1981年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78巻:7639〜7643頁;Newtonら、1983年、Virology 128巻:495〜501頁)、ヒトRSウイルスG糖タンパク質(Genbank アクセッション番号 Z33429;Garciaら、1994年、J. Virol.;Collinsら、1984年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81巻:7683頁)、デングウイルスのコアタンパク質、マトリックスタンパク質もしくは他のタンパク質(Genbank アクセッション番号 M19197;Hahnら、1988年、Virology 162巻:167〜180頁)、麻疹ウイルス赤血球凝集素(Genbank アクセッション番号 M81899;Rotaら、1992年、Virology 188巻:135〜142頁)、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質gB(Genbank アクセッション番号 M14923;Bzikら、1986年、Virology 155巻:322〜333頁)、ポリオウイルスI VP1(Eminiら、1983年、Nature 304巻:699頁)、HIV Iのエンベロープ糖タンパク質(Putneyら、1986年、Science 234巻:1392〜1395頁)、B型肝炎表面抗原(Itohら、1986年、Nature 308巻:19頁;Neurathら、1986年、Vaccine 4巻:34頁)、ジフテリア毒素(Audibertら、1981年、Nature 289巻:543頁)、ストレプトコッカス24Mエピトープ(Beachey、1985年、Adv. Exp. Med. Biol. 185巻:193頁)、淋菌性ピリン(RothbardおよびSchoolnik、1985年、Adv. Exp. Med. Biol. 185巻:247頁)、仮性狂犬病ウイルスg50(gpD)、仮性狂犬病ウイルスII(gpB),仮性狂犬病ウイルスgIII(gpC)、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質H、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質E、感染性胃腸炎糖タンパク質195、感染性胃腸炎マトリックスタンパク質、ブタロタウイルス糖タンパク質38、ブタパルボウイルスカプシドタンパク質、Serpulina hydodysenteriae防御抗原、ウシウイルス下痢糖タンパク質55、ニューカッスル病ウイルス赤血球凝集素ノイラミニダーゼ、ブタインフルエンザ赤血球凝集素、ブタインフルエンザノイラミニダーゼ、口蹄疫ウイルス、ブタコレラウイルス、ブタインフルエンザウイルス、アフリカブタ熱ウイルス、Mycoplasma hyopneumoniae、ウシ感染性鼻気管炎ウイルス(例えば、ウシ感染性鼻気管炎ウイルス糖タンパク質Eもしくは糖タンパク質G)、または感染性喉頭気管炎ウイルス(例えば、感染性喉頭気管炎ウイルス糖タンパク質Gもしくは糖タンパク質1)、ラクロスウイルスの糖タンパク質(Gonzales−Scaranoら、1982年、Virology 120巻:42頁)、新生仔ウシ下痢ウイルス(MatsunoおよびInouye、1983年、Infection and Immunity 39巻:155頁)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(MathewsおよびRoehrig、1982年、J. Immunol. 129巻:2763頁)、プンタトロウイルス(Dalrympleら、1981年 Replication of Negative Strand Viruses、BishopおよびCompans(編)、Elsevier、N.Y.、167頁)、マウス白血病ウイルス(Steevesら、1974年、J. Virol. 14巻:187頁)、マウス乳癌ウイルス(MasseyおよびSchochetman、1981年、Virology 115巻:20頁)、B型肝炎ウイルスコアタンパク質および/もしくはB型肝炎ウイルス表面抗原またはその断片もしくは誘導体(例えば、英国特許公開番号GB 2034323A 1980年6月4日公開;GanemおよびVarmus、1987年、Ann. Rev. Biochem.56巻:651〜693頁;Tiollaisら、1985年、Nature 317巻:489〜495頁)、ウマインフルエンザウイルスまたはウマヘルペスウイルスの抗原(例えば、ウマA型インフルエンザウイルス/Alaska91ノイラミニダーゼ、ウマA型インフルエンザウイルス/Miami63ノイラミニダーゼ、ウマA型インフルエンザウイルス/Kentucky81ノイラミニダーゼ、ウマヘルペスウイルス1型糖タンパク質B、およびウマヘルペスウイルス1型糖タンパク質D)、ウシRSウイルスもしくはウシパラインフルエンザウイルスの抗原(例えば、ウシRSウイルス付着タンパク質(BRSV G)、ウシRSウイルス融合タンパク質(BRSV F)、ウシRSウイルスヌクレオカプシドタンパク質(BRSV N)、ウシパラインフルエンザウイルス3型融合タンパク質、およびウシパラインフルエンザウイルス3型赤血球凝集素ノイラミニダーゼ)、ウシウイルス性下痢ウイルス糖タンパク質48もしくは糖タンパク質53、RSV−ウイルスタンパク質、例えば、RSV F糖タンパク質、RSV G糖タンパク質、インフルエンザウイルスタンパク質、例えば、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ、インフルエンザウイルス赤血球凝集素、単純ヘルペスウイルスタンパク質、例えば、gB、gC、gDおよびgEを含む単純ヘルペスウイルス糖タンパク質など、HIV(GP−120、p17、GP−160、gag、po1、qp41、gp120、vif、tat、rev、nef、vpr、vpu、vpx抗原)、インフルエンザ(NP、赤血球凝集素(HA抗原)、ノイラミニダーゼ、PB1、PB2、PA、NP、M、M、NS、NS)、パピローマウイルス(E1、E2、E3、E4、E5a、E5b、E6、E7、E8、L1、L2)、アデノウイルス(E1A、E1B、E2、E3、E4、E5、L1、L2、L3、L4、L5)、HSV(リボヌクレオチドレダクターゼ、α−TIF、ICP4、ICP8、1CP35、LAT関連タンパク質、gB、gC、gD、gE、gH、gI、gJ、およびdD抗原)、ヒトパピローマウイルス、ウマ脳炎ウイルス、肝炎(B型肝炎表面抗原(gp27s、gp36s、gp42s、p22、pol、x))などのウイルスが挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗原性または免疫原性タンパク質断片またはエピトープは、アデノウイルス(adenovirdiae)科(例えば、マストアデノウイルスおよびトリアデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、単純ヘルペスウイルス5型、および単純ヘルペスウイルス6型)、レビウイルス科(例えば、レビウイルス、腸内細菌フェーズMS2、アロレウイルス)、ポックスウイルス科(poxyiridae)(例えば、コードポックスウイルス亜科(chordopoxyirinae)、パラポックスウイルス、トリポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、およびエントモポックスウイルス亜科)、パポバウイルス科(例えば、ポリオーマウイルスおよびパピローマウイルス)、パラミクソウイルス科、例えば、パラミクソウイルス、パラインフルエンザウイルス1型、モルビリウイルス(mobillivirus)(例えば、麻疹ウイルス)、ルブラウイルス(例えば、ムンプスウイルス)、ニューモウイルス科(例えば、ニューモウイルス、ヒトRSウイルス)、メタニューモウイルス(例えば、トリニューモウイルスおよびヒトメタニューモウイルス)、ピコルナウイルス科(例えば、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス(例えば、ヒトA型肝炎ウイルス)、カルジオウイルス、およびアフトウイルス(apthovirus))、レオウイルス科(例えば、オルトレオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、サイポウイルス、フィジウイルス、フィトレウイルス、およびオリザウイルス)、レトロウイルス科(例えば、哺乳動物B型レトロウイルス、哺乳動物C型レトロウイルス、トリC型レトロウイルス、D型レトロウイルス群、BLV−HTLVレトロウイルス)、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルス2型)、スプーマウイルス、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルス)、トガウイルス科(例えば、アルファウイルス(例えば、シンドビスウイルス)およびルビウイルス(例えば、風疹ウイルス))、ラブドウイルス科(例えば、ベジクロウイルス、リッサウイルス、エフェメロウイルス、サイトラブドウイルス、およびネクレオラブドウイルス)、アレナウイルス科(例えば、アレナウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、イッピイウイルス、およびラッサウイルス)、ならびにコロナウイルス科(例えば、コロナウイルスおよびトロウイルス)の抗原などの病原性ウイルス由来でよい。
【0095】
いくつかの重要な実施形態では、抗原性または免疫原性タンパク質断片またはエピトープは、HIV、インフルエンザ、デング熱、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラ、マールブルグ、狂犬病、ハンタウイルス感染、ウエストナイルウイルス、SARS様コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、アルファウイルスまたはセントルイス脳炎などの病原性ウイルス由来でよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗原性または免疫原性タンパク質断片またはエピトープは、Anthrax、Chlamydia、Mycobacteria、Legioniellaなどの病原性細菌由来でよい。病原性原虫には、Malaria、Babesia、Schistosomiasisが挙げられるがこれらに限定されない。病原性酵母には、例えば、Aspergillusおよび侵襲性Candidaが挙げられる。
【0097】
いくつかの重要な実施形態では、抗原性または免疫原性タンパク質断片またはエピトープは、Mycobacterium tuberculosis、Salmonella typhi、Bacillus anthracis、Yersinia perstis、Francisella tularensis、Legionella、Chlamydia、Rickettsia typhi、またはTreponema pallidumなどの病原性細菌由来でよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗原性または免疫原性タンパク質断片またはエピトープは、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Cryptococcus neoformans、Candida albicans、およびAspergillus種を含むがこれらに限定されない病原性真菌由来でよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗原性または免疫原性タンパク質断片またはエピトープは、例えば、Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariae、Leishmania種、Trypanosome種(アフリカおよびアメリカ)、クリプトスポリジウム、イソスポラ種、Naegleria fowleri、Acanthamoeba種、Balamuthia mandrillaris、Toxoplasma gondii、またはPneumocystis cariniiなどの病原性原虫由来でよい。
【0100】
いくつかの重要な実施形態では、感染因子の抗原性または免疫原性タンパク質断片またはエピトープには、HIV Gag、プロテアーゼ、逆転写酵素、完全長エンベロープタンパク質、Vpu、TatおよびRev;インフルエンザ赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスタンパク質1(M1)、非構造タンパク質1(NS−1);ウイルスの主要セロタイプ全てにより共有されているデングウイルス交差防御性抗原(例えば、非構造タンパク質1もしくはNS1、エンベロープドメインIIIもしくはEDIII)、A型肝炎ウイルスカプシドタンパク質1(VP−1);B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)およびコア抗原(HBcAg);C型肝炎コア抗原、E1、E2、p7、NS2、NS4およびNS4タンパク質:HPV E1、E2、L1、L2;エボラおよびマールブルグウイルス糖タンパク質、核タンパク質およびマトリックスタンパク質;狂犬病糖タンパク質;ハンタウイルス核タンパク質、エンベロープ糖タンパク質およびG1タンパク質;ウエストナイルウイルスプレメンブレン(prM)およびエンベロープ(E)糖タンパク質;SARS様コロナウイルスOrf3、スパイクタンパク質、ヌクレオカプシドおよび膜タンパク質;単純ヘルペスウイルス糖タンパク質BおよびD;水痘帯状疱疹ウイルスエンベロープ糖タンパク質EおよびB(gE、gB)、前初期タンパク質63(IE63);エプスタインバーウイルスgp350、gp110、核抗原1(EBNA−1)、EBNA2およびEBNA−3C;ヒトヘルペスウイルス8補体制御タンパク質(KCP)、糖タンパク質B、ORF6、ORF61、およびORF65;M.tuberculosis抗原85A、85B、MPT51、PPE44、マイコバクテリア65−kDa熱ショックタンパク質(DNA−hsp65)、6−kDa早期分泌(secretary)抗原性標的(ESAT−6);Salmonella SpaOおよびH1a、外膜タンパク質(OMP);P.aeruginosaOMP、PcrV、OprF、OprI、PilAおよび変異ToxA;B.anthracis防御抗原(PA);Y.pestis低カルシウム応答タンパク質V(LcrV)、F1およびF1−V融合タンパク質;Legionellaペプチドグリカン関連リポタンパク質(PAL)、mip、鞭毛、OmpS、hsp60、主要分泌タンパク質(MSP);Chlamydiaプロテアーゼ様活性因子(CPAF)、主要外膜タンパク質(MOMP);T.pallidum外膜リポタンパク質;CoccidioidesAg2/Pra106、Prp2、ホスホリパーゼ(P1b)、アルファマンノシダーゼ(Amn1)、アスパルチルプロテアーゼ、Gel1;Blastomyces dermatitidis表面アドヘシンWI−1;Cryptococcus neoformansのGXMおよびそのペプチドミモトープ、ならびにマンノプロテインCandida albicans hsp90−CA、65−kDaマンノプロテイン(MP65)、分泌アスパルチルプロテイナーゼ(Sap)、Als1p−N、Als3p−N;Aspergillus Asp f16、Asp f2、Der p1、およびFel d1、rodlet A、PEP2、Aspergillus HSP90、90−kDaカタラーゼ;Plasmodium apical膜抗原1(AMA1)、25−kDa有性世代タンパク質(Pfs25)、赤血球膜タンパク質1(PfEMP1)、スポロゾイト周囲タンパク質(CSP)、メロゾイト表面タンパク質−1(MSP1);LeishmaniaシステインプロテイナーゼIII型(CPC)、リボソームタンパク質(LRP)、A2抗原、ヌクレオソームヒストン、HSP20、G46/M−2/PSA−2前鞭毛型表面タンパク質、L小児LACK抗原、GP63、LmSTI1、TSA、P4、NH36、papLe22;Trypanosomeベータチューブリン(STIB806)、微小管結合タンパク質(MAP p15)、システインプロテアーゼ(CP);クリプトスポリジウム表面タンパク質gp15およびgp40、Cp23抗原、p23;Toxoplasma gondii表面抗原1(TgSAG1)、プロテアーゼインヒビター−1(TgPI−1)、表面関連タンパク質MIC2、MIC3、ROP2、GRA1〜GRA7;Pneumocystis carinii主要表面糖タンパク質(MSG)、p55抗原;Schistosomiasis mansoni Sm14、21.7およびSmFim抗原、テグメントタンパク質Sm29、26kDa GST,Schistosoma japonicum、SjCTPI、SjC23、Sj22.7、またはSjGST−32が挙げられる。
【0101】
ある種の実施形態では、本明細書に記載される通りに投与される組換えポックスウイルスは、被験体において免疫応答を誘発する抗原を含む。ある種の実施形態では、ポックスウイルスは、サイトカインまたは共刺激分子をさらに含んでいてよい。サイトカイン、例えば、IL−2、IL−6、IL−12、IL−15、または共刺激分子、例えば、B7.1、B7.2をアジュバンドとして使用してよい。ある種の実施形態では、サイトカインまたは共刺激分子のどちらかを、該分子をコードする遺伝子の組換えポックスベクターへの共挿入(co−insertion)、または抗原を発現する組換えポックスウイルスと混合される第2の組換えポックスウイルスを介して、共投与(co−administer)することが可能である。代わりに、サイトカインを宿主に別個に、全身的に投与することが可能である。
【0102】
ある種の実施形態では、抗原断片をコードする組換えポックスウイルスは、例えば、T細胞共刺激因子および/またはインターロイキン(IL)(例えば、IL−2、IL−4、IL−10、IL−12)、インターフェロン(IFN)(例えば、IFN−γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)またはアクセサリー分子(例えば、ICAM−1)などのサイトカインをコードするDNAなどの免疫調節因子を含むようにさらに改変される。ポックスウイルスベクターなどのかかる多価ベクターの構築は、本開示に基づく当分野の技術レベルの範囲内である。いくつかの場合、多価ベクターによるT細胞共刺激因子などの免疫調節剤および抗原の共発現が望ましいこともある。例えば、ワクチン有効性をブーストする免疫調節因子の実質的に純粋な調製物を投与することが望ましいこともある。
【0103】
ある種の実施形態では、ポックスウイルスに挿入するための核酸は、共刺激分子、アクセサリー分子、ならびに/またはサイトカインおよび/もしくは増殖因子をコードする遺伝子を含む。共刺激分子の例は、B7−1、B7−2、ICAM−1、CD40、CD40L、LFA−3、CD72、OX40L(OX40を伴なうかまたは伴なわない)を含むが、これらに限定されない。
【0104】
サイトカインおよび増殖因子の例には、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNFαおよびTNFβ)、トランスフォーミング増殖因子(TGFαおよびTGFβ)、上皮増殖因子(EGF)、幹細胞因子(SCF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血小板由来内皮細胞増殖因子、神経成長因子(NGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様増殖因子(IGF−IおよびIGF−II)、成長ホルモン、インターロイキン1〜15(IL−1〜IL−15)、インターフェロンα、β、γ(IFN−α、IFN−βおよびIFN−γ)、脳由来神経栄養因子、ニューロトロフィン3および4、肝細胞増殖因子、エリスロポエチン(erythropoictin)、EGF様マイトジェン、TGF様増殖因子、PDGF様増殖因子、メラニン細胞増殖因子、乳房由来増殖因子1、前立腺増殖因子、軟骨由来増殖因子、軟骨細胞増殖因子、骨由来増殖因子、骨肉腫由来増殖因子、グリア増殖促進因子、初乳塩基性増殖因子、内皮細胞増殖因子、腫瘍血管新生因子、造血幹細胞増殖因子、B細胞刺激因子2、B細胞分化因子、白血病由来増殖因子、骨髄単球性増殖因子、マクロファージ由来増殖因子、マクロファージ活性化因子、赤血球増強活性、ケラチノサイト増殖因子、毛様体神経栄養増殖因子、シュワン細胞由来増殖因子、ワクシニアウイルス増殖因子、ボンビキシン、neu分化因子、v−Sis、グリア増殖因子/アセチルコリン受容体誘導活性、トランスフェリン、ボンベシンおよびボンベシン様ペプチド、アンジオテンシンII、エンドセリン、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)およびANF様ペプチド、血管作動性腸管ペプチド、RANTES、ブラジキニンおよび関連増殖因子が含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
好ましい実施形態の一部では、共刺激分子、増殖因子、アジュバンドまたはサイトカインは、IL−1、IL−2、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18、IL−23、IL−27、B7−1、B7−2、B7−H3、LFA−3、B7−H3、CD40、CD40L、ICOS−リガンド、OX−40L、4−1BBL、GM−CSF、SCF、FGF、Flt3−リガンド、CCR4、QS−7、QS−17、QS−21、CpGオリゴヌクレオチド、ST−246、AS−04、LT R192G変異体、モンタニドISA 720、熱ショックタンパク質、合成マイコバクテリアコードファクター(CAF01)、脂質A模倣体、Salmonella enterica血液型亜型 Typhimuriumフラゲリン(FliC)、モンタニド720、レバミソール(LMS)、イミキモド、ジフテリア毒素、IMP321、AS02A、AS01B、AS15−SB、アルハイドロゲル、モンタニドISA、水酸化アルミニウム、MF59、ISCOMATRIX、MLPA、MPLおよび他のTLR−4リガンド、MDPおよび他のTLR−2リガンド、AS02A、AS01B、熱不安定性毒素LTK63およびLT−R192Gである。
【0106】
いくつかの実施形態では、タンパク質全体ではなく抗原ドメインを発現する核酸を提供する。例えば、免疫反応が所望される場合、免疫反応を刺激するために必要な断片のみが、コードされることを必要とする。本明細書に記載の共刺激分子、アクセサリー分子およびサイトカインは、これをコードする核酸を同じかまたは異なる組換えポックスウイルスベクターに挿入することによって、宿主に全身的に投与できるアジュバントとして有用である。1つの実施形態では、腫瘍関連抗原と組み合わせて、B7、LFA−3およびICAM−1を含むポックスウイルスベクターを投与する。さらなる実施形態では、ポックスウイルスは、OX40Lも含む。ポックスウイルスと別々に投与できる他の有用なアジュバントは、例えば、RIBI Detox(Ribi Immunochemical)、QS21(Aquila)、不完全フロイントアジュバントである。
【0107】
いくつかの実施形態では、CD4およびCD8T細胞の両方の活性化を誘導する、TRICOMとしても公知のB7−1、ICAM−1およびLFA−3を発現するポックスウイルスを提供する(米国特許第6,045,802号;Hodgeら、J.Natl.Cancer Inst.92巻:1228〜39頁(2000年);Hodgeら、Cancer Research 59巻:5800〜07頁(1999年))。OX40は、ナイーブT細胞ではなく、遭遇した抗原を有するT細胞の第一の共刺激物質であり、T細胞トレランスが誘導された後に、T細胞の増殖を促進する。(Bansal−Pakalら、Nature Med.7巻:907〜12頁(2001年))。OX40Lは、a)CD4およびCD8T細胞の長期の増殖を持続させ、b)IL−4の発現を変化させることなしに、CD4およびCD8T細胞の両方からのIL−2、IGN−γおよびTNF−αなどのTh1サイトカインの産生を増強させ、c)T細胞をアポトーシスから保護することによって、T細胞の活性化中に役割を果たす。ある種の実施形態では、B7−1、ICAM−1、LFA−3およびOX40Lの組合せにより、ナイーブおよびエフェクターT細胞の最初の活性化が増強され、次いで持続活性化がさらに強化される。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポックスウイルスは、標的細胞において低い複製効率を有する。ポックスウイルスベクターの低い複製効率および非組み込み型の細胞質性の性質の結果として、ベクター系は、持続した複製および他の細胞の感染を引き起こさない。したがって、ポックスウイルスに感染した細胞は、標的細胞が存在する場所から離れた場所で、宿主中の細胞に不利に影響することはない。
【0109】
いくつかの実施形態では、改変したポックスウイルスは、標的細胞の特異性、感染経路、感染速度、複製速度、ビリオン集合の速度および/またはウイルスの拡散速度などのウイルスの生活環の側面に関係する変更した特徴を有することもできる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポックスウイルスは、宿主において宿主細胞に感染することができる。宿主細胞は、ポックスウイルスによる感染を受けやすく、抗原に対する宿主の免疫応答を誘発するのに十分なレベルで、そこに挿入された任意の外来性遺伝子(例えば抗原をコードする)を含むポックスウイルスゲノムを発現できる任意の細胞である。
【0111】
本明細書に記載のポックスウイルスは、任意の宿主に使用することができる。いくつかの実施形態では、宿主は、トリ、サカナなどの非哺乳動物の宿主である。いくつかの実施形態では、宿主は哺乳動物である。哺乳動物には、ヒトおよびチンパンジーなどの霊長類、ウマ、ウシ、ブタなどの家畜、イヌおよびネコなどのペットならびにマウス、ラットおよびハムスターなどのげっ歯類が挙げられる。
【0112】
標的宿主細胞に送達される遺伝子を保有するウイルスベクターの導入は、当業者に公知の任意の方法によってもたらすことができる。
【0113】
弱毒化または組換えウイルスなどのほとんどのウイルスワクチンは、細胞培養系から製造される。ウイルス/ワクチンの産生に使用する細胞は、細胞株、すなわちバイオリアクター中の単一細胞の懸濁培養物、または組織培養フラスコもしくはローラーボトルの細胞支持体表面上の単層のいずれかとして、インビトロで連続的に増殖する細胞であってよい。細胞株だけでなく一次動物細胞も、ワクチンの製造に使用することができる。例えば、コードポックスウイルス亜科、特にMVAは、一次または二次ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の細胞培養物中で増殖させられる。細胞は、10から12日間インキュベートしたニワトリの卵の胚から得る。胚の細胞を、次いで分離および精製する。これらの一次CEF細胞は、直接的にまたは二次CEF細胞として1つのさらなる細胞継代の後で使用することができる。その後に、一次または二次CEF細胞を、MVAに感染させる。MVAの増殖のために、感染した細胞を37℃で2〜3日間インキュベートする(例えば、Meyer,H.ら、1991年;J.of General Virology 72巻、1031〜1038頁;Sutterら、1994年、Vaccine、12巻、11号、1032〜1040頁を参照されたい)。多くのウイルスワクチンが、CEF細胞において連続的に継代することによって、疾患を引き起こす毒性ウイルスを弱毒化することにより作られるため、CEF細胞がしばしば使用される。ウイルスがヒト起源の細胞において複製能力をもつようになり得る懸念があるため、WVAなどの弱毒化したウイルスは、好ましくはヒト細胞上で増殖させない。ヒトに投与する場合、特に個人の免疫力が低下している場合、ヒト細胞中で複製する能力を回復したウイルスは、健康の危険性を表す。この理由から、ヒトへの使用を意図する場合、MVAなどのいくつかの弱毒化したウイルスは、CEF細胞からもっぱら製造する。さらに、CEF細胞は、これらの細胞中でのみ増殖するウイルス、例えばトリポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、ALVAC、鶏痘ウイルスおよびNYVACなどのトリウイルスに使用する。
【0114】
ある種の実施形態では、組換えウイルスに感染した、表皮上皮細胞、線維芽細胞または樹状細胞などの宿主細胞は、抗原(複数可)を発現し、免疫賦活性分子(複数可)を追加的に発現することができる。これらの実施形態では、抗原は、感染した宿主細胞の細胞表面で発現することができる。免疫賦活性分子は細胞表面で発現でき、または宿主細胞によって活発に分泌することができる。
【0115】
抗原および免疫賦活性分子の両方の発現により、免疫を監視する(immunosurveilling)特異的T細胞に必要なMHC拘束ペプチドおよび皮膚中のT細胞への適切なシグナルがもたらされ、抗原認識および抗原特異的T細胞の増殖またはクローン増殖を助けることができる。全体の結果は、免疫系の上方制御となり得る。ある種の実施形態では、免疫応答の上方制御は、例えば、疾患原因因子(がん細胞など)または疾患原因因子に感染した細胞(ウイルス、細菌、真菌または原虫に感染した細胞など)を死滅できるかまたはその増殖を阻害できる、Th1もしくはTh2 CD4ヘルパーT細胞媒介性またはCD8細胞傷害性Tリンパ球が挙げられる抗原特異的ヘルパーTリンパ球および/または細胞傷害性リンパ球の増加である。ある種の実施形態では、免疫賦活は、IgM、IgGおよび/またはIgAなどの1つまたは複数の抗体クラスの産生を含む抗体応答も含み得る。
【0116】
免疫応答を決定するための方法は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、ウイルス性病変を試験して、ウイルスおよび/または抗原への免疫応答の発生を決定することができる。いくつかの実施形態では、インビトロのアッセイを使用して、免疫応答の発生を決定することができる。かかるインビトロのアッセイの例には、ELISAアッセイおよび細胞傷害性T細胞(CTL)アッセイが挙げられる。いくつかの実施形態では、処置していない被験体における抗体の量と比較した、生の改変した非複製性または複製障害性ポックスウイルス(抗原を含む)を投与することによって処置した被験体の血清中の抗原を特異的に認識する抗体の相対量を検出および/または定量化することによって、免疫応答を測定する。
【0117】
試料中の抗体および抗体フィルターをアッセイするための技法は、当技術分野で公知であり、例えば、サンドイッチアッセイ、ELISAおよびELISpotが挙げられる。抗体には、抗体の一部、哺乳動物化(例えば、ヒト化)抗体、組換えまたは合成抗体ならびにハイブリッドおよび単鎖抗体が挙げられる。
【0118】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方は、免疫エフェクターまたはその抗原断片を用いて免疫化することによって得る。いずれかのタイプもイムノアッセイに利用することができる。両タイプの血清を得る方法は、当技術分野で周知である。
【0119】
ポリクローナル血清は、有効量の免疫エフェクターまたはその抗原部分を適した実験動物に注射し、動物から得た血清を集め、任意の公知の免疫吸着剤技法によって特異的な血清を分離することによって比較的容易に調製される。この方法によって産生された抗体は、任意のタイプのイムノアッセイに実質的に利用することができる。
【0120】
イムノアッセイにおけるモノクローナル抗体の使用は、それらを大量に産生できる能力および産物の均一性の理由から好ましい。不死細胞株および免疫原性の調製物に対して感作させたリンパ球を融合させることによって得られる、モノクローナル抗体産生用のハイブリドーマ細胞株の調製は、当業者に周知の技法によって達成することができる。
【0121】
他の実施形態では、ELISAアッセイは、当技術分野で公知の方法を用いて、アイソタイプの特異抗体のレベルを決定するために使用することができる。CTLアッセイは、ある種の抗原を発現する標的細胞の特異的な溶解を測定して、CTLの溶解活性を決定するために使用することができる。
【0122】
イムノアッセイは、試料免疫細胞の活性化(例えば、活性化の程度)を測定するために使用することができる。試料免疫細胞とは、ヒト患者、ヒトドナー、動物または組織培養した細胞株由来が挙げられる、任意の供給源由来の試料中に含まれる免疫細胞を意味する。免疫細胞試料は、末梢血、リンパ節、骨髄、胸腺、インサイチューのもしくは切除した腫瘍が挙げられる任意の他の組織の供給源、または組織もしくは器官培養物から得ることができる。試料は、分析の前に、分画または精製して特定の免疫細胞サブセットを産生または濃縮することができる。標準的な技法によって、免疫細胞をそれらの供給源から分離および単離することができる。
【0123】
免疫細胞は、非休止細胞および休止細胞の両方、ならびにアッセイできる免疫系の細胞を含み、これに限定されないが、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、顆粒球、マスト細胞、血小板、ランゲルハンス細胞、幹細胞、樹状細胞および末梢血単核細胞が挙げられる。
【0124】
測定できる免疫細胞活性は、これに限定されないが、(1)細胞またはDNA複製の測定による細胞増殖、(2)γIFN、GM−CSFまたはTNFアルファ、IFNアルファ、IL−6、IL−10、IL−12などのサイトカインの特異的測定を含む増強したサイトカインの産生、(3)細胞媒介性標的死滅または溶解、(4)細胞分化、(5)免疫グロブリンの産生、(6)表現型の変化、(7)走化性因子の産生または走化性、これは、走化性を伴なうケモタクチン(chemotactin)に応答する能力を意味する、(8)いくつかの他の免疫細胞型の活性を阻害することによる免疫抑制、(9)IP−10などのケモカインの分泌、(10)共刺激分子(例えば、CD80、CD86)および成熟分子(例えば、CD83)の発現、(12)クラスII MHC発現の上方制御、および(13)異常な活性化の指標として、ある種の状況下における活性化した免疫細胞の断片化を意味するアポトーシスが挙げられる。
【0125】
レポーター分子は、記載した多くの免疫アッセイに使用することができる。レポーター分子は、その化学的性質によって、抗原結合抗体の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルをもたらす分子である。検出は、定性的または定量的のいずれかであってよい。このタイプのアッセイにもっとも普通に使用されるほとんどのレポーター分子は、酵素、フルオロフォアまたは放射性核種含有分子(すなわち、放射性同位元素)および化学発光分子のいずれかである。酵素イムノアッセイの場合、酵素は、一般的にグルタルアルデヒドまたはペリオデートを用いて、二次抗体に結合体化される。しかし、容易に認識されるように、当業者が容易に利用できる幅広い様々な異なる結合体化の技法が存在する。一般的に使用される酵素には、とりわけ、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。特異的な酵素とともに使用される基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解に際した、検出可能な色の変化の産生について選択する。適した酵素の例には、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼが挙げられる。上記の色素形成基質ではなく、蛍光産物を産生する蛍光発生基質を採用することもできる。全ての場合において、酵素標識した抗体を、最初の抗体−抗原複合体に添加し、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。適切な基質を含む溶液を、次いで抗体−抗原−抗体の複合体に添加する。基質は、二次抗体に結合した酵素と反応することになり、定性的な視覚的シグナルがもたらされ、これにより、通常、分光測定でさらに定量化でき、試料中に存在した抗原の量の指摘が可能になる。代替的に、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光化合物は、それらの結合能を変更することなしに、抗体と化学的にカップルすることができる。特定の波長の光による照明によって活性化させたとき、蛍光色素標識した抗体は、光エネルギーを吸収し(これは、分子における興奮性の状態を誘導する)、続いて光学顕微鏡で視覚的に検出できる特徴的な色で光を放出する。蛍光標識した抗体は、最初の抗体−抗原複合体と結合することができる。結合しなかった試薬を洗い落した後、残っている3次複合体を次いで適切な波長の光に曝し、観察される蛍光は、目的の抗原の存在を示す。
【0126】
いくつかの一般的な免疫アッセイの例には、以下のものが挙げられる。
【0127】
細胞増殖アッセイ:活性化した免疫細胞の増殖は、細胞数、細胞重量によって、または放射標識した核酸、アミノ酸、タンパク質もしくは他の前駆体分子の組込みによって測定したときの、細胞数、細胞成長、細胞分裂または細胞増殖の増加を含むことを意図する。1つの例として、DNA複製は、放射性同位元素標識の組込みによって測定する。いくつかの実施形態では、刺激した免疫細胞の培養物は、トリチウム化チミジン(H−Tdr)、すなわち新しく合成したDNA中に組み込まれるヌクレオシド前駆体を用いて培養物をパルス標識する(pulse−labeling)ことによりDNA合成によって測定することができる。チミジンの組み込みにより、通常、細胞分裂の速度に直接比例するDNA合成速度の定量的な測定が可能になる。培養した細胞の複製DNA中に組み込まれたH標識したチミジンの量は、液体シンチレーション分光光度計においてシンチレーションのカウントによって決定する。シンチレーションのカウントにより、1分ごとのカウント(cpm)におけるデータが生成し、次いで免疫細胞の応答性の標準的な測定として使用することができる。休止免疫細胞培養物におけるcpmを、予備刺激した(primed)免疫細胞のcpmから引くか、または予備刺激した免疫細胞のcpmを休止免疫細胞培養物におけるcpmで割ることができ、これにより刺激のインデックス比が生成することになる。
【0128】
フローサイトメトリーを使用して、光散乱、コールター体積および蛍光によりDNAを測定することによって増殖を測定することもでき、全ては当技術分野で周知の技法である。
【0129】
増強したサイトカイン産生アッセイ:免疫細胞刺激の測定は、サイトカイン、リンホカインまたは他の増殖因子を分泌する細胞の能力である。γIFN、GM−CSFまたはTNFアルファなどのサイトカインについての特異的測定を含むサイトカインの産生は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、バイオアッセイまたはメッセンジャーRNAレベルの測定によって行うことができる。一般的に、これらのイムノアッセイを用い、測定されるサイトカインに対するモノクローナル抗体を使用して、サイトカインに特異的に結合させ、これによってサイトカインを同定する。イムノアッセイは当技術分野で周知であり、フォワードサンドイッチイムノアッセイ、リバースサンドイッチイムノアッセイおよび同時イムノアッセイなどの競合的アッセイおよび免疫測定アッセイの両方を挙げることができる。
【0130】
上記の各アッセイにおいて、試料含有サイトカインを、サイトカインがモノクローナル抗体に結合するために十分な条件下および時間で、サイトカイン特異的モノクローナル抗体と共にインキュベートする。一般的に、可能な限り多くのサイトカインおよび抗体が結合するのに十分なインキュベーション条件を実現するのが望ましい。なぜならば、これによりシグナルが最大化するためである。もちろん、抗体の具体的な濃度、インキュベーションの温度および時間、ならびに他のかかるアッセイ条件は、試料中のサイトカイン濃度、試料の性質などを含む様々な因子によって変えることができる。当業者は、日常の実験を使用することによって、各決定のために操作的および最適なアッセイ条件を決定することができる。
【0131】
細胞媒介性標的細胞溶解アッセイ:免疫細胞の活性化の程度のための別のタイプの指標は、免疫細胞媒介性標的細胞溶解であり、これは、細胞傷害性Tリンパ球活性、アポトーシスおよび活性へと刺激された非休止免疫細胞から分泌された分子による標的溶解の誘導を含む、任意のタイプの細胞死滅を包含することを意味する。細胞媒介性リンパ球溶解の技法は、典型的には51Cr標識した標的細胞を溶解するための、刺激した免疫細胞の能力を測定する。細胞傷害性は、対照標的細胞から放出された51Crの割合と比較した、特異的な標的細胞において放出された51Crの割合として測定する。細胞死滅は、標的細胞の数を数えることによって、または標的細胞増殖の阻害を定量化することによって測定することもできる。
【0132】
細胞分化アッセイ:免疫細胞活性の別の指標は、免疫細胞の分化および成熟である。細胞分化は、いくつかの異なる様式で評価することができる。1つのかかる方法は、細胞の表現型を測定することによる。免疫細胞の表現型および任意の表現型の変化は、様々な免疫細胞型の特徴を示す膜タンパク質と結合するモノクローナル抗体を用いて、免疫蛍光染色の後にフローサイトメトリーによって評価することができる。
【0133】
細胞分化を評価する第2の手段は、細胞の機能を測定することによる。これは、酵素、mRNA、遺伝子、タンパク質または細胞内のもしくは細胞から分泌された他の代謝物の発現を測定することによって、生化学的に行うことができる。バイオアッセイも、機能的な細胞分化を測定するために使用することができる。
【0134】
免疫細胞は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清を用いて検出できる様々な細胞表面分子を発現する。分化または活性化を経た免疫細胞は、培養細胞の固定したスミアにおいて、直接免疫蛍光法により特徴的な細胞表面タンパク質の存在について染色することによって数え上げることもできる。
【0135】
成熟B細胞は、例えば、蛍光色素で標識したモノクローナル抗体を用いて、CD19およびCD20を含む細胞表面抗原によるイムノアッセイにおいて測定でき、または酵素をこれらの抗原に使用することができる。形質細胞に分化したB細胞は、培養細胞の固定したスミアにおいて、直接免疫蛍光法により細胞内免疫グロブリンについて染色することによって数え上げることができる。
【0136】
免疫グロブリン産生アッセイ:B細胞の活性化により、少ないが検出可能なポリクローナル免疫グロブリンの量が生じる。培養から数日後に、これらの免疫グロブリンは、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)方法によって測定することができる。
【0137】
免疫グロブリンを産生するB細胞は、リバース溶血プラークアッセイによって定量化することもできる。このアッセイでは、赤血球をヤギまたはウサギ抗ヒト免疫グロブリンでコートする。これらの免疫グロブリンを、活性化した免疫グロブリン産生型リンパ球および半固体(semisolid)寒天と混合し、補体を添加する。溶血プラークの存在は、免疫グロブリン産生型細胞が存在することを示す。
【0138】
走化性因子アッセイ:走化性因子は、血管、組織または器官の中または外への免疫細胞の移動を誘導または阻害する分子であり、細胞移動因子が挙げられる。免疫細胞の走化性因子は、アッセイする走化性因子(複数可)に対して標識したモノクローナル抗体を用いて、フローサイトメトリーによってアッセイすることができる。走化性因子は、ELISAまたは他のイムノアッセイ、バイオアッセイ、メッセンジャーRNAレベルによって、および特殊化した移動チャンバー中の免疫細胞の移動の細胞計数などの直接的な測定によって、アッセイすることもできる。
【0139】
アドバック(addback)アッセイ:新鮮な末梢血単核細胞に添加したとき、エクスビボで活性化した自己細胞は、末梢血単核細胞に事前に曝した抗原である「リコール」抗原に対して増強した応答を示す。予備刺激または刺激した免疫細胞は、一緒に培養したときに「リコール」抗原に対する他の免疫細胞応答を増強するはずである。これらのアッセイは、「ヘルパー」または「アドバック」アッセイと称する。このアッセイでは、予備刺激または刺激した免疫細胞を、無処理の、通常は自己免疫細胞に添加し、無処理細胞の応答を決定する。添加される予備刺激した細胞は、それらの増殖を防ぐために照射でき、無処理細胞の活性の測定を単純化する。これらのアッセイは、ウイルスに曝した血液について細胞を評価するのに特に有用であり得る。アドバックアッセイは、本明細書に記載のような増殖、サイトカイン産生および標的細胞の溶解を測定することができる。
【0140】
免疫応答を決定するための上記の方法および他の追加の方法は、当技術分野で周知である。
【0141】
皮膚は、高濃度の抗原提示細胞(APC)、APC前駆体およびこの組織内で見出される免疫細胞のために、抗原の送達に魅力的な標的部位に相当し、増強した保護的免疫応答が生じる。ワクシニア遺伝子に対する比類なき強い免疫応答をもたらす、ワクシニアウイルスによるケラチノサイトの自然の感染工程を再現することにより、本明細書に記載の方法は、他のウイルス、細菌、真菌およびがん抗原などの、本明細書で提供されるポックスウイルスによって発現される異種抗原に対する被験体の免疫力を同様に増強する。結果として生じる免疫応答は、免疫化した被験体を保護でき、または被験体が既に疾患を発症していれば、抗原提示因子によって引き起こされる疾患の緩和また処置に役立ち得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原を含む組換えポックスウイルスは、任意の適した希釈剤または賦形剤が挙げられる、1つまたは複数の他の薬学的に許容されるキャリアをさらに含むことができる組成物の形態で投与することができる。好ましくは、薬学的に許容されるキャリアは、それ自体が生理応答、例えば、免疫応答を誘導しない。もっとも好ましくは、薬学的に許容されるキャリアは、任意の有害な、または望ましくない副作用を引き起こさず、および/または過度の毒性を引き起こさない。薬学的に許容されるキャリアには、これに限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、無菌等張水性緩衝液およびそれらの組合せが挙げられる。薬学的に許容されるキャリア、希釈剤および賦形剤の追加の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、N.J.、最新版;全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0143】
改変したポックスウイルスは、好ましくは表皮の機械的な破壊によって(例えば、皮膚乱切、引っ掻き、擦過または表面の切断によって)投与する。皮膚を破壊する、および皮膚の表皮中に物質を堆積させるための方法およびデバイスは、当技術分野で公知である。皮膚を破壊するためのデバイスの例には、乱切針、皮下針または擦過器が挙げられる。
【0144】
本発明のポックスウイルスおよびその組成物は、任意の薬学的に許容される形態で、皮膚の表皮区画中に送達することができる。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスおよびその組成物を皮膚に適用し、次いで、表皮を機械的に破壊するデバイス(例えば、擦過器)を、皮膚およびポックスウイルス上で移動させるか、またはそれで擦る。ある種の実施形態では、乱切針または皮下針は、表皮を破壊するために使用することができる。所望の結果をもたらすために最小量の擦過/機械的破壊を用いるのが好ましい。選択したポックスウイルスおよび/またはその組成物に適切な量の擦過/機械的破壊の決定は、当技術分野の通常の技術内である。別の実施形態では、ポックスウイルスおよび/またはその組成物は、適用に先立って、擦過デバイスの擦過表面に乾燥した形態で適用することができる。この実施形態では、再構成液体を送達部位で皮膚に適用し、ポックスウイルス(組成物)コートした擦過デバイスを、再構成液体の部位で皮膚に適用する。次いでそれを、皮膚上で移動させるか、またはそれで擦り、ポックスウイルス(組成物)が、皮膚の表面上において再構成液体中に溶解でき、擦過により同時に送達され得るようにする。代替的には、再構成液体をデバイス(例えば、乱切針、皮下針または擦過器)中に含めることができ、デバイスを表皮の機械的破壊のために皮膚に適用したときに、放出されてポックスウイルス(組成物)を溶解することができる。ある種のポックスウイルス(複数可)(組成物)は、ゲルの形態でデバイス(例えば、擦過デバイス)上をコートすることもできる。
【0145】
いくつかの実施形態では、表皮のスペースを正確に標的化するためのデバイス(例えば、乱切針、皮下針または擦過器)が提供される。これらのデバイスは、中空ではない小突起(microprotrusion)または中空小突起を有することができる。小突起は、最大約1500ミクロンの長さを有することができる。いくつかの実施形態では、小突起は、約200から1500ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、小突起は、約300から1000ミクロンまたは約400から800ミクロンの範囲の長さを有する。
【0146】
本明細書に記載の方法に使用できるデバイス(例えば、乱切針、皮下針または擦過器)は、好ましくは真皮に貫入することなしに表皮に貫入して、皮膚を破壊できるデバイスである。いくつかの実施形態では、デバイスは、表皮全体に貫入することなしに角質層に貫入する。
【0147】
ある種の実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて投与するポックスウイルスおよび組成物は、擦過に先立って、擦過と同時に、または擦過後に皮膚に適用することができる。
【0148】
ある種の実施形態では、ポックスウイルスおよびその組成物を被験体の表皮中に送達するための方法が提供され、上記方法は、患者の皮膚層の外側またはデバイス(例えば、擦過器または乱切針もしくは皮下針)をポックスウイルスおよびその組成物でコートするステップ、および、被験体の皮膚を横切ってデバイスを移動させ、被験体の生存可能な表皮中にポックスウイルスおよびその組成物を移入させるのに十分な溝を残す機械的破壊をもたらすステップを含む。
【0149】
所望の表皮の機械的破壊を達成するために、デバイス(例えば、擦過器または乱切針もしくは皮下針)は、少なくとも1回、被験体の皮膚を横切って移動させるべきである。被験体の皮膚は、方向を変えて破壊することができる。デバイスは、ポックスウイルスおよび/またはその組成物をより効果的に吸収させ、それによって、より少ないポックスウイルスおよびその組成物を被験体の皮膚に適用すること、またはより少ないポックスウイルスおよびその組成物でデバイスをコートすることが可能になる。デバイスの表面は、被験体に送達するのに望ましいポックスウイルスおよび/またはその組成物でコートすることができる。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスおよび/またはその組成物は、デバイスの擦過表面上に配置される粉末であってよい。ある種の実施形態では、送達するポックスウイルスおよび/またはその組成物は、被験体の皮膚上でのデバイスの適用および移動に先立って、被験体の皮膚に直接適用することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、デバイス(例えば、乱切針、皮下針または擦過器)および小突起は、投与する物質と反応しないプラスチック材料から作ることができる。適したプラスチック材料には、例えば、当技術分野で公知のようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステルおよびポリカーボネートが挙げられる。代替的に、小突起は、ステンレススチール、タングステンスチール、ニッケルの合金、モリブデン、クロム、コバルト、チタン、およびそれらの合金などの金属、またはシリコン、セラミックおよびガラスポリマーなどの他の材料から作ることができる。金属小突起は、シリコンウェーハのフォトリソグラフィエッチング(photolithographic etching)または、当技術分野で公知のような先端がダイアモンドのミルを用いたマイクロマシニングと同様の様々な技法を用いて製造することができる。小突起は、当技術分野で公知のような標準的な技法を用いて、シリコンウェーハのフォトリソグラフィックエッチングによって製造することもできる。それらは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第10/193,317号に記載のような、射出成形工程によりプラスチックで製造することもできる。
【0151】
小突起の長さおよび厚さは、投与する特定の物質、およびデバイスを適用する場所における表皮の厚さに基づいて選択する。小突起は、真皮全体を突き通すかまたは通り抜けることなしに、表皮に貫入する。いくつかの実施形態では、突起は、実質的に表皮全体を突き通すかまたは通り抜けることなしに、角質層に貫入する。
【0152】
いくつかの実施形態では、皮膚上の送達部位を準備する方法は、所望の場所における患者の皮膚に対してデバイス(例えば、マイクロ擦過器、乱切針または皮下針)を配置するステップを含む。デバイスは、皮膚に対して穏やかに押し、次いで皮膚上または皮膚を横切って移動させる。デバイスのストロークの長さは、所望の送達面積によって定義され、送達部位の所望の大きさによって変えることができる。送達部位の寸法は、意図する結果を成し遂げるように選択し、送達する物質および物質の形態によって変えることができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、約2から15センチメートル(cm)移動させる。いくつかの実施形態では、デバイスは、約4cmから約300cmの表面面積を有する機械的に破壊された表皮部位をもたらすように移動させる。
【0153】
ある種の実施形態では、デバイスを次いで皮膚から持ち上げ、機械的に破壊された表皮領域を曝し、組換えポックスウイルスおよびその組成物を、機械的に破壊された表皮領域に適用することができる。ある種の実施形態では、投与するポックスウイルスおよび/またはその組成物は、表皮の機械的破壊の前またはそれと同時のいずれかに、皮膚の表面に適用することができる。
【0154】
表皮の機械的破壊の程度は、移動中に適用する圧力およびデバイス(例えば、乱切針、皮下針または擦過器)による反復の数に依存する。いくつかの実施形態では、デバイスは、最初の通過を行った後に皮膚から持ち上げ、実質的に同じ場所および位置の開始位置上に戻して置く。デバイスは、2回目は同じ方向および同じ距離で移動させる。ある種の実施形態では、最初の通過を行った後に、皮膚から持ち上げることなしに、方向を変更して、同じ部位を横切って反復して移動させる。一般的に、2回以上の通過をデバイスにより行う。いくつかの実施形態では、デバイスを、ポックスウイルスおよび/またはその組成物の送達を増強させるのに適した深さまで表皮を破壊するのに十分な時間の間、同じ方向のみ、グリッド様パターン、環状パターン、またはいくつかの他のパターンで、前後左右に動かす(swipe)ことができる。
【0155】
機械的破壊によって表皮を破壊するための当技術分野で公知の任意のデバイスを、本明細書に記載の方法において使用することができる。これらには、例えば、短いマイクロ針または小突起のアレイを用いるマイクロ電気機械的(MEMS)デバイス、サンドペーパー様デバイス、スクレーパー、乱切針、皮下針などが挙げられる。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗原に対する免疫応答は、従来の注射経路と比較して、表皮の機械的破壊によって適用するとき、被験体に対して本明細書の議論のように構築したポックスウイルスを、約100倍から約100倍未満の間のpfu(プラーク形成単位)で投与することによって生じさせることができる。ある種の実施形態では、抗原に対する特異的な免疫応答は、従来の注射経路と比較して、表皮の機械的破壊によって適用するとき、約90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、20倍、10倍、5倍未満のポックスウイルスのpfuの間で投与することによって生じさせることができる。いくつかの実施形態では、組換えポックスウイルスの単回の堆積が、被験体において、長く持続する強力な抗原特異的免疫応答を誘発するのに必要である。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるポックスウイルスおよび/またはその組成物は、投薬計画、例えばそれに続く追加免疫の投与を伴う、ポックスウイルスおよび/またはその組成物の最初の投与において、投与することもできる。特定の実施形態では、ポックスウイルスおよび/またはその組成物の2回目の投与は、最初の投与後、2週間から1年、好ましくは1から6カ月のどこかで投与される。さらに、3回目の投与は、2回目の投与後に、および最初の投与から3カ月から2年、またはさらにより長く、好ましくは4から6カ月、または6カ月から1年後に、投与することができる。追加免疫の抗原は、同じポックスウイルスを用いて、あるいはタンパク質全体、タンパク質の免疫原性ペプチド画分、別の組換えウイルスベクターまたはタンパク質もしくはペプチドをコードするDNAとして、投与することができる。いくつかの実施形態では、異なるポックスウイルスを使用する。例えば、ワクシニアに続いて鶏痘などのトリポックス、またはその逆でもよい。いくつかの好ましい実施形態では、追加免疫での免疫化は必要ではない。
【0158】
本発明は、キットの使用も企図する。本発明の1つの態様では、ポックスウイルスおよび/またはその組成物を含む、薬学的パックまたはキットが提供される。1つの実施形態では、1つまたは複数の次の成分で満たした1つまたは複数の容器を含むキットが提供される:塩として乾燥させた形態(例えば、凍結乾燥)または溶液のいずれかで、抗原を含み、場合によっては共刺激分子を含む、生の改変された非複製性または複製障害性ポックスウイルス、場合によっては塩として乾燥した形態(例えば、凍結乾燥)または溶液のいずれかで、共刺激分子を含む第2ウイルス、場合によってはウイルス(複数可)を溶解または混合するための溶液またはゲル、および場合によってはアジュバント。いくつかの実施形態では、キットは、その上、表皮を破壊するためのデバイスを含む。かかるキットに付随するものは、キットの使い方についての説明書、および場合によっては医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定された形態の通知書であってよく、該通知書は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売に関する機関による承認を反映する。
【0159】
本発明は、疾患の処置方法も企図する。本方法は、被験体において抗原に対する免疫応答を刺激するステップを含む。本方法は、被験体において免疫応答を刺激するのに十分な量の抗原を含む、生の改変された非複製性または複製障害性ポックスウイルスを、それを必要とする被験体に投与するステップを含み、ポックスウイルスは、機械的に破壊された被験体の表皮に投与され、免疫応答の刺激により、抗原によって引き起こされる被験体の疾患が処置される。いくつかの実施形態では、被験体を、抗原を含むポックスウイルスの投与に先立って、抗原でチャレンジした。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗原でチャレンジされる危険か、または抗原により引き起こされる疾患を発症する危険がある被験体を保護するための方法が提供される。本方法は、被験体において抗原に対する免疫応答を刺激するステップを含み、これは、免疫応答を刺激するのに十分な量の抗原を含む、生の改変された非複製性または複製障害性ポックスウイルスを、それを必要とする被験体に投与するステップを含み、ここで、ポックスウイルスは、機械的に破壊された皮膚に投与され、免疫応答の刺激により、抗原によって引き起こされる疾患に対する被験体の保護が可能になる。いくつかの実施形態では、被験体は、抗原を含むポックスウイルスの投与に先立って、抗原でチャレンジしなかった。
【0161】
本明細書で使用するとき、疾患を「処置する」または「処置」とは、疾患を有する被験体の状態を改善することを意味する。これは、部分的または完全な改善を含むことができる。
【0162】
がんの場合、がんを「処置する」とは、がんまたは腫瘍細胞の増殖または転移を、完全または部分的に阻害すること、ならびにがんまたは腫瘍細胞の増殖または転移の任意の増加を阻害することを意味する。処置は、腫瘍の静止、部分的または完全な寛解を導くことができ、または腫瘍の転移性拡散を阻害することができる。
【0163】
感染性疾患の場合、感染性疾患を「処置する」とは、被験体において感染因子の負荷を完全または部分的に低下させることを意味する。負荷は、ウイルスの負荷であってよく、ウイルスの負荷を低下させることは、例えば、処置していない被験体と比較して、ウイルスに感染した細胞の数を減少させること、ウイルスの複製速度を低下させること、産生された新しいビリオンの数を減少させること、細胞中の全ウイルスゲノムコピー数を減少させることを意味する。負荷は、細菌、酵母、真菌、原虫、蠕虫または寄生生物の負荷であってよく、かかる負荷を低下させることは、例えば、処置していない被験体と比較して、宿主において細菌、真菌、原虫、蠕虫、酵母または寄生生物の数を減少させること、集団増殖速度を低下させること、被験体の体中に渡る拡散を低下させること、細菌、酵母、真菌、原虫、蠕虫または寄生生物によって産生される毒性産物の量を減少させることを意味する。
【0164】
疾患を発症することか、または本明細書に言及されるような感染にかかりやすくなることから被験体を「保護すること」またはその「保護」とは、被験体を部分的または完全に保護することを意味する。本明細書で使用するとき、「完全に保護する」とは、処置した被験体が、ウイルス、細菌、真菌、原虫、蠕虫、または寄生生物などの因子によって引き起こされるか、またはがん細胞によって引き起こされる疾患または感染を発症できないことを意味する。本明細書で使用するとき、「部分的に保護する」とは、被験体のある種のサブセットを、処置後に疾患または感染を発症することから完全に保護できること、または被験体が、処置していない被験体と同じ重症度を有する疾患または感染を発症できないことを意味する。
【0165】
被験体、好ましくはヒトにおいて、感染(または感染性疾患)を処置および/または予防する方法を、本明細書で提供する。本方法は、抗原および/またはその組成物を含む組換えポックスウイルスを、機械的に破壊された被験体の表皮に投与するステップを含む。これらの方法によって処置または予防できる感染または感染性疾患は、これに限定されないが、細菌、ウイルス、真菌、原虫、蠕虫および寄生生物が挙げられる感染因子によって引き起こされる。
【0166】
本明細書に記載の方法によって処置できるか、または本明細書に記載の方法により保護できるウイルスの例には、これに限定されないが、HIV、インフルエンザ、デング熱、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラ、マールブルグ、狂犬病、ハンタウイルス感染、ウエストナイルウイルス、SARS様コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV1およびHSV2)、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、アルファウイルス、セントルイス脳炎が挙げられる。
【0167】
処置できるか、または本明細書に記載の方法により保護できる他のウイルスは、これに限定されないが、エンテロウイルス(これに限定されないが、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどのピコルナウイルス科であるウイルスが挙げられる)、ロタウイルス、アデノウイルスならびにA、B、C、DおよびE型肝炎などの肝炎ウイルスが挙げられる。ヒトにおいて発見されたウイルスの具体的な例には、これに限定されないが、レトロウイルス科(例えば、HIV−1などのヒト免疫不全ウイルス(HTLV−III、LAVもしくはHTLV−III/LAVまたはHIV−IIIとも呼ばれる);およびHIV−LPなどの他の単離物);ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす菌株);トガウイルス科(例えば、馬脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えば、ブニヤウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);サイトメガロウイルス(CMV);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);イリドウイルス科(例えば、アフリカブタ熱ウイルス)ならびに他のウイルス急性喉頭気管支炎ウイルス、アルファウイルス属、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニパーウイルス、ノーウォークウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルスおよびトリインフルエンザが挙げられる。
【0168】
本明細書に記載のポックスウイルスおよび方法によって処置または予防できる細菌感染または疾患は、これに限定されないが、Mycobacterium tuberculosis、Salmonella typhi、Bacillus anthracis、Yersinia perstis、Francisella tularensis、Legionella、Chlamydia、Rickettsia typhiおよびTreponema pallidumが挙げられる細菌によって引き起こされる。
【0169】
処置できるか、または本明細書の方法により保護できる他の細菌には、これに限定されないが、Pasteurella species種、Staphylococci種およびStreptococcus種が挙げられる。グラム陰性細菌には、これに限定されないが、Escherichia coli、Pseudomonas種およびSalmonella種が挙げられる。感染性細菌の具体的な例には、これに限定されないが、Helicobacter pyloris、Borelia burgdorferi、Mycobacteria種(例えば、M.avium、M.intracellulare、M.kansaii、M.gordonae)、Staphylococcus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria monocytogenes、Streptococcus pyogenes(A群Streptococcus)、Streptococcus agalactiae(B群Streptococcus)、Streptococcus(ヴィリダンス群)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus(嫌気性種)、Streptococcus pneumoniae、病原性Campylobacter種、Enterococcus種、Haemophilus influenzae、corynebacterium diphtheriae、corynebacterium種、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringers、Clostridium tetani、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、Bacteroides種、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Treponema pertenue、LeptospiraおよびActinomyces israelliが挙げられる。
【0170】
本明細書に記載のポックスウイルスおよび方法を用いて、処置または予防できる真菌の疾患には、これに限定されないが、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Cryptococcus neoformans、Candida albicans、Aspergillus種が挙げられる。
【0171】
処置できるか、または本明細書に記載の方法により保護できる他の真菌には、これに限定されないが、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitisおよびChlamydia trachomatisが挙げられる。
【0172】
本明細書に記載のポックスウイルスおよび方法を用いて、処置または予防できる原虫の疾患または感染には、これに限定されないが、Malaria(Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariae)、Leishmania種、Trypanosome種(アフリカおよびアメリカ)、クリプトスポリジウム、イソスポラ種、Naegleria fowleri、Acanthamoeba種、Balamuthia mandrillaris、Toxoplasma gondiiおよびPneumocystis cariniiが挙げられる。
【0173】
本明細書に記載のポックスウイルスおよび方法を用いて、処置または予防できるがんまたは腫瘍には、これに限定されないが、メラノーマ、皮膚扁平上皮癌、基底細胞癌、乳がん、前立腺腺癌、前立腺上皮新形成、肺扁平上皮癌、肺腺癌、小細胞肺癌、上皮由来の卵巣がん、結腸直腸腺癌および平滑筋肉腫、胃腺癌および平滑筋肉腫、肝細胞癌、胆管癌、膵臓の管腺癌、膵内分泌部腫瘍、腎細胞癌、腎臓および膀胱の移行上皮癌、膀胱扁平上皮癌、乳頭様甲状腺がん、濾胞性甲状腺がん、脳がん(星状細胞腫、多形神経膠芽腫)が挙げられる。
【0174】
本明細書に記載の疾患を処置または予防するための方法は、追加の作用剤を投与するステップを含むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のがんを処置または予防するための方法(複数可)は、1つまたは複数の抗がん剤と組み合わせて使用することができる。本明細書に記載の薬学的組成物および投薬形態およびキットを含む、様々な実施形態で使用できる抗がん薬の例には、これに限定されないが、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾルハイドロクロライド;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロンアセテート;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アンスラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレンハイドロクロライド;ビスナフィドジメシレート;ビセレシン;ブレオマイシンサルフェート;ブレクイナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カプシタビン;カラセミド;カルベチメル;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシンハイドロクロライド;カルゼレシン;セデフィンゴル;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシンハイドロクロライド;デシタビン;デキソーマプラチン;デザグアニン;デアグアニンメシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシンハイドロクロライド;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンシトレート;ドロモスタノロンプロピオネート;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロールニチンハイドロクロライド;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシンハイドロクロライド;エルブロゾール;エソルビシンハイドロクロライド;エストラムスチン;エストラムスチンホスフェートナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドホスフェート;;エトプリン;ファドロゾールハイドロクロライド;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンホスフェート;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスクイドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビンハイドロクロライド;ヒドロキシ尿素;イダルビシンハイドロクロライド;イホスファミド;イルモフォシン;インターロイキン(interleulin)II(組換えインターロイキンIIまたはrIL2が挙げられる);インターフェロンアルファ2a;インターフェロンアルファ2b;インターフェロンアルファn1;インターフェロンアルファn3;インターフェロンベータIa;インターフェロンガンマIb;イプロプラチン;イリノテカンハイドロクロライド;ランレオチドアセテート;レトロゾール;リュープロリドアセテート;リアロゾールハイドロクロライド;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロンハイドロクロライド;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン;メクロレタミンオキシドハイドロクロライド;レサミンハイドロクロライド;メゲストロールアセテート;メレンゲストロールアセテート;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メチュレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロンハイドロクロライド;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシンサルフェート;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロクサントロンハイドロクロライド;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジンハイドロクロライド;ピューロマイシン;ピューロマイシンハイドロクロライド;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴールハイドロクロライド;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウムハイドロクロライド;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロクサントロンハイドロクロライド;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンシトレート;トレストロンアセテート;トリシリビンホスフェート;トリメトレキセート;トリメトレキセートグルクロネート;トリプトレリン;チュブロゾールハイドロクロライド;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチンサルフェート;ビンクリスチンサルフェート;ビンデシン;ビンデシンサルフェート;ビネピジンサルフェート;ビングリシネートサルフェート;ビンレウロシンサルフェート;ビノレルビンタルトレート;ビンロシジンサルフェート;ビンゾリジンサルフェート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシンハイドロクロライド、インプロスルファン、ベンゾデパ、カルボコン、トリエチレンメラムリン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリメチロールオメライニン(trimethylolomelainine)、クロマファジン、ノベムビチン、フェネステリン、トロホスファミド、エステルムスチン、クロロゾトシン、ゲムザル、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、アクラシノマイシン、アクチノマイシンF(1)、アザセリン、ブレオマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、6−ジアゾ−5−オキソ−1−ノルロイシン、ドキソルビシン、オリボマイシン、プリカマイシリ、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、チュベルシジン、ゾルビシン、デノプテリン、プテロプテリン、6−メルカプトプリン、アンシタビン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、エノシタビン、プルモジム、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、ベストラブシル、デフォファミド、デメコルチン、エルフォルニチン、エリプチニウムアセテート、エトグルシド、フルタミド、ヒドロキシ尿素、レンチナン、フェナメット、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、ラゾキサン、スピロゲルマニウム、タモキシフェン、タキソテレ、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよび関連する薬剤、20−エピ−1,25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生インヒビター;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背側化形態形成タンパク質1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン剤;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィディコリングリシネート;アポトーシス遺伝子調節因子;アポトーシス制御因子;アプリン酸;アラCDP−DL−PTBA;アルギニン脱アミノ酵素;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アクシナスタチン1;アクシナスタチン2;アクシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータアレチン;ベータクラマイシンB;ベツリン酸;bFGFインヒビター;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルフォスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリポックスIL−2;カペシタビン;カルボキサミドアミノトリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来のインヒビター;カルゼレシン;カゼインキナーゼインヒビター(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロールリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シスポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベスシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシン A;シクロペンタンスラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクフォスフェート;細胞溶解性因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメサゾン;デキシフォスファミド;デクスラゾキサン;デキシベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール、9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン、エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロールニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドホスフェート;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルニシンハイドロクロライド;ホルフェニメックス;ホルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテクサフィリン;ガリウムニトレート;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼインヒビター;ゲムシタビン;グルタチオンインヒビター;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビサセタミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫賦活ペプチド;インスリン様増殖因子1受容体インヒビター;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;イオドドキソルビシン;イポメアノール、4−;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン−Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナンスルフェート;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリンアミド7;ロバプラチン;ロムブリシン;ロメトレクソール;ロニダミン;ロソクサントロン;ロバスタチン;ロクソリビン;ルートテカン;ルテチウムテクサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシンインヒビター;マトリックスメタロプロテアーゼインヒビター;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミンド;MIFインヒビター;ミフェプリストン;ミルテホシン;ニリモスチム;ミスマッチ二重鎖RN
A;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽細胞増殖因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+マイオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子インヒビター;多発性腫瘍抑制因子1ベースの治療;マスタード抗がん剤;マイカペロキシドB;マイコバクテリアの細胞壁抽出物;マイリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節因子;窒素酸化抗酸化物質;ニトルリン;O6−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;オーラルサイトカイン誘導体;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オクサウノマイシン;タキセル;タキセル類似体;タキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルフォスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニルアセテート;ホスファターゼインヒビター;ピシバニル;ピロカルピンハイドロクロライド;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子インヒビター;白金錯体;白金化合物;白金トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソームインヒビター;プロテインAベースの免疫調節因子;プロテインキナーゼCインヒビター;プロテインキナーゼCインヒビター;微細藻類;タンパク質チロシンホスファターゼインヒビター;プリンヌクレオシドホスホリラーゼインヒビター;パープリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン結合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質転移酵素インヒビター;rasインヒビター;ras−GAPインヒビター;レテリプチン脱メチル化;レニウム(rheniuim)Re 186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス; ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1ミメティクス;セムスチン;老化由来インヒビター1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達インヒビター;シグナル伝達調節因子;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;ナトリウムフェニルアセテート;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞インヒビター;幹細胞分裂インヒビター(ibitors);スチピアミド;ストロメライシンインヒビター;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼインヒビター;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチンミメティクス;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;サイモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;チタノセンビクロリド;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳インヒビター;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害薬;チロホスチン;UBCインヒビター;ウベニメクス;泌尿生殖器洞由来の増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンクサルチン;ビタクシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコーブおよびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細菌感染(または疾患)を処置または予防するための方法(複数可)は、1つまたは複数の抗細菌剤と組み合わせて使用することができる。抗細菌剤には、これに限定されないが、アミノグリコシド、β−ラクタム剤、セファロスポリン、マクロライド、ペニシリン、キノロン、スルホンアミドおよびテトラサイクリンが挙げられる。抗菌剤の例には、これに限定されないが、アセダプソン、アセトスルホンナトリウム、アラメシン、アレキシジン、アムジノシリン、クラブラネートカリウム、アムジノシリン、アムジノシリンピボクシル、アミシクリン、アミフロキサシン、アミフロキサシンメシレート、アミカシン、アミカシンスルフェート、アミノサリチル酸、アミノサリチル酸ナトリウム、アモキシシリン、アムホマイシン、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、アパルシリンナトリウム、アプラマイシン、アスパラトシン、アストロマイシンスルフェート、アビラマイシン、アボパルシン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズロシリンナトリウム、バカンピシリンハイドロクロライド、バシトラシン、バシトラシンメチレンジサリシレート、バシトラシン亜鉛、バムベルマイシン、ベンゾイルパスカルシウム、ベリスロマイシン、ベタミシンスルフェート、ビアペネム、ビニラマイシン、ビフェナミンハイドロクロライド、ビスピリチオンマグスルフェックス、ブチカシン、ブチロシンサルフェート、カプレオマイシンスルフェート、カルバドックス、カルベニシリン二ナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、カルベニシリンフェニルナトリウム、カルベニシリンカリウム、カルモナムナトリウム、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファマンドールナフェート、セファマンドールナトリウム、セファパロール、セファトリジン、セファザフルールナトリウム、セファゾリン、セファゾリンナトリウム、セフブペラゾン、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフェピム、セフェピムハイドロクロライド、セフェテコール、セフィキシム、セフメノキシムハイドロクロライド、セフメタゾール、セフメタゾールナトリウム、セフォニシド一ナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォラニド、セフォタキシム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン、セフォテタン二ナトリウム、セフォチアムハイドロクロライド、セフォキシチン、セフォキシチンナトリウム、セフピミゾール、セフピミゾールナトリウム、セフピラミド、セフピラミドナトリウム、セフピロムスルフェート、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフタジジムナトリウム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムピボキセチル、セフロキシムナトリウム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、セファレキシンハイドロクロライド、セファログリシン、セファロリジン、セファロチンナトリウム、セファピリンナトリウム、セフラジン、セトシクリンハイドロクロライド、セトフェニコール、クロラムフェニコール、クロラムフェニコールパルミテート、クロラムフェニコールパントテン酸複合体、クロラムフェニコールナトリウムサクシネート、クロルヘキシジンホスファニレート、クロロキシレノール、クロルテトラサイクリンビスルフェート、クロルテトラサイクリンハイドロクロライド、シラスタチン、シノキサシン、シプロフロキサシン、シプロフロキサシンハイドロクロライド、シロレマイシン、クラリスロマイシン、クラブラン酸カリウム、クリナフロキサシンハイドロクロライド、クリンダマイシン、クリンダマイシンブドウ糖、クリンダマイシンハイドロクロライド、クリンダマイシンパルミチン酸ハイドロクロライド、クリンダマイシンホスフェート、クロファジミン、クロキサシリンベンザチン、クロキサシリンナトリウム、クロキシクイン、コリスチメテート、コリスチメテートナトリウム、コリスチンスルフェート、クーママイシン、クーママイシンナトリウム、サイクラシリン、サイクロセリン、ダルホプリスチン、ダプソン、ダプトマイシン、デメクロサイクリン、デメクロサイクリンハイドロクロライド、デメサイクリン、デノフンジン、ジアベリジン、ジクロキサシリン、ジクロキサシリンナトリウム、ジヒドロストレプトマイシンスルフェート、ジピリチオン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、ドキシサイクリンカルシウム、ドキシサイクリンホスファテックス、ドキシサイクリンヒクレート、ドキシサイクリン一水和物、ドロキサシンナトリウム、エノキサシン、エピシリン、エピテトラサイクリンハイドロクロライド、エルタペネム、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストレート、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンエチルサクシネート、エリスロマイシングルセプテート、エリスロマイシンラクトビオネート、エリスロマイシンプロピオネート、エリスロマイシンステアレート、エタンブトールハイドロクロライド、エチオナミド、フレロキサシン、フロキサシリン、フルダラニン、フルメキン、ホスホマイシン、ホスホマイシントロメタミン、フモキシシリン、フラゾリウムクロリド、フラゾリウムタルトレート、フシデートナトリウム、フシジン酸、ガチフロキサシン、ゲニフロキサシン、ゲンタマイシンスルフェート、グロキシモナム、グラミシジン、ハロプロジン、ヘタシリン、ヘタシリンカリウム、ヘキセジン、イバフロキサシン、イミペネム、イソコナゾール、イセパマイシン、イソニアジド、ジョサマイシン、カナマイシンスルフェート、キタサマイシン、レボフロキサシン、レボフラルタドン、レボプロピルシリンカリウム、レキシスロマイシン、リンコマイシン、リンコマイシンハイドロクロライド、リネゾリド、ロメフロキサシン、ロメフロキサシンハイドロクロライド、ロメフロキサシンメシレート、ロラカルベフ、マフェニド、メクロサイクリン、メクロサイクリンスルホサリシレート、メガロマイシンカリウムホスフェート、メキドックス、メロペネム、メタサイクリン、メタサイクリンハイドロクロライド、メテナミン、メテナミンヒプレート、メテナミンマンデレート、メチシリンナトリウム、メチオプリム、メトロニダゾールハイドロクロライド、メトロニダゾールホスフェート、メズロシリン、メズロシリンナトリウム、ミノサイクリン、ミノサイクリンハイドロクロライド、ミリンカマイシンハイドロクロライド、モネンシン、モネンシンナトリウム、モキシフロキサシンハイドロクロライド、ナフシリンナトリウム、ナリジキセートナトリウム、ナリジクス酸、ナタマイシン、ネブラマイシン、ネオマイシンパルミテート、ネオマイシンスルフェート、ネオマイシンアンデサイレネート、ネチルマイシンスルフェート、ニュートラマイシン、ニフラデン、ニフラルデゾン、ニフラテル、ニフラトロン、ニフルダジル、ニフリミド、ニフルピリノール、ニフルキナゾール、ニフルチアゾール、ニトロサイクリン、ニトロフラントイン、ニトロミド、ノルフロキサシン、ノボビオシンナトリウム、オフロキサシン、オルメトプリム、オキサシリンナトリウム、オキシモナム、オキシモナムナトリウム、オキソリン酸、オキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンカルシウム、オキシテトラサイクリンハイドロクロライド、パルジマイシン、パラクロロフェノール、パウロマイシン、ペフロキサシン、ペフロキサシンメシレート、ペナメシリン、ペニシリンGベンザチン、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニシリンVカリウム、ペンチジドンナトリウム、フェニルアミノサリチレート、ピペラシリン、ピペラシリンナトリウム、ピルベニシリンナトリウム、ピリジシリンナトリウム、ピルリマイシンハイドロクロライド、ピバンピシリンハイドロクロライド、ピバンピシリンパモエート、ピバンピシリンプロベネート、ポリミキシンBスルフェート、ポルフィロマイシン、プロピカシン、ピラジナミド、ピリチオン亜鉛、クインデカミンアセテート、キヌプリスチン、ラセフェニコール、ラモプラニン、ラニマイシン、レロマイシン、レプロマイシン、リファブチン、リファメタン、リファメキシル、リファミド、リファンピン、リファペンチン、リファキシミン、ロリテトラサイクリン、ロリテトラサイクリンナイトレート、ロサラマイシン、ロサラマイシンブチレート、ロサラマイシンプロピオネート、ロサラマイシンナトリウムホスフェート、ロサラマイシンステアレート、ロソクサシン、ロキサルソン、ロキシスロマイシン、サンサイクリン、サンフェトリネムナトリウム、サルモキシシリン、サルピシリン、スコパフンジン、シソマイシン、シソマイシンスルフェート、スパルフロキサシン、スペクチノマイシンハイドロクロライド、スピラマイシン、スタリマイシンハイドロクロライド、ステフィマイシン、無菌チカルシリン二ナトリウム、ストレプトマイシンスルフェート、ストレプトニコジド、スルバクタムナトリウム、スルファベンズ、スルファベンザミド、スルファセタミド、スルファセタミドナトリウム、スルファサイチン、スルファジアジン、スルファジアジンナトリウム、スルファドキシン、スルファレン、スルファメラジン、スルファメテル、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファモノメトキシン、スルファモキソール、スルファニレート亜鉛、スルファニトラン、スルファサラジン、スルファソミゾール、スルファチアゾール、スルファザメット、スルフィソキサゾール、スルフィソキサゾールアセチル、スルフィソキサゾールジオラミン、スルフォミキシン、スロペネム、スルタミシリン、サンシリンナトリウム、タランピシリンハイドロクロライド、タゾバクタム、テイコプラニン、テマフロキサシンハイドロクロライド、テモシリン、テトラサイクリン、テトラサイクリンハイドロクロライド、テトラサイクリンホスフェート複合体、テトロキソプリム、チアンフェニコール、チフェンシリンカリウム、チカルシリンクレシルナトリウム、チカルシリン二ナトリウム、チカルシリン一ナトリウム、チクラトン、チオドニウムクロリド、トブラマイシン、トブラマイシンスルフェート、トスフロキサシン、トリメトプリム、トリメトプリムスルフェート、トリスルファピリミジン、トロレアンドマイシン、トロスペクトマイシンスルフェート、トロバフロキサシン、チロスリシン、バンコマイシン、バンコマイシンハイドロクロライド、ヴァージニアマイシン、ゾルバマイシンが挙げられる。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルス感染(または疾患)を処置または予防する方法(複数可)は、1つまたは複数の抗ウイルス剤と組み合わせて使用することができる。抗ウイルス剤は、自然の供給源から分離することも、合成することもでき、ウイルスを殺すか、ウイルスの増殖または機能を阻害するのに役立つ。抗ウイルス剤の例には、これに限定されないが、免疫グロブリン、アマンタジン、インターフェロン、ヌクレオチド類似体およびプロテアーゼインヒビターが含まれる。抗ウイルス性の具体的な例には、これに限定されないが、アセマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプトスドトクス;アマンタジンハイドロクロライド;アラノチン;アリルドン;アテビルジンメシレート;アブリジン;シドホビル;シパムフィリン;シタラビンハイドロクロライド;デラビルジンメシレート;デスシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;ファモチンハイドロクロライド;フィアシタビン;フィアルウリジン;ホサリラート;フォスカーネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;インドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;メモチンハイドロクロライド;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;リマンタジンハイドロクロライド;サキナビルメシレート;ソマンタジンハイドロクロライド;ソリブジン;スタトロン;スタブジン;チロロンハイドロクロライド;トリフルリジン;バラシクロビルハイドロクロライド;ビダラビン;ビダラビンホスフェート;ビダラビンナトリウムホスフェート;ビロキシム;ザルシタビン;ジドブジン;およびジンビロキシムが挙げられる。
【0177】
抗ウイルス剤は、ヌクレオチド類似体を含むこともできる。ヌクレオチド類似体の例には、これに限定されないが、アシクロビル(単純ヘルペスウイルスおよび水痘帯状疱疹ウイルスの処置に使用される)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの処置に有用である)、イドクスウリジン、リバビリン(RSウイルスの処置に有用である)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジドブジン(アジドチミジン)、イミキモドおよびレシミキモドが挙げられる。
【0178】
インターフェロンは、ウイルス感染した細胞ならびに免疫細胞によって分泌されるサイトカインである。インターフェロンは、感染した細胞に隣接する細胞上の特異的な受容体に結合することによって機能し、ウイルスによる感染からそれを保護する細胞の変化を引き起こす。αおよびβインターフェロンは、感染した細胞の表面上のクラスIおよびクラスII MHC分子の発現も誘導し、宿主免疫細胞の認識のための抗原提示の増加を引き起こす。αおよびβインターフェロンは、組換え形態として利用でき、慢性BおよびC型肝炎感染の処置に使用されている。抗ウイルス治療に効果的である投与量で、インターフェロンは、発熱、倦怠感および体重減少などの重度の副作用を有する。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の真菌感染(または疾患)を処置または予防するための方法(複数可)は、1つまたは複数の抗真菌剤と組み合わせて使用することができる。抗真菌剤の例には、これに限定されないが、イミダゾール、例えば、クロトリマゾール、セルタコンゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾールおよびボリコナコール、ならびにFK463、アムホテリシンB、BAY38−9502、MK991、プラディマイシン、UK292、ブテナフィンおよびテルビナフィンが挙げられる。他の抗真菌剤は、キチン(例えば、キチナーゼ)または免疫抑制(501クリーム)を破壊することによって機能する。
【0180】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の原虫感染(または疾患)を処置または予防するための方法(複数可)は、1つまたは複数の抗原虫剤と組み合わせて使用することができる。抗原虫剤の例には、これに限定されないが、アルベンダゾール、アムホテリシンB、ベンズニダゾール、ビチオノール、クロロキンHCl、クロロキンホスフェート、クリンダマイシン、デヒドロエメチン、ジエチルカルバマジン、ジロキサニドフロエート、エフロールニチン、フラゾリダオン、グルココルチコイド、ハロファントリン、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メフロキン、メグルミンアンチモニエート、メラルソプロール、メトリホナート、メトロニダゾール、ニクロサミド、ニフルチモックス、オキサムニキン、パロモマイシン、ペンタミジンイセチオネート、ピペラジン、プラジカンテル、プリマキンホスフェート、プログアニル、ピランテルパモエート、ピリメタンミン−スルホンアミド、ピリメタンミン−スルファドキシン、キナクリンHCl、キニーネスルフェート、キニジングルコネート、スピラマイシン、スチボグルコネートナトリウム(ナトリウムアンチモニグルコンネート)、スラミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、チアベンダゾール、チニダゾール、トリメスロプリム−スルファメトキサゾールおよびトリパルサミドが挙げられ、これらのいくつかは単独かまたは他のものと組み合わせて使用される。
【0181】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明され、以下の実施例はさらに制限するものとして解釈すべきではない。この出願に渡って引用される全ての文献(論文文献、交付済み特許、公開された特許出願および同時係属中の特許出願を含む)の全体の内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【実施例】
【0182】
(実施例1:皮膚乱切による表皮のVV免疫化は、従来の注射経路より顕著に強い細胞性および体液性免疫を生じる)
VV皮膚乱切のマウスモデルを開発した。乱切したマウスで発生した急性表皮ポックス反応は、ヒト痘瘡ワクチンのものと非常に似ている。このモデルを用いて、皮膚乱切(s.s.)、皮下(s.c.)、皮膚内(i.d.)および筋肉内(i.m.)注射によるワクシニアウイルス(VV)免疫化の後に、一次およびメモリー適応免疫応答の厳密な比較を行った。高い免疫原性の腹腔内(i.p.)注射経路は、臨床での免疫化に使用しなかったが、VV特異的な免疫応答について正の対照として含めた。VV皮膚乱切は、従来の注射経路(s.c.、i.d.およびi.m.)と比較して、顕著により強い一次およびメモリーT細胞応答ならびにより高い血清VV特異的IgGレベルを誘導した(図1)。長期のT細胞メモリーおよび血清IgGレベルは、VV乱切したマウスおよびi.p.免疫化マウスにおいて同程度であった。したがって、皮膚乱切による限局性表皮VV免疫化は、IFN−γ応答および血清IgGレベルによれば、全身性ウイルス感染を確立するi.p.感染と比較して、同程度の免疫原性を達成する。
【0183】
(実施例2:VV皮膚乱切により、二次抗原チャレンジに対して優れた保護を提供する)
3つの異なるモデルを用いて、VV皮膚乱切により、二次チャレンジに対してより良い保護が提供できるかどうかを決定した。一次チャレンジモデルは、(皮膚感染による)皮膚性ポックスウイルス感染であった。このモデルは、2つの理由から選んだ。第1に、臨床的に、痘瘡ワクチン候補の保護効率は、Dryvax皮膚乱切によりワクチン接種した個人をチャレンジすることによって評価される。第2に、自然のポックスウイルス感染は、ウイルスへの皮膚性曝露によって、特に、損傷皮膚領域において、獲得することができる。皮膚チャレンジに続いて、皮膚でのウイルスの負荷を、VV特異的なリアルタイムPCRによって決定した(図2)。免疫化していない対照マウスと比較して、s.c.、i.d.およびi.m.注射によって免疫化したマウスは全て、ウイルスの負荷において15、9.5および3分の1への減少を伴う部分的な保護をそれぞれ実際に示した。ウイルスの負荷における3−logの減少が、i.p.免疫化マウスで達成された。著しいことに、皮膚乱切により事前に免疫化した全てのマウスは、この時点までにウイルスを完全に排除した。したがって、皮膚乱切は、高い免疫原性のi.p.経路を含む注射経路と比較して、二次皮膚性ポックスウイルスチャレンジに対して優れた保護を実現した。
【0184】
自然のポックスウイルス感染は、主に呼吸性のエアロゾルによって伝達される。したがって、病原性Western Reserveワクシニアウイルス(WR−VV)による致死的な鼻腔内感染に対する、様々な免疫化経路の保護効率を評価した。図3a、bに示すように、s.c.、i.d.およびi.m.注射経路により(2×10pfu用量で)免疫化したマウスは、(体重BWの顕著な減少によって顕在化した)明白な臨床的疾病を発症し、致死から部分的にのみ保護された。対照的に、s.s.およびi.p.経路により免疫化したマウスは、100%の生存および最小のBW変化で完全に保護された。実際、皮膚乱切経路は、1000×より低い用量でさえ、s.c.、i.d.およびi.m.経路より良い保護効率を達成した(図3c、d)。したがって、皮膚乱切によるVV免疫化は、従来の免疫化経路より効果的に呼吸粘膜を保護した。
【0185】
次いでVV皮膚乱切に伴う優れた保護が、非ウイルスチャレンジモデルにまで及び得るかどうかを調査した。C57Bl/6マウスを、卵白アルブミン(OVA)KエピトープOva257−264を発現する組換えワクシニアウイルス(rVV)を用いて、様々な経路により免疫化し、免疫化して5週間後、OVAを発現するB16メラノーマ細胞を用いて皮内にチャレンジした。腫瘍の移植から18日目までに、注射経路(s.c.、i.d.、i.m.およびi.p.)により免疫化した全てのマウスが、大きな皮膚性メラノーマ塊を発症した(図4a−d)。著しいことに、皮膚乱切したマウスのいずれにおいても、可視的なまたは触知できる腫瘍は検出されなかった(図4e)。腫瘍は最終的にB16−OVAチャレンジした全てのマウスにおいて発生するが、他の群と比較して乱切群において、腫瘍の増殖は、顕著に遅延し(図4f)、生存は非常に改善された(データは示していない)。ワクチンおよび腫瘍細胞が、単に、単一のCD8T細胞エピトープを共有するだけであり、マウスが、単に、単回用量のVV皮膚乱切を受けただけであることを考慮すれば、これらの結果は、著しく有望であり、広範な臨床的意味を有する。経時的に、OVA発現は、免疫選択下でB16腫瘍細胞から失われる可能性が高く、これは、腫瘍増殖を抑制するのに無効なOva257−264特異的CD8T細胞メモリー応答を与える。
【0186】
(実施例3:AbではなくメモリーT細胞が、二次チャレンジに対するVV皮膚乱切関連保護に必要である)
ポックスウイルス皮膚乱切後の優れた保護効率の根底にある機構を調査するために、皮膚乱切関連免疫保護において、体液性および細胞性応答の関連の寄与を研究した。野生型(wt)およびB細胞欠乏型μMTマウスを、皮膚乱切またはi.p.注射、すなわちこの研究においてもっとも免疫原性の高い2つの経路によってVVで免疫化した。メモリーマウスを、次いで二次の皮膚性または鼻腔性ポックスウイルス感染によってチャレンジした。図5aに示すように、皮膚上にVVでチャレンジしたときに、i.p.免疫化μMTマウスは、免疫化したwtマウスより4−log高いウイルス負荷を有した。興味深いことに、s.s.経路により免疫化したμMTマウスでさえも、皮膚乱切により免疫化したwtマウスと同程度のウイルス負荷で、皮膚性チャレンジに対する強い保護を実際に示した。しかし、(抗CD4および抗CD8mAbを用いる多い用量の処置によって)チャレンジの前および最中に、T細胞をwtメモリーマウスから激減させたとき、免疫保護は、s.s.およびi.p.免疫化群の両方において完全に抑止された。このデータは、T細胞およびAbの両方が、i.p.免疫化の後の皮膚性チャレンジに対する保護に必要とされるが、VV皮膚乱切後のT細胞メモリー応答は、単独で皮膚性チャレンジを効果的に制御するほど強いことを示唆する。実際、チャレンジされた皮膚を排除する、脾臓およびリンパ節(LN)の両方における二次T細胞応答は、i.p.免疫化マウスより乱切した免疫マウスの方が顕著に強かった(図5b、c)。免疫化群の間の違いは、μMTマウスにおいてさらにより顕著であった。異なる群のマウス由来のチャレンジされた皮膚組織を、T細胞の存在について顕微鏡的にさらに調べた。著しいことに、大量のCD3T細胞の浸潤が、s.s.経路により免疫化したマウスの基底の表皮および真皮において観察された一方、他の全ての免疫化群から収集した皮膚においては数個のT細胞のみが点在した(図5d)。総合して、これらのデータは、VV皮膚乱切が、二次皮膚性抗原チャレンジに対して高度に保護的である多数の皮膚ホーミングTemの発生において、比類なく強力であることを示唆する。
【0187】
同様に、T細胞メモリーは、鼻腔内チャレンジに対する完全な保護のために、Ab応答より重要であるようであった。wtおよびμMTマウスを、皮膚乱切によりVVで免疫化し、鼻腔内感染によりWR−VVで致死的にチャレンジした。両系統のマウスを、最小のBW変化で、致死に対して完全に保護した。しかし、全てのT細胞激減免疫マウスは、チャレンジから生き残ったが、wtメモリーマウスからT細胞を激減させることにより、より明白なBWの減少が引き起こされた(図6)。このデータは、呼吸器の上皮層中に存在するかまたは迅速に移入できる保護的なTemが、皮膚ホーミングTemと一緒に、皮膚乱切による皮膚上のVV免疫化によって発生することを示唆する。これらの細胞は、エアロゾル伝達型病原体に対する免疫監視において重要な役割を果たす。
【0188】
(実施例4:VV皮膚乱切は、局所性LNにおいて、一次および二次組織ホーミングインプリンティングプログラムによって、多数の皮膚ホーミングTeff/Temならびに高度に万能なホーミング能を有するT細胞を産生する)
皮膚に制限した局所的VV感染後に、抗原特異的T細胞は、どのようにして高度に万能なホーミング能を発達させ、全身性免疫保護を提供するのだろうか。
【0189】
この疑問を、ナイーブCFSE標識したThy1.1Ova257−264特異的OT−I T細胞をThy1.2wtマウス中に養子性移行し、続いてrVV−Ova257−264を用いる皮膚乱切またはi.p.感染の後に、それらのインビボでの活性化、増殖および移動を追跡することによって調査した。OT−I細胞は、早ければ皮膚乱切から60時間後に、皮膚排除鼠径部LN(ILN)内で広範に増殖した一方、同様の増殖が、i.p.感染後に、腸排除腸間膜LN(MLN)中で見られた(図7a)。予想したように、これらのOT−I細胞は、二次リンパ組織中を循環するナイーブおよびTcmT細胞において高度に発現するLNホーミング分子CD62Lを顕著に下方制御した(図7b)。同時に、ILN内で活性化したOT−I細胞上での皮膚ホーミング分子E−LigおよびP−Lig(P−セレクチンリガンド)、ならびにMLN内で活性化したOT−I細胞上での腸ホーミング分子α4β7の堅調な上方制御が存在した。組織ホーミング分子の発現は、3回の細胞分裂後に上方制御され、細胞分裂の機能とともに継続して増加した(図7c)。したがって、早期の活性化において、抗原特異的T細胞は、予備刺激が起きる局所的LN内で、細胞特異的ホーミング表現型が刷り込まれる(一次ホーミングのインプリンティング)。これにより、活性化したT細胞は、早ければVV皮膚乱切して3日後に、感染した組織に特異的に移動することが可能になる(データは示していない)。一次VV皮膚乱切後の、皮膚中へのこの驚くべき迅速なT細胞のリクルートは、これまで理解されていなかった。
【0190】
いくつかの追加の予期しなかった発見をした。感染から60時間後の高度に特異的な組織の輸送とは対照的に、活性化したOT−I細胞は、rVV−ova皮膚乱切から5日後までに、非排除性LN中にばらまかれた(図8a)。ワクシニア遺伝子発現が、高感受性リアルタイムRT−PCRによって、皮膚または皮膚排除LNの外側で検出されず(図8b)、MLNおよび脾臓から単離したAPCが、インビトロでOT−I細胞を活性化できなかったため(図8c)、これは、VVまたはVV抗原を有する抗原提示細胞(APC)の全身的なばらまきを伴わなかった。したがって、ILN活性化したOT−I細胞のサブセットは、リンパ組織中にばらまかれ、継続した抗原刺激がない条件下で分裂を継続した。予想外に、それらは、追加の組織特異的ホーミング分子も発現した。図9aに見られるように、腸ホーミングα4β7は、増殖しているOT−I細胞において上方制御された。それらの活性化後のILNからのOT−I細胞の放出を、FTY720、すなわちリンパ組織からのリンパ球放出を制御するスフィンゴシン1−ホスフェートの機能的アンタゴニストを用いてブロックしたとき(図9b)、OT−1細胞におけるE−Ligの発現は、影響されなかったが(図9c)、OT−I細胞におけるα4β7は抑止された(図9d)。このデータは、腸ホーミング分子の上方制御が、MLN中へのOT−I移動の後に起きたことを強く示唆する(二次組織ホーミングのインプリンティング)。発明者等は、同様の工程が、仮想の肺および粘膜の輸送分子が発現する、他の非排除性LNにおいて起こり得ると考えている。感染して30日後にT細胞を試験したとき、一次(皮膚特異的E−Lig)および二次(腸特異的α4β7)の両ホーミング分子が、メモリーOT−I細胞上に存続した(図10)。これらのデータは、総合的に、皮膚乱切による限局性VV免疫化が、ウイルス侵入部位での即時型皮膚特異的免疫制御、および潜在的なウイルスばらまきまたは呼吸器表皮などの離れた解剖学的位置での二次チャレンジに対するより柔軟な全身性保護の両方に対して、保護的なT細胞応答を生成する機構を示唆する。
【0191】
(実施例5:MVA皮膚乱切は、より優れ、安全および効果的である新規の免疫化戦略を表す)
前臨床および臨床試験の両方における、その印象的な安全性および免疫原性プロファイルのため、高度に弱毒化した複製欠陥のあるVV株MVAを、有望な生のウイルスワクチンベクターとして積極的に探索した。MVAワクチンを、注射経路によりもっぱら投与し、皮膚乱切は決して介さなかった。これは、表皮中でのウイルスの複製が、ポックス病変の発生およびチャレンジに対するその後の強い保護に必要であるという直観的な仮定に起因し得る。
【0192】
それにもかかわらず、マウスを、MVAで皮膚乱切により免疫化した。驚くことに、MVA皮膚乱切は、用量依存的な様式で、特徴的なポックス病変を誘導し(図11a)、VV抗原に対する用量依存的な細胞性および体液性免疫応答を生成した(図11b、c)。重要なことに、鼻腔内WR−VV感染により致死的にチャレンジしたとき、MVA皮膚乱切により、1.8×10pfuで(図11d)、すなわち従来の注射経路による反復的なVV免疫化では、致死的なチャレンジからマウスを保護できなかった用量で、致死および疾病に対して完全な保護がもたらされた(図3a、b)。驚くことではないが、MVA免疫化の同程度の用量(2×10pfu)で、従来の注射経路は、二次ウイルスチャレンジの後でさえも(図12c、d)、検出可能なT細胞およびAb応答をわずかに弱く誘発し(図12a、b)、WR−VVi.n.チャレンジに対する乏しい保護をもたらすが(図12e、f)、強い免疫保護が、MVAまたはVVのいずれかによる皮膚乱切によって可能になった。
【0193】
したがって、皮膚乱切に伴う優れた免疫原性および保護効率が、高度に弱毒化したMVAワクチンにまで及ぶ。
【0194】
免疫低下宿主についてのMVA皮膚乱切の安全性を、T細胞およびB細胞の両方を欠くRag−/−マウスにおいて確認した。MVA乱切したRag−/−マウスは、接種の部位に制限された小さなポックス病変を発症し(図13a)、少しのBWの減少(図13b、c)または検出可能なウイルス血症(図13d)なしに、長期間生存した。かなり対照的に、VV乱切したRag−/−マウスは、悪化する皮膚びらんおよび壊死を発症し、感染から約4週間後に死んだ(図13a−c)。
【0195】
MVA皮膚乱切が、保護的な免疫の生成に高度に効果的であるという観察は、表皮中での増殖的なウイルス感染が、強い保護効率を達成するのに必要ではないことを示す。しかし、代謝的に活性な生のウイルスを用いた表皮の感染は、発症に対する厳密な免疫応答に必要のようである。これは、第1に、熱不活性化したVVが、高い用量で皮膚乱切により投与したときでも、強い免疫応答を誘導できないこと、第2に、注射によってVVに感染したマウスにおいて免疫応答を増強するために生理食塩水で同時に皮膚「乱切」できないことによって示唆された(データは示していない)。表皮におけるVV感染に対する生得的な皮膚性応答の特有の態様は、続く適応応答を最適化するための自然のアジュバントとして役立てることができる。このアイデアを支持して、皮膚線維芽細胞または皮膚毛細血管内皮細胞ではなく、主要なヒトケラチノサイトは、宿主の適応性免疫応答がない条件下で、インビトロでVV複製を制限することができる。その上、ケラチノサイト中の生得的なサイトカインIL−1αのトランスジェニックの過剰発現により、VV皮膚乱切後に、インビボの適応性免疫応答のさらなる増強が引き起こされる。
【0196】
要約すれば、これらの観察は、免疫化の経路が、ワクチン接種戦略の設計のための重要な検討事項であることを実際に示す。非複製性ウイルスを含む生のウイルスワクチンを用いる表皮の免疫化は、通常、臨床で使用される注射経路と比較して、特にMVAに関して、はるかにより良い免疫応答およびより強い保護を生成する。
【0197】
したがって、記載された本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を得ることで、様々な変更、改変および改善が当業者によって容易に行われることを理解すべきである。かかる変更、改変および改善は、本開示の一部であることを意図し、本発明の精神および範囲内であることを意図する。したがって、前述の説明および図は、単なる例のつもりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を刺激するための方法であって、前記免疫応答を刺激するのに十分な量で抗原を含む生の改変された非複製性または複製障害性ポックスウイルスを被験体に投与することを含み、前記ポックスウイルスは機械的に破壊された表皮に投与される、方法。
【請求項2】
前記免疫応答が体液性応答および/または細胞性応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞性応答がCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞および/またはB細胞により誘発される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポックスウイルスが、オルソポックス、スイポックス、トリポックス、カプリポックス、レポリポックス、パラポックスウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、およびヤタポックスウイルスからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オルソポックスウイルスがワクシニアウイルスである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ワクシニアウイルスが、改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)、WR株、NYCBH株、Wyeth株、ACAM2000、Lister株、LC16m8、Elstree−BNm、Copenhagen株、およびTiantan株からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表皮が、乱切針、皮下針、または擦過器により機械的に破壊される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記表皮が、前記ポックスウイルスの投与と本質的に同時に機械的に破壊される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記表皮が、前記ポックスウイルスの投与前に機械的に破壊される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被験体が、がんを有するかまたはがんを発症する危険がある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記がんが、皮膚がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、腎臓がん、膀胱がん、および甲状腺がんまたは結腸直腸がんである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記がんが、前立腺腺癌、前立腺上皮新形成、肺扁平上皮癌、肺腺癌、小細胞肺癌、上皮由来の卵巣がん、結腸直腸腺癌および平滑筋肉種、胃腺癌および平滑筋肉腫、肝細胞癌、胆管癌、膵臓の管腺癌、膵内分泌部腫瘍、腎細胞癌、腎臓および膀胱の移行上皮癌、膀胱扁平上皮癌、乳頭様甲状腺がん、濾胞性甲状腺がん、星状細胞腫、ならびに多形神経膠芽腫からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記皮膚がんが、メラノーマ、皮膚扁平上皮癌および基底細胞癌からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体が感染を有するかまたは感染を発症する危険がある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記感染が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または原虫感染である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ウイルス感染が、HIV、インフルエンザ、デング熱、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラ、マールブルグ、狂犬病、ハンタウイルス感染、ウエストナイルウイルス、SARS様コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、アルファウイルス、およびセントルイス脳炎からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細菌感染が、Mycobacterium tuberculosis、Salmonella typhi、Bacillus anthracis、Yersinia perstis、Francisella tularensis、Legionella、Chlamydia、Rickettsia typhi、およびTreponema pallidumからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記真菌感染が、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Cryptococcus neoformans、Candida albicans、およびAspergillus種からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記原虫感染が、Malaria(Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariae)、Leishmania種、Trypanosome種(アフリカおよびアメリカ)、クリプトスポリジウム、イソスポラ種、Naegleria fowleri、Acanthamoeba種、Balamuthia mandrillaris、Toxoplasma gondii、およびPneumocystis cariniiからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異抗原(TSA)、または組織特異抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原または原虫抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインを投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記共刺激分子が、前記ポックスウイルスにより前記抗原と共発現される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記共発現される共刺激分子が、IL−1、IL−2、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18、IL−23、IL−27、B7−2、B7−H3、CD40、CD40L、ICOS−リガンド、OX−40L、4−1BBL、GM−CSF、SCF、FGF、Flt3−リガンド、CCR4からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポックスウイルスがTRICOMTMである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインが、前記抗原と本質的に同時に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインが、前記抗原の前に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインが、前記抗原の後で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインが、前記抗原と本質的に同じ部位に投与される、請求項26〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記共刺激分子、増殖因子、アジュバンドおよび/またはサイトカインが、前記抗原とは異なる部位に投与される、請求項26〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗原の第1の投与後のある時期における、前記抗原の第2の投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記非複製性または複製障害性ポックスウイルスが、前記抗原をコードする核酸を含むウイルスベクターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記抗原をコードする前記核酸がプロモーターに作動可能に連結されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記プロモーターが、構成的に活性であるプロモーターまたは誘導性プロモーターである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
エンハンサーまたは他の転写調節エレメント(TRE)をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記被験体が、前記抗原を含む前記ポックスウイルスの投与に先立って前記抗原でチャレンジされておらず、前記被験体が前記抗原でチャレンジされる危険がある、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫応答を刺激することが、前記抗原を提示する作用因子により引き起こされる疾患に対する前記被験体の防御を与える、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記被験体が、前記抗原を含む前記ポックスウイルスの投与に先立って前記抗原でチャレンジされている、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫応答を刺激することが、前記抗原を提示する作用因子により引き起こされる前記被験体の疾患を処置する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記疾患が感染またはがんである、請求項37または39に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが、メラノーマ、皮膚扁平上皮癌、基底細胞癌、乳がん、前立腺腺癌、前立腺上皮新形成、肺扁平上皮癌、肺腺癌、小細胞肺癌、上皮由来の卵巣がん、結腸直腸腺癌および平滑筋肉腫、胃腺癌および平滑筋肉腫、肝細胞癌、胆管癌、膵臓の管腺癌、膵内分泌部腫瘍、腎細胞癌、腎臓および膀胱の移行上皮癌、膀胱扁平上皮癌、乳頭様甲状腺がん、濾胞性甲状腺がん、星状細胞腫、および多形神経膠芽腫からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記感染が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または原虫感染である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
感染が、HIV、インフルエンザ、デング熱、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラ、マールブルグ、狂犬病、ハンタウイルス感染、ウエストナイルウイルス、SARS様コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、アルファウイルス、セントルイス脳炎、Mycobacterium tuberculosis、Salmonella typhi、Bacillus anthracis、Yersinia perstis、Francisella tularensis、Legionella、Chlamydia、Rickettsia typhi、Treponema pallidum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Cryptococcus neoformans、Candida albicans、Aspergillus種、Malaria(Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariae)、Leishmania種、Trypanosome種(アフリカおよびアメリカ)、クリプトスポリジウム、イソスポラ種、Naegleria fowleri、Acanthamoeba種、Balamuthia mandrillaris、Toxoplasma gondii、およびPneumocystis cariniiからなる群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
被験体の上皮を破壊するためのデバイスおよび生の改変された非複製性または複製障害性ポックスウイルスを含むキット。
【請求項45】
前記デバイスが、乱切針、皮下針または擦過デバイスである、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記ポックスウイルスが前記デバイスに付着している、請求項44に記載のキット。
【請求項47】
前記ポックスウイルスが溶液中に混合されている、請求項44に記載のキット。
【請求項48】
前記溶液が、被験体への前記ポックスウイルスの送達を増強する作用因子をさらに含み、前記ポックスウイルスが前記被験体の表皮を介して送達される、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記溶液が、被験体における免疫応答を増強する作用因子をさらに含み、前記免疫応答が前記ポックスウイルスにより刺激される、請求項47に記載のキット。
【請求項50】
前記キットを使用するための説明書をさらに含む、請求項44に記載のキット。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図5−1】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13−2】
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【図4】
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【図5−2】
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【図11−1】
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【図13−1】
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【公表番号】特表2012−507514(P2012−507514A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534459(P2011−534459)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/012345
【国際公開番号】WO2010/050913
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511253162)
【出願人】(511253173)
【Fターム(参考)】