説明

機能性物質を固定化するための基材、およびそれを作製するための方法

機能性分子を固定化するための化合物がその上に配置された基材であって、各々の化合物は:基材へ化学的にカップリングされた部分Rであって、前記部分Rは、エーテル、エステル、カルボニル、カーボネートエステル、チオエーテル、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、およびカルボノチオイルからなる群より選択される、部分R;ならびに、少なくとも1つの求核基を含むリンカーによって部分Rへカップリングされたエポキシド含有部分を含む鎖を有する。本発明は、基材の作製方法および基材の使用も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性物質の固定化のための基材全般に関する。本発明はまた、その基材を作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
研究、臨床、診断、および産業上の目的のために分析または合成に用いられる、生物学的および化学的アッセイならびにプロセスは、機能性物質の固体支持体(または基材)上への固定または固定化を必要とする場合が多い。この固定により、その有効性および活性を損なうことなく、物質の安定性および汎用性が改善され、物質を繰り返し使用することが可能となる場合が多い。例えば、酵素などの生物学的物質を含む機能性物質は、通常、シリカまたはポリアクリルアミドゲルのような不活性支持体上に固定化されることで、酵素触媒工業プロセスに用いられた場合の変化するpHまたは温度条件に対する安定性が改善され、続いて行われる反応生成物からの分離が容易となる。このことによって、固定化酵素の再利用が可能となると共に、生成物の精製が非常に容易となり、これは費用対効果のより高いプロセスに繋がる。
【0003】
生物学的物質を含む機能性物質の固定化は、物理的固定化または化学的固定化によって行うことができる。物理的固定化の1つの形態は、物理的吸着(物理吸着)であり、この場合、機能性または生物学的物質は、カプセル化、または静電力、疎水性力、もしくはファンデルワールス力を介して基材と結合される。物理的吸着は、あらゆる範囲の機能性および/または生物学的物質への広範囲の適用が可能である比較的簡便な固定化法を提供する一方で、それは、多くの場合十分に安定な固定化を提供せず、固定化された機能性および/または生物学的物質の浸出を起こしやすい。
【0004】
機能性および/または生物学的物質のより安定な固定化法は、化学的固定化であり、これは、化学反応の結果として機能性および/または生物学的物質を基材へ共有結合させる。化学的固定化は、通常、活性の改善、非特異的吸着の低減、ならびに機能性および/または生物学的物質の安定性の向上をもたらす。しかし、化学的固定化は、一般に、機能性および/もしくは生物学的物質、または基材の化学修飾が、これらの効率的な結合を促進するために必要となる。
【0005】
固体支持物質の表面修飾、または固体支持体の「予備活性化」による、機能性および/または生物学的物質へのその結合の改善は、通常、一般的には反応性が低いポリマー物質の表面へ反応性化学部分を組み込むことを含む。表面修飾は、親和性スペーサー(affinity spacer)の非共有結合による結合などの物理的手段で、またはグルタルアルデヒド活性化、臭化シアン活性化、ブロモアセチル化、ジアゾ化、電離放射線誘発酸化、および化学グラフト反応などの化学的手段によって達成することができる。
【0006】
しかし、親和性スペーサーの非共有結合による結合は、低い再現性および/または基材表面への不安定な結合を伴う。最も注目すべきはイミンであり、イミンほどではないもののエステルもそうであるが、共有結合による結合のいくつかは、酵素反応に対して用いられる反応条件下にて加水分解される場合があり、その結果、固定化された酵素の部分的な喪失、および酵素の反応媒体中への浸出が起こってしまう。そのような問題は、中でも、グルタルアルデヒド活性化およびブロモアセチル化に基づく固定化法に影響を与え得る。ジアゾ化、臭化シアン活性化、電離放射線誘発酸化、および化学グラフト反応は、非共有結合よりも安定である共有結合を形成するが、これらの方法は、有害、高コスト、複雑、および/または苛酷である反応条件の使用を含んでいる。
【0007】
これらの方法のいくつかはまた、固体支持体上に正味の高い電荷ももたらし、これは、続いて行われる生物学的/化学的プロセスにおける手順の過程にて、機能性および/または生物学的物質の望ましくない非特異的静電結合を引き起こす。苛酷な反応条件を用いることによって直面する別の一般的な問題は、表面特性の好ましくない修飾であり、それは、機能性および/または生物学的物質の、特に大型のポリマー物質の結合を妨害し得るものである。このことは、機能性および/または生物学的物質の基材上への付加量の低下を引き起こし得る。さらに、いくつかの市販の活性化固体支持体で直面するその他の問題は、低い安定性、強い毒性、および生体適合性の欠如であり、その結果、保存期間が短く、取り扱いが困難となり、医療目的での適用性が限定的となってしまう。
【0008】
これらの方法のいくつかは、親水性分子の固定化のためのエポキシシランカップリング剤による「予備活性化」支持体のさらなる修飾に依存する。他の方法は、分子を基材へ固定化するためのビスエポキシオキシランリンカーを反応させることによる基材の作製に依存する。これらの方法に用いられる脂肪族リンカーは、固定化のために利用可能である反応性基の量の減少、生体適合性の低下、および再現性の低下を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の欠点の1つ以上を克服するか、または少なくとも改良する、機能性および生物学的物質の固定化のための基材を作製する方法が提供されることが望まれている。
【0010】
機能性および生物学的物質の固定化のための基材を作製するための、使いやすく、低コストで、強固であり、信頼性の高い方法が提供されることが望まれている。
【0011】
また、機能的および生物学的活性物質の固定化のためであり、活性および反応性を改善して高付加密度で広範囲におよぶ物質を固定化するために用いることが可能である、安定で、扱いやすく、低コストで、無毒性であり、生体適合性、および生分解性である基材が提供されることも望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によると、機能性分子を固定化するための化合物がその上に配置された基材が提供され、各々の化合物は:基材へ化学的にカップリングされた部分Rであって、前記部分Rは、エーテル、エステル、カルボニル、カーボネートエステル、チオエーテル、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、およびカルボノチオイルからなる群より選択される、部分R;ならびに、少なくとも1つの求核基を含むリンカーによって部分Rへカップリングされたエポキシド含有部分、を含む鎖を有する。
【0013】
1つの実施形態では、基材は、鎖とカップリングした追加のエポキシド含有基を含む。別の実施形態では、追加のエポキシド含有基の数は、1、2、3、4、および5の数から選択される。1つの実施形態では、リンカーは、それを介して前記の追加のエポキシド含有基が鎖とカップリングする、追加の求核基を含む。このことは、機能性分子との反応に利用可能であるエポキシド含有基の密度が高められ、その結果として物質を固定化するために利用可能である固定化部位の数も増加することから、有利である。
【0014】
リンカーが機能性分子と基材との間のテザー(tether)の長さを延長し、機能性分子の基材への結合を補助することは、本開示の利点である。
【0015】
別の実施形態では、リンカーは、二求核性種(di-nucleophilic species)を含む。1つの実施形態では、二求核性リンカーは、アルキル−ジアミンおよびアルケン−ジアミンの少なくとも1つから選択される。有利には、ジアミンリンカーは、エポキシ活性化のための追加の部位を導入することができる。理論に束縛されるものではないが、ジアミンリンカーの一分子に対して最大5つまでのエポキシド含有化合物分子(エピクロロヒドリンなど)が反応可能であると考えられる。このことは、これによって、例えばエポキシド含有化合物の密度を増加させ、その結果として機能性分子を固定化するために利用可能である固定化部位の数を増加させることが可能となることから、有利である。
【0016】
別の実施形態では、リンカーは、多求核性種(polynucleophilic species)を含む。別の実施形態では、多求核性種は、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、カダベリン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびテトラヒドロフルフリルアミンなどのポリアミンであってよい。
【0017】
リンカーのアミン基の導入はまた、固定化された物質のための内部pHバッファーとしても有益に作用する。アミン基がイオン交換体としても機能して、固定化された物質を安定化させる条件を提供することができることも、さらなる利点である。アミン基が強い求核性であり、OH基を例とするその他の求核基よりも効率的に第一および第二のエポキシド含有化合物をカップリングさせることも、さらなる利点である。リンカーのアミン基の強い求核性は、このことによってエポキシド含有化合物との反応性を維持した状態で長いリンカーを用いることが可能となることから、さらに有利である。このことは、より長いリンカーを用いることで、基材と固定化物質との間の立体障害をさらに軽減することが可能となることから、さらに有利である。より有利には、ヘキサンジアミンなどのジアミンは、その他のリンカーと比べて比較的安価であり、市販されている商品物質である。ヘキサンジアミンが低コストであることにより、開示される基材を確実に比較的低コストで大量生産することができる。
【0018】
エポキシド含有化合物とヘキサンジアミンリンカーとの間に形成されたアルキル−アミン結合が、生理学的条件下での加水分解に耐性を有し、従って、透析装置を例とする水性系に使用可能であることは、さらなる利点である。本開示に従う基材が、生物学的に不活性であることも、さらなる利点である。
【0019】
第二の態様によると、基材上へ機能性分子を固定化する方法が提供され、その方法は、機能性分子を本開示に従う基材へ曝露する工程を含む。
【0020】
第三の態様によると、その上へ機能性分子を固定化するための基材を作製する方法が提供され、その方法は:(i)基材の表面にカップリングした求電子化合物を提供する工程;(ii)求電子化合物に求核置換反応を起こさせることでその上へ求核基を提供し、それによって基材表面の求核性を増加させる工程;(iii)求核基に別の求電子化合物との求核置換反応を起こさせることで基材表面上に求電子基を提供し、それによって基材の求電子性を増加させる工程、を含む。
【0021】
基材の求電子基と結合した長いスペーサーが、機能性化合物が求電子基へ到達する可能性を高め、同時に機能性分子に対する求電子基の密度および反応性を高めることで機能性分子を基材上へ固定化させることは、この方法の利点である。この方法の工程(iii)も、続いて行われる基材上での固定化のために機能性分子が求電子基へ到達する可能性を高めるということは、さらなる利点である。
【0022】
1つの実施形態では、工程(ii)および(iii)は、n回繰り返され、前記基材上にn世代分の求電子基が形成される。このことは、これによってスペーサーの延長、ならびに求電子基の密度の増加、およびその結果としての、機能性分子を基材上へ固定化するために利用可能である固定化部位の数の増加、が可能となるため、有利である。
【0023】
この方法の工程(iii)によって、リンカーと第二の求電子化合物との間の反応を相対的により早く進めることが可能となることは、さらなる利点である。この結果、求電子化合物の加水分解率が低減され、加水分解されかった求電子基の基材への組み込み率が高められる。このことは、これによっても、機能性分子を固定化するための基材上の求電子基の密度の増加が可能となることから、さらなる利点である。
【0024】
求電子基が基材に対して相対的に変位され、それによってその上に機能性分子が固定化される能力が、1つだけの求電子化合物が基材へ直接カップリングされている基材を有する場合と比較して、相対的に向上されていることは、さらなる利点である。この相対的な変位が、続いて行われる基材上での固定化のための機能性分子の求電子基への到達可能性も高めるということも、さらなる利点である。
【0025】
第四の態様によると、透析装置に用いるための収着剤カートリッジが提供され、この収着剤カートリッジは、ウレアーゼを固定化するための本明細書で述べる基材を含む。
【0026】
第五の態様によると、尿素を含有する透析液を本明細書で述べる基材に曝露する工程;および前記基材から透析液を除去する工程、を含む透析法が提供される。
【0027】
第六の態様によると、透析装置に用いるための透析器が提供され、この透析器は、ウレアーゼを固定化するための本明細書で述べる基材を含む。従って、ウレアーゼは、透析器内部に含まれる酢酸セルロース膜フィルターなどの透析膜上に固定化することができる。
【0028】
第六の態様によると、透析膜を、その上に機能性分子を固定化するために修飾する方法が提供され、その方法は:
(i)膜表面へ求電子化合物をカップリングさせる工程、
(ii)求電子化合物に求核置換反応を起こさせることでその上へ求核基を提供し、それによって膜表面の求核性を増加させる工程、
(iii)求核基に別の求電子化合物との求核置換反応を起こさせることで膜表面上に求電子基を提供し、それによってその上に機能性分子を固定化するための膜表面の求電子性を増加させる工程、
を含む。
【0029】
1つの実施形態では、この膜は、酢酸セルロース膜である。
【0030】
有利には、この方法を用いて、酢酸セルロース膜などの透析器の既製の透析膜を修飾することができる。この修飾工程により、透析器に用いられた場合に、透析液酵素などの機能性分子をその上に固定化する透析膜表面の能力を高めることが可能となる。
【0031】
第八の態様によると、本明細書で述べる基材の透析装置における使用が提供される。
【0032】
1つの実施形態では、その上に機能性物質を固定化するための基材を作製する方法が提供され、その方法は、第一の求電子化合物を基材へ化学的にカプリングさせる工程;および、第二の求電子化合物を、基材へカップリングされた第一の求電子化合物へ化学的にカップリングさせる工程を含み、ここで、前記第二の求電子化合物は、前記第一の求電子化合物へカップリングされた場合に、その上に機能性物質を固定化するように構成される。
【0033】
有利には、第一および第二の求電子化合物は、互いに対して相対的に変位されるように選択され、それによって、その上に機能性物質が固定化される能力が、1つだけの求電子化合物が基材へ直接カップリングされている基材を有する場合と比較して、相対的に向上される。より有利には、第一および第二の求電子化合物は、互いに対して相対的に変位されるように選択され、それによって、第二の求電子体近傍における立体障害効果が低減または最小化され、使用の際に第二の求電子化合物への機能性物質の結合が向上される。
【0034】
より有利には、第一および/または第二の求電子化合物は、求核性の弱い基材を求電子性の強い基材へと効果的に変換する二求電子体(di-electrophile)であってよい。このことは、基材の極性および反応性を変化させることになる。
【0035】
より有利には、この方法は、公知の方法で作製される基材と比較して、その上へ固定化させるための機能性物質に対する反応性が比較的高い基材を作製する、簡便で費用対効果の高い方法である。より有利には、第二の求電子化合物は、酵素などの生物学的物質を含む機能性物質と安定に結合する能力を有する。さらにより有利には、第二の求電子化合物は、立体障害が低減されるように基材から適切な距離にて、機能性物質のための結合部位を提供する。1つの実施形態では、基材1グラムあたりの求電子基の密度は、約0.1から約1mmol/gである。
【0036】
そしてこれは、機能性物質の固定化の過程での障害を低減し、第二のエポキシド含有化合物を介して機能性物質を基材へ容易に固定すことが可能となる。それはまた、結合した物質(酵素)の到達可能性および構造的可撓性も高め、それによってその活性が増加される。また、開示される方法では、キラルリガンド、親和性リガンド、および/またはイオン交換粒子を固定化可能である基材を作製することもできる。
【0037】
1つの実施形態では、第一および第二の求電子化合物は、エポキシド含有化合物である。1つの実施形態では、開示される方法は、第二のエポキシド含有化合物を第一のエポキシド含有化合物とカップリングさせるためにリンカーを用いる工程を含む。これにより、活性オキシラン部位と基材との間のテザー長が延長され、機能性物質のオキシラン部位への結合が補助される。それはまた、酵素などの結合した物質の到達可能性も向上させ、それによってその活性が高められる。有利には、リンカーは、基材に所望の化学的特性を付与するために、追加の官能基を含有していてよい。例えば、リンカーは、基材が透析装置などの用途に用いられる場合に有益であり得る緩衝特性を有するアミン基を含有していてよい。リンカーはまた、特定の用途において基材の機能を補う、抗酸化剤または金属捕捉剤として機能することができる基を含有していてもよい。より有利には、リンカーはまた、第二の求電子化合物および/または続いてのエポキシド含有化合物が結合するための部位を増加させてもよい。実際上は、リンカーは、基材とカップリングしたエポキシド含有化合物の数を増加させ得るものであり、そしてそれは、機能性物質の固定化の可能性および強度を増加させる。リンカーはまた、それとカップリングした機能性または生物学的物質の機能的または生物学的特性に有害な影響を与えることのない中性および不活性であってもよい。
【0038】
1つの実施形態では、リンカーは、エポキシド基を含有しない。官能性リンカーはまた、求核基を含んでいてもよい。有利には、求核基は、反応性であり、求電子(エポキシド含有)化合物と化学的に結合することができる。1つの実施形態では、官能性リンカーは、二求核性リンカーである。2つの求核基が存在することにより、リンカーは第一および第二の両方のエポキシド含有化合物と結合することができ、この2つのエポキシド含有化合物間に架橋を形成する。1つの実施形態では、二求核性リンカーの求核体のうちの少なくとも1つは、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、Ph、およびPR(式中、R、R、およびRは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される。
【0039】
二求核性リンカーはまた、一般式(I):
【化1】

(式中、
XおよびYは、独立して、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、PH、およびPRから選択され、
Rは、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
nは、0から25までの整数である)
を有していてもよい。
【0040】
別の実施形態では、二求核性リンカーは、一般式(II):
【化2】

(式中、
XおよびYは、独立して、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、PH、PRから選択され、
ここで、R、R、R、R、Rは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
m、n、p、およびqは、独立して、0から25より選択される整数である)
を有していてもよい。
【0041】
1つの実施形態では、二求核性リンカーは、ヘキサンジアミンまたはエチレンジアミンなどのアルキル−ジアミンである。有利には、ジアミンリンカーは、エポキシ活性化のための追加の部位を導入することができる。理論に束縛されるものではないが、最大5分子までのエポキシド含有化合物(エピクロロヒドリンなど)がジアミンリンカーの一分子と反応可能であると考えられる。このことは、これによって、例えばエポキシド含有化合物の密度を増加させ、その結果として物質を固定化するために利用可能である固定化部位の数を増加させることが可能となることから、有利である。リンカーのアミン基の導入はまた、固定化された物質のための内部pHバッファーとしても有益に作用する。アミン基がイオン交換体としても機能して、固定化された物質を安定化させる条件を提供することができることも、さらなる利点である。アミン基が強い求核性であり、その他の求核基よりも効率的に第一および第二のエポキシド含有化合物をカップリングさせることも、さらなる利点である。リンカーのアミン基の強い求核性は、このことによってエポキシド含有化合物との反応性を維持した状態で長いリンカーを用いることが可能となることから、さらに有利である。このことは、より長いリンカーを用いることで、基材と固定化物質との間の立体障害をさらに軽減することが可能となることから、さらに有利である。より有利には、ヘキサンジアミンは、その他のリンカーと比較して比較的安価であり、市販されている商品物質である。ヘキサンジアミンが低コストであることにより、開示される基材を確実に比較的低コストで大量生産することができる。ヘキサンジアミンリンカーを用いた場合に形成されるアルキルアミン結合が、生理学的条件下での加水分解に耐性を有し、従って、透析装置を例とする水性系に使用可能であることは、さらなる利点である。生体適合性および生分解性であることも、ヘキサンジアミンリンカーのさらなる利点である。
【0042】
1つの実施形態では、求電子化合物および第二の求電子化合物のうちの少なくとも1つが、エピハロヒドリンである。好ましくは、エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリンである。同様に、エピクロロヒドリンは、その他のエピハロヒドリンと比べて比較的安価であり、それが市販の製品物質であることから、容易に入手可能である。ここでも、エピクロロヒドリンが低コストであることにより、開示される基材を確実に比較的低コストで大量生産することができる。エピクロロヒドリンはまた、非常に迅速に余すところなく反応する傾向にあり、無毒性の生成物(グリセロールおよびアミノ−グリセロール)のみを生成することから、最終的には医療用途に用いられることになる基材の作製における使用に適している。さらに、エピクロロヒドリンは、水と部分的に相溶性であり、アルコールとは完全に相溶性であることから、いずれの過剰なエピクロロヒドリンも、基材を水および/またはアルコールで洗浄することにより比較的容易に除去することができる。さらに、エピクロロヒドリンおよびその加水分解生成物は、揮発性であり、従って、蒸発によって効率的に除去することができる。
【0043】
1つの実施形態では、この方法は、低反応性基材を選択することを含む。開示される方法の基材は、ビーズ、マクロサイズ粒子、ナノサイズ粒子、膜、メッシュ、骨格材料、または生物学的物質を含む機能性物質をその上に固定化するために開示される方法を用いて作製することができるいずれの固体支持体であってもよい。1つの実施形態では、基材は、ポリエステル基材、ポリアミド基材、エポキシ樹脂基材、ポリアクリレート基材、ヒドロキシ−官能化基材、およびポリサッカリド系基材からなる群より選択される。ポリサッカリド系基材は、コットンリンター、コットンパルプ、コットン布地、セルロース繊維、セルロースビーズ、セルロース粉末、微結晶セルロース、セルロース膜、レーヨン、セロファン、酢酸セルロース、酢酸セルロース膜、キトサン、キチン、デキストラン誘導体、およびアガロース誘導体からなる群より選択されてよい。基材はまた、生分解性、従って環境にやさしいものであってもよく、このことにより、農業用途または廃棄物処理用途などの環境に敏感な用途にそれらを適用することができる。基材はまた、生体適合性であってもよく、それによって、例えば透析の場合など、基材がヒトの体内に移植されるか、またはヒトの身体と連結される場合に、健康への有害な影響はほとんどまたはまったく誘発されることがない。
【0044】
開示される方法の化学カップリングの工程は、−30℃から100℃の範囲の温度で行ってよく、好ましくは0℃から100℃である。1つの実施形態では、第一の求電子化合物を基材へ化学的にカップリングさせる工程は、約50℃から60℃の温度で実施され;リンカーを第一の求電子化合物へ化学的にカップリングさせる工程は、約20℃から40℃の温度で実施され;第二の求電子化合物をリンカーへ化学的にカップリングさせる工程は、約20℃から40℃の温度で実施され;ならびに、機能性物質を第二の求電子化合物へ化学的にカップリングさせる工程は、約2℃から6℃の温度で実施される。有利には、基材は、室温を例とする温和な条件下、通常の雰囲気中にて生産および/または作製することができる。このことも、生産コストの低減および取り扱い易さの向上と言い換えられる。より有利には、最後の固定化反応は、2から6℃の水性バッファー中および通常雰囲気下などの非常に温和な条件下にて実施することができ、追加の試薬をまったく必要としない。このことにより、他の固定化法では問題となる可能性のあるような苛酷な条件または強い試薬による生物活性物質の不活性化または変性といったリスクが排除される。さらにより有利には、この方法を周囲温度にて実施することができることから、基材上への生物活性物質の固定化はまた、基材の活性化と同時に、またはそれに続いて実施することも可能である。
【0045】
1つの実施形態では、機能性物質は、ウレアーゼを例とする酵素などの生物学的に活性な物質である。有利には、ウレアーゼが基材上に固定化される場合、固定化されたウレアーゼを含有する基材は、透析用途に用いることができ、例えば、腹膜透析液または血液透析液の再生である。酵素はまた、ウリカーゼ、クレアチニナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、アシラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、プロテイナーゼ−Kのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0046】
1つの実施形態では、開示される方法は、1つ以上の続いての求電子化合物を第一および第二の求電子化合物の両方へ化学的にカップリングさせる工程をさらに含み、ここで、前記1もしくは複数の続いての求電子化合物は、前記第一および第二の求電子化合物の両方へカップリングされる場合、その上へ機能性物質を固定化するように構成される。例えば、第三、第四、第五、第六の求電子化合物などを、第一および第二の求電子化合物の両方へカップリングさせてよい。本明細書で開示される求電子基は、少なくとも1つのエポキシド基を含有していてよい。
【0047】
別の実施形態では、基材上へ機能性分子を固定化する方法が提供され、その方法は、本開示の方法によって作製されたその上に化合物を有する基材を提供する工程であって、前記化合物の各々は、基材へ化学的にカップリングされるエーテル含有部分、およびエーテル部分へカップリングされるエポキシド含有部分を有する、工程;ならびに、前記機能性分子を含有する溶液を前記基材上に配置された前記化合物へ誘導する工程であって、ここで、エポキシド含有部分は、そこへ固定化するために前記機能性分子と化学結合を形成する、工程、を含む。
【0048】
有利には、この化学結合は、アミン結合などの非加水分解性共有結合であってよい。その結果、機能性分子は、十分な安定性で基材上に固定化され、基材から容易に除去され得ない。
【0049】
第二の態様の方法は、安定化添加剤の実質的に均質である混合物を基材の表面へ適用して、前記機能性物質を安定化する工程をさらに含んでよい。1つの実施形態では、添加剤の実質的に均質である混合物を適用する工程は、前記添加剤の溶液の溶媒を基材上にて蒸発させることを含む。安定化添加剤は、グルコースなどの糖、エチレンジアミン四酢酸などの有機酸、システインなどのアミノ酸、およびアスコルビン酸などの糖酸、およびメルカプトエタノールなどのチオールからなる群より選択されてよい。
【0050】
別の実施形態では、機能性分子を固定化するためにその上に配置された化合物を有する基材が提供され、各化合物は、基材へ化学的にカップリングされるエーテル含有部分、および少なくとも1つの求核基を有するリンカーによってエーテル部分へカップリングされるエポキシド含有部分を含み、それによって、前記エポキシド含有部分は、前記エーテル含有部分または基材によって著しい立体障害が引き起こされることなく、機能性分子を前記エポキシド含有部分へ固定化するように前記エーテル含有部分から配置されている。有利には、基材は、安定性が改善され、機能性物質を効果的に固定化することができる公知の基材と比較して、比較的低コストで作製することができる。より有利には、基材は、生体分子とエポキシド含有部分との間の結合の高い安定性に起因して、その酵素特性を大きく喪失することなく、繰り返し再利用することができる。加えて、有害であることが考えられる物質の浸出がないことから、基材は、腹膜透析などの医療用途での使用に適している。
【0051】
1つの実施形態では、リンカーは、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アンモニア、水、または硫化水素などの非炭化水素である。
【0052】
1つの実施形態では、リンカーは、2から18個の炭素原子、2から16個の炭素原子、2から14個の炭素原子、2から12個の炭素原子、または2から10個の炭素原子、2から8個の炭素原子、2から6個の炭素原子、および2から4個の炭素原子を有する、飽和または不飽和の脂肪族鎖である。1つの実施形態では、リンカーは、4から8個の炭素原子、より好ましくは6個の炭素原子を有する飽和脂肪族鎖である。前記リンカーの求核基は、脂肪族鎖の末端部の1つに位置していても、または脂肪族鎖の末端部の間に位置していてもよい。1つの実施形態では、前記リンカーの求核基は、脂肪族鎖へ、そこから伸びる分岐鎖によって化学的にカップリングしていてよい。1つの実施形態では、2つの求核基が、前記リンカー上、好ましくは脂肪族鎖の末端部に配置される。1つの実施形態では、少なくとも1つの求核基が、脂肪族鎖の末端部に配置され、エーテルまたはエポキシド含有部分のいずれかへ、間に二次脂肪族リンカー鎖を挟んでカップリングされる。二次脂肪族リンカー鎖は、1から3個の炭素原子を有していてよい。
【0053】
基材は、前記基材上に配置されたコーティングをさらに含んでいてよく、このコーティングは、安定化添加剤の実質的に均質である混合物を含む。安定化添加剤は、グルコースなどの糖、エチレンジアミン四酢酸などの有機酸、システインなどのアミノ酸、およびアスコルビン酸などの糖酸からなる群より選択されてよい。
【0054】
別の実施形態では、透析装置に用いるための収着剤カートリッジが提供され、この収着剤カートリッジは、固定化されたウレアーゼを有する化合物がその上に配置された基材を含み、各化合物は、基材へ化学的にカップリングされるエーテル含有部分、および少なくとも1つの求核基を有するリンカーによってエーテル部分へカップリングされるエポキシド含有部分を含み、それによって、前記エポキシド含有部分は、前記エーテル含有部分または基材によって著しい立体障害が引き起こされることなく、ウレアーゼ分子を前記基材へ固定化するように前記エーテル含有部分から配置されている。
【0055】
別の実施形態では、透析の方法が提供され、その方法は、尿素を含有する透析液を、固定化されたウレアーゼを有する化合物がその上に配置された基材へ曝露させる工程であって、各化合物は、基材へ化学的にカップリングされるエーテル含有部分、および少なくとも1つの求核基を有するリンカーによってエーテル部分へカップリングされるエポキシド含有部分を含み、それによって、前記エポキシド含有部分は、前記エーテル含有部分または基材によって著しい立体障害が引き起こされることなく、ウレアーゼ分子を前記基材へ固定化するように前記エーテル含有部分から配置されている、工程;ならびに、前記尿素の少なくとも一部分が分解された後に、前記基材から透析液を除去する工程、を含む。
【0056】
別の実施形態では、透析装置における本開示に従う基材の使用が提供される。有利には、基材を用いて、透析装置中の透析液から、効果的かつ安全にトキシンを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1aは、二求核性リンカーを用いた開示される方法の1つの実施形態の概略図であり、図1bは、図1aに示される方法の同じ実施形態から得ることができる、別の考え得る修飾された基材を示す概略図である。
【図2】オキシラン官能化リンカーを用いた開示される方法の別の実施形態の概略図である。
【図3】ヘキサンジアミンがリンカーとして用いられ、エピクロロヒドリンが第一および第二のエポキシド含有化合物として用いられる場合の、図1aに示される方法の具体例の概略図である。
【図4】グリシドールがリンカーとして用いられる場合の、図1bに示される方法の具体例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
定義
本明細書で用いられる以下の単語および用語は、示した意味を有するものとする。
【0059】
「エポキシド」、「エポキシ基」、または「オキシラン」の用語は、2つの炭素原子と1つの酸素原子による三員環配置からなる化学的官能基を示す。三員環中の2つの炭素原子は、独立して、置換されていてよい。「エポキシド」の用語はまた、少なくとも1つのエポキシ基を有する分子または化合物を示す場合もある。
【0060】
「エポキシド含有化合物」の用語は、エポキシドであるか、またはエポキシド部分を含有する化合物であるいずれの化合物をも意味する。代表的なエポキシド含有化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド、特に低級アルキレンオキシド、グリシドールなどのアルコールエポキシド、ならびにエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、1,2−エポキシ−4−クロロブタン、1,2−エポキシ−4−ブロモブタン、1,2−エポキシ−4−ヨードブタン、2,3−エポキシ−4−クロロブタン、2,3−エポキシ−4−ブロモブタン、2,3−エポキシ−4−ヨードブタン、2,3−エポキシ−5−クロロペンタン、2,3−エポキシ−5−ブロモペンタン、1,2−エポキシ−5−クロロペンタンなどのエピハロヒドリン;2,2−ビス(p−1,2−エポキシプロポキシフェニル)−プロパン、1,4−ビス(1,2−エポキシプロポキシ)ベンゼン、N,N’−ビス(2,3−エポキシプロピル)ピペラジンなどのエポキシ化合物である。
【0061】
本明細書で用いられる場合、「求電子基」、「求電子体」などの用語は、電子対を受容して共有結合を形成することができる原子または原子群を意味する。本明細書で用いられる「求電子基」としては、これらに限定されないが、ハライド、カルボニル、およびエポキシド含有化合物が挙げられる。一般的な求電子体は、チオホスゲン、グリセリンジクロロヒドリン、フタロイルクロリド、スクシニルクロリド、クロロアセチルクロリド、クロロスクシニルクロリドなどのハライド;クロロアセトン、ブロモアセトンなどのケトン;グリオキサールなどのアルデヒド;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メタ−キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネートなどのイソシアネート、ならびにこれらの化合物の誘導体であってよい。
【0062】
本明細書で用いられる場合、「求核基」、「求核体」などの用語は、共有結合を形成することができる電子対を有する原子または原子群を意味する。この種の基は、アニオン性基として反応を起こすイオン化可能基であってよい。本明細書で用いられる「求核基」としては、これらに限定されないが、ヒドロキシル、一級アミン、二級アミン、三級アミン、およびチオールが挙げられる。
【0063】
「エーテル」または「エーテル含有」の用語は、一般式R−O−Rの有機化合物のクラスを意味し、ここで、Rは炭素である。本明細書で用いられる場合、「エーテル」または「エーテル含有」の用語は、シアリルエーテル、Si−O−Siを例とするRが炭素ではない化合物は除外することを意図している。
【0064】
「ポリアミン」の用語は、一級アミノ基、二級アミノ基、および三級アミノ基を含む群から選択される少なくとも2つの正のアミノ基を有する有機化合物を意味する。従って、ポリアミンは、ジアミン、トリアミン、およびそれ以上の多価アミンを含む。
【0065】
本明細書で用いられる場合、「生分解性」または「生分解性ポリマー」の用語は、分解可能および/または堆肥化可能である環境にやさしい物質を意味する。そのような物質は、様々な生物によって、または光および/もしくは酸素への曝露によって、分解可能/堆肥化可能であってよい。従って、本明細書で用いられる場合、「生分解性」の用語は、オキソ生分解性、光生分解性、および微生物生分解性である物質を含むものと理解される。
【0066】
「生体適合性」または「生体適合性ポリマー」の用語は、血漿または血液を例とする生物体液と接触して用いられる場合に、用いられた量において、無毒性、非遊走性(non-migratory)、化学的に不活性、および実質的に非免疫原性であるポリマーを意味する。適切な生体適合性ポリマーとしては、例として、セルロースまたはキチンなどのポリサッカリドが挙げられる。
【0067】
「バイオポリマー」の用語は、生物によって産生されるか、または生物由来であるポリマーを意味する。代表的なバイオポリマーとしては、ポリペプチド、核酸、ならびにセルロースおよびキチンを例とするポリサッカリドが挙げられる。
【0068】
分子または物質の記述に用いられる場合、「官能性」の用語は、原子群であって、それが結合する物質および分子の化学的特性を決定するように配置された原子群を意味する。官能基の例としては、ハロゲン原子、アミド基、ヒドロキシル基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0069】
「標的分子」の用語は、検出、単離、または試験されるべき分子であり、生物学的物質などの機能性物質と反応するか、またはこれと結合することができる分子を意味する。代表的な標的分子としては、タンパク質、ポリサッカリド、糖タンパク質、ホルモン、受容体、脂質、小分子、薬物、代謝物、補助因子、遷移状態類似体、およびトキシン、またはその同族核酸と相補的でないいずれの核酸も挙げられる。標的分子は、生体内(in vitro)、生体外(in situ)、または体外(ex vivo)であってよい。
【0070】
本明細書で用いられる「機能性物質」などの用語は、標的分子と反応するか、もしくは結合するか、もしくは親和性を有することができる部位を持つ分子、または活性物質を広く意味する。「機能性物質」などの用語は、生物学的物質および生体分子を広く包含する。
【0071】
本明細書で用いられる「生物学的物質」または「生体分子」などの用語は、実質的に生物学的起源であるいずれの物質および化合物をも意味する。従って、この用語は、自然源から単離することができるものなどの自然の分子だけでなく、自然の分子の少なくとも1つの特性が存在する限りにおいて、それから誘導される形態、断片、および誘導体、さらには遺伝子組換え形態および人工分子も包含する。従って、この用語には、タンパク質、ポリサッカリド、および核酸などの大型のポリマー分子、ならびに一次代謝物、二次代謝物、および自然産物などの小分子を含む、生物によって産生される有機分子が含まれる。
【0072】
本明細書で用いられる「生物学的活性物質」、「生物活性物質」などの用語は、標的分子と反応するか、もしくは結合するか、もしくは親和性を有することができる部位を持つ生物学的分子または生理学的活性物質を広く意味する。これに含まれるのは、これらに限定されないが、酵素などの触媒活性部位を有する物質、核酸、オリゴヌクレオチド、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはレクチンなどの特定の化合物もしくは特定のクラスの化合物と結合することができる部位を有する物質、ビタミン、ペプチド、タンパク質、ホルモン、内分泌撹乱物質、糖、脂質などである。
【0073】
「低反応性基材」の用語は、上記で定める機能性または生物学的物質と、検出可能な化学的または生物学的反応を起こさない物質からなる基材を意味する。ある実施形態では、機能性または生物学的物質は、生体分子を含んでよく、非反応性基材は、基材物質がヒトの身体に対して毒性でなく、健康へのいかなる有害な影響も引き起こすことがないという点で生体適合性である物質からなる。生体適合性でもある非反応性基材は、通常、一般的に不溶性であり、可撓性であって、曲面表面を含む多くの種々の形状に追随することができるポリマー物質である。「ポリマー」の用語は、共有結合によって互いに連結された数多くの構造単位からなる高分子量の化学化合物を示すために用いられることには留意されたい。上記で定める生物学的物質と非反応性であり生体適合性である1つの代表的なポリマー物質は、ポリサッカリドセルロースである。
【0074】
本明細書で用いられる場合、「リンカー」および「スペーサー」の用語は、化合物の2つの部分を接続する有機部分を意味する。
【0075】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」の用語は、その意味に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25個の炭素原子を例とする1から25個の炭素原子を有する、一価(「アルキル」)および二価(「アルキレン」)の直鎖状または分岐鎖状または環状飽和脂肪族基を含む。例えば、アルキルの用語には、これらに限定されないが、メチル、エチル、1−プロピル、イソプロピル、1−ブチル、2−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、アミル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、へキシル、4−メチルペンチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1,2,2−トリメチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、ヘプチル、1−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、1,2−ジメチルペンチル、1,3−ジメチルペンチル、1,4−ジメチルペンチル、1,2,3−トリメチルブチル、1,1,2−トリメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、5−メチルヘプチル、1−メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、などを含む。低級アルキルとは、1から6個の炭素原子、好ましくは1から4個の炭素原子である、上記で定めるアルキル基である。
【0076】
本明細書で用いられる場合、「アルケニル」の用語は、その意味に、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25個の炭素原子を例とする2から25個の炭素原子を有し、アルキル鎖のいずれかの位置に、該当する場合はE、Z、シス、またはトランスの立体化学である、少なくとも1つの二重結合を有する、一価(「アルケニル」)および二価(「アルケニレン」)の直鎖状または分岐鎖状または環状不飽和脂肪族基を含む。アルケニル基の例としては、これらに限定されないが、ビニル、アリル、1−メチルビニル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテンチル(3-butentyl)、1,3−ブタジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテンチル(2-pententyl)、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1,3−ペンタジエニル、2,4−ペンタジエニル、1,4−ペンタジエニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、2−メチルペンテニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテンチル(2-heptentyl)、3−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニルなどが挙げられる。低級アルケニルとは、2から6個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子である、上記で定めるアルケニル基である。
【0077】
本明細書で用いられる場合、「アルキニル」の用語は、その意味に、2から10個の炭素原子を有し、炭素鎖のいずれかの位置に少なくとも1つの三重結合を有する、一価(「アルキニル」)および二価(「アルキニレン」)の直鎖状または分岐鎖状または環状不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルキニル基の例としては、これらに限定されないが、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−メチル−2−ブチニル、3−メチル−1−ブチニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニル、メチルペンチニル、1−ヘプチニル、2−ヘプチニル、1−オクチニル、2−オクチニル、1−ノニル、1−デシニルなどが挙げられる。低級アルキニレンとは、2から6個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子である、上記で定めるアルキニレン基である。
【0078】
本明細書で用いられる場合、「アリール」の用語は、1つ以上の芳香族環を有する単環または多環式炭素環系を意味し、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどが挙げられる。アリール基(二環式アリール基を含む)は、無置換であっても、または1から5個、もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく(通常、単環式アリールの場合は1から5個の置換基、二環式/多環式アリールの場合は6個以上の置換基)、置換基は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アジド、シアノ、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、カルボキシアミド、カルバミド、カルバメート、サルフェート、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィン、および保護ヒドロキシからなる群より選択される。加えて、置換アリール基には、テトラフルオロフェニルおよびペンタフルオロフェニルが含まれる。
【0079】
「ヘテロアリール」の用語は、単独で用いられても、または別の基の一部として用いられても、置換または無置換の芳香族ヘテロ環系を意味する(単環式または二環式)。ヘテロアリール基は、例えば、約3から約50個の炭素原子を有していてよい。ヘテロアリール基は、通常、約4から約14個の環原子を有し、炭素原子、および酸素、窒素、または硫黄から選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含有する芳香族ヘテロ環系を含む。代表的なヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、フラン、チオフェン、インドール、アザインドール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、N−メチルピロール、ピラゾール、N−メチルピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1H−テトラゾール、1−メチルテトラゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、ベンズイソキサゾール、ベンズイミダゾール、N−メチルベンズイミダゾール、アザベンズイミダゾール、インダゾール、キナゾリン、キノリン、およびイソキノリンが挙げられる。二環式芳香族ヘテロアリール基としては、(a)1つの窒素原子を有する6員環芳香族(不飽和)ヘテロ環と縮合した;(b)2つの窒素原子を有する5もしくは6員環芳香族(不飽和)ヘテロ環と縮合した;(c)1つの酸素原子もしくは1つの硫黄原子のいずれかと共に1つの窒素原子を有する5員環芳香族(不飽和)ヘテロ環と縮合した;または、(d)O、N、もしくはSから選択される1つのヘテロ原子を有する5員環芳香族(不飽和)ヘテロ環と縮合した、フェニル、ピリジン、ピリミジン、またはピリジジン環が挙げられる。「ヘテロアリール」の用語はまた、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アジド、シアノ、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、カルボキシアミド、カルバミド、カルバメート、サルフェート、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィン、および保護ヒドロキシからなる群より独立して選択される1から5個の置換基で例えば置換された芳香族ヘテロ環も含む。
【0080】
本明細書で用いられる場合、「所望に応じて置換される」の用語は、この用語が示す基が、無置換であってよく、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ハロ、カルボキシル、カルボキシアルキル、ハロアルキル、ハロアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルコキシ、メルカプト、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケノイル、アルキノイル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アミノアシル、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクロキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクロアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アジド、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、カルボキシアミド、カルバミド、カルバメート、オキシム、ヒドロキシルアミン、サルフェート、スルホネート、スルフィネート、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アシルチオ、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、およびホスフィンなどのリン含有基、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、−C(O)NH(アルキル)、−C(O)N(アルキル)、および−C(O)NR’R’’から独立して選択される1つ以上の基で置換されていてもよいことを意味し、ここで、R’およびR’’は、独立して、本明細書で定義される通りである、水素、アルキル、アリール、またはヘテロアリールである。
【0081】
本明細書で用いられる場合、「ハロゲン」の用語、または「ハライド」もしくは「ハロ」などの変化形は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。
【0082】
本明細書で用いられる場合、「アミノ」または「アミン」の用語は、−NRの形の基を意味し、ここで、RおよびRは、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、および所望に応じて置換されていてよいアリール基を含むがこれらに限定されない群より個々に選択される。
【0083】
「化学的にカップリングされた」および「化学的にカップリングする」の用語、ならびにその文法上の変化形は、分子の共有および非共有結合を意味し、特に、しかし非限定的に、共有結合、静電結合、水素結合、およびファンデルワールス結合を含む。これらの用語は、分子の間接的および直接結合の両方を包含する。従って、第一の化合物が第二の化合物へ化学的にカップリングされる場合、この連結は、直接の化学結合によるものであっても、またはその他の化合物、リンカー、もしくは連結部を介する間接的な化学結合によるものであってもよい。
【0084】
本明細書で用いられる場合、「ウレアーゼ単位」またはウレアーゼ「酵素単位」、[U]、の用語は、23℃およびpH7.5にて、1分間あたり1マイクロモルのアンモニアを遊離させる酵素(ウレアーゼ)の量を意味する。
【0085】
「実質的に」の語は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない状態であってもよい。必要に応じて、「実質的に」の語は本発明の定義から省略されていてよい。
【0086】
特に断りのない限りにおいて、「含んでいる(comprising)」および「含む(comprise)」の用語、ならびにそれらの文法的変化形は、列挙された要素を含むだけでなく、追加的な列挙されていない要素も含んでよいという、「非限定的」または「包括的」な言語を表すことを意図している。
【0087】
本明細書で用いられる場合、製剤の成分濃度における「約」の用語は、典型的には示された値の+/−5%、より典型的には示された値の+/−4%、より典型的には示された値の+/−3%、より典型的には示された値の+/−2%、さらにより典型的には示された値の+/−1%、さらにより典型的には示された値の+/−0.5%を意味する。
【0088】
本開示全体を通して、特定の実施形態は、範囲の形式で開示される場合がある。範囲の形式での記述は、単に便宜上および簡潔さのためのものであることは理解されるべきであり、開示される範囲の幅を固定的に限定するものとして解釈されるべきではない。従って、範囲の記述は、具体的に開示される考え得るすべてのサブ範囲、ならびにその範囲内の個々の数値を有するものと見なされるべきである。例えば、1から6などの範囲の記述は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの具体的に開示されるサブ範囲、ならびに、1、2、3、4、5、および6を例とするその範囲内の個々の数値を有するものと見なされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0089】
機能性物質をその上に固定化するための基材および機能性分子をその上に固定化するための基材を作製する方法の代表的な限定されない実施形態を、ここで開示する。
【0090】
基材は、その上に機能性分子を固定化するために配置された化合物を有し、各々の化合物は:基材へ化学的にカップリングされた部分Rであって、前記部分Rは、エーテル、エステル、カルボニル、カーボネートエステル、チオエーテル、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、およびカルボノチオイルからなる群より選択される、部分R;ならびに、少なくとも1つの求核基を含むリンカーによって部分Rへカップリングされたエポキシド含有部分、を含む鎖を有する。
【0091】
1つの実施形態では、部分Rは、アミン、アミド、カルバミド、尿素、およびグアニジンからなる群よりさらに選択される。
【0092】
1つの実施形態では、求核基は、酸素含有部分および硫黄含有部分の少なくとも1つを除外する。
【0093】
別の実施形態では、基材は、鎖へカップリングした追加のエポキシド含有基を含む。1つの実施形態では、追加のエポキシド含有基の数は、1、2、3、4、および5の数から選択される。別の実施形態では、追加のエポキシド含有基の少なくとも1つは、前記リンカーの求核基によって前記鎖へカップリングされる。
【0094】
リンカーは、それによって前記追加のエポキシド含有基が前記鎖にカップリングされる追加の求核基を含んでいてよい。別の実施形態では、追加のエポキシド含有基は、前記リンカーの追加の求核基とカップリングすることによって鎖から分岐していてよい。
【0095】
1つの実施形態では、前記リンカーの求核基は、アミンである。リンカーは、飽和および不飽和の脂肪族および芳香族アミン、ジアミン、ならびにトリアミンからなる群より選択されてよい。1つの実施形態では、前記アミンの脂肪族基は、アルキル基である。
【0096】
別の実施形態では、リンカーは、エポキシド基を含有していてよい。
【0097】
別の実施形態では、リンカーは、二求核性種を含む。二求核性リンカーは、アルキルジアミンおよびアルケンジアミンの少なくとも1つから選択されてよい。1つの実施形態では、二求核性リンカーは、エタンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミンの少なくとも1つから選択される。1つの実施形態では、二求核性リンカーは、ヘキサンジアミンである。
【0098】
別の実施形態では、エポキシド含有化合物は、エピハロヒドリンと前記リンカーの求核基との反応によって得られる。
【0099】
1つの実施形態では、基材は、前記エポキシド含有基によって固定化される機能性分子に対して不活性であってよい。
【0100】
別の実施形態では、基材は、ポリマーであってよい。ポリマーは、生体適合性ポリマーであってよい。別の実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリエステル基材、ポリアミド基材、ポリアクリレート基材、およびポリサッカリド系基材からなる群より選択されてよい。1つの実施形態では、ポリマーは、コットンリンター、コットンパルプ、コットン布地、セルロース繊維、セルロースビーズ、セルロース粉末、微結晶セルロース、セルロース膜、レーヨン、セロファン、酢酸セルロース、酢酸セルロース膜、キトサン、キチン、デキストラン誘導体、およびアガロース誘導体からなる群より選択されてよいポリサッカリド系基材である。
【0101】
別の実施形態では、基材は、バイオポリマーである。バイオポリマーは、セルロース、キトサン、キチン、デキストラン、アガロース、およびこれらの誘導体から選択されてよい。
【0102】
別の実施形態では、基材は、前記基材上に配置されたコーティングを含んでいてよく、このコーティングは、前記機能性分子を安定化するために選択された安定化添加剤の実質的に均質である混合物を含む。1つの実施形態では、安定化添加剤は、糖、有機酸、アミノ酸、糖酸、およびチオールからなる群より選択されてよい。
【0103】
別の実施形態では、機能性分子を基材上に固定化する方法が提供される。この方法は、機能性分子を本明細書で述べる基材へ曝露する工程を含む。
【0104】
1つの実施形態では、機能性分子は、親和性リガンド、キレート剤、触媒、イオン交換体、色素、指示薬、および生体分子からなる群より選択される。別の実施形態では、機能性分子は、キラルである。別の実施形態では、機能性分子は、生体分子である。生体分子は、酵素であってよい。酵素は、ウレアーゼ、ウリカーゼ、クレアチニナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、アシラーゼ、カタラーゼ、エステラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、プロテイナーゼ−Kからなる群より選択されてよい。
【0105】
別の実施形態では、この方法は、前記機能性分子を安定化するために選択された安定化添加剤の実質的に均質である混合物を、基材の表面へ安定化のために適用する工程をさらに含む。添加剤の実質的に均質である混合物を適用する工程は、前記添加剤の溶液の溶媒を基材上にて蒸発させることを含む。1つの実施形態では、安定化添加剤は、糖、有機酸、アミノ酸、糖酸、およびチオールからなる群より選択される。
【0106】
別の実施形態では、その上へ機能性分子を固定化するための基材を作製する方法も提供される。その方法は:(i)基材の表面にカップリングした求電子化合物を提供する工程;(ii)求電子化合物に求核置換反応を起こさせることでその上へ求核基を提供し、それによって基材表面の求核性を増加させる工程;(iii)求核基に別の求電子化合物との求核置換反応を起こさせることで基材表面上に求電子基を提供し、それによって基材の求電子性を増加させる工程、を含む。
【0107】
1つの実施形態では、工程(ii)および(iii)は、n回繰り返されて、前記基材上にn世代分の求電子基が形成されてよい。1つの実施形態では、工程(ii)および(iii)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20回、またはそれを超える回数繰り返される。
【0108】
1つの実施形態では、基材の表面にカップリングした求電子化合物を提供する前記工程は、第一の求電子化合物を基材へ化学的にカップリングさせることを含む。
【0109】
別の実施形態では、工程(ii)は、求核体を第一の求電子化合物と反応させる工程を含む。別の実施形態では、工程(iii)は、第二の求電子化合物をその求核体へ化学的にカップリングさせることを含む。
【0110】
求電子化合物は、エポキシド含有化合物であってよい。1つの実施形態では、求電子化合物は、アルキレンオキシド、アルコールエポキシド、およびエピハロヒドリンなどのエポキシ化合物、ハライドから選択されてよい。求電子化合物はまた、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、およびこれらの化合物の誘導体も含んでよい。
【0111】
別の実施形態では、エポキシド含有化合物は、エピハロヒドリンである。1つの実施形態では、エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、1,2−エポキシ−4−クロロブタン、1,2−エポキシ−4−ブロモブタン、1,2−エポキシ−4−ヨードブタン、2,3−エポキシ−4−クロロブタン、2,3−エポキシ−4−ブロモブタン、2,3−エポキシ−4−ヨードブタン、2,3−エポキシ−5−クロロペンタン、2,3−エポキシ−5−ブロモペンタン、1,2−エポキシ−5−クロロペンタンからなる群より選択されてよい。1つの実施形態では、エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリンである。
【0112】
1つの実施形態では、求核体は、二求核体または多求核体である。別の実施形態では、求核体は、アミンを含む。アミンは、飽和および不飽和の脂肪族または芳香族アミン、ジアミン、トリアミン、ならびにそれ以上のポリアミンからなる群より選択されてよい。1つの実施形態では、前記アミンの脂肪族基は、アルキル基から選択される。1つの実施形態では、アミンは、エタンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミンの少なくとも1つから選択されてよい。1つの実施形態では、アミンは、ヘキサンジアミンである。
【0113】
基材は、ポリマーを含んでよい。ポリマーは、生体適合性ポリマーであってよい。1つの実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリエステル基材、ポリアミド基材、ポリアクリレート基材、およびポリサッカリド系基材からなる群より選択されてよい。
【0114】
1つの実施形態では、基材は、ポリサッカリド系基材である。ポリサッカリド系基材は、コットンリンター、コットンパルプ、コットン布地、セルロース繊維、セルロースビーズ、セルロース粉末、微結晶セルロース、セルロース膜、レーヨン、セロファン、酢酸セルロース、酢酸セルロース膜、キトサン、キチン、デキストラン誘導体、およびアガロース誘導体からなる群より選択されてよい。
【0115】
別の実施形態では、ポリマーは、バイオポリマーであってよい。バイオポリマーは、セルロース、キトサン、キチン、デキストラン、アガロース、およびこれらの誘導体から選択されてよい。
【0116】
別の実施形態では、機能性分子は、親和性リガンド、キレート剤、触媒、イオン交換体、色素、指示薬、および生体分子からなる群より選択されてよい。1つの実施形態では、機能性分子は、キラルであってよい。別の実施形態では、機能性分子は、生体分子である。生体分子は、ウレアーゼ、ウリカーゼ、クレアチニナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、アシラーゼ、カタラーゼ、エステラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、プロテイナーゼ−Kからなる群より選択される酵素であってよい。
【0117】
別の実施形態では、この方法は、安定化添加剤の実質的に均質である混合物を基材の表面へ適用する工程をさらに含んでよく、ここで、前記安定化添加剤は、前記機能性分子を安定化するために選択される。添加剤の実質的に均質である混合物を適用する工程は、前記添加剤の溶液の溶媒を基材上にて蒸発させることを含んでよい。1つの実施形態では、安定化添加剤は、糖、有機酸、アミノ酸、糖酸、およびチオールからなる群より選択されてよい。
【0118】
透析装置に用いるための収着剤カートリッジも提供され、この収着剤カートリッジは、ウレアーゼを固定化するための本明細書で述べる基材を含む。
【0119】
透析装置に用いるための透析器も提供され、この透析器は、ウレアーゼを固定化するための本明細書で述べる基材を含む。
【0120】
透析法も提供され、この方法は:尿素を含有する透析液を本明細書で述べる基材へ曝露する工程;および前記基材から透析液を除去する工程、を含む。
【0121】
本明細書で述べる基材の透析装置における使用も提供される。
【0122】
別の実施形態では、本開示に従う基材の、クロマトグラフィ(キラルクロマトグラフィおよび親和性クロマトグラフィを含む)の固相物質としての使用が提供される。別の実施形態では、本開示は、センサーおよびバイオセンサーにおける基材の使用を提供する。
【0123】
別の実施形態では、機能性物質をその上に固定化するための基材を作製する方法が提供され、その方法は、第一の求電子化合物を基材へ化学的にカプリングさせる工程;および、第二の求電子化合物を、基材へカップリングされた第一の求電子化合物へ化学的にカップリングさせる工程を含み、ここで、前記第二の求電子化合物は、前記第一の求電子化合物へカップリングされた場合に、その上に機能性物質を固定化するように構成される。1つの実施形態では、第一の求電子化合物は、二求電子体であり、二求電子体の1つの求電子基と基材上の求核基との間の求核置換反応によって、基材へ化学的に結合されている。
【0124】
この第一の反応の結果として、低反応性(求核性)基材は、高反応性(求電子性)基材へと変換される。二求電子性試薬は、エピハロヒドリンであってよい。それはまた、臭化シアン、ブロモ酢酸、グルタルアルデヒドなどを含む群の1つであってもよい。第二の求電子化合物は、化学的な連結を介するなどにより、第一の求電子化合物へ化学的に直接結合されてよい。第二の求電子化合物はまた、例えばリンカーを介して、第一の求電子化合物へ化学的に間接的に結合されてもよい。1つの実施形態では、第一および第二の求電子化合物は、単量体である。
【0125】
第一の求電子化合物を基材へ化学的にカップリングする工程の前に、この方法は、第一の求電子化合物へ化学的にカップリングすることができる官能基を基材が有するように、基材を官能化する工程を含んでよい。
【0126】
1つの実施形態では、この方法は、リンカーを用いて第二の求電子化合物を第一の求電子化合物へカップリングさせる工程を含む。リンカーはまた、荷電状態が中性であってもよい。1つの実施形態では、リンカーはまた、飽和または不飽和、直鎖状または分岐鎖状であり、所望に応じて置換されていてよい脂肪族C1−25鎖も含んでよく、ここで、この鎖の炭素は、所望に応じて、−C(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)NRNR−、−CO−、−OC(O)−、−NRCO−、−O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRNR−、−NRC(O)−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−SONR−、−NRSO−、−C(O)NRO−、または−NRC(NR)NR−によって置き換えられてよく、ここで、Rは、水素またはC1−10脂肪族から選択され;ここで、C1−10脂肪族は、置換されていても、または無置換であってもよい。
【0127】
1つの実施形態では、リンカーは、エポキシド基を含有しない。リンカーはまた、少なくとも1つの求核基を含んでいてもよい。リンカーは、多求核性リンカー(multi-nucleophilic linker)であってよく、すなわち、リンカーは、2つ以上の求核基を含有していてよい。1つの実施形態では、リンカーは、二求核性リンカーである。リンカーが二求核性リンカーである場合、二求核性リンカーの求核体のうちの少なくとも1つは、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、PH、およびPR(式中、R、R、およびRは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択される)からなる群より選択されてよい。
【0128】
官能性リンカーがエポキシド基を含有せず、二求核性リンカーである場合、リンカーは、一般式(I):
【化3】

(式中、
XおよびYは、独立して、NH、NR、O、S、COO、CONH、およびCONRから選択され、
Rは、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
nは、0から25までの整数である)
を有していてよい。
【0129】
別の実施形態では、二求核性リンカーは、一般式(II):
【化4】

(式中、
XおよびYは、独立して、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、PH、PRから選択され、
R、R、R、R、Rは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
m、n、p、およびqは、独立して、0から25より選択される整数である)
を有していてもよい。
【0130】
上記式(II)の基:
【化5】

の位置は、交換されてよく、ならびに、これらの基はまた、当業者であれば理解されるように、2ヶ所以上の位置に存在していてもよい。
【0131】
別の実施形態では、二求核性リンカーは、一般式(IIa):
【化6】

(式中、
XおよびYは、独立して、NR、NRO、OR、SR、SeR、COOR、CONR、CSSR、COSR、CONRO、CONRNR、CNOR、およびPR、ならびにカチオン性付加体を形成することができるその他のいずれかの置換基からなる群より選択され、
R、R、およびRは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
nは、0から25までの整数である)
を有する。
【0132】
1つの実施形態では、可変部XおよびYはまた、エポキシド基と反応して化学結合を形成することができるいずれの求核基であってもよい。
【0133】
二求核性リンカーは、アルキルジアミン基を含んでよい。1つの実施形態では、二求核性リンカーは、エチレンジアミンおよびヘキサンジアミンのうちの少なくとも1つである。別の実施形態では、リンカーは、NRなどの求核体を含む荷電化合物であってよく、ここで、RおよびRは、上記で定義される。リンカーはまた、HO、HS、HSe、PH、PHR、NH、NHR、およびNHRからなる群より選択される小化合物であってもよく、ここで、R、R、およびRは、上記で定義される通りである。
【0134】
リンカーは、エポキシド含有化合物であっても、またはそうでなくてもよい。1つの実施形態では、リンカーがエポキシド含有化合物である場合、リンカーは、一般式(Ia):
【化7】

(式中、
Xは、NH、NR、O、S、Se、COO、CONRNR、CONRO、CONH、およびCONRから選択され;RおよびRは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
nは、0から25までの整数である)
を有してもよい。
【0135】
別の実施形態では、エポキシド含有リンカーは、一般式(Ib):
【化8】

(式中、
Xは、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、PH、PRから選択され、
R、R、R、R、Rは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
m、n、p、およびqは、独立して、0から25より選択される整数である)
を有していてもよい。
【0136】
上記式(II)の基:
【化9】

の位置は、交換されてよく、ならびに、これらの基はまた、当業者であれば理解されるように、2ヶ所以上の位置に存在していてもよい。
【0137】
1つの実施形態では、可変部Xはまた、エポキシド基と反応して化学結合を形成することができるいずれの求核基であってもよい。
【0138】
エポキシ含有リンカーは、ヒドロキシオキシランを含んでよい。1つの実施形態では、エポキシ含有リンカーは、グリシドールである。
【0139】
開示される方法はまた、先行する求電子化合物へ、続いての求電子化合物または両親媒性(ambiphilic)化合物を、直接または上記で開示される官能性リンカーを介して間接的に、化学的にカップリングする工程をさらに含んでもよい。続いての求電子化合物を化学的にカップリングするこのような追加の工程は、所望される鎖長が達成されるまで繰り返し実施してよい。有利には、これらの工程を繰り返すことにより、生物学的物質と結合するための、活性オキシラン部位などの求電子性部位の数を増加することができ、それによって、生物学的物質の基材に対する確率および親和性が上昇する。1つの実施形態では、リンカーが両親媒性化合物である場合、リンカーは、グリシドールを含む。
【0140】
1つの実施形態では、本明細書で開示される求電子化合物は、エポキシド含有化合物を含む。例えば、第一の求電子化合物および第二の求電子化合物は、第一のエポキシド含有化合物および第二のエポキシド含有化合物であってよい。1つの実施形態では、第一のエポキシド含有化合物および第二のエポキシド含有化合物のうちの少なくとも一方が、エピハロヒドリンである。エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、およびエピヨードヒドリンからなる群より選択されてよい。1つの実施形態では、この方法は、低反応性基材を選択することを含む。基材は、ポリエステル基材、ポリアミド基材、エポキシ樹脂基材、ポリアクリレート基材、ヒドロキシル−官能化基材、およびポリサッカリド系基材からなる群より選択されてよい。1つの実施形態では、ポリサッカリド系基材は、コットンリンター、コットンパルプ、コットン布地、セルロース繊維、セルロースビーズ、セルロース粉末、微結晶セルロース、セルロース膜、レーヨン、セロファン、酢酸セルロース、酢酸セルロース膜、キトサン、キチン、デキストラン誘導体、およびアガロース誘導体からなる群より選択される。
【0141】
1つの実施形態では、化学的カップリングの工程は、約−30℃から約100℃、約0℃から約70℃、約4℃から約30℃、または約10℃から約27℃、約40℃から約70℃、約23℃から約35℃、および約23℃から約30℃の範囲の温度で行われる。
【0142】
機能性物質は、生物学的に活性であってよく、生物学的物質および/または生体分子を含んでよい。1つの実施形態では、生物学的物質は、酵素である。この方法は、第一の求電子化合物へカップリングされた前記第二の求電子化合物へ、酵素を化学的にカップリングさせる工程を含んでよい。前記第二の求電子化合物へ酵素を化学的にカップリングさせる工程は、糖、チオール、抗酸化剤、およびキレート剤などの安定化および活性化添加剤を提供することを含んでよい。
【0143】
酵素は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、およびリガーゼからなる群より選択されてよい。オキシドレダクターゼは、酸化還元反応を触媒し、酸化された基質は、水素または電子供与体と見なされる。トランスフェラーゼは、1つの分子から別の分子への官能基の転移を触媒する。ヒドロラーゼは、種々の結合の加水分解による開裂を触媒する。リアーゼは、加水分解または酸化以外の手段による種々の結合の開裂を触媒し、すなわち、例えば、二重結合からの基の除去もしくは二重結合への基の付加、または電子の転位が関与するその他の開裂をそれらが触媒することを意味する。イソメラーゼは、分子内転位を触媒し、これは1つの分子内で変化することを意味する。リガーゼは、2つの分子が連結する反応を触媒する。
【0144】
1つの実施形態では、酵素は、オキシドレダクターゼであり、これは、CH−OH基、アルデヒドもしくはオキソ基、CH−CH基、CH−NH基、CH−NH基、NADHもしくはNADPH、窒素化合物、硫黄基、ヘム基、ジフェノールおよび関連物質、水素、分子酸素の取り込みを伴う単一供与体(single donors)、分子酸素の取り込みもしくは還元を伴う対供与体(paired donors)、またはその他などの供与体の異なる基に作用することができる。オキシドレダクターゼはまた、CH基、またはX−HおよびY−Hに作用してX−Y結合を形成することもできる。通常、オキシドレダクターゼの群に属する酵素は、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、レダクターゼなどと称される場合がある。代表的なオキシドレダクターゼとしては、リンゴ酸オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、アリールアルコールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、長鎖アルコールオキシダーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、ポリビニルアルコールオキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−マンニトールオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、一酸化炭素オキシダーゼ、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸オキシダーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、L−アスパラギン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、メタンチオールオキシダーゼ、3−ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、ラッカーゼ、カタラーゼ、脂肪酸ペルオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ジアリールプロパンペルオキシダーゼ、フェロキシダーゼ、プテリジンオキシダーゼ、コルンバミンオキシダーゼなどのオキシダーゼが挙げられる。また、オキシドレダクターゼとしては、カテコール1,2−ジオキシゲナーゼ、ゲンチジン酸1,2−ジオキシゲナーゼ、ホモゲンチジン酸1,2−ジオキシゲナーゼ、リポオキシゲナーゼ、アスコルビン酸2,3−ジオキシゲナーゼ、3−カルボキシエチルカテコール2,3−ジオキシゲナーゼ、インドール2,3−ジオキシゲナーゼ、コーヒー酸3,4−ジオキシゲナーゼ、アラキドン酸5−リポキシゲナーゼ、ビフェニル−2,3−ジオール1,2−ジオキシゲナーゼ、リノール酸11−リポキシゲナーゼ、アセチルアセトン開裂酵素、乳酸2−モノオキシゲナーゼ、フェニルアラニン2−モノオキシゲナーゼ、イノシトールオキシゲナーゼなどのオキシゲナーゼも挙げ得る。また、オキシドレダクターゼとしては、アルコールデヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、プロパンジオールリン酸デヒドロゲナーゼ、L−乳酸デヒドロゲナーゼ、D−乳酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グルコース1−デヒドロゲナーゼ、ガラクトース1−デヒドロゲナーゼ、アリルアルコールデヒドロゲナーゼ、4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、オクタノールデヒドロゲナーゼ、アリールアルコールデヒドロゲナーゼ、シクロペンタノールデヒドロゲナーゼ、長鎖3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼ、L乳酸デヒドロゲナーゼ、D−乳酸デヒドロゲナーゼ、ブタナールデヒドロゲナーゼ、テレフタル酸1,2−シス−ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グリシンデヒドロゲナーゼ、水素デヒドロゲナーゼ、4−クレゾールデヒドロゲナーゼ、リン酸デヒドロゲナーゼなどのデヒドロゲナーゼも挙げ得る。また、オキシドレダクターゼの群に属するレダクターゼとしては、2−メチル−3−オキソコハク酸ジエチルレダクターゼ、トロピノンレダクターゼ、長鎖脂肪酸アシル−CoAレダクターゼ、カルボン酸レダクターゼ、D−プロリンレダクターゼ、グリシンレダクターゼ、チトクロムなどのヘムタンパク質、などの酵素も挙げ得る。1つの実施形態では、酵素は、リアーゼであり、これは、炭素−炭素リアーゼ、炭素−酸素リアーゼ、炭素−窒素リアーゼ、炭素−硫黄リアーゼ、炭素−ハライドリアーゼ、リン−酸素リアーゼ、およびその他のリアーゼの群のいずれかに属し得る。
【0145】
また、炭素−炭素リアーゼとしては、カルボキシリアーゼ、アルデヒドリアーゼ、オキソ酸リアーゼ、なども挙げ得る。これらの群に属するいくつかの具体例は、シュウ酸デカルボキシラーゼ、アセト乳酸デカルボキシラーゼ、アスパラギン酸4−デカルボキシラーゼ、リジンデカルボキシラーゼ、芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ、メチルマロニル−CoAデカルボキシラーゼ、カルニチンデカルボキシラーゼ、インドール−3−グリセロールリン酸シンターゼ、没食子酸デカルボキシラーゼ、分岐鎖2−オキソ酸デカルボキシラーゼ、酒石酸デカルボキシラーゼ、アリールマロン酸デカルボキシラーゼ、フルクトースリン酸アルドラーゼ、2−デヒドロ−3−デオキシ−ホスホグルコン酸アルドラーゼ、トリメチルアミンオキシドアルドラーゼ、プロピオインシンターゼ、乳酸アルドラーゼ、バニリンシンターゼ、イソクエン酸リアーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリアーゼ、3−ヒドロキシアスパラギン酸アルドラーゼ、トリプトファナーゼ、デオキシリボジピリミジンフォトリアーゼ、オクタデカナールデカルボニラーゼなどである。
【0146】
炭素−酸素リアーゼとしては、ヒドロリアーゼ、ポリサッカリド、リン酸などに作用するリアーゼを挙げ得る。いくつかの具体的な例としては、炭酸デヒドラターゼ、フマル酸ヒドラターゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸デヒドラターゼ、アラビノン酸デヒドラターゼ、ガラクトン酸デヒドラターゼ、アルトン酸デヒドラターゼ、マンノン酸デヒドラターゼ、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ、プロパンジオールデヒドラターゼ、グリセロールデヒドラターゼ、マレイン酸ヒドラターゼ、オレイン酸ヒドラターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ポリ(β−D−マンヌロン酸)リアーゼ、オリゴガラクツロニドリアーゼ(oligogalacturonide lyase)、ポリ(α−L−グルロン酸)リアーゼ、キサンタンリアーゼ、エタノールアミンリン酸ホスホリアーゼ、カルボキシメチルオキシコハク酸リアーゼなどである。
【0147】
炭素−窒素リアーゼとしては、アンモニアリアーゼ、アミド、アミジンなどに作用するリアーゼ、アミンリアーゼを挙げ得る。リアーゼのこれらの群の具体的な例としては、アスパラギン酸アンモニアリアーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、エタノールアミンアンモニアリアーゼ、グルコサミン酸アンモニアリアーゼ、アルギニノコハク酸リアーゼ、アデニロコハク酸リアーゼ、ウレイドグリコール酸リアーゼ、および3−ケトバリドキシルアミン C−Nリアーゼである。
【0148】
炭素−硫黄リアーゼとしては、ジメチルプロピオテチンデチオメチラーゼ、アリインリアーゼ、ラクトイルグルタチオンリアーゼ、およびシステインリアーゼを挙げ得る。
【0149】
炭素−ハライドリアーゼとしては、3−クロロ−D−アラニンデヒドロクロリナーゼおよびジクロロメタンデハロゲナーゼを挙げ得る。
【0150】
リン−酸素リアーゼとしては、アデニル酸シクラーゼ、シチジレートシクラーゼ、グリコシルホスファチジルイノシトールジアシルグリセロールリアーゼを挙げ得る。
【0151】
別の実施形態では、酵素は、グリコシラーゼ、酸無水物に作用する酵素、ならびにエステル結合、エーテル結合、炭素−窒素結合、ペプチド結合、炭素−炭素結合、ハライド結合、リン−窒素結合、硫黄−窒素結合、炭素−リン結合、硫黄−硫黄結合、または炭素硫黄結合などの特定の結合に作用する酵素からなる群より選択されるヒドロラーゼである。
【0152】
グリコシラーゼは、グリコシダーゼであってよく、これは、O−およびS−グリコシル化合物、またはN−グリコシル化合物を加水分解することができる。また、グリコシラーゼとしては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルカン1,4−α−グルコシダーゼ、セルラーゼ、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ、イヌリナーゼ、エンド−1,4−β−キシラナーゼ、オリゴ−1,6−グルコシダーゼ、デキストラナーゼ、キチナーゼ、ペクチナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、リゾチーム、レバナーゼ、クエルシトリナーゼ(quercitrinase)、ガラクツラン1,4−α−ガラクツロニダーゼ、イソアミラーゼ、グルカン1,6−α−グルコシダーゼ、グルカンエンド−1,2−β−グルコシダーゼ、リケニナーゼ、アガラーゼ、エキソ−ポリ−α−ガラクツロノシダーゼ、κ−カラゲエナーゼ(κ-carrageenase)、ステリル−β−グルコシダーゼ、ストリクトシジン、β−グルコシダーゼ、マンノシル−オリゴサッカリドグルコシダーゼ、ラクターゼ、オリゴキシログルカンβ−グリコシダーゼ、ポリマンヌロン酸ヒドロラーゼ、キトサナーゼ、ポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ、プリンヌクレオシダーゼ、イノシンヌクレオシダーゼ、ウリジンヌクレオシダーゼ、アデノシンヌクレオシダーゼ、なども挙げ得る。
【0153】
酸無水物に作用する酵素は、例えば、リンまたはスルホニル含有無水物に作用する酵素であってよい。酸無水物に作用する代表的な酵素としては、無機ジホスファターゼ、トリメタホスファターゼ、アデノシントリホスファターゼ、アピラーゼ、ヌクレオシドジホスファターゼ、アシルホスファターゼ、ヌクレオチドジホスファターゼ、エンドポリホスファターゼ、エキソポリホスファターゼ、ヌクレオシドホスホアシルヒドロラーゼ、トリホスファターゼ、CDP−ジアシルグリセロールジホスファターゼ、ウンデカプレニルジホスファターゼ、ドリキルジホスファターゼ、オリゴサッカリドジホスホドリコールジホスファターゼ(oligosaccharide-diphosphodolichol diphosphatase)、ヘテロ三量体Gタンパク質GTPアーゼ、小単量体GTPアーゼ(small mononeric GTPase)、ダイナミンGTPアーゼ、チューブリンGTPアーゼ、ジホスホイノシトールポリリン酸ジホスファターゼ、H−輸送ATPアーゼ(H+-exporting ATPase)、モノサッカリド輸送ATPアーゼ、マルトース輸送ATPアーゼ、グリセロール−3−リン酸輸送ATPアーゼ、オリゴペプチド輸送ATPアーゼ、ポリアミン輸送ATPアーゼ、ペプチド輸送ATPアーゼ、脂肪−アシル−CoA輸送ATPアーゼ、タンパク質分泌ATPアーゼなどである。
【0154】
エステル結合に作用する酵素としては、エステラーゼ、リパーゼ、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、チオールエステルヒドロラーゼ、リン酸エステルヒドロラーゼ、硫酸エステルヒドロラーゼ、およびリボヌクレアーゼを挙げ得る。エステル結合に作用する代表的な酵素としては、アセチル−CoAヒドロラーゼ、パルミトイル−CoAヒドロラーゼ、スクシニル−CoAヒドロラーゼ、3−ヒドロキシイソブチリル−CoAヒドロラーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAヒドロラーゼ、ヒドロキシアシルグルタチオンヒドロラーゼ、グルタチオンチオールエステラーゼ、ホルミル−CoAヒドロラーゼ、アセトアセチル−CoAヒドロラーゼ、S−ホルミルグルタチオンヒドロラーゼ、5−スクシニルグルタチオンヒドロラーゼ、オレオイル−[アシル−キャリア−タンパク質]ヒドロラーゼ、ユビキチンチオールエステラーゼ、[クエン酸−(プロ−35)−リアーゼ]チオールエステラーゼ、(S)−メチル−マロニル−CoAヒドロラーゼ、ADP依存性短鎖−アシル−CoAヒドロラーゼ、ADP依存性中鎖−アシル−CoAヒドロラーゼ、アシル−CoAヒドロラーゼ、ドデカノイル−[アシル−キャリアタンパク質]ヒドロラーゼ、パルミトイル−(タンパク質)ヒドロラーゼ、4−ヒドロキシベンゾイル−CoAチオエステラーゼ、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルフィン酸ヒドロラーゼ、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、ホスホセリンホスファターゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼ、5’−ヌクレオチダーゼ、3’−ヌクレオチダーゼ、3’(2’),5’−ビスリン酸ヌクレオチダーゼ、3−フィターゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、グリセロール−2−ホスファターゼ、ホスホグリセリン酸ホスファターゼ、グリセロール−1−ホスファターゼ、マンニトール−1−ホスファターゼ、糖−ホスファターゼ、スクロース−ホスファターゼ、イノシトール−1(または4)−モノホスファターゼ、4−フィターゼ、ホスファチジルグリセロ−ホスファターゼ、ADPホスホグリセリン酸ホスファターゼ、N−アシル−ノイラミン酸−9−ホスファターゼ、ヌクレオチダーゼ、ポリヌクレオチド3’−ホスファターゼ、グリコーゲン−シンターゼ−Dホスファターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(リポアミド)ホスファターゼ、アセチル−CoAカルボキシラーゼホスファターゼ、3−デオキシ−マンノオクツロソン酸−8−ホスファターゼ、ポリヌクレオチド5’−ホスファターゼ、糖末端ホスファターゼ(sugar-terminal-phosphatase)、アルキルアセチルグリセロホスファターゼ、2−デオキシグルコース−6−ホスファターゼ、グルコシルグリセロール3−ホスファターゼ、5−フィターゼ、ホスホジエステラーゼI、グリセロホスホコリンホスホジエステラーゼ、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD、ホスホイノシチドホスホリパーゼC、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ、グリセロホスホコリンコリンホスホジエステラーゼ、アルキルグリセロホスホエタノールアミンホスホジエステラーゼ、グリセロホスホイノシトールグリセロホスホジエステラーゼ、アリールスルファターゼ、ステリル−スルファターゼ、グリコ−スルファターゼ、コリン−スルファターゼ、セルロース−ポリスルファターゼ、モノメチル−スルファターゼ、D−乳酸−2−スルファターゼ、グルクロン酸−2−スルファターゼ、プレニル−ジホスファターゼ、アリールジアルキルホスファターゼ、ジイソプロピル−フルオロホスファターゼ、オリゴヌクレオチダーゼ、ポリ(A)特異的リボヌクレアーゼ、イーストリボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ(ピリミジン二量体)、モジホコリリボヌクレアーゼ(Physarum polycephalum ribpnuclease)、リボヌクレアーゼアルファ、アスペルギルスヌクレアーゼS1、セラチアマルセセンスヌクレアーゼ、カルボキシルエステラーゼ、アリールエステラーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼA2、リソホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、コリンエステラーゼ、トロピンエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、ステロールエステラーゼ、クロロフィラーゼ、L−アラビノノラクトナーゼ、グルコノラクトナーゼ、ウロノラクトナーゼ、タンナーゼ、レチニル−パルミチン酸エステラーゼ、ヒドロキシ酪酸二量体ヒドロラーゼ、アシルグリセロールリパーゼ、3−オキソアジピン酸エノール−ラクトナーゼ、1,4−ラクトナーゼ、ガラクトリパーゼ、4−ピリドキソラクトナーゼ、アシルカルニチンヒドロラーゼ、アミノアシル−tRNAヒドロラーゼ、D−アラビノノラクトナーゼ、6−ホスホグルコノラクトナーゼ、ホスホリパーゼA1、6−アセチルグルコースデアセチラーゼ、リポタンパク質リパーゼ、ジヒドロクマリンヒドロラーゼ、リモニン−D−環ラクトナーゼ、ステロイド−ラクトナーゼ、トリ酢酸−ラクトナーゼ、アクチノマイシンラクトナーゼ、オルセリン酸デプシドヒドロラーゼ(orsellinate-depside hydrolase)、セファロスポリン−Cデアセチラーゼ、クロロゲン酸ヒドロラーゼ、α−アミノ酸エステラーゼ、4−メチルオキサロ酢酸エステラーゼ、カルボキシメチレンブテノリダーゼ、デオキシリモネート−A−環−ラクトナーゼ、1−アルキル−2−アセチルグリセロホスホコリンエステラーゼ、フサリニン−C−オルニチンエステラーゼ、シナピンエステラーゼ、ロウエステルヒドロラーゼ、ホルボール−ジエステルヒドロラーゼ、ホスファチジルイノシトールデアシラーゼ、シアル酸O−アセチルエステラーゼ、アセトキシブチニルビチオフェンデアセチラーゼ、アセチルサリチル酸デアセチラーゼ、メチルウンベリフェリル−酢酸デアセチラーゼ、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸ラクトナーゼ、N−アセチルガラクトサミノグリカンデアセチラーゼ、幼若ホルモンエステラーゼ、ビス(2−エチルヘキシル)フタル酸エステラーゼ、タンパク質−グルタミン酸メチルエステラーゼ、11−シス−レチニル−パルミチン酸ヒドロラーゼ、オールトランス−レチニル−パルミチン酸ヒドロラーゼ、L−ラムノノ−1,4−ラクトナーゼ(L-rhamnono-1,4-lactonase)、5−(3,4−ジアセトキシブト−1−イニル)−2,2’−ビチオフェンデアセチラーゼ、脂肪−アシル−エチル−エステルシンターゼ、キシロノ−1,4−ラクトナーゼ、セトラキサートベンジルエステラーゼ、アセチルアルキルグリセロールアセチルヒドロラーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼ、クチナーゼ、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)デポリメラーゼ、ポリ(3−ヒドロキシオクタン酸)デポリメラーゼ アシルオキシアシルヒドロラーゼ、アシルオキシアシルヒドロラーゼ、ポリノイリジン−アルデヒドエステラーゼなどが挙げられる。
【0155】
エーテル結合に作用する酵素としては、トリアルキルスルホニウムヒドロラーゼおよびエーテルヒドロラーゼを挙げ得る。エーテル結合に作用する酵素は、チオエーテル結合および酸素による同等物の両方に作用し得る。これらの群に属する具体的な酵素の例としては、アデノシルホモシステイナーゼ、アデノシルメチオニンヒドロラーゼ、イソコリスマターゼ、アルケニルグリセロホスホコリンヒドロラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、trarcs−エポキシコハク酸ヒドロラーゼ、アルケニルグリセロホスホエタノールアミンヒドロラーゼ、ロイコトリエン−A4ヒドロラーゼ、へポキシリン−エポキシドヒドロラーゼ、およびリモネン−1,2−エポキシドヒドロラーゼである。
【0156】
炭素−窒素結合に作用する酵素は、直鎖状アミド、環状アミド、直鎖状アミジン、環状アミジン、直鎖状カルバミド(尿素)、環状カルバミド(尿素)、ニトリル、およびその他の化合物を加水分解することができる。これらの群に属する具体的な例としては、ウレアーゼ、アミダーゼ(アシラーゼ)、アスパラギナーゼ、グルタミナーゼ、ω−アミダーゼ、β−ウレイドプロピオナーゼ、アリールホルムアミダーゼ、ビオチニダーゼ、アリール−アシルアミダーゼ、アミノアシラーゼ、アスパルトアシラーゼ、アセチルオルニチンデアセチラーゼ、アシル−リジンデアシラーゼ、スクシニルジアミノピメリン酸デスクシニラーゼ、パントセナーゼ、セラミダーゼ、コロイルグリシンヒドロラーゼ、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、N−アセチルムラモイル−L−アラニンアミダーゼ、2−(アセトアミドメチレン)コハク酸ヒドロラーゼ、5−アミノペンタンアミダーゼ、ホルミルメチオニンデホルミラーゼ、馬尿酸ヒドロラーゼ、N−アセチルグルコサミンデアセチラーゼ、D−グルタミナーゼ、N−メチル−2−オキソグルタラミン酸ヒドロラーゼ、グルタミン−(アスパラギン)アーゼ、アルキルアミダーゼ、アシルアグマチンアミダーゼ、キチンデアセチラーゼ、ペプチジル−グルタミナーゼ、N−カルバモイル−サルコシンアミダーゼ、N−(長鎖−アシル)エタノールアミンデアシラーゼ、ミモシナーゼ、アセチルプトレシンデアセチラーゼ、4−アセトアミド酪酸デアセチラーゼ、テアニンヒドロラーゼ、2−(ヒドロキシメチル)−3−(アセトアミドメチレン)コハク酸ヒドロラーゼ、4−メチレングルタミナーゼ、N−ホルミルグルタミン酸デホルミラーゼ、スフィンゴ糖脂質デアシラーゼ、アクレアシン−Aデアシラーゼ、ペプチドデホルミラーゼ、ジヒドロピリミジナーゼ、ジヒドロオロターゼ、カルボキシメチル−ヒダントイナーゼ、クレアチニナーゼ、L−リジン−ラクタマーゼ、アルギナーゼ、グアニジノアセターゼ、クレアチナーゼ、アラントイカーゼ、シトシンデアミナーゼ、リボフラビナーゼ、チアミナーゼ、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸デアミナーゼなどである。
【0157】
1つの実施形態では、固定化される酵素は、ペプチド結合に作用する酵素であり、この群は、ペプチダーゼとも称される。ペプチダーゼは、ポリペプチド鎖の末端部近傍のみに作用するエキソペプチダーゼ、およびポリペプチド鎖の内部に作用するエンドペプチダーゼにさらに分類することができる。ペプチド結合に作用する酵素としては、アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、ジ−またはトリペプチジル−ペプチダーゼ、ペプチジル−ジペプチダーゼ、セリン型カルボキシペプチダーゼ、メタロカルボキシペプチダーゼ、システイン型カルボキシペプチダーゼ、オメガペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼ、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、およびスレオニンエンドペプチダーゼの群より選択される酵素を挙げ得る。これらの群に属する酵素のいくつかの具体的な例としては、シスチニルアミノペプチダーゼ、トリペプチドアミノペプチダーゼ、プロリルアミノペプチダーゼ、アルギニルアミノペプチダーゼ、グルタミルアミノペプチダーゼ、サイトゾルアラニルアミノペプチダーゼ、リジルアミノペプチダーゼ、Met−Xジペプチダーゼ、非立体特異的ジペプチダーゼ、サイトゾル非特異的ジペプチダーゼ、膜ジペプチダーゼ、ジペプチダーゼE、ジペプチジル−ペプチダーゼI、ジペプチジル−ジペプチダーゼ、トリペプチジル−ペプチダーゼI、トリペプチジル−ペプチダーゼII、X−Proジペプチジル−ペプチダーゼ、ペプチジル−ジペプチダーゼA、リソソームPro−Xカルボキシペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼC、アシルアミノアシル−ペプチダーゼ、ペプチジル−グリシンアミダーゼ、β−アスパルチルペプチダーゼ、ユビキチニルヒドロラーゼ1、キモトリプシン、キモトリプシンC、メトリジン、トリプシン、スロンビン、プラスミン、エンテロペプチダーゼ、アクロシン、α−溶菌エンドペプチダーゼ、グルタミルエンドペプチダーゼ、カテプシンG、ククミシン、プロリルオリゴペプチダーゼ、ブラチウリン(brachyurin)、血漿カリクレイン、組織カリクレイン、膵臓エラスターゼ、白血球エラスターゼ、キマーゼ、セレビシン、ヒポデルミンC(hypodermin C)、リジルエンドペプチダーゼ、エンドペプチダーゼLa、γ−レニン、べノンビンAB、ロイシルエンドペプチダーゼ、トリプターゼ、スクテラリン、ケキシン、サブチリシン、オリジン、エンドペプチダーゼK、テルモマイコリン(thermomycolin)、テルミターゼ、エンドペプチダーゼSo、t−プラスミノーゲン活性化因子、タンパク質C(活性化)、膵臓エンドペプチダーゼE、膵臓エラスターゼII、IgA特異的セリンエンドペプチダーゼ、u−プラスミノーゲン活性化因子、ベノンビンA、フリン、ミエロブラスツ(myeloblasts)、セメノゲラーゼ(semenogelase)、グランザイムA、グランザイムB、ストレプトグリシンA(streptogrisin A)、ストレプトグリシンB、グルタミルエンドペプチダーゼII、オリゴペプチダーゼB、オムプチン(omptin)、トガビリン(togavirin)、フラビビリン、エンドペプチダーゼClp、プロタンパク質コンバターゼ1、プロタンパク質コンバターゼ2、ラクトセピン、アッセンブリン、ヘパシビリン(hepacivirin)、スペルモシン(spermosin)、シュードモナリシン、キサントモナリシン、C末端プロセシングペプチダーゼ、フィサロリシン(physarolisin)、カテプシンB、パパイン、フィカイン、キモパパイン、アスクレパイン(asclepain)、クロストリパイン、ストレプトパイン(streptopain)、アクチニダイン、カテプシンL、カテプシンH、カテプシンT、グリシルエンドペプチダーゼ、癌凝血原(cancer procoagulant)、カテプシンS、ピコルナイン3C(picornain 3C)、ピコルナイン2A、カリカイン(caricain)、アナナイン(ananain)、ステムブロメライン、フルーツブロメライン、レグマイン、ヒストリサイン(histolysain)、カスパーゼ−1、ギンギパインR、カテプシンK、アデナイン、ブレオマイシンヒドロラーゼ、カテプシンF、カテプシンO、カテプシンV、核封入体−aエンドペプチダーゼ(nuclear-inclusion-a endopeptidase)、ヘルパー成分プロテイナーゼ(helper-component proteinase)、プロテイナーゼK、L−ペプチダーゼ、ギンギパインK、スタホパイン(staphopain)、セパラーゼ、V−cathエンドペプチダーゼ、クルジパイン、カルパイン−1、カルパイン−2、ペプシンA、ペプシンB、ガストリクシン、キモシン、カテプシンD、ネペンテシン、レニン、プロオピオメラノコルチン転換酵素、アスペルギロペプシンI、アスペルギロペプシンII、ペニシロペプシン、リゾープスペプシン、エンドチアペプシン、ムコールペプシン、カンジダペプシン、サッカロペプシン、ロドトルラペプシン、アクロシリンドロペプシン(acrocylindropepsin)、ポリポロペプシン、ピクノポロペプシン(pycnoporopepsin)、スキタリドペプシンA(scytalidopepsin A)、スキタリドペプシンB、カテプシンE、バリエルペプシン、シグナルペプチダーゼII、プラスメプシンI、プラスメプシンII、フィテプシン、ヤプシン1、テルモプシン(thermopsin)、プレピリンペプチダーゼ、ノダウイルスエンドペプチダーゼ、メマプシン1、メマプシン2、アトロライシンA(atrolysin A)、微生物コラゲナーゼ、ロイコライシン、ストロメライシン1、メプリンA、プロコラーゲンC−エンドペプチダーゼ、アスタシン、シュードライシン、テルモライシン、バシロライシン(bacillolysin)、オーレオライシン、コッコライシン(coccolysin)、マイコライシン、ゲラチナーゼB、リーシュマノライシン、サッカロライシン、ガメトライシン、セラライシン、ホリライシン、ルベルライシン(ruberlysin)、ボスロパシン(bothropasin)、オリゴペプチダーゼA、エンドセリン転換酵素、ADAM10エンドペプチダーゼなどである。
【0158】
炭素−炭素結合に作用する酵素としては、これらに限定されないが、オキサロアセターゼ、フマリルアセトアセターゼ、キヌレニナーゼ、フロレチンヒドロラーゼ、アシルピルビン酸ヒドロラーゼ、アセチルピルビン酸ヒドロラーゼ、β−ジケトンヒドロラーゼ、2,6−ジオキソ−6−フェニルヘキサ−3−エン酸ヒドロラーゼ、2−ヒドロキシムコン酸−セミアルデヒドヒドロラーゼ、およびシクロヘキサン−1,3−ジオンヒドロラーゼを挙げ得る。
【0159】
ハライド結合に作用する酵素としては、アルキルハリダーゼ(alkylhalidase)、2−ハロ酸デハロゲナーゼ、ハロ酢酸デハロゲナーゼ、チロキシンデヨードナーゼ、ハロアルカンデハロゲナーゼ、4−クロロ安息香酸デハロゲナーゼ、4−クロロベンゾイル−CoAデハロゲナーゼ、アトラジンクロロヒドロラーゼなどを挙げ得る。
【0160】
本明細書で開示される固定化される酵素としてはまた、ホスホアミダーゼ、N−スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ、サイクラミン酸スルホヒドロラーゼ、ホスホノアセトアルデヒドヒドロラーゼ、ホスホノ酢酸ヒドロラーゼ、トリチオン酸ヒドロラーゼ、UDPスルホキノボースシンターゼなど、特定の結合に作用する酵素も挙げ得る。
【0161】
好ましくは、酵素は、ウレアーゼである。酵素は、第一のエポキシド含有化合物へカップリングされた第二のエポキシド含有化合物へ化学的にカップリングされてよい。また、第一のエポキシ含有化合物へ直接カップリングされてもよい。
【0162】
記載の方法から得られる、生物学的物質をその上に固定化するための基材は、1つの部分が基材へカップリングされ、別の部分がエポキシド含有化合物へカップリングされた、エーテル含有化合物を有する。基材は、腹膜透析装置または血液透析装置などの透析装置に用いることができる。1つの実施形態では、基材は、血液透析装置の収着剤に用いられる。
【0163】
添付の図面は、開示される実施形態を図示し、開示される実施形態の原理の説明に資するものである。しかし、これらの図面は、単に図示の目的で作成されたものであり、本発明の範囲を定めるものではないことは理解されたい。
【0164】
図1aを参照すると、二求核性リンカーを用いた開示される方法100の1つの実施形態の概略図が示される。不溶性ポリマー110の表面上の遊離の(一級)ヒドロキシル基は、まず、工程A−1に示されるエピハロヒドリンと反応する。この反応の結果、エピハロヒドリン上のハロゲンおよびヒドロキシル基上のプロトンが放出されてエーテル結合が形成され、それによって、得られた修飾された基材112は、ここで、末端部にてエポキシド基と化学的にカップリングされている。エポキシド基含有基材112は、次に、工程A−2において、一般式(II)を有する二求核性リンカーと反応され、リンカー修飾基材114を生成物として与える。
【0165】
【化10】

(式中、
XおよびYは、独立して、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、PH、PRから選択され、
R、R、R、R、Rは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
m、n、p、およびqは、独立して、0から25より選択される整数である)
【0166】
工程A−2におけるリンカー基との反応の後、修飾された基材114は、ここで、その末端部に求核基Yを有する。求核基Yは、次に、工程A−3において別のエピハロヒドリンと反応される。求核置換を介して、エピハロヒドリン上に存在するハロゲンが、求核基Yによって置換され、それぞれリンカー144によってカップリングされたエーテル部分140、末端エポキシ部分142をここで有する修飾された基材116が得られる。修飾された基材116のエポキシド末端基は、次に、工程A−4において、求核基Zを有する酵素120の形態である生物学的物質と反応される。酵素は、基材上に固定化され、全体としての生成物130が得られる。チオールなどの安定化剤を工程A−4で添加してもよい。
【0167】
図1bを参照すると、図1aに示される方法の同じ実施形態から得ることができる、別の生成物を示す概略図200が示される。図1bで行われる工程は、図1aと同じである。しかし、工程B−3において、2分子以上のエピハロヒドリンが、求核基XおよびYの両方で求核置換を起こし、複数のエポキシド基を有する基材が得られる。従って、最終的に得られた修飾された基材(216)は、基材216が求核基XおよびYにて追加のエポキシ部分242を含有するという点で、修飾された基材116と異なっている。修飾された基材216は、次に、図1aの工程B−4に類似の固定化反応を起こすことができる。
【0168】
図2を参照すると、オキシラン官能化リンカーを用いた開示される方法300の1つの実施形態の概略図が示される。ヒドロキシ基を有する基材310は、まず、工程C−1に示されるエピハロヒドリンと反応される。この反応の結果、エピハロヒドリン上のハロゲンおよびヒドロキシル基からの水素が放出され、それによって、得られた修飾された基材312は、ここで、末端部にてエポキシド基と連結されている。エポキシド基含有基材312は、次に、工程C−2において、一般式(Ib)を有するオキシラン官能化リンカーの少なくとも1つの単位と反応する。
【0169】
【化11】

(式中、
Xは、NH、NR、NHO、NRO、O、S、Se、COO、CONH、CONR、CSS、COS、CONHO、CONRO、CONHNH、CONRNH、CONRNR、CNO、PH、PRから選択され、
R、R、R、R、Rは、独立して、水素、所望に応じて置換されていてよいアルキル、所望に応じて置換されていてよいアルケニル、所望に応じて置換されていてよいアルキニル、所望に応じて置換されていてよいアリール、および所望に応じて置換されていてよいヘテロアリールからなる群より選択され、ならびに
m、n、p、およびqは、独立して、0から25より選択される整数である)
【0170】
工程C−2におけるリンカーとの反応の後、得られた修飾された基材314は、ここで、その末端部にオキシラン官能化リンカーのエポキシド基を有する。末端エポキシド基は、次に、工程C−3において、求核基Zを有する生物学的物質320と反応される。最終的には、生物学的物質は基材上に固定化され、全体としての生成物330が得られる。
【0171】
図3を参照すると、図1aに示される方法の具体例の概略図400が示されるが、工程D−2においてヘキサンジアミンがリンカーとして用いられ、工程D−1およびD−3においてエピクロロヒドリンが第一および第二のエポキシド含有化合物として用いられる。得られた修飾された基材は、基材416で例示されるように、1つのエーテル部分440および少なくとも1つのエポキシ部分442を有する。それはまた、修飾された基材450および452に示されるように、複数のエポキシ部分を有していてもよい。
【0172】
図4を参照すると、工程E−2においてリンカーとしてグリシドールが用いられる場合の、図1bに示される方法の具体例の概略図500が示される。得られた生成物は、符号514で示される。
【実施例】
【0173】
本発明の限定されない実施形態および比較例を、本発明の範囲をいかなる形であっても限定するものとして解釈されるべきではない具体的実施例を参照して、より詳細にさらに記載する。
【0174】
実施例1
<エポキシ官能化基材の作製>
2.4M水酸化ナトリウム100mL中のセルロース5.0gの懸濁液を激しく攪拌し、エピクロロヒドリン30mLにて55℃で4時間処理することにより、セルロースのマーセリゼーションおよびエポキシ官能化を行った。反応混合物を吸引ろ過し、固体残渣(「一次エポキシセルロース」)を超純水で洗浄した(3×50mL)。乾燥一次エポキシセルロースのエポキシ基付加量は、125μmol/gであった(表1参照)。
【0175】
一次エポキシセルロース(15.3gの湿潤物)を、23℃にて4時間、メタノール100mL中にて、ヘキサンジアミン(70%水溶液)の15mLと反応させた。この反応混合物を、吸引ろ過し、100mLのメタノールで1回洗浄して、9.8gの湿潤「アミノセルロース」を得た。生成物上の一級アミノ基の存在を、そのニンヒドリンとの反応によって定性的に評価した。
【0176】
次に、このアミノセルロース(9.6gの湿潤物)を、23℃にて4時間、メタノール100mL中にて、エピクロロヒドリンの30mLと反応させた。吸引ろ過および冷水での洗浄(3×100mL)により、反応生成物(「二次エポキシセルロース」)を得た。乾燥二次エポキシセルロース生成物のエポキシ基付加量は、108μmol/gであった(表1参照)。
【0177】
<エポキシ基付加量の測定方法>
エポキシ基含有物質のサンプル(約1gの湿潤物)を、5mLの水に懸濁させる。必要に応じて、この懸濁液を中性pHまで0.01N HClで滴定する。この中性懸濁液を、1.3M チオスルホン酸ナトリウム水溶液の5mLで処理し、続いて、時折振とうしながら15分間インキュベートする。次に、この懸濁液を、ブロモフェノールブルーに対して0.01N HClにより滴定する。サンプル中に存在するエポキシ基の総量は、滴定で消費されたHClの量と同等である。乾燥物のエポキシ付加量は、湿潤物の既知の水分含有量(LOD)に基づいて算出される。代表的な実験値を表1にまとめる。
【0178】
実施例2
<ウレアーゼの固定化>
実施例1で作製した二次エポキシセルロース(12.5gの湿潤物)を、pH7.5の1.0M リン酸カリウムバッファー150mL中のタチナタマメウレアーゼ(4.2g)の冷却溶液中に懸濁した。固定化反応は、インキュ
ベーターシェーカー中、4℃にて24時間行った。
【0179】
次に、反応混合物を吸引ろ過し、残渣(「固定化ウレアーゼ」)を冷超純水で3回洗浄した(3×150mL)。
【0180】
<固定化ウレアーゼの固定化後処理>
固定化ウレアーゼを、システイン(5mg/mL)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、1.0mM)、およびグルコース(0.2g/mL)の水溶液中に10分間浸漬し、続いて吸引ろ過し、24時間凍結乾燥した。
【0181】
比較例
【表1】

【0182】
【表2】

【0183】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0184】
開示される基材の作製方法は、機能性物質をその上に固定化することができる基材を生産するための費用対効果が高く効率的な方法である。有利には、この方法は、この方法によって生産された基材が、酵素などの機能性物質を安定的にその上に固定化可能とすることを確実にする。より有利には、酵素が基材へ安定的に結合されることから、基材は、その酵素活性を大きく喪失することなく、長期間にわたって繰り返し再使用することができる。
【0185】
開示される方法が、低コストの出発物質でも実施可能であることから、この方法が大スケールでの基材の生産に用いられる場合、全体の生産コストを大きく低減することができる。さらに、固体支持体などの基材と機能性物質との間の化学リンカーは、非加水分解性である。より有利には、リンカーが不活性であることも、望ましくない化学反応に起因するリンカーの開裂の可能性が低減されることから、固定化された機能性物質の安定性に寄与している。
【0186】
また、開示される方法により、ユーザーは、活性オキシラン基の基材からの距離を変化させることもできる。活性オキシラン基が基材から適切な距離にある場合、機能性物質の固定化に対するその反応性を、立体障害の低減によって増加することができる。加えて、リンカーは、反応性エポキシド基の高い付加量を確実にするように選択することができ、そしてこれは、機能性物質の高い付加量と言い換えられる。より有利には、リンカーはまた、固有の特定の所望される化学的特性を有するように選択することもできる。例えば、ジアミンリンカーが選択される場合、最終的に得られる基材は、固有のpH緩衝特性を有することができる。これは、収着剤の寿命および効力が、高または低pHによって有害な影響を受け得る腹膜透析のような用途において、特に有用である。
【0187】
また、この方法により、ウレアーゼによる酢酸セルロース系透析器などの既製の透析膜の組み立て後の修飾を容易に行うこともできる。ウレアーゼは、組み立て後に固定化することができ、膜の片面のみに固定化させることもできる。
【0188】
開示される方法から得られた基材はまた、その上への生物学的物質の固定化を、簡便、強固、およびユーザーフレンドリーである方法で実施することも可能とする。例えば、生物学的物質の固定化は、実験室レベルで容易に実施することができる。これは、生物学的物質の固定化が、周囲温度にて(例:室温)、水/緩衝溶液中、追加の化学物質または試薬を必要とせずに実施可能であるからである。有利には、追加の化学物質または試薬が存在しないことにより、固定化生成物の精製が非常に容易となる。開示される方法から得られた固定化機能性物質は、無毒性、生分解性、および生体適合性であってもよい。有利には、このことにより、基材を、例えば、ヒトの体内から不要の老廃物を除去するための収着剤として、透析用途などの医療用途に用いることが可能となる。さらに、このような特性により、生成物を、水処理、土壌処理、または廃棄物処理などの環境用途に用いることも可能となる。
【0189】
加えて、開示される方法および基材はまた、以下の用途、すなわち、親和性クロマトグラフィ、クロマトグラフィ(キラル)用の固相材料、分子インプリント、固定化色素、センサー、バイオセンサー、選択的トキシン吸収用の有機フィルター、薬理用途(コーティングおよび結合)、固相イオン交換体、固相金属捕捉剤、ならびに抗酸化剤のいずれか1つにも有用であり得る。
【0190】
本発明の同等の実施形態を記載するように妥当である努力を行ってきたが、当業者であれば、上記の開示の読後、本発明の種々のその他の変更および適合を、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくそこに行うことが可能であること、ならびにそのような変更および適合はすべて、添付の請求項の範囲内に含まれることを意図していることは明らかであろう。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性分子を固定化するための化合物がその上に配置された基材であって、各々の化合物は:
前記基材へ化学的にカップリングされた部分Rであって、前記部分Rは、エーテル、エステル、カルボニル、カーボネートエステル、チオエーテル、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、およびカルボノチオイルからなる群より選択される、部分R;ならびに、
少なくとも1つの求核基を含むリンカーによって前記部分Rへカップリングされたエポキシド含有部分、
を含む鎖を有する、基材。
【請求項2】
前記部分Rが、アミン、アミド、カルバミド、尿素、およびグアニジンからなる群よりさらに選択される、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記鎖へカップリングされた追加のエポキシド含有基を含む、請求項1または請求項2に記載の基材。
【請求項4】
追加のエポキシド含有基の数が、1、2、3、4、および5の数から選択される、請求項3に記載の基材。
【請求項5】
前記追加のエポキシド含有基の少なくとも1つが、前記リンカーの前記求核基によって前記鎖へカップリングされる、請求項3または4に記載の基材。
【請求項6】
前記リンカーが、それを介して前記追加のエポキシド含有基が前記鎖へカップリングされる追加の求核基を含む、請求項4または請求項5に記載の基材。
【請求項7】
前記追加のエポキシド含有基が、前記リンカーの前記追加の求核基とカップリングすることによって前記鎖から分岐している、請求項6に記載の基材。
【請求項8】
前記リンカーの前記求核基が、アミンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の基材。
【請求項9】
前記リンカーが、飽和および不飽和の脂肪族および芳香族アミン、ジアミン、ならびにトリアミンからなる群より選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の基材。
【請求項10】
前記アミンの脂肪族基が、アルキル基である、請求項9に記載の基材。
【請求項11】
前記リンカーが、エポキシド基を含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の基材。
【請求項12】
前記リンカーが、二求核性種(di-nucleophilic species)および多求核性種(poly-nucleophilic species)の少なくとも1つを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の基材。
【請求項13】
前記リンカーが、アルキル−ジアミンおよびアルケン−ジアミンの少なくとも1つから選択される、請求項12に記載の基材。
【請求項14】
前記リンカーが、エタン−ジアミン、プロパン−ジアミン、ブタン−ジアミン、ペンタン−ジアミン、ヘキサン−ジアミンの少なくとも1つから選択される、請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記エポキシド含有化合物が、エピハロヒドリンと前記リンカーの前記求核基との反応によって得られる、請求項1から14のいずれか一項に記載の基材。
【請求項16】
前記基材が、ポリマーを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の基材。
【請求項17】
前記ポリマーが、生体適合性ポリマーである、請求項16に記載の基材。
【請求項18】
前記生体適合性ポリマーが、ポリエステル基材、ポリアミド基材、ポリアクリレート基材、およびポリサッカリド系基材からなる群より選択される、請求項17に記載の基材。
【請求項19】
前記ポリサッカリド系基材が、コットンリンター、コットンパルプ、コットン布地、セルロース繊維、セルロースビーズ、セルロース粉末、微結晶セルロース、セルロース膜、レーヨン、セロファン、酢酸セルロース、酢酸セルロース膜、キトサン、キチン、デキストラン誘導体、およびアガロース誘導体からなる群より選択される、請求項17に記載の基材。
【請求項20】
前記ポリマーが、バイオポリマーである、請求項16に記載の基材。
【請求項21】
前記基材上に配置されたコーティングをさらに含み、前記コーティングは、前記機能性分子を安定化するために選択された安定化添加剤の実質的に均質である混合物を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の基材。
【請求項22】
前記安定化添加剤が、糖、有機酸、アミノ酸、糖酸、およびチオールからなる群より選択される、請求項21に記載の基材。
【請求項23】
機能性分子を基材上へ固定化する方法であって、前記機能性分子を、請求項1から22のいずれか一項に記載の基材へ曝露する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記機能性分子が、親和性リガンド、キレート剤、触媒、イオン交換体、色素、指示薬からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記機能性分子が、キラルである、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記機能性分子が、生体分子である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記生体分子が、酵素である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酵素が、ウレアーゼ、ウリカーゼ、クレアチニナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、アシラーゼ、カタラーゼ、エステラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、プロテイナーゼ−Kからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
安定化添加剤の実質的に均質である混合物を、前記基材の表面へ適用する工程をさらに含み、ここで、前記添加剤は、前記機能性分子を安定化するために選択される、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記添加剤の実質的に均質である混合物を適用する工程が、前記添加剤の溶液の溶媒を前記基材上にて蒸発させることを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記安定化添加剤が、糖、有機酸、アミノ酸、糖酸、およびチオールからなる群より選択される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
その上へ機能性分子を固定化するための基材を作製する方法であって、前記方法は:
(i)前記基材の表面にカップリングした求電子化合物を提供する工程;
(ii)前記求電子化合物に求核置換反応を起こさせることでその上へ求核基を提供し、それによって前記基材表面の求核性を増加させる工程;
(iii)前記求核基に別の求電子化合物との求核置換反応を起こさせることで前記基材表面上に求電子基を提供し、それによって前記基材の求電子性を増加させる工程、
を含む、方法。
【請求項33】
工程(ii)および(iii)が、n回繰り返され、前記基材上にn世代分の求電子基が形成される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記基材の表面へカップリングした求電子化合物を提供する前記工程が、前記基材へ第一の求電子化合物を化学的にカップリングさせることを含む、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記工程(ii)が、求核体を前記第一の求電子化合物と反応させる工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(iii)が、第二の求電子化合物を前記求核体へ化学的にカップリングさせることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記求電子化合物が、エポキシド含有化合物である、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記エポキシド含有化合物が、エピハロヒドリンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記求核体が、二求核体(di-nucleophile)である、請求項32から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記求核体が、アミンを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アミンが、飽和および不飽和の脂肪族または芳香族アミン、ならびにポリアミンからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記アミンおよびポリアミンの脂肪族基が、アルキル基から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリアミンが、エタン−ジアミン、プロパン−ジアミン、ブタン−ジアミン、ペンタン−ジアミン、ヘキサン−ジアミンの少なくとも1つから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記基材が、ポリマーを含む、請求項32から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリマーが、生体適合性ポリマーである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記生体適合性ポリマーが、ポリエステル基材、ポリアミド基材、ポリアクリレート基材、およびポリサッカリド系基材からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリサッカリド系基材が、コットンリンター、コットンパルプ、コットン布地、セルロース繊維、セルロースビーズ、セルロース粉末、微結晶セルロース、セルロース膜、レーヨン、セロファン、酢酸セルロース、酢酸セルロース膜、キトサン、キチン、デキストラン誘導体、およびアガロース誘導体からなる群より選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリマーが、バイオポリマーである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記機能性分子が、親和性リガンド、キレート剤、触媒、イオン交換体、色素、および指示薬からなる群より選択される、請求項33から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記機能性分子が、キラルである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記機能性分子が、生体分子である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記生体分子が、酵素である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記酵素が、ウレアーゼ、ウリカーゼ、クレアチニナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、アシラーゼ、カタラーゼ、エステラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、プロテイナーゼ−Kからなる群より選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
安定化添加剤の実質的に均質である混合物を、前記基材の表面へ適用する工程をさらに含み、ここで、前記安定化添加剤は、前記機能性分子を安定化するために選択される、請求項32から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記添加剤の実質的に均質な混合物を適用する工程が、前記添加剤の溶液の溶媒を前記基材上にて蒸発させることを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記安定化添加剤が、糖、有機酸、アミノ酸、糖酸、およびチオールからなる群より選択される、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
透析装置に用いるための収着剤カートリッジであって、前記収着剤カートリッジは、ウレアーゼを固定化するための請求項1から23のいずれか一項に記載の基材を含む、収着剤カートリッジ。
【請求項58】
透析装置に用いるための透析器であって、前記透析器は、ウレアーゼを固定化するための請求項1から22のいずれか一項に記載の基材を含む、透析器。
【請求項59】
尿素を含有する透析液を、請求項1から22のいずれか一項に記載の基材に曝露する工程;および、
前記透析液を前記基材から除去する工程、
を含む、透析法。
【請求項60】
透析装置における、請求項1から22のいずれか一項に記載の基材の使用。
【請求項61】
機能性分子をその上に固定化するための透析膜を修飾する方法であって、前記方法は:
(iv)求電子化合物を前記膜表面にカップリングする工程;
(v)前記求電子化合物に求核置換反応を起こさせることでその上へ求核基を提供し、それによって前記膜表面の求核性を増加させる工程;および、
(vi)前記求核基に別の求電子化合物との求核置換反応を起こさせることで前記膜表面上に求電子基を提供し、それによって機能性分子をその上に固定化するための前記膜表面の求電子性を増加させる工程、
を含む、方法。
【請求項62】
前記膜が、酢酸セルロース膜である、請求項61に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−520226(P2013−520226A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553853(P2012−553853)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/SG2011/000069
【国際公開番号】WO2011/102807
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(510338259)テマセク ポリテクニック (3)
【氏名又は名称原語表記】TEMASEK POLYTECHNIC
【Fターム(参考)】