説明

機能性調味料及び機能性調味料の製造方法

【課題】 カプセルの粒子をできるだけ小さくするとともに調味原料に対して沈降しにくくして分散性の向上を図り、ザラザラ感をなくして食感の向上を図る。
【解決手段】 芯物質の芯物質溶液を生成する芯物質溶液生成工程(1)と、膜物質を溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する膜物質溶液生成工程(2)と、芯物質溶液と膜物質溶液とを混合した混合液を生成する混合液生成工程(3)と、この混合液を分散溶液に混合してマイクロカプセルを生成するマイクロカプセル生成工程(4)と、このマイクロカプセルを分散溶液から分離するとともに、調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさのマイクロカプセルを抽出する分離抽出工程(5)と、このマイクロカプセルを調味料原料に添加する添加工程(6)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に液状の機能性調味料及び機能性調味料の製造方法係り、特に、生理活性等の機能を有する物質を芯物質とした腸溶性のマイクロカプセルを醤油などの調味料原料に添加した機能性調味料及び機能性調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1(特開平7−255436号公報)においては、複合飲料の技術が記載され、その一例として、生理活性等の機能を有する物質として例えばドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等の油性物質を選択し、これを芯物質として、この芯物質を腸溶性のハイドロゲルからなる膜物質により被覆してシームレスカプセルを生成し、このシームレスカプセルを例えば醤油などの調味料原料に添加して複合旨味飲料にする技術が掲載されている。このシームレスカプセルは、例えば、二重液滴法により、0.5〜5.0mmφの粒子として生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−255436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の従来の複合旨味飲料においては、シームレスカプセルは0.5〜5.0mmφの粒子として生成されているので、静置するとシームレスカプセルが沈殿するなど調味料原料に対する分散性が悪く、また、粒子が粗いことからザラザラ感があって食感に劣るという問題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、カプセルの粒子をできるだけ小さくするとともに調味料原料に対して沈降しにくくして分散性の向上を図り、ザラザラ感をなくして食感の向上を図った機能性調味料及び機能性調味料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するための本発明の機能性調味料は、芯物質を腸溶性の膜物質により被覆したマイクロカプセルを、調味料原料に添加してなる機能性調味料であって、調味料原料の比重をρa、マイクロカプセルの比重をρmとしたとき、ρm=(0.75〜1.25)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択するとともに、該マイクロカプセルの調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になるように、該マイクロカプセルの粒径を100μm以下にした構成としている。
【0006】
この機能性調味料によれば、調味料原料にマイクロカプセルが分散し、芯物質の生理活性等の機能が付与された調味料となる。そのため、例えば、芯物質がDHAやEPA等の油性物質であっても、マイクロカプセルが腸溶性の粒子であることから、使用時に油臭や嫌味を生じることが抑制され、保存性に優れ、かつ生理活性成分を有効に摂取することができるようになる。この場合、マイクロカプセルは、沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさなので、調味料原料に対して分散性がよく沈殿しにくく、また、マイクロカプセルの粒子が極めて細かいことからザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。
【0007】
そして、必要に応じ、上記マイクロカプセルの粒径を47μm未満にした構成としている。より望ましくは、上記マイクロカプセルの粒径を26μm以下にした構成である。
マイクロカプセルの粒子がより一層細かいことから、より一層、分散性がよく沈殿しにくく、ザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。
【0008】
また、必要に応じ、ρm=(0.95〜1.05)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択する構成としている。マイクロカプセルの比重が、より一層調味料原料に近づくので、より一層、分散性がよく沈殿しにくく、ザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。
【0009】
更に、必要に応じ、上記芯物質及び/または膜物質に、色素を付与した構成としている。調味料原料と同色の色素を付与して、マイクロカプセルを目立たなくし、あるいは、調味料原料とは異なる色にして、マイクロカプセルの存在を強調し、機能性調味料の色全体を変化させることもできる。
【0010】
そしてまた、本発明の機能性調味料の製造方法は、芯物質を腸溶性の膜物質により被覆したマイクロカプセルを、液状の調味料原料に添加してなる機能性調味料を製造する機能性調味料の製造方法であって、
上記調味料原料の比重をρa、マイクロカプセルの比重をρmとしたとき、ρm=(0.75〜1.25)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択するとともに、
上記芯物質の芯物質溶液を生成する芯物質溶液生成工程と、
上記膜物質を溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する膜物質溶液生成工程と、
上記芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と上記膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する混合液生成工程と、
上記混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成するマイクロカプセル生成工程と、
該マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離するとともに、調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさのマイクロカプセルを抽出する分離抽出工程と、
該分離抽出工程で分離された所要のマイクロカプセルを調味料原料に添加する添加工程とを備えた構成としている。
【0011】
調味料原料にマイクロカプセルを浮遊状態で混入させるためには、その調味料原料の比重と粘度を測定し、その調味料原料の条件にあったマイクロカプセルを調製しなければならないが、マイクロカプセルを調製する時に、分散溶液として調味料原料そのものを使用すると、そのマイクロカプセルに調味料原料中の成分が混入したり、分離が困難になったりすることが推測できるので、調味料原料とは異なる食塩水等を分散溶液として使用する。その結果、マイクロカプセルの汎用性が高まり、多くの調味料原料に添加することが可能になる。
【0012】
この結果、この製造方法により製造された機能性調味料によれば、調味料原料にマイクロカプセルが分散し、芯物質の生理活性等の機能が付与された調味料となる。そのため、例えば、芯物質がDHAやEPA等の油性物質であっても、マイクロカプセルが腸溶性の粒子であることから、使用時に油臭や嫌味を生じることが抑制され、保存性に優れ、かつ生理活性成分を有効に摂取することができるようになる。この場合、マイクロカプセルは、沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさなので、調味料原料に対して分散性がよく沈殿しにくく、また、マイクロカプセルの粒子が極めて細かいことからザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。
【0013】
そして、必要に応じ、上記マイクロカプセル生成工程において、調味料原料の比重をρa、分散液の比重をρbとしたとき、ρb=(0.85〜1.15)ρaにした構成としている。
その調味料原料の条件にあったマイクロカプセルを確実に調製することができる。
【0014】
また、必要に応じ、上記分離抽出工程において、マイクロカプセルが生成された分散溶液から100μmより大きい所定の粒径以上の粒径の大径マイクロカプセルを除去し、該大径マイクロカプセルを除去した残液を、遠心分離機により、粒径範囲が段階的に異なるグループに仕分けし、その後、100μm以下の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して抽出する構成としている。
本願発明者らはマイクロカプセルの比重と粒径、及び調製する時に使用した分散溶液の比重を加味した遠心分離法でマイクロカプセルを分離した。これにより、調味料原料の条件にあったマイクロカプセルを確実に調製することができる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記マイクロカプセルの粒径を47μm未満にした構成としている。より望ましくは、上記マイクロカプセルの粒径を26μm以下にした構成である。マイクロカプセルの粒子がより一層細かいことから、より一層、分散性がよく沈殿しにくく、ザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。
【0016】
更にまた、必要に応じ、ρm=(0.95〜1.05)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択する構成としている。マイクロカプセルの比重が、より一層調味料原料に近づくので、より一層、分散性がよく沈殿しにくく、ザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。
【0017】
また、必要に応じ、上記芯物質及び/または膜物質に、色素を付与した構成としている。調味料原料と同色の色素を付与して、マイクロカプセルを目立たなくし、あるいは、調味料原料とは異なる色にして、マイクロカプセルの存在を強調し、機能性調味料の色全体を変化させることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、調味料原料にマイクロカプセルが分散し、芯物質の生理活性等の機能が付与された調味料となる。そのため、例えば、芯物質がDHAやEPA等の油性物質であっても、マイクロカプセルが腸溶性の粒子であることから、使用時に油臭や嫌味を生じることが抑制され、保存性に優れ、かつ生理活性成分を有効に摂取することができるようになる。この場合、マイクロカプセルは、沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさなので、調味料原料に対して分散性がよく沈殿しにくく、また、マイクロカプセルの粒子が極めて細かいことからザラザラ感も抑制されて食感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る機能性調味料を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る機能性調味料の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例に係る機能性調味料の製造方法を示す工程図である。
【図4】試験例1に係り、実施例に係る分散溶液の自家凝集の抑制試験結果を示す表図である。
【図5】試験例2に係り、段階的に遠心分離したマイクロカプセルの各グループの粒径範囲と比重を示す表図である。
【図6】試験例2に係り、段階的に遠心分離したマイクロカプセルの各グループのうち沈澱画分IVの粒子径とその頻度分布を示すグラフ図である。
【図7】試験例2に係り、段階的に遠心分離したマイクロカプセルの各グループのうち沈澱画分IVの粒子分布成績を示す表図である。
【図8】試験例2に係り、段階的に遠心分離したマイクロカプセルの各グループのうち沈澱画分IVの粒子状態を示す図面代用顕微鏡写真である。
【図9】試験例3に係り、段階的に遠心分離した湿潤状態のマイクロカプセルの各グループについて調味料原料へ添加した際の性状試験の結果を示す表図である。
【図10】試験例3に係り、段階的に遠心分離し乾燥した乾燥マイクロカプセルの各グループについて調味料原料へ添加した際の性状試験の結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る機能性調味料及び機能性調味料の製造方法について詳細に説明する。
図1に示すように、実施の形態に係る機能性調味料は、芯物質を腸溶性の膜物質により被覆したマイクロカプセルを、液状の調味料原料に添加してなる機能性調味料である。
【0021】
調味料原料としては、例えば、砂糖系,塩系,酢系,醤油系,味噌系,酒系,油系,ソース系,だし系,香辛料系,ハーブ系等これらの一種若しくは二種以上を混合した粘性のある液状のもの、あるいは、水などの液体に溶解した粘性のある液状のものが選択される。
砂糖系としては、例えば、砂糖,蔗糖,乳糖,ブドウ糖,果糖,麦芽糖,蜂蜜,水飴,カラメル,ガムシロップ等が挙げられる。塩系としては、岩塩,海塩等の自然塩,精製塩等が挙げられる。酢系としては、醸造酢,合成酢,穀物酢,ワインビネガー,梅酢,バルサミコ酢,各種フルーツ酢等が挙げられる。醤油系としては、濃口醤油,薄口醤油,減塩醤油,たまり醤油などの各種醤油,ひしお,魚醤(しょっつる,いしる,ニョクマム,ナンプラー)等が挙げられる。味噌系としては、白味噌,赤味噌,赤だし味噌,八丁味噌などの各種味噌,コチュジャン,醤(ジャン),豆板醤,XO醤,芝麻醤,豆鼓醤,甜面醤,腐乳等が挙げられる。酒系としては、日本酒,みりん,泡盛,ブランデー,ラム酒,紹興酒,ワイン,梅酒,各種リキュール等が挙げられる。油系としては、動物性油脂,植物性油脂等の各種油脂があり,各種バター,サラダ油,オリーブオイル,コーン油,菜種油,ごま油,ラー油等が挙げられる。ソース系としては、とんかつソース,ウスターソース,トマトソース,オイスターソース,ケチャップ,トマトピューレ,タバスコ,サルサソース,サンバルソース,チリソース,マヨネーズ,サラダドレッシング等が挙げられる。だし系としては、鶏がらや豚骨等の各種だし,スープストック,ブイヨン,コンソメ,昆布だし,麺つゆなどが挙げられる。香辛料系としては、胡椒,唐辛子,山椒等の各種香辛料,ニンニク,わさび,マスタード,カレー粉等が挙げられる。ハーブ系としては、ハーブ,ミント,ローズマリー,タイム,セージ,アニス,オレガノ,レモングラス,サフラン等が挙げられる。
【0022】
芯物質としては、例えば、動物油,植物油,脂肪酸(不飽和脂肪酸)、乳酸菌、酵素類、核酸、アミノ酸等あるいはこれらの混合物からなる群から選択することができる。
また、必要に応じて、芯物質として乳化剤を混合する。乳化剤は親水性物質(実験例ではツェインのエタノール溶液)と疎水性物質(実験例では亜麻仁油)を混合するために用いる。
【0023】
上記の芯物質において、動物油としては、例えば、魚油,牛脂,マトン脂,ラム脂,豚脂,鯨油等が挙げられる。また、植物油としては、例えば、キャノーラ油,綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ココナッツ油、パーム油、アマニ油(亜麻仁油)、桐油、ヒマシ油等が挙げられる。
脂肪酸(不飽和脂肪酸)としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸等が挙げられる。
【0024】
膜物質は、例えば、ハイドロコロイド等のカプセル形成物質を含有し、ゲル化,架橋結合,コアセルベーション等の手段によってカプセルを形成することができるものである。胃酸で分解される物質を芯物質とするときは、腸溶性の膜物質でマイクロカプセルを調製すべきである。例えば、乳酸菌や酵素類などを芯物質とする時は、腸溶性にすれば、機能性が付与できる。胃で分解され、特異臭を発する魚油などの物質の内包には、腸溶性のマイクロカプセルが有効である。
膜物質としては、腸溶性のタンパク質があり、例えば、エラスチン,ケラチン,シルク,アルブミン,乳タンパク,コラーゲン等の動物性タンパク、小麦,トウモロコシ,オート麦,アーモンドタンパク等の植物性タンパクが挙げられる。タンパク質以外の物質としては、例えば、アルギン酸、アラビアガム等の多糖類が挙げられる。また、これらは、単独で用いあるいは複数種混合して用いる。
【0025】
本機能性調味料においては、調味料原料の比重をρa、マイクロカプセルの比重をρmとしたとき、ρm=(0.75〜1.25)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択する。望ましくは、ρm=(0.85〜1.15)ρa、より望ましくは、ρm=(0.95〜1.05)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択する。理想は、ρm=ρaである。
【0026】
また、マイクロカプセルの調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になるように、マイクロカプセルの粒径を100μm以下にしている。望ましくは、マイクロカプセルの粒径を47μm未満にする。より望ましくは、マイクロカプセルの粒径を26μm以下にする。
【0027】
そしてまた、調味料原料に合わせて、芯物質及び/または膜物質に色素を付与することができる。調味料原料と同色の色素を付与して、マイクロカプセルを目立たなくし、あるいは、調味料原料とは異なる色にして、マイクロカプセルの存在を強調し、機能性調味料の色全体を変化させることもできる。色素としては、例えば、調味料原料から抽出した色素、その他任意の食用色素が用いられる。
【0028】
次に、本発明の実施の形態に係る機能性調味料の製造方法について説明する。本製造方法においては、目的とする調味料原料を選択するとともに、芯物質及び膜物質を選択する。この際、調味料原料の比重をρa、マイクロカプセルの比重をρmとしたとき、ρm=(0.75〜1.25)ρa、望ましくは、ρm=(0.85〜1.15)ρa、より望ましくは、ρm=(0.95〜1.05)ρaになるように、上記の芯物質及び膜物質から所望のものを選択しておく。理想は、ρm=ρaである。実施の形態では、例えば、予め、所望の芯物質及び膜物質の組み合わせを選択し、実験により、混合割合などを種々変えて、適合するものを採用する。
【0029】
また、実施の形態では、芯物質及び/または膜物質に色素を付与するために、適宜の色素を選択している。例えば、調味料原料に対してマイクロカプセルを目立たなくするために、調味料原料と同色の色素を選択する。色素の選択は、例えば、調味料原料の色を色査計で測定し、その測定値等に基づいて決定する。
【0030】
本製造方法は、図2に示すように、基本的に、芯物質の芯物質溶液を生成する芯物質溶液生成工程(1)と、膜物質を溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する膜物質溶液生成工程(2)と、芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する混合液生成工程(3)と、混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成するマイクロカプセル生成工程(4)と、マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離するとともに、調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさのマイクロカプセルを抽出する分離抽出工程(5)と、分離抽出工程で分離された所要のマイクロカプセルを調味料原料に添加する添加工程(6)とを備えてなる。以下、各工程について説明する。
【0031】
(1)芯物質溶液生成工程
芯物質の芯物質溶液を生成する。芯物質はそのままで用いることができるものはそのまま、必要に応じて、乳化剤を混合する。
【0032】
(2)膜物質溶液生成工程
膜物質を色素とともに溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する。尚、色素は、芯物質溶液に混合しても良い。溶媒としては、例えば、有機溶媒(実験例ではエタノール),水、緩衝液等これらの一種若しくは二種以上を混合したものが挙げられる。これにより、膜物質を撹拌、溶解し、膜物質溶液を生成する。
【0033】
(3)混合液生成工程
芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する。
【0034】
(4)マイクロカプセル生成工程
混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成する。調味料原料にマイクロカプセルを浮遊状態で混入させるためには、その調味料原料の比重と粘度を測定し、その調味料原料の条件にあったマイクロカプセルを調製しなければならないが、マイクロカプセルを調製する時に、分散溶液として調味料原料そのものを使用すると、そのマイクロカプセルに調味料原料中の成分が混入したり、分離が困難になったりすることが推測できるので、調味料原料に比重を近似させたできるだけ簡易な溶液を分散溶液として使用する。
分散溶液としては、例えば、食塩水,糖溶液、緩衝液が挙げられる。分散溶液としては調味料原料の比重をρa、分散液の比重をρbとしたとき、ρb=(0.85〜1.15)ρaにする。
これにより、芯物質溶液と膜物質溶液とを混合した混合液が、分散液に混合すると、膜物質が不溶化し、マイクロカプセルが生成されていく。
【0035】
(5)分離抽出工程
マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離するとともに、調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさのマイクロカプセルを抽出する。
この分離抽出工程において、マイクロカプセルが生成された分散溶液から100μmより大きい所定の粒径以上の粒径の大径マイクロカプセルを除去し、大径マイクロカプセルを除去した残液を、遠心分離機により、粒径範囲が段階的に異なるグループに仕分けし、その後、100μm以下の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して抽出する。望ましくは、47μm未満の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して抽出する。より望ましくは、26μm以下の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して抽出する。
【0036】
(6)添加工程
分離抽出工程で分離された所要のマイクロカプセルを調味料原料に添加する。
【0037】
このようにして製造された機能性調味料によれば、調味料原料にマイクロカプセルが分散し、芯物質の生理活性等の機能が付与された調味料となる。そのため、例えば、芯物質がDHAやEPA等の油性物質であっても、マイクロカプセルが腸溶性の粒子であることから、使用時に油臭や嫌味を生じることが抑制され、保存性に優れ、かつ生理活性成分を有効に摂取することができるようになる。この場合、マイクロカプセルは、沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさなので、調味料原料に対して分散性がよく沈殿しにくく、また、マイクロカプセルの粒子が極めて細かいことからザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。更に、マイクロカプセルには、調味料原料と同色の色素が付与されているので、マイクロカプセルが目立つことがない。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の実施例を示す。図3に示すように、実施例は、原料調味料が醤油(ワダカン株式会社製「特級本醸造ワダカンしょうゆロイヤル」)、比重1.12、粘度4.76mPa・s)の場合であり、機能性の芯物質としてアマニ油(和光純薬工業株式会社製 亜麻仁油)を選択し、乳化剤としてレシチン(理研ビタミン株式会社製 レシオンP)を選択した。また、膜物質としては、腸溶性のタンパク質である疎水性トウモロコシタンパク(小林香料株式会社製 小林ツェインDP)を選択した。また、色素として醤油抽出色素(アサマ化成株式会社製 アサマA−7−L)を用いた。以下に製造工程を示す。
(1)芯物質溶液生成工程
機能性材料のアマニ(亜麻仁)油5gと、乳化剤のレシチン0.4gとを混合し1容量の芯物質溶液を生成した。
(2)膜物質溶液生成工程
疎水性トウモロコシ10gと、醤油抽出色素1.0gとを溶媒としての65%エタノール水溶液に溶解して76容量の膜物質溶液を生成した。
(3)混合液生成工程
芯物質溶液と膜物質溶液とを混合し、撹拌機(200rpm)で24時間撹拌し、混合液を生成した。
【0039】
(4)マイクロカプセル生成工程
分散溶液として、0.2%シュガーエステル(三菱化学フーズ株式会社製 リョートーシュガーエステルP1670)250mlに15%NaClを含むpHリン酸緩衝液250ml加えて調整し、比重1.109、粘度1.364mPa・sの分散溶液を作成した。この分散溶液(400ml)に、上記の混合液(100ml)を4ml/minで滴下し、撹拌機(200rpm)で24時間撹拌し、その後、4℃の条件で12時間静置した。これにより、マイクロカプセルを生成した。分散溶液の条件は、経験則に基づき実験したところ、マイクロカプセルの沈降速度は、おおよそストークスの式に当てはまる結果を得。これにより醤油中における許容移動速度、目的とする粒子径、その比重を算出するとともに、上記の分散溶液中における許容移動速度を算出し、この算出結果に基づいて分散溶液の条件を算出した。また、後述の自家凝集試験(図4)から、NaClの濃度を自家凝集の生じない15%とした。
【0040】
(5)分離抽出工程
先ず、静置した溶液をメッシュ500μmのろ過器でろ過し、500μmを超える大径マイクロカプセルを除去した。
次に、大径マイクロカプセルを除去した残液を、遠心分離機(日立株式会社製 himac CR20F(Rmin=3.5 Rmax=16.5)、ロータR9AF)を用い、この遠心分離機により順次遠心分離し、粒径範囲が段階的に異なるグループ(実施例では5段階)に仕分けした(図5)。遠心分離機の条件は、経験則に基づき実験したところ、マイクロカプセルの沈降速度は、おおよそストークスの式に当てはまる結果を得た。これにより醤油中における許容移動速度、目的とする粒子径、その比重を算出するとともに、上記の分散溶液中における許容移動速度を算出し、この算出結果に基づいて遠心分離の条件を算出した。
グループに仕分けしたマイクロカプセルは、湿潤状態のものと、凍結乾燥させたものの2種類作成した。
【0041】
そしてまた、上記のストークスの式に基づく算出結果から、調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して、マイクロカプセルを抽出した。実施例では、後述の食感試験に基づき、ザラザラ感のない「沈澱画分IV(26μm≧粒径>5μm)」を選択した。
【0042】
(6)添加工程
「沈澱画分IV(26μm≧粒径>5μm)」のマイクロカプセルを調味料原料に0.8%wtの割合で添加した。
【0043】
次に、試験例を示す。
<試験例1>
上記の実施例において、分散溶液のNaClとマイクロカプセルの生成具合との関係を調べた。NaClの濃度を変化させ、マイクロカプセルの自家凝集具合を見た。結果を図4に示す。この結果から、NaClの濃度は、マイクロカプセルが自家凝集を起こさない10%以上のものが良いことが分かった。
【0044】
<試験例2>
上記の実施例において、遠心分離機により大径マイクロカプセルを除去した残液を、図3に示す条件で順次遠心分離し、粒径範囲が段階的に異なるグループ(実施例では5段階)に仕分けした。そして、各グループの粒径範囲を測定した。結果を図5に示す。
また、上記実施例において、選択した「沈澱画分IV(26μm≧粒径>5μm)」の粒子径分布を図6に、粒度分布成績を図7に示す。また、沈澱画分IVの状態を示す図面代用顕微鏡写真を図8に示す。
【0045】
<試験例3>
上記実施例と同様に、遠心分離機により大径マイクロカプセルを除去した残液を、図3に示す条件で順次遠心分離し、粒径範囲が段階的に異なるグループ(試験では6段階)に仕分けした。そして、これら各グループのマイクロカプセルを、調味料原料に0.8%wtの割合で添加し、無添加の調味料原料とともに性状試験をした。試験は、湿潤状態のものと、凍結乾燥させたものの2種類について行った。結果を、図9及び図10に示す。この結果、湿潤状態のものと、凍結乾燥させたものでは優位差は見られなかった。また、沈澱画分IV以上がザラザラ感がなく、より適していることが分かった。
【符号の説明】
【0046】
(1)芯物質溶液生成工程
(2)膜物質溶液生成工程
(3)混合液生成工程
(4)マイクロカプセル生成工程
(5)分離抽出工程
(6)添加工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯物質を腸溶性の膜物質により被覆したマイクロカプセルを、液状の調味料原料に添加してなる機能性調味料であって、
調味料原料の比重をρa、マイクロカプセルの比重をρmとしたとき、ρm=(0.75〜1.25)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択するとともに、
該マイクロカプセルの調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になるように、該マイクロカプセルの粒径を100μm以下にしたことを特徴とする機能性調味料。
【請求項2】
上記マイクロカプセルの粒径を47μm未満にしたことを特徴とする請求項1記載の機能性調味料。
【請求項3】
上記マイクロカプセルの粒径を26μm以下にしたことを特徴とする請求項2記載の機能性調味料。
【請求項4】
ρm=(0.95〜1.05)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択することを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の機能性調味料。
【請求項5】
上記芯物質及び/または膜物質に、色素を付与したことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の機能性調味料。
【請求項6】
芯物質を腸溶性の膜物質により被覆したマイクロカプセルを、液状の調味料原料に添加してなる機能性調味料を製造する機能性調味料の製造方法であって、
上記調味料原料の比重をρa、マイクロカプセルの比重をρmとしたとき、ρm=(0.75〜1.25)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択するとともに、
上記芯物質の芯物質溶液を生成する芯物質溶液生成工程と、
上記膜物質を溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する膜物質溶液生成工程と、
上記芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と上記膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する混合液生成工程と、
上記混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成するマイクロカプセル生成工程と、
該マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離するとともに、調味料原料に対する沈降速度が0.1〜0.001cm/年になる100μm以下の所定の粒径以下の大きさのマイクロカプセルを抽出する分離抽出工程と、
該分離抽出工程で分離された所要のマイクロカプセルを調味料原料に添加する添加工程とを備えたことを特徴とする機能性調味料の製造方法。
【請求項7】
上記マイクロカプセル生成工程において、調味料原料の比重をρa、分散液の比重をρbとしたとき、ρb=(0.85〜1.15)ρaにしたことを特徴とする請求項6記載の機能性調味料の製造方法。
【請求項8】
上記分離抽出工程において、マイクロカプセルが生成された分散溶液から100μmより大きい所定の粒径以上の粒径の大径マイクロカプセルを除去し、該大径マイクロカプセルを除去した残液を、遠心分離機により、粒径範囲が段階的に異なるグループに仕分けし、その後、100μm以下の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して抽出することを特徴とする請求項6または7記載の機能性調味料の製造方法。
【請求項9】
47μm未満の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して抽出することを特徴とする請求項8記載の機能性調味料の製造方法。
【請求項10】
26μm以下の粒径範囲のグループの少なくともいずれかを選択して抽出することを特徴とする請求項9記載の機能性調味料の製造方法。
【請求項11】
ρm=(0.95〜1.05)ρaになるように芯物質及び膜物質を選択することを特徴とする請求項6乃至10何れかに記載の機能性調味料の製造方法。
【請求項12】
上記芯物質及び/または膜物質に、色素を付与したことを特徴とする請求項6乃至11何れかに記載の機能性調味料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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