機能性食品、それを用いたレトルト機能性食品及び無菌パック入り機能性食品
【課題】摂取エネルギーを低減できるだけでなく、摂食後の血糖値上昇も抑えることのできる機能性食品を提供する。
【解決手段】機能性主食1を、精白米である白米10と、外形が前記米の外形に合わせた米粒コンニャク20と、βグルカン及びレジスタントスターチを多く含む機能性食材である米粒麦30とを配合して構成し、米粒麦30は、外形を前記米の外形に合わせるとともに、ポリフェノールの含有量が低いファイバースノウで構成した。
【解決手段】機能性主食1を、精白米である白米10と、外形が前記米の外形に合わせた米粒コンニャク20と、βグルカン及びレジスタントスターチを多く含む機能性食材である米粒麦30とを配合して構成し、米粒麦30は、外形を前記米の外形に合わせるとともに、ポリフェノールの含有量が低いファイバースノウで構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、摂取後の急激な血糖値上昇を抑制できる機能性食品及びそれをレトルトパウチに封入したレトルト機能性食品やパックに無菌充填した
無菌パック入り機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界有数の長寿国となっている反面、急速な高齢化にともなう生活習慣病、なかでも糖尿病患者数の増加が社会問題となっている。糖尿病は、昨今急激に増加している生活習慣病のひとつであり、早急な予防対策が必須である。
【0003】
糖尿病の予防対策としては、適度な運動や休養などもあげられるが、食習慣が最も重要な因子であることは良く知られており、糖尿病の食生活においては、栄養バランス(たんぱく質、脂質、食物繊維、糖質、ビタミン、ミネラル等)を崩さずに常に一定のエネルギー量を保持することに心がける必要がある。
【0004】
近年では、糖尿病予防用や糖尿病患者用の食材としてエネルギーコントロール(カロリーコントロール)に配慮した数多くの食品が流通しており、なかでも主食においては、雑穀や蒟蒻を配合させ、摂取エネルギー、すなわち摂取カロリーを低減することのできる炊飯米も見かけるようになってきた(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、単に摂取カロリーをコントロールするだけでなく、食後過血糖値の急激な上昇を抑える、いわゆるグリセミックインデックス(GI)の低い食材の利用は、糖尿病予防や糖尿病患者にとってきわめて大切であり、膵臓への負荷や血管内皮細胞への影響を抑制するだけでなく、冠状動脈心疾患をはじめとするリスクファクターと密接に繋がることから、GIコントロールおよびGL(グリセミックロード)コントロールの重要性も注目されるようになってきた。
【0006】
殊に、糖尿病患者の場合、正常者に比べ、食事による血糖値の上昇は急激であるとともに、インスリンの分泌量低下やインスリン抵抗性によって、血糖値低下が遅く、血糖値が高い状態が続くこととなり、GIコントロールおよびGLコントロールの重要性も高い。
【0007】
上述したような特許文献1に記載の雑穀や蒟蒻を配合した炊飯米の場合、摂取カロリーを低減することはできる。しかし、主食としての食感(触覚)、見た目(視覚)及び旨味を得るためには所定量以上の白米の利用は避けられず、この所定量の白米を摂取することで血糖値が上昇するため、効果的な血糖値上昇抑制作用は得られなかった。そして、その傾向は、糖尿病患者であればさらに顕著であった。
【特許文献1】特開平7−79719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、摂取エネルギーを低減できるだけでなく、摂食後の血糖値上昇も抑えることのできる機能性食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む機能性食材と、米と、コンニャク粒とで構成する機能性食品であることを特徴とする。
上記βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む機能性食材は、大麦、高アミロース品種の食用米や食用麦、または再発酵酒粕等のβグルカン及びレジスタントスターチの両方、もしくはいずれか一方を多く含む食材であることを含む。
【0010】
上記米は、うるち米又は餅米であることを含み、さらに、玄米、5分づきあるいは精白米のようにあらゆる精米状態であることを含む。
上記コンニャク粒は、米形状、略球状、あるいは略円筒状に形成された蒟蒻であることを含む。
【0011】
これにより、摂取カロリーを低減できるとともに、摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
詳しくは、カロリーの極めて低い蒟蒻からなるコンニャク粒を配合したことにより、コンニャク粒を配合しない同量の米を摂取した場合と比較して、摂取カロリーを低減することができるとともに、機能性食材を配合したことにより、米の摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0012】
したがって、コンニャク粒や機能性食材の配合により米の摂取量は低下するが、わずかな米の摂取でも急激に血糖値が上昇する糖尿病患者であっても、機能性食品を摂取することで、米の摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記機能性食材を、食用大麦で構成することができる。
上記食用大麦は、小粒大麦といわれる六条大麦であり、シュンライ、ミノリムギ、べんけいむぎ、あるいはその他新品種の大麦であることを含む。
【0014】
大麦は、寒冷・乾燥に強く、ほぼ全国的に栽培されているため、βグルカン及びレジスタントスターチを多く含む機能性食材として食用大麦を用いることで、安定した品質の大麦を容易に調達でき、摂取後の血糖値上昇抑制効果のある機能性食品を得ることができる。
【0015】
また、この発明の態様として、前記食用大麦及びコンニャク粒の外形を、前記米の外形に合わせることができる。
外形に合わせるは、形状及びサイズのうち少なくとも一方を合わせることをいう。
【0016】
これにより、機能性食品を口に入れた際、通常の米飯を食した場合と同様の食感(触覚)を得ることができる。食感(触覚)は味覚とともに食味に影響するため、機能性食品を食した際に違和感なく、おいしく食することができる。殊に、食事制限等により様々な制約が課せられた糖尿病患者においては、食感よく食せるため、機能性食品を得たことによる満足度を向上することができる。
【0017】
また、この発明の態様として、前記コンニャク粒の含有量を70重量%以下とすることができる。
これにより、機能性食品を食した際の摂取カロリーを大幅に低減することができる。殊に、コンニャク粒の外形を米の外形に合わせた場合、コンニャク粒の含有量を70重量%以下としたとしても、食した際の違和感がなく、おいしく食せるとともに、大幅に摂取カロリーを低減できるため、利用者の満足度を向上することができる。
なお、コンニャク粒の含有量を示す重量%は、乾燥重量である米及び食用大麦と、湿潤重量のコンニャク粒との総重量に対する割合であることをいう。
【0018】
また、この発明の態様として、前記食用大麦を、ポリフェノールの含有量が低い低ポリフェノール食用大麦で構成することができる。
上記低ポリフェノール食用大麦は、シュンライの新品種であり、食物繊維を多く含むファイバースノウ品種や、早生・多収・寒雪害抵抗性の高いシンジュボシ品種等の食用大麦であり、これまでの食用大麦と比較してポリフェノールの含有量が低い食用大麦であることを含む。
【0019】
低ポリフェノール食用大麦は、ポリフェノールの含有量が低いため、炊飯白度が高く、通常の米飯と同様の見た目(視覚)を得ることができる。見た目(視覚)は味覚とともに食味に影響するため、機能性食品を食する際の見た目に違和感なく、おいしく食することができる。殊に、食事制限等により様々な制約が課せられた糖尿病患者においては、見た目(視覚)よく食せるため、機能性食品を得たことによる満足度を向上することができる。
【0020】
さらにまた、炊飯後の時間経過に伴って褐色化する要因であるポリフェノールの含有量が低いため、炊飯後の時間経過した場合であっても褐色化しにくい機能性食品を得ることができ、利用者の満足度をさらに向上することができる。
【0021】
また、この発明の態様として、食用形態を米飯、炊き込みご飯、赤飯、雑炊あるいはお粥とすることができる。
これにより、利用者の好みや健康状態等に応じた食用形態で機能性食品を食することができる。
【0022】
また、この発明は、上記機能性食品をレトルトパウチに封入したレトルト機能性食品であることを特徴とする。
これにより、利用者は、レトルトパウチごと加熱することで、温かく、均一な品質の機能性食品を摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【0023】
また、この発明は、上記機能性食品を、パックに無菌充填した無菌パック入り機能性食品であることを特徴とする。
これにより、利用者は、パックごと加熱することで、温かく、均一な品質の機能性食品を摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、摂取エネルギーを低減できるだけでなく、摂食後の血糖値上昇も抑えることのできる機能性食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
この発明の一実施の形態を以下図面に基づいて詳述する。
まずは、図1とともに、機能性主食1について説明する。なお、図1は、炊き上がり状態の機能性主食1の拡大平面図を示している。
【0026】
機能性主食1は、白米10と、米粒コンニャク20と、米粒麦30とを、重量比25:50:25で配合し、通常の炊飯状態(以下において「米飯」という。)に炊き上げて構成している。
なお、このときの重量比は、乾燥重量である白米10及び米粒麦30と、湿潤重量である米粒コンニャク20の重量比を示している。
【0027】
白米10は、精白したうるち米である。
米粒コンニャク20は、100gあたり5キロカロリー(食品成分表)と極めて低カロリーな白色のコンニャクを、炊き上がり状態の米と略同じ形状となるように形成している。なお、米粒コンニャク20は白米10と共に炊飯することによって内部の水分がしみでてわずかに小さくなるため、炊飯前には、炊き上がり状態の米よりわずかに大きく形成している。
【0028】
米粒麦30は、食用大麦の新品種である「ファイバースノウ」を、米と同じ比重で同じ形に加工して用いている。
この新品種である「ファイバースノウ」は、従来の品種シュンライを改良した品種であり、食物繊維が多く、黒状線31が細く、ポリフェノールの含有量が比較的低い、多繊維低ポリフェノール大麦である。
【0029】
詳しくは、表面の穀皮を削りとる搗精作業における搗精前の重さと搗精後の重さとの比を示す搗精歩留によって異なるものの、搗精歩留55%ではポリフェノー含有量が約24mg%と、通常の食用大麦(約42mg%)の60%程度の含有量である。また、搗精歩留60%ではポリフェノー含有量が約30mg%と、通常の食用大麦(約50mg%)の60%程度の含有量である。
【0030】
また、米粒麦30は、単に食物繊維含量が高いだけでなく、水溶性と不溶性食物繊維がバランスよく含まれており、詳しくは、以下の表1に示すように、他の雑穀に比べ、アミロース、RS及びβグルカンを多く含んでいる。
【0031】
【表1】
上記RSは、消化酵素で分解されにくい澱粉成分のことで、高アミロース品種の大麦を熱処理することでRSが生成しやすく、血糖値上昇抑制効果も高いことが期待される。
【0032】
なお、上記構成の白米10、米粒コンニャク20及び米粒麦30の配合比率(重量比25:50:25)は、さまざまな配合比率で構成した機能性主食の中から官能試験により設定した。
【0033】
詳しくは、機能性主食1を食した際のカロリー摂取量を抑えるために、米粒コンニャク20の配合比率を多くしたいが、旨味の観点から白米10を所定量以上必要であり、さらに、食感(触覚)の観点から70%以下、より好ましくは60%以下に設定するとよいことが官能試験により判明した。
【0034】
また、上述したように、旨味の観点からから所定量以上の白米10が必要であるが、少量であっても白米10を摂取した場合、殊に糖尿病患者においては、血糖値が上昇するため、血糖値抑制効果を期待できる米粒麦30を、白米10と同等量配合している。
【0035】
なお、この配合比率は、この配合に限定されず、例えば(白米10+米粒麦30):米粒コンニャク20の配合比率が30:70〜60:40の範囲であれば、食味を落とすことなく、摂取カロリーを低減できる機能性主食1を構成することができる。
【0036】
また、(白米10+米粒麦30):米粒コンニャク20の上記比率範囲において、白米10と米粒麦30とは同等量であることが好ましいが、どちらかが少し程度多くても同様の血糖値上昇抑制効果を得ることができる。
【0037】
このように、機能性主食1は、白米10と、炊き上がり状態の米と略同じ形状となるように白色のコンニャクを形成した米粒コンニャク20と、米と同じ比重で同じ形に加工した米粒麦30とを配合して構成したため、機能性主食1を口に入れた際、通常の米飯を食した場合と同様の食感(触覚)を得ることができる。
したがって、味覚とともに食味に影響する食感(触覚)に違和感がなく、おいしく食することができる。
【0038】
また、米粒麦30を、黒状線31が細く、ポリフェノールの含有量が比較的低い、多繊維低ポリフェノール大麦である「ファイバースノウ」で構成したことによって、飯白度が高く、通常の米飯と同様の見た目(視覚)を得ることができる。
したがって、味覚とともに食味に影響する見た目(視覚)に違和感がなく、おいしく食することができる。
【0039】
さらにまた、米粒麦30は炊飯後の時間経過に伴って褐色化する要因であるポリフェノールの含有量が低いため、炊飯後の時間経過した場合であっても褐色化しにくい。
【0040】
また、炊き上がり状態の米と略同じ形状となるように白色のコンニャクで形成した米粒コンニャク20の機能性主食1における含有量を70重量%以下としているため、食した際の違和感がなく、おいしく食することができながら、大幅に摂取カロリーを低減できるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0041】
また、機能性主食1を食することにより、白米10のみの米飯を食した場合と比較して摂取カロリーを低減できるとともに、糖尿病患者でない正常な人(以下において「健常者」という)のみならず、糖尿病患者であっても食後すなわち摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0042】
また、機能性主食1を炊飯状態でパックに無菌充填し、無菌パック入り機能性食品を構成した場合、電子レンジ等の加熱調理器で暖めるだけで、摂取カロリーを低減するとともに、血糖値上昇抑制効果のある機能性主食1を容易に食することができるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0043】
次に、上述したような機能性主食1の血糖値上昇抑制効果についての効果確認試験の結果について、図2乃至図4とともに説明する。
なお、図2は健常者による機能性主食1の血糖値上昇抑制効果確認試験(以下において「確認試験1」という)の試験結果のグラフであり、図3は糖尿病患者Aによる機能性主食1の血糖値上昇抑制効果確認試験(以下において「確認試験2A」という)の試験結果のグラフであり、図4は糖尿病患者Bによる機能性主食1の血糖値上昇抑制効果確認試験(以下において「確認試験2B」という)の試験結果のグラフである。
【0044】
まず、健常者が機能性主食1を摂取した場合の確認試験1は、以下の表2に示す5パターンの試験体(試験体1乃至5)を摂取し、摂取前と、摂取後30分おきに2時間経過までの計5回、血糖値を計測し、その結果を図2の確認試験1折れ線グラフに示している。
【0045】
【表2】
図2に示すように、試験体1と試験体2との結果から、白米10の半分の量を米粒コンニャク20に置き換えることによって血糖値上昇が抑制されていることが分かる。これは、半分の量の白米10を米粒コンニャク20に置換したことによって糖質含有量が低減されているために、血糖値上昇が抑制されていると考えられる。
【0046】
一方、試験体2における白米10の半分を玄米に置換した試験体3や、キヌアに置換した試験体4においても、さらに半分の白米10を減らしたこと、すなわち当初の白米10の1/4の量に減らしたことによる血糖値上昇抑制効果はなく、試験体2と同様の血糖値上昇を確認した。
【0047】
これに対し、試験体2における白米10の半分を米粒麦30に置換した試験体5(機能性主食1と同様の配合)の場合、試験体3,4と糖質含有量はほぼ同等にもかかわらず、血糖値抑制効果が確認できた。
【0048】
なお、この試験結果から、表2の最下段に示すように、試験体1のGI値を100とした場合のGI比を算出すると、試験体2乃至4のGI比に比べ、試験体5のGI比はわずか41であり、健常者が機能性主食1を食することにより、上述の血糖値抑制効果が得られることを明確に確認できた。
【0049】
また、試験体100gあたりのカロリーを、五訂日本食品成分表から算出すると、試験体1:白米356kcal、試験体2:180.5kcal、試験体5:177.3kcalとなり、血糖値上昇抑制効果とともに、摂取カロリーも低減できることが確認できた。
【0050】
続いて、糖尿病患者による血糖値上昇抑制効果確認試験(確認試験2A,2B)の試験結果について説明する。
確認試験2A,2Bは、糖尿病患者A,Bが、以下の表3に示す3パターンの試験体(試験体a,b,c)を摂取し、摂取前と、摂取後30分おきに2時間経過までの計5回、血糖値を計測し、その結果を図3及び図4の確認試験2折れ線グラフに示している。
【0051】
【表3】
図3に示す糖尿病患者Aの試験結果から、糖尿病患者の場合、試験体a(糖質49.7g)を摂取した場合、摂取60分後には血糖値が200mg/dLを越え、その後120分後まで上昇して戻ることはなかった。
【0052】
同様に、糖尿病患者Bの試験結果を示す図4においても、試験体aを摂取した場合、摂取30分後には血糖値が170mg/dLまで上昇し、その後90分後まで上昇し、120分後でもわずかにしか下降しなかった。
【0053】
試験体aのうち半分を米粒コンニャク20に置き換えた試験体b(上述の確認試験1における試験体2と同配合)の場合、糖質含有量は34.7gまで低減されるものの(表3最下段参照)、健常者では血糖値上昇が抑制されていたが、糖尿病患者Aでは、試験体aのGI値を100としたGI比で70程度の血糖値上昇抑制効果しか確認できなかった。
【0054】
糖尿病患者Bでは、図4で示すように、糖質含有量が低減された試験体bを摂取したにも関わらず、試験体aのGI値に対するGI比で135と、血糖値が上昇することを確認した。
【0055】
このことから,健常者の場合、摂取する糖質量を低減することによって血糖値の上昇を抑制することができるが、インスリンの機能が低下している糖尿病患者の場合、摂取する糖質量を低減させたとしても、血糖値の上昇抑制効果はあまりみられず、疾病状態においては、わずかな糖質を摂取しても急激に血糖値が上昇する可能性が有ることを確認した。
【0056】
しかし、糖尿病患者Aが、試験体bにおける白米10の半分の量を米粒麦30に置換した試験体c(機能性主食1及び試験体5と同様の配合)の場合、試験体bと糖質含有量はほぼ同等にもかかわらず(表3最下段参照)、試験体aのGI値に対するGI比でおよそ25というかなりの血糖値上昇抑制効果が確認できた。
【0057】
また、試験体bの摂取により、試験体aのGI値に対するGI比で135になった糖尿病患者Bにおいては、図4に示すように、試験体bと糖質含有量はほぼ同等である試験体cを摂取した場合、試験体aのGI値に対するGI比でおよそ70という血糖値上昇抑制効果が確認できた。これは、試験体bを摂取した際のGI値に対するGI比では50程度であり、糖尿病患者Bにおいても大きな血糖値上昇抑制効果を確認することができた。
【0058】
このように、上記試験結果から、試験体5及び試験体cと同配合率構成された機能性主食1は、上述したように、通常の米飯を食した場合と同様の食感(触覚)及び見た目(視覚)を得ることができるため、食味を害することなくおいしく食せるとともに、摂取カロリーを低減しながら、摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0059】
また、その血糖値上昇抑制効果は、糖質含有量を低減させただけでは血糖値上昇抑制効果が現れにくい糖尿病患者であっても摂取後の血糖値上昇を抑制することができることが判明した。
【0060】
次に、機能性主食1をお粥状にした場合の血糖値上昇抑制効果の効果確認試験の結果について説明する。このお粥状の機能性主食1は、白米10と米粒コンニャク20と米粒麦30とを20:60:20の配合比となるように、水と共に無菌状態でレトルトパウチに封入し、熱処理したレトルト機能性食品である。
【0061】
なお、お粥状の機能性主食1の配合比率(重量比20:60:20)は、さまざまな配合比率で構成したお粥状の機能性主食の中から官能試験により設定したが、食感(触覚)の観点から70%以下設定するとよいことが官能試験により判明した。
また、この配合比率である重量比も、上述したように、乾燥重量である白米10及び米粒麦30と、湿潤重量である米粒コンニャク20の重量比を示している。
【0062】
このレトルト機能性食品であるお粥状の機能性主食1を試験体Cとし、試験体Cと糖質含有量を合わせたグルコースを試験体Aとし、試験体Cと糖質含有量を合わせた通常のお粥を試験体Bとして健常者1,2,3,4の4名で摂取後の血糖値変化を測定し、お粥状の機能性主食1の血糖値上昇抑制効果の効果確認試験(確認試験3)の結果を図5(a)〜(d)に示している。
なお、図5に示す折れ線グラフは、各健常者における摂取前の血糖値からの変化量を示している。
【0063】
その結果、図5に示すように、試験体Cを摂取した場合の血糖値上昇は、試験体Aや試験体Bを摂取した場合の血糖値上昇より抑制されていることがわかった。このときの試験体Aを摂取した場合のGI値に対する比率であるGI比を比較すると、通常のお粥である試験体Bは90であるのに対し、機能性主食1と同配合の試験体Cはおよそ40であった。
【0064】
このことからも、機能性主食1がお粥状であっても、糖質含有量が同じグルコースや通常のお粥と比べて、血糖値上昇抑制効果を得ることができる。また、このお粥状の機能性主食1は、白米10、米粒コンニャク20及び米粒麦30を所定配合でレトルトパウチに無菌状態で封入して熱処理して構成しているため、安全で品質の高いお粥状の機能性主食1を構成することができる。
【0065】
また、レトルト機能性食品の場合、電子レンジ等の加熱調理器で暖めるだけで、摂取カロリーを低減するとともに、血糖値上昇抑制効果のある機能性主食1を容易に食することができるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0066】
なお、機能性主食1は、上述したように米飯状、お粥状としたが、雑炊や、その他の具材を入れて炊き込みご飯としてもよく、さらには、白米10を餅米で構成し、小豆と一緒に炊き上げて赤飯としてもよい。この場合、米粒麦30の白さは問題とならないため、低ポリフェノール品種でなくとも、βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む高アミロース品種の食用米や食用大麦を用いてもよい。
【0067】
また、通常の精白米である白米10と炊き上げる際であっても、ファイバースノウの代わりに、早生・多収・寒雪害抵抗性が高く、精麦白度の高いシンジュボシ品種等の食用大麦を用いてもよい。
さらにまた、白米10としては、精白米のみならず、例えば、玄米、5分づき等のあるいは米を用いてもよい。
【0068】
また、βグルカン及びレジスタントスターチを多く含む機能性食材としてファイバースノウの米粒麦30を用いたが、酒粕を高温高圧水処理した再発酵酒粕を粒状にして、米粒麦30の代用としても用いてもよい。酒粕を高温高圧水処理することでβグルカン及びレジスタントスターチの総量の含有量が増加するため、摂取カロリーを低減できるとともに、血糖値上昇抑制効果のある機能性主食1を得ることができる。
【0069】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、
米は、白米10に対応し、
以下同様に、
コンニャク粒は、米粒コンニャク20に対応し、
機能性食材及び食用大麦は米粒麦30に対応し、
機能性食品は、機能性主食1に対応し、
低ポリフェノール食用大麦は、ファイバースノウに対応するも、
この発明は、前述の実施態様の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】炊き上がり状態の機能性主食の拡大平面図を示している。
【図2】健常者による確認試験1の試験結果のグラフ。
【図3】糖尿病患者Aによる確認試験2Aの試験結果のグラフ。
【図4】糖尿病患者Bによる確認試験2Bの試験結果のグラフ。
【図5】健常者による確認試験3の試験結果のグラフ。
【符号の説明】
【0071】
1…機能性主食
10…白米
20…米粒コンニャク
30…米粒麦
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、摂取後の急激な血糖値上昇を抑制できる機能性食品及びそれをレトルトパウチに封入したレトルト機能性食品やパックに無菌充填した
無菌パック入り機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界有数の長寿国となっている反面、急速な高齢化にともなう生活習慣病、なかでも糖尿病患者数の増加が社会問題となっている。糖尿病は、昨今急激に増加している生活習慣病のひとつであり、早急な予防対策が必須である。
【0003】
糖尿病の予防対策としては、適度な運動や休養などもあげられるが、食習慣が最も重要な因子であることは良く知られており、糖尿病の食生活においては、栄養バランス(たんぱく質、脂質、食物繊維、糖質、ビタミン、ミネラル等)を崩さずに常に一定のエネルギー量を保持することに心がける必要がある。
【0004】
近年では、糖尿病予防用や糖尿病患者用の食材としてエネルギーコントロール(カロリーコントロール)に配慮した数多くの食品が流通しており、なかでも主食においては、雑穀や蒟蒻を配合させ、摂取エネルギー、すなわち摂取カロリーを低減することのできる炊飯米も見かけるようになってきた(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、単に摂取カロリーをコントロールするだけでなく、食後過血糖値の急激な上昇を抑える、いわゆるグリセミックインデックス(GI)の低い食材の利用は、糖尿病予防や糖尿病患者にとってきわめて大切であり、膵臓への負荷や血管内皮細胞への影響を抑制するだけでなく、冠状動脈心疾患をはじめとするリスクファクターと密接に繋がることから、GIコントロールおよびGL(グリセミックロード)コントロールの重要性も注目されるようになってきた。
【0006】
殊に、糖尿病患者の場合、正常者に比べ、食事による血糖値の上昇は急激であるとともに、インスリンの分泌量低下やインスリン抵抗性によって、血糖値低下が遅く、血糖値が高い状態が続くこととなり、GIコントロールおよびGLコントロールの重要性も高い。
【0007】
上述したような特許文献1に記載の雑穀や蒟蒻を配合した炊飯米の場合、摂取カロリーを低減することはできる。しかし、主食としての食感(触覚)、見た目(視覚)及び旨味を得るためには所定量以上の白米の利用は避けられず、この所定量の白米を摂取することで血糖値が上昇するため、効果的な血糖値上昇抑制作用は得られなかった。そして、その傾向は、糖尿病患者であればさらに顕著であった。
【特許文献1】特開平7−79719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、摂取エネルギーを低減できるだけでなく、摂食後の血糖値上昇も抑えることのできる機能性食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む機能性食材と、米と、コンニャク粒とで構成する機能性食品であることを特徴とする。
上記βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む機能性食材は、大麦、高アミロース品種の食用米や食用麦、または再発酵酒粕等のβグルカン及びレジスタントスターチの両方、もしくはいずれか一方を多く含む食材であることを含む。
【0010】
上記米は、うるち米又は餅米であることを含み、さらに、玄米、5分づきあるいは精白米のようにあらゆる精米状態であることを含む。
上記コンニャク粒は、米形状、略球状、あるいは略円筒状に形成された蒟蒻であることを含む。
【0011】
これにより、摂取カロリーを低減できるとともに、摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
詳しくは、カロリーの極めて低い蒟蒻からなるコンニャク粒を配合したことにより、コンニャク粒を配合しない同量の米を摂取した場合と比較して、摂取カロリーを低減することができるとともに、機能性食材を配合したことにより、米の摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0012】
したがって、コンニャク粒や機能性食材の配合により米の摂取量は低下するが、わずかな米の摂取でも急激に血糖値が上昇する糖尿病患者であっても、機能性食品を摂取することで、米の摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記機能性食材を、食用大麦で構成することができる。
上記食用大麦は、小粒大麦といわれる六条大麦であり、シュンライ、ミノリムギ、べんけいむぎ、あるいはその他新品種の大麦であることを含む。
【0014】
大麦は、寒冷・乾燥に強く、ほぼ全国的に栽培されているため、βグルカン及びレジスタントスターチを多く含む機能性食材として食用大麦を用いることで、安定した品質の大麦を容易に調達でき、摂取後の血糖値上昇抑制効果のある機能性食品を得ることができる。
【0015】
また、この発明の態様として、前記食用大麦及びコンニャク粒の外形を、前記米の外形に合わせることができる。
外形に合わせるは、形状及びサイズのうち少なくとも一方を合わせることをいう。
【0016】
これにより、機能性食品を口に入れた際、通常の米飯を食した場合と同様の食感(触覚)を得ることができる。食感(触覚)は味覚とともに食味に影響するため、機能性食品を食した際に違和感なく、おいしく食することができる。殊に、食事制限等により様々な制約が課せられた糖尿病患者においては、食感よく食せるため、機能性食品を得たことによる満足度を向上することができる。
【0017】
また、この発明の態様として、前記コンニャク粒の含有量を70重量%以下とすることができる。
これにより、機能性食品を食した際の摂取カロリーを大幅に低減することができる。殊に、コンニャク粒の外形を米の外形に合わせた場合、コンニャク粒の含有量を70重量%以下としたとしても、食した際の違和感がなく、おいしく食せるとともに、大幅に摂取カロリーを低減できるため、利用者の満足度を向上することができる。
なお、コンニャク粒の含有量を示す重量%は、乾燥重量である米及び食用大麦と、湿潤重量のコンニャク粒との総重量に対する割合であることをいう。
【0018】
また、この発明の態様として、前記食用大麦を、ポリフェノールの含有量が低い低ポリフェノール食用大麦で構成することができる。
上記低ポリフェノール食用大麦は、シュンライの新品種であり、食物繊維を多く含むファイバースノウ品種や、早生・多収・寒雪害抵抗性の高いシンジュボシ品種等の食用大麦であり、これまでの食用大麦と比較してポリフェノールの含有量が低い食用大麦であることを含む。
【0019】
低ポリフェノール食用大麦は、ポリフェノールの含有量が低いため、炊飯白度が高く、通常の米飯と同様の見た目(視覚)を得ることができる。見た目(視覚)は味覚とともに食味に影響するため、機能性食品を食する際の見た目に違和感なく、おいしく食することができる。殊に、食事制限等により様々な制約が課せられた糖尿病患者においては、見た目(視覚)よく食せるため、機能性食品を得たことによる満足度を向上することができる。
【0020】
さらにまた、炊飯後の時間経過に伴って褐色化する要因であるポリフェノールの含有量が低いため、炊飯後の時間経過した場合であっても褐色化しにくい機能性食品を得ることができ、利用者の満足度をさらに向上することができる。
【0021】
また、この発明の態様として、食用形態を米飯、炊き込みご飯、赤飯、雑炊あるいはお粥とすることができる。
これにより、利用者の好みや健康状態等に応じた食用形態で機能性食品を食することができる。
【0022】
また、この発明は、上記機能性食品をレトルトパウチに封入したレトルト機能性食品であることを特徴とする。
これにより、利用者は、レトルトパウチごと加熱することで、温かく、均一な品質の機能性食品を摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【0023】
また、この発明は、上記機能性食品を、パックに無菌充填した無菌パック入り機能性食品であることを特徴とする。
これにより、利用者は、パックごと加熱することで、温かく、均一な品質の機能性食品を摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、摂取エネルギーを低減できるだけでなく、摂食後の血糖値上昇も抑えることのできる機能性食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
この発明の一実施の形態を以下図面に基づいて詳述する。
まずは、図1とともに、機能性主食1について説明する。なお、図1は、炊き上がり状態の機能性主食1の拡大平面図を示している。
【0026】
機能性主食1は、白米10と、米粒コンニャク20と、米粒麦30とを、重量比25:50:25で配合し、通常の炊飯状態(以下において「米飯」という。)に炊き上げて構成している。
なお、このときの重量比は、乾燥重量である白米10及び米粒麦30と、湿潤重量である米粒コンニャク20の重量比を示している。
【0027】
白米10は、精白したうるち米である。
米粒コンニャク20は、100gあたり5キロカロリー(食品成分表)と極めて低カロリーな白色のコンニャクを、炊き上がり状態の米と略同じ形状となるように形成している。なお、米粒コンニャク20は白米10と共に炊飯することによって内部の水分がしみでてわずかに小さくなるため、炊飯前には、炊き上がり状態の米よりわずかに大きく形成している。
【0028】
米粒麦30は、食用大麦の新品種である「ファイバースノウ」を、米と同じ比重で同じ形に加工して用いている。
この新品種である「ファイバースノウ」は、従来の品種シュンライを改良した品種であり、食物繊維が多く、黒状線31が細く、ポリフェノールの含有量が比較的低い、多繊維低ポリフェノール大麦である。
【0029】
詳しくは、表面の穀皮を削りとる搗精作業における搗精前の重さと搗精後の重さとの比を示す搗精歩留によって異なるものの、搗精歩留55%ではポリフェノー含有量が約24mg%と、通常の食用大麦(約42mg%)の60%程度の含有量である。また、搗精歩留60%ではポリフェノー含有量が約30mg%と、通常の食用大麦(約50mg%)の60%程度の含有量である。
【0030】
また、米粒麦30は、単に食物繊維含量が高いだけでなく、水溶性と不溶性食物繊維がバランスよく含まれており、詳しくは、以下の表1に示すように、他の雑穀に比べ、アミロース、RS及びβグルカンを多く含んでいる。
【0031】
【表1】
上記RSは、消化酵素で分解されにくい澱粉成分のことで、高アミロース品種の大麦を熱処理することでRSが生成しやすく、血糖値上昇抑制効果も高いことが期待される。
【0032】
なお、上記構成の白米10、米粒コンニャク20及び米粒麦30の配合比率(重量比25:50:25)は、さまざまな配合比率で構成した機能性主食の中から官能試験により設定した。
【0033】
詳しくは、機能性主食1を食した際のカロリー摂取量を抑えるために、米粒コンニャク20の配合比率を多くしたいが、旨味の観点から白米10を所定量以上必要であり、さらに、食感(触覚)の観点から70%以下、より好ましくは60%以下に設定するとよいことが官能試験により判明した。
【0034】
また、上述したように、旨味の観点からから所定量以上の白米10が必要であるが、少量であっても白米10を摂取した場合、殊に糖尿病患者においては、血糖値が上昇するため、血糖値抑制効果を期待できる米粒麦30を、白米10と同等量配合している。
【0035】
なお、この配合比率は、この配合に限定されず、例えば(白米10+米粒麦30):米粒コンニャク20の配合比率が30:70〜60:40の範囲であれば、食味を落とすことなく、摂取カロリーを低減できる機能性主食1を構成することができる。
【0036】
また、(白米10+米粒麦30):米粒コンニャク20の上記比率範囲において、白米10と米粒麦30とは同等量であることが好ましいが、どちらかが少し程度多くても同様の血糖値上昇抑制効果を得ることができる。
【0037】
このように、機能性主食1は、白米10と、炊き上がり状態の米と略同じ形状となるように白色のコンニャクを形成した米粒コンニャク20と、米と同じ比重で同じ形に加工した米粒麦30とを配合して構成したため、機能性主食1を口に入れた際、通常の米飯を食した場合と同様の食感(触覚)を得ることができる。
したがって、味覚とともに食味に影響する食感(触覚)に違和感がなく、おいしく食することができる。
【0038】
また、米粒麦30を、黒状線31が細く、ポリフェノールの含有量が比較的低い、多繊維低ポリフェノール大麦である「ファイバースノウ」で構成したことによって、飯白度が高く、通常の米飯と同様の見た目(視覚)を得ることができる。
したがって、味覚とともに食味に影響する見た目(視覚)に違和感がなく、おいしく食することができる。
【0039】
さらにまた、米粒麦30は炊飯後の時間経過に伴って褐色化する要因であるポリフェノールの含有量が低いため、炊飯後の時間経過した場合であっても褐色化しにくい。
【0040】
また、炊き上がり状態の米と略同じ形状となるように白色のコンニャクで形成した米粒コンニャク20の機能性主食1における含有量を70重量%以下としているため、食した際の違和感がなく、おいしく食することができながら、大幅に摂取カロリーを低減できるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0041】
また、機能性主食1を食することにより、白米10のみの米飯を食した場合と比較して摂取カロリーを低減できるとともに、糖尿病患者でない正常な人(以下において「健常者」という)のみならず、糖尿病患者であっても食後すなわち摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0042】
また、機能性主食1を炊飯状態でパックに無菌充填し、無菌パック入り機能性食品を構成した場合、電子レンジ等の加熱調理器で暖めるだけで、摂取カロリーを低減するとともに、血糖値上昇抑制効果のある機能性主食1を容易に食することができるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0043】
次に、上述したような機能性主食1の血糖値上昇抑制効果についての効果確認試験の結果について、図2乃至図4とともに説明する。
なお、図2は健常者による機能性主食1の血糖値上昇抑制効果確認試験(以下において「確認試験1」という)の試験結果のグラフであり、図3は糖尿病患者Aによる機能性主食1の血糖値上昇抑制効果確認試験(以下において「確認試験2A」という)の試験結果のグラフであり、図4は糖尿病患者Bによる機能性主食1の血糖値上昇抑制効果確認試験(以下において「確認試験2B」という)の試験結果のグラフである。
【0044】
まず、健常者が機能性主食1を摂取した場合の確認試験1は、以下の表2に示す5パターンの試験体(試験体1乃至5)を摂取し、摂取前と、摂取後30分おきに2時間経過までの計5回、血糖値を計測し、その結果を図2の確認試験1折れ線グラフに示している。
【0045】
【表2】
図2に示すように、試験体1と試験体2との結果から、白米10の半分の量を米粒コンニャク20に置き換えることによって血糖値上昇が抑制されていることが分かる。これは、半分の量の白米10を米粒コンニャク20に置換したことによって糖質含有量が低減されているために、血糖値上昇が抑制されていると考えられる。
【0046】
一方、試験体2における白米10の半分を玄米に置換した試験体3や、キヌアに置換した試験体4においても、さらに半分の白米10を減らしたこと、すなわち当初の白米10の1/4の量に減らしたことによる血糖値上昇抑制効果はなく、試験体2と同様の血糖値上昇を確認した。
【0047】
これに対し、試験体2における白米10の半分を米粒麦30に置換した試験体5(機能性主食1と同様の配合)の場合、試験体3,4と糖質含有量はほぼ同等にもかかわらず、血糖値抑制効果が確認できた。
【0048】
なお、この試験結果から、表2の最下段に示すように、試験体1のGI値を100とした場合のGI比を算出すると、試験体2乃至4のGI比に比べ、試験体5のGI比はわずか41であり、健常者が機能性主食1を食することにより、上述の血糖値抑制効果が得られることを明確に確認できた。
【0049】
また、試験体100gあたりのカロリーを、五訂日本食品成分表から算出すると、試験体1:白米356kcal、試験体2:180.5kcal、試験体5:177.3kcalとなり、血糖値上昇抑制効果とともに、摂取カロリーも低減できることが確認できた。
【0050】
続いて、糖尿病患者による血糖値上昇抑制効果確認試験(確認試験2A,2B)の試験結果について説明する。
確認試験2A,2Bは、糖尿病患者A,Bが、以下の表3に示す3パターンの試験体(試験体a,b,c)を摂取し、摂取前と、摂取後30分おきに2時間経過までの計5回、血糖値を計測し、その結果を図3及び図4の確認試験2折れ線グラフに示している。
【0051】
【表3】
図3に示す糖尿病患者Aの試験結果から、糖尿病患者の場合、試験体a(糖質49.7g)を摂取した場合、摂取60分後には血糖値が200mg/dLを越え、その後120分後まで上昇して戻ることはなかった。
【0052】
同様に、糖尿病患者Bの試験結果を示す図4においても、試験体aを摂取した場合、摂取30分後には血糖値が170mg/dLまで上昇し、その後90分後まで上昇し、120分後でもわずかにしか下降しなかった。
【0053】
試験体aのうち半分を米粒コンニャク20に置き換えた試験体b(上述の確認試験1における試験体2と同配合)の場合、糖質含有量は34.7gまで低減されるものの(表3最下段参照)、健常者では血糖値上昇が抑制されていたが、糖尿病患者Aでは、試験体aのGI値を100としたGI比で70程度の血糖値上昇抑制効果しか確認できなかった。
【0054】
糖尿病患者Bでは、図4で示すように、糖質含有量が低減された試験体bを摂取したにも関わらず、試験体aのGI値に対するGI比で135と、血糖値が上昇することを確認した。
【0055】
このことから,健常者の場合、摂取する糖質量を低減することによって血糖値の上昇を抑制することができるが、インスリンの機能が低下している糖尿病患者の場合、摂取する糖質量を低減させたとしても、血糖値の上昇抑制効果はあまりみられず、疾病状態においては、わずかな糖質を摂取しても急激に血糖値が上昇する可能性が有ることを確認した。
【0056】
しかし、糖尿病患者Aが、試験体bにおける白米10の半分の量を米粒麦30に置換した試験体c(機能性主食1及び試験体5と同様の配合)の場合、試験体bと糖質含有量はほぼ同等にもかかわらず(表3最下段参照)、試験体aのGI値に対するGI比でおよそ25というかなりの血糖値上昇抑制効果が確認できた。
【0057】
また、試験体bの摂取により、試験体aのGI値に対するGI比で135になった糖尿病患者Bにおいては、図4に示すように、試験体bと糖質含有量はほぼ同等である試験体cを摂取した場合、試験体aのGI値に対するGI比でおよそ70という血糖値上昇抑制効果が確認できた。これは、試験体bを摂取した際のGI値に対するGI比では50程度であり、糖尿病患者Bにおいても大きな血糖値上昇抑制効果を確認することができた。
【0058】
このように、上記試験結果から、試験体5及び試験体cと同配合率構成された機能性主食1は、上述したように、通常の米飯を食した場合と同様の食感(触覚)及び見た目(視覚)を得ることができるため、食味を害することなくおいしく食せるとともに、摂取カロリーを低減しながら、摂取後の血糖値上昇を抑制することができる。
【0059】
また、その血糖値上昇抑制効果は、糖質含有量を低減させただけでは血糖値上昇抑制効果が現れにくい糖尿病患者であっても摂取後の血糖値上昇を抑制することができることが判明した。
【0060】
次に、機能性主食1をお粥状にした場合の血糖値上昇抑制効果の効果確認試験の結果について説明する。このお粥状の機能性主食1は、白米10と米粒コンニャク20と米粒麦30とを20:60:20の配合比となるように、水と共に無菌状態でレトルトパウチに封入し、熱処理したレトルト機能性食品である。
【0061】
なお、お粥状の機能性主食1の配合比率(重量比20:60:20)は、さまざまな配合比率で構成したお粥状の機能性主食の中から官能試験により設定したが、食感(触覚)の観点から70%以下設定するとよいことが官能試験により判明した。
また、この配合比率である重量比も、上述したように、乾燥重量である白米10及び米粒麦30と、湿潤重量である米粒コンニャク20の重量比を示している。
【0062】
このレトルト機能性食品であるお粥状の機能性主食1を試験体Cとし、試験体Cと糖質含有量を合わせたグルコースを試験体Aとし、試験体Cと糖質含有量を合わせた通常のお粥を試験体Bとして健常者1,2,3,4の4名で摂取後の血糖値変化を測定し、お粥状の機能性主食1の血糖値上昇抑制効果の効果確認試験(確認試験3)の結果を図5(a)〜(d)に示している。
なお、図5に示す折れ線グラフは、各健常者における摂取前の血糖値からの変化量を示している。
【0063】
その結果、図5に示すように、試験体Cを摂取した場合の血糖値上昇は、試験体Aや試験体Bを摂取した場合の血糖値上昇より抑制されていることがわかった。このときの試験体Aを摂取した場合のGI値に対する比率であるGI比を比較すると、通常のお粥である試験体Bは90であるのに対し、機能性主食1と同配合の試験体Cはおよそ40であった。
【0064】
このことからも、機能性主食1がお粥状であっても、糖質含有量が同じグルコースや通常のお粥と比べて、血糖値上昇抑制効果を得ることができる。また、このお粥状の機能性主食1は、白米10、米粒コンニャク20及び米粒麦30を所定配合でレトルトパウチに無菌状態で封入して熱処理して構成しているため、安全で品質の高いお粥状の機能性主食1を構成することができる。
【0065】
また、レトルト機能性食品の場合、電子レンジ等の加熱調理器で暖めるだけで、摂取カロリーを低減するとともに、血糖値上昇抑制効果のある機能性主食1を容易に食することができるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0066】
なお、機能性主食1は、上述したように米飯状、お粥状としたが、雑炊や、その他の具材を入れて炊き込みご飯としてもよく、さらには、白米10を餅米で構成し、小豆と一緒に炊き上げて赤飯としてもよい。この場合、米粒麦30の白さは問題とならないため、低ポリフェノール品種でなくとも、βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む高アミロース品種の食用米や食用大麦を用いてもよい。
【0067】
また、通常の精白米である白米10と炊き上げる際であっても、ファイバースノウの代わりに、早生・多収・寒雪害抵抗性が高く、精麦白度の高いシンジュボシ品種等の食用大麦を用いてもよい。
さらにまた、白米10としては、精白米のみならず、例えば、玄米、5分づき等のあるいは米を用いてもよい。
【0068】
また、βグルカン及びレジスタントスターチを多く含む機能性食材としてファイバースノウの米粒麦30を用いたが、酒粕を高温高圧水処理した再発酵酒粕を粒状にして、米粒麦30の代用としても用いてもよい。酒粕を高温高圧水処理することでβグルカン及びレジスタントスターチの総量の含有量が増加するため、摂取カロリーを低減できるとともに、血糖値上昇抑制効果のある機能性主食1を得ることができる。
【0069】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、
米は、白米10に対応し、
以下同様に、
コンニャク粒は、米粒コンニャク20に対応し、
機能性食材及び食用大麦は米粒麦30に対応し、
機能性食品は、機能性主食1に対応し、
低ポリフェノール食用大麦は、ファイバースノウに対応するも、
この発明は、前述の実施態様の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】炊き上がり状態の機能性主食の拡大平面図を示している。
【図2】健常者による確認試験1の試験結果のグラフ。
【図3】糖尿病患者Aによる確認試験2Aの試験結果のグラフ。
【図4】糖尿病患者Bによる確認試験2Bの試験結果のグラフ。
【図5】健常者による確認試験3の試験結果のグラフ。
【符号の説明】
【0071】
1…機能性主食
10…白米
20…米粒コンニャク
30…米粒麦
【特許請求の範囲】
【請求項1】
βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む機能性食材と、米と、コンニャク粒とで構成する
機能性食品。
【請求項2】
前記機能性食材を、食用大麦で構成した
請求項1に記載の機能性食品。
【請求項3】
前記食用大麦及びコンニャク粒の外形を、前記米の外形に合わせた
請求項2に記載の機能性食品。
【請求項4】
前記コンニャク粒の含有量を70重量%以下とした
請求項3に記載の機能性食品。
【請求項5】
前記食用大麦を、
ポリフェノールの含有量が低い低ポリフェノール食用大麦で構成した
請求項2乃至4に記載の機能性食品。
【請求項6】
食用形態が
米飯、炊き込みご飯、赤飯、雑炊あるいはお粥である
請求項1乃至5に記載の機能性食品。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の機能性食品がレトルトパウチに封入された
レトルト機能性食品。
【請求項8】
請求項1乃至6に記載の機能性食品をパックに無菌充填した
無菌パック入り機能性食品。
【請求項1】
βグルカン及びレジスタントスターチのうち少なくとも一方を多く含む機能性食材と、米と、コンニャク粒とで構成する
機能性食品。
【請求項2】
前記機能性食材を、食用大麦で構成した
請求項1に記載の機能性食品。
【請求項3】
前記食用大麦及びコンニャク粒の外形を、前記米の外形に合わせた
請求項2に記載の機能性食品。
【請求項4】
前記コンニャク粒の含有量を70重量%以下とした
請求項3に記載の機能性食品。
【請求項5】
前記食用大麦を、
ポリフェノールの含有量が低い低ポリフェノール食用大麦で構成した
請求項2乃至4に記載の機能性食品。
【請求項6】
食用形態が
米飯、炊き込みご飯、赤飯、雑炊あるいはお粥である
請求項1乃至5に記載の機能性食品。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の機能性食品がレトルトパウチに封入された
レトルト機能性食品。
【請求項8】
請求項1乃至6に記載の機能性食品をパックに無菌充填した
無菌パック入り機能性食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2010−124726(P2010−124726A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301000(P2008−301000)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】
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