説明

機関の排ガスにより加熱する熱媒油ボイラ。

【課題】機関の排ガス熱により直接熱媒油を加熱する船舶に搭載する熱媒油ボイラにおいて、熱媒油ボイラの熱媒油加熱の効率化と排ガスダンパ装置を熱媒油ボイラと一体化することで据え付け面積の極小化で、省エネ化、且つ、低コスト可能なものとする。
【解決手段】機関の排ガス熱により直接熱媒油を加熱する船舶に搭載する熱媒油ボイラにおいて、排気管外部に熱媒油タンクを設け、該熱媒油タンク内部に排気管外周に沿って折返し油路を形成した構造で、排ガスが通過する際に効率よく熱媒油を加熱し、排気管内部に排気筒を設けるスペースが確保でき、排ガス管と排気筒を二重管として、排ガスの通路を選択することで加熱経路とバイパス回路を一体化して熱媒油加熱器の効率化とコンパクト化で、据え付け面積を最小にすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機関の排ガス熱により直接熱媒油を加熱する船舶に搭載する熱媒油ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の熱媒油ボイラでは機関から発生した高温排ガスはケーシング内部を通過する際に内部の熱媒油ヒートコイルを加熱した後、船外に排出している。しかし、従来の熱媒油加熱器は、熱媒油加熱器への排ガスは切替ダンパを設け、排ガスの該ケーシング内の供給を停止し、排ガス迂回路としてバイパス排気管が設けている。
【0003】
排ガス熱を利用した直接熱媒油を加熱する熱媒油ボイラでは、熱媒油加熱器、切替ダンパ及びバイパス排気管と別々で構成したものが主流になっている。
【0004】
以下、図により従来の機関の排ガス熱により直接熱媒油を加熱する船舶に搭載する熱媒油ボイラについて説明する。
【0005】
図1により説明をすると、機関1からの排ガスは、排気管2を経由して排ガスダンパ3の入口Aに接続され、ダンパ4がb側に位置するとき、出口Bは閉鎖され、出口Cからバイパス排気管15を経由して排ガス管11に接続され船外に排出する。
【0006】
また、該ダンパ4をc側に操作した時は、出口Cが閉鎖され、排ガスは、出口Bから排ガス管5をへて熱媒油加熱器7の排ガス導入口Dに至る。
【0007】
該熱媒油加熱器7のケーシング6内部には多数の熱媒油ヒートコイル8が配設され、該熱媒油ヒートコイル8の端部は、該ケーシング6外部の熱媒油入口集合管9及び熱媒油出口集合管10にそれぞれ接続されている。
【0008】
該排ガス導入口Dに至った排ガスは、該ケーシング6内を通過する際に該該熱媒油ヒートコイル8を加熱して、排ガス出口Eから該排ガス管11経由で船外に排出される。
【0009】
熱媒油は、熱媒油循環ポンプ12により管13を経て該熱媒油入口集合管9に供給され、排ガスが該熱媒油加熱器7に供給された時、排ガスにより熱媒油が加熱され、該熱媒油出口集合管10から管14で燃料油加熱器16に供給され、管17から熱媒油循環ポンプ12に至る循環回路となっている。
【0010】
該熱媒油加熱器7の該熱媒油出口集合管10の熱媒油温度を監視し、熱媒油が規定上限温度より高い場合には、該機関1の排ガス該ダンパ4をb側に操作し、該バイパス排気管15側に切替え、該熱媒油加熱器7への排ガスを遮断する。
【0011】
また、熱媒油が規定下限温度より低くなれば、排ガス該ダンパ4をc側に切替え、該熱媒油加熱器7側に切替えて、熱媒油を加熱し、規定上限温度から規定下限温度間をON−OFF制御で規定温度範囲内に制御している。
【0012】
以上説明したように、該機関1からの排ガスは該排ガスダンパ3から該熱媒油加熱器7に供給し船外に排出する経路と、該排ガスダンパ3から該バイパス排気管15を経由して船外に排出される2つの経路とから成る。
【0013】
しかし、該熱媒油加熱器7と該バイパス排気管15を経由する2系統の排気管経路及び排ガスダンパ3を設備する場合には大きな場所が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許公開 2011−117714 熱媒ボイラ
【特許文献2】特許公開 2011−099601 熱媒ボイラ
【特許文献3】特許公開 2010−145061 熱媒システム
【特許文献4】特許公開 平08−159554 熱媒ボイラの自動台数制御装置
【特許文献5】特許公開 平07−225055 熱媒ボイラ
【特許文献6】特許公開 平07−158970 熱媒ボイラ用循環ポンプの異常判定装置
【特許文献7】特許公開 平07−019599 熱媒ボイラの燃焼制御装置
【特許文献8】特許公開 平07−019598 熱媒ボイラの起動制御装置
【特許文献9】特許公開 平06−341606 熱媒ボイラの自動冷却運転方法
【特許文献10】実用新案開平07−006642 熱媒ボイラにおける熱媒の温度制御装置
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】JIS B 8201鋼製ボイラ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上に述べた従来の熱媒油ボイラの問題点は、機関からの排気ガスは、排ガスダンパで2方に切替えて、一方は、熱媒油加熱器を経由する経路と、もう一方はバイパス排気管を経て船外に排出する経路の2系統の構成となり、該熱媒油ボイラの主要機器である該熱媒油加熱器、該排ガスダンパ及び該バイパス排気管を据え付けるには大きな場所が必要である、これらの主機器は、該機関の上方に据え付ける必要があり、必然的に機関室ケージング内に据付けることになるが、小型船舶では総トン数に制限され機関室ケーシングが狭く、据え付けることが困難である。
【0017】
本発明はこのような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、熱媒油ボイラの構成をシンプルとし、コンパクトで効率的な熱媒油ボイラを実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記目的を達成するために 機関の排気管外周に排ガス熱により直接熱媒油を加熱する熱媒油タンクを設け、該熱媒油タンク内部は、上下間に縦リブを設け内部を2分し、該縦リブを境として熱媒油が繰り返し反転するように、該排気管外周に沿って水平状態に折返し流れる1本の油路を設けたことを特徴とする。
【0019】
この熱媒油ボイラの熱媒油加熱部である該熱媒油タンクは、該熱媒油タンク内部に該排気管外周に沿って折返し油路を形成した構造としたことで、熱媒油が該熱媒油タンク内を繰り返し反転することで、内部の流れを乱流とすることで、排ガス熱で効率よく熱媒油を加熱して該排気管外周にコンパクトに配置することが出来る。従来の熱媒油加熱器のように排ガスの通る場所に熱媒油ヒートコイルを設置する必要がなく、排ガスを通過する該排気管の内部を空洞にする事が出来る。
【0020】
この熱媒油ボイラにおいて、該熱媒油タンクを形成する該排気管中心線上に配置した軸に、下端に鍔をもった該排気筒を固着し、該軸を上下に操作することで連動して該排気筒が移動する構造配置としたことを特徴とする。
【0021】
この場合、下端に鍔をもった該排気筒は、該軸を上方に操作し、該鍔が該排気管下部まで移動した時、該排気筒外部と該排気管との間の風路を該鍔が閉鎖し、該排気筒内部の風路を排ガスが通過するバイパス回路と、該軸を下方に操作し、該排気筒を下端まで移動した時、該鍔がシールリングと接触し、該排気筒内部の該風路を閉鎖し、該排気筒外部と該排気管間の該風路を排ガスが通過する加熱経路を有することを特徴とする
【発明の効果】
【0022】
熱媒油ボイラの熱媒油加熱器である熱媒油タンクを排気管の外部に設置し、該排気管内部が空洞となり、該排気管中心線上に配置した軸に、下端に鍔をもった排気筒を固着し、該軸を上下に操作し該排気筒が移動する2重管構造配置としたことで熱媒加熱器の中にバイパス回路と加熱経路と一体とした構成とすることでコンパクトで効率的な熱媒油ボイラとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の機関の排ガスで直接熱媒油を加熱する熱媒油ボイラの概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る機関の排ガスで直接熱媒油を加熱する熱媒油ボイラの概略系統図である。
【図3】本発明の実施形態に係る熱媒油加熱器の縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る熱媒油タンクの内部構造の概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係る排ガス分配箱の縦断面である。
【図6】本発明の実施形態に係る排気筒を駆動する駆動装置の縦断面である。
【図7】本発明の実施形態に係る排ガス加熱経路についての動作状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る排ガスバイパス回路についての動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態として一実施例を図2〜図8に基づいて説明する。
【0025】
図2〜図8を用いて本発明の熱媒油ボイラの一実施例について説明すると、
図2では、熱媒油熱ボイラの概略系統図について説明すると。熱媒ボイラでは熱媒加熱器4a、熱媒油循環ポンプ9a、膨張タンク18aおよび熱媒油ドレンタンク19aで構成し、排ガスは、機関1aから、排気管2aを経由して、熱媒油加熱器4aの排ガス導入口3aに接続され、排ガス短管6aより、排ガス管5aを経由して船外に排出される。
【0026】
熱媒油は、熱媒油循環ポンプ9aにより熱媒管10aを経て該熱媒油給油管8aに供給され、熱媒油加熱器4aを通過し、該熱媒油取出管7aから排ガスにより加熱された熱媒油は、熱媒管11aを経由して燃料油加熱器12aに供給され、燃料油と熱交換された熱媒油は熱媒管13aから熱媒油循環ポンプ9aに至る循環回路となっている。熱により加熱されて膨張した熱媒油は熱媒管14aを経由して熱媒油膨張タンク18aに至る。膨張タンク18aから吐き出された空気は空気管15aで熱媒油ドレンタンク19aに至り、空気管17aから大気に放出する。
【0027】
該熱媒油加熱器4aについて図3にて説明すると、該熱媒油加熱器4aは熱媒油タンク21、排ガス分配箱22、該排ガス短管6a及び駆動装置40から構成される。該熱媒油タンク21は、排気管24の外周上部に熱媒油止めのリング25を、外周下部にも熱媒油止めのリング26を設け、該リング25外周と該リング26外周の間を接続する外周管27で構成され、それぞれの部材周囲を溶接した構造物とする。排気管24の下端部外周には排ガス分配箱22と接続するための接続リング29と上端部内周には該排ガス短管6aと接続するための接続リング28を配置し、それぞれを排気管24に溶接で固着する。
【0028】
該熱媒油タンク21内部構造について図4にて説明すると、該排気管24に、該リング25下面と該リング26上面の間を縦方向に仕切った熱媒油止めの縦リブ31を溶接し、該縦リブ31を境にして該熱媒油タンク21内部を2分する。
該熱媒油タンク21の上部から1段目の水平リブ32は該縦リブ31に接し右側に向かって該排気管24の外周約350度に渡って沿い水平状態に配置溶接し、水平リブ32と該縦リブ31間に開口33を設け、該水平リブ32と2段目水平リブ34の段差は熱媒油流量により計算された間隔とし、該水平リブ34は該縦リブ31に接し左側に向かって該排気管24の外周約350度に渡って沿い水平状態に配置溶接し、水平リブ34と該縦リブ31間に開口35を配置する。これらの配置と同じように、該リング25と該リング26の間を繰り返し配置することで、熱媒油が上部から下部へと流れる1本の油路36が形成され、該油路36の上端部には熱媒油給油管8aを、下端部には熱媒油取出管7aを設け、熱媒油は該熱媒油給油管8aから該熱媒油取出管7aまで繰り返し反転して流れる構造とする。
【0029】
該排ガス分配箱22について図5にて説明すると、従来の熱媒ボイラでの切替ダンパに相当する機能を、該熱媒油加熱器4aの内部に装備したものである。
【0030】
熱媒油該排ガス分配箱22の垂直壁面に設けた排ガス導入口3aは、該排ガス分配箱22の排ガス入口となり、該排ガス分配箱22の上面に設けた接続リング39は、接続リング29とボールト41により該熱媒油タンク21と接続され、該排ガス分配箱22の垂直壁面下端に設けた下端リング44に底板42とはボールト30にて接続し、底板42の上面にはシールリング43が配置溶接する。
【0031】
該排気管24の中心線上に配置した軸45は、排ガス短管6aに設けた支持金物51と底板42に取り付けた貫通金物50で支持され、該排気筒47は、下端部外周に凹型の鍔46を配置溶接し、1体化し、該軸45に固定金物49および固定金物54にて固着し、該軸45が上下することで該排気筒47も移動する構造とする。
【0032】
該排気筒47を駆動する該駆動装置40について図6にて説明すると、該駆動装置40は、該排ガス分配箱22の底板42下側に支持台55で取り付けた電動ジャッキ56の軸57の先端部に設けたフランジ58と軸45の下端フランジ59は接続され、該電動ジャッキ56の電動機53が作動すると軸57は、上方または下方に操作することで軸45がつれて上下することで該排気筒47が移動する。
【0033】
排ガスの分配動作について図7にて説明すると、図中において、斜線部は排ガスの通過状態を示し、該電動ジャッキ56を下降に操作すると該軸57が下降し、該軸45、該排気筒47が連れて下降し、凹型の該鍔46の下面とシールリング43の上面が接した時、該排気筒47の内側が閉鎖され、該排気筒47の上端部は降下して排ガス短管6a下端までの間が広く開放され、該熱媒油タンク21側の該排気管24と該排気筒47との間の風路52は解放され、排ガス導入口3aから入った排ガスは風路52を通過して熱媒油タンク21の壁面が加熱され内部の熱媒油が加熱され、排ガス短管6aを経由して排出される加熱経路となる。
【0034】
排ガスが該熱媒油タンク21内該風路52を回避するバイパス回路となる作動について図8にて説明すると、図中において、斜線部は排ガスの通過状態を示し、該電動ジャッキ56が上昇に操作すると該軸57が上昇し、該軸45、該排気筒47が連れて上昇し、凹型の鍔46の上面が接続リング39の下面に接した時、該排気管47の上端部が該排ガス短管6aの内部下端部より上方にラップすることで、該熱媒油タンク21の該風路52は閉鎖されて、該排ガス導入口3aから入った排ガスは、該排気筒47の内側を通過し、該排ガス短管6aを経由して排出され、該熱媒油タンク21は加熱されなくなる。
【0035】
熱媒油制御については、熱媒油の設定温度上限値より熱媒油温度が高くなった場合には、該駆動装置40は該電動ジャッキ56が上昇に作動し、該熱媒油タンク21の該風路52は閉鎖されて排ガスは供給が停止され徐々に熱媒油温度が低下し、設定温度下限に至れば該駆動装置40は該電動ジャッキ56が下降に作動し、排気筒47の入口が閉鎖され、該熱媒油タンク21の該風路52は解放されて排ガスは供給されて徐々に熱媒油温度が上昇する。熱媒油の温度は設定温度上限値と設定温度下限値の間でON−OFF制御が出来る。
【0036】
熱媒油制御がON−OFF制御より制御幅を小さくするには、操作の結果得られた制御量の値を設定温度(目標値)と比較し、その判断によって修正する動作、すなわち、訂正動作を行うようなフィードバック制御も可能である。
【符号の説明】
【0037】
1a 機関
2a 排気管
3a 排ガス導入口
4a 熱媒油加熱器
5a 排ガス管
6a 排ガス短管
7a 熱媒油取出管
8a 熱媒油給油管
9a 熱媒油循環ポンプ
10a 熱媒管
11a 熱媒管
12a 熱媒油熱交換器
13a 熱媒管
14a 熱媒管
15a オーバフロ管
16a 熱媒落管
17a 空抜き管
18a 膨張タンク
19a 熱媒油ドレンタンク
21 熱媒油タンク
22 排ガス分配箱
24 排気管
25 リング
26 リング
27 外周管
28 接続リング
29 接続リング
30 ボールト
31 縦リブ
32 水平リブ
33 開口
34 水平リブ
35 開口
36 油路
39 接続リング
40 駆動装置
41 ボールト
42 底板
43 シールリング
44 下端リング
45 軸
46 鍔
47 排気筒
49 固定金物
50 貫通金物
52 風路
53 電動機
54 固定金物
55 支持台
56 電動ジャッキ
57 軸
58 フランジ
59 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関の排気管外周に排ガス熱により直接熱媒油を加熱する熱媒油タンクを設け、該熱媒油タンク内部は、上下間に縦リブを設け内部を2分し、該縦リブを境として熱媒油が繰り返し反転するように、該排気管外周に沿って水平状態に折返し流れる1本の油路を設けたことを特徴とする熱媒油ボイラ。
【請求項2】
該熱媒油タンクを形成する該排気管中心線上に配置した軸に、下端に鍔をもった該排気筒を固着し、該軸を上下に操作することで連動して該排気筒が移動する構造配置としたことを特徴とする請求項1記載の熱媒油ボイラ。
【請求項3】
請求項2に記載の下端に鍔をもった該排気筒は、該軸を上方に操作し、該鍔が該排気管下部まで移動した時、該排気筒外部と該排気管との間の風路を該鍔が閉鎖し、該排気筒内部の風路を排ガスが通過するバイパス回路と、該軸を下方に操作し、該排気筒を下端まで移動した時、該鍔がシールリングと接触し、該排気筒内部の該風路を閉鎖し、該排気筒外部と該排気管間の該風路を排ガスが通過する加熱経路を有することを特徴とする請求項1記載の熱媒油ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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