説明

欠陥修正方法

【課題】塗膜の広範囲に亘る欠陥部の修正時間を短縮すると共に、基板面の凹凸に寄らず修正薬液の塗膜厚みの均一化を可能にする。
【解決手段】カラーフィルタ基板1面に形成された配向膜3の欠陥部6を修正する欠陥修正方法であって、欠陥部6に修正薬液5を適量だけ滴下する薬液滴下段階と、カラーフィルタ基板1面の凹凸に倣って弾性変形するスタンプ8でカラーフィルタ基板1面を押圧して修正薬液5を押し広げるスタンプ押圧段階と、を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板面に形成された塗膜の欠陥部を修正する欠陥修正方法に関し、詳しくは、塗膜の広範囲に亘る欠陥部の修正時間を短縮すると共に、基板面の凹凸に寄らず修正薬液の塗膜厚みの均一化を可能にする欠陥修正方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の欠陥修正方法は、基板表面に形成されたパターンと同形状に形成され一面が平坦な樹脂製の小片を、平坦面を下にして針の先端部に取り付ける段階と、小片の平坦面に修正材を付着させる段階と、欠陥部を有するパターンに小片を圧接して修正材を転写させる段階と、を行うものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−279513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の欠陥修正方法においては、基板表面に形成されたパターンと同形状に形成された小片の下面に修正液(修正薬液)を付着させた後、この小片を欠陥パターンに圧接して修正液を転写させるようにしたものであったため、複数のパターンに跨る広範囲の欠陥部を修正するときには、小片下面への修正液の付着、小片による欠陥部への圧接、修正液の転写という一連の動作を複数回繰り返して欠陥部を修正しなければならず、欠陥の修正に長時間を要する場合があった。また、広範囲の欠陥部を複数回の転写動作により修正する場合には、修正膜厚が均一になり難いという問題もある。
【0004】
さらに、上記小片は、基板面の凹凸に倣って弾性変形するものでないため、表面に凹凸のある基板の塗膜の欠陥修正においては、修正膜の膜厚を均一にするこができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、塗膜の広範囲に亘る欠陥部の修正時間を短縮すると共に、基板面の凹凸に寄らず修正薬液の塗膜厚みの均一化を可能にする欠陥修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による欠陥修正方法は、基板面に形成された塗膜の欠陥部を修正する欠陥修正方法であって、前記欠陥部に修正薬液を適量だけ滴下する薬液滴下段階と、前記基板面の凹凸に倣って弾性変形するスタンプで前記基板面を押圧して前記修正薬液を押し広げるスタンプ押圧段階と、を行うものである。
【0007】
このような構成により、基板面に形成された塗膜の欠陥部に修正薬液を適量だけ滴下し、基板面の凹凸に倣って弾性変形するスタンプで基板面を押圧して修正薬液を押し広げ、塗膜の欠陥部を修正する。
【0008】
また、前記スタンプは、前記修正薬液に対して耐薬品性及び撥液性を有する材料で形成されたものである。これにより、修正薬液に対して耐薬品性及び撥液性を有する材料で形成したスタンプで修正薬液を押し広げる。
【0009】
さらに、前記材料は、フッ素樹脂又はシリコーン樹脂である。これにより、フッ素樹脂又はシリコーン樹脂から成る材料で形成したスタンプで修正薬液を押し広げる。
【0010】
そして、前記材料は、可視光に対して透過性を有するものである。これにより、可視光に対して透過性を有する材料で形成したスタンプで修正薬液を押し広げる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、スタンプで基板面を押圧して修正薬液を押し広げるようにしているので、スタンプによる1回の押圧で修正薬液を広範囲に行渡らせることができ、塗膜の広範囲に亘る欠陥部の修正時間を短縮することができる。また、スタンプが基板面の凹凸に倣って弾性変形するものであるため、基板の表面の凹凸に寄らず、均一な膜厚で修正薬液を塗布することができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明によれば、スタンプが修正薬液に対して耐薬品性及び撥液性を有する材料で形成されているため、スタンプが修正薬液と反応して溶け出してしまったり、スタンプによる押圧を解除した際に修正薬液がスタンプの押圧面に付着して塗膜厚みが薄くなったりすることがない。
【0013】
さらに、請求項3に係る発明によれば、スタンプ材料がフッ素樹脂又はシリコーン樹脂であるため、スタンプを様々な修正薬液に対して耐薬品性及び撥液性を有するものとすることができる。
【0014】
そして、請求項4に係る発明によれば、スタンプ材料が可視光に対して透過性を有するものであるため、スタンプ押圧段階において、顕微鏡等によりスタンプ上方からスタンプを透して修正薬液の広がり状態を観察することができる。したがって、修正薬液が欠陥部の全体に行渡ったか否かを確認することができ、欠陥修正を確実に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による欠陥修正方法の実施形態を断面で示す工程図であり、図2は平面で示す工程図である。この欠陥修正方法は、基板面に形成された塗膜の欠陥部を修正するもので、薬液滴下段階と、スタンプ位置付け段階と、スタンプ押圧段階と、塗膜乾燥段階とから成る。なお、以下の説明においては、基板が配向膜を有するカラーフィルタ基板1の場合について述べる。
【0016】
上記薬液滴下段階は、先端部に数μmの開口を有するガラス製のニードル2を使用するマイクロディスペンサーにより、カラーフィルタ基板1上の配向膜3の欠陥部(例えば、下地のカラーフィルタ膜4と配向膜3の修正薬液5との親和性の影響により修正薬液5が塗れなかった部分)6に配向膜3を形成するための修正薬液5を適量だけ滴下する。この場合、予め撮影した画像に基づいて欠陥部6の面積を算出し、この面積と配向膜3の膜厚から修正薬液5の滴下量を算出し、略同量の修正薬液5を欠陥部6に滴下する。その際、欠陥部6が図1(a)及び図2(a)に示すようにカラーフィルタ基板1の複数のピクセル7に跨るときには、欠陥部6の略中心に修正薬液5を滴下する。
【0017】
次に、スタンプ位置付け段階においては、先ず、マイクロディスペンサーのニードル2をカラーフィルタ基板1の表面領域外の退避位置に退避させると共に、カラーフィルタ基板1の表面領域外の別の退避位置に退避していたスタンプ8を移動して、図1(b)及び図2(b)に示すように欠陥部6の上方に位置付ける。ここで使用するスタンプ8は、カラーフィルタ基板1面の凹凸に倣って弾性変形し、配向膜3の修正薬液5に対して溶出しない耐薬品性及び修正薬液5をはじく撥液性を有する材料で形成されており、例えば、フッ素樹脂又はシリコーン樹脂の材料から成るものである。この場合、スタンプ材料は、可視光に対して透過性を有するものであるとよい。
【0018】
スタンプ8が欠陥部6の上方に位置付けられると、スタンプ押圧段階に移る。このスタンプ押圧段階においては、スタンプ8を下降して所定の押圧力で修正薬液5を押しつぶすように基板面を押圧して、図1(c)及び図2(c)に示すように、修正薬液5を押し広げる。これにより、修正薬液5は、欠陥部6のピクセル7を含んでその周辺の複数のピクセル7にまで広がって行く。このとき、スタンプ8の基板面に接触する押圧部8aは、カラーフィルタ基板1面のピクセル7の凹凸に倣って弾性変形する。したがって、スタンプ8は、欠陥部6以外では、下地の配向膜3の表面に接触し、欠陥部6おいては、下地のカラーフィルタ膜4の表面と押圧部8aとの間に配向膜3の厚みと略等しい隙間を形成することになる。そして、この隙間には修正薬液5が残るため、欠陥部6に所定の厚みの配向膜3の修正薬液5を塗布することができる。なお、本実施形態においては、欠陥部6に滴下された修正薬液5をスタンプ8により圧着塗布するようにしているため、修正薬液5と下地膜のカラーフィルタ膜4との親和性の良否に寄らず、修正薬液5の均一な塗膜を得ることができる。ここで、スタンプ8は、カラーフィルタ基板1面を押圧した状態で前後左右に微動させてもよい。これにより、塗膜の厚みをより均一化することができる。
【0019】
欠陥部6に配向膜3の修正薬液5が塗布されると、塗膜乾燥段階に移る。この塗膜乾燥段階においては、スタンプ8をカラーフィルタ基板1の表面領域外に退避させた後、塗布された修正薬液5を乾燥させる。この場合、修正薬液5が熱硬化性の材料であるときには、所定の温度で所定時間加熱して修正薬液5を乾燥し、硬化させる。また、修正薬液5が紫外線硬化性の材料であるときには、所定量の紫外線を照射して修正薬液5を硬化させる。これにより、図1(d)及び図2(d)に示すように、欠陥部6に所定厚みの配向膜3が形成される。
【0020】
なお、図1及び図2において、符号9は、透明基板を示し、符号10は、ブラックマトリクスを示す。
【0021】
以上の説明においては、スタンプ8をカラーフィルタ基板1面から離した状態で修正薬液5を乾燥硬化させる場合について述べたが、本発明はこれに限られず、スタンプ8でカラーフィルタ基板1面を押圧させた状態で修正薬液5を乾燥硬化させてもよい。
【0022】
また、上記実施形態においては、複数の欠陥ピクセル7が隣接して存在する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、複数の欠陥ピクセル7が所定範囲内に離れて存在していてもよい。この場合、各欠陥ピクセル7に対して修正薬液5を滴下し、一つのスタンプ8で同時に押圧して複数の欠陥部6を一度に修正するとよい。
【0023】
さらに、上記実施形態においては、カラーフィルタ基板1の配向膜3の欠陥修正について説明したが、本発明はこれに限られず、カラーフィルタ基板1のカラーフィルタ膜4の欠陥修正、その他様々な塗膜の欠陥修正に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による欠陥修正方法の実施形態を断面で示す工程図である。
【図2】本発明による欠陥修正方法の実施形態を平面で示す工程図である。
【符号の説明】
【0025】
1…カラーフィルタ基板
3…配向膜(塗膜)
5…修正薬液
6…欠陥部
8…スタンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面に形成された塗膜の欠陥部を修正する欠陥修正方法であって、
前記欠陥部に修正薬液を適量だけ滴下する薬液滴下段階と、
前記基板面の凹凸に倣って弾性変形するスタンプで前記基板面を押圧して前記修正薬液を押し広げるスタンプ押圧段階と、
を行うことを特徴とする欠陥修正方法。
【請求項2】
前記スタンプは、前記修正薬液に対して耐薬品性及び撥液性を有する材料で形成されたことを特徴とする請求項1記載の欠陥修正方法。
【請求項3】
前記材料は、フッ素樹脂又はシリコーン樹脂であることを特徴とする請求項2記載の欠陥修正方法。
【請求項4】
前記材料は、可視光に対して透過性を有するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の欠陥修正方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−104865(P2010−104865A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276581(P2008−276581)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】