説明

次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法

【課題】従来よりも扱い易い次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法を提供しようとするもの。
【解決手段】この次亜ハロゲン酸の低減機構は、陰極側電解領域2と陽極側領域8とを有する有隔膜4の電気分解室を有すると共に、前記陰極側電解領域2に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液6を供給するようにした。この次亜ハロゲン酸の低減方法は、陰極側電解領域2と陽極側領域8とを有するように有隔膜4で電気分解すると共に、前記陰極側電解領域2に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液6を供給するようにした。陰極側電解領域で次亜ハロゲン酸が陰極還元されて分解され、分解により生成したハロゲンイオン(塩素イオン、臭素イオン等)は陽極に電気的に引かれ隔膜を介して陽極側領域へと移行し、陰極側電極領域に供給された被処理液中の次亜ハロゲン酸は低減されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この発明は、次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法に関するものである。
【技術分野】
【0002】
従来、排水のCOD値を低減するために次亜塩素酸ソーダを利用する方法の提案があった(例えば、特許文献1参照)。
前記方法で排水のCOD値を低減した後には次亜塩素酸が高濃度に残留することが多いが、このように残留した次亜塩素酸が高濃度の場合にはトリハロメタン(発ガン性が疑われている)の発生等の不具合を引き起こす可能性がある。よって、用水中に残留する次亜塩素酸を低減する必要があり、このため亜硫酸水素ナトリウムを添加する手段がある。
しかし、前記亜硫酸水素ナトリウムは添加量の調整が微妙であり、入れ過ぎると次亜塩素酸は消去できるものの過剰量によって排水のCOD値が増加してしまい、扱いが難しいという問題があった。
【特許文献1】特開2006―87991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこでこの発明は、従来よりも扱い易い次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の次亜ハロゲン酸(次亜塩素酸、次亜臭素酸等)の低減機構は、陰極側電解領域と陽極側領域とを有する有隔膜の電気分解室を有すると共に、前記陰極側電解領域に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液を供給するようにしたことを特徴とする。
【0005】
(2)この発明の次亜ハロゲン酸の低減方法は、陰極側電解領域と陽極側領域とを有するように有隔膜で電気分解すると共に、前記陰極側電解領域に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液を供給するようにしたことを特徴とする。
この次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法は前記のような構成を有し、陰極側電解領域で次亜ハロゲン酸が陰極還元されて分解され、分解により生成したハロゲンイオン(塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)等)は陽極に電気的に引かれ隔膜を介して陽極側領域へと移行し、陰極側電極領域に供給された被処理液中の次亜ハロゲン酸は低減されることとなる。これにより亜硫酸水素ナトリウムのように添加量の微妙な調整を行うことなく電気分解によって次亜ハロゲン酸を分解することができる。
ここで、陽極側領域には例えば水などを供給して循環することができる。前記陽極側領域の水中のハロゲンイオン濃度は増加していくこととなる。
【0006】
(3)前記陰極電解側の被処理液を循環処理するようにしてもよい。
このように構成すると、被処理液中の次亜ハロゲン酸の低減を経時的に進めていくことができ、低減効率により優れることとなる。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
亜硫酸水素ナトリウムのように添加量の微妙な調整を行うことなく電気分解によって次亜ハロゲン酸を分解することができるので、従来よりも扱い易い次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を説明する(図1参照)。
(実施形態1)
この実施形態の次亜ハロゲン酸(次亜塩素酸、次亜臭素酸等)の低減機構は、陰極側電解領域2と陽極側領域(陽極側電解領域)8とを有する有隔膜4の電気分解室を有すると共に、前記陰極側電解領域2に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液6を流入口5から供給するようにしている。電気分解室は陰極電極3と隔膜4と陽極電極14とを有する。前記隔膜4として四フッ化エチレン膜(孔径0.1μm)を用いた。
陽極側領域8には水道水13を供給し、ポンプ15により循環室11との間で循環させている。7は陽極側領域8からの流出口である。循環室11の水量は水位センサー9により検知し、設定量以下になると供給口10から補充されるようにしている。なお、12はドレン排水口である。
この実施形態では陰極側電解領域2の被処理液6は循環処理ではなくワンスルーでの通水処理としているが、循環処理するようにしてもよい(図示せず)。
【0009】
次に、この実施形態の次亜ハロゲン酸の低減方法の使用状態を説明する。
この次亜ハロゲン酸の低減方法は、陰極側電解領域2と陽極側領域8とを有するように有隔膜4で電気分解すると共に、前記陰極側電解領域2に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液6を供給する。
この次亜ハロゲン酸の低減機構及び低減方法では、陰極側電解領域2で次亜ハロゲン酸(H−O−Cl、H−O−Br等)が陰極還元されて分解され、分解により生成したハロゲンイオン(塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)等)は陽極電極14に電気的に引かれ隔膜4を介して陽極側領域8へと移行し、このような機構によって陰極側電極領域2に供給された被処理液6中の次亜ハロゲン酸は低減される。これにより亜硫酸水素ナトリウム(重亜硫酸ソーダ)のように添加量の微妙な調整を行うことなく電気分解によって次亜ハロゲン酸を分解することができ、従来よりも扱い易いという利点がある。
また、前記陰極電解側2の被処理液も循環処理するようにすると、被処理液中の次亜ハロゲン酸の低減を経時的に更に推し進めていくことができ、低減効率により優れることとなる。なお、陽極側領域8には水を供給して循環しており、前記陽極側領域8の水中のハロゲンイオン濃度は増加していくこととなる。
【0010】
(実施形態2)
次のようにして排水処理を行った。すなわち、次亜塩素酸の共存下で無隔膜で電気分解を行うことにより排水のCOD値を低減した。そして、前記排水のCOD値低減後の残留塩素を重亜硫酸ソーダで大雑把に低濃度(数十ppm)となるまで分解した。このような大雑把な低減は重亜硫酸ソーダでも可能である。こうして排水中の低濃度となった残留塩素を、上記実施形態1のようにして数ppmまで低減した。そして、数ppmの残留塩素を最後は活性炭によりさらに0ppm近くまで低減した。
【実施例1】
【0011】
1リットルの被処理液6(電気伝導度1,000μs/cm)と1リットルの水13(水道水)とにより、被処理液6中の次亜塩素酸の低減を行った。この実施例では被処理液6の方も循環処理を行った。電気分解の電流値は0.5A(電圧値は約7V)、循環流量は陽極側と陰極側共に55cc/分とした。
処理前の被処理液6の残留塩素濃度は3.25ppm(Clイオン濃度は210ppm)であった。これが35分経過後には、1.69ppm(Clイオン濃度は167ppm)に低減されていた。一方、処理開始前の水道水のClイオン濃度は19ppm、35分経過後には、59ppmに増加していた。
すなわち、陰極側電解領域2で次亜塩素酸が陰極還元されて分解され、分解により生成した塩素イオン(Cl)は陽極電極14に電気的に引かれ隔膜4を介して陽極側領域8へと移行し、陰極側電極領域2に供給された被処理液中の次亜ハロゲン酸は低減された。
【実施例2】
【0012】
1リットルの被処理液6(電気伝導度704μs/cm)と1リットルの水13(水道水)とにより、被処理液6中の次亜塩素酸の低減を行った。この実施例では被処理液6の方も循環処理を行った。電気分解の電流値は0.5A(電圧値は約9〜10V)、循環流量は陽極側と陰極側共に55cc/分とした。
処理前の被処理液6の残留塩素濃度は337ppm(Clイオン濃度は46ppm)であった。これが18分経過後には、222ppm(Clイオン濃度は22ppm)、36分経過後には190ppm(Clイオン濃度は16ppm)、54分経過後には125ppm(Clイオン濃度は10ppm)、72分経過後には66ppm(Clイオン濃度は8ppm)、90分経過後には68ppm(Clイオン濃度は6ppm)、108分経過後には61ppm(Clイオン濃度は5ppm)、126分経過後には45ppm(Clイオン濃度は4ppm)、144分経過後には32ppm(Clイオン濃度は3ppm)、162分経過後には20ppm(Clイオン濃度は1ppm)に低減されていた。
【0013】
一方、処理開始前の水道水のClイオン濃度は19ppm、18分経過後には56ppm、36分経過後には60ppm、54分経過後には78ppm、72分経過後には81ppm、90分経過後には88ppm、108分経過後には86ppm、126分経過後には86ppm、144分経過後には84ppm、162分経過後には109ppmに増加していた。
【0014】
すなわち、陰極側電解領域2で次亜塩素酸が陰極還元されて分解され、分解により生成した塩素イオン(Cl)は陽極電極14に電気的に引かれ隔膜4を介して陽極側領域8へと移行し、陰極側電極領域2に供給された被処理液中の次亜ハロゲン酸は低減された。
【産業上の利用可能性】
【0015】
亜硫酸水素ナトリウムのように添加量の微妙な調整を行うことなく電気分解によって次亜ハロゲン酸を分解することができ、従来よりも扱い易いことによって、種々の次亜ハロゲン酸の低減用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施形態を説明する図。
【符号の説明】
【0017】
2 陰極側電解領域
4 隔膜
8 陽極側領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極側電解領域2と陽極側領域8とを有する有隔膜4の電気分解室を有すると共に、前記陰極側電解領域2に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液6を供給するようにしたことを特徴とする次亜ハロゲン酸の低減機構。
【請求項2】
陰極側電解領域2と陽極側領域8とを有するように有隔膜4で電気分解すると共に、前記陰極側電解領域2に次亜ハロゲン酸を含有する被処理液6を供給するようにしたことを特徴とする次亜ハロゲン酸の低減方法。
【請求項3】
前記陰極電解側2の被処理液6を循環処理するようにした請求項2記載の次亜ハロゲン酸の低減方法。

【図1】
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