説明

止水材及び弾性継手の止水構造

【課題】長期にわたって止水性を確保する止水材を提供すること。
【解決手段】コンクリート地下構造物20の外周に配置された防水シート50の端部側とコンクリート地下構造物20との間に配置されて、防水シート50の端部側からの浸水を防ぐ止水材10が、防水シート50の端部側とコンクリート地下構造物20との間に配置され、防水シート50の端部延在方向に延びる粘着性を有する粘着弾性部材14と、防水シート50の端部側とコンクリート地下構造物20との間で且つ、粘着弾性部材14よりも少なくとも防水シート50の反端部側に配置され、防水シート50の端部延在方向に延び、粘着弾性部材14よりも高い硬度を有する硬弾性部材12と、を備えたことで、長期にわたって止水性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被防水体の外周に配置された防水部材と被防水体との間の止水性を確保するための止水材に関するものである。また、この止水材を用いて、コンクリート構造物を連結する弾性継手とその外周に配置される防水部材との間の止水性を確保する弾性継手の止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地下道路や地下水路等の空間を得るために、地中に筒状のコンクリート構造物を構築する技術が知られている。この種のコンクリート構造物の構築方法としては、地表面から所定の深さまで掘り下げた溝を形成し、この溝の所定位置にコンクリート構造物を築造した後で、コンクリート構造物の上部から土砂を埋め戻し、地表面を元通り復旧する開削工法が広く用いられている。
【0003】
また、地下に構築されるコンクリート構造物は、地下水等が内部に浸水するのを防止するために、コンクリート構造物の外壁、内壁及び壁面内の少なくとも一つに防水層を配置する防水工法が施されている。この防水工法の一つに、コンクリート構造物の外周を可撓性の防水シートで被覆する手法がある。この手法は防水性、作業性およびコスト面で他の手法よりも優れるため、コンクリート構造物の防水工法として推奨されている。
【0004】
前述したように、コンクリート構造物の外周を防水シートで被覆する防水工法の場合には、被覆する防水シート同士を粘着性及び反発弾性に優れるブチルゴムテープを介して接着し、防水シートとその他の部材(ここでは、コンクリート構造物)とを同様にブチルゴムテープを介して接着することで、コンクリート構造物の外周を防水シートで被覆している。このブチルゴムテープを用いて防水シート同士及び防水シートとその他の部材とを接着する接着方法が特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平7-189597号公報
【特許文献2】特開2000-17236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、筒状のコンクリート構造物の打継目に沿って、可撓性の継手を配設する施工方法が開発されている。この可撓性継手(弾性継手)は、地震等におけるコンクリート構造物の相対的な変位を吸収できる特徴を有している。一方、可撓性継手を用いた場合には、防水シートが可撓性継手の変位に追従できずに破損する虞があるため、防水シートの端部側を可撓性継手の端部側にブチルゴムテープを介して取付けている。
【0006】
しかしながら、開削工法によって前述したような可撓性継手を設けたコンクリート構造物を地下に構築した場合には、コンクリート構造物と溝壁との間に埋め戻された土砂が不陸な状態となりやすく、ブチルゴムテープは防水シートを介して不均一な面圧を受ける傾向がある。加えて、ブチルゴムは、可撓性継手と防水シートの端部との間に作用する水圧によって、コンクリート構造物側へと押し込まれる力を受ける。一般的にブチルゴムは適度な粘着性及び反発弾性を有しているため、不均一な面圧に追従しつつ、浸水を防ぐことができるが、長期的には前述した水圧によって形状が変化させられて、ブチルゴムテープと可撓性継手又は防水シートとの間に隙間が生じ、コンクリート構造物と防水シートとの間に浸水する問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上記事実を考慮して、長期にわたって止水性を確保する止水材を提供することを目的とする。また、この止水材を適用した弾性継手の止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の請求項1に係る止水材は、被防水体の外周に配置された防水部材の端部側と前記被防水体との間に配置されて、前記防水部材の端部側からの浸水を防ぐ止水材であって、前記防水部材の端部側と前記被防水体との間に配置され、前記防水部材の端部延在方向に延びる粘着性を有する粘着弾性部材と、前記防水部材の端部側と前記被防水体との間で且つ、前記粘着弾性部材よりも少なくとも前記防水部材の反端部側に配置され、前記防水部材の端部延在方向に延び、前記粘着弾性部材よりも高い硬度を有する硬弾性部材と、を備えることを特徴としている。
【0009】
次に請求項1に記載の止水材の作用について説明する。
本請求項の止水材では、防水部材の端部側と被防水体との間に粘着弾性部材と硬弾性部材とが配置されている。例えば、防水部材の端部側を介して粘着弾性部材及び硬弾性部材が外部から不均一な面圧を受けて防水部材及び被防水体に密着配置された状態で、防水部材の端部側から反端部側へ粘着弾性部材に水圧が作用した場合には、防水部材と被防水体とに密着配置された粘着性を有する粘着弾性部材が防水部材と被防水体との間への浸水を防止する。また、粘着弾性部材は、水圧によって防水部材の反端部側へ押し込まれる力を受けるが、防水部材と被防水体と硬弾性部材とによって拘束されているため、粘着弾性部材の形状が維持されて、長期にわたって防水部材と被防水体との間の止水性が確保される。
【0010】
本発明の請求項2に係る止水材は、請求項1に記載の止水材において、前記防水部材の端部側と前記被防水体との間で且つ、前記粘着弾性部材よりも前記防水部材の端部側に配置され、前記防水部材の端部延在方向に延び、前記防水部材の端部側からの前記粘着弾性部材への異物の侵入を防ぐ異物侵入防止部材を有することを特徴としている。
【0011】
次に請求項2に記載の止水材の作用について説明する。
本請求項の止水材では、粘着弾性部材よりも防水部材の端部側に、防水部材の端部側からの粘着弾性部材への異物の侵入を防ぐ異物侵入防止部材が配置されている。例えば、防水部材の端部側を介して異物侵入防止部材が外部から不均一な面圧を受けて防水部材及び被防水体に密着配置された状態であれば、防水部材の端部側から異物が粘着弾性部材へ侵入するのを防ぐことができる。
【0012】
本発明の請求項3に係る止水材は、請求項1又は請求項2に記載の止水材において、前記硬弾性部材は、前記粘着弾性部材と前記被防水体との間から少なくとも前記防水部材の反端部側に延びるベース部と、前記粘着弾性部材の前記防水部材の反端部側に配置され、前記ベース部から防水部材側に延びる突起部と、を有することを特徴としている。
【0013】
次に、請求項3に記載の止水材の作用について説明する。
本請求項の止水材では、硬弾性部材がベース部と突起部とを有している。例えば、粘着弾性部材とベース部とが密着配置された状態であれば、現場施工時などに被防水体へ硬弾性部材を配置する作業のみで粘着弾性部材も配置できるため、現場作業効率が向上する。
【0014】
本発明の請求項4に係る止水材は、請求項3に記載の止水材において、前記ベース部は、前記防水部材の端部側に延びて前記異物侵入防止部材と前記被防水体との間に配置されていることを特徴としている。
【0015】
次に、請求項4に記載の止水材の作用について説明する。
本請求項の止水材では、ベース部が粘着弾性部材と被防水体との間から異物侵入防止部材と被防水体との間まで延長されている。例えば、粘着弾性部材及びベース部と、異物侵入防止部材及びベース部とが密着配置された状態であれば、現場施工時などに被防水体へ硬弾性部材を配置する作業のみで粘着弾性部材及び異物侵入防止部材も配置できるため現場作業効率がさらに向上する。
【0016】
本発明の請求項5に係る止水材は、請求項3又は請求項4に記載の止水材において、前記突起部は、前記粘着弾性部材の長手方向と直交する方向の断面を見て、防水部材側に向かって細くなっていることを特徴としている。
【0017】
次に、請求項5に記載の止水材の作用について説明する。
本請求では、粘着弾性部材の長手方向と直交する方向の断面において、突起部が防水部材側に向かって細くなっている。例えば、防水部材の端部側を介して突起部が外部から不均一な面圧を受けて防水部材に密着配置された場合に、前述した突起部の形状から、防水部材と突起部の防水部材側の端部との接地圧が高くなる(即ち、突起部が防水部材に食い込む)ため、防水部材と被防水体と硬弾性部材とによって粘着弾性部材を拘束する力が向上する。
【0018】
本発明の請求項6に係る止水材は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の止水材において、少なくとも前記硬弾性部材の被防水体側に前記被防水体に接着可能な接着部材が配置されていることを特徴としている。
【0019】
次に、請求項6に記載の止水材の作用について説明する。
本請求項では、硬弾性部材の被防水体側に被防水体に接着可能な接着部材を配置している。従って、硬弾性部材を被防水体に取付ける作業が容易になる。
【0020】
本発明の請求項7に係る弾性継手の止水構造は、対向するコンクリート構造物の打継目に沿って配置され、前記コンクリート構造物の相対的な変位を吸収すると共に、前記コンクリート構造物を連結する弾性継手と、前記コンクリート構造物の外周及び前記弾性継手の端部側の外周に被覆され、外部からの浸水を防ぐ防水部材と、前記防水部材の端部側と前記弾性継手との間に密着して配置される請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の止水材と、を備えることを特徴としている。
【0021】
次に、請求項7に記載の弾性継手の止水構造の作用について説明する。
本請求項では、コンクリート構造物の打継目に沿って弾性継手を配置し、コンクリート構造物の外周及び弾性継手の端部側の外周に防水部材を被覆し、この弾性継手とコンクリート構造物との間に前述した止水材を配置している。
従って、例えば、防水部材の端部側を介して粘着弾性部材及び硬弾性部材が外部から不均一な面圧を受けた状態で、防水部材の端部側から反端部側へ粘着弾性部材に水圧が作用した場合に、粘着弾性部材が防水部材とコンクリート構造物との間への浸水を防止する。また、このとき、粘着弾性部材は、水圧によって防水部材の反端部側へ押し込まれる力を受けるが、防水部材と弾性継手と硬弾性部材とによって拘束されるため、粘着弾性部材の形状が維持されて、長期にわたって弾性継手と防水部材との間の止水性が確保される。
【0022】
本発明の請求項8に係る弾性継手の止水構造は、請求項7に記載の弾性継手の止水構造において、前記弾性継手は、前記止水材の配置位置に前記止水材を嵌入可能な凹部を備えることを特徴としている。
【0023】
次に、請求項8に記載の弾性継手の止水構造の作用について説明する。
本請求項では、弾性継手の止水材の配置位置にあらかじめ止水材を嵌入可能な凹部を形成している。従って、弾性継手に止水材を配置する作業が容易になると共に、止水材の配置位置に確実に配置することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の止水材は、長期にわたって止水性が確保される。また、本発明の弾性継手の止水構造は、長期にわたって弾性継手と防水部材との間の止水性が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1の実施形態]
(構成)次に、本発明の止水材を適用して弾性継手と防水部材との止水性を確保する弾性継手の止水構造の第1実施形態について図1乃至図4にしたがって説明する。
【0026】
(コンクリート地下構造物)
図1に示されるように、地表面66から所定の深さに筒状のコンクリート地下構造物20が構築されている。これらのコンクリート地下構造物としては、所謂ボックスカルバートや暗渠等があり、主に、車道、鉄道、水路、通路及びケーブル等の配線路等に用いられている。このコンクリート地下構造物20は長手方向(矢印L方向)と直交する方向(幅方向:矢印W方向)の断面で見て、外形及び内形が略四角形状とされている。なお、断面の外形及び内形は、角部が面取りされていても良く、外形及び内形が前述した形状以外(例えば、円形、楕円形及び多角形等)であっても良いものとする。
【0027】
このコンクリート地下構造物20は、あらかじめ成型しておいた所定の長さの筒状のコンクリート構造物20Aを現場で順次連結して築造される構成であっても良く、現場にて型枠内にコンクリートを打設して所定長さのコンクリート構造物20Aを成型し、これらを順次連結して築造される構成であっても良いものとする。通常、これらの施工方法はコンクリート地下構造物20の大きさによって使い分けられている。なお、本実施形態のコンクリート構造物20Aは、現場でコンクリートを打設して成型されたものとしている。
【0028】
(弾性継手)
図2に示されるように、対向するコンクリート構造物20Aの打継目20Bに沿って帯状の弾性継手30が配設されている。なお、図2は、コンクリート地下構造物20を鉛直方向(矢印V方向)から見た断面図である。この弾性継手30はコンクリート構造物20Aの外表面に配置され、内側が中空部32Aとなる逆台形のバルブ32と、このバルブ32の底辺32Bから矢印Lの両方向に向かって延びる翼部34と、両側の翼部34から反防水部材側に延びる突起部36と、この突起部36の先端側に設けられる断面台形の膨出部38とを有している。
【0029】
なお、バルブ32の底辺32B及び翼部34は、コンクリート構造物20Aの外表面に対して一直線状となるように配置されている。また、バルブ32の上辺は、少なくとも打継目20B上に配置されている。さらにまた、突起部36及び膨出部38が、コンクリート構造物20Aに埋設されている。このため、コンクリート構造物20A同士が弾性継手30を介して連結される。ここで、コンクリート構造物20Aの打継目20Bが目開き(矢印L方向に開くこと)した場合に、弾性継手30は矢印L方向に伸びてコンクリート構造物20Aの相対変位を吸収し、コンクリート構造物20Aの打継目20Bが相対的に矢印W方向にずれた場合に、弾性継手30は矢印W方向に伸びてコンクリート構造物20Aの相対変位を吸収する。このとき、突起部36及び膨出部38がコンクリート構造物20Aからの抜け止め防止となる。
【0030】
また、弾性継手30とコンクリート構造物20Aとの界面から浸水が生じないように、翼部34とコンクリート構造物20Aとの界面にコンクリート構造物20Aとの接着性に優れる非加硫ブチルゴム40を取付けることが好ましい。なお、この非加硫ブチルゴム40は、突起部36とコンクリート構造物20Aとの界面や、膨出部38とコンクリート構造物20Aとの界面に取付けることでさらに弾性継手30とコンクリート構造物20Aとの界面における止水性が向上する。
なお、本実施形態の弾性継手30は、クロロプレンゴムによって形成する構成とするが、この構成に限定される必要は無いものとする。
【0031】
(防水シート)
図2に示されるように、コンクリート地下構造物20の外周には防水性に優れる防水シート50が被覆されている。この防水シート50は、一方の弾性継手30の翼部34の端部側から他方の弾性継手30の翼部34の端部側までの長さを有し、この防水シート50の端部側が、止水材10を介して弾性継手30の翼部34の端部側に固着されている。
また、この防水シート50の材質としては、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)及びウレタン等を用いることが好ましい。なお、本実施形態の防水シート50はEVAから形成されている。
【0032】
(止水材)
図3に示されるように、防水シート50の端部側と弾性継手30の端部側との間には、帯状の止水材10が配置されている。この止水材10は、防水シート50の端部50Aの延在方向に延びる硬弾性部材12と、硬弾性部材12の防水シート側の表面に配置されて、端部50Aの端部方向に沿って延びる粘着弾性部材14及び異物侵入防止部材16と、から構成されている。
【0033】
この硬弾性部材12は、ベース部12Aと突起部12Bとから構成され、粘着弾性部材14及び異物侵入防止部材16は、このベース部12Aの表面に配置されている。突起部12Bは、ベース部12Aから防水シート側に延び、硬弾性部材12の長手方向と直交する方向の断面で見て、ベース部12Aから防水シート側で幅が細くなっている。なお、本実施形態の突起部12Bは、断面三角形状であるが、この構成に限定される必要はなく、断面が半円形状、断面が多角形状であっても良いものとする。また、本実施形態では、この突起部12Bが所定の間隔を開けて2箇所に設けられている。さらに、硬弾性部材12の硬度は粘着弾性部材14の硬度よりも高く設定されている。さらにまた、この硬弾性部材12の材質としては、CR、SBR、NBR、NR、EPDM、合成ゴム、またはそれらを混合した硬さが40〜65、伸びが500%以上、引張り強さが2.5Mpa以上の加硫ゴムを用いることが好ましい。また、前述した硬弾性部材12の材質以外にも、ゴム弾性を有する熱可塑性樹脂を成分とする硬さが40〜65、伸びが500%以上、引張り強さが1.5Mpa以上の成型品を用いても良いものとする。なお、本実施形態の硬弾性部材12はSBRから形成されている。
【0034】
粘着弾性部材14は、突起部12Bよりも防水シート50の端部側のベース部12Aに密着配置されている。本実施形態のように突起部12Bが複数設けられる場合は、各突起部12Bに対応して粘着弾性部材14も設けられ、その配置は、常に防水シート50の端部側となる。また、粘着弾性部材14の材質としては、変成ブチルゴム、未加硫ブチルゴム、及びアスファルト、粘着剤を含有させた加硫、若しくは非加硫合成ゴムで、針入度が25〜65、伸びが800%以上の成型品を用いることが好ましい。なお、本実施形態の粘着弾性部材14は変成ブチルゴムから形成されている。
【0035】
異物侵入防止部材16は、止水材10の最も防水シート50の端部側のベース部12Aに密着配置されている。異物侵入防止部材16は、粘着弾性部材14に土砂等が入り込むのを防止するため、材質としては、ポリエチレン、ポリスチレン、PV、EVA等の樹脂、及びEPDM,CR、SBR、NR等のゴムを原材料とした10〜25倍発泡体で、独立気泡構造の成型品を用いることが好ましい。なお、本実施形態の異物侵入防止部材16は10倍発泡されたポリエチレンから形成されている。
【0036】
さらにまた、ベース部12Aと弾性継手30との間に接着部材52が配置され、ベース部12Aと弾性継手30とを固着している。この接着部材52の材質としては、ブチルゴム等を用いることが好ましい。
【0037】
また、ベース部12Aから防水シート側に延びる距離が、硬弾性部材12と異物侵入防止部材16とで同じに設定され、粘着弾性部材14は、これらの部材よりも該距離が短く設定されている。
そして、防水シート50の端部側は、突起部12B、粘着弾性部材14及び異物侵入防止部材16に押し付けられている。また、防水シート50と異物侵入防止部材16との間には接着部材54が配置され、防水シート50と異物侵入防止部材16とを固着している。この接着部材54の材質としては、ブチルゴム等を用いることが好ましい。
また、弾性継手30の翼部34の端部側には、凹部34Aが形成されている。この凹部34Aは、止水材10が嵌入可能な大きさを有している。
【0038】
次に、このコンクリート地下構造物20の構築手順について簡単に説明する。
まず、図4に示されるように、コンクリート地下構造物20を構築する所定の深さまで地表面を掘り下げて溝60を形成する。このとき、溝壁が崩落しないように溝壁の内側にコンクリート製の山留壁62を形成することが好ましい。次に、この溝60の所定位置に型枠を配置し、型枠内にコンクリートを打設して所定長さのコンクリート構造物20Aを成型する。このとき、コンクリート構造物20Aの端部側に弾性継手30の一部を埋設しておくことでコンクリート乾燥後にコンクリート構造物20Aと弾性継手30とが一体的に形成される。そして、コンクリート構造物20Aと対向するように新たなコンクリート構造物20Aを成型する。このとき、弾性継手30の残りの部分を新たなコンクリート構造物20Aの端部側に埋設しておくことで、コンクリート乾燥後に、コンクリート構造物20A同士が連結される。コンクリート構造物20Aの連結は、上述した手順で順次施工される。また、弾性継手30は帯状に形成されているため、現場にて加硫を行って弾性継手30を繋いでいる。なお、弾性継手30は複数に分割されたものを現場で加硫して繋ぎ合わせても良いものとする。
【0039】
また、コンクリート構造物20Aが成型された後で、このコンクリート構造物20Aの外周に防水シート50を被覆する。このときコンクリート構造物20Aの端部側と弾性継手30との間に、弾性継手30の端部側に設けられた凹部34Aを目安として、止水材10を凹部34Aに嵌入させて取付ける。コンクリート地下構造物20を築造した後で、コンクリート地下構造物20の上部から土砂64を埋め戻して地表面を元通り復旧する。このようにして、地下にコンクリート地下構造物が構築される。
【0040】
(作用)次に第1の実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態のコンクリート地下構造物20は前述した手順で構築されているため、防水シート50の端部側を介して硬弾性部材12、粘着弾性部材14及び異物侵入防止部材16が、不陸な状態の埋め戻し土砂64から不均一な面圧を受ける。また、防水シート50の端部側から反端部側へ粘着弾性部材14に水圧が作用して粘着弾性部材14が水圧によって防水シート50の反端部側へ押し込まれる力を受けるが、粘着弾性部材14が防水シート50と弾性継手30と硬弾性部材12とによって拘束されるため、粘着弾性部材14の形状が維持されて防水シート50と弾性継手30との密着配置が維持される。このため、防水シート50の端部側からの浸水が止水される。従って、長期にわたって防水部材と被防水体との間の止水性が確保される。
【0041】
また、異物侵入防止部材16が防水シート50及び弾性継手30に密着配置されているため、防水シート50の端部側から異物が粘着弾性部材14へ侵入するのを防ぐことができる。これにより、土砂等が粘着弾性部材14内に混入することによる粘着弾性部材14の粘着力の低下を抑制できる。
【0042】
さらに、粘着弾性部材14及びベース部12Aと、異物侵入防止部材16及びベース部12Aとが密着配置された状態であれば、現場施工時などに弾性継手30へ硬弾性部材12を配置する作業のみで粘着弾性部材14及び異物侵入防止部材16も配置できるため現場作業効率が向上する。
【0043】
さらにまた、粘着弾性部材14の長手方向と直交する方向の断面において、突起部12Bが防水部材側に向かって細くなっているため、防水シート50と突起部12Bの先端部との接地圧が高くなるため、防水シート50と弾性継手と硬弾性部材12とによって粘着弾性部材14を拘束する力が向上する。
また、硬弾性部材12の弾性継手側に弾性継手30に接着可能な接着部材52を配置している。従って、硬弾性部材12を弾性継手30に取付ける作業が容易になる。
さらに、弾性継手30の止水材10の配置位置にあらかじめ止水材10を嵌入可能な凹部34Aを形成したことで、弾性継手30に止水材10を配置する作業が容易になると共に、止水材10の配置位置に確実に配置することができる。
【0044】
[その他の実施形態]
第1の実施形態では、粘着弾性部材14及び突起部12Bを夫々2箇所に配置したが、1箇所に配置するだけでも、本発明の効果を得ることができ、2箇所以上配置すれば、さらに止水性が向上するため、第1の実施形態の構成に限定されずに、粘着弾性部材14及び突起部12Bを1乃至複数箇所に配置しても良いものとする。
また、第1の実施形態では、防水シート50は、コンクリート構造物20A及び弾性継手30の外周に被覆する構成としたが、この構成に限定される必要は無く、コンクリート構造物20A又は弾性継手30の外周の一部分のみに防水シート50が配置される構成であっても良く、この場合でも防水シート50の端部の延在方向に沿って止水材10を設けることで、防水シート50とコンクリート構造物20A又は弾性継手30との間に浸水が生じるのを止水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態のコンクリート地下構造物を模式的に表した斜視図である。
【図2】第1の実施形態のコンクリート地下構造物の打継目近傍を鉛直方向から見た部分断面図である。
【図3】図2の止水材近傍を拡大した部分拡大断面図である。
【図4】コンクリート地下構造物を埋め戻す前の状態を表す部分断面斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10 止水材
12 硬弾性部材
12A ベース部
12B 突起部
14 粘着弾性部材
16 異物侵入防止部材
20A コンクリート構造物
20B 打継目
30 弾性継手
34A 凹部
50 防水シート(防水部材)
52 接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被防水体の外周に配置された防水部材の端部側と前記被防水体との間に配置されて、前記防水部材の端部側からの浸水を防ぐ止水材であって、
前記防水部材の端部側と前記被防水体との間に配置され、前記防水部材の端部延在方向に延びる粘着性を有する粘着弾性部材と、
前記防水部材の端部側と前記被防水体との間で且つ、前記粘着弾性部材よりも少なくとも前記防水部材の反端部側に配置され、前記防水部材の端部延在方向に延び、前記粘着弾性部材よりも高い硬度を有する硬弾性部材と、
を備えることを特徴とする止水材。
【請求項2】
前記防水部材の端部側と前記被防水体との間で且つ、前記粘着弾性部材よりも前記防水部材の端部側に配置され、前記防水部材の端部延在方向に延び、前記防水部材の端部側からの前記粘着弾性部材への異物の侵入を防ぐ異物侵入防止部材を有することを特徴とする請求項1に記載の止水材。
【請求項3】
前記硬弾性部材は、前記粘着弾性部材と前記被防水体との間から少なくとも前記防水部材の反端部側に延びるベース部と、
前記粘着弾性部材の前記防水部材の反端部側に配置され、前記ベース部から防水部材側に延びる突起部と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水材。
【請求項4】
前記ベース部は、前記防水部材の端部側に延びて前記異物侵入防止部材と前記被防水体との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の止水材。
【請求項5】
前記突起部は、前記粘着弾性部材の長手方向と直交する方向の断面を見て、防水部材側に向かって細くなっていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の止水材。
【請求項6】
少なくとも前記硬弾性部材の被防水体側に前記被防水体に接着可能な接着部材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の止水材。
【請求項7】
対向するコンクリート構造物の打継目に沿って配置され、前記コンクリート構造物の相対的な変位を吸収すると共に、前記コンクリート構造物を連結する弾性継手と、
前記コンクリート構造物の外周及び前記弾性継手の端部側の外周に被覆され、外部からの浸水を防ぐ防水部材と、
前記防水部材の端部側と前記弾性継手との間に密着して配置される請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の止水材と、
を備えることを特徴とする弾性継手の止水構造。
【請求項8】
前記弾性継手は、前記止水材の配置位置に前記止水材を嵌入可能な凹部を備えることを特徴とする請求項7に記載の弾性継手の止水構造。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−45333(P2008−45333A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221843(P2006−221843)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】