説明

止水構造および建具

【課題】中空部を有する枠材における小口位置での止水性能を確保することができる止水構造および建具を提供すること。
【解決手段】小口キャップ11の摺接部26および摺接部材14をピストンとして機能させて、シール材13をバックアップ材12に向かって圧縮状態で押し込むことで、中空部42の小口42Aからシール材13が溢れ出すのを防止することができるとともに、中空部42の内部をシール材13によって密閉することができ、止水構造10の止水性能を高めることができる。また、シール材13が溢れ出すのを防止することで、溢れ出したシール材13を拭き取る手間が省略できるとともに、外部シールSと窓枠5との間の密着性を高めて建具全体としての止水性能を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水構造および建具に関し、詳しくは、中空部を有する枠材の端部に設けられて当該中空部の小口からの水等の浸入を防止する止水構造、この止水構造を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓枠における枠材の接合部の止水構造(水密構造)として、中空部(ホロー部)を有する縦枠の上下端部に開口する小口を塞ぐ小口キャップ(縦枠キャップ)と、この小口キャップよりも中空部内部側に設けられるバックアップ材(バッカー)と、これらの間に充填される湿式のシール材(コーキング材)とを備えた構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2595501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載された従来の止水構造では、バックアップ材を枠材の中空部に押し込むとともにその弾性によって位置を保持させ、このバックアップ材の上から枠材の小口近傍までシール材を充填してから、その固化前にシール材を押圧しながら小口キャップを取り付けることから、小口キャップに押圧されたシール材が小口から溢れ出してしまう可能性がある。このため、溢れ出したシール材が枠材の外面に皮膜を形成し、この皮膜が建物開口部と枠材とをシールする外部シールの付着力を低下させ、建具の止水性能を損ねてしまうおそれがある。また、バックアップ材を中空部に押し込む際の押し込み距離(保持位置)が不定であるため、例えば保持位置が浅過ぎた場合には、シール材の厚さ寸法が不足したり、バックアップ材に小口キャップが当接して水道(みずみち)ができたりなど、いずれにしても止水性能を低下させる要因となってしまう。
【0005】
本発明の目的は、中空部を有する枠材における小口位置での止水性能を確保することができる止水構造および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の止水構造は、中空部を有する枠材の端部に設けられる止水構造であって、前記中空部の小口を塞ぐ小口キャップと、この小口キャップよりも前記中空部の内部側に設けられるバックアップ材と、これらの小口キャップとバックアップ材との間に充填されるシール材と、を備え、前記小口キャップにおける前記中空部の内部側には弾性材料からなる摺接部材が取り付けられ、前記摺接部材は前記中空部の内面に対して押圧した状態で設けられ、前記摺接部材が前記充填されたシール材に接して前記小口キャップが前記枠材に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、小口キャップに取り付けた弾性材料からなる摺接部材を中空部(ホロー部)の内面に摺接させることで、この摺接部材がピストンとして機能し、小口キャップを取り付ける際に摺接部材によってシール材を中空部の内部側へ押し込むことができ、枠材の小口からシール材が溢れ出すのを防止することができる。従って、溢れ出したシール材による建物開口部と枠材との間の止水性低下を招くおそれがなく、止水性能を確保することができる。
【0008】
この際、本発明の止水構造では、前記摺接部材は、前記小口キャップと前記枠材の中空部との間に配置されて前記小口キャップと中空部との隙間を塞ぐ突起部を備えることが好ましい。
このような構成によれば、前記小口キャップと中空部(ホロー部)との隙間を、摺接部材の突起部で塞ぐことができ、小口キャップおよび中空部の隙間から水が浸入することを防止できる。
特に、小口キャップおよび枠材がアルミ形材などの金属製の場合、枠材の端部開口(小口)に小口キャップを嵌め込むと、小口キャップおよび枠材の中空部が直接接触するメタルタッチ部となる。このメタルタッチ部には微少な隙間が形成されやすく、小口キャップ上に建物開口部と枠材とをシールする外部シール(躯体シール)を設けた際に、前記メタルタッチ部の隙間が水道となり、外部シールの室外側から室内側に水が浸入する虞がある。
これに対し、本発明によれば、前記小口キャップおよび中空部間の隙間を、弾性材料からなる摺接部材の突起部で塞いでいるので、前記水道の発生を防止でき、外部シールの室外側から室内側に水が浸入することを防止できる。
【0009】
さらに、本発明の止水構造では、前記枠材の中空部は、互いに対向する2つの見込み面と、互いに対向する2つの見付け面とを備え、前記小口キャップには、見付け方向に離れて配置された2つの前記摺接部材が取り付けられ、各摺接部材の突起部は、前記小口キャップと、前記中空部の見込み面との隙間を塞いでいることが好ましい。
このような構成によれば、枠材の中空部(ホロー部)は、断面形状が矩形状とされ、2つの見込み面および見付け面を備えて構成される。そして、小口キャップには2つの摺接部材が取り付けられ、各摺接部材の突起部によって小口キャップと中空部の各見込み面との隙間が塞がれている。枠材の中空部の幅寸法(見付け寸法)が異なる各種の窓枠などにおいて、小口キャップの幅寸法は中空部の幅寸法に合わせる必要がある。一方、摺接部材を2部材で構成すれば、摺接部材は小口キャップの幅方向(見付け方向)に離して配置できるため、中空部の幅寸法の相違に関係なく、同一の部品を使用することができる。このため、小口キャップの幅寸法に合わせて、幅寸法の異なる摺接部材を製造する必要が無く、摺接部材の種類を少なくできて製造効率を向上できる。
【0010】
この際、本発明の止水構造では、前記バックアップ材は前記中空部の内面に対して摺接可能な状態で圧入されていることが好ましい。
このような構成によれば、バックアップ材が固着具等によって中空部の内部に固定されていないので、摺接部材によってシール材を中空部の内部側へ強く押し込むことにより、このシール材の圧力でバックアップ材も押し込むことができる。従って、例えばバックアップ材の保持位置が浅過ぎた場合やシール材を多く充填しすぎた場合であっても、シール材を介してバックアップ材を中空部の内部側へ押し込んで移動させることで、小口キャップとバックアップ材との距離を適宜に確保することができる。これにより、シール材の厚さ寸法を確保するとともに、小口キャップとバックアップ材とを直接当接させず、それらの間にシール材を介在させることによって水道(みずみち)の形成が防止でき、止水性能の低下を防ぐことができる。
【0011】
さらに、本発明の止水構造では、前記バックアップ材には、前記シール材を前記中空部の内部側へ逃がすための逃がし部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、前述のように、シール材を多く充填しすぎた場合でも、バックアップ材の逃がし部から中空部の内部側へシール材を逃がすことで、小口キャップとバックアップ材の間のシール材の量を調整することができ、余分なシール材が小口から溢れ出すことを確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明の止水構造では、前記バックアップ材は前記中空部の内部所定位置に固着具で固定され、このバックアップ材には、前記シール材を前記中空部の内部側へ逃がすための逃がし部が形成されていてもよい。
このような構成によれば、バックアップ材を中空部の内部所定位置に固定することで、このバックアップ材と小口キャップとの距離を設定値通りにすることができ、シール材の厚さ寸法を所定値として止水性能を確保することができる。また、バックアップ材を中空部の内部に固定した場合でも、バックアップ材にシール材を逃がす逃がし部が形成されているので、シール材を多く充填しすぎた場合でも、小口から余分なシール材が溢れ出すことを確実に防止することができる。
【0013】
一方、本発明の建具は、枠材と、この枠材の端部に設けられる前記いずれかの止水構造とを備えたことを特徴とする。
このような本発明の建具によれば、前述の止水構造と略同様の効果、すなわち止水構造によって枠材の中空部内への水等の浸入を防止するとともに、建て込み時に枠材の小口からシール材が溢れ出すことを防ぐことで、枠材と建物開口部との間の外部シールの付着力を確実に発揮させることができ、建具としての止水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の止水構造を示す縦断面図であり、(A),(B)は、それぞれ図1にIIA線およびIIB線で示す断面図である。
【図3】前記止水構造を示す横断面図であり、(A),(B)は、それぞれ図2にIIIA線およびIIIB線で示す断面図である。
【図4】前記止水構造を示す分解斜視図である。
【図5】前記止水構造の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態の止水構造を示す縦断面図である。
【図7】前記止水構造を示す横断面図である。
【図8】前記止水構造を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態の止水構造を示す分解斜視図である。
【図10】前記止水構造で用いられる小口キャップおよび摺接部材を示す図である。
【図11】前記止水構造を示す縦断面図である。
【図12】第3実施形態の変形例の止水構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1〜図3において、実施形態に係る建具としての引違い窓1は、上枠2、下枠3および左右の縦枠(枠材)4を四周枠組みした窓枠5と、この窓枠5の内部に開閉自在に支持される屋内外の障子6,7とを備えて構成されている。窓枠5は、建物躯体である外壁Wの開口部Oに図示しない固定金物やアンカーボルト等を介して固定されている。そして、窓枠5と開口部Oの見込み面Fとの間には、外部バックアップ材Bおよび外部シールSが介挿され、この外部シールSによって、外壁Wから引違い窓1の外周部を介して屋内側への雨水等の浸入が防止され、止水性が確保できるようになっている。なお、外部シールSは、湿式のシール材であって、窓枠5と見込み面Fと外部バックアップ材Bとで三方が囲まれた凹部に屋外側から充填され、窓枠5および見込み面Fに付着することによって、止水性を発揮するようになっている。
【0017】
縦枠4は、図2、図3にも示すように、アルミ形材製の一体成形部材であって、見込み面Fと対向して見込み方向に延びる見込み面部41と、この見込み面部41の屋外側の略半分の長さで見付け方向外側(見込み面F側)に設けられる中空部42とを有して形成されている。中空部42は、見込み面部41の見付け方向外側の側面で形成される第1見込み面43と、この第1見込み面43の見付け方向外側に対向する第2見込み面44と、見込み面部41の屋外側端部から見付け方向外側に連続して延びる第1見付け面45と、見込み面部41の中間部から見付け方向外側に突出する第2見付け面46との4つの面を備えて構成されている。このため、中空部42は、縦枠4において、断面形状が矩形の角筒状に形成されたホロー部とされている。また、縦枠4の上端部および下端部において、中空部42の小口42Aは、上下に開口して形成され、このような上下の小口42Aは、以下のような止水構造10によって閉塞されている。
【0018】
本実施形態の止水構造10としては、縦枠4の上下端部にそれぞれ同様の構造が設けられているが、以下では縦枠4の上端部に設けられる止水構造10について詳しく説明する。ここで、図4にも示すように、上枠2と縦枠4とは、上枠2の長手方向端縁2Aを縦枠4の見込み面部41の見付け方向内面に当接させた状態で、縦枠4を見付け方向外側から貫通するビス4Aを上枠2のビスホール2Bに螺合することで接合されている。また、ビス4Aは、中空部42の第2見込み面44に形成された挿通孔44Aに挿通され、第1見込み面43を貫通するようになっており、挿通孔44Aは、接着シール44Bが貼り付けられて塞がれるようになっている。
【0019】
止水構造10は、中空部42の小口42Aを塞ぐ小口キャップ11と、この小口キャップ11よりも中空部42の内部側(小口キャップ11の挿入方向奥側)に設けられるバックアップ材12と、これらの小口キャップ11とバックアップ材12との間に充填されるシール材13と、小口キャップ11における中空部42の内部側(シール材13側)に設けられる摺接部材14とを備えて構成されている。
【0020】
小口キャップ11は、アルミ形材製の短尺部材であって、取付状態にて小口42Aの端縁とフラットに設けられる閉塞面21と、この閉塞面21の屋内側端部から立ち上がる立上片22と、閉塞面21の屋外側端部から若干立ち上がって屋外側に延びる延出片23と、閉塞面21の屋内側および屋外側の端部からそれぞれ中空部42の内部側に延びる一対の係止片24とを有して形成されている。一対の係止片24の先端部には、互いに近づく方向に延びて摺接部材14を保持する一対の保持片25と、これらの保持片25とは反対向きに突出する一対の摺接部26とが形成され、これらの摺接部26が第1および第2の見付け面45,46にそれぞれ押圧状態で摺接することで、小口キャップ11が中空部42の小口42Aに係止されるようになっている。また、小口キャップ11における立上片22の基端部には、延出片23と同様に閉塞面21に対して段付き状に形成された段付き部27が形成され、これらの延出片23および段付き部27がそれぞれ第1および第2の見付け面45,46の上端縁に当接可能になっている。さらに、一対の摺接部26、延出片23および段付き部27は、それぞれ小口キャップ11の幅方向(縦枠4の見付け方向であり、図2(A)の奥行き方向)に連続し、当該小口キャップ11の幅全長に渡って形成され、第1および第2の見付け面45,46の見付け幅の略全長に当接可能に構成されている。
【0021】
一対の保持片25に保持される摺接部材14は、発泡樹脂製の弾性材料から形成され、小口キャップ11の閉塞面21に密接されて取り付けられている。この摺接部材14は、中空部42の第1および第2の見込み面43,44に押圧状態で摺接可能な見付け方向幅寸法を有し、すなわち小口42Aに取り付けられる前の状態において、第1および第2の見込み面43,44間の距離よりも若干大きな幅寸法を有して形成され、小口42Aに取り付けた状態において、第1および第2の見込み面43,44に密接可能に構成されている。
【0022】
バックアップ材12は、発泡樹脂製の弾性材料から形成され、中空部42に圧入される本体部121と、この本体部121よりも凹んで第1および第2の見込み面43,44から離隔して設けられる一対の凹部(逃がし部)122と、を有して形成されている。このバックアップ材12は、ビス等の固着具を用いずに中空部42に非固定状態で圧入され、すなわち本体部121が第1および第2の見込み面43,44と第1および第2の見付け面45,46とに対して押圧状態で摺接しつつ、小口42Aから中空部42の内部側に押し込まれ、その弾性によって中空部42との間に摩擦力が生じることによって、中空部42内に保持されるようになっている。
【0023】
シール材13は、コーキングガンG等によって供給される湿式の止水材であって、中空部42にバックアップ材12を圧入した後に、このバックアップ材12よりも中空部42の小口42A側に適宜な量だけ注入され、その後、小口キャップ11および摺接部材14で小口42Aが閉鎖されることで、バックアップ材12と小口キャップ11および摺接部材14との間に充填されるようになっている。そして、充填後にシール材13が固化して弾性体となることで、中空部42内部が密閉されて止水されるようになっている。このシール材13は、その固化前に小口キャップ11および摺接部材14を取り付けて当該シール材13が押圧されることで、図2に示すように、バックアップ材12の凹部122に入り込み、膨出部13Aが形成されることで中空部42の内部側に逃げることができ、すなわち凹部122によって逃がし部が構成されている。
【0024】
以上の止水構造10の施工手順としては、先ず、上枠2と縦枠4とをビス4Aで接合し、中空部42の挿通孔44Aを接着シール44Bで塞いだ状態において、バックアップ材12を小口42Aから中空部42に圧入し、ビス4Aの頭部よりも中空部42の内部側にバックアップ材12の上面が位置する程度まで押し込む。この際、バックアップ材12の一方の凹部122がビス4Aの頭部を通過することで、圧入途中でバックアップ材12がビス4Aに引っ掛からないようになっている。次に、バックアップ材12の上側にシール材13を注入し、小口42Aから溢れない程度で小口42Aよりも若干下がった位置までシール材13の上面が上がったら注入を終了する。この際、シール材13は、その粘性によってバックアップ材12の凹部122には入り込まない(または入りにくい)ようになっている。
【0025】
次に、摺接部材14を取り付けた小口キャップ11を小口42Aに取り付ける。この際、シール材13の上面と摺接部材14との間にある空気は、摺接部26と第1および第2の見付け面45,46との微細な隙間から中空部42の外へ抜けるものの、粘性を有したシール材13は、摺接部26および摺接部材14と中空部42の内面との隙間を通らず、摺接部26および摺接部材14がピストンとして機能することで、シール材13がバックアップ材12に向かって圧縮状態で押し込まれる。このように押し込まれたシール材13は、その一部が膨出部13Aとして凹部122に入り込むことで、シール材13の圧力が高くなり過ぎずに小口42A側にシール材13が溢れ出ないようになっている。以上のように各部材を取り付けることで、小口キャップ11および摺接部材14とバックアップ材12との間には、余計な空気が入り込むことなくシール材13が充填され、このシール材13によって中空部42の内部が密閉されるようになっている。また、小口キャップ11が取り付いた状態では、ビス4Aがバックアップ材12と摺接部材14との間に位置する(つまり、シール材13が充填される空間に面して位置する)ため、バックアップ材12や摺接部材14および小口キャップ11がビス4Aと干渉することがなく、干渉により生じる悪影響(例えば、ビス孔を介して上枠2側への浸水など)を防ぐことができる。
【0026】
以上の実施形態によれば、小口キャップ11の摺接部26および摺接部材14をピストンとして機能させて、シール材13をバックアップ材12に向かって圧縮状態で押し込むことで、中空部42の小口42Aからシール材13が溢れ出すのを防止することができるとともに、中空部42の内部をシール材13によって密閉することができ、止水構造10の止水性能を高めることができる。また、シール材13が溢れ出すのを防止することで、溢れ出したシール材13を拭き取る手間が省略できるとともに、外部シールSと窓枠5との間の密着性を高めて引違い窓1全体としての止水性能を確保することができる。
【0027】
なお、本実施形態における摺接部材14の形態は、前述のものに限らず、図5に示すように、中空部42の内部側に延びてバックアップ材12に当接可能な当接片141を有したものであってもよい。このような当接片141を摺接部材14に形成しておけば、中空部42に圧入したバックアップ材12の保持位置が所定の深さよりも浅かったとしても、小口キャップ11および摺接部材14を取り付ける際に、当接片141でバックアップ材12を中空部42の内部側にさらに押し込むことが可能となる。従って、バックアップ材12と小口キャップ11の摺接部26とが直接接触しないようにでき、摺接部26の部分が水道(みずみち)となって雨水等が浸入することが防止できる。また、バックアップ材12を中空部42の内部側へ押し込んで移動させることで、小口キャップ11および摺接部材14とバックアップ材12との距離を適宜に確保することができ、シール材13の厚さ寸法を確保して止水性能を確実に発揮させることができる。
【0028】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る止水構造10Aは、前記第1実施形態における止水構造10のバックアップ材12に代えて、バックアップ材15を用いる点が相違するものの、その他の構成は第1実施形態と略同様である。以下、相違点について図6〜図8に基づいて詳しく説明する。
バックアップ材15は、金属製や樹脂製の硬質部材であって、中空部42の第1見込み面43に沿う固定片部151と、この固定片部151から第2見込み面44側に延びる底面部152と、を有して全体L字形に形成されている。固定片部151には、ビス4Aの軸部を挿通可能でかつビス4Aの頭部に係止可能な係止孔153が形成され、底面部152には、押圧されたシール材13を中空部42の内部側に逃がすための逃がし部としての逃がし孔154が形成されている。
【0029】
このような止水構造10Aの施工手順としては、先ず、上枠2と縦枠4とをビス4Aで接合する際に、ビス4Aの頭部にバックアップ材15の係止孔153を引っ掛けてからビス4Aを締め付けることで、バックアップ材15が中空部42の第1見込み面43に固定される。その後は、前記第1実施形態の施工手順と略同様であり、中空部42の挿通孔44Aを接着シール44Bで塞いでから、中空部42内にシール材13を注入し、摺接部材14を取り付けた小口キャップ11を小口42Aに取り付ける。この際、小口キャップ11の摺接部26および摺接部材14がピストンとして機能し、これによって押圧されたシール材13の一部が膨出部13Aとして逃がし孔154から中空部42の内部側に逃げることで、シール材13の圧力が高くなり過ぎず、小口42A側に溢れ出ないようになっている。このような第2実施形態の止水構造10Aによっても、第1実施形態と略同様の作用効果を得ることができるようになっている。また、バックアップ材15の取り付け位置は、上枠2と縦枠4を連結するビス4Aに固着されることで常に一定位置とすることができる。
【0030】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る止水構造10Bは、前記第1実施形態における止水構造10の摺接部材14に代えて、摺接部材50を用いる点が相違するものの、その他の構成は第1実施形態と略同様である。以下、相違点について図9〜図11に基づいて詳しく説明する。
【0031】
摺接部材50は、PVC(ポリ塩化ビニル)などの合成樹脂製の弾性部材であり、押出成型によって製造されている。この摺接部材50は、図10に示すように、小口キャップ11の閉塞面21に接する平面51と、この平面51の端縁から突出する突起部52と、突起部52に連続する側面53と、この側面53から突出するヒレ部54と、ヒレ部54の基端部から連続し、保持片25に対向する保持面55と、保持面55から突出する突部56と、突部56から連続する傾斜面57と、傾斜面57および平面51をつなぐ先端面58とを備えている。
【0032】
この摺接部材50は、小口キャップ11の側面から取り付けられる。すなわち、閉塞面21と保持片25の間に開口された側面から摺接部材50の先端面58側を押し込んで取り付けられる。この際、先端面58の高さ寸法は、閉塞面21および保持片25間の開口高さ寸法よりも小さくされている。このため、摺接部材50を小口キャップ11の側面開口に挿入すると、傾斜面57が保持片25に当接して案内されるので、摺接部材50をスムーズに挿入することができる。
さらに、傾斜面57に連続する突部56が形成されており、平面51から突部56先端までの高さ寸法は前記小口キャップ11の側面開口の高さ寸法よりも大きくされている。このため、図10に示すように、摺接部材50を小口キャップ11に取り付けた際に、突部56は折り曲げられ、平面51は閉塞面21に密着する。
【0033】
突起部52は、閉塞面21の側面つまり中空部42の第1見込み面43、第2見込み面44に対向する側面の外側に配置される。このため、摺接部材50を取り付けた小口キャップ11を、縦枠4の小口42Aから中空部42の内部に挿入すると、図11に示すように、前記突起部52は、中空部42および小口キャップ11間、具体的には、第1見込み面43および第2見込み面44と小口キャップ11の閉塞面21の側面との間に配置され、これらの間の隙間を塞いでいる。
【0034】
また、ヒレ部54は、図10に示すように、突起部52よりも見付け方向外側に突出されている。このため、図11に示すように、小口キャップ11を中空部42の内部に挿入すると、前記ヒレ部54は見込み面43、44に当接する。従って、摺接部材50は、ヒレ部54が中空部42の内面に対して押圧した状態に設けられる。
この際、ヒレ部54は、突起部52側、つまり図10において斜め上方に傾斜されている。また、摺接部材50の側面53は、ヒレ部54の基端部に向かって斜めに傾斜する凹部53Aが形成されている。
このため、小口キャップ11を小口42Aから中空部42内に挿入した際に、ヒレ部54が小口42Aに当接して折り曲げられる。この際、凹部53Aが形成されているので、ヒレ部54はスムーズに折り曲げられ、中空部42の内面である各見込み面43、44に当接する。
【0035】
また、突起部52に連続する側面53が斜めに形成されているので、小口キャップ11をさらに中空部42内に押し込んだ際に、小口42Aに側面53が当接し、小口キャップ11はスムーズに中空部42内に押し込まれ、前記突起部52が中空部42の内面と小口キャップ11との間に挟まれる。このため、中空部42の内面である各見込み面43、44と、小口キャップ11とのメタルタッチ部の隙間が前記突起部52で塞がれる。
【0036】
本実施形態においても、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
さらに、突起部52が小口キャップ11と各見込み面43、44の隙間を塞ぐため、水道が発生すること防止でき、外部シールSの室外側から室内側への浸水を防止できる。すなわち、開口部Oと窓枠5との間に外部シールSを設けた際に、外部シールSは小口キャップ11上を見付け方向に連続して設けられる。このため、前記突起部52の上面は外部シールSに密着し、水道の発生を防止できる。このため、建具の防水性能を向上できる。
【0037】
さらに、摺接部材50のヒレ部54が縦枠4の中空部(ホロー部)42の内面に押圧した状態で設けられているので、摺接部材50と中空部42の内面との間に水道が発生することも防止できる。このため、建具の防水性能をより向上できる。
【0038】
また、摺接部材50を2部材で構成したので、小口キャップ11や中空部42の見付け方向の幅寸法が異なる各種の建具において、摺接部材50を兼用できる。例えば、図12に示すように、図11に示すものよりも幅寸法が大きな中空部42を有し、小口キャップ11の幅寸法も対応して大きく形成されている場合でも、摺接部材50は小口キャップ11の見付け方向に離して配置できるので、図9〜11に示す摺接部材50と同一のものが利用できる。
さらに、各摺接部材50は断面形状が同一であり、向きを変えて小口キャップ11に取り付けている。このため、1種類の摺接部材50を押出成型で製造し、小口キャップ11の見込み方向の長さに合わせて切断すればよいので、摺接部材50の製造効率を向上でき、製造コストも低減できる。
その上、摺接部材50を2部材で構成すれば、突起部52は各摺接部材50に1つ設ければよい。このため、突起部52が形成されていない先端面58側から小口キャップ11に取り付ければよいため、摺接部材50の取付作業も容易に行うことができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、引違い窓1を例示して説明したが、本発明の建具は、引違い窓1に限らず、嵌め殺し窓であってもよいし、片引き窓や上げ下げ窓等の適宜な各種開閉形式を有した窓であってもよい。また、本発明の止水構造は、窓枠を構成する枠材としての縦枠4端部に設けられるものに限らず、上枠端部や下枠端部に設けられていてもよい。また、止水構造は、縦枠4の上下両端部に設けられるものに限らず、枠材のいずれか一方の端部のみに設けられていてもよい。
さらに、本発明の止水構造は、窓枠を構成する枠材に設けられるものに限らず、障子を構成する枠材としての框材の端部に設けられてもよいし、建具以外の面格子やフェンス、門扉等を構成する枠材の端部に設けられてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、シール材13として、コーキングガン等で注入される湿式のものを用いたが、これに限らず、シール材としては、適宜な粘性や弾性を有したものであって、押圧力が作用した際に変形可能なものであればよく、その材質や施工形式は特に限定されるものではない。
また、前記実施形態では、バックアップ材12および摺接部材14として、発泡樹脂製の弾性材料からなるものを例示したが、これに限らず、バックアップ材や摺接部材がゴム等から形成されてもよいし、発泡性ではない樹脂製でもよい。さらに、樹脂やゴム以外であっても、適宜な弾性および摺接性を有した材料であれば、バックアップ材や摺接部材に適用可能である。また、バックアップ材と摺接部材とは、同一材料から形成されてもよいし、互いに異なる材料から形成されてもよい。同様に、摺接部材50の材料も前記第3実施形態のものに限定されない。
【0041】
さらに、第2実施形態において、摺接部材14の代わりに摺接部材50を用いてもよい。
また、摺接部材50の具体的な形状は、前記第3実施形態のものに限らない。例えば、ヒレ部54を2つ形成してもよいし、ヒレ部54を設けずに側面53を中空部42の内面に当接させてもよい。また、突部56や傾斜面57の有無や形状なども適宜設計すればよい。
【0042】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…引違い窓(建具)、4…縦枠(枠材)、10,10A,10B…止水構造、11…小口キャップ、12,15…バックアップ材、13…シール材、14,50…摺接部材、42…中空部、42A…小口、122…凹部(逃がし部)、154…逃がし孔(逃がし部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する枠材の端部に設けられる止水構造であって、
前記中空部の小口を塞ぐ小口キャップと、この小口キャップよりも前記中空部の内部側に設けられるバックアップ材と、これらの小口キャップとバックアップ材との間に充填されるシール材と、を備え、
前記小口キャップにおける前記中空部の内部側には弾性材料からなる摺接部材が取り付けられ、前記摺接部材は前記中空部の内面に対して押圧した状態で設けられ、前記摺接部材が前記充填されたシール材に接して前記小口キャップが前記枠材に取り付けられる止水構造。
【請求項2】
前記摺接部材は、前記小口キャップと前記枠材の中空部との間に配置されて前記小口キャップと中空部との隙間を塞ぐ突起部を備える請求項1に記載の止水構造。
【請求項3】
前記枠材の中空部は、互いに対向する2つの見込み面と、互いに対向する2つの見付け面とを備え、
前記小口キャップには、見付け方向に離れて配置された2つの前記摺接部材が取り付けられ、各摺接部材の突起部は、前記小口キャップと、前記中空部の見込み面との隙間を塞いでいる請求項2に記載の止水構造。
【請求項4】
前記バックアップ材は前記中空部の内面に対して摺接可能な状態で圧入されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の止水構造。
【請求項5】
前記バックアップ材には、前記シール材を前記中空部の内部側へ逃がすための逃がし部が形成されている請求項4に記載の止水構造。
【請求項6】
前記バックアップ材は前記中空部の内部所定位置に固着具で固定され、このバックアップ材には、前記シール材を前記中空部の内部側へ逃がすための逃がし部が形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の止水構造。
【請求項7】
枠材と、この枠材の端部に設けられる請求項1から請求項6のいずれかに記載の止水構造とを備えた建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−92642(P2012−92642A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202844(P2011−202844)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】