説明

正帯電トナー用トナーバインダー

【課題】 トナー劣化時のカブリが抑制される正帯電トナー用トナーバインダーを提供すること。
【解決手段】 ポリオール成分(x)とポリカルボン酸成分(y)から構成されるポリエステル樹脂(A)、および3級アミノ基を有するビニルモノマー(b1)を1〜40重量%構成単位として含有するビニル樹脂(B)を含有することを特徴とする正帯電トナー用トナーバインダー。(b1)としては、アルキル基の炭素数が1〜8のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用正帯電トナー用トナーバインダー、および正帯電トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーの流動性や帯電性を向上する目的で、外添剤(流動化剤)についての検討が多く行われている。例えば、感光体フィルミングを生じることなく、トナーの流動性および帯電性を適正に保ち、トナー濃度を所定の値にコントロールでき、画像濃度の低下を防止することを目的に、平均粒径100〜1000nmのポリテトラフルオロエチレンおよび平均粒径5〜300nmのシリカが外添され、前記シリカのうち、平均粒径20〜300nmのシリカがトナー母粒子100重量部に対して2.5重量部以上外添された二成分現像方式に用いられるトナーが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、感光体カブリが少なく、感光体の耐久性を高めることを目的に、トナー粒子の表面に1次粒子径0.05μm以上0.5μm未満であるポリテトラフルオロエチレン微粒子が添加されている、非磁性一成分現像方式に用いられる正帯電トナーが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−178869号公報
【特許文献2】特開平9−127727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリカを粒子内部に含有させたり、外添処理により正帯電性を付与したトナーは初期の帯電状態は良好であるものの、外添剤の脱離や埋没、内部のシリカ粒子の脱離といったトナーの劣化により元来負帯電性を有するポリエステルが表面に露出し、帯電不良が発生し、カブリが発生する。
【0006】
本発明の課題は、トナー劣化時のカブリが抑制される正帯電トナー用トナーバインダーおよび正帯電トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、ポリオール成分(x)とポリカルボン酸成分(y)から構成されるポリエステル樹脂(A)、および3級アミノ基を有するビニルモノマー(b1)を1〜40重量%構成単位として含有するビニル樹脂(B)を含有することを特徴とする正帯電トナー用トナーバインダー;並びに上記正帯電トナー用トナーバインダー、着色剤、荷電制御剤、並びに、必要により離型剤および流動化剤から選ばれる1種以上を含有する正帯電トナー;を用いることで、トナー劣化時のカブリが抑制されるトナーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダー、およびそれを含有する本発明の正帯電トナーは、トナー劣化時のカブリが抑制されるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳述する。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、例えば、1種類以上のポリオール成分(x)と、1種類以上のポリカルボン酸成分(y)を1工程または2工程以上で重縮合して得られる。ポリオール成分(x)としては、ジオール(x1)および/または3〜8価もしくはそれ以上のポリオール(x2)が挙げられる。ポリカルボン酸成分(y)としては、ジカルボン酸(y1)および/または3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(y2)が挙げられる。
【0010】
ジオール(x1)としては、炭素数2〜36の脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、およびドデカンジオール等のアルカンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4、以下のポリオキシアルキレン基も同じ)エーテル〔オキシアルキレン単位(以下AO単位と略記)の数1〜30、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、およびブチレンオキサイド等)付加により得られる〕;および2価フェノール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)、およびビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)〕のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
【0011】
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルカンジオール、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)およびこれらの併用である。さらに好ましいものは、ビスフェノール類(とくにビスフェノールA)のポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2および/または3、AO単位の数2〜8)、炭素数2〜12のアルカンジオール(とくにエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール)、およびこれらの併用である。
【0012】
3価〜8価もしくはそれ以上のポリオール(x2)としては、炭素数3〜36の3価〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えばショ糖およびメチルグルコシド);上記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等、平均重合度3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
【0013】
これらのうち好ましいものは、3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコールおよびノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)であり、とくに好ましいものはノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
【0014】
ジカルボン酸(y1)としては、炭素数2〜36のアルカンジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸、およびセバシン酸等);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、およびグルタコン酸等);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等);およびこれらのエステル形成性誘導体〔例えば、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)等、以下のエステル形成性誘導体も同様。〕;等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜20のアルカンジカルボン酸炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、並びにこれらのエステル形成性誘導体である。
【0015】
3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(y2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これらのうち好ましいものはトリメリット酸およびピロメリット酸、並びにこれらのエステル形成性誘導体である。
【0016】
また、ポリカルボン酸成分(y)としては、芳香族ポリカルボン酸および必要により脂肪族ポリカルボン酸からなり、芳香族ポリカルボン酸を60モル%以上含有するものが好ましい。芳香族ポリカルボン酸の含有量は、さらに好ましくは70〜100モル%、とくに好ましくは80〜100モル%である。芳香族ポリカルボン酸が60モル%以上含有されていることで、樹脂強度が上がり、低温定着性がさらに向上する。
【0017】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃、とくに好ましくは170〜235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに2〜40時間である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒(例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒、および特願2006−149605号に記載の触媒)、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
【0018】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダーに用いるポリエステル樹脂(A)は、低温定着性と耐ホットオフセット性を両立させる点から、非線形ポリエステル樹脂(A1)と必要により線形ポリエステル樹脂(A2)を含有するのが好ましい。
【0019】
本発明に用いる非線形ポリエステル樹脂(A1)は、通常前記のジカルボン酸(y1)およびジオール(x1)と共に、前記の3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(y2)および/または3価〜8価もしくはそれ以上のポリオール(x2)を反応させて得られる。ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。
【0020】
(A1)を得る場合の(y2)と(x2)の比率は、これらのモル数の和が、全ポリオール成分(x)とポリカルボン酸成分(y)のモル数の合計に対して、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは1〜25モル%、とくに好ましくは3〜20モル%である。
【0021】
(A1)のガラス転移点〔Tg〕は、好ましくは45℃〜75℃であり、さらに好ましくは50℃〜70℃である。Tgが75℃以下であると低温定着性が向上する。またTgが45℃以上であると耐ブロッキング性が良好である。
【0022】
また、上記および以下において、樹脂のガラス転移点〔Tg〕は、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0023】
(A1)のフロー軟化点〔Tm〕は、とくに制限されないが、好ましくは100℃〜180℃であり、さらに好ましくは120℃〜170℃である。Tmが、100℃以上であると耐ホットオフセット性が良好であり、また、180℃以下であると定着性が良好である。
【0024】
なお、上記および以下において、フロー軟化点〔Tm〕は、フローテスターを用いて、下記条件で等速昇温し、その流出量が1/2になる温度のことである。
装置 : 島津(株)製 フローテスター CFT−500D
荷重 : 20kg
ダイ : 1mmΦ−1mm
昇温速度 : 6℃/min.
【0025】
非線形ポリエステル樹脂(A1)のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の数平均分子量(以下Mnと記載)は、好ましくは2000〜10000であり、さらに好ましくは2100〜9000である。Mnが2000以上であると定着に必要な樹脂強度が発現し、10000以下であると低温定着性、および樹脂の粉砕性が良好である。
また、(A1)のTHF可溶分のピークトップ分子量(以下Mpと記載)は、樹脂強度と、低温定着性、および樹脂の粉砕性のバランスの観点から、好ましくは2000〜50000、さらに好ましくは2500〜30000である。
【0026】
なお、上記および以下において樹脂のTHF可溶分のMn、Mpは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(Mw 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
得られたクロマトグラム上最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。
【0027】
非線形ポリエステル樹脂(A1)中のTHF不溶解分は、低温定着性の点から、好ましくは1〜36重量%であり、さらに好ましくは2〜33重量%、特に好ましくは3〜28重量%、最も好ましくは3〜25重量%である。THF不溶解分が36重量%以下であると、画像の光沢度(グロス)が良好である。
本発明におけるTHF不溶解分は、以下の方法で求めたものである。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量と試料の重量比から、不溶解分を算出する。なお、このろ液をTHF可溶分としてGPC測定に使用する。
【0028】
非線形ポリエステル樹脂(A1)の酸価は、好ましくは10〜70(mgKOH/g、以下同じ)、さらに好ましくは13〜60、とくに好ましくは15〜50である。酸価が70以下であると帯電特性が良好である。
また、(A1)の水酸基価(mgKOH/g、以下同じ)は、好ましくは0〜50、さらに好ましくは0〜45、とくに好ましくは、0〜40である。水酸基価が50以下であると耐ホットオフセット性がより良好となる。
本発明における酸価および水酸基価は、JIS K0070に規定の方法で測定される。
【0029】
ポリエステル樹脂(A)は、非線形ポリエステル樹脂(A1)に加えて、線形ポリエステル樹脂(A2)を含有してもよい。(A2)を含有すると、低温定着性がより良好となる。
本発明に必要により用いる線形ポリエステル樹脂(A2)は、例えば、前記ジオール(x1)とジカルボン酸(y1)を重縮合させることにより得られるが、さらに、分子末端を前記ポリカルボン酸成分(y)(3価以上のものでもよい)の無水物等で変性してもよい。これらの中では、分子末端を(y)の無水物で変性したものが好ましい。ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは3/1〜1/3、さらに好ましくは2.5/1〜1/2.5、とくに好ましくは2/1〜1/2である。
【0030】
線形ポリエステル樹脂(A2)の酸価は80以下であるのが好ましい。酸価は、さらに好ましくは1〜50、とくに好ましくは2〜30である。酸価が80以下であると帯電特性が良好である。
【0031】
(A2)のガラス転移点〔Tg〕は、好ましくは40℃〜75℃であり、さらに好ましくは45℃〜70℃である。Tgが75℃以下であると低温定着性が向上する。またTgが40℃以上であると耐ブロッキング性が良好である。
【0032】
(A2)のフロー軟化点〔Tm〕は、とくに制限されないが、好ましくは70℃〜120℃であり、さらに好ましくは75℃〜100℃である。Tmが、70℃以上であると耐ホットオフセット性が良好であり、また、120℃以下であると定着性が良好である。
【0033】
また、(A2)の水酸基価は、好ましくは5〜125、さらに好ましくは25〜100である。水酸基価が5以上であると(A1)との相溶性が良好であり、定着後の光沢度(グロス)が良好である。また、水酸基価が125以下であると耐ホットオフセット性がより良好となる。
【0034】
線形ポリエステル樹脂(A2)のTHF可溶分のMnは、好ましくは1000〜4000であり、さらに好ましくは1200〜3000である。Mnが1000以上であると定着に必要な樹脂強度が発現し、4000以下であると低温定着性が良好である。
また、(A2)のTHF可溶分のMpは、樹脂強度と、低温定着性、および樹脂の粉砕性のバランスの観点から、好ましくは1600〜7000、さらに好ましくは1700〜5000である。
【0035】
線形ポリエステル樹脂(A2)中のTHF不溶解分は、低温定着性の点から、5重量%以下が好ましい。さらに好ましくは4重量%以下、とくに好ましくは3重量%以下である。
【0036】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダーにおける、非線形ポリエステル樹脂(A1)と線形ポリエステル樹脂(A2)の重量比は、(A1)と(A2)の合計を100としたとき、(20〜100)/(80〜0)が好ましく、(25〜99)/(75〜1)がさらに好ましく、(30〜90)/(70〜10)がとくに好ましい。非線形ポリエステル樹脂(A1)の重量比が20以上であると樹脂強度が上昇し、高温域での定着性が良好である。
【0037】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダーは、ポリエステル樹脂(A)と共にビニル樹脂(B)を含有する必要がある。
【0038】
ビニル樹脂(B)は、3級アミノ基を有するビニルモノマー(b1)と3級アミノ基を有さないビニルモノマー(b2)を構成単位として有する。
(B)の全構成単位中の(b1)の含有量は、帯電性の観点から1〜40重量%である必要があり、好ましくは4〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0039】
3級アミノ基を有するビニルモノマー(b1)としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびジt−ブチルアミノエチルメタクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜8のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4ービニルピリジン、2ービニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、アミノチアゾール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等およびこれらの塩等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、アルキル基の炭素数が1〜8のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく、さらに好ましくは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびジt−ブチルアミノエチルメタクリレートであり、最も好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
上記および以下において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタアクリレートを意味し、以下同様の記載法を用いる。
【0040】
3級アミノ基を有さないビニルモノマー(b2)としては下記(1)〜(10)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0041】
(1)ビニル系炭化水素:
(1−1)脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、前記以外のα−オレフィン等;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン。
(1−2)脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類、例えば(ジ)シクロペンタジエン等;テルペン類、例えばピネン等。
(1−3)芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等;およびビニルナフタレン。
【0042】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびその金属塩:
炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸、炭素数3〜30の不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル(炭素数1〜24)エステル、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー。
【0043】
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物およびこれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸、例えばビニルスルホン酸;およびその炭素数2〜24のアルキル誘導体、例えばα−メチルスチレンスルホン酸等;スルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミド、例えば、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および硫酸エステルもしくはスルホン酸基含有ビニルモノマー;ならびそれらの塩等。
【0044】
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(C1〜C24)燐酸モノエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)ホスホン酸類、例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸。
なお、上記(2)〜(4)の塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩もしくは4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0045】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー:
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル等。
【0046】
(6)(b1)以外の含窒素ビニルモノマー:
(6−1)アミド基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等、
(6−2)ニトリル基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等、
(6−3)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等、
(6−4)ニトロ基含有ビニルモノマー:ニトロスチレン等。
【0047】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー:
グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニルフェニルオキサイド等
【0048】
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン、(2−パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、(2−パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、(2−パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、(2−パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、(2−パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、(2−パーフルオロドデシル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート等
【0049】
(9)以外のビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン類:
(9−1)ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(Mn300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等。
(9−2)ビニル(チオ)エーテル、例えばビニルメチルエーテル等、
(9−3)ビニルケトン、例えばビニルメチルケトン等。
【0050】
(10)その他のビニルモノマー:
イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等
【0051】
これらの中でビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン類、カルボキシル基含有ビニル系モノマー、および二トリル基含有ビニルモノマーが好ましく、ビニルエステル〔とくに炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート〕がさらに好ましい。
【0052】
ビニル樹脂(B)は、3級アミノ基を有するビニルモノマー(b1)と3級アミノ基を有さないビニルモノマー(b2)を通常用いられる方法でビニル共重合することにより得られる。
ビニル樹脂(B)の分子量は、定着性の観点から、重量平均分子量(以下Mwと記載)が3,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは3,500〜80,000、とくに好ましくは4,000〜50,000、最も好ましくは5,000〜20,000である。
【0053】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダー中のポリエステル樹脂(A)とビニル樹脂(B)の重量比は、帯電性と耐熱保存性の観点から(A)/(B)=50/50〜99.9/0.1であることが好ましく、より好ましくは70/30〜99.8/0.2、最も好ましくは80/20〜99/1である。
【0054】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダーは、ポリエステル樹脂(A)およびビニル樹脂(B)のみを含有することが好ましいが、本発明の正帯電トナーの特性を損なわない範囲で、これら以外の他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、カブリの抑制効果が低下しないことからポリエステル樹脂とビニル樹脂のハイブリッド樹脂以外の樹脂が好ましく、(B)以外のビニル樹脂[スチレンとアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、スチレンとアルカジエン類との共重合体等]、エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル開環重合物等)、ウレタン樹脂(ジオールおよび/または3価以上のポリオールとジイソシアネートの重付加物等)などが挙げられる。
他の樹脂のMnは、300〜10万が好ましい。他の樹脂の含有量は、好ましくはトナーバインダー中に10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0055】
ポリエステル樹脂(A)、ビニル樹脂(B)、および必要によりその他の樹脂を混合する場合、予め粉体混合または溶融混合してもよいし、トナー化時に混合してもよい。
溶融混合する場合の温度は、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃、とくに好ましくは120〜160℃である。
混合温度が低すぎると充分に混合できず、不均一となることがある。混合温度が高すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
【0056】
溶融混合する場合の混合時間は、好ましくは10秒〜30分、さらに好ましくは20秒〜10分、とくに好ましくは30秒〜5分である。混合時間が長すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽などのバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロールなどが挙げられる。これらのうちエクストルーダーおよびコンティニアスニーダーが好ましい。
粉体混合する場合は、通常の混合条件および混合装置で混合することができる。
粉体混合する場合の混合条件としては、混合温度は、好ましくは0〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃である。混合時間は、好ましくは3分以上、さらに好ましくは5〜60分である。混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0057】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダーは、トナー化した時の正帯電性の観点から、体積平均粒径(D50)を8〜12μm、粒度分布として、体積平均粒径/個数平均粒径(Dv/Dn)=1.1〜1,3の粒子とした場合、温度20℃、湿度50%の環境下、フェライトキャリア(F−150;パウダーテック社製)100重量部と正帯電トナー用トナーバインダー粒子5重量部を、ステンレス性のポットに仕込み、ボールミル架台上で300rpmにて回転混合させ、回転開始から120秒後に停止させ、得られた現像剤の帯電量を、ブローオフ装置によって測定した正帯電トナー用トナーバインダーの帯電量値が−30μC/g以上であることが好ましく、より好ましくは−25〜50μC/g、最も好ましくは−20〜45μC/gである。
なお、体積平均粒径(D50)、Dv/Dnはコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。体積平均粒径(D50)の測定方法の詳細は下記のとおりである。
【0058】
[体積平均粒径(D50)]
体積平均粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる試料の粒径を意味する。
測定機:コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散条件:電解液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個のトナー粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0059】
本発明の正帯電トナーは、ポリエステル樹脂(A)およびビニル樹脂(B)を含有する本発明の正帯電トナー用トナーバインダー、着色剤、荷電制御剤、並びに必要により、離型剤、流動化剤等1種類以上の他の添加剤を含有する。
【0060】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
【0061】
荷電制御剤としては、従来電子写真トナー用に用いられることが知られている全ての正帯電性の荷電制御剤から、1種または2種類以上が用いられる。具体的には、ニグロシン系染料、例えば「ボントロンN−07」、「ボントロンN−09」、「ボントロンN−04」(以上オリエント化学社製)等、アミンを側鎖に含有するトリフェニルメタン系染料、例えば「COPY BLUE PR」(ヘキスト社製)、四級アンモニウム塩、例えば「TP−415」(保土谷化学社製)、「COPY CHARGE PSY 」(ヘキスト社製)、「ボントロンP−51」(オリエント化学社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等、ポリアミン樹脂、例えば「ボントロンP−52」(オリエント化学社製)等、その他を挙げることができる。
【0062】
離型剤としては、軟化点が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸およびこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス等が挙げられる。
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックスおよびライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0063】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粒子等が挙げられる。流動化剤はトナー母体粒子の形成後に外添剤として使用される場合が多い。
これらの中では、平均粒子径50〜300nm(好ましくは50〜100nm)のシリカ、平均粒子径100〜1000nm(好ましくは150〜600nm)のポリテトラフルオロエチレン微粒子、およびこれらの併用が好ましい。ポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真から測定した1次粒子の粒子径を数平均して算出したものである。
【0064】
上記シリカとしては、シリカの分散性の観点から、乾式法、高温加水分解法により製造されたものが好ましい。また、無水シリカのほか、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛などを含有するものであってもよいが、SiO2を80重量%以上含むものが好ましく、85重量%以上含むものがより好ましい。
また、シリカは、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0065】
上記ポリテトラフルオロエチレン微粒子としては、より具体的には乳化重合により製造された球形に近い形状のもの等が挙げられる。これらは市販されており、例えば「KTL−500F」(喜多村社製、平均粒子径500nm)、「ルブロン L2」(ダイキン工業社製、平均粒子径300nm)、「ルブロン L5」(ダイキン工業社製、平均粒子径200nm)、「フルオン ルブリカント L170J」(旭アイシーアイフロロポリマーズ社製、平均粒子径100nm)、「フルオン ルブリカント L172J」(旭アイシーアイフロロポリマーズ社製、平均粒子径100nm)、「MP−1100」(三井・デュポンフロロケミカル社製、平均粒子径200nm)、「MP−1200」(三井・デュポンフロロケミカル社製、平均粒子径300nm)、「TLP−10F−1」(三井・デュポンフロロケミカル社製、平均粒子径200nm)等が挙げられる。
【0066】
本発明の正帯電トナーの重量比は、トナー重量に基づき、ポリエステル樹脂(A)およびビニル樹脂(B)を含有する本発明のトナーバインダーが、好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは65〜95重量%、とくに好ましくは70〜92重量%;着色剤が、好ましくは0.05〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜55重量%、とくに好ましくは0.5〜50重量%;荷電制御剤が、好ましくは0.05〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%、とくに好ましくは0.5〜7.5重量%;他の添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%、とくに好ましくは1〜10重量%;流動化剤が、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%、とくに好ましくは0.1〜4重量%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
【0067】
本発明の正帯電トナー中のビニル樹脂(B)の含有量は、帯電性の観点から0.1〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜25重量%、最も好ましくは0.3〜23重量%である。
【0068】
本発明の正帯電トナーは、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、前記の体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒子とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解または分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。この場合のトナーの体積平均粒径(D50)は3〜15μmが好ましい。
【0069】
本発明の正帯電トナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト、および樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリアー粒子との重量比は、好ましくは1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
【0070】
本発明の正帯電トナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる
【0071】
以下実施例、比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、%は重量%、部は重量部を示す。
【0072】
製造例1
[非線形ポリエステル樹脂(A1−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸460部、イソフタル酸307部、エチレングリコール573部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸88部を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ、Tmが140℃になった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは245部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを非線形ポリエステル樹脂(A1−1)とする。
(A1−1)のTgは60℃、Tmは140℃、Mpは6000、Mnは2100、酸価は31、水酸基価は6、THF不溶解分は3%であった。
【0073】
製造例2
[非線形ポリエステル樹脂(A1−2)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・エチレンオキサイド2モル付加物41部(0.13モル)、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド3モル付加物457部(1.14モル)、フェノールノボラック(平均官能基数:5.6)のプロピレンオキサイド6モル付加物9部(0.01モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、フマル酸93部(0.8モル)、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸41部(0.21モル)を加え、常圧密閉下2時間反応後、さらに230℃、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、Tmが135℃になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを非線形ポリエステル樹脂(A1−2)とする。
(A1−2)のTgは58℃、Tmは135℃、Mpは11300、Mnは4500、酸価は20、水酸基価は5、THF不溶解分は6%であった。
【0074】
製造例3
[線形ポリエステル樹脂(A2−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸2990部(18.0モル)、ビスフェノールA・エチレンオキサイド2モル付加物7660部(23.4モル)、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Tmが94℃になった時点で、生成したポリマーを取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを線形ポリエステル樹脂(A2−1)とする。
(A2−1)のTgは60℃、Tmは94℃、Mpは3500、Mnは1800、酸価は2、水酸基価は55、THF不溶解分は0%であった。
【0075】
製造例4
[ビニル樹脂(B−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた密閉可能な反応槽中にトルエンを400部入れ、窒素で十分に置換し、100℃まで加熱した。別の攪拌装置のついた密閉できる容器にメタクリル酸メチル340部、ジメチルアミノエチルメタクリレート60部、アゾビスイソブチロニトリルを10部加え、30分攪拌し、モノマー溶液を得た。滴下ポンプを用いてモノマー溶液を5時間かけて100℃に加熱したトルエン中に滴下した後、10時間反応させた。得られた樹脂溶液を耐熱容器に移し、減圧乾燥機で100℃で5〜20mmHgの減圧下に30時間放置し、トルエンを100ppm以下となるまで除去し、得られた樹脂を粉砕することで、ビニル樹脂(B−1)を得た。
(B−1)のMwは8000、Tgは80℃であった。なお、ジメチルアミノエチルメタクリレートの含有量は15%であった。
【0076】
製造例5
[ビニル樹脂(B−2)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた密閉可能な反応槽中にトルエンを400部入れ、窒素で十分に置換し、100℃まで加熱した。別の攪拌装置のついた密閉できる容器にメタクリル酸メチル300部、ジエチルアミノエチルメタクリレート100部、アゾビスイソブチロニトリルを10部加え、30分攪拌し、モノマー溶液を得た。滴下ポンプを用いてモノマー溶液を5時間かけて110℃に加熱したトルエン中に滴下した後、10時間反応させた。得られた樹脂溶液を耐熱容器に移し、減圧乾燥機で100℃で5〜20mmHgの減圧下に30時間放置し、トルエンを100ppm以下となるまで除去し、得られた樹脂を粉砕することで、ビニル樹脂(B−2)を得た。
(B−2)のMwは6000、Tgは76℃であった。なお、ジエチルアミノエチルメタクリレートの含有量は25%であった。
【0077】
製造例6
[ビニル樹脂(B−3)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた密閉可能な反応槽中にトルエンを400部入れ、窒素で十分に置換し、100℃まで加熱した。別の攪拌装置のついた密閉できる容器にメタクリル酸メチル360部、ジメチルアミノエチルアクリレート40部、アゾビスイソブチロニトリルを10部加え、30分攪拌し、モノマー溶液を得た。滴下ポンプを用いてモノマー溶液を5時間かけて95℃に加熱したトルエン中に滴下した後、10時間反応させた。得られた樹脂溶液を耐熱容器に移し、減圧乾燥機で100℃で5〜20mmHgの減圧下に30時間放置し、トルエンを100ppm以下となるまで除去し、得られた樹脂を粉砕することで、ビニル樹脂(B−3)を得た。
(B−3)のMwは10000、Tgは83℃であった。なお、ジメチルアミノエチルアクリレートの含有量は10%であった。
【0078】
比較製造例1
[比較用ビニル樹脂(RB−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた密閉可能な反応槽中にトルエンを400部入れ、窒素で十分に置換し、100℃まで加熱した。別の攪拌装置のついた密閉できる容器にメタクリル酸メチル400部、アゾビスイソブチロニトリルを10部加え、30分攪拌し、モノマー溶液を得た。滴下ポンプを用いてモノマー溶液を5時間かけて100℃に加熱したトルエン中に滴下した後、10時間反応させた。得られた樹脂溶液を耐熱容器に移し、減圧乾燥機で100℃で5〜20mmHgの減圧下に30時間放置し、トルエンを100ppm以下となるまで除去し、得られた樹脂を粉砕することで、比較用ビニル樹脂(RB−1)を得た。
(RB−1)のMwは8500、Tgは90℃であった。
【0079】
<実施例1〜9>、<比較例1、2>
製造例で得られた(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)、(B−1)〜(B−3)、および(RB−1)を、表1の配合比に従い、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で150℃で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、体積平均粒径(D50)が10μm、Dv/Dn=1.2のトナーバインダー粒子(P−1)〜(P−9)、(RP−1)、(RP−2)を得た。
得られたトナーバインダー粒子の帯電量を下記評価方法に従い評価した。その結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
[帯電量の測定]
温度20℃、湿度50%の環境下、フェライトキャリア(F−150;パウダーテック社製)100部と上記正帯電トナー用トナーバインダー粉砕粒子5部とを、ステンレス性のポットに仕込み、ボールミル架台上で300rpmにて回転混合させ、回転開始から120秒後に停止させ、得られた現像剤の帯電量を、ブローオフ装置によって正帯電トナー用トナーバインダーの帯電量として測定した。
【0082】
<実施例10〜19>、<比較例3、4>
表2の配合比に従い、流動化剤以外の原料をヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で150℃で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、体積平均粒径(D50)が10μmのトナー母体粒子を調製した。
表2記載の各添加剤の詳細は下記のとおりである。
カーボンブラック:REGAL−330R、キャボット社製
ニグロシン染料:ボントロンN−04、オリエント化学社製
低分子量ポリプロピレンワックス:ハイワックスNP−055、三井石油化学社製
【0083】
得られたトナー母体粒子100重量部に、表2に示す種類および量比の流動化剤を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、実施例10〜19および比較例3、4のトナーを得た。トナーの体積平均粒径(D50)は10μmであった。なお、流動化剤の添加は、1段目でシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)を添加し攪拌した後、2段目でポリテトラフルオロエチレン微粒子(KTL−500F:喜多村社製)を添加して攪拌を行なうことにより実施した。
【0084】
得られたトナーについて下記評価方法に示すカブリの評価を行った。その結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
[カブリの評価]
(株)東芝製普通紙ファクシミリ「TF−5000」の感光体を正帯電性有機感光体に変更して、表面電位を+800V、現像バイアス+300V、供給バイアス+400V、転写ローラー1100Vに改造して、各実施例および各比較例のトナーを実装して、白ベタ画像を50枚/分のスピードで10,000枚印字し、その途中で電源を切った。感光体表面のトナーをメンディングテープに付着させ、画像濃度測定器「SPM−50」(Gretag社製)にて着色濃度を測定し、トナーを付着させる前のテープの着色濃度との差を求め、以下の評価基準に従って初期カブリを評価した。
〔評価基準〕
◎:着色濃度の差が0.12未満
○:着色濃度の差が0.12以上、0.13未満
×:着色濃度の差が0.13以上
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の正帯電トナー用トナーバインダーを含有する本発明の正帯電トナーは、トナー劣化時のカブリが抑制されるので、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(x)とポリカルボン酸成分(y)から構成されるポリエステル樹脂(A)、および3級アミノ基を有するビニルモノマー(b1)を1〜40重量%構成単位として含有するビニル樹脂(B)を含有することを特徴とする正帯電トナー用トナーバインダー。
【請求項2】
ビニル樹脂(B)の重量平均分子量が3,000〜100,000である請求項1記載の正帯電トナー用トナーバインダー。
【請求項3】
3級アミノ基を有するビニルモノマー(b1)が、アルキル基の炭素数が1〜8のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートである請求項1または2記載の正帯電トナー用トナーバインダー。
【請求項4】
鉄粉と、体積平均粒径(D50)が8〜12μmかつ体積平均粒径/個数平均粒径が1.1〜1,3であるトナーバインダー粒子とを、重量比が100/5で配合し、温度20℃、湿度50%の環境下、120秒間攪拌後のトナーバインダーの帯電量が−30μC/g以上である請求項1〜3いずれか記載の正帯電トナー用トナーバインダー。
【請求項5】
ポリエステル樹脂(A)が、非線形ポリエステル樹脂(A1)および必要により線形ポリエステル樹脂(A2)を含有する請求項1〜4いずれか記載の正帯電トナー用トナーバインダー。
【請求項6】
ポリエステル樹脂(A)とビニル樹脂(B)の重量比が(A)/(B)=50/50〜99.9/0.1である請求項1〜5いずれか記載の正帯電トナー用トナーバインダー。
【請求項7】
請求項1〜7いずれか記載の正帯電トナー用トナーバインダー、着色剤、荷電制御剤、並びに、必要により離型剤および流動化剤から選ばれる1種以上を含有する正帯電トナー。
【請求項8】
トナー中のビニル樹脂(B)の含有量が0.1〜30重量%である請求項7記載の正帯電トナー。

【公開番号】特開2011−123298(P2011−123298A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280868(P2009−280868)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】