説明

正電極板、電池、車両、電池搭載機器、正電極板の製造方法、および電池の製造方法

【課題】 導電性の高い正電極板、これを用いて出力やエネルギー密度を向上させた電池、この電池を搭載した車両、およびこの電池を搭載した電池搭載機器を提供する。また、正電極板の製造方法、および正電極板を用いた電池の製造方法を提供する。
【解決手段】 正電極板20は、第1主面20aおよび第2主面20bを有する板状で、電池1の正電極に用いる正電極板20であって、粒子形状を有し、正極活物質からなる多数の活物質粒子22と、金属からなり、上記活物質粒子22の表面22Sの少なくとも一部を覆って、上記活物質粒子22を保持してなる正電極板本体21と、を備え、上記第1主面20aおよび第2主面20bの少なくともいずれかに、上記活物質粒子22が露出してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正電極板、正電極板を備える電池、電池を搭載する車両、電池搭載機器、正電極板の製造方法、および、電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池に用いる正電極板としては、例えば、金属箔に正極活物質を塗布してなるものが知られている。このような正電極板は、金属箔に正極活物質とともに、結着剤および導電化材を混練したものを金属箔に塗布してなる。
その他、正電極板としては、アルミニウムを主成分とする金属繊維を溶融紡糸し、三次元の網目構造を有するように形成したアルミニウム不織布を正極集電体とし、これに正極活物質、結着剤、および導電化剤を混練したものを塗布、圧着してなるものも知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−155739公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のアルミニウム不織布を用いたものでは、複数の金属繊維によって三次元的に粒子形状の正極活物質を担持するため、正極活物質の密着性は向上させうる。しかし、この場合でも、アルミニウム不織布に正極活物質を担持させるために結着剤および導電化剤を使用している。従って、結着剤が正電極部材を構成する正極集電体と正極活物質との間で抵抗体となり、この間の導電性が低下する。さらに、結着剤および導電化剤も正電極部材の体積や重量に含まれるので、正電極板の体積や重量がかさむ不具合もある。
【0005】
さらに、上述の正電極部材を用いた電池では、正極集電体が有する結着剤による抵抗体の分、この電池の内部抵抗値が大きいため、たとえ使用初期でも出力が小さい。また、電池全体に占める正電極部材の体積および重量が共に大きいため、その分、体積エネルギー密度および重量エネルギー密度も低い。
さらに、このような電池を搭載した車両および電池搭載機器では、車両全体あるいは電池搭載機器全体に占める電池の総体積や総重量が増大する不具合がある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、導電性の高い正電極板、これを用いて出力やエネルギー密度を向上させた電池、この電池を搭載した車両、およびこの電池を搭載した電池搭載機器を提供することを目的とする。また、正電極板の製造方法、および正電極板を用いた電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、その解決手段は、第1主面および第2主面を有する板状で、電池の正電極に用いる正電極板であって、粒子形状を有し、正極活物質からなる多数の活物質粒子と、金属からなり、上記活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆って、上記活物質粒子を保持してなる正電極板本体と、を備え、上記第1主面および第2主面の少なくともいずれかに、上記活物質粒子が露出してなる、正電極板である。
【0008】
本発明の正電極板では、活物質粒子の少なくとも一部を、金属からなる正電極板本体で覆って、これを直接保持しているので、抵抗体となる結着剤が介在せず、正電極板本体と活物質粒子との間での導電性が向上する。また、結着剤、導電化剤を用いなくとも活物質粒子を保持できるので、結着剤、導電化剤の分だけ正電極板の体積および重量を低減できる。従って、この正電極板を電池に用いれば、電池出力を向上することができ、さらに、体積エネルギー密度および重量エネルギー密度も向上できる。
【0009】
なお、正極活物質としては、電気化学的に自由にリチウムイオンの授受が可能な固体リチウム化合物であればよく、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiFeO2、Li5FeO4、Li2MnO3、LiFePO4、LiV24、これらの混合物等が挙げられる。
また、正極活物質粒子であるリチウム化合物の焼成温度は、例えばLiCoO2が700〜960℃、LiNiO2が600〜850℃、LiMn24が750〜850℃である。
【0010】
また、正電極板本体の材質としては、正極活物質の材質、電池に用いる電解質、負電極等を考慮して適宜選択できるが、体積固有抵抗が小さく、融点が正極活物質の焼成温度よりも低い金属が好ましい。具体的には、アルミニウム(融点、659℃)が挙げられる。
【0011】
さらに、他の解決手段は、上述の正電極板を用いてなる電池である。
【0012】
本発明の電池では、上述の活物質粒子と正電極板本体とからなる正電極板を用いる。従って、正電極板における正電極板本体と活物質粒子との間の導電性が高いことから、電池の内部抵抗を低減でき、電池出力を向上させることができる。また、電池の体積および重量を低減できる。
【0013】
なお、電池としては、上述の正電極板を用いた電池であれば良いが、例えば、この正電極板のほか負極活物質を担持した負電極板、およびこれらの間に介在するセパレータを備える電池が挙げられる。従って例えば、複数の正電極板と複数の負電極板とを、セパレータを介して交互に積層した積層型の電池や、帯状の正電極板と帯状の負電極板を帯状のセパレータを介して捲回した捲回型の電池が挙げられる。
また、セパレータとしては、正電極板と負電極板とを互いに離間して配置するものであり、繊維等から構成されて、内部および表面に電解液を含みうるもののほか、固体電解質体を用いて、離間と共に電解質の役割を担わせたものも含まれる。
【0014】
さらに、他の解決手段は、上述の電池を搭載した車両である。
【0015】
本発明の車両では、上述の電池を搭載しているので、小型あるいは小数の電池で足り、電池の総体積、総重量を低減した車両とすることができる。
【0016】
なお、電池を搭載した車両としては、その動力源の全部あるいは一部に電池による電気エネルギーを使用している車両であれば良く、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータ、鉄道車両が挙げられる。
【0017】
またさらに他の解決手段は、上述の電池を搭載した電池搭載機器である。
【0018】
本発明の電池搭載機器では、上述の電池を搭載しているので、小型あるいは小数の電池で足り、電池の総体積、総重量を低減した電池搭載機器とすることができる。
【0019】
なお、電池搭載機器としては、電池を搭載しこれをエネルギー源の少なくとも1つとして利用する機器であれば良く、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池駆動の電動工具など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器が挙げられる。
【0020】
他の解決手段は、粒子形状を有し、正極活物質からなる多数の活物質粒子を、上記正極活物質の焼成温度より低い温度で溶融させた金属の中に混入する粒子混入工程と、上記活物質粒子が混入した上記金属を冷却固化して金属塊を形成する金属塊形成工程と、上記金属塊を圧延して、上記第1主面および第2主面を有する板状で、上記金属で上記活物質粒子を保持した正電極板を形成する圧延工程と、を備える正電極板の製造方法である。
【0021】
本発明の正電極板の製造方法では、まず、粒子混入工程で溶融させた金属に活物質粒子を混入する。このときの金属の温度を、正極活物質の焼成温度よりも低くしておく。これにより活物質粒子を溶融状態の金属の中に混入しても、正極活物質の特性を維持できる。
さらに金属塊形成工程および圧延工程を経た正電極板は、金属が活物質粒子が直接接触しているので、結着剤が介在する従来の正電極板よりも、正極集電体として機能する金属と活物質粒子との間に生じる電気抵抗が低くなり導電性が向上する。さらに、活物質粒子の保持の為の結着剤、導電化剤が不要である分、正電極板の体積および重量を低減できる。
【0022】
さらに、上述の正電極板の製造方法であって、前記圧延工程の後に、前記正電極板の前記第1主面および第2主面の少なくともいずれかに露出する前記金属を溶解し、前記活物質粒子の露出面積を増加させる溶解工程を備える正電極板の製造方法とすると良い。
【0023】
本発明の正電極板の製造方法では、溶解工程で活物質粒子の露出面積を増加させる。従って、溶解前には電池反応に寄与できていなかった活物質粒子あるいは活物質粒子の表面を、新たに電池反応に利用することができるので、電池内のリチウムイオン量を増やして電池容量を増加させることができる。さらに、この溶解により、正電極板のうちの金属の重量を低減できるので、正電極板のさらなる軽量化を図ることができる。
【0024】
なお、正電極板の第1主面および第2主面を形成する金属を溶解する手段としては、例えば酸、塩基のいずれかの溶液に浸漬する処理、電気分解処理等が挙げられる。
【0025】
さらに、他の解決手段は、第1板主面および第2板主面を有する板状の金属板の、上記第1板主面および第2板主面の少なくともいずれかを、正極活物質の焼成温度より低い温度で軟化させて軟化面とする軟化工程と、粒子形状を有し上記正極活物質からなる活物質粒子を多数、上記金属板の上記軟化面にそれぞれ配置した後に、上記活物質粒子の形状を保ちつつ上記金属板の内側に向けて押し込む粒子押込み工程と、を備える正電極板の製造方法である。
【0026】
本発明の正電極板の製造方法では、軟化工程で、金属板の有する第1板主面および第2板主面の少なくともいずれかを熱で軟化させて、粒子押込み工程で活物質粒子の形状を保ちつつ、第1板主面あるいは第2板主面からその内部に向けて押し込む。そのときの金属板の軟化面の温度は、正極活物質の焼成温度よりも低くしてある。このため、この軟化面から押し込まれた活物質粒子は、その特性を維持できる。
また、粒子押込み工程では、活物質粒子を軟化面から金属板の内側に向けて押し込むので、押し込まれたいずれの活物質粒子も金属板の第1板主面あるいは第2板主面に露出しており、いずれの活物質粒子も電池反応に寄与できる状態となる。従って、すべての活物質粒子を無駄なく電池反応に利用することができる。また、電池内のリチウムイオン量を増やして電池容量を増加させることができる。
さらに、本発明の製造法で製造された正電極板は、金属板と活物質粒子とが直接接触しているので、その間に生じる電気抵抗が低くなり導電性が向上する。また、結着剤や導電化剤を要しないので、その分正電極板の体積および重量が低減できている。
なお、軟化面の温度は、活物質粒子を金属板の第1板主面あるいは第2板主面に押し込んだときに、活物質粒子がその形状を保ちうる状態にまで軟化する温度とする。従って、金属板の材質および活物質粒子の材質に応じて軟化面の温度を選択する。
【0027】
さらに他の解決方法は、正電極板を備える電池の製造方法であって、上記正電極板を、上述の正電極板の製造方法で製造する電池の製造方法である。
【0028】
本発明の電池の製造方法では、正電極板の製造にあたり上述の正電極板の製造方法を用いる。従って、正電極板内に生じる抵抗が小さくなり、ひいては電池全体の内部抵抗を低くできる。これにより電池出力が向上させた電池を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態1にかかる正電極板20について説明する。図1(a)は正電極板20の斜視図、図1(b)はその断面図(図1(a)のA−Aを含む断面)である。
本実施形態1にかかる正電極板20は、第1主面20aおよび第2主面20bを有する平板状であり、第1主面20aと第2主面20bの間の厚さTH1は55μmである。この正電極板20は、正電極板本体21と、この内部に分散して配置された活物質粒子22とからなる。このうち、正電極板本体21は、アルミニウムからなり、第1本体主面21aおよび第2本体主面21bを有する板状である。また活物質粒子22は、平均粒径が20μmの粒子形状で、正極活物質のLiMn24からなる。この活物質粒子22は、その表面22Sの少なくとも一部を正電極板本体21が覆うことによって、この正電極板本体21に保持されている。従って、この活物質粒子22の中には、表面22Sのうち、露出面22Hが正電極板本体21の第1本体主面21aあるいは第2本体主面21bよりも外部に露出しているものもある。なお、本実施形態では、活物質粒子22の中には、その表面22Sのすべてが正電極板本体21の内部に埋没した状態とされているものも含まれうる。
【0030】
一方、図2は従来の正電極板PPを示した断面図である。従来の正電極板PPは、金属箔PFと、活物質層PLを備える。具体的には、従来の正電極板PPは、平板状のアルミニウムからなる金属箔PFの第1主面PFaおよび第2主面PFbに、正極活物質のLiMn24からなる活物質粒子PA、結着剤AM、および導電化剤CMを混練した活物質層PL(例えば、重量比で活物質粒子PA:結着剤AM:導電化剤CM=8:1:1)を塗布してなる。なお、例えば、結着剤AMにはポリフッ化ビニリデン樹脂、導電化剤CMにはアセチレンブラックがそれぞれ使用される。
このように、従来の正電極板PPは、金属箔PFと活物質粒子PAとの間には、結着剤AMおよび導電化剤CMが介在している。
【0031】
これに対し、本実施形態1の正電極板20は前述の通り、活物質粒子22の少なくとも一部を正電極板本体21で覆って、これを直接保持しているので、抵抗体となる結着剤が介在せず、正電極板本体21と活物質粒子22との間での導電性が向上する。また、結着剤、導電化剤を用いなくとも活物質粒子22を保持できるので、結着剤、導電化剤の分だけ正電極板20の体積および重量を低減できる。
【0032】
次に、本実施形態1にかかる電池1について説明する。図3(a)は電池1の斜視図、図3(b)はその断面図(図3(a)のB−Bを含む断面)、図4は電池断面図の拡大図(図3のC部)である。電池1は発電要素10、正極タブ60、負極タブ70、ラミネートフィルム50を備える積層型のリチウムイオン二次電池である。このうち、発電要素10は、正電極板20、負電極板30、セパレータ40、および図示しない電解液を含む。また、正極タブ60は電池内部の複数の正電極板20と、負極タブ70は電池内部の複数の負電極板30と、ラミネートフィルム50の内部でそれぞれ接続され、このラミネートフィルム50の外部へ突出している。
【0033】
それぞれ板状の正電極板20および負電極板30は、セパレータ40を介して、交互に積層されている。電解液には、EC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)との混合有機溶媒に、溶質としてLiPF6を添加した有機電解質を用いる。
このうち、正電極板20は前述の正電極板である。一方、負電極板30は、銅からなる金属箔31と、この第1主面31aと第2主面31bとに塗布された、炭素からなる負極活物質層32とで構成されている。
ラミネートフィルム50は、金属箔53、およびその両面にコーティングされた第1樹脂層51および第2樹脂層52を有する。そして、2枚のラミネートフィルム50は、発電要素10を挟み込み、互いに熱溶着されて、発電要素10を密封している。
【0034】
本実施形態1の電池1では、上述の通り、前述の正電極板本体21と活物質粒子22とからなる正電極板20を用いる。この正電極板20は、正電極板本体21と活物質粒子22との間の導電性が高いことから、電池1の内部抵抗を低減でき、電池出力を向上させることができる。また、正電極板20の体積および重量が小さいことから、電池1の体積および重量をも低減できる。
【0035】
次に、電池1の製造方法について説明する。
まず、正電極板20の製造方法について、図5、6を参照して説明する。
正電極板20の製造方法は、粒子混入工程、金属塊形成工程、圧延工程、および溶解工程を備えている。
まず、粒子混入工程では、溶解炉800のうち、るつぼ810にアルミニウム90を2.0kg投入し、大気雰囲気中で、ヒータ820でアルミニウム90を700℃に加熱し、熱溶解させる。そこに平均粒径20μmのLiMn24からなる活物質粒子22を2.0kg投入し、十分に撹拌させる(図5(a)および(b))。700℃はLiMn24である正極活物質の焼成温度に満たないため、活物質粒子22(LiMn24)は、その特性を維持したまま、溶融したアルミニウム90中に存在できる。
【0036】
次いで金属塊形成工程では、撹拌された活物質粒子22を含むアルミニウム90を冷却固化させてアルミニウム金属塊91を鋳造する(図5(c)および(d))。
【0037】
次いで圧延工程では、鋳造されたアルミニウム金属塊91をプレスローラ800を用いて圧延し、厚さTH2が55μmの正電極板120を作製する(図7)。
【0038】
上述の製造方法で製造された正電極板120は、正電極板本体121が活物質粒子22に直接接触しているので、結着剤AMが介在する従来の正電極板PP(図2参照)よりも、正極集電体として機能する正電極本体121と活物質粒子22との間に生じる電気抵抗が低くなり導電性が向上する。さらに、正電極板120の体積および重量を低減できる。
【0039】
なお、この正電極板120でも、電池の正電極板として使用することができるが、その第1,第2主面120a,120bに露出する活物質粒子22の露出面22Hの面積が少ない場合がある。
【0040】
そこで、さらに上述の圧延工程後に、以下の溶解工程を施すとよい。
この溶解工程では、図7に示す正電極板120の第1主面120aおよび第2主面120bのうち、正電極板本体121の第1本体主面121aおよび第2本体主面121bを、所定濃度の硝酸900による腐食処理で厚さTH3ずつ溶解させ、活物質粒子22の露出面22Hの面積を増加させる(図8参照)。
【0041】
この溶解工程により、溶解前には電池反応に寄与できていなかった活物質粒子22あるいは活物質粒子22の表面22S(露出面22H)を、新たに電池反応に利用することができるので、電池1内のリチウムイオン量を増やして電池容量を増加させることができる。さらにこの溶解により、正電極板20のうちの正電極板本体21の重量を低減できるので、正電極板20のさらなる軽量化を図ることができる。かくして、正電極版20が完成する。
【0042】
なお、本実施形態1の電池1の製造方法のうち、正電極板120,20の製造方法以外は、公知の手法によれば良いので、記載を省略する。
【0043】
本実施形態1の電池1の製造方法によれば、正電極板120、あるいは正電極板20に生じる抵抗を小さくできるので、ひいては電池1の全体の内部抵抗を低くできる。これにより、電池出力を向上させた電池1を製造することができる。
【0044】
次いで、本実施形態1にかかる電池1を用いた車両500について説明する。この車両500は、本実施形態1の電池1を、公知の手法で搭載したものである。具体的には図9に示すように、エンジン510、フロントモータ520、およびリアモータ530を併用して駆動するハイブリッド電気自動車である。この車両500は、車体570、エンジン510、これに取り付けられたフロントモータ520、リアモータ530、ケーブル550、インバータ560およびバッテリパック540を備えている。バッテリパック540は、車両500の車体570に取り付けられている。そして、バッテリパック540の内部には、詳細を図示しないが、複数の電池1が電気的に直列に連結されて配置されている。
このように、この車両500では、上述の電池1を用いているので、小型あるいは小数の電池1を用いれば足り、電池1の総体積、総重量(バッテリパック540の体積、重量)を低減した車両500とすることができる。
【0045】
さらに、本実施形態1にかかる電池1を用いた電池搭載機器600について説明する。携帯電話600は、上述の方法で製造された電池1を、公知の手法で搭載したものである。具体的には、図10に示すように、電池パック610、本体620を有する電池搭載機器である。電池パック610は、携帯電話600の本体620に収容されており、電池パック610の内には、電池1が収容されている。
この携帯電話600でも、上述の電池1を用いているので、小型あるいは小数の電池1で足り、電池1(バッテリパック610)の体積、重量を低減した電池搭載機器600とすることができる。
【0046】
(実施形態2)
次に、本実施形態2にかかる正電極板220について説明する。図11は、正電極板220の断面図(図13のE−E断面)である。
本実施形態2にかかる正電極板220は、第1主面220aおよび第2主面220bを有し、この第1主面220aと第2主面220bとの間の厚さTH4は、55μmである。この正電極板220は、正電極板本体221と、この表面部分に分散して配置された実施形態1と同様の活物質粒子22とからなる。このうち、正電極板本体221は、アルミニウムからなり、第1本体主面221aおよび第2本体主面221bを有する板状のアルミ箔である。また活物質粒子22は、前述したように、平均粒径が20μmの粒子形状で、正極活物質のLiMn24からなる。この活物質粒子22は、正電極板本体221の第1本体主面221aあるいは第2本体主面221bより内側に押し込まれることにより、その表面22Sの一部を正電極板本体221が覆う形態とされ、これによって、この正電極板本体221に保持されている。なお、本実施形態2ではいずれの活物質粒子22についても、表面22Sのうちの露出面22Hが、正電極板本体221の第1本体主面221aあるいは第2本体主面221bよりも外部に露出している。
【0047】
本実施形態2の正電極板220は、上述の通り、活物質粒子22の一部を正電極板本体221で覆って、これを直接に保持しているので、抵抗体となる結着剤が介在せず、正電極板本体221と活物質粒子22との間での導電性が向上する。また、結着剤、導電化剤を用いなくとも活物質粒子22を保持できるので、結着剤、導電化剤の分だけ正電極板220の体積および重量を低減できる。さらに、いずれの活物質粒子22も電池反応に寄与できる状態となっている。
【0048】
次に、本実施形態2にかかる電池201について図3および図12を用いて説明する。電池201は、図3に示すように、実施形態1にかかる電池1と同様、発電要素210、正極タブ60、負極タブ70、ラミネートフィルム50を備える積層型のリチウムイオン二次電池である。このうち、発電要素210は、正電極板220、負電極板30、セパレータ40、および図示しない電解液を含む。また、正極タブ60は電池内部の複数の正電極板220と、負極タブ70は電池内部の複数の負電極板30と、ラミネートフィルム50の内部でそれぞれ接続され、このラミネートフィルム50の外部へ突出している。
【0049】
図12は電池201の拡大断面図(図3のC部)である。それぞれ板状の正電極板220と負電極板30とが、セパレータ40を介して交互に積層されている。
このうち、負電極板30、セパレータ40、ラミネートフィルム50、および電解液については、実施形態1にかかる電池1と同様である。
【0050】
本実施形態2の電池201は、前述の正電極板本体221と活物質粒子22とからなる正電極板220を用いる。この正電極板220は、正電極板本体221と活物質粒子22との間の導電性が高いことから、電池201の内部抵抗を低減でき、電池出力を向上させることができる。また、電池201の体積および重量を低減できる。さらに、すべての活物質粒子22を無駄なく電池反応に利用することができ、電池201内のリチウムイオン量を増やして電池容量を増加させることができる。
【0051】
次に、本実施形態2の正電極板220の製造方法について、図13を参照して説明する。まず、図13のうち上部に示すように、アルミニウムからなり、長尺で、第1板主面291aおよび第2板主面291bを有し、厚さTH5が50μmの金属板291を用意する。この金属板291をローラ840で送ると共に、その第1板主面291aおよび第2板主面291bをヒータ850で加熱し、軟化させて、それぞれ第1軟化面291cおよび第2軟化面291dとする。
なお、軟化面291c,291dの温度は、次述するように、この第1軟化面291c(第1板主面291a)および第2軟化面(第2板主面291b)が、活物質粒子22を押し込んだ際に、活物質粒子22に圧壊、変形等を生じず、その形状を保って圧入できる状態にまで軟化させる温度とする。また、第1軟化面291cおよび第2軟化面291dは、活物質粒子22、具体的には正極活物質のLiMn24の焼成温度に満たない温度とする。これにより、活物質粒子22は、押し込まれた後もその特性を維持できるからである。本実施形態2においては概略600℃とする。
【0052】
次いで粒子押込み工程では、活物質粒子22を金属板291の第1軟化面291cおよび第2軟化面291dにホッパ860を用いて散布する。
次いでプレスローラ870により、活物質粒子22を第1軟化面291cおよび第2軟化面291dから、金属板291の内側に向けて押し込む。上述したように、第1軟化面291cおよび第2軟化面291dの温度を調整してあるので、活物質粒子22を押し込む際、この活物質粒子22が圧壊、変形することはない。なお、プレスローラ870同士の間隔を、金属板291の厚さTH5より若干大きい値に調製しておく。かくして、正電極板220が完成する。
【0053】
本実施形態2の製造方法で製造された正電極板220は、活物質粒子22のすべてが、電池反応に寄与できる状態で、金属板291である正電極板本体221に担持されるので、活物質粒子22を無駄なく電池反応に利用することができる。さらに、正電極板本体221(金属板291)と活物質粒子22とが直接接触してなるので、その間に生じる電気抵抗が低くなり導電性が向上する。また、結着剤や導電化剤を要しないので、その分、正電極板220の体積および重量が低減できている。
【0054】
さらに、本実施形態2の電池201は、正電極板220を上述の製造方法で製造するほかは、公地の手法を用いて製造する。
【0055】
さらに、この電池201も、実施形態1の電池1を用いた車両500(バッテリパック540)と同様、車両501(バッテリパック541)に搭載することができる。
この車両501は、上述の電池201を用いたバッテリパック541を搭載しているので、小型あるいは小数の電池201で足り、電池201の総体積、総重量、従ってバッテリパック541の体積、重量を低減することができる。
【0056】
また、電池201も、実施形態1の電池を用いた携帯電話600と同様、携帯電話601(図10参照)に搭載することができる。
この携帯電話601は、上述の電池201を用いたバッテリパック611を搭載しているので、小型あるいは小数の電池201で足り、電池201の、従って携帯電話601の体積、重量を低減することができる。
【0057】
以上において、本発明を実施形態1および2に即して説明したが、本発明は上記実施形態1および2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0058】
例えば、本実施形態1および2として電池1,201をリチウムイオン二次電池としたが、本発明は、リチウムイオン二次電池に限らず、正電極板を使用した発電要素を有する電池であれば、いずれの種類の電池にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態1にかかる正電極板20を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はA−A断面図である。
【図2】従来の正電極板PPの模式例を示す断面図である。
【図3】実施形態1および2にかかる電池1,201を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はB−B断面図である。
【図4】実施形態1にかかる電池1の部分拡大断面図(図3のC部)である。
【図5】実施形態1にかかる正電極板120,20の製造方法のうち、粒子混入工程および金属塊形成工程を説明するための説明図であり、(a)は活物質粒子22の投入、(b)は活物質粒子22の撹拌、(c)は活物質粒子22が分散した金属の冷却、および(d)は、取り出しの様子を示す。
【図6】実施形態1にかかる正電極板の製造方法のうち、圧延工程を説明するための説明図である。
【図7】圧延により形成された正電極板120を示す断面図(図6のD−D断面)である。
【図8】溶解工程後の正電極板20の断面図である。
【図9】実施形態1および2にかかる電池1,201を搭載した車両500,501(ハイブリッド電気自動車)を示す説明図である。
【図10】実施形態1および2にかかる電池1,201を搭載した携帯電話600,601を示す説明図である。
【図11】実施形態2にかかる正電極板220の断面図である。
【図12】実施形態2にかかる電池201の部分拡大断面図(図3のC部)である。
【図13】実施形態2にかかる正電極板220の製造方法の、軟化工程および粒子押込み工程を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1,201 電池
20,120,220 正電極板
20a,120a,220a 第1主面
20b,120b,220b 第2主面
21,121,221 正電極板本体
22 活物質粒子
22S 表面
90 アルミニウム(金属)
91 金属塊
291 金属板
291a 第1板主面
291b 第2板主面
291c 第1軟化面
291d 第2軟化面
500,501 車両
600,601 携帯電話(電池搭載機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を有する板状で、電池の正電極に用いる正電極板であって、
粒子形状を有し、正極活物質からなる多数の活物質粒子と、
金属からなり、上記活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆って、上記活物質粒子を保持してなる正電極板本体と、を備え、
上記第1主面および第2主面の少なくともいずれかに、上記活物質粒子が露出してなる、
正電極板。
【請求項2】
請求項1に記載の正電極板を用いてなる電池。
【請求項3】
請求項2に記載の電池を搭載した車両。
【請求項4】
請求項2に記載の電池を搭載した電池搭載機器。
【請求項5】
粒子形状を有し、正極活物質からなる多数の活物質粒子を、上記正極活物質の焼成温度より低い温度で溶融させた金属の中に混入する粒子混入工程と、
上記活物質粒子が混入した上記金属を冷却固化して金属塊を形成する金属塊形成工程と、
上記金属塊を圧延して、上記第1主面および第2主面を有する板状で、上記金属で上記活物質粒子を保持した正電極板を形成する圧延工程と、を備える
正電極板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の正電極板の製造方法であって、
前記圧延工程の後に、前記正電極板の前記第1主面および第2主面の少なくともいずれかに露出する前記金属を溶解し、前記活物質粒子の露出面積を増加させる溶解工程を備える
正電極板の製造方法。
【請求項7】
第1板主面および第2板主面を有する板状の金属板の、上記第1板主面および第2板主面の少なくともいずれかを、正極活物質の焼成温度より低い温度で軟化させて軟化面とする軟化工程と、
粒子形状を有し上記正極活物質からなる活物質粒子を多数、上記金属板の上記軟化面にそれぞれ配置した後に、上記活物質粒子の形状を保ちつつ上記金属板の内側に向けて押し込む粒子押込み工程と、を備える
正電極板の製造方法。
【請求項8】
正電極板を備える電池の製造方法であって、
上記正電極板を、請求項5〜7のいずれか1項に記載の正電極板の製造方法で製造する電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−192547(P2008−192547A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27998(P2007−27998)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】