説明

歩行型田植機

【課題】 歩行型田植機において、その多条化に起因した作業の重労働化を抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図れるようにする。
【解決手段】 機体フレーム2の後部に苗植付装置4を装備し、機体フレーム2における苗植付装置4よりも機体前側の位置に車輪3を配置し、車輪3および苗植付装置4に、エンジン1からの動力をミッションケース8を介して伝達し、ミッションケース8を、車輪3の機体前側端部3aよりも機体前側に位置するように配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームの後部に苗植付装置を装備し、前記機体フレームにおける前記苗植付装置よりも機体前側の位置に車輪を配置し、前記車輪および前記苗植付装置に、エンジンからの動力をミッションケースを介して伝達するように構成した歩行型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような歩行型田植機においては、機体の前後バランスの均衡を図るために、機体フレームの前部側にエンジンやミッションケースなどの重量物を装備している。また、機体の全長を極力短くするために、それらの重量物を機体の前後中心側に寄せた状態、具体的には、ミッションケースなどのいくつかの重量物を、機体における車輪の前端よりも後方側の領域に、部分的または全体的に入り込ませた状態で配備している(例えば特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2006−81538号公報
【特許文献2】特開平6−62627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年では、経費の高騰を抑制しながら作業の高効率化を図るために歩行型田植機の多条化が望まれている。しかしながら、上記のような歩行型田植機において、単に苗植付装置の植え付け条数を増やすことによる多条化を図ると、苗植付装置の大型化とともに機体後部側の重量が重くなり、車軸を中心とした機体の前後バランスが後寄りになる。そのため、歩行型田植機を機体後方からハンドル操作する際のハンドル荷重が重くなり、作業の重労働化が進むことになる。
【0004】
本発明の目的は、歩行型田植機において、その多条化に起因した作業の重労働化を抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
機体フレームの後部に苗植付装置を装備し、
前記機体フレームにおける前記苗植付装置よりも機体前側の位置に車輪を配置し、
前記車輪および前記苗植付装置に、エンジンからの動力をミッションケースを介して伝達し、
前記ミッションケースを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする。
【0006】
この特徴構成によると、重量物であるミッションケースを、機体における車輪の機体前側端部よりも後方側の領域に部分的または全体的に入り込ませた状態で配備する場合に比較して、車軸を中心とした機体の前後バランスが前寄りになる。これにより、多条化に起因して、機体の前後バランスが後寄りになり、後方からのハンドル操作が重くなることによる作業の重労働化を抑制することができる。
【0007】
ちなみに、機体前後バランスの後寄りを改善する方法としては、機体の前側にバランスウエイトを追加装備することも考えられるが、この場合には、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことになる。
【0008】
従って、歩行型田植機において、重量物であるミッションケースを上記のように合理的に配置することにより、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことなく、その多条化に起因した作業の重労働化を抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図ることができる。
【0009】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記車輪を、前記機体フレームに対する上下変位が可能となるように前記機体フレームに連結する連結部材と、
前記車輪を、前記機体フレームに対して上下方向に変位駆動するアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする。
【0010】
この特徴構成によると、重量物であるアクチュエータを、機体における車輪の機体前側端部よりも後方側の領域に部分的または全体的に入り込ませた状態で配備する場合に比較して、車軸を中心とした機体の前後バランスが前寄りになる。これにより、多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制することができる。
【0011】
従って、歩行型田植機において、重量物であるアクチュエータを上記のように合理的に配置することにより、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことなく、その多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図ることができる。
【0012】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の発明において、
前記アクチュエータとして油圧シリンダを装備し、
前記油圧シリンダに対する作動油の流動を制御する制御弁を、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする。
【0013】
この特徴構成によると、重量物である制御弁を、機体における車輪の機体前側端部よりも後方側の領域に部分的または全体的に入り込ませた状態で配備する場合に比較して、車軸を中心とした機体の前後バランスが前寄りになる。これにより、多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制することができる。
【0014】
従って、歩行型田植機において、重量物である制御弁を上記のように合理的に配置することにより、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことなく、その多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、
前記エンジンを、平面視で前記アクチュエータと重なるように配置してあることを特徴とする。
【0016】
この特徴構成によると、重量物であるエンジンを、アクチュエータよりも機体後方側に配置する場合に比較して、車軸を中心とした機体の前後バランスが前寄りになる。これにより、多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制することができる。
【0017】
従って、歩行型田植機において、重量物であるエンジンを上記のように合理的に配置することにより、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことなく、その多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図ることができる。
【0018】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、
前記エンジンを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする。
【0019】
この特徴構成によると、重量物であるエンジンを、機体における車輪の機体前側端部よりも後方側の領域に部分的または全体的に入り込ませた状態で配備する場合に比較して、車軸を中心とした機体の前後バランスが前寄りになる。これにより、多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制することができる。
【0020】
従って、歩行型田植機において、重量物であるエンジンを上記のように合理的に配置することにより、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことなく、その多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図ることができる。
【0021】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、上記請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、
前記機体フレームにおけるエンジン支持用のエンジンフレームを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする。
【0022】
この特徴構成によると、重量物であるエンジンフレームを、機体における車輪の機体前側端部よりも後方側の領域に部分的または全体的に入り込ませた状態で配備する場合に比較して、車軸を中心とした機体の前後バランスが前寄りになる。これにより、多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制することができる。
【0023】
従って、歩行型田植機において、重量物であるエンジンフレームを上記のように合理的に配置することにより、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことなく、その多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図ることができる。
【0024】
本発明のうちの請求項7に記載の発明では、上記請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、
燃料タンクを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする。
【0025】
この特徴構成によると、苗植え付け作業時には燃料が貯留されていることで重量物となる燃料タンクを、機体における車輪の機体前側端部よりも後方側の領域に部分的または全体的に入り込ませた状態で配備する場合に比較して、車軸を中心とした機体の前後バランスが前寄りになる。これにより、多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制することができる。
【0026】
従って、歩行型田植機において、重量物となる燃料タンクを上記のように合理的に配置することにより、バランスウエイトの追加装備によるコストの高騰や機体の重量化を招くことなく、その多条化に起因した作業の重労働化をより効果的に抑制しながら、その多条化による作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明に係る歩行型田植機について説明する。
【0028】
図1には6条植え用の歩行型田植機の全体側面が、図2にはその概略平面が示されている。これらの図に示すように、この歩行型田植機は、リコイルスタータ式の空冷エンジン1を機体フレーム2の前部に搭載し、そのエンジン1からの走行用動力で駆動される左右一対の車輪3を機体フレーム2の左右に配備し、エンジン1からの作業用動力で駆動される6条植え用の苗植付装置4を、左右の車輪3よりも機体後側に位置するように機体フレーム2の後部に装備し、その苗植付装置4の後方に操縦部5を備えて構成されている。
【0029】
つまり、この歩行型田植機では、作業条数の多い6条植え用の苗植付装置4を装備したことによって、苗植え付け作業の高効率化が図られている。
【0030】
エンジン1は、シリンダヘッド(図示せず)が前傾姿勢で装備された嵩低型に構成されている。また、その出力軸6が左右向きで右外方に向けて突出するように姿勢設定されている。
【0031】
図1〜5に示すように、機体フレーム2は、エンジン1が搭載されるエンジンフレーム7、前部にエンジンフレーム7がボルト連結されたミッションケース8、ミッションケース8の後端部から後方に向けて延設された主フレーム9、主フレーム9の後端部にボルト連結された動力分配ケース10、動力分配ケース10の左右両側部から左右外方に向けて延設された左右の連結フレーム11、対応する連結フレーム11の延出端部にボルト連結された左右の植付伝動ケース12、および、動力分配ケース10から後上方に向けて延設されたハンドルフレーム13、などによって構成されている。
【0032】
左右の各車輪3は、左右の対応するスイングアーム(連結部材)14などを介して、機体フレーム2に対する上下変位が可能となるように機体フレーム2に連結されている。
【0033】
図1および図2に示すように、苗植付装置4には、6条分のマット状苗の載置が可能となるように形成された苗載台15が備えられている。苗載台15は、エンジン1からの作業用動力が伝達される動力分配ケース10に内装した横送り機構(図示せず)の作動により、載置されたマット状苗とともに左右方向に一定ストロークで往復移動する。苗載台15の各マット状苗は、動力分配ケース10の左右両側下部と、左右の各植付伝動ケース12の左右両側下部とのそれぞれに配備したクランクアーム式の植付機構16の作動により、それらの下端部から所定量の苗が一定ピッチで順次切り取られ、左右に並設した3つの整地フロート17によって整地された圃場泥部に植え付けられる。また、各マット状苗は、苗載台15が左右の各ストローク端に到達するごとに、苗載台15の背部に配備された対応する縦送り機構18の作動により、苗載台15に対して所定ピッチで下方に縦送りされる。横送り機構、各植付機構16、および縦送り機構18は、動力分配ケース10に内装した動力分配機構(図示せず)などを介して分配伝達されるエンジン1からの作業用動力によって作動する。
【0034】
操縦部5には、平面視コの字状に形成された操縦ハンドル19などが装備されている。操縦ハンドル19は、その左右の両端部が機体後方に向けて延出する姿勢でハンドルフレーム13の上端部に連結されている。
【0035】
図3〜6に示すように、ミッションケース8の上部には、左右向きで右外方に向けて突出する入力軸20が配備されている。この入力軸20とエンジン1の出力軸6とにわたって、エンジン1からの動力をミッションケース8の入力軸20に伝達するベルト式の伝動装置21が架設されている。
【0036】
図示は省略するが、ミッションケース8の内部には、入力軸20から伝動方向下手側への伝動を断続する主クラッチ、主クラッチを介して伝達される動力を走行用と作業用とに分ける動力分配装置、動力分配装置からの走行用動力を変速する走行用変速装置、動力分配装置からの作業用動力を変速する株間変速装置、および、走行用変速装置から対応する左右の車輪3への伝動を断続する左右一対のサイドクラッチ、などが備えられている。
【0037】
ミッションケース8の左右両側下部には、横外方に向けて膨出する円筒状の伝動ケース8Aが一体形成されている。左右の各伝動ケース8Aには、対応するサイドクラッチを介して伝達される走行用動力の取り出しを可能にする走行用の出力軸22が内装されている。
【0038】
ミッションケース8の後上部には、主フレーム連結用の連結部8Bが一体形成されている。連結部8Bの中央には、株間変速装置からの作業用動力の取り出しを可能にする作業用の出力軸(図示せず)が挿通されている。
【0039】
主フレーム9は、伝動ケースとしての機能を有するように鋼管製の角パイプ材などによって構成されている。主フレーム9の前端部には、ミッションケース8の連結部8Bに対して後方からボルト連結されるフランジ9Aと、ミッションケース8の連結部8Bに対して左右の横外方からボルト連結される左右一対のブラケット9Bとが溶接されている。
【0040】
これによって、主フレーム9にフランジ9Aのみを備えてミッションケース8に連結する場合に比較して、ミッションケース8に片持ち状にボルト連結される主フレーム9を、より強固にミッションケース8に連結することができる。
【0041】
図1および図3〜6に示すように、主フレーム9の上方には予備苗台23が配備されている。予備苗台23は、機体フレーム2に立設した予備苗フレーム24によって支持されている。予備苗フレーム24は、その前下端に備えた単一の連結部24Aが、主フレーム9の左右のブラケット9Bとともに、ミッションケース8の連結部8Bにボルト連結され、かつ、その後下端に備えた左右一対の連結部(図示せず)が、動力分配ケース10の左右両側上部にボルト連結されている。
【0042】
図6および図7に示すように、ミッションケース8の左右の各出力軸22から取り出された走行用動力は、対応するスイングアーム14に内装した軸式の伝動装置25などを介して左右の車輪3に伝達される。
【0043】
各伝動装置25は、対応する走行用の出力軸22の延出端にスプライン嵌合された小径の第1ベベルギヤ26、第1ベベルギヤ26に噛合する大径の第2ベベルギヤ27、第2ベベルギヤ27がスプライン嵌合された第1伝動軸28、第1伝動軸28にスプライン継手29を介して連動連結された第2伝動軸30、第2伝動軸30の一端部に一体形成された小径の第3ベベルギヤ30Aに噛合する大径の第4ベベルギヤ31、および、第4ベベルギヤ31がスプライン嵌合された車軸32、などを備えて構成されている。つまり、各伝動装置25は、ミッションケース8からの走行用動力を、第1ベベルギヤ26と第2ベベルギヤ27とからなる減速比の小さい第1減速部33と、第3ベベルギヤ30Aと第4ベベルギヤ31とからなる減速比の大きい第2減速部34とを介して、車軸32に連結された車輪3に減速伝動するように構成されている。
【0044】
図示は省略するが、ミッションケース8の作業用出力軸から取り出された作業用動力は、主フレーム9に内装した伝動軸を介して動力分配ケース10の入力軸に伝達され、その入力軸から、動力分配ケース10に内装したトルクリミッタや作業クラッチなどを介して、動力分配ケース10の下部に左右向きに配備した植付駆動軸兼用の中継軸に伝達され、この中継軸から、その左右両端部に連結された植付機構16に伝達される一方で、チェーン式の動力分配機構を介して横送り機構や縦送り機構18などに分配され、動力分配機構の分配軸から、左右の各連結フレーム11に内装した伝動軸や、左右の各植付伝動ケース12に内装したチェーン式の伝動機構を介して、各植付伝動ケース12の下部に左右向きに配備した植付駆動軸に伝達され、各植付駆動軸から、それらの左右両端部に連結された植付機構16に伝達される。左右の各連結フレーム11は、伝動ケースとしての機能を有するように鋼管製の丸パイプ材などによって構成されている。
【0045】
図1〜8に示すように、左右の各スイングアーム14は、内装した伝動装置25とともに、ミッションケース8の各伝動ケース8Aおよび左右の走行用出力軸22の中心である左右向きの軸心X1を支点にした上下方向への揺動変位が許容されている。また、左右のスイングアーム14にわたって、それらの上下方向への相対揺動を抑制する帯状の板バネ35が架設されている。
【0046】
各スイングアーム14の揺動支点側には、左右のスイングアーム14と、スイングアーム14を揺動駆動する単一の昇降シリンダ(アクチュエータの一例)36との操作連係を可能にする連係部材37が連結されている。各連係部材37は、昇降シリンダ36のピストンロッド36Aに、ピストンロッド36Aの突端に天秤揺動可能にピン連結された上下一対の天秤アーム38や、その天秤アーム38の両端から対応する連係部材37にわたる左右の連係アーム39、などを介して操作連係されている。
【0047】
昇降シリンダ36は、エンジン1の真下に、ミッションケース8の下面よりも低い位置から連係部材37に向かう後上がり姿勢で配備されている。昇降シリンダ36には、低圧でも作動するシリンダ径の大きい単動型の油圧シリンダが採用されている。昇降シリンダ36に対する作動油の流動は、ミッションケース8に載置した制御弁40によって制御される。制御弁40は、操縦部5に備えた昇降レバー41に操作連係されている。
【0048】
この構成から、昇降レバー41を人為操作すると、その操作に応じて制御弁40が作動し、昇降シリンダ36が伸縮作動し、左右のスイングアーム14が機体フレーム2に対して上下方向に一体揺動し、左右の車輪3が機体フレーム2に対して上下方向に一体変位する。つまり、昇降レバー41の人為操作によって、各整地フロート17が圃場泥面に接地する作業位置と、各整地フロート17が圃場泥面から離間する非作業位置とにわたって、左右の車軸32を支点にして機体を圃場泥面に対して昇降変位させることができる。
【0049】
また、圃場耕盤の傾斜や起伏などに起因して、左右いずれかの車輪3に対する接地反力が増大する場合には、その増大する接地反力により、左右の車輪3が板バネ35の作用に抗して相対変位し、これにより、機体の左右方向での姿勢が水平姿勢または略水平姿勢に維持される。逆に、左右いずれかの車輪3に対する接地反力が低下する場合には、板バネ35の作用で左右の車輪3が相対変位し、これにより、機体の左右方向での姿勢が水平姿勢または略水平姿勢に維持される。つまり、左右のスイングアーム14、板バネ35、左右の連係部材37、上下一対の天秤アーム38、および左右の連係アーム39、などによって、機体の左右方向での姿勢を水平姿勢または略水平姿勢に維持するローリング機構42が構成されている。
【0050】
そして、昇降シリンダ36にシリンダ径の大きい油圧シリンダを採用したことで、昇降シリンダ36の全長を短くすることができ、その分、各スイングアーム14から延出する連係部材37の長さを長くすることができ、結果、左右のスイングアーム14を上下揺動させる際に要する駆動力を小さくすることができる。
【0051】
図5、図9および図10に示すように、ピストンロッド36Aと上下の天秤アーム38との間には、上下の天秤アーム38の揺動範囲を制限することで、機体の許容範囲以上のローリングを規制する規制機構43が介装されている。
【0052】
規制機構43は、ピストンロッド36Aの突端から相対揺動不能に延出された固定アーム44、固定アーム44の延出端に相対揺動可能にピン連結された上下一対の揺動リンク45、および、上下の天秤アーム38を一体揺動可能に連結するとともに上下の揺動リンク45の遊端に形成した長孔45Aに操通される連係ピン46、などによって、長孔45Aの長さ範囲で機体のローリングを許容するように構成されている。
【0053】
図3および図4に示すように、制御弁40は、左右中央に位置する整地フロート17の前端部に、操作アーム47や連係ロッド48などを介して操作連係されている。
【0054】
この連係構造により、制御弁40は、左右中央の整地フロート17が、予め設定した基準姿勢から後部支点周りに上昇揺動すると、その揺動に連動して、圃場泥面に対して機体を上昇させる(機体フレーム2に対して左右のスイングアーム14を下降揺動させる)上昇状態に切り換わる。逆に、左右中央の整地フロート17が基準姿勢から後部支点周りに下降揺動すると、その揺動に連動して、圃場泥面に対して機体を下降させる(機体フレーム2に対して左右のスイングアーム14を上昇揺動させる)下降状態に切り換わる。そして、それらの切り換え操作で左右中央の整地フロート17が基準姿勢に復帰すると、その復帰に伴って、圃場泥面に対して機体を昇降停止させる(機体フレーム2に対して左右のスイングアーム14を揺動停止させる)中立状態に切り換わる。
【0055】
つまり、この連係構造により、圃場泥面に対する機体の高さ位置を、圃場耕盤の起伏などにかかわらず、整地フロート17が基準姿勢となる所定の高さ位置に維持することができ、これにより、各植付機構16による苗の植え付けを、予め設定した植え付け深さで安定して行える。
【0056】
図9および図10に示すように、左右の各連係アーム39には、左右のスイングアーム14が急激に上下揺動した場合に発生する衝撃を吸収する緩衝機構49が備えられている。
【0057】
各緩衝機構49は、連係アーム39の一端部に形成した長孔39A、連係アーム39の一端部に溶接した受具39B、長孔39Aを介して連係アーム39を上下の天秤アーム38に相対揺動可能に連結する連結ピン50、受具39Bと連結ピン50とで連係アーム39に対して摺動可能に支持される摺動部材51、受具39Bと摺動部材51との間に介装される弾性ゴム52、および、摺動部材51の一端部との螺合で受具39Bに対する摺動部材51を抜け止めするナット53、などによって構成されている。そして、摺動部材51に対するナット53の螺合調節で弾性ゴム52の基準圧縮状態を設定変更することができる。
【0058】
図3〜8に示すように、左右の各スイングアーム14は、伝動ケース8Aに左右向きの軸心X1周りに相対回動可能に支持される回動部14A、回動部14Aから左右向きの軸心X1と直交する方向に延出されたアーム部14B、および、アーム部14Bの延出端に位置する車輪取り付け用の取付部14C、などを有するように形成されている。
【0059】
回動部14Aは、伝動ケース8Aの延出端に形成した被嵌合部分8aに相対回動可能に外嵌するボス54Aや、アーム部14Bがボルト連結されるフランジ54B、などが一体形成された継手部材54によって構成されている。
【0060】
アーム部14Bは、回動部14Aにボルト連結されるフランジ55Aが一端部に溶接され、取付部14Cがボルト連結されるフランジ55Bが他端部に溶接された鋼管製の丸パイプ55によって構成されている。
【0061】
取付部14Cは、アーム部14Bにボルト連結されるフランジ56Aが一体形成された第1部材56と、第1部材56にボルト連結される第2部材57とを連結して構成されている。
【0062】
伝動ケース8Aの被嵌合部分8aは、継手部材54のボス54Aを相対回動可能に外嵌支持しながら、走行用の出力軸22を相対回転可能に内嵌支持するように、肉厚の大きいものに形成されている(図7参照)。
【0063】
継手部材54は、ボス54Aに対向するボス54Cがボールベアリング58を介して走行用出力軸22に相対回動可能に支持されるとともに、走行用出力軸22の端部に螺合されたナット59によって、ボールベアリング58を介して抜け止め支持されている(図7参照)。
【0064】
つまり、ミッションケース8の伝動ケース8Aと走行用の出力軸22とで、スイングアーム14を左右向きの軸心X1周りに上下揺動可能に支持するように構成されている。これにより、各スイングアーム14を、対応する伝動ケース8Aと走行用の出力軸22による高い支持強度で支持することができる。
【0065】
図3〜10に示すように、左右の各連係部材37は、連係アーム39に連結ピン61を介して連結されるボス62Aが溶接された側面視略三角形状の板金部材62で構成されている。
【0066】
なお、左右の各連係アーム39には、対応する連係部材37の連結位置の変更を可能にする複数の連結孔39Cが形成されている(図9および図10参照)。
【0067】
各板金部材62は、高い強度を有するように底縁部を除く各縁部に補強用のリブ62Bが屈曲形成されている。そして、スイングアーム14に連結される底縁部62Cの長さが、継手部材54(回動部14A)のボス54Aに左右向きの軸心X1と直交するように形成した連係部材連結用のフランジ54Dと、丸パイプ55(アーム部14B)における一端側の機体内方側に溶接した連係部材連結用のブラケット55Cとにわたる長さを有するように形成されている。そして、その底縁部62Cの前端側に、継手部材54のフランジ54Dに対する板金部材62の機体内方側から横方向でのボルト連結を可能にする一対の第1連結孔62Dが穿設され、その底縁部62Cの後端側に、丸パイプ55のブラケット55Cに対する板金部材62の機体内方側から横方向でのボルト連結を可能にする一対の第2連結孔62Eが穿設されている。
【0068】
つまり、左右の各連係部材37は、その底縁部62Cが、対応するスイングアーム14の回動部14Aとアーム部14Bとにわたる長さを有して、それらに連結されることで、スイングアーム14の揺動支点側を補強する補強部材として機能する。これにより、スイングアーム14の回動部14Aなどに補強用のリブを新たに設けるなどの改良を施すことなく、スイングアーム14における揺動支点側の強度を向上させることができる。
【0069】
また、スイングアーム14に作用するモーメントが、連係部材37を介して回動部14Aとアーム部14Bとに分散されることから、例えば、そのモーメントが回動部14Aに集中するように構成した場合に比較して、回動部14Aとして強度の低いものを採用しても、スイングアーム14の耐久性を向上させることができる。
【0070】
図3、図7および図8に示すように、継手部材54は、アーム部連結用のフランジ54Bと連係部材連結用のフランジ54Dとが、略L字状に連なるように一連に形成されている。これにより、継手部材54に補強用のリブを新たに設けることによる形状の複雑化や、継手部材54の肉厚を大きくすることによる大型化などを招くことなく、それらのフランジ54B,54Dを分離して形成する場合に比較して、継手部材54(回動部14A)の強度を向上させることができる。
【0071】
図5〜8に示すように、継手部材54において、伝動ケース8Aの被嵌合部分8aに外嵌するボス54Aは、被嵌合部分8aに対する嵌合面積が大きくなるように、その左右向きの軸心X1に沿う方向の長さが、連係部材連結用のフランジ54Dからさらに外方(機体内方側)に向けて延出する長いものに形成されている。
【0072】
一方、伝動ケース8Aの被嵌合部分8aは、継手部材54に対する支持面積が大きくなるように、その左右向きの軸心X1に沿う方向の長さが、継手部材54におけるボス54Aのフランジ形成部分から延出端にわたる長いものに形成されている。
【0073】
そして、伝動ケース8Aの被嵌合部分8aと継手部材54のボス54Aとの間には、それらと略同じ長さを有する円筒状に形成された合成樹脂製のすべり軸受からなるブッシュ63が介装されている(図7参照)。
【0074】
つまり、左右向きの軸心X1に沿う方向の長さが長くなるように形成した伝動ケース8Aの被嵌合部分8aと継手部材54のボス54Aとが、それらと略同じ長さを有するブッシュ63を介して相対回動可能に嵌合されている。これにより、伝動ケース8Aの被嵌合部分8aと継手部材54のボス54Aとの間における嵌合面積を大きくして、それらの間におけるがたつきが効果的に抑制された安定した支持状態を得られるようにしながら、伝動ケース8Aの被嵌合部分8aと継手部材54のボス54Aとの凝着を効果的に抑制することができる。
【0075】
つまり、左右の伝動ケース8Aによる対応するスイングアーム14の支持を、より安定性の良い状態で行えるようにしながら、各スイングアーム14の左右向きの軸心X1周りでの上下揺動をより円滑に行わせることができ、結果、左右のスイングアーム14を一体的に上下揺動させる昇降操作、および、左右のスイングアーム14が相対的に上下揺動するローリング動作を円滑に行わせることができる。
【0076】
図4〜8に示すように、板バネ35の左右両端部には、丸パイプ55(アーム部14B)のブラケット55Cに、ブラケット55Cとの間に連係部材37を介装した状態で機体内方側から横方向にボルト連結される連結部35Aが屈曲形成されている。
【0077】
つまり、連係部材37と板バネ35とを、丸パイプ55(アーム部14B)のブラケット55Cに、一対のボルト64で共締め連結するように構成されている。これにより、例えば、連係部材37と板バネ35とを丸パイプ55(アーム部14B)に個別に連結する場合に比較して構成の簡素化を図ることができる。
【0078】
しかも、板バネ35を左右のスイングアーム14に対して横方向からボルト連結するように構成したことで、板バネ35の各連結部35Aに穿設した連結孔35Bの融通により、板バネ35を、その左右の平坦面部35Cを対応するスイングアーム14におけるアーム部14Bの中心に平行に沿わせた適正な連結姿勢で、左右のスイングアーム14に容易に連結することができる。
【0079】
また、板バネ35を左右のスイングアーム14に対して上下方向からボルト連結する場合に比較して、左右のスイングアーム14が相対揺動した際にボルト64に作用する捻れ力や曲げ力を大幅に軽減することができる。これにより、ボルト64の耐久性が向上し、左右の各スイングアーム14と板バネ35との連結部の信頼性が向上する。
【0080】
図3、図5、図6および図8に示すように、スイングアーム14において、回動部14Aおよび取付部14Cは、左右の双方に兼用可能な対称形状に形成されている。
【0081】
図1、図2および図5に示すように、左右の各スイングアーム14においては、その回動部14A、および、回動部14Aを相対回動可能に支持する被嵌合部分8aを備えたミッションケース8、とともに、ミッションケース8の連結部8Bに連結された主フレーム9の各フランジ9A,9Bが、車輪3の機体前側端部3aよりも機体前側に位置するように、その軸心X1から車軸32の中心X2にわたる長さLが、車輪3の半径rよりも長い長さに設定されている。
【0082】
これにより、この歩行型田植機においては、スイングアーム14の回動部14A、ミッションケース8、ミッションケース8の内部に備えた主クラッチ、動力分配装置、走行用変速装置、株間変速装置、左右一対のサイドクラッチ、ミッションケース8に連結された主フレーム9の各フランジ9A,9B、ミッションケース8に載置した制御弁40、ミッションケース8の前部に連結したエンジンフレーム7、エンジンフレーム7に搭載したエンジン1、エンジン1の出力軸6とミッションケース8の入力軸20とにわたって架設したベルト式の伝動装置21、および、エンジン1の真下に配備した昇降シリンダ36、とともに、エンジン1やミッションケース8などの上方に位置するように配備された燃料タンク65、などの重量物が、車輪3の機体前側端部3aよりも機体前側に位置することになる。
【0083】
つまり、この歩行型田植機では、苗植え付け作業の高効率化を図るために、機体後部に、作業条数が多く重量の大きい6条植え用の苗植付装置4を装備したことで、機体後部側の重量が重くなり、車軸32を中心とした機体の前後バランスが後寄りになることを考慮して、上述したようにミッションケース8などの重量物が、車輪3の機体前側端部3aよりも機体前側に位置するように配置設定しているのであり、これによって、多条化により重量化した苗植付装置4が配備される機体後部側と、ミッションケース8などの重量物が配備される機体前部側とを、車軸32を中心にして適正に均衡させることができる。
【0084】
その結果、多条化による苗植え付け作業の高効率化を図りながらも、バランスウエイトの追加装備による全体重量の増加などを招くことなく、その多条化によって機体の前後バランスが後寄りになるのを防止することができ、機体の後バランスに起因して後方からのハンドル操作が重くなることによる作業の重労働化を抑制することができる。
【0085】
図1に示すように、左右の各植付伝動ケース12には、後方に向けて延出するブラケット66が装備されている。左右のブラケット66は、それらの延出端部にわたって左右向きに横架されたフロート支点パイプ67を相対回動可能に支持する。フロート支点パイプ67には、左右方向に一定距離を隔てる3つの支持アーム68と単一の操作レバー69とが一体装備されている。そして、それらの支持アーム68の下端部に、対応する整地フロート17が上下揺動可能に連結されている。操作レバー69は、ハンドルフレーム13に装備したレバーガイド70によって操作案内され、かつ、レバーガイド70に形成した複数の被係合部(図示せず)との選択係合によって任意の操作位置に係合保持される。
【0086】
この構成から、レバーガイド70に対する操作レバー69の係合位置を選択することで、機体フレーム2に対する各整地フロート17の高さ位置、つまり、動力分配ケース10の左右両側下部と左右の各植付伝動ケース12の左右両側下部とのそれぞれに配備した植付機構16に対する各整地フロート17の高さ位置を設定変更することができ、これにより、各植付機構16による苗植え付け深さを調節することができる。
【0087】
図1に示すように、機体フレーム2の後部には左右一対の線引きマーカ71が配備されている。左右の各線引きマーカ71は、その先端部71Aが圃場泥面に突入するように機体の左右外方に向けて倒伏させた作用姿勢と、その先端部71Aが操縦ハンドル19に近接するように機体の内方に向けて起立させた格納姿勢とに、姿勢切り換え可能に構成されている。以下、その姿勢切り換え構造を図面に基づいて説明する。
【0088】
図1および図11〜14に示すように、ハンドルフレーム13の上部には、苗載台15を、その左右方向への往復移動が可能となるように支持する左右向きの支持フレーム72が装備されている。支持フレーム72の左右の各端部と、それらの端部に対応する左右のブラケット66とにわたって、第1補強フレーム73が架設されている。各第1補強フレーム73の下端部には、前後向きの支点ピン74を備えた支持プレート75が溶接されている。各支点ピン74には、対応する線引きマーカ71の基端部71Bが相対回動可能に外嵌され、かつ、その基端部71Bとの接当で、対応する線引きマーカ71の揺動範囲を、作用姿勢と格納姿勢とにわたる範囲に制限する揺動制限部材76が外嵌されている。左右の対応する支持プレート74と線引きマーカ75の基端部71B側とにわたって、引っ張りバネ77が架設されている。各引っ張りバネ77は、対応する線引きマーカ71の揺動操作に伴って、支点ピン74を越えて上下に揺動変位する。左右の各揺動制限部材76は、平面視コの字状に屈曲形成された鋼板材からなり、対応する支点ピン74に外嵌された状態では、その背面が支持フレーム72に接当して、支点ピン74を支点にした回動が阻止されている。
【0089】
一方、支持フレーム72には、左右一対の操作レバー78が対応する前後向きの支軸79を介して、その支軸79を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように連結されている。各操作レバー78は、その左右方向への揺動操作に連動して、対応する線引きマーカ71が同方向に揺動変位するように、連係ロッド80を介して対応する線引きマーカ71の基端部71Bに連係されている。各連係ロッド80は、その線引きマーカ71の基端部71Bに連係される側の端部に、対応する引っ張りバネ77の一端部が係止されている。
【0090】
この構成から、現工程での苗植え付け作業の開始前において、次工程の苗植え付け作業径路側に位置する左右いずれかの操作レバー78を、機体の左右外方に向けて揺動操作すると、その操作に連動して、次工程の苗植え付け作業径路側に位置する左右いずれかの線引きマーカ71が、格納姿勢から作用姿勢に切り換わるとともに、引っ張りバネ77の作用によって作用姿勢で保持される。これにより、現工程での苗植え付け作業の開始とともに、次工程の苗植え付け作業での走行基準線を圃場泥面に形成することができる。また、現工程での苗植え付け作業の終了とともに、次工程の苗植え付け作業径路側に位置する左右いずれかの操作レバー78を、機体の左右内方に向けて揺動操作すると、その操作に連動して、次工程の苗植え付け作業径路側に位置する左右いずれかの線引きマーカ71が、作用姿勢から格納姿勢に切り換わるとともに、引っ張りバネ77の作用によって格納姿勢で姿勢保持される。これにより、現工程の苗植え付け作業径路から次工程の苗植え付け作業径路に移行する旋回走行時には、左右の線引きマーカ71を機体側に退避させることができる。
【0091】
図11〜14に示すように、各揺動制限部材76には、前後一対の第1貫通孔76Aと第2貫通孔76Bとが穿設されている。各揺動制限部材76において、第1貫通孔76Aの穿設位置は、対応する線引きマーカ71を格納姿勢に切り換えた状態で、係止ピン81が挿通された場合に、その係止ピン81によって、対応する線引きマーカ71の格納姿勢からの揺動変位を阻止する位置に設定されている。第2貫通孔76Bの穿設位置は、係止ピン81が挿通された場合に、その係止ピン81によって対応する線引きマーカ71の揺動変位が規制されない位置に設定されている。
【0092】
つまり、移動走行時などにおいては、左右の線引きマーカ71を格納姿勢に切り換えた後、各係止ピン81を、対応する揺動制限部材76の第1貫通孔76Aに挿通し、ベーターピン82によって抜け止めすれば、移動走行時における機体の左右方向への大きな揺れなどに起因して、各線引きマーカ71が不測に格納姿勢から作用姿勢に切り換わる虞を確実に阻止することができる。また、作業走行時においては、各係止ピン81を、対応する揺動制限部材76の第2貫通孔76Bに挿通し、ベーターピン82によって抜け止めすれば、作業走行中に係止ピン81を失う虞を確実に回避することができる。
【0093】
図1および図11〜14に示すように、左右の第1補強部材73は、支持フレーム72の左右の端部および左右のブラケット66に着脱可能にボルト連結されている。これにより、この歩行型田植機において、左右の各第1補強部材73は、図15に示す第2補強部材83との付け換えを簡単に行えるように構成されている。図15に示すように、左右の各第2補強部材83は、左右の各第1補強部材73と同じ形状で、それらの下端部に支持プレート75が溶接されていないものである。また、図示は省略するが、左右の各操作レバー78は、対応する支軸79とともに、その支軸79に挿通されるベーターピン(図示せず)によって、着脱可能に支持フレーム72に抜け止めされている。
【0094】
この構成から、左右の両操作レバー78を取り外し、左右の各第1補強部材73を第2補強部材83に付け換えることで、この歩行型田植機を、左右一対の線引きマーカ71を備えるマーカ有り仕様(図1および図11〜14参照)から、左右一対の線引きマーカ71を備えないマーカ無し仕様(図15参照)に、簡単に仕様変更することができる。また、マーカ無し仕様において、線引きマーカ取り付け用の部材が残ることに起因した不必要なコストの高騰や重量の増加などを回避することができる。
【0095】
〔別実施形態〕
【0096】
〔1〕本発明は、6条植え用の歩行型田植機に限定されるものではなく、多条化が図られた歩行型田植機であれば、6条植え用以外の歩行型田植機にも適用することができる。
【0097】
〔2〕車輪3の機体前側端部3aよりも機体前側に配置される重量物の数量や、車輪3の機体前側端部3aからの離間距離などは、ミッションケース8を車輪3の機体前側端部3aよりも機体前側の位置に配置する以外は、作業条数などによって異なる苗植付装置4の重量や、車輪3の車軸32と苗植付装置4との離間距離、などに応じて種々の変更が可能である。
【0098】
〔3〕アクチュエータ36として、油圧モータあるいは電動モータや電動シリンダなどを採用するようにしてもよい。また、左右の各スイングアーム14に専用のアクチュエータ36を装備するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】歩行型田植機の全体側面図
【図2】歩行型田植機の概略全体平面図
【図3】スイングアームの操作構造を示す要部の側面図
【図4】スイングアームの操作構造を示す要部の縦断側面図
【図5】スイングアームの操作構造を示す要部の平面図
【図6】機体フレームおよびスイングアームの構成を示す要部の縦断背面図
【図7】スイングアームの構成を示す要部の横断平面図
【図8】スイングアームと連係部材と板バネの連結構造を示す要部の分解斜視図
【図9】昇降シリンダと連係部材の連係構造を示す要部の横断平面図
【図10】昇降シリンダと連係部材の連係構造を示す要部の分解斜視図
【図11】線引きマーカの操作構造を示す要部の概略縦断背面図
【図12】線引きマーカの支持構造を示す要部の縦断背面図
【図13】線引きマーカの支持構造を示す要部の側面図
【図14】線引きマーカの支持構造を示す要部の横断平面図
【図15】マーカ無し仕様に仕様変更した状態を示す要部の概略縦断背面図
【符号の説明】
【0100】
1 エンジン
2 機体フレーム
3 車輪
3a 機体前側端部
4 苗植付装置
7 エンジンフレーム
8 ミッションケース
14 連結部材
36 アクチュエータ(油圧シリンダ)
40 制御弁
65 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームの後部に苗植付装置を装備し、
前記機体フレームにおける前記苗植付装置よりも機体前側の位置に車輪を配置し、
前記車輪および前記苗植付装置に、エンジンからの動力をミッションケースを介して伝達し、
前記ミッションケースを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする歩行型田植機。
【請求項2】
前記車輪を、前記機体フレームに対する上下変位が可能となるように前記機体フレームに連結する連結部材と、
前記車輪を、前記機体フレームに対して上下方向に変位駆動するアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする請求項1に記載の歩行型田植機。
【請求項3】
前記アクチュエータとして油圧シリンダを装備し、
前記油圧シリンダに対する作動油の流動を制御する制御弁を、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行型田植機。
【請求項4】
前記エンジンを、平面視で前記アクチュエータと重なるように配置してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の歩行型田植機。
【請求項5】
前記エンジンを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の歩行型田植機。
【請求項6】
前記機体フレームにおけるエンジン支持用のエンジンフレームを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の歩行型田植機。
【請求項7】
燃料タンクを、前記車輪の機体前側端部よりも機体前側に位置するように配置してあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の歩行型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−228707(P2008−228707A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77058(P2007−77058)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】