歩行型田植機
【課題】走行速度の変更と株間の変更を容易に行うことができ、作業性を向上させることが可能な歩行型田植機を提供する。
【解決手段】軸線方向に摺動操作されることにより伝動機構7が左車輪4Lおよび右車輪4Rへ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより伝動機構7が植付装置5へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸111と、植付作業中の作業者から手が届く位置に配置され、変速操作軸111を軸線方向に摺動操作する走行変速レバー137と、植付作業中の作業者から手が届かない位置に配置され、変速操作軸111を軸線回りに回動操作する株間変速レバー135と、を具備した。
【解決手段】軸線方向に摺動操作されることにより伝動機構7が左車輪4Lおよび右車輪4Rへ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより伝動機構7が植付装置5へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸111と、植付作業中の作業者から手が届く位置に配置され、変速操作軸111を軸線方向に摺動操作する走行変速レバー137と、植付作業中の作業者から手が届かない位置に配置され、変速操作軸111を軸線回りに回動操作する株間変速レバー135と、を具備した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型田植機の技術に関する。より詳細には、本発明は、歩行型田植機の走行速度の変更および株間の変更をそれぞれ別個の操作具で切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動力を変速して車輪へ伝達する、即ち走行速度を変更するとともに、当該エンジンの駆動力を変速して植付装置へ伝達する、即ち株間を変更する伝達機構を具備する歩行型田植機は知られている。
【0003】
このような歩行型田植機の一例としては、主としてミッションケースに収容される伝達機構と、当該ミッションケースから突設される2本の変速軸と、を具備するものがある。この2本の変速軸のうち、一方の変速軸を操作することにより、走行速度を変更することが可能であり、他方の変速軸を操作することにより、株間を変更することが可能である。
【0004】
このような歩行型田植機は、当該変速軸とミッションケースとの摺動部に泥や埃等が噛み込むことによるオイル漏れの発生や、当該摺動部からミッションケース内への泥や埃等の侵入を防止する必要があった。
【0005】
歩行型田植機の他の一例として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0006】
特許文献1に記載の歩行型田植機は、ミッションケースから突出され、軸線方向に摺動操作されると走行速度を変更するとともに、軸線回りに回動操作されると株間を変更する変速軸と、作業中の作業者から操作可能な位置に配置され、変速軸を軸線方向に摺動操作する走行操作具と、作業中の作業者から操作可能な位置に配置され、変速軸を軸線回りに回動操作する株間操作具と、を具備するものである。
【0007】
このように、ミッションケースから突出される変速軸を1本にすることで、当該変速軸とミッションケースとの摺動部に泥や埃等が噛み込む可能性を減らし、オイル漏れの発生や、ミッションケース内への泥や埃等の侵入の抑制を図ることができる。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の歩行型田植機の場合、変速軸を操作するための走行操作具と株間操作具の2つの操作具が作業者の手元に配置されるため、苗の植付作業を行っている際中に、作業者は目的に応じて2つの操作具のうち、どちらの操作具を操作しなければならないかを判断し、選択した一方の操作具を握って操作する必要があったり、操作具を誤操作する可能性があったりして、操作が煩雑で作業性が悪化するという点で不利であった。
【0009】
また、特許文献1に記載の歩行型田植機が有する課題を解決する歩行型田植機の他の一例として、特許文献2に記載の技術が知られている。
【0010】
特許文献2に記載の歩行型田植機は、上下方向に操作することによって走行速度を変更するとともに、左右方向に操作することによって株間を変更する1本の変速操作具を具備するものである。
【0011】
このように、1本の変速操作具を操作することで走行速度の変更と株間の変更を行うことができるため、作業者の手元に配置される操作具の数を削減し、操作性の向上を図ることができる。
【0012】
しかし、特許文献2に記載の歩行型田植機の場合、1本の変速操作具で走行速度の変更と株間の変更を行うため、当該変速操作具の操作方法が複雑になり、作業性が悪化するという点で不利であった。特に、1つの圃場(水田)での苗の植付作業においては、作業途中に走行速度の変更を行うことはしばしばあっても、作業途中に株間の変更を行うことはほとんどない。つまり、作業途中に株間の変更を行うことがないにもかかわらず、作業者の手元で当該株間の変更が可能であるため、変速操作具の操作方法が必要以上に複雑になっているという問題があった。また、植付作業途中で回行したり苗補給をしたりするにあたって走行速度の変更および株間の変更をした場合に、作業者が当該変更前の株間を忘れることがあり、同一の圃場における作業の途中で株間が変更されるおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭59−81310号公報
【特許文献2】特開平8−214649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、走行速度の変更と株間の変更を容易かつ正確に行うことができ、作業性を向上させることが可能な歩行型田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
即ち、請求項1においては、圃場に苗を植え付ける植付装置と、エンジンから伝達される動力を変速するとともに、車輪および前記植付装置へと伝達する伝動機構と、を具備する歩行型田植機であって、軸線方向に摺動操作されることにより前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸と、植付作業中の作業者から手が届く位置に配置され、前記変速操作軸を軸線方向に摺動操作する第一操作具と、植付作業中の作業者から手が届かない位置に配置され、前記変速操作軸を軸線回りに回動操作する第二操作具と、を具備するものである。
【0017】
請求項2においては、前記変速操作軸に連動して、当該変速操作軸の軸線方向に移動する、または軸線回りに回動する指示部材と、前記指示部材の位置に基づいて前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比、および前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を表示する表示部材と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、走行速度の変更と株間の変更を容易かつ正確に行うことができ、作業性を向上させることが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す左前方斜視図。
【図2】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す右後方斜視図。
【図3】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す左側面図。
【図4】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す平面図。
【図5】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の機体を示す分解斜視図。
【図6】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の伝動機構を示すスケルトン図。
【図7】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態のミッションケースを示す展開断面図。
【図8】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速機構を示す分解斜視図。
【図9】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速機構を示す左側面断面図。
【図10】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速機構を示す平面断面図。
【図11】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速操作機構を示す分解斜視図。
【図12】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速操作機構を示す平面図。
【図13】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速操作機構を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図1から図13までを用いて本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態である歩行型田植機1の全体構成について説明する。本実施形態では4条植えの歩行型田植機1について説明する。
【0021】
図1から図6に示す如く、歩行型田植機1は、主として機体2、エンジン3、左車輪4L、右車輪4R、植付装置5、苗供給装置6、伝動機構7、センターフロート10C、左サイドフロート10L、右サイドフロート10R、変速機構11(図8参照)、変速操作機構13(図11参照)、および操作部15を具備する。
【0022】
機体2は歩行型田植機1の主たる構造体を成す部材群を指す。
図5に示す如く、機体2はエンジン台21、バンパー22、ミッションケース23、センターフレーム24、左車軸ケース25L、右車軸ケース25R、左側方フレーム26L、右側方フレーム26R、中央植え付けケース27C、左植え付けケース27L、右植え付けケース27R、左後フレーム28L、右後フレーム28Rを具備する。
なお、機体は本実施形態の機体2の如き構成に限定されない。
【0023】
エンジン台21は機体2の前部を成す部材である。本実施形態のエンジン台21は金属板を適宜折り曲げることにより製造される。
【0024】
バンパー22は機体2の前部を保護するための部材である。バンパー22はエンジン台21の前端部に固定される。
【0025】
ミッションケース23は後述する伝動機構7を構成する部材群(の一部)を収容する部材である。本実施形態のミッションケース23は鋳造品である左側部材23Lおよび右側部材23R、並びにこれらを固定するボルトを備える。
ミッションケース23の前端部はエンジン台21の後端部にボルトにより固定される。
【0026】
センターフレーム24は機体2の中央部を成す部材である。本実施形態のセンターフレーム24は前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材である。センターフレーム24の前端部はミッションケース23の後端部にボルトにより固定される。
【0027】
左車軸ケース25Lは左車輪4Lを機体2に対して概ね上下方向にスイング可能に支持し、かつ左車輪4Lを軸支する部材である。
左車軸ケース25Lの一端部(前端部)はミッションケース23の左側面(左側部材23L)に回動可能に支持され、左車軸ケース25Lの他端部は概ね左車軸ケース25Lの一端部の後方に配置される。左車軸ケース25Lの他端部(後端部)には左車輪4Lが軸支される。
【0028】
右車軸ケース25Rは右車輪4Rを機体2に対して概ね上下方向にスイング可能に支持し、かつ右車輪4Rを軸支する部材である。
右車軸ケース25Rの一端部(前端部)はミッションケース23の右側面(右側部材23R)に回動可能に支持され、右車軸ケース25Rの他端部は概ね右車軸ケース25Rの一端部の後方に配置される。右車軸ケース25Rの他端部(後端部)には右車輪4Rが軸支される。
【0029】
本実施形態の左車軸ケース25Lおよび右車軸ケース25Rは金属板にプレス加工を施すことにより細長いケース状(内部に空間が形成された形状)に成形された部材である。
【0030】
左側方フレーム26Lは機体2の左側部を成す部材であり、右側方フレーム26Rは機体2の右側部を成す部材である。
本実施形態の左側方フレーム26Lおよび右側方フレーム26Rは二本の金属製の円筒の端部を外形が概ねL字型の継手部材で連結したものである。
左側方フレーム26Lの一端部(継手部材で連結された二本の円筒のうち、一方の円筒において継手部材に固定されていない方の端部)はミッションケース23の左側面(左側部材23L)に固定され、左側方フレーム26Lの他端部(継手部材で連結された二本の円筒のうち、他方の円筒において継手部材に固定されていない方の端部)は左側方フレーム26Lの一端部の後左側方かつやや下方となる位置に配置される。
同様に、右側方フレーム26Rの一端部はミッションケース23の右側面(右側部材23R)に固定され、右側方フレーム26Rの他端部は右側方フレーム26Rの一端部の後右側方かつやや下方となる位置に配置される。
【0031】
中央植え付けケース27Cは後述する植付装置5のうち中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rを回転可能に軸支するとともにこれらに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の中央植え付けケース27Cは鋳造品であり、中央植え付けケース27Cの前端部はセンターフレーム24の後端部に固定される。
【0032】
左植え付けケース27Lは後述する植付装置5のうち左側植え付けアーム部52Lを回転可能に軸支するとともにこれに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の左植え付けケース27Lは鋳造品であり、左植え付けケース27Lの前端部は左側方フレーム26Lの他端部(後端部)に固定される。
【0033】
右植え付けケース27Rは後述する植付装置5のうち右側植え付けアーム部52Rを回転可能に軸支するとともにこれに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の右植え付けケース27Rは鋳造品であり、右植え付けケース27Rの前端部は右側方フレーム26Rの他端部(後端部)に固定される。
【0034】
左後フレーム28Lは機体2の左後部を成す部材である。
本実施形態の左後フレーム28Lは前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材であり、左後フレーム28Lの前端部は左植え付けケース27Lの後端部に固定される。
【0035】
右後フレーム28Rは機体2の右後部を成す部材である。
本実施形態の右後フレーム28Rは前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材であり、右後フレーム28Rの前端部は右植え付けケース27Rの後端部に固定される。
【0036】
図6に示すエンジン3は歩行型田植機1の駆動源である。本実施形態のエンジン3はガソリンエンジンであり、エンジン台21の上面の後部に固定される。
【0037】
図1から図4に示す左車輪4Lおよび右車輪4Rは歩行型田植機1の駆動輪である。左車輪4Lは左車軸ケース25Lの他端部(後端部)に軸支される。右車輪4Rは右車軸ケース25Rの他端部(後端部)に軸支される。
【0038】
図6に示す植付装置5は苗の植え付けを行う装置である。植付装置5は中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52L、右側植え付けアーム部52R、および図示しない駆動アームや連動アーム等を備え、クランク式の植付装置を構成している。
左側植え付けアーム部52L、中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51Rおよび右側植え付けアーム部52Rは左から順に間隔を空けて並んだ状態で、歩行型田植機1の機体2の後下部に配置される。
中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rは後述する苗供給装置6(苗載台61の前端部)の苗を所定量切り取り、苗を圃場に移植する一連の作業を行うことにより、苗を圃場に植え付ける。
【0039】
図1から図4に示す苗供給装置6は植付装置5に苗を供給する装置である。
苗供給装置6は苗載台61、縦送り装置62、横送り装置63(図6)、および予備苗台64を備える。
【0040】
苗載台61は植付装置5に供給する苗を載置する台である。苗載台61は前下がりに傾斜した載置面を有する板状の部材であり、機体2の後部の苗載台フレーム(本実施形態ではハンドルフレーム151)に左右方向に固定された上苗台レールと下苗台レール上を左右に摺動可能に載置されている。
苗載台61の載置面には苗マット(床土、レキメンマット等のマット状物の上に種子を蒔いて発芽させることにより苗の根をマット状物に絡ませたもの)が載置される。
苗載台61の前端部は中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rの上方となる位置に配置される。
【0041】
縦送り装置62は、苗載台61の前下部に配置され、載置面に載置された苗マットを苗載台61の前端部に搬送する装置である。縦送り装置62は苗載台61の載置面の反対側の面(裏面)に設けられ、載置面に突出したローラを回転駆動することにより苗マットを苗載台61の前端部に向けて搬送する。
横送り装置63は、苗載台61を左右往復駆動するものであり、苗載台61の前下方に配置されている。
【0042】
予備苗台64は苗載台61に供給するための予備苗(予備の苗マット)を載置するための台である。予備苗台64は機体2に固定され、苗載台61の前方かつ機体2の上方となる位置に配置される。
【0043】
以下では主として図6および図7を用いて伝動機構7について説明する。
伝動機構7はエンジン3において発生した駆動力(エンジン3が発生させた駆動力)を左車輪4L、右車輪4R、植付装置5および苗供給装置6に伝達するための機構(部材群)である。
図6および図7に示す如く、伝動機構7はプーリ71a・71b、ベルト71c、プーリ72a・72b、ベルト72c、主軸73、ギヤ73a・73b・73c・73d・73e・73f、変速軸74、ギヤ74a、変速ギヤ75、左サイドクラッチ軸76L、右サイドクラッチ軸76R、サイドクラッチギヤ77、ボール78L・78L・・・、ボール78R・78R・・・、左サイドクラッチシフタ79L、右サイドクラッチシフタ79R、左サイドクラッチバネ80L、右サイドクラッチバネ80R、スプロケット81L・81R、スプロケット82L・82R、チェーン83L・83R、左車軸84L、右車軸84R、株間変速軸85、ギヤ85a、第一株間ギヤ86、第二株間ギヤ87、株間変速ギヤ88、植え付けクラッチ軸89、ベベルギヤ89a、植え付けクラッチ90、中央植え付け伝動軸91、ベベルギヤ91a・91b、中央植え付けアーム軸92、ベベルギヤ92a、スプロケット92b、左植え付け伝動軸93L、右植え付け伝動軸93R、ベベルギヤ94L・94R、左後伝動軸95L、右後伝動軸95R、ベベルギヤ96L・96R、ベベルギヤ97L・97R、左植え付けアーム軸98L、右植え付けアーム軸98Rおよびベベルギヤ99L・99Rを備える。
【0044】
プーリ71aはエンジン3の本体から左側方に突出した出力軸3aの中途部に相対回転不能に固定される。
プーリ71bは油圧ポンプ8の本体から左側方に突出した入力軸8aに相対回転不能に固定される。
ベルト71cはプーリ71aおよびプーリ71bに巻回される。テンションプーリ(不図示)がバネ(不図示)の弾性力でベルト71cに押し付けられることにより、ベルト71cには所定の大きさの張力が付与される。
【0045】
エンジン3において発生した駆動力は、プーリ71a、ベルト71cおよびプーリ71bを経て油圧ポンプ8に伝達される。すなわち、エンジン3の出力軸3aが回転することにより、プーリ71a、ベルト71c、プーリ71bおよび油圧ポンプ8の入力軸8aが回転して油圧ポンプ8が駆動される。
【0046】
プーリ72aはエンジン3の出力軸3aの先端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
プーリ72bは後述する主軸73の一端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
ベルト72cはプーリ72aおよびプーリ72bに巻回される。主クラッチ機構(不図示)により、ベルト72cには所定の大きさの張力を付与することが可能である。
【0047】
主軸73はエンジン3において発生した駆動力をミッションケース23に入力するための回転軸である。主軸73はミッションケース23に回転可能に軸支される。主軸73のうち、一端部(左端部)はミッションケース23の左側方に突出し、その他の部分はミッションケース23に収容される。
【0048】
ギヤ73a・73b・73c・73d・73e・73fはいずれも主軸73に相対回転不能かつ主軸73の軸線方向(長手方向)に移動不能に固定され、ミッションケース23に収容される。
ギヤ73a・73bは歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる平歯車であり、本実施形態ではギヤ73aの歯数はギヤ73bの歯数よりも大きい。
ギヤ73c・73d・73e・73fは歩行型田植機1により植え付けられる進行方向の苗の間隔(株間)の変更に関わる歯車であり、「ギヤ73cの歯数<ギヤ73dの歯数<ギヤ73eの歯数<ギヤ73fの歯数」の関係が成立する。
【0049】
変速軸74は歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる回転軸である。変速軸74はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。
【0050】
ギヤ74aは変速軸74に相対回転不能かつ変速軸74の軸線方向に移動不能に固定される平歯車である。本実施形態では、変速軸74の右半部にギヤ74aが一体的に形成され、変速軸74の左半部にはスプライン溝が形成される。
【0051】
変速ギヤ75は歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる歯車である。変速ギヤ75は歯数の異なる二つの平歯車を同軸で積層した形状を有する。変速ギヤ75のうち歯数が小さい方の平歯車を成す部分が小ギヤ部75a、歯数が大きい方の平歯車を成す部分が大ギヤ部75bである。
変速ギヤ75には貫通孔が形成され、当該貫通孔にはスプライン溝が形成される。変速ギヤ75は変速軸74の左半部に貫装される。
変速ギヤ75の貫通孔に形成されたスプライン溝と変速軸74の左半部に形成されたスプライン溝とが係合することにより、変速ギヤ75は変速軸74に対して相対回転不能かつ変速軸74の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
【0052】
左サイドクラッチ軸76Lは左車輪4Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左サイドクラッチ軸76Lの一端部(右端部)の外周面には、左サイドクラッチ軸76Lの軸線方向(長手方向)に伸びた複数の係合溝が形成される。
左サイドクラッチ軸76Lの右半部はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。左サイドクラッチ軸76Lの左半部は左車軸ケース25Lの一端部(前端部)に回転可能に軸支され、左車軸ケース25Lに収容される。
左車軸ケース25Lは左サイドクラッチ軸76Lによりミッションケース23に回動可能に(概ね上下方向にスイング可能に)支持される。
【0053】
右サイドクラッチ軸76Rは右車輪4Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右サイドクラッチ軸76Rの一端部(左端部)の外周面には、右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向(長手方向)に伸びた複数の係合溝が形成される。
右サイドクラッチ軸76Rの左半部はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。右サイドクラッチ軸76Rの右半部は右車軸ケース25Rの一端部(前端部)に回転可能に軸支され、右車軸ケース25Rに収容される。
右車軸ケース25Rは右サイドクラッチ軸76Rによりミッションケース23に回動可能に(概ね上下方向にスイング可能に)支持される。
【0054】
左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rがミッションケース23に軸支されたとき、左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rの軸線は互いに一直線となる。また、左サイドクラッチ軸76Lの右端面と右サイドクラッチ軸76Rの左端面とが軽く当接する。
【0055】
サイドクラッチギヤ77は左車輪4Lに駆動力を伝達するか否か、並びに右車輪4Rに駆動力を伝達するか否かを切り替えるための平歯車である。
サイドクラッチギヤ77は平歯車を成す円盤状の部分および当該円盤状の部分の両端面から突出した一対のスリーブ状の部分を合わせた形状を有する。
サイドクラッチギヤ77には、当該円盤状の部分および一対のスリーブ状の部分を貫通する貫通孔が形成される。当該貫通孔には、左サイドクラッチ軸76Lの右端部および右サイドクラッチ軸76Rの左端部が挿入される。
左サイドクラッチ軸76Lの右端部および右サイドクラッチ軸76Rの左端部がサイドクラッチギヤ77の貫通孔に挿入されているとき、サイドクラッチギヤ77は左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rに対して相対回転可能であるが、左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向には移動不能である。
サイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分には、当該一対のスリーブ状の部分外周面から貫通孔まで貫通する複数の横孔が形成される。
サイドクラッチギヤ77はギヤ74aと噛合する。
【0056】
図7に示す如く、ボール78L・78L・・・およびボール78R・78R・・・は金属製の球状の部材である。
ボール78L・78L・・・はサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分に形成された複数の横孔のうち、左サイドクラッチ軸76Lの右端部に対応するものに収容される。
ボール78R・78R・・・はサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分に形成された複数の横孔のうち、右サイドクラッチ軸76Rの左端部に対応するものに収容される。
【0057】
図7に示す如く、左サイドクラッチシフタ79Lおよび右サイドクラッチシフタ79Rは概ね筒状の部材である。
左サイドクラッチシフタ79Lは左サイドクラッチ軸76Lの右半部に貫装される。左サイドクラッチ軸76Lに貫装された左サイドクラッチシフタ79Lは左サイドクラッチ軸76Lの軸線方向に移動可能である。
右サイドクラッチシフタ79Rは右サイドクラッチ軸76Rの左半部に貫装される。右サイドクラッチ軸76Rに貫装された右サイドクラッチシフタ79Rは右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向に移動可能である。
【0058】
左サイドクラッチバネ80Lは左サイドクラッチシフタ79Lを左サイドクラッチ軸76Lの右端部から離間する方向(左側方)に付勢する部材である。本実施形態の左サイドクラッチバネ80Lは巻きバネからなり、左サイドクラッチ軸76Lに嵌装される。
左サイドクラッチバネ80Lは弾性変形することにより左サイドクラッチシフタ79Lを付勢する。
【0059】
右サイドクラッチバネ80Rは右サイドクラッチシフタ79Rを右サイドクラッチ軸76Rの左端部から離間する方向(右側方)に付勢する部材である。本実施形態の右サイドクラッチバネ80Rは巻きバネからなり、右サイドクラッチ軸76Rに嵌装される。
右サイドクラッチバネ80Rは弾性変形することにより右サイドクラッチシフタ79Rを付勢する。
【0060】
図7に示す如く、左サイドクラッチシフタ79Lが左サイドクラッチバネ80Lの付勢力により左側方に移動したとき、左サイドクラッチシフタ79Lの右端部がサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に重なり、当該部分に形成された複数の横孔を塞ぐ。
その結果、当該横孔に収容されたボール78L・78L・・・は左サイドクラッチ軸76Lの右端部の外周面に形成された複数の係合溝およびサイドクラッチギヤ77に形成された複数の横孔に係合し、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77はボール78L・78L・・・により相対回転不能に連結される。
【0061】
左サイドクラッチシフタ79Lに外力を作用させることにより左サイドクラッチシフタ79Lが左サイドクラッチバネ80Lの付勢力に抗して右側方に移動したとき、左サイドクラッチシフタ79Lの右半部がサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に重なる。
しかし、左サイドクラッチシフタ79Lの右半部の内周面にはボール78L・78L・・・を収容し得る空間が形成されているため、サイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に形成された複数の横孔からボール78L・78L・・・が突出することが可能である。
その結果、当該横孔に収容されたボール78L・78L・・・は左サイドクラッチ軸76Lの右端部の外周面に形成された複数の係合溝に係合せず、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77はボール78L・78L・・・により相対回転不能に連結されない。
【0062】
このように、左サイドクラッチシフタ79Lの位置を変更する(左側方または右側方に移動させる)ことにより、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77が相対回転不能に連結されるか否か(サイドクラッチギヤ77から左サイドクラッチ軸76Lに駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0063】
右サイドクラッチシフタ79Rも同様に、右サイドクラッチシフタ79Rの位置を変更する(右側方または左側方に移動させる)ことにより、右サイドクラッチ軸76Rおよびサイドクラッチギヤ77が相対回転不能に連結されるか否か(サイドクラッチギヤ77から右サイドクラッチ軸76Rに駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0064】
スプロケット81Lは左サイドクラッチ軸76Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左車軸ケース25Lに収容される。
スプロケット82Lは後述する左車軸84Lの一端部(右端部)に相対回転不能に固定され、左車軸ケース25Lに収容される。
チェーン83Lはスプロケット81Lおよびスプロケット82Lに巻回され、左車軸ケース25Lに収容される。
【0065】
左車軸84Lは左車輪4Lを左車軸ケース25Lに軸支するための回転軸である。
左車軸84Lは左車軸ケース25Lの他端部(後端部)に回転可能に軸支され、左車軸84Lの右半部は左車軸ケース25Lに収容され、左車軸84Lの左半部は左車軸ケース25Lの左側方に突出している。
左車輪4Lは左車軸84Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
【0066】
スプロケット81Rは右サイドクラッチ軸76Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右車軸ケース25Rに収容される。
スプロケット82Rは後述する右車軸84Rの一端部(左端部)に相対回転不能に固定され、右車軸ケース25Rに収容される。
チェーン83Rはスプロケット81Rおよびスプロケット82Rに巻回され、右車軸ケース25Rに収容される。
【0067】
右車軸84Rは右車輪4Rを右車軸ケース25Rに軸支するための回転軸である。
右車軸84Rは右車軸ケース25Rの他端部(後端部)に回転可能に軸支され、右車軸84Rの左半部は右車軸ケース25Rに収容され、右車軸84Rの右半部は右車軸ケース25Rの右側方に突出している。
右車輪4Rは右車軸84Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定される。
【0068】
株間変速軸85は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる回転軸である。
株間変速軸85はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。本実施形態では、株間変速軸85の外周面にはスプライン溝が形成される。
【0069】
ギヤ85aは株間変速軸85の一端部(左端部)に相対回転不能かつ株間変速軸85の軸線方向(長手方向)に移動不能に固定される。
【0070】
第一株間ギヤ86は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。第一株間ギヤ86は大ギヤ部86aおよび小ギヤ部86bを備える。
【0071】
大ギヤ部86aは平歯車を成す円盤状の部分と、当該円盤状の部分の一方の盤面から突出したスリーブ状の部分とを合わせた形状を有する。大ギヤ部86aには、大ギヤ部86aの円盤状の部分およびスリーブ状の部分を貫通する貫通孔が形成される。また、大ギヤ部86aには、円盤状の部分の一対の盤面を貫通する複数の係合孔が形成される。
小ギヤ部86bは平歯車を成す円盤状の部分である。小ギヤ部86bには、小ギヤ部86bの円盤状の部分を貫通する貫装孔が形成される。小ギヤ部86bに形成された貫装孔には大ギヤ部86aのスリーブ状の部分が貫装され、溶接により小ギヤ部86bが大ギヤ部86aに相対回転不能に固定される。
【0072】
株間変速軸85が大ギヤ部86aに形成された貫通孔を貫通することにより、第一株間ギヤ86が株間変速軸85の略中央部に貫装される。
株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86は株間変速軸85に対して相対回転可能である。
また、株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86の左右の端部は株間変速軸85に外嵌されたリングに当接するため、第一株間ギヤ86は株間変速軸85の軸線方向に移動不能である。
株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86の大ギヤ部86aはギヤ73cに噛合する。
【0073】
第二株間ギヤ87は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。第二株間ギヤ87には、一対の盤面を貫通する貫通孔が形成される。
また、第二株間ギヤ87には、一対の盤面を貫通する複数の係合孔が形成される。
株間変速軸85が第二株間ギヤ87に形成された貫通孔を貫通することにより、第二株間ギヤ87は株間変速軸85の右端部に貫装される。
第二株間ギヤ87は株間変速軸85に対して相対回転可能かつ株間変速軸85の軸線方向に移動不能である。
株間変速軸85に貫装された第二株間ギヤ87はギヤ73fに噛合する。
【0074】
株間変速ギヤ88は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。
株間変速ギヤ88には左右一対の盤面を貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の内周面にはスプライン溝が形成される。また、株間変速ギヤ88の左右一対の盤面には、それぞれ複数の係合突起が形成される。
【0075】
株間変速軸85が株間変速ギヤ88に形成された貫通孔を貫通することにより、株間変速ギヤ88は株間変速軸85に貫装される。
株間変速ギヤ88が株間変速軸85に貫装されたとき、株間変速ギヤ88の貫通孔に形成されたスプライン溝と株間変速軸85に形成されたスプライン溝とが係合することにより、株間変速ギヤ88は株間変速軸85に対して相対回転不能かつ株間変速軸85の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
なお、株間変速ギヤ88が株間変速軸85に貫装されたとき、株間変速ギヤ88は第一株間ギヤ86および第二株間ギヤ87により挟まれる位置に配置される。
【0076】
植え付けクラッチ軸89は植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するための回転軸である。
植え付けクラッチ軸89はミッションケース23に回転可能に軸支される。
植え付けクラッチ軸89の中途部はミッションケース23に収容され、植え付けクラッチ軸89の一端部(左端部)および他端部(右端部)はそれぞれミッションケース23の左側方および右側方に突出している。
植え付けクラッチ軸89の左半部には二つのリング状の溝が互いに間隔を空けて形成され、当該二つの溝には二つのリングが外嵌される。また、植え付けクラッチ軸89の外周面において、植え付けクラッチ軸89の左半部に形成された二つのリング状の溝のうち右側の溝から植え付けクラッチ軸89の中央部までの部分にはスプライン溝が形成される。
【0077】
ベベルギヤ89aは植え付けクラッチ軸89の中途部に相対回転不能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向に移動不能に固定される。
【0078】
植え付けクラッチ90は植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するか否かを切り替えるためのクラッチである。
本実施形態の植え付けクラッチ90は植え付けクラッチギヤ90a、植え付けクラッチ爪90bおよび植え付けクラッチバネ90cを備える。
【0079】
植え付けクラッチギヤ90aは平歯車である。植え付けクラッチギヤ90aには、一対の盤面を貫通する貫通孔が形成される。植え付けクラッチギヤ90aに形成された貫通孔に植え付けクラッチ軸89を貫通することにより、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ軸89の左半部に貫装され、ミッションケース23に収容される。
植え付けクラッチ軸89に貫装された植え付けクラッチギヤ90aの右側の盤面には係合部が形成される。
植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ軸89の左半部に外嵌された二つのリングで挟まれた位置に配置され、植え付けクラッチギヤ90aの左右の盤面は当該二つのリングに当接する。従って、植え付けクラッチ軸89に貫装された植え付けクラッチギヤ90aは、植え付けクラッチ軸89に対して相対回転可能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向に移動不能である。
【0080】
植え付けクラッチ爪90bは概ね円柱形状の部材である。植え付けクラッチ爪90bには左右一対の端面を貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の内周面にはスプライン溝が形成される。
植え付けクラッチ爪90bの左側の端面には係合部が形成される。
植え付けクラッチ爪90bに形成された貫通孔に植え付けクラッチ軸89を貫通することにより、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチ軸89に貫装される。
【0081】
植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチギヤ90aの右側となる位置(植え付けクラッチギヤ90aとベベルギヤ89aとで挟まれる位置)に配置される。
また、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチ爪90bの貫通孔に形成されたスプライン溝と植え付けクラッチ軸89に形成されたスプライン溝とが係合する。
従って、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチ軸89に対して相対回転不能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
【0082】
植え付けクラッチバネ90cは植え付けクラッチ爪90bを植え付けクラッチギヤ90aに接近する方向(本実施形態では左側方)に付勢する部材である。本実施形態の植え付けクラッチバネ90cは金属製の巻きバネであり、植え付けクラッチ軸89に貫装される。
植え付けクラッチバネ90cが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチバネ90cの一端部(右端部)はベベルギヤ89aの左端面に当接し、植え付けクラッチバネ90cの他端部(左端部)は植え付けクラッチ爪90bの右側の端面に当接する。
【0083】
図7に示す如く、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチバネ90cの付勢力により左側方(植え付けクラッチギヤ90aに接近する方向)に移動したとき、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合部と植え付けクラッチ爪90bに形成された係合部とが係合し、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転不能に連結される。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bは一体的に回転することとなり、駆動力を植付装置5および苗供給装置6に伝達することが可能である。
【0084】
植え付けクラッチ爪90bに外力を加えることにより植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチバネ90cの付勢力に抗して右側方(植え付けクラッチギヤ90aから離間する方向)に移動したとき、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合部と植え付けクラッチ爪90bに形成された係合部とが係合した状態が解除され、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転可能となる。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bは一体的に回転せず、駆動力を植付装置5および苗供給装置6に伝達することはできない。
【0085】
このように、植え付けクラッチ爪90bの位置を変更する(左側方または右側方に移動させる)ことにより、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bが相対回転不能に連結されるか否か(植え付けクラッチギヤ90aから植え付けクラッチ爪90bを経て植え付けクラッチ軸89に駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0086】
中央植え付け伝動軸91は植付装置5のうち、中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
図6に示す如く、中央植え付け伝動軸91はセンターフレーム24に収容される。
中央植え付け伝動軸91の一端部(前端部)はミッションケース23の後端部に回転可能に軸支され、中央植え付け伝動軸91の他端部(後端部)は中央植え付けケース27Cの前端部に回転可能に軸支される。
【0087】
ベベルギヤ91aは中央植え付け伝動軸91の一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、ミッションケース23に収容される。ベベルギヤ91aはベベルギヤ89aに噛合する。
【0088】
ベベルギヤ91bは中央植え付け伝動軸91の他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、中央植え付けケース27Cに収容される。
【0089】
中央植え付けアーム軸92は植付装置5のうち、中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
中央植え付けアーム軸92は中央植え付けケース27Cに回転可能に軸支される。中央植え付けアーム軸92の一端部(左端部)および他端部(右端部)は中央植え付けケース27Cの左側方および右側方にそれぞれ突出している。中央植え付けアーム軸92の中途部は中央植え付けケース27Cに収容される。
中央植え付けアーム軸92の一端部(左端部)および他端部(右端部)には、それぞれ中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rが連結される。
【0090】
左植え付け伝動軸93Lは植付装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左植え付け伝動軸93Lの一端部(右端部)は植え付けクラッチ軸89の一端部(左端部)に相対回転不能に連結される。
左植え付け伝動軸93Lは左側方フレーム26Lの一端部(ミッションケース23の左側面に固定されている方の端部)から屈曲部(左側方フレーム26Lの継手部材に対応する部分)までの部分に収容される。
左植え付け伝動軸93Lの他端部(左端部)は左側方フレーム26Lの屈曲部に回転可能に軸支される。
【0091】
ベベルギヤ94Lは左植え付け伝動軸93Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左側方フレーム26Lの屈曲部に収容される。
【0092】
左後伝動軸95Lは植付装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左後伝動軸95Lのうち一端部(前端部)から中途部までの部分は左側方フレーム26Lの屈曲部から他端部(左植え付けケース27Lの前端部に固定されている方の端部)までの部分に収容され、左後伝動軸95Lのうち他端部(後端部)は左植え付けケース27Lに収容される。
左後伝動軸95Lの一端部(前端部)は左側方フレーム26Lの屈曲部に回転可能に軸支され、左後伝動軸95Lの他端部(後端部)は左植え付けケース27Lに回転可能に軸支される。
【0093】
ベベルギヤ96Lは左後伝動軸95Lの一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、左側方フレーム26Lの屈曲部に収容される。ベベルギヤ96Lはベベルギヤ94Lに噛合する。
ベベルギヤ97Lは左後伝動軸95Lの他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、左植え付けケース27Lに収容される。
【0094】
左植え付けアーム軸98Lは植付装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左植え付けアーム軸98Lは左植え付けケース27Lに回転可能に軸支される。左植え付けアーム軸98Lのうち、一端部(右端部)は左植え付けケース27Lの右側方に突出し、残りの部分は左植え付けケース27Lに収容される。
左植え付けアーム軸98Lの一端部(右端部)には、左側植え付けアーム部52Lが連結される。
【0095】
ベベルギヤ99Lは左植え付けアーム軸98Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左植え付けケース27Lに収容される。ベベルギヤ99Lはベベルギヤ97Lに噛合する。
【0096】
右植え付け伝動軸93Rは植付装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右植え付け伝動軸93Rの一端部(左端部)は植え付けクラッチ軸89の他端部(右端部)に相対回転不能に連結される。
右植え付け伝動軸93Rは右側方フレーム26Rの一端部(ミッションケース23の右側面に固定されている方の端部)から屈曲部(右側方フレーム26Rの継手部材に対応する部分)までの部分に収容される。
右植え付け伝動軸93Rの他端部(右端部)は右側方フレーム26Rの屈曲部に回転可能に軸支される。
【0097】
ベベルギヤ94Rは右植え付け伝動軸93Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右側方フレーム26Rの屈曲部に収容される。
【0098】
右後伝動軸95Rは植付装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右後伝動軸95Rのうち一端部(前端部)から中途部までの部分は右側方フレーム26Rの屈曲部から他端部(右植え付けケース27Rの前端部に固定されている方の端部)までの部分に収容され、右後伝動軸95Rのうち他端部(後端部)は右植え付けケース27Rに収容される。
右後伝動軸95Rの一端部(前端部)は右側方フレーム26Rの屈曲部に回転可能に軸支され、右後伝動軸95Rの他端部(後端部)は右植え付けケース27Rに回転可能に軸支される。
【0099】
ベベルギヤ96Rは右後伝動軸95Rの一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、右側方フレーム26Rの屈曲部に収容される。ベベルギヤ96Rはベベルギヤ94Rに噛合する。
ベベルギヤ97Rは右後伝動軸95Rの他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、右植え付けケース27Rに収容される。
【0100】
右植え付けアーム軸98Rは植付装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右植え付けアーム軸98Rは右植え付けケース27Rに回転可能に軸支される。右植え付けアーム軸98Rのうち、一端部(左端部)は右植え付けケース27Rの左側方に突出し、残りの部分は右植え付けケース27Rに収容される。
右植え付けアーム軸98Rの一端部(左端部)には、右側植え付けアーム部52Rが連結される。
【0101】
ベベルギヤ99Rは右植え付けアーム軸98Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右植え付けケース27Rに収容される。ベベルギヤ99Rはベベルギヤ97Rに噛合する。
【0102】
以下では、エンジン3から左車輪4Lまでの駆動力の伝達経路およびエンジン3から右車輪4Rまでの駆動力の伝達経路について説明する。
図6に示す如く、エンジン3において発生した駆動力は出力軸3a、プーリ72a、ベルト72c、プーリ72bを経て主軸73に伝達される。
【0103】
主軸73から変速軸74までの駆動力の伝達経路は、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更することにより変化する。
【0104】
変速ギヤ75が左から一番目の位置(最も左側となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の小ギヤ部75aがギヤ73aに噛合する。
この場合、本実施形態では「前進2速(歩行型田植機1が高速で前方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73a、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0105】
変速ギヤ75が左から二番目の位置(左から一番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の大ギヤ部75bがギヤ73bに噛合する。
この場合、本実施形態では「前進1速(歩行型田植機1が低速で前方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73b、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0106】
変速ギヤ75が左から三番目の位置(左から二番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75はギヤ73aおよびギヤ73bのいずれにも噛合しない。
この場合、本実施形態では「中立(歩行型田植機1が走行しない場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73から変速軸74に伝達されない。
【0107】
変速ギヤ75が左から四番目の位置(左から三番目の位置の右隣となる位置であり、最も右側となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の大ギヤ部75bが第一株間ギヤ86の小ギヤ部86bに噛合する。
この場合、本実施形態では「後進(歩行型田植機1が後方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73c、第一株間ギヤ86、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0108】
このように、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更する(「左から一番目の位置」から「左から四番目の位置」までの四つの位置のいずれかを選択する)ことにより、歩行型田植機1の走行および停止、走行方向(前進および後進)、並びに前進時の走行速度(前進1速および前進2速)を切り替えることが可能である。
【0109】
変速軸74に伝達された駆動力は、変速軸74からギヤ74aを経てサイドクラッチギヤ77に伝達される。
左サイドクラッチシフタ79Lが左側方に移動している場合、サイドクラッチギヤ77に伝達された駆動力はボール78L・78L・・・、左サイドクラッチ軸76L、スプロケット81L、チェーン83L、スプロケット82L、左車軸84Lを経て左車輪4Lに伝達される。
右サイドクラッチシフタ79Rが右側方に移動している場合、サイドクラッチギヤ77に伝達された駆動力はボール78R・78R・・・、右サイドクラッチ軸76R、スプロケット81R、チェーン83R、スプロケット82R、右車軸84Rを経て右車輪4Rに伝達される。
【0110】
以下では、エンジン3から植付装置5までの駆動力の伝達経路およびエンジン3から苗供給装置6までの駆動力の伝達経路について説明する。
図6に示す如く、エンジン3において発生した駆動力は出力軸3a、プーリ72a、ベルト72c、プーリ72bを経て主軸73に伝達される。
【0111】
主軸73から株間変速軸85までの駆動力の伝達経路は、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更することにより変化する。
【0112】
株間変速ギヤ88が左から一番目の位置(最も左側となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88の左側の盤面に形成された複数の係合突起が第一株間ギヤ86の大ギヤ部86aに形成された複数の係合孔に係合し、株間変速ギヤ88および第一株間ギヤ86が一体的に回転可能な状態(相対回転不能な状態)となる。
この場合、本実施形態では「株間1速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が最も大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73c、第一株間ギヤ86、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0113】
株間変速ギヤ88が左から二番目の位置(左から一番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73dに噛合する。
この場合、本実施形態では「株間2速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が二番目に大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73d、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0114】
株間変速ギヤ88が左から三番目の位置(左から二番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73c、ギヤ73d、ギヤ73eおよびギヤ73fのいずれにも噛合しない。
この場合、本実施形態では「中立(歩行型田植機1が植付装置5に駆動力を伝達しない場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73から株間変速軸85に伝達されない。
【0115】
株間変速ギヤ88が左から四番目の位置(左から三番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73eに噛合する。
この場合、本実施形態では「株間3速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が三番目に大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73e、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0116】
株間変速ギヤ88が左から五番目の位置(左から四番目の位置の右隣となる位置であって、最も右側となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88の右側の盤面に形成された複数の係合突起が第二株間ギヤ87に形成された複数の係合孔に係合し、株間変速ギヤ88および第二株間ギヤ87が一体的に回転可能な状態(相対回転不能な状態)となる。
この場合、本実施形態では「株間4速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が四番目に大きい(最も小さい)場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73f、第二株間ギヤ87、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0117】
このように、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更する(「左から一番目の位置」から「左から五番目の位置」までの五つの位置のいずれかを選択する)ことにより、歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)を切り替えることが可能である。
【0118】
植え付けクラッチ90が「入」になっている場合(植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合部と植え付けクラッチ爪90bに形成された係合部とが係合している場合)、株間変速軸85に伝達された駆動力はギヤ85a、植え付けクラッチ90を経て植え付けクラッチ軸89に伝達される。
【0119】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力はベベルギヤ89a、ベベルギヤ91a、中央植え付け伝動軸91、ベベルギヤ91b、ベベルギヤ92a、中央植え付けアーム軸92を経て中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rに伝達される。
また、中央植え付けアーム軸92に伝達された駆動力はスプロケット92bを経て苗供給装置6(縦送り装置62と横送り装置63)に伝達される。
【0120】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力は左植え付け伝動軸93L、ベベルギヤ94L、ベベルギヤ96L、左後伝動軸95L、ベベルギヤ97L、ベベルギヤ99L、左植え付けアーム軸98Lを経て左側植え付けアーム部52Lに伝達される。
【0121】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力は右植え付け伝動軸93R、ベベルギヤ94R、ベベルギヤ96R、右後伝動軸95R、ベベルギヤ97R、ベベルギヤ99R、右植え付けアーム軸98Rを経て右側植え付けアーム部52Rに伝達される。
【0122】
以下では図1から図3までを用いてセンターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rについて説明する。
センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rは歩行型田植機1に浮力を付与する(ひいては、歩行型田植機1が圃場に埋没することを防止する)ものである。
センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rは前後方向に伸びた概ね板状の部材である。センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rの内部にはそれぞれ空間が形成され、これらの空間には空気が封入される。
【0123】
図1から図3に示す如く、センターフロート10Cは機体2の左右中央かつ下方となる位置に配置される。
図1から図3に示す如く、左サイドフロート10Lは機体2の下方かつ左後寄りとなる位置に配置される。
図1から図3に示す如く、右サイドフロート10Rは機体2の下方かつ右後寄りとなる位置に配置される。
【0124】
以下では図2から図4までを用いて操作部15について説明する。
操作部15は作業者が歩行型田植機1の各部を操作するためのものである。
操作部15はハンドルフレーム151、主クラッチレバー152、左サイドクラッチレバー153L、右サイドクラッチレバー153R、植え付けクラッチレバー154、スイングレバー155、および苗取り量調整レバー156を具備する。
【0125】
ハンドルフレーム151は操作部15の主たる構造体であり、機体2の後部に固定される。
ハンドルフレーム151は下部フレーム151a、中央フレーム151b、上部フレーム151c、左側部フレーム151dおよび右側部フレーム151eを具備する。
【0126】
下部フレーム151aはハンドルフレーム151の下部を成す部材である。
中央フレーム151bはハンドルフレーム151の中央部を成す部材である。中央フレーム151bの中途部は下部フレーム151aの中央部(左右中央部)に固定される。
上部フレーム151cはハンドルフレーム151の上部を成す部材である。上部フレーム151cの中途部は中央フレーム151bの他端部に固定される。
左側部フレーム151dはハンドルフレーム151の左側部を成す部材である。左側部フレーム151dの一端部(下端部)は下部フレーム151aの一端部(左端部)に固定される。左側部フレーム151dの他端部(上端部)は上部フレーム151cに固定される。
右側部フレーム151eはハンドルフレーム151の右側部を成す部材である。右側部フレーム151eの一端部(下端部)は下部フレーム151aの他端部(右端部)に固定される。右側部フレーム151eの他端部(上端部)は上部フレーム151cに固定される。
ハンドルフレーム151は左後フレーム28L、右後フレーム28R、および中央植え付けケース27Cに固定される。
【0127】
主クラッチレバー152はエンジン3から伝動機構7へ駆動力を伝達するか否かを切り替えるためのレバーである。
主クラッチレバー152の基端部は上部フレーム151cの中途部やや左寄りとなる位置に回動可能に支持される。
主クラッチレバー152の基端部はリンク機構(不図示)を介して主クラッチ機構(不図示)に連結される。
主クラッチレバー152を「入」に操作すると、主クラッチ機構(不図示)がベルト72cに所定の大きさの張力を付与し、当該ベルト72cを介してエンジン3から伝動機構7へと駆動力が伝達される。
主クラッチレバー152を「切」に操作すると、主クラッチ機構(不図示)がベルト72cに張力を付与せず、当該ベルト72cを介してエンジン3から伝動機構7へと駆動力が伝達されない。
【0128】
左サイドクラッチレバー153Lおよび右サイドクラッチレバー153Rは歩行型田植機1の走行方向(直進、左旋回および右旋回)を操作するためのレバーである。
【0129】
左サイドクラッチレバー153Lは上部フレーム151cの左端部の下部に回動可能に支持される。
左サイドクラッチレバー153Lはリンク機構(不図示)を介して左サイドクラッチシフタ79L(より詳細には、左サイドクラッチホーク153a(図7参照))に連結される。
作業者は、左サイドクラッチレバー153Lを握った状態で保持する(左サイドクラッチレバー153Lが上方に回動した状態を保持する)ことにより、左サイドクラッチシフタ79Lを右側方に移動させ、ひいてはエンジン3から左車輪4Lへの駆動力の伝達を停止することが可能である。
【0130】
右サイドクラッチレバー153Rは上部フレーム151cの右端部の下部に回動可能に支持される。
右サイドクラッチレバー153Rはリンク機構(不図示)を介して右サイドクラッチシフタ79R(より詳細には、右サイドクラッチホーク153b(図7参照))に連結される。
作業者は、右サイドクラッチレバー153Rを握った状態で保持する(右サイドクラッチレバー153Rが上方に回動した状態を保持する)ことにより、右サイドクラッチシフタ79Rを左側方に移動させ、ひいてはエンジン3から右車輪4Rへの駆動力の伝達を停止することが可能である。
【0131】
作業者が左サイドクラッチレバー153Lおよび右サイドクラッチレバー153Rのいずれも握っていないとき、歩行型田植機1は直進することが可能である。
作業者が左サイドクラッチレバー153Lを握るとともに右サイドクラッチレバー153Rを握っていないとき、歩行型田植機1は左旋回することが可能である。
作業者が右サイドクラッチレバー153Rを握るとともに左サイドクラッチレバー153Lを握っていないとき、歩行型田植機1は右旋回することが可能である。
作業者が左サイドクラッチレバー153Lおよび右サイドクラッチレバー153Rのいずれも握っているとき、歩行型田植機1は直進することができない。
【0132】
植え付けクラッチレバー154はエンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するか否かを切り替えるレバーである。
植え付けクラッチレバー154の基端部は上部フレーム151cの中途部やや右寄りとなる位置に「植え付けクラッチレバー154の先端部が前後方向に傾倒する方向に」回動可能に支持される。
植え付けクラッチレバー154の基端部はリンク機構(不図示)を介して植え付けクラッチ90の植え付けクラッチ爪90bに連結される。より詳細には、植え付けクラッチレバー154の基端部はリンク機構(不図示)を介して植え付けクラッチホーク154a(図7参照)に連結される。
植え付けクラッチホーク154aは植え付けクラッチ90の状態を「入(エンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達させることが可能な状態)」または「切(エンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達させることができない状態)」に切り替えるための部材である。
植え付けクラッチホーク154aが植え付けクラッチ爪90bに係合しない場合、植え付けクラッチ90の状態が「入」に保持される。
植え付けクラッチホーク154aが植え付けクラッチ爪90bに係合している場合、植え付けクラッチ90の状態が「切」に保持される。
作業者は、植え付けクラッチレバー154の先端部が前方に傾倒するように植え付けクラッチレバー154を回動させる(植え付けクラッチレバー154を「入」にする)ことにより、植え付けクラッチ90の状態を「入」に保持することが可能である。
作業者は、植え付けクラッチレバー154の先端部が後方に傾倒するように植え付けクラッチレバー154を回動させる(植え付けクラッチレバー154を「切」にする)ことにより、植え付けクラッチ90の状態を「切」に保持することが可能である。
【0133】
スイングレバー155は歩行型田植機1の車高を操作するためのレバーである。
スイングレバー155の基端部は上部フレーム151cの中途部やや右寄りかつ植え付けクラッチレバー154の右隣となる位置に回動可能に支持される。
スイングレバー155の基端部はリンク機構(不図示)を介してピッチング制御機構(不図示)に連結される。
作業者は、スイングレバー155の先端部が左右方向に傾倒するようにスイングレバー155を回動させることにより、「自動スイング」、「手動スイング」、「連動スイング」のいずれかの状態に切り替えることが可能である。
【0134】
「自動スイング」はピッチング制御機構(不図示)が歩行型田植機1の車高を制御する状態である。
「手動スイング」は、作業者がスイングレバー155を操作することによる車高の調整がピッチング制御機構(不図示)による車高の制御よりも優先される状態である。
「連動スイング」は、作業者が植え付けクラッチレバー154を「入」にした場合(エンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達可能な場合)にはピッチング制御機構(不図示)が歩行型田植機1の車高を制御し、作業者が植え付けクラッチレバー154を「切」にした場合にはその操作に連動して車高を上げる状態である。
【0135】
苗取り量調整レバー156は苗取り量、すなわち中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rが苗載台61に載置されている苗マットから一回に取り出す苗の本数(一株本数)を調整するためのレバーである。
苗取り量調整レバー156の基端部は中央フレーム151bの中途部右側面に回動可能に支持される。苗取り量調整レバー156の基端部はリンク機構(不図示)を介して苗載台61の前端部(下端部)に設けられた苗取り出し板(不図示)に連結される。
作業者は、苗取り量調整レバー156の先端部が上下方向に傾倒するようにスイングレバー155を回動させることにより、苗取り量を調整することが可能である。
【0136】
以下では図8から図10までを用いて変速機構11について説明する。
変速機構11は伝動機構7における変速ギヤ75および株間変速ギヤ88の位置を変更するための機構である。
変速機構11は、変速操作軸111、係合部材112、第一走行変速アーム113、第二走行変速アーム114、走行変速フォーク軸115、走行変速フォーク116、ボール117、スプリング118、株間変速アーム119、株間変速フォーク軸120、株間変速フォーク121、ボール122及びスプリング123を備える。
【0137】
変速操作軸111は作業者による操作力を伝達するものである。変速操作軸111はオイルシール23aを介してミッションケース23(右側部材23R)の後面に形成された挿入孔から内部へと挿入される。変速操作軸111の後端部はミッションケース23から突出している。変速操作軸111はミッションケース23に軸線回りに回動可能かつ軸線方向に摺動可能に支持される。変速操作軸111の後端には左右一対の側面を有する板状部111aが形成される。
【0138】
係合部材112は前後方向に貫通孔が形成された、概ね円筒状の部材である。係合部材112の前後両端部に前後中央部よりも外径が大きくなるような一対のフランジ部が形成されて、当該係合部材112の前後一対のフランジ部間に係合溝112aが形成される。係合部材112の貫通孔には変速操作軸111が挿通される。係合部材112は、変速操作軸111に相対回転不能かつ摺動不能に支持される。
【0139】
第一走行変速アーム113は係合部材112により回動操作されるものである。第一走行変速アーム113は概ね楕円形状の主板113a、円筒部113bおよび円柱状の係合部113cを備える。主板113aは板面を上下に向けて配置される。主板113aの一端側には、円筒部113bが主板113aを上下方向に貫通するように固定される。主板113aの上面の他端側には、係合部113cが立設される。係合部113cは係合部材112の係合溝112aに係合される。
【0140】
第二走行変速アーム114は第一走行変速アーム113とともに回動するものである。第二走行変速アーム114は円柱部114aおよび概ね先細りに形成された一端を有する係合板114bを備える。円柱部114aはその軸線方向を上下方向として配置される。円柱部114aの下端には係合板114bの他端が固定される。円柱部114aの中途部はミッションケース23に回動可能に支持され、上端部(ミッションケース23により支持された部分よりも上方の部分)は第一走行変速アーム113の円筒部113bに挿通される。円柱部114aは、第一走行変速アーム113に相対回転不能かつ摺動不能に固定される。
【0141】
走行変速フォーク軸115は走行変速フォーク116を支持するものである。走行変速フォーク軸115はその軸線方向を左右方向として配置され、ミッションケース23に回動不能に支持される。走行変速フォーク軸115の外周面には複数の溝を軸線方向に所定間隔ごとに並べてなる溝部115aが形成される。
【0142】
走行変速フォーク116は変速ギヤ75と係合するものである。走行変速フォーク116は左右方向に形成される貫通孔116a、端部に概ね半円状の凹部が形成された係合部116b、および上向きに開口する正面視凹状の係合溝116cを備える。貫通孔116aに走行変速フォーク軸115が挿通されて、走行変速フォーク116が走行変速フォーク軸115に左右方向に摺動可能に支持される。係合部116bは変速ギヤ75に係合する。係合溝116cには第二走行変速アーム114の係合板114bが係合される。
【0143】
ボール117およびスプリング118は、貫通孔116aと直交するように走行変速フォーク116に形成された穴(不図示)に収容される。スプリング118はボール117を貫通孔116aに挿通された状態の走行変速フォーク軸115に向かって付勢する。ボール117の一部が走行変速フォーク116の穴から突出して、溝部115aのいずれかの溝に係合している場合、走行変速フォーク116の走行変速フォーク軸115に対する相対位置が当該位置で保持され易くなる。
【0144】
株間変速アーム119は変速操作軸111により回動操作されるとともに、前後方向に移動されるものである。株間変速アーム119は円筒部119aおよび概ね先細りに形成された一端を有する係合板119bを備える。円筒部119aはその開口部を前後方向に向けて配置される。円筒部119aの前端下側には係合板119bの他端が固定される。円筒部119aには変速操作軸111が挿通される。円筒部119aは、変速操作軸111に相対回転不能かつ摺動不能に固定される。係合板119bは一端を概ね下方に向けて配置される。
【0145】
株間変速フォーク軸120は株間変速フォーク121を支持するものである。株間変速フォーク軸120はその軸線方向を左右方向に向けて、ミッションケース23に回動不能に支持される。株間変速フォーク軸120の外周面には複数の溝を軸線方向に所定間隔ごとに並べてなる溝部120aが形成される。
【0146】
株間変速フォーク121は株間変速ギヤ88と係合するものである。株間変速フォーク121は左右方向に形成される貫通孔121a、端部に概ね半円状の凹部が形成された係合部121b、および上向きに開口する正面視凹状の係合溝121cを備える。貫通孔121aには株間変速フォーク軸120が挿通されて、株間変速フォーク121が株間変速フォーク軸120に左右方向に摺動可能に支持される。係合部121bは株間変速ギヤ88に係合する。係合溝121cには株間変速アーム119の係合板119bが係合される。
【0147】
ボール122およびスプリング123は、貫通孔121aと直交するように株間変速フォーク121に形成された穴(不図示)に収容される。スプリング123はボール122を貫通孔121aに挿通された状態の株間変速フォーク軸120に向かって付勢する。ボール122の一部が株間変速フォーク121の穴から突出して、溝部120aのいずれかの溝に係合している場合、株間変速フォーク121の株間変速フォーク軸120に対する相対位置が当該位置で保持され易くなる。
【0148】
以下では、図9及び図10を用いて変速機構11の動作態様について説明する。
まず、変速ギヤ75の位置を変更する場合について説明する。
【0149】
変速操作軸111が軸線方向(前後方向)に摺動されると、当該変速操作軸111とともに係合部材112も前後方向に移動する。
係合部材112が前後方向に移動すると、当該係合部材112とともに係合部113cも概ね前後方向に移動し、第一走行変速アーム113が円筒部113bを中心として回動する。
第一走行変速アーム113が回動すると、当該第一走行変速アーム113とともに第二走行変速アーム114も回動する。
第二走行変速アーム114が回動すると、走行変速フォーク116の係合溝116cに係合した係合板114bによって、走行変速フォーク116が走行変速フォーク軸115の軸線方向(左右方向)に摺動される。
走行変速フォーク116が左右方向に摺動すると、当該走行変速フォーク116とともに変速ギヤ75が変速軸74上を移動する。
【0150】
このように、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更することにより、歩行型田植機1の走行および停止、走行方向(前進および後進)、並びに前進時の走行速度(前進1速および前進2速)を切り替える(すなわち、走行速度を変更する)ことが可能となっている。
【0151】
なお、走行変速フォーク軸115の溝部115aの各溝は、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置(「左から一番目の位置」から「左から四番目の位置」まで)に対応する位置に形成されている。これによって、走行変速フォーク116を各位置に保持することができる。
【0152】
次に、株間変速ギヤ88の位置を変更する場合について説明する。
【0153】
変速操作軸111が軸線回りに回動されると、当該変速操作軸111とともに株間変速アーム119も円筒部119aを中心として回動する。
株間変速アーム119が回動すると、株間変速フォーク121の係合溝121cに係合した係合板119bによって、株間変速フォーク121が株間変速フォーク軸120の軸線方向(左右方向)に摺動される。
株間変速フォーク121が左右方向に摺動すると、当該株間変速フォーク121とともに株間変速ギヤ88が株間変速軸85上を移動する。
【0154】
このように、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更することにより、歩行型田植機1の株間を切り替える(変更する)ことが可能である。
【0155】
なお、株間変速フォーク軸120の溝部120aの各溝は、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置(「左から一番目の位置」から「左から五番目の位置」まで)に対応する位置に形成されている。これによって、株間変速フォーク121を各位置に保持することができる。
【0156】
また、変速操作軸111が軸線方向に摺動された場合、株間変速アーム119の係合板119bは株間変速フォーク121の係合溝121cの前後方向幅内で移動する。これによって、変速操作軸111の軸線方向位置にかかわらず係合板119bと係合溝121cとが係合し、変速操作軸111を回動操作すれば株間変速フォーク121を左右方向に摺動させることができる。
【0157】
上記の如く、変速操作軸111を操作することで、走行速度の変更および株間の変更を行うことができる。これによって、走行速度の変更および株間の変更の2つの変速を行うにもかかわらず、ミッションケース23の内部から外部へ突出させる操作軸は変速操作軸111の1本のみで足りるため、ミッションケース23の後面に形成された挿入孔において、ミッションケース23と変速操作軸111との摺動部に泥や埃等が噛み込む可能性を減らし、オイル漏れの発生や、ミッションケース内への泥や埃等の侵入の抑制を図ることができる。
【0158】
以下では図11から図13までを用いて変速操作機構13について説明する。
変速操作機構13は変速機構11における変速操作軸111を軸線方向に摺動および軸線回りに回動させるための機構である。
変速操作機構13は、走行変速レバーガイド131、変速ロッド132、ボルト133、ナット134、第二操作具としての株間変速レバー135、走行変速レバー支点部材136、第一操作具としての走行変速レバー137、座金138、スプリング139、レバーガイド座140、指示部材としての指示ピン141及び表示部材としての表示部材142を備える。
【0159】
図11に示す如く、走行変速レバーガイド131は走行変速レバー137の操作方向を作業者に示すとともに、走行変速レバー137を案内するものである。走行変速レバーガイド131は金属板や樹脂板等により形成されて、後側の板面を後上方に向けて配置される。走行変速レバーガイド131には、左右方向に亘ってガイド孔131aが形成される。走行変速レバーガイド131は中央植え付けケース27Cの上部に、縦送りケース65を介して固定される。縦送りケース65は、苗供給装置6の縦送り装置62を収容する部材である。
【0160】
図11から図13までに示す如く、変速ロッド132は作業者による操作力を変速操作軸111へと伝達するものである。変速ロッド132は、主板132a、連結板132b・132c、円柱部132d、フランジ部132e・132f及び係合溝132gを備える。
主板132aは概ね楕円形状に形成された板材である。主板132aは板面を前後に向け、長手方向を概ね左右方向に向けて配置される。
連結板132b・132cは主板132aの前面から前方に向けて突設される左右一対の板材である。一方の連結板132bは主板132aの左右中央よりも左側に、他方の連結板132cは主板132aの左右中央より右側に、それぞれ配置される。これらの左右の連結板132b・132cは、互いの間に所定間隔をとって対向するように設けられる。
円柱部132dは主板132aの後面から後方に向けて突設される概ね円柱状の部材である。円柱部132dは主板132aの左右中央に配置される。
フランジ部132e・132fは円柱部132dの後端および前後中途部に形成され、当該円柱部132dの直径よりも大きい直径を有する前後一対の円形板状の部分である。フランジ部132e・132fの間には所定間隔の隙間が設けられる。
係合溝132gはフランジ部132e・132fの間に形成される溝である。
【0161】
左右の連結板132b・132cの間には、ミッションケース23外にある変速操作軸111の板状部111aが挿入される。ボルト133が右側の連結板132c、板状部111a、左側の連結板132bに順に挿通され、連結板132bの左側方においてナット134により締結されることで、変速操作軸111と変速ロッド132とが連結される。この際、変速操作軸111と変速ロッド132の円柱部132dとが同一軸線上に配置される。
【0162】
株間変速レバー135は変速ロッド132を軸線回りに回動操作するものである。株間変速レバー135は円柱状の部材を折り曲げて形成され、その軸線方向を概ね上下方向として配置される。株間変速レバー135の下端は変速ロッド132の円柱部132dの外周面上側に固定される。株間変速レバー135の長手方向の中途部を折り曲げることにより、当該株間変速レバー135の上部は下部に対して左方に傾けられる。株間変速レバー135の上端部には作業者が握るためのグリップが装着される。株間変速レバー135は、変速ロッド132から、操作部15を用いて歩行型田植機1により苗の植付作業中で機体2の後方に位置する作業者からは手が届かず操作不可能であるものの、この作業を中断して機体2の側方(本実施形態では進行方向左方)に移動した作業者からは操作可能な位置まで延設される。作業者は歩行型田植機1の左側方(より詳細にはエンジン台21の左側方かつ左側方フレーム26Lの前方)に立って当該株間変速レバー135を操作することができる。
【0163】
本実施形態においては、株間変速レバー135が平面視においてセンターフレーム24から右方へと大きく突出しないように、当該株間変速レバー135の上部を左方に傾けている。これによって、右車軸ケース25Rが上下に回動する際に株間変速レバー135と干渉することを防止している。
なお、株間変速レバー135の形状および配置は本実施形態のものに限らず、作業者が歩行型田植機1の右側方に立って操作することができる形状および配置であっても良い。
【0164】
走行変速レバー支点部材136は作業者による操作力を変速ロッド132へと伝達するものである。走行変速レバー支点部材136は円筒部136aおよび係合板136b・136cを備える。
円筒部136aはセンターフレーム24の上面に立設される円柱状の回動支点部材24aに挿通される。回動支点部材24aはセンターフレーム24の前後中途部かつ左側に配置される。
係合板136b・136cは円筒部136aから概ね右方に向けて突設される上下一対の板材である。上側の係合板136bは円筒部136aの上端近傍に、下側の係合板136cは上側の係合板136bの下方において当該係合板136bと所定間隔をおいて対向するように、それぞれ配置される。係合板136b・136cの右端側は先細り形状に形成され、右端は概ね円形状に形成される。係合板136b・136cの右端は上下から円柱部132dを挟むようにして、係合溝132gに係合される。
【0165】
走行変速レバー137は変速ロッド132を軸線方向に操作するものである。走行変速レバー137は円柱状の部材を折り曲げて形成される。走行変速レバー137の一端(下端)は走行変速レバー支点部材136の円筒部136aの外周面後側に固定される。走行変速レバー137の他端(上端)側は走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに挿通される。走行変速レバー137、走行変速レバー支点部材136から、操作部15を用いて歩行型田植機1により苗の植付作業中で機体2の後方に位置する作業者から手が届く操作可能な位置(本実施形態においては苗載台61の前方)まで延設される。走行変速レバー137の上端部には作業者が握るためのグリップが装着される。走行変速レバー137の長手方向の中途部(走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに挿通された部分よりも前方)には、当該走行変速レバー137の外周面から一部突出するような係止部137aが形成される。
なお、走行変速レバー137の形状および配置は本実施形態のものに限らず、作業中の作業者が操作することができる形状および配置であれば良い。
【0166】
図11に示す如く、座金138は、走行変速レバー137に挿通され、当該走行変速レバー137の係止部137aに後(上)方から係止される。
スプリング139は走行変速レバー137に挿通される圧縮バネである。スプリング139は走行変速レバー137における座金138よりも上端側に配置される。
レバーガイド座140は走行変速レバー137に挿通される。レバーガイド座140は走行変速レバー137におけるスプリング139よりも上端側、かつ走行変速レバーガイド131よりも下端側に配置される。
走行変速レバーガイド131とレバーガイド座140とが当接され、スプリング139が座金138とレバーガイド座140との間で所定長さだけ縮んだ状態で走行変速レバーガイド131が固定される。これによって、スプリング139の付勢力によりレバーガイド座140が所定の力で走行変速レバーガイド131に押し付けられる。レバーガイド座140は走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに沿って形成されるガイド溝(不図示)に嵌合される。これによって、走行変速レバー137は走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに沿って移動するように案内される。
【0167】
図11から図13までに示す如く、指示ピン141は変速ロッド132の前後方向位置および軸線(円柱部132dの軸線)回りの回動位置を指示するものである。指示ピン141の一端部(右端部)はナット134の左側方からボルト133に締結される。指示ピン141の他端部(左端部)はボルト133から左方に向けて突設される。指示ピン141の左端部は右端部に比べて細く形成される。
【0168】
表示部材142は指示ピン141の動作範囲を規制するとともに、当該指示ピン141の位置を示すものである。表示部材142は、固定部と案内部とを有し、板状の部材を平面視L字状に折り曲げて形成される。固定部は、左右方向へ延長され、その前面(変速操作軸111の軸線方向と概ね垂直な面)でセンターフレームに適宜の方法により固定される。案内部は、右側面(変速操作軸111の軸線方向と概ね平行な面)が変速ロッド132と対向するように、固定部の右端から後方へ向かって延設される。案内部には、案内孔142aが左右方向に貫通するように形成される。案内孔142aには指示ピン141の左端部が挿通される。案内孔142aは側面視略矩形状に形成され、案内部の当該案内孔142aの周囲には複数の凹部が周方向に所定間隔ごとに形成される。
【0169】
以下では、図12および図13を用いて変速操作機構13の動作態様について説明する。
まず、走行変速レバー137を操作する場合について説明する。
【0170】
作業者が走行変速レバー137を左右方向に操作すると、当該走行変速レバー137の下端に固定された走行変速レバー支点部材136も回動支点部材24aを中心として回動する。
走行変速レバー支点部材136が回動すると、係合板136b・136cの右端は概ね前後方向に移動し、当該係合板136b・136cと係合する変速ロッド132も前後方向に移動する。
変速ロッド132が前後方向に移動すると、当該変速ロッド132に連結された変速操作軸111が軸線方向(前後方向)に摺動される。
【0171】
このように、走行変速レバー137を左右方向に操作することにより、変速操作軸111を前後方向に摺動することが可能であり、ひいては歩行型田植機1の走行および停止、走行方向(前進および後進)、並びに前進時の走行速度(前進1速および前進2速)を切り替えることが可能である。
【0172】
次に、株間変速レバー135を操作する場合について説明する。
【0173】
株間変速レバー135を操作する場合、まず作業者は当該株間変速レバー135を操作することが可能な位置(本実施形態では歩行型田植機1の左側方)まで移動する。
作業者が株間変速レバー135の上部を握り、変速ロッド132の軸線回りに回動操作すると、当該株間変速レバー135の下端に固定された変速ロッド132も軸線(円柱部132dの軸線)回りに回動する。
変速ロッド132が軸線回りに回動すると、当該変速ロッド132に連結された変速操作軸111が軸線回りに回動される。
【0174】
このように、株間変速レバー135を概ね上下方向に操作することにより、変速操作軸111を軸線回りに回動することが可能であり、ひいては歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)を切り替えることが可能である。
【0175】
また、表示部材142の案内孔142aの凹部は、作業者が指示ピン141の位置を認識することができるような位置に形成される。すなわち、図13に示す如く、案内孔142aの上部および下部には、それぞれ4つの凹部が前後方向に所定間隔ごとに形成される。当該4つの凹部は、前進2速、前進1速、中立、および後進に変速した際の指示ピン141の前後方向位置に対応するように形成される。また、案内孔142aの前部および後部には、それぞれ5つの凹部が上下方向に所定間隔ごとに形成される。当該5つの凹部は、株間1速、株間2速、中立、株間3速、および株間4速に変速した際の指示ピン141の上下方向位置に対応するように形成される。これによって、作業者は指示ピン141が案内孔142aのどの凹部に対応する位置に挿通されているかを目視することが可能となり、その目視結果から現在の歩行型田植機1の変速段を認識することができる。
また、本実施形態において、中立に対応する位置に形成される凹部は、その他の凹部に比べて大きく形成される。これによって、作業者は中立位置を容易に認識することができる。
【0176】
なお、変速操作機構13の構成は本実施形態のものに限らず、それぞれ独立した操作具により変速操作軸111を軸線方向に摺動させるとともに、軸線回りに回動させることができる構成、かつ走行速度を変更するための操作具を苗の植付作業中の作業者から手が届く操作可能な位置に配置するとともに、株間を変更するための操作具を苗の植付作業中の作業者から手が届かず操作不能な位置に配置する構成であれば良い。
また、指示ピン141および表示部材142の形状および配置は本実施形態のものに限らない。すなわち、指示ピン141は変速操作軸111と連動して動く構成であれば良く、表示部材142は当該指示ピン141の位置を作業者が認識できる形状及び配置であれば良い。
【0177】
以上の如く、本実施形態に係る歩行型田植機1は、圃場に苗を植え付ける植付装置5と、エンジン3から伝達される動力を変速するとともに、左車輪4Lおよび右車輪4R並びに植付装置5へと伝達する伝動機構7と、を具備する歩行型田植機1であって、軸線方向に摺動操作されることにより伝動機構7が左車輪4Lおよび右車輪4Rへ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより伝動機構7が植付装置5へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸111と、作業中の作業者から操作可能な位置に配置され、変速操作軸111を軸線方向に摺動操作する走行変速レバー(第一操作具)137と、作業中の作業者から操作不可能な位置に配置され、変速操作軸111を軸線回りに回動操作する株間変速レバー(第二操作具)135と、を具備するものである。
このように構成することにより、走行速度の変更と株間の変更を容易かつ正確に行うことができ、作業性を向上させることが可能である。
すなわち、作業者は走行変速レバー137を左右方向に操作するだけで走行速度を変更することができる。また、作業者は歩行型田植機1の左側方に移動し、株間変速レバー135を上下方向に操作するだけで株間を変更することができる。このように、1つの圃場での作業において使用する頻度が低い株間変速レバー135を作業中の作業者から手が届かない操作不能な位置に配置するとともに、使用する頻度が高い走行変速レバー137を作業中の作業者から手が届く操作可能な位置に配置することで、作業者は作業中に走行速度を変更する際に迷わず走行変速レバー137を操作することができ、誤操作を防止することが可能であるとともに、作業性を向上させることが可能となる。
また、走行速度の変更と株間の変更を別個の操作具(走行変速レバー137および株間変速レバー135)により行うことで、各操作具の操作方法を簡素化することができ、作業性を向上させることが可能となる。さらに、各操作具の動作が独立しているため、走行速度を変更する際に株間を変更する必要がなく、また株間を変更する際に走行速度を変更する必要がないため、不要な変速操作を無くして各部品(例えば、変速ギヤ75、株間変速ギヤ88等)の摩耗や劣化を抑制することが可能となる。
また、操作頻度が低い株間変速レバー135を作業中の作業者から操作不能な位置に配置することで、作業者の手元(作業中の作業者から操作可能な範囲)の省スペース化を図ることが可能である。
また、2つの操作具(走行変速レバー137および株間変速レバー135)によって走行速度および株間の変更を行うにもかかわらず、ミッションケース23から突出させる操作軸は変速操作軸111の1本のみで足りるため、当該変速操作軸111とミッションケース23との摺動部に泥や埃等が噛み込む可能性を減らし、オイル漏れの発生や、ミッションケース内への泥や埃等の侵入の抑制を図ることが可能である。
【0178】
また、歩行型田植機1は、変速操作軸111に連動して、当該変速操作軸111の軸線方向に移動する、または軸線回りに回動する指示ピン141(指示部材)と、指示ピン141の位置に基づいて伝動機構7が左車輪4Lおよび右車輪4Rへ伝達する動力の変速比、並びに伝動機構7が植付装置5へ伝達する動力の変速比を表示する表示部材142と、を具備するものである。
このように構成することにより、指示ピン141の位置を表示部材142により確認して、左車輪4Lおよび右車輪4R並びに植付装置5へ伝達される動力の変速比を容易に確認することが可能であり、ひいては作業性を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0179】
1 歩行型田植機
2 機体
3 エンジン
4L 左車輪(車輪)
4R 右車輪(車輪)
5 植付装置
6 苗供給装置
7 伝動機構
11 変速機構
13 変速操作機構
111 変速操作軸
135 株間変速レバー(第二操作具)
137 走行変速レバー(第一操作具)
141 指示ピン(指示部材)
142 表示部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型田植機の技術に関する。より詳細には、本発明は、歩行型田植機の走行速度の変更および株間の変更をそれぞれ別個の操作具で切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動力を変速して車輪へ伝達する、即ち走行速度を変更するとともに、当該エンジンの駆動力を変速して植付装置へ伝達する、即ち株間を変更する伝達機構を具備する歩行型田植機は知られている。
【0003】
このような歩行型田植機の一例としては、主としてミッションケースに収容される伝達機構と、当該ミッションケースから突設される2本の変速軸と、を具備するものがある。この2本の変速軸のうち、一方の変速軸を操作することにより、走行速度を変更することが可能であり、他方の変速軸を操作することにより、株間を変更することが可能である。
【0004】
このような歩行型田植機は、当該変速軸とミッションケースとの摺動部に泥や埃等が噛み込むことによるオイル漏れの発生や、当該摺動部からミッションケース内への泥や埃等の侵入を防止する必要があった。
【0005】
歩行型田植機の他の一例として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0006】
特許文献1に記載の歩行型田植機は、ミッションケースから突出され、軸線方向に摺動操作されると走行速度を変更するとともに、軸線回りに回動操作されると株間を変更する変速軸と、作業中の作業者から操作可能な位置に配置され、変速軸を軸線方向に摺動操作する走行操作具と、作業中の作業者から操作可能な位置に配置され、変速軸を軸線回りに回動操作する株間操作具と、を具備するものである。
【0007】
このように、ミッションケースから突出される変速軸を1本にすることで、当該変速軸とミッションケースとの摺動部に泥や埃等が噛み込む可能性を減らし、オイル漏れの発生や、ミッションケース内への泥や埃等の侵入の抑制を図ることができる。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の歩行型田植機の場合、変速軸を操作するための走行操作具と株間操作具の2つの操作具が作業者の手元に配置されるため、苗の植付作業を行っている際中に、作業者は目的に応じて2つの操作具のうち、どちらの操作具を操作しなければならないかを判断し、選択した一方の操作具を握って操作する必要があったり、操作具を誤操作する可能性があったりして、操作が煩雑で作業性が悪化するという点で不利であった。
【0009】
また、特許文献1に記載の歩行型田植機が有する課題を解決する歩行型田植機の他の一例として、特許文献2に記載の技術が知られている。
【0010】
特許文献2に記載の歩行型田植機は、上下方向に操作することによって走行速度を変更するとともに、左右方向に操作することによって株間を変更する1本の変速操作具を具備するものである。
【0011】
このように、1本の変速操作具を操作することで走行速度の変更と株間の変更を行うことができるため、作業者の手元に配置される操作具の数を削減し、操作性の向上を図ることができる。
【0012】
しかし、特許文献2に記載の歩行型田植機の場合、1本の変速操作具で走行速度の変更と株間の変更を行うため、当該変速操作具の操作方法が複雑になり、作業性が悪化するという点で不利であった。特に、1つの圃場(水田)での苗の植付作業においては、作業途中に走行速度の変更を行うことはしばしばあっても、作業途中に株間の変更を行うことはほとんどない。つまり、作業途中に株間の変更を行うことがないにもかかわらず、作業者の手元で当該株間の変更が可能であるため、変速操作具の操作方法が必要以上に複雑になっているという問題があった。また、植付作業途中で回行したり苗補給をしたりするにあたって走行速度の変更および株間の変更をした場合に、作業者が当該変更前の株間を忘れることがあり、同一の圃場における作業の途中で株間が変更されるおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭59−81310号公報
【特許文献2】特開平8−214649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、走行速度の変更と株間の変更を容易かつ正確に行うことができ、作業性を向上させることが可能な歩行型田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
即ち、請求項1においては、圃場に苗を植え付ける植付装置と、エンジンから伝達される動力を変速するとともに、車輪および前記植付装置へと伝達する伝動機構と、を具備する歩行型田植機であって、軸線方向に摺動操作されることにより前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸と、植付作業中の作業者から手が届く位置に配置され、前記変速操作軸を軸線方向に摺動操作する第一操作具と、植付作業中の作業者から手が届かない位置に配置され、前記変速操作軸を軸線回りに回動操作する第二操作具と、を具備するものである。
【0017】
請求項2においては、前記変速操作軸に連動して、当該変速操作軸の軸線方向に移動する、または軸線回りに回動する指示部材と、前記指示部材の位置に基づいて前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比、および前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を表示する表示部材と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、走行速度の変更と株間の変更を容易かつ正確に行うことができ、作業性を向上させることが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す左前方斜視図。
【図2】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す右後方斜視図。
【図3】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す左側面図。
【図4】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す平面図。
【図5】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の機体を示す分解斜視図。
【図6】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の伝動機構を示すスケルトン図。
【図7】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態のミッションケースを示す展開断面図。
【図8】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速機構を示す分解斜視図。
【図9】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速機構を示す左側面断面図。
【図10】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速機構を示す平面断面図。
【図11】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速操作機構を示す分解斜視図。
【図12】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速操作機構を示す平面図。
【図13】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の変速操作機構を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図1から図13までを用いて本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態である歩行型田植機1の全体構成について説明する。本実施形態では4条植えの歩行型田植機1について説明する。
【0021】
図1から図6に示す如く、歩行型田植機1は、主として機体2、エンジン3、左車輪4L、右車輪4R、植付装置5、苗供給装置6、伝動機構7、センターフロート10C、左サイドフロート10L、右サイドフロート10R、変速機構11(図8参照)、変速操作機構13(図11参照)、および操作部15を具備する。
【0022】
機体2は歩行型田植機1の主たる構造体を成す部材群を指す。
図5に示す如く、機体2はエンジン台21、バンパー22、ミッションケース23、センターフレーム24、左車軸ケース25L、右車軸ケース25R、左側方フレーム26L、右側方フレーム26R、中央植え付けケース27C、左植え付けケース27L、右植え付けケース27R、左後フレーム28L、右後フレーム28Rを具備する。
なお、機体は本実施形態の機体2の如き構成に限定されない。
【0023】
エンジン台21は機体2の前部を成す部材である。本実施形態のエンジン台21は金属板を適宜折り曲げることにより製造される。
【0024】
バンパー22は機体2の前部を保護するための部材である。バンパー22はエンジン台21の前端部に固定される。
【0025】
ミッションケース23は後述する伝動機構7を構成する部材群(の一部)を収容する部材である。本実施形態のミッションケース23は鋳造品である左側部材23Lおよび右側部材23R、並びにこれらを固定するボルトを備える。
ミッションケース23の前端部はエンジン台21の後端部にボルトにより固定される。
【0026】
センターフレーム24は機体2の中央部を成す部材である。本実施形態のセンターフレーム24は前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材である。センターフレーム24の前端部はミッションケース23の後端部にボルトにより固定される。
【0027】
左車軸ケース25Lは左車輪4Lを機体2に対して概ね上下方向にスイング可能に支持し、かつ左車輪4Lを軸支する部材である。
左車軸ケース25Lの一端部(前端部)はミッションケース23の左側面(左側部材23L)に回動可能に支持され、左車軸ケース25Lの他端部は概ね左車軸ケース25Lの一端部の後方に配置される。左車軸ケース25Lの他端部(後端部)には左車輪4Lが軸支される。
【0028】
右車軸ケース25Rは右車輪4Rを機体2に対して概ね上下方向にスイング可能に支持し、かつ右車輪4Rを軸支する部材である。
右車軸ケース25Rの一端部(前端部)はミッションケース23の右側面(右側部材23R)に回動可能に支持され、右車軸ケース25Rの他端部は概ね右車軸ケース25Rの一端部の後方に配置される。右車軸ケース25Rの他端部(後端部)には右車輪4Rが軸支される。
【0029】
本実施形態の左車軸ケース25Lおよび右車軸ケース25Rは金属板にプレス加工を施すことにより細長いケース状(内部に空間が形成された形状)に成形された部材である。
【0030】
左側方フレーム26Lは機体2の左側部を成す部材であり、右側方フレーム26Rは機体2の右側部を成す部材である。
本実施形態の左側方フレーム26Lおよび右側方フレーム26Rは二本の金属製の円筒の端部を外形が概ねL字型の継手部材で連結したものである。
左側方フレーム26Lの一端部(継手部材で連結された二本の円筒のうち、一方の円筒において継手部材に固定されていない方の端部)はミッションケース23の左側面(左側部材23L)に固定され、左側方フレーム26Lの他端部(継手部材で連結された二本の円筒のうち、他方の円筒において継手部材に固定されていない方の端部)は左側方フレーム26Lの一端部の後左側方かつやや下方となる位置に配置される。
同様に、右側方フレーム26Rの一端部はミッションケース23の右側面(右側部材23R)に固定され、右側方フレーム26Rの他端部は右側方フレーム26Rの一端部の後右側方かつやや下方となる位置に配置される。
【0031】
中央植え付けケース27Cは後述する植付装置5のうち中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rを回転可能に軸支するとともにこれらに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の中央植え付けケース27Cは鋳造品であり、中央植え付けケース27Cの前端部はセンターフレーム24の後端部に固定される。
【0032】
左植え付けケース27Lは後述する植付装置5のうち左側植え付けアーム部52Lを回転可能に軸支するとともにこれに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の左植え付けケース27Lは鋳造品であり、左植え付けケース27Lの前端部は左側方フレーム26Lの他端部(後端部)に固定される。
【0033】
右植え付けケース27Rは後述する植付装置5のうち右側植え付けアーム部52Rを回転可能に軸支するとともにこれに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の右植え付けケース27Rは鋳造品であり、右植え付けケース27Rの前端部は右側方フレーム26Rの他端部(後端部)に固定される。
【0034】
左後フレーム28Lは機体2の左後部を成す部材である。
本実施形態の左後フレーム28Lは前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材であり、左後フレーム28Lの前端部は左植え付けケース27Lの後端部に固定される。
【0035】
右後フレーム28Rは機体2の右後部を成す部材である。
本実施形態の右後フレーム28Rは前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材であり、右後フレーム28Rの前端部は右植え付けケース27Rの後端部に固定される。
【0036】
図6に示すエンジン3は歩行型田植機1の駆動源である。本実施形態のエンジン3はガソリンエンジンであり、エンジン台21の上面の後部に固定される。
【0037】
図1から図4に示す左車輪4Lおよび右車輪4Rは歩行型田植機1の駆動輪である。左車輪4Lは左車軸ケース25Lの他端部(後端部)に軸支される。右車輪4Rは右車軸ケース25Rの他端部(後端部)に軸支される。
【0038】
図6に示す植付装置5は苗の植え付けを行う装置である。植付装置5は中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52L、右側植え付けアーム部52R、および図示しない駆動アームや連動アーム等を備え、クランク式の植付装置を構成している。
左側植え付けアーム部52L、中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51Rおよび右側植え付けアーム部52Rは左から順に間隔を空けて並んだ状態で、歩行型田植機1の機体2の後下部に配置される。
中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rは後述する苗供給装置6(苗載台61の前端部)の苗を所定量切り取り、苗を圃場に移植する一連の作業を行うことにより、苗を圃場に植え付ける。
【0039】
図1から図4に示す苗供給装置6は植付装置5に苗を供給する装置である。
苗供給装置6は苗載台61、縦送り装置62、横送り装置63(図6)、および予備苗台64を備える。
【0040】
苗載台61は植付装置5に供給する苗を載置する台である。苗載台61は前下がりに傾斜した載置面を有する板状の部材であり、機体2の後部の苗載台フレーム(本実施形態ではハンドルフレーム151)に左右方向に固定された上苗台レールと下苗台レール上を左右に摺動可能に載置されている。
苗載台61の載置面には苗マット(床土、レキメンマット等のマット状物の上に種子を蒔いて発芽させることにより苗の根をマット状物に絡ませたもの)が載置される。
苗載台61の前端部は中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rの上方となる位置に配置される。
【0041】
縦送り装置62は、苗載台61の前下部に配置され、載置面に載置された苗マットを苗載台61の前端部に搬送する装置である。縦送り装置62は苗載台61の載置面の反対側の面(裏面)に設けられ、載置面に突出したローラを回転駆動することにより苗マットを苗載台61の前端部に向けて搬送する。
横送り装置63は、苗載台61を左右往復駆動するものであり、苗載台61の前下方に配置されている。
【0042】
予備苗台64は苗載台61に供給するための予備苗(予備の苗マット)を載置するための台である。予備苗台64は機体2に固定され、苗載台61の前方かつ機体2の上方となる位置に配置される。
【0043】
以下では主として図6および図7を用いて伝動機構7について説明する。
伝動機構7はエンジン3において発生した駆動力(エンジン3が発生させた駆動力)を左車輪4L、右車輪4R、植付装置5および苗供給装置6に伝達するための機構(部材群)である。
図6および図7に示す如く、伝動機構7はプーリ71a・71b、ベルト71c、プーリ72a・72b、ベルト72c、主軸73、ギヤ73a・73b・73c・73d・73e・73f、変速軸74、ギヤ74a、変速ギヤ75、左サイドクラッチ軸76L、右サイドクラッチ軸76R、サイドクラッチギヤ77、ボール78L・78L・・・、ボール78R・78R・・・、左サイドクラッチシフタ79L、右サイドクラッチシフタ79R、左サイドクラッチバネ80L、右サイドクラッチバネ80R、スプロケット81L・81R、スプロケット82L・82R、チェーン83L・83R、左車軸84L、右車軸84R、株間変速軸85、ギヤ85a、第一株間ギヤ86、第二株間ギヤ87、株間変速ギヤ88、植え付けクラッチ軸89、ベベルギヤ89a、植え付けクラッチ90、中央植え付け伝動軸91、ベベルギヤ91a・91b、中央植え付けアーム軸92、ベベルギヤ92a、スプロケット92b、左植え付け伝動軸93L、右植え付け伝動軸93R、ベベルギヤ94L・94R、左後伝動軸95L、右後伝動軸95R、ベベルギヤ96L・96R、ベベルギヤ97L・97R、左植え付けアーム軸98L、右植え付けアーム軸98Rおよびベベルギヤ99L・99Rを備える。
【0044】
プーリ71aはエンジン3の本体から左側方に突出した出力軸3aの中途部に相対回転不能に固定される。
プーリ71bは油圧ポンプ8の本体から左側方に突出した入力軸8aに相対回転不能に固定される。
ベルト71cはプーリ71aおよびプーリ71bに巻回される。テンションプーリ(不図示)がバネ(不図示)の弾性力でベルト71cに押し付けられることにより、ベルト71cには所定の大きさの張力が付与される。
【0045】
エンジン3において発生した駆動力は、プーリ71a、ベルト71cおよびプーリ71bを経て油圧ポンプ8に伝達される。すなわち、エンジン3の出力軸3aが回転することにより、プーリ71a、ベルト71c、プーリ71bおよび油圧ポンプ8の入力軸8aが回転して油圧ポンプ8が駆動される。
【0046】
プーリ72aはエンジン3の出力軸3aの先端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
プーリ72bは後述する主軸73の一端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
ベルト72cはプーリ72aおよびプーリ72bに巻回される。主クラッチ機構(不図示)により、ベルト72cには所定の大きさの張力を付与することが可能である。
【0047】
主軸73はエンジン3において発生した駆動力をミッションケース23に入力するための回転軸である。主軸73はミッションケース23に回転可能に軸支される。主軸73のうち、一端部(左端部)はミッションケース23の左側方に突出し、その他の部分はミッションケース23に収容される。
【0048】
ギヤ73a・73b・73c・73d・73e・73fはいずれも主軸73に相対回転不能かつ主軸73の軸線方向(長手方向)に移動不能に固定され、ミッションケース23に収容される。
ギヤ73a・73bは歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる平歯車であり、本実施形態ではギヤ73aの歯数はギヤ73bの歯数よりも大きい。
ギヤ73c・73d・73e・73fは歩行型田植機1により植え付けられる進行方向の苗の間隔(株間)の変更に関わる歯車であり、「ギヤ73cの歯数<ギヤ73dの歯数<ギヤ73eの歯数<ギヤ73fの歯数」の関係が成立する。
【0049】
変速軸74は歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる回転軸である。変速軸74はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。
【0050】
ギヤ74aは変速軸74に相対回転不能かつ変速軸74の軸線方向に移動不能に固定される平歯車である。本実施形態では、変速軸74の右半部にギヤ74aが一体的に形成され、変速軸74の左半部にはスプライン溝が形成される。
【0051】
変速ギヤ75は歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる歯車である。変速ギヤ75は歯数の異なる二つの平歯車を同軸で積層した形状を有する。変速ギヤ75のうち歯数が小さい方の平歯車を成す部分が小ギヤ部75a、歯数が大きい方の平歯車を成す部分が大ギヤ部75bである。
変速ギヤ75には貫通孔が形成され、当該貫通孔にはスプライン溝が形成される。変速ギヤ75は変速軸74の左半部に貫装される。
変速ギヤ75の貫通孔に形成されたスプライン溝と変速軸74の左半部に形成されたスプライン溝とが係合することにより、変速ギヤ75は変速軸74に対して相対回転不能かつ変速軸74の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
【0052】
左サイドクラッチ軸76Lは左車輪4Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左サイドクラッチ軸76Lの一端部(右端部)の外周面には、左サイドクラッチ軸76Lの軸線方向(長手方向)に伸びた複数の係合溝が形成される。
左サイドクラッチ軸76Lの右半部はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。左サイドクラッチ軸76Lの左半部は左車軸ケース25Lの一端部(前端部)に回転可能に軸支され、左車軸ケース25Lに収容される。
左車軸ケース25Lは左サイドクラッチ軸76Lによりミッションケース23に回動可能に(概ね上下方向にスイング可能に)支持される。
【0053】
右サイドクラッチ軸76Rは右車輪4Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右サイドクラッチ軸76Rの一端部(左端部)の外周面には、右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向(長手方向)に伸びた複数の係合溝が形成される。
右サイドクラッチ軸76Rの左半部はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。右サイドクラッチ軸76Rの右半部は右車軸ケース25Rの一端部(前端部)に回転可能に軸支され、右車軸ケース25Rに収容される。
右車軸ケース25Rは右サイドクラッチ軸76Rによりミッションケース23に回動可能に(概ね上下方向にスイング可能に)支持される。
【0054】
左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rがミッションケース23に軸支されたとき、左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rの軸線は互いに一直線となる。また、左サイドクラッチ軸76Lの右端面と右サイドクラッチ軸76Rの左端面とが軽く当接する。
【0055】
サイドクラッチギヤ77は左車輪4Lに駆動力を伝達するか否か、並びに右車輪4Rに駆動力を伝達するか否かを切り替えるための平歯車である。
サイドクラッチギヤ77は平歯車を成す円盤状の部分および当該円盤状の部分の両端面から突出した一対のスリーブ状の部分を合わせた形状を有する。
サイドクラッチギヤ77には、当該円盤状の部分および一対のスリーブ状の部分を貫通する貫通孔が形成される。当該貫通孔には、左サイドクラッチ軸76Lの右端部および右サイドクラッチ軸76Rの左端部が挿入される。
左サイドクラッチ軸76Lの右端部および右サイドクラッチ軸76Rの左端部がサイドクラッチギヤ77の貫通孔に挿入されているとき、サイドクラッチギヤ77は左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rに対して相対回転可能であるが、左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向には移動不能である。
サイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分には、当該一対のスリーブ状の部分外周面から貫通孔まで貫通する複数の横孔が形成される。
サイドクラッチギヤ77はギヤ74aと噛合する。
【0056】
図7に示す如く、ボール78L・78L・・・およびボール78R・78R・・・は金属製の球状の部材である。
ボール78L・78L・・・はサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分に形成された複数の横孔のうち、左サイドクラッチ軸76Lの右端部に対応するものに収容される。
ボール78R・78R・・・はサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分に形成された複数の横孔のうち、右サイドクラッチ軸76Rの左端部に対応するものに収容される。
【0057】
図7に示す如く、左サイドクラッチシフタ79Lおよび右サイドクラッチシフタ79Rは概ね筒状の部材である。
左サイドクラッチシフタ79Lは左サイドクラッチ軸76Lの右半部に貫装される。左サイドクラッチ軸76Lに貫装された左サイドクラッチシフタ79Lは左サイドクラッチ軸76Lの軸線方向に移動可能である。
右サイドクラッチシフタ79Rは右サイドクラッチ軸76Rの左半部に貫装される。右サイドクラッチ軸76Rに貫装された右サイドクラッチシフタ79Rは右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向に移動可能である。
【0058】
左サイドクラッチバネ80Lは左サイドクラッチシフタ79Lを左サイドクラッチ軸76Lの右端部から離間する方向(左側方)に付勢する部材である。本実施形態の左サイドクラッチバネ80Lは巻きバネからなり、左サイドクラッチ軸76Lに嵌装される。
左サイドクラッチバネ80Lは弾性変形することにより左サイドクラッチシフタ79Lを付勢する。
【0059】
右サイドクラッチバネ80Rは右サイドクラッチシフタ79Rを右サイドクラッチ軸76Rの左端部から離間する方向(右側方)に付勢する部材である。本実施形態の右サイドクラッチバネ80Rは巻きバネからなり、右サイドクラッチ軸76Rに嵌装される。
右サイドクラッチバネ80Rは弾性変形することにより右サイドクラッチシフタ79Rを付勢する。
【0060】
図7に示す如く、左サイドクラッチシフタ79Lが左サイドクラッチバネ80Lの付勢力により左側方に移動したとき、左サイドクラッチシフタ79Lの右端部がサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に重なり、当該部分に形成された複数の横孔を塞ぐ。
その結果、当該横孔に収容されたボール78L・78L・・・は左サイドクラッチ軸76Lの右端部の外周面に形成された複数の係合溝およびサイドクラッチギヤ77に形成された複数の横孔に係合し、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77はボール78L・78L・・・により相対回転不能に連結される。
【0061】
左サイドクラッチシフタ79Lに外力を作用させることにより左サイドクラッチシフタ79Lが左サイドクラッチバネ80Lの付勢力に抗して右側方に移動したとき、左サイドクラッチシフタ79Lの右半部がサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に重なる。
しかし、左サイドクラッチシフタ79Lの右半部の内周面にはボール78L・78L・・・を収容し得る空間が形成されているため、サイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に形成された複数の横孔からボール78L・78L・・・が突出することが可能である。
その結果、当該横孔に収容されたボール78L・78L・・・は左サイドクラッチ軸76Lの右端部の外周面に形成された複数の係合溝に係合せず、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77はボール78L・78L・・・により相対回転不能に連結されない。
【0062】
このように、左サイドクラッチシフタ79Lの位置を変更する(左側方または右側方に移動させる)ことにより、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77が相対回転不能に連結されるか否か(サイドクラッチギヤ77から左サイドクラッチ軸76Lに駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0063】
右サイドクラッチシフタ79Rも同様に、右サイドクラッチシフタ79Rの位置を変更する(右側方または左側方に移動させる)ことにより、右サイドクラッチ軸76Rおよびサイドクラッチギヤ77が相対回転不能に連結されるか否か(サイドクラッチギヤ77から右サイドクラッチ軸76Rに駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0064】
スプロケット81Lは左サイドクラッチ軸76Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左車軸ケース25Lに収容される。
スプロケット82Lは後述する左車軸84Lの一端部(右端部)に相対回転不能に固定され、左車軸ケース25Lに収容される。
チェーン83Lはスプロケット81Lおよびスプロケット82Lに巻回され、左車軸ケース25Lに収容される。
【0065】
左車軸84Lは左車輪4Lを左車軸ケース25Lに軸支するための回転軸である。
左車軸84Lは左車軸ケース25Lの他端部(後端部)に回転可能に軸支され、左車軸84Lの右半部は左車軸ケース25Lに収容され、左車軸84Lの左半部は左車軸ケース25Lの左側方に突出している。
左車輪4Lは左車軸84Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
【0066】
スプロケット81Rは右サイドクラッチ軸76Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右車軸ケース25Rに収容される。
スプロケット82Rは後述する右車軸84Rの一端部(左端部)に相対回転不能に固定され、右車軸ケース25Rに収容される。
チェーン83Rはスプロケット81Rおよびスプロケット82Rに巻回され、右車軸ケース25Rに収容される。
【0067】
右車軸84Rは右車輪4Rを右車軸ケース25Rに軸支するための回転軸である。
右車軸84Rは右車軸ケース25Rの他端部(後端部)に回転可能に軸支され、右車軸84Rの左半部は右車軸ケース25Rに収容され、右車軸84Rの右半部は右車軸ケース25Rの右側方に突出している。
右車輪4Rは右車軸84Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定される。
【0068】
株間変速軸85は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる回転軸である。
株間変速軸85はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。本実施形態では、株間変速軸85の外周面にはスプライン溝が形成される。
【0069】
ギヤ85aは株間変速軸85の一端部(左端部)に相対回転不能かつ株間変速軸85の軸線方向(長手方向)に移動不能に固定される。
【0070】
第一株間ギヤ86は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。第一株間ギヤ86は大ギヤ部86aおよび小ギヤ部86bを備える。
【0071】
大ギヤ部86aは平歯車を成す円盤状の部分と、当該円盤状の部分の一方の盤面から突出したスリーブ状の部分とを合わせた形状を有する。大ギヤ部86aには、大ギヤ部86aの円盤状の部分およびスリーブ状の部分を貫通する貫通孔が形成される。また、大ギヤ部86aには、円盤状の部分の一対の盤面を貫通する複数の係合孔が形成される。
小ギヤ部86bは平歯車を成す円盤状の部分である。小ギヤ部86bには、小ギヤ部86bの円盤状の部分を貫通する貫装孔が形成される。小ギヤ部86bに形成された貫装孔には大ギヤ部86aのスリーブ状の部分が貫装され、溶接により小ギヤ部86bが大ギヤ部86aに相対回転不能に固定される。
【0072】
株間変速軸85が大ギヤ部86aに形成された貫通孔を貫通することにより、第一株間ギヤ86が株間変速軸85の略中央部に貫装される。
株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86は株間変速軸85に対して相対回転可能である。
また、株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86の左右の端部は株間変速軸85に外嵌されたリングに当接するため、第一株間ギヤ86は株間変速軸85の軸線方向に移動不能である。
株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86の大ギヤ部86aはギヤ73cに噛合する。
【0073】
第二株間ギヤ87は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。第二株間ギヤ87には、一対の盤面を貫通する貫通孔が形成される。
また、第二株間ギヤ87には、一対の盤面を貫通する複数の係合孔が形成される。
株間変速軸85が第二株間ギヤ87に形成された貫通孔を貫通することにより、第二株間ギヤ87は株間変速軸85の右端部に貫装される。
第二株間ギヤ87は株間変速軸85に対して相対回転可能かつ株間変速軸85の軸線方向に移動不能である。
株間変速軸85に貫装された第二株間ギヤ87はギヤ73fに噛合する。
【0074】
株間変速ギヤ88は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。
株間変速ギヤ88には左右一対の盤面を貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の内周面にはスプライン溝が形成される。また、株間変速ギヤ88の左右一対の盤面には、それぞれ複数の係合突起が形成される。
【0075】
株間変速軸85が株間変速ギヤ88に形成された貫通孔を貫通することにより、株間変速ギヤ88は株間変速軸85に貫装される。
株間変速ギヤ88が株間変速軸85に貫装されたとき、株間変速ギヤ88の貫通孔に形成されたスプライン溝と株間変速軸85に形成されたスプライン溝とが係合することにより、株間変速ギヤ88は株間変速軸85に対して相対回転不能かつ株間変速軸85の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
なお、株間変速ギヤ88が株間変速軸85に貫装されたとき、株間変速ギヤ88は第一株間ギヤ86および第二株間ギヤ87により挟まれる位置に配置される。
【0076】
植え付けクラッチ軸89は植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するための回転軸である。
植え付けクラッチ軸89はミッションケース23に回転可能に軸支される。
植え付けクラッチ軸89の中途部はミッションケース23に収容され、植え付けクラッチ軸89の一端部(左端部)および他端部(右端部)はそれぞれミッションケース23の左側方および右側方に突出している。
植え付けクラッチ軸89の左半部には二つのリング状の溝が互いに間隔を空けて形成され、当該二つの溝には二つのリングが外嵌される。また、植え付けクラッチ軸89の外周面において、植え付けクラッチ軸89の左半部に形成された二つのリング状の溝のうち右側の溝から植え付けクラッチ軸89の中央部までの部分にはスプライン溝が形成される。
【0077】
ベベルギヤ89aは植え付けクラッチ軸89の中途部に相対回転不能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向に移動不能に固定される。
【0078】
植え付けクラッチ90は植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するか否かを切り替えるためのクラッチである。
本実施形態の植え付けクラッチ90は植え付けクラッチギヤ90a、植え付けクラッチ爪90bおよび植え付けクラッチバネ90cを備える。
【0079】
植え付けクラッチギヤ90aは平歯車である。植え付けクラッチギヤ90aには、一対の盤面を貫通する貫通孔が形成される。植え付けクラッチギヤ90aに形成された貫通孔に植え付けクラッチ軸89を貫通することにより、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ軸89の左半部に貫装され、ミッションケース23に収容される。
植え付けクラッチ軸89に貫装された植え付けクラッチギヤ90aの右側の盤面には係合部が形成される。
植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ軸89の左半部に外嵌された二つのリングで挟まれた位置に配置され、植え付けクラッチギヤ90aの左右の盤面は当該二つのリングに当接する。従って、植え付けクラッチ軸89に貫装された植え付けクラッチギヤ90aは、植え付けクラッチ軸89に対して相対回転可能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向に移動不能である。
【0080】
植え付けクラッチ爪90bは概ね円柱形状の部材である。植え付けクラッチ爪90bには左右一対の端面を貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の内周面にはスプライン溝が形成される。
植え付けクラッチ爪90bの左側の端面には係合部が形成される。
植え付けクラッチ爪90bに形成された貫通孔に植え付けクラッチ軸89を貫通することにより、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチ軸89に貫装される。
【0081】
植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチギヤ90aの右側となる位置(植え付けクラッチギヤ90aとベベルギヤ89aとで挟まれる位置)に配置される。
また、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチ爪90bの貫通孔に形成されたスプライン溝と植え付けクラッチ軸89に形成されたスプライン溝とが係合する。
従って、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチ軸89に対して相対回転不能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
【0082】
植え付けクラッチバネ90cは植え付けクラッチ爪90bを植え付けクラッチギヤ90aに接近する方向(本実施形態では左側方)に付勢する部材である。本実施形態の植え付けクラッチバネ90cは金属製の巻きバネであり、植え付けクラッチ軸89に貫装される。
植え付けクラッチバネ90cが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチバネ90cの一端部(右端部)はベベルギヤ89aの左端面に当接し、植え付けクラッチバネ90cの他端部(左端部)は植え付けクラッチ爪90bの右側の端面に当接する。
【0083】
図7に示す如く、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチバネ90cの付勢力により左側方(植え付けクラッチギヤ90aに接近する方向)に移動したとき、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合部と植え付けクラッチ爪90bに形成された係合部とが係合し、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転不能に連結される。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bは一体的に回転することとなり、駆動力を植付装置5および苗供給装置6に伝達することが可能である。
【0084】
植え付けクラッチ爪90bに外力を加えることにより植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチバネ90cの付勢力に抗して右側方(植え付けクラッチギヤ90aから離間する方向)に移動したとき、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合部と植え付けクラッチ爪90bに形成された係合部とが係合した状態が解除され、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転可能となる。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bは一体的に回転せず、駆動力を植付装置5および苗供給装置6に伝達することはできない。
【0085】
このように、植え付けクラッチ爪90bの位置を変更する(左側方または右側方に移動させる)ことにより、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bが相対回転不能に連結されるか否か(植え付けクラッチギヤ90aから植え付けクラッチ爪90bを経て植え付けクラッチ軸89に駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0086】
中央植え付け伝動軸91は植付装置5のうち、中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
図6に示す如く、中央植え付け伝動軸91はセンターフレーム24に収容される。
中央植え付け伝動軸91の一端部(前端部)はミッションケース23の後端部に回転可能に軸支され、中央植え付け伝動軸91の他端部(後端部)は中央植え付けケース27Cの前端部に回転可能に軸支される。
【0087】
ベベルギヤ91aは中央植え付け伝動軸91の一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、ミッションケース23に収容される。ベベルギヤ91aはベベルギヤ89aに噛合する。
【0088】
ベベルギヤ91bは中央植え付け伝動軸91の他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、中央植え付けケース27Cに収容される。
【0089】
中央植え付けアーム軸92は植付装置5のうち、中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
中央植え付けアーム軸92は中央植え付けケース27Cに回転可能に軸支される。中央植え付けアーム軸92の一端部(左端部)および他端部(右端部)は中央植え付けケース27Cの左側方および右側方にそれぞれ突出している。中央植え付けアーム軸92の中途部は中央植え付けケース27Cに収容される。
中央植え付けアーム軸92の一端部(左端部)および他端部(右端部)には、それぞれ中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rが連結される。
【0090】
左植え付け伝動軸93Lは植付装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左植え付け伝動軸93Lの一端部(右端部)は植え付けクラッチ軸89の一端部(左端部)に相対回転不能に連結される。
左植え付け伝動軸93Lは左側方フレーム26Lの一端部(ミッションケース23の左側面に固定されている方の端部)から屈曲部(左側方フレーム26Lの継手部材に対応する部分)までの部分に収容される。
左植え付け伝動軸93Lの他端部(左端部)は左側方フレーム26Lの屈曲部に回転可能に軸支される。
【0091】
ベベルギヤ94Lは左植え付け伝動軸93Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左側方フレーム26Lの屈曲部に収容される。
【0092】
左後伝動軸95Lは植付装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左後伝動軸95Lのうち一端部(前端部)から中途部までの部分は左側方フレーム26Lの屈曲部から他端部(左植え付けケース27Lの前端部に固定されている方の端部)までの部分に収容され、左後伝動軸95Lのうち他端部(後端部)は左植え付けケース27Lに収容される。
左後伝動軸95Lの一端部(前端部)は左側方フレーム26Lの屈曲部に回転可能に軸支され、左後伝動軸95Lの他端部(後端部)は左植え付けケース27Lに回転可能に軸支される。
【0093】
ベベルギヤ96Lは左後伝動軸95Lの一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、左側方フレーム26Lの屈曲部に収容される。ベベルギヤ96Lはベベルギヤ94Lに噛合する。
ベベルギヤ97Lは左後伝動軸95Lの他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、左植え付けケース27Lに収容される。
【0094】
左植え付けアーム軸98Lは植付装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左植え付けアーム軸98Lは左植え付けケース27Lに回転可能に軸支される。左植え付けアーム軸98Lのうち、一端部(右端部)は左植え付けケース27Lの右側方に突出し、残りの部分は左植え付けケース27Lに収容される。
左植え付けアーム軸98Lの一端部(右端部)には、左側植え付けアーム部52Lが連結される。
【0095】
ベベルギヤ99Lは左植え付けアーム軸98Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左植え付けケース27Lに収容される。ベベルギヤ99Lはベベルギヤ97Lに噛合する。
【0096】
右植え付け伝動軸93Rは植付装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右植え付け伝動軸93Rの一端部(左端部)は植え付けクラッチ軸89の他端部(右端部)に相対回転不能に連結される。
右植え付け伝動軸93Rは右側方フレーム26Rの一端部(ミッションケース23の右側面に固定されている方の端部)から屈曲部(右側方フレーム26Rの継手部材に対応する部分)までの部分に収容される。
右植え付け伝動軸93Rの他端部(右端部)は右側方フレーム26Rの屈曲部に回転可能に軸支される。
【0097】
ベベルギヤ94Rは右植え付け伝動軸93Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右側方フレーム26Rの屈曲部に収容される。
【0098】
右後伝動軸95Rは植付装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右後伝動軸95Rのうち一端部(前端部)から中途部までの部分は右側方フレーム26Rの屈曲部から他端部(右植え付けケース27Rの前端部に固定されている方の端部)までの部分に収容され、右後伝動軸95Rのうち他端部(後端部)は右植え付けケース27Rに収容される。
右後伝動軸95Rの一端部(前端部)は右側方フレーム26Rの屈曲部に回転可能に軸支され、右後伝動軸95Rの他端部(後端部)は右植え付けケース27Rに回転可能に軸支される。
【0099】
ベベルギヤ96Rは右後伝動軸95Rの一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、右側方フレーム26Rの屈曲部に収容される。ベベルギヤ96Rはベベルギヤ94Rに噛合する。
ベベルギヤ97Rは右後伝動軸95Rの他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、右植え付けケース27Rに収容される。
【0100】
右植え付けアーム軸98Rは植付装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右植え付けアーム軸98Rは右植え付けケース27Rに回転可能に軸支される。右植え付けアーム軸98Rのうち、一端部(左端部)は右植え付けケース27Rの左側方に突出し、残りの部分は右植え付けケース27Rに収容される。
右植え付けアーム軸98Rの一端部(左端部)には、右側植え付けアーム部52Rが連結される。
【0101】
ベベルギヤ99Rは右植え付けアーム軸98Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右植え付けケース27Rに収容される。ベベルギヤ99Rはベベルギヤ97Rに噛合する。
【0102】
以下では、エンジン3から左車輪4Lまでの駆動力の伝達経路およびエンジン3から右車輪4Rまでの駆動力の伝達経路について説明する。
図6に示す如く、エンジン3において発生した駆動力は出力軸3a、プーリ72a、ベルト72c、プーリ72bを経て主軸73に伝達される。
【0103】
主軸73から変速軸74までの駆動力の伝達経路は、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更することにより変化する。
【0104】
変速ギヤ75が左から一番目の位置(最も左側となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の小ギヤ部75aがギヤ73aに噛合する。
この場合、本実施形態では「前進2速(歩行型田植機1が高速で前方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73a、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0105】
変速ギヤ75が左から二番目の位置(左から一番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の大ギヤ部75bがギヤ73bに噛合する。
この場合、本実施形態では「前進1速(歩行型田植機1が低速で前方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73b、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0106】
変速ギヤ75が左から三番目の位置(左から二番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75はギヤ73aおよびギヤ73bのいずれにも噛合しない。
この場合、本実施形態では「中立(歩行型田植機1が走行しない場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73から変速軸74に伝達されない。
【0107】
変速ギヤ75が左から四番目の位置(左から三番目の位置の右隣となる位置であり、最も右側となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の大ギヤ部75bが第一株間ギヤ86の小ギヤ部86bに噛合する。
この場合、本実施形態では「後進(歩行型田植機1が後方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73c、第一株間ギヤ86、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0108】
このように、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更する(「左から一番目の位置」から「左から四番目の位置」までの四つの位置のいずれかを選択する)ことにより、歩行型田植機1の走行および停止、走行方向(前進および後進)、並びに前進時の走行速度(前進1速および前進2速)を切り替えることが可能である。
【0109】
変速軸74に伝達された駆動力は、変速軸74からギヤ74aを経てサイドクラッチギヤ77に伝達される。
左サイドクラッチシフタ79Lが左側方に移動している場合、サイドクラッチギヤ77に伝達された駆動力はボール78L・78L・・・、左サイドクラッチ軸76L、スプロケット81L、チェーン83L、スプロケット82L、左車軸84Lを経て左車輪4Lに伝達される。
右サイドクラッチシフタ79Rが右側方に移動している場合、サイドクラッチギヤ77に伝達された駆動力はボール78R・78R・・・、右サイドクラッチ軸76R、スプロケット81R、チェーン83R、スプロケット82R、右車軸84Rを経て右車輪4Rに伝達される。
【0110】
以下では、エンジン3から植付装置5までの駆動力の伝達経路およびエンジン3から苗供給装置6までの駆動力の伝達経路について説明する。
図6に示す如く、エンジン3において発生した駆動力は出力軸3a、プーリ72a、ベルト72c、プーリ72bを経て主軸73に伝達される。
【0111】
主軸73から株間変速軸85までの駆動力の伝達経路は、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更することにより変化する。
【0112】
株間変速ギヤ88が左から一番目の位置(最も左側となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88の左側の盤面に形成された複数の係合突起が第一株間ギヤ86の大ギヤ部86aに形成された複数の係合孔に係合し、株間変速ギヤ88および第一株間ギヤ86が一体的に回転可能な状態(相対回転不能な状態)となる。
この場合、本実施形態では「株間1速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が最も大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73c、第一株間ギヤ86、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0113】
株間変速ギヤ88が左から二番目の位置(左から一番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73dに噛合する。
この場合、本実施形態では「株間2速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が二番目に大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73d、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0114】
株間変速ギヤ88が左から三番目の位置(左から二番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73c、ギヤ73d、ギヤ73eおよびギヤ73fのいずれにも噛合しない。
この場合、本実施形態では「中立(歩行型田植機1が植付装置5に駆動力を伝達しない場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73から株間変速軸85に伝達されない。
【0115】
株間変速ギヤ88が左から四番目の位置(左から三番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73eに噛合する。
この場合、本実施形態では「株間3速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が三番目に大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73e、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0116】
株間変速ギヤ88が左から五番目の位置(左から四番目の位置の右隣となる位置であって、最も右側となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88の右側の盤面に形成された複数の係合突起が第二株間ギヤ87に形成された複数の係合孔に係合し、株間変速ギヤ88および第二株間ギヤ87が一体的に回転可能な状態(相対回転不能な状態)となる。
この場合、本実施形態では「株間4速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が四番目に大きい(最も小さい)場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73f、第二株間ギヤ87、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0117】
このように、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更する(「左から一番目の位置」から「左から五番目の位置」までの五つの位置のいずれかを選択する)ことにより、歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)を切り替えることが可能である。
【0118】
植え付けクラッチ90が「入」になっている場合(植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合部と植え付けクラッチ爪90bに形成された係合部とが係合している場合)、株間変速軸85に伝達された駆動力はギヤ85a、植え付けクラッチ90を経て植え付けクラッチ軸89に伝達される。
【0119】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力はベベルギヤ89a、ベベルギヤ91a、中央植え付け伝動軸91、ベベルギヤ91b、ベベルギヤ92a、中央植え付けアーム軸92を経て中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rに伝達される。
また、中央植え付けアーム軸92に伝達された駆動力はスプロケット92bを経て苗供給装置6(縦送り装置62と横送り装置63)に伝達される。
【0120】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力は左植え付け伝動軸93L、ベベルギヤ94L、ベベルギヤ96L、左後伝動軸95L、ベベルギヤ97L、ベベルギヤ99L、左植え付けアーム軸98Lを経て左側植え付けアーム部52Lに伝達される。
【0121】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力は右植え付け伝動軸93R、ベベルギヤ94R、ベベルギヤ96R、右後伝動軸95R、ベベルギヤ97R、ベベルギヤ99R、右植え付けアーム軸98Rを経て右側植え付けアーム部52Rに伝達される。
【0122】
以下では図1から図3までを用いてセンターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rについて説明する。
センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rは歩行型田植機1に浮力を付与する(ひいては、歩行型田植機1が圃場に埋没することを防止する)ものである。
センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rは前後方向に伸びた概ね板状の部材である。センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rの内部にはそれぞれ空間が形成され、これらの空間には空気が封入される。
【0123】
図1から図3に示す如く、センターフロート10Cは機体2の左右中央かつ下方となる位置に配置される。
図1から図3に示す如く、左サイドフロート10Lは機体2の下方かつ左後寄りとなる位置に配置される。
図1から図3に示す如く、右サイドフロート10Rは機体2の下方かつ右後寄りとなる位置に配置される。
【0124】
以下では図2から図4までを用いて操作部15について説明する。
操作部15は作業者が歩行型田植機1の各部を操作するためのものである。
操作部15はハンドルフレーム151、主クラッチレバー152、左サイドクラッチレバー153L、右サイドクラッチレバー153R、植え付けクラッチレバー154、スイングレバー155、および苗取り量調整レバー156を具備する。
【0125】
ハンドルフレーム151は操作部15の主たる構造体であり、機体2の後部に固定される。
ハンドルフレーム151は下部フレーム151a、中央フレーム151b、上部フレーム151c、左側部フレーム151dおよび右側部フレーム151eを具備する。
【0126】
下部フレーム151aはハンドルフレーム151の下部を成す部材である。
中央フレーム151bはハンドルフレーム151の中央部を成す部材である。中央フレーム151bの中途部は下部フレーム151aの中央部(左右中央部)に固定される。
上部フレーム151cはハンドルフレーム151の上部を成す部材である。上部フレーム151cの中途部は中央フレーム151bの他端部に固定される。
左側部フレーム151dはハンドルフレーム151の左側部を成す部材である。左側部フレーム151dの一端部(下端部)は下部フレーム151aの一端部(左端部)に固定される。左側部フレーム151dの他端部(上端部)は上部フレーム151cに固定される。
右側部フレーム151eはハンドルフレーム151の右側部を成す部材である。右側部フレーム151eの一端部(下端部)は下部フレーム151aの他端部(右端部)に固定される。右側部フレーム151eの他端部(上端部)は上部フレーム151cに固定される。
ハンドルフレーム151は左後フレーム28L、右後フレーム28R、および中央植え付けケース27Cに固定される。
【0127】
主クラッチレバー152はエンジン3から伝動機構7へ駆動力を伝達するか否かを切り替えるためのレバーである。
主クラッチレバー152の基端部は上部フレーム151cの中途部やや左寄りとなる位置に回動可能に支持される。
主クラッチレバー152の基端部はリンク機構(不図示)を介して主クラッチ機構(不図示)に連結される。
主クラッチレバー152を「入」に操作すると、主クラッチ機構(不図示)がベルト72cに所定の大きさの張力を付与し、当該ベルト72cを介してエンジン3から伝動機構7へと駆動力が伝達される。
主クラッチレバー152を「切」に操作すると、主クラッチ機構(不図示)がベルト72cに張力を付与せず、当該ベルト72cを介してエンジン3から伝動機構7へと駆動力が伝達されない。
【0128】
左サイドクラッチレバー153Lおよび右サイドクラッチレバー153Rは歩行型田植機1の走行方向(直進、左旋回および右旋回)を操作するためのレバーである。
【0129】
左サイドクラッチレバー153Lは上部フレーム151cの左端部の下部に回動可能に支持される。
左サイドクラッチレバー153Lはリンク機構(不図示)を介して左サイドクラッチシフタ79L(より詳細には、左サイドクラッチホーク153a(図7参照))に連結される。
作業者は、左サイドクラッチレバー153Lを握った状態で保持する(左サイドクラッチレバー153Lが上方に回動した状態を保持する)ことにより、左サイドクラッチシフタ79Lを右側方に移動させ、ひいてはエンジン3から左車輪4Lへの駆動力の伝達を停止することが可能である。
【0130】
右サイドクラッチレバー153Rは上部フレーム151cの右端部の下部に回動可能に支持される。
右サイドクラッチレバー153Rはリンク機構(不図示)を介して右サイドクラッチシフタ79R(より詳細には、右サイドクラッチホーク153b(図7参照))に連結される。
作業者は、右サイドクラッチレバー153Rを握った状態で保持する(右サイドクラッチレバー153Rが上方に回動した状態を保持する)ことにより、右サイドクラッチシフタ79Rを左側方に移動させ、ひいてはエンジン3から右車輪4Rへの駆動力の伝達を停止することが可能である。
【0131】
作業者が左サイドクラッチレバー153Lおよび右サイドクラッチレバー153Rのいずれも握っていないとき、歩行型田植機1は直進することが可能である。
作業者が左サイドクラッチレバー153Lを握るとともに右サイドクラッチレバー153Rを握っていないとき、歩行型田植機1は左旋回することが可能である。
作業者が右サイドクラッチレバー153Rを握るとともに左サイドクラッチレバー153Lを握っていないとき、歩行型田植機1は右旋回することが可能である。
作業者が左サイドクラッチレバー153Lおよび右サイドクラッチレバー153Rのいずれも握っているとき、歩行型田植機1は直進することができない。
【0132】
植え付けクラッチレバー154はエンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するか否かを切り替えるレバーである。
植え付けクラッチレバー154の基端部は上部フレーム151cの中途部やや右寄りとなる位置に「植え付けクラッチレバー154の先端部が前後方向に傾倒する方向に」回動可能に支持される。
植え付けクラッチレバー154の基端部はリンク機構(不図示)を介して植え付けクラッチ90の植え付けクラッチ爪90bに連結される。より詳細には、植え付けクラッチレバー154の基端部はリンク機構(不図示)を介して植え付けクラッチホーク154a(図7参照)に連結される。
植え付けクラッチホーク154aは植え付けクラッチ90の状態を「入(エンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達させることが可能な状態)」または「切(エンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達させることができない状態)」に切り替えるための部材である。
植え付けクラッチホーク154aが植え付けクラッチ爪90bに係合しない場合、植え付けクラッチ90の状態が「入」に保持される。
植え付けクラッチホーク154aが植え付けクラッチ爪90bに係合している場合、植え付けクラッチ90の状態が「切」に保持される。
作業者は、植え付けクラッチレバー154の先端部が前方に傾倒するように植え付けクラッチレバー154を回動させる(植え付けクラッチレバー154を「入」にする)ことにより、植え付けクラッチ90の状態を「入」に保持することが可能である。
作業者は、植え付けクラッチレバー154の先端部が後方に傾倒するように植え付けクラッチレバー154を回動させる(植え付けクラッチレバー154を「切」にする)ことにより、植え付けクラッチ90の状態を「切」に保持することが可能である。
【0133】
スイングレバー155は歩行型田植機1の車高を操作するためのレバーである。
スイングレバー155の基端部は上部フレーム151cの中途部やや右寄りかつ植え付けクラッチレバー154の右隣となる位置に回動可能に支持される。
スイングレバー155の基端部はリンク機構(不図示)を介してピッチング制御機構(不図示)に連結される。
作業者は、スイングレバー155の先端部が左右方向に傾倒するようにスイングレバー155を回動させることにより、「自動スイング」、「手動スイング」、「連動スイング」のいずれかの状態に切り替えることが可能である。
【0134】
「自動スイング」はピッチング制御機構(不図示)が歩行型田植機1の車高を制御する状態である。
「手動スイング」は、作業者がスイングレバー155を操作することによる車高の調整がピッチング制御機構(不図示)による車高の制御よりも優先される状態である。
「連動スイング」は、作業者が植え付けクラッチレバー154を「入」にした場合(エンジン3から植付装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達可能な場合)にはピッチング制御機構(不図示)が歩行型田植機1の車高を制御し、作業者が植え付けクラッチレバー154を「切」にした場合にはその操作に連動して車高を上げる状態である。
【0135】
苗取り量調整レバー156は苗取り量、すなわち中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rが苗載台61に載置されている苗マットから一回に取り出す苗の本数(一株本数)を調整するためのレバーである。
苗取り量調整レバー156の基端部は中央フレーム151bの中途部右側面に回動可能に支持される。苗取り量調整レバー156の基端部はリンク機構(不図示)を介して苗載台61の前端部(下端部)に設けられた苗取り出し板(不図示)に連結される。
作業者は、苗取り量調整レバー156の先端部が上下方向に傾倒するようにスイングレバー155を回動させることにより、苗取り量を調整することが可能である。
【0136】
以下では図8から図10までを用いて変速機構11について説明する。
変速機構11は伝動機構7における変速ギヤ75および株間変速ギヤ88の位置を変更するための機構である。
変速機構11は、変速操作軸111、係合部材112、第一走行変速アーム113、第二走行変速アーム114、走行変速フォーク軸115、走行変速フォーク116、ボール117、スプリング118、株間変速アーム119、株間変速フォーク軸120、株間変速フォーク121、ボール122及びスプリング123を備える。
【0137】
変速操作軸111は作業者による操作力を伝達するものである。変速操作軸111はオイルシール23aを介してミッションケース23(右側部材23R)の後面に形成された挿入孔から内部へと挿入される。変速操作軸111の後端部はミッションケース23から突出している。変速操作軸111はミッションケース23に軸線回りに回動可能かつ軸線方向に摺動可能に支持される。変速操作軸111の後端には左右一対の側面を有する板状部111aが形成される。
【0138】
係合部材112は前後方向に貫通孔が形成された、概ね円筒状の部材である。係合部材112の前後両端部に前後中央部よりも外径が大きくなるような一対のフランジ部が形成されて、当該係合部材112の前後一対のフランジ部間に係合溝112aが形成される。係合部材112の貫通孔には変速操作軸111が挿通される。係合部材112は、変速操作軸111に相対回転不能かつ摺動不能に支持される。
【0139】
第一走行変速アーム113は係合部材112により回動操作されるものである。第一走行変速アーム113は概ね楕円形状の主板113a、円筒部113bおよび円柱状の係合部113cを備える。主板113aは板面を上下に向けて配置される。主板113aの一端側には、円筒部113bが主板113aを上下方向に貫通するように固定される。主板113aの上面の他端側には、係合部113cが立設される。係合部113cは係合部材112の係合溝112aに係合される。
【0140】
第二走行変速アーム114は第一走行変速アーム113とともに回動するものである。第二走行変速アーム114は円柱部114aおよび概ね先細りに形成された一端を有する係合板114bを備える。円柱部114aはその軸線方向を上下方向として配置される。円柱部114aの下端には係合板114bの他端が固定される。円柱部114aの中途部はミッションケース23に回動可能に支持され、上端部(ミッションケース23により支持された部分よりも上方の部分)は第一走行変速アーム113の円筒部113bに挿通される。円柱部114aは、第一走行変速アーム113に相対回転不能かつ摺動不能に固定される。
【0141】
走行変速フォーク軸115は走行変速フォーク116を支持するものである。走行変速フォーク軸115はその軸線方向を左右方向として配置され、ミッションケース23に回動不能に支持される。走行変速フォーク軸115の外周面には複数の溝を軸線方向に所定間隔ごとに並べてなる溝部115aが形成される。
【0142】
走行変速フォーク116は変速ギヤ75と係合するものである。走行変速フォーク116は左右方向に形成される貫通孔116a、端部に概ね半円状の凹部が形成された係合部116b、および上向きに開口する正面視凹状の係合溝116cを備える。貫通孔116aに走行変速フォーク軸115が挿通されて、走行変速フォーク116が走行変速フォーク軸115に左右方向に摺動可能に支持される。係合部116bは変速ギヤ75に係合する。係合溝116cには第二走行変速アーム114の係合板114bが係合される。
【0143】
ボール117およびスプリング118は、貫通孔116aと直交するように走行変速フォーク116に形成された穴(不図示)に収容される。スプリング118はボール117を貫通孔116aに挿通された状態の走行変速フォーク軸115に向かって付勢する。ボール117の一部が走行変速フォーク116の穴から突出して、溝部115aのいずれかの溝に係合している場合、走行変速フォーク116の走行変速フォーク軸115に対する相対位置が当該位置で保持され易くなる。
【0144】
株間変速アーム119は変速操作軸111により回動操作されるとともに、前後方向に移動されるものである。株間変速アーム119は円筒部119aおよび概ね先細りに形成された一端を有する係合板119bを備える。円筒部119aはその開口部を前後方向に向けて配置される。円筒部119aの前端下側には係合板119bの他端が固定される。円筒部119aには変速操作軸111が挿通される。円筒部119aは、変速操作軸111に相対回転不能かつ摺動不能に固定される。係合板119bは一端を概ね下方に向けて配置される。
【0145】
株間変速フォーク軸120は株間変速フォーク121を支持するものである。株間変速フォーク軸120はその軸線方向を左右方向に向けて、ミッションケース23に回動不能に支持される。株間変速フォーク軸120の外周面には複数の溝を軸線方向に所定間隔ごとに並べてなる溝部120aが形成される。
【0146】
株間変速フォーク121は株間変速ギヤ88と係合するものである。株間変速フォーク121は左右方向に形成される貫通孔121a、端部に概ね半円状の凹部が形成された係合部121b、および上向きに開口する正面視凹状の係合溝121cを備える。貫通孔121aには株間変速フォーク軸120が挿通されて、株間変速フォーク121が株間変速フォーク軸120に左右方向に摺動可能に支持される。係合部121bは株間変速ギヤ88に係合する。係合溝121cには株間変速アーム119の係合板119bが係合される。
【0147】
ボール122およびスプリング123は、貫通孔121aと直交するように株間変速フォーク121に形成された穴(不図示)に収容される。スプリング123はボール122を貫通孔121aに挿通された状態の株間変速フォーク軸120に向かって付勢する。ボール122の一部が株間変速フォーク121の穴から突出して、溝部120aのいずれかの溝に係合している場合、株間変速フォーク121の株間変速フォーク軸120に対する相対位置が当該位置で保持され易くなる。
【0148】
以下では、図9及び図10を用いて変速機構11の動作態様について説明する。
まず、変速ギヤ75の位置を変更する場合について説明する。
【0149】
変速操作軸111が軸線方向(前後方向)に摺動されると、当該変速操作軸111とともに係合部材112も前後方向に移動する。
係合部材112が前後方向に移動すると、当該係合部材112とともに係合部113cも概ね前後方向に移動し、第一走行変速アーム113が円筒部113bを中心として回動する。
第一走行変速アーム113が回動すると、当該第一走行変速アーム113とともに第二走行変速アーム114も回動する。
第二走行変速アーム114が回動すると、走行変速フォーク116の係合溝116cに係合した係合板114bによって、走行変速フォーク116が走行変速フォーク軸115の軸線方向(左右方向)に摺動される。
走行変速フォーク116が左右方向に摺動すると、当該走行変速フォーク116とともに変速ギヤ75が変速軸74上を移動する。
【0150】
このように、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更することにより、歩行型田植機1の走行および停止、走行方向(前進および後進)、並びに前進時の走行速度(前進1速および前進2速)を切り替える(すなわち、走行速度を変更する)ことが可能となっている。
【0151】
なお、走行変速フォーク軸115の溝部115aの各溝は、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置(「左から一番目の位置」から「左から四番目の位置」まで)に対応する位置に形成されている。これによって、走行変速フォーク116を各位置に保持することができる。
【0152】
次に、株間変速ギヤ88の位置を変更する場合について説明する。
【0153】
変速操作軸111が軸線回りに回動されると、当該変速操作軸111とともに株間変速アーム119も円筒部119aを中心として回動する。
株間変速アーム119が回動すると、株間変速フォーク121の係合溝121cに係合した係合板119bによって、株間変速フォーク121が株間変速フォーク軸120の軸線方向(左右方向)に摺動される。
株間変速フォーク121が左右方向に摺動すると、当該株間変速フォーク121とともに株間変速ギヤ88が株間変速軸85上を移動する。
【0154】
このように、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更することにより、歩行型田植機1の株間を切り替える(変更する)ことが可能である。
【0155】
なお、株間変速フォーク軸120の溝部120aの各溝は、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置(「左から一番目の位置」から「左から五番目の位置」まで)に対応する位置に形成されている。これによって、株間変速フォーク121を各位置に保持することができる。
【0156】
また、変速操作軸111が軸線方向に摺動された場合、株間変速アーム119の係合板119bは株間変速フォーク121の係合溝121cの前後方向幅内で移動する。これによって、変速操作軸111の軸線方向位置にかかわらず係合板119bと係合溝121cとが係合し、変速操作軸111を回動操作すれば株間変速フォーク121を左右方向に摺動させることができる。
【0157】
上記の如く、変速操作軸111を操作することで、走行速度の変更および株間の変更を行うことができる。これによって、走行速度の変更および株間の変更の2つの変速を行うにもかかわらず、ミッションケース23の内部から外部へ突出させる操作軸は変速操作軸111の1本のみで足りるため、ミッションケース23の後面に形成された挿入孔において、ミッションケース23と変速操作軸111との摺動部に泥や埃等が噛み込む可能性を減らし、オイル漏れの発生や、ミッションケース内への泥や埃等の侵入の抑制を図ることができる。
【0158】
以下では図11から図13までを用いて変速操作機構13について説明する。
変速操作機構13は変速機構11における変速操作軸111を軸線方向に摺動および軸線回りに回動させるための機構である。
変速操作機構13は、走行変速レバーガイド131、変速ロッド132、ボルト133、ナット134、第二操作具としての株間変速レバー135、走行変速レバー支点部材136、第一操作具としての走行変速レバー137、座金138、スプリング139、レバーガイド座140、指示部材としての指示ピン141及び表示部材としての表示部材142を備える。
【0159】
図11に示す如く、走行変速レバーガイド131は走行変速レバー137の操作方向を作業者に示すとともに、走行変速レバー137を案内するものである。走行変速レバーガイド131は金属板や樹脂板等により形成されて、後側の板面を後上方に向けて配置される。走行変速レバーガイド131には、左右方向に亘ってガイド孔131aが形成される。走行変速レバーガイド131は中央植え付けケース27Cの上部に、縦送りケース65を介して固定される。縦送りケース65は、苗供給装置6の縦送り装置62を収容する部材である。
【0160】
図11から図13までに示す如く、変速ロッド132は作業者による操作力を変速操作軸111へと伝達するものである。変速ロッド132は、主板132a、連結板132b・132c、円柱部132d、フランジ部132e・132f及び係合溝132gを備える。
主板132aは概ね楕円形状に形成された板材である。主板132aは板面を前後に向け、長手方向を概ね左右方向に向けて配置される。
連結板132b・132cは主板132aの前面から前方に向けて突設される左右一対の板材である。一方の連結板132bは主板132aの左右中央よりも左側に、他方の連結板132cは主板132aの左右中央より右側に、それぞれ配置される。これらの左右の連結板132b・132cは、互いの間に所定間隔をとって対向するように設けられる。
円柱部132dは主板132aの後面から後方に向けて突設される概ね円柱状の部材である。円柱部132dは主板132aの左右中央に配置される。
フランジ部132e・132fは円柱部132dの後端および前後中途部に形成され、当該円柱部132dの直径よりも大きい直径を有する前後一対の円形板状の部分である。フランジ部132e・132fの間には所定間隔の隙間が設けられる。
係合溝132gはフランジ部132e・132fの間に形成される溝である。
【0161】
左右の連結板132b・132cの間には、ミッションケース23外にある変速操作軸111の板状部111aが挿入される。ボルト133が右側の連結板132c、板状部111a、左側の連結板132bに順に挿通され、連結板132bの左側方においてナット134により締結されることで、変速操作軸111と変速ロッド132とが連結される。この際、変速操作軸111と変速ロッド132の円柱部132dとが同一軸線上に配置される。
【0162】
株間変速レバー135は変速ロッド132を軸線回りに回動操作するものである。株間変速レバー135は円柱状の部材を折り曲げて形成され、その軸線方向を概ね上下方向として配置される。株間変速レバー135の下端は変速ロッド132の円柱部132dの外周面上側に固定される。株間変速レバー135の長手方向の中途部を折り曲げることにより、当該株間変速レバー135の上部は下部に対して左方に傾けられる。株間変速レバー135の上端部には作業者が握るためのグリップが装着される。株間変速レバー135は、変速ロッド132から、操作部15を用いて歩行型田植機1により苗の植付作業中で機体2の後方に位置する作業者からは手が届かず操作不可能であるものの、この作業を中断して機体2の側方(本実施形態では進行方向左方)に移動した作業者からは操作可能な位置まで延設される。作業者は歩行型田植機1の左側方(より詳細にはエンジン台21の左側方かつ左側方フレーム26Lの前方)に立って当該株間変速レバー135を操作することができる。
【0163】
本実施形態においては、株間変速レバー135が平面視においてセンターフレーム24から右方へと大きく突出しないように、当該株間変速レバー135の上部を左方に傾けている。これによって、右車軸ケース25Rが上下に回動する際に株間変速レバー135と干渉することを防止している。
なお、株間変速レバー135の形状および配置は本実施形態のものに限らず、作業者が歩行型田植機1の右側方に立って操作することができる形状および配置であっても良い。
【0164】
走行変速レバー支点部材136は作業者による操作力を変速ロッド132へと伝達するものである。走行変速レバー支点部材136は円筒部136aおよび係合板136b・136cを備える。
円筒部136aはセンターフレーム24の上面に立設される円柱状の回動支点部材24aに挿通される。回動支点部材24aはセンターフレーム24の前後中途部かつ左側に配置される。
係合板136b・136cは円筒部136aから概ね右方に向けて突設される上下一対の板材である。上側の係合板136bは円筒部136aの上端近傍に、下側の係合板136cは上側の係合板136bの下方において当該係合板136bと所定間隔をおいて対向するように、それぞれ配置される。係合板136b・136cの右端側は先細り形状に形成され、右端は概ね円形状に形成される。係合板136b・136cの右端は上下から円柱部132dを挟むようにして、係合溝132gに係合される。
【0165】
走行変速レバー137は変速ロッド132を軸線方向に操作するものである。走行変速レバー137は円柱状の部材を折り曲げて形成される。走行変速レバー137の一端(下端)は走行変速レバー支点部材136の円筒部136aの外周面後側に固定される。走行変速レバー137の他端(上端)側は走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに挿通される。走行変速レバー137、走行変速レバー支点部材136から、操作部15を用いて歩行型田植機1により苗の植付作業中で機体2の後方に位置する作業者から手が届く操作可能な位置(本実施形態においては苗載台61の前方)まで延設される。走行変速レバー137の上端部には作業者が握るためのグリップが装着される。走行変速レバー137の長手方向の中途部(走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに挿通された部分よりも前方)には、当該走行変速レバー137の外周面から一部突出するような係止部137aが形成される。
なお、走行変速レバー137の形状および配置は本実施形態のものに限らず、作業中の作業者が操作することができる形状および配置であれば良い。
【0166】
図11に示す如く、座金138は、走行変速レバー137に挿通され、当該走行変速レバー137の係止部137aに後(上)方から係止される。
スプリング139は走行変速レバー137に挿通される圧縮バネである。スプリング139は走行変速レバー137における座金138よりも上端側に配置される。
レバーガイド座140は走行変速レバー137に挿通される。レバーガイド座140は走行変速レバー137におけるスプリング139よりも上端側、かつ走行変速レバーガイド131よりも下端側に配置される。
走行変速レバーガイド131とレバーガイド座140とが当接され、スプリング139が座金138とレバーガイド座140との間で所定長さだけ縮んだ状態で走行変速レバーガイド131が固定される。これによって、スプリング139の付勢力によりレバーガイド座140が所定の力で走行変速レバーガイド131に押し付けられる。レバーガイド座140は走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに沿って形成されるガイド溝(不図示)に嵌合される。これによって、走行変速レバー137は走行変速レバーガイド131のガイド孔131aに沿って移動するように案内される。
【0167】
図11から図13までに示す如く、指示ピン141は変速ロッド132の前後方向位置および軸線(円柱部132dの軸線)回りの回動位置を指示するものである。指示ピン141の一端部(右端部)はナット134の左側方からボルト133に締結される。指示ピン141の他端部(左端部)はボルト133から左方に向けて突設される。指示ピン141の左端部は右端部に比べて細く形成される。
【0168】
表示部材142は指示ピン141の動作範囲を規制するとともに、当該指示ピン141の位置を示すものである。表示部材142は、固定部と案内部とを有し、板状の部材を平面視L字状に折り曲げて形成される。固定部は、左右方向へ延長され、その前面(変速操作軸111の軸線方向と概ね垂直な面)でセンターフレームに適宜の方法により固定される。案内部は、右側面(変速操作軸111の軸線方向と概ね平行な面)が変速ロッド132と対向するように、固定部の右端から後方へ向かって延設される。案内部には、案内孔142aが左右方向に貫通するように形成される。案内孔142aには指示ピン141の左端部が挿通される。案内孔142aは側面視略矩形状に形成され、案内部の当該案内孔142aの周囲には複数の凹部が周方向に所定間隔ごとに形成される。
【0169】
以下では、図12および図13を用いて変速操作機構13の動作態様について説明する。
まず、走行変速レバー137を操作する場合について説明する。
【0170】
作業者が走行変速レバー137を左右方向に操作すると、当該走行変速レバー137の下端に固定された走行変速レバー支点部材136も回動支点部材24aを中心として回動する。
走行変速レバー支点部材136が回動すると、係合板136b・136cの右端は概ね前後方向に移動し、当該係合板136b・136cと係合する変速ロッド132も前後方向に移動する。
変速ロッド132が前後方向に移動すると、当該変速ロッド132に連結された変速操作軸111が軸線方向(前後方向)に摺動される。
【0171】
このように、走行変速レバー137を左右方向に操作することにより、変速操作軸111を前後方向に摺動することが可能であり、ひいては歩行型田植機1の走行および停止、走行方向(前進および後進)、並びに前進時の走行速度(前進1速および前進2速)を切り替えることが可能である。
【0172】
次に、株間変速レバー135を操作する場合について説明する。
【0173】
株間変速レバー135を操作する場合、まず作業者は当該株間変速レバー135を操作することが可能な位置(本実施形態では歩行型田植機1の左側方)まで移動する。
作業者が株間変速レバー135の上部を握り、変速ロッド132の軸線回りに回動操作すると、当該株間変速レバー135の下端に固定された変速ロッド132も軸線(円柱部132dの軸線)回りに回動する。
変速ロッド132が軸線回りに回動すると、当該変速ロッド132に連結された変速操作軸111が軸線回りに回動される。
【0174】
このように、株間変速レバー135を概ね上下方向に操作することにより、変速操作軸111を軸線回りに回動することが可能であり、ひいては歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)を切り替えることが可能である。
【0175】
また、表示部材142の案内孔142aの凹部は、作業者が指示ピン141の位置を認識することができるような位置に形成される。すなわち、図13に示す如く、案内孔142aの上部および下部には、それぞれ4つの凹部が前後方向に所定間隔ごとに形成される。当該4つの凹部は、前進2速、前進1速、中立、および後進に変速した際の指示ピン141の前後方向位置に対応するように形成される。また、案内孔142aの前部および後部には、それぞれ5つの凹部が上下方向に所定間隔ごとに形成される。当該5つの凹部は、株間1速、株間2速、中立、株間3速、および株間4速に変速した際の指示ピン141の上下方向位置に対応するように形成される。これによって、作業者は指示ピン141が案内孔142aのどの凹部に対応する位置に挿通されているかを目視することが可能となり、その目視結果から現在の歩行型田植機1の変速段を認識することができる。
また、本実施形態において、中立に対応する位置に形成される凹部は、その他の凹部に比べて大きく形成される。これによって、作業者は中立位置を容易に認識することができる。
【0176】
なお、変速操作機構13の構成は本実施形態のものに限らず、それぞれ独立した操作具により変速操作軸111を軸線方向に摺動させるとともに、軸線回りに回動させることができる構成、かつ走行速度を変更するための操作具を苗の植付作業中の作業者から手が届く操作可能な位置に配置するとともに、株間を変更するための操作具を苗の植付作業中の作業者から手が届かず操作不能な位置に配置する構成であれば良い。
また、指示ピン141および表示部材142の形状および配置は本実施形態のものに限らない。すなわち、指示ピン141は変速操作軸111と連動して動く構成であれば良く、表示部材142は当該指示ピン141の位置を作業者が認識できる形状及び配置であれば良い。
【0177】
以上の如く、本実施形態に係る歩行型田植機1は、圃場に苗を植え付ける植付装置5と、エンジン3から伝達される動力を変速するとともに、左車輪4Lおよび右車輪4R並びに植付装置5へと伝達する伝動機構7と、を具備する歩行型田植機1であって、軸線方向に摺動操作されることにより伝動機構7が左車輪4Lおよび右車輪4Rへ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより伝動機構7が植付装置5へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸111と、作業中の作業者から操作可能な位置に配置され、変速操作軸111を軸線方向に摺動操作する走行変速レバー(第一操作具)137と、作業中の作業者から操作不可能な位置に配置され、変速操作軸111を軸線回りに回動操作する株間変速レバー(第二操作具)135と、を具備するものである。
このように構成することにより、走行速度の変更と株間の変更を容易かつ正確に行うことができ、作業性を向上させることが可能である。
すなわち、作業者は走行変速レバー137を左右方向に操作するだけで走行速度を変更することができる。また、作業者は歩行型田植機1の左側方に移動し、株間変速レバー135を上下方向に操作するだけで株間を変更することができる。このように、1つの圃場での作業において使用する頻度が低い株間変速レバー135を作業中の作業者から手が届かない操作不能な位置に配置するとともに、使用する頻度が高い走行変速レバー137を作業中の作業者から手が届く操作可能な位置に配置することで、作業者は作業中に走行速度を変更する際に迷わず走行変速レバー137を操作することができ、誤操作を防止することが可能であるとともに、作業性を向上させることが可能となる。
また、走行速度の変更と株間の変更を別個の操作具(走行変速レバー137および株間変速レバー135)により行うことで、各操作具の操作方法を簡素化することができ、作業性を向上させることが可能となる。さらに、各操作具の動作が独立しているため、走行速度を変更する際に株間を変更する必要がなく、また株間を変更する際に走行速度を変更する必要がないため、不要な変速操作を無くして各部品(例えば、変速ギヤ75、株間変速ギヤ88等)の摩耗や劣化を抑制することが可能となる。
また、操作頻度が低い株間変速レバー135を作業中の作業者から操作不能な位置に配置することで、作業者の手元(作業中の作業者から操作可能な範囲)の省スペース化を図ることが可能である。
また、2つの操作具(走行変速レバー137および株間変速レバー135)によって走行速度および株間の変更を行うにもかかわらず、ミッションケース23から突出させる操作軸は変速操作軸111の1本のみで足りるため、当該変速操作軸111とミッションケース23との摺動部に泥や埃等が噛み込む可能性を減らし、オイル漏れの発生や、ミッションケース内への泥や埃等の侵入の抑制を図ることが可能である。
【0178】
また、歩行型田植機1は、変速操作軸111に連動して、当該変速操作軸111の軸線方向に移動する、または軸線回りに回動する指示ピン141(指示部材)と、指示ピン141の位置に基づいて伝動機構7が左車輪4Lおよび右車輪4Rへ伝達する動力の変速比、並びに伝動機構7が植付装置5へ伝達する動力の変速比を表示する表示部材142と、を具備するものである。
このように構成することにより、指示ピン141の位置を表示部材142により確認して、左車輪4Lおよび右車輪4R並びに植付装置5へ伝達される動力の変速比を容易に確認することが可能であり、ひいては作業性を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0179】
1 歩行型田植機
2 機体
3 エンジン
4L 左車輪(車輪)
4R 右車輪(車輪)
5 植付装置
6 苗供給装置
7 伝動機構
11 変速機構
13 変速操作機構
111 変速操作軸
135 株間変速レバー(第二操作具)
137 走行変速レバー(第一操作具)
141 指示ピン(指示部材)
142 表示部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に苗を植え付ける植付装置と、
エンジンから伝達される動力を変速するとともに、車輪および前記植付装置へと伝達する伝動機構と、
を具備する歩行型田植機であって、
軸線方向に摺動操作されることにより前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸と、
植付作業中の作業者から手が届く位置に配置され、前記変速操作軸を軸線方向に摺動操作する第一操作具と、
植付作業中の作業者から手が届かない位置に配置され、前記変速操作軸を軸線回りに回動操作する第二操作具と、
を具備する歩行型田植機。
【請求項2】
前記変速操作軸に連動して、当該変速操作軸の軸線方向に移動する、または軸線回りに回動する指示部材と、
前記指示部材の位置に基づいて前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比、および前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を表示する表示部材と、
を具備する請求項1に記載の歩行型田植機。
【請求項1】
圃場に苗を植え付ける植付装置と、
エンジンから伝達される動力を変速するとともに、車輪および前記植付装置へと伝達する伝動機構と、
を具備する歩行型田植機であって、
軸線方向に摺動操作されることにより前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比を変更するとともに、軸線回りに回動操作されることにより前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を変更する変速操作軸と、
植付作業中の作業者から手が届く位置に配置され、前記変速操作軸を軸線方向に摺動操作する第一操作具と、
植付作業中の作業者から手が届かない位置に配置され、前記変速操作軸を軸線回りに回動操作する第二操作具と、
を具備する歩行型田植機。
【請求項2】
前記変速操作軸に連動して、当該変速操作軸の軸線方向に移動する、または軸線回りに回動する指示部材と、
前記指示部材の位置に基づいて前記伝動機構が前記車輪へ伝達する動力の変速比、および前記伝動機構が前記植付装置へ伝達する動力の変速比を表示する表示部材と、
を具備する請求項1に記載の歩行型田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−87535(P2011−87535A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244970(P2009−244970)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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