説明

歩行型田植機

【課題】微小な粉塵があっても植え付けクラッチを確実に操作することが可能であり、かつ、植え付けクラッチの操作に係る部品点数を削減することが可能な歩行型田植機を提供する。
【解決手段】歩行型田植機1にエンジン3から植え付け装置5への駆動力の伝達およびその停止を行う植え付けクラッチ90を操作する植え付けクラッチ操作機構200を具備し、植え付けクラッチ操作機構200に一端部が植え付けクラッチ90を操作するための植え付けクラッチアーム220に回動可能に連結され、中途部には曲げ方向に弾性変形する屈曲部241a・241bが形成されるメインロッド240を具備し、メインロッド240の他端部が引っ張られたとき、植え付けクラッチアーム220が左側面視で反時計回りに回動することにより植え付けクラッチ90が「切」の状態になり、エンジン3から植え付け装置5への駆動力の伝達が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型田植機の技術に関する。より詳細には、歩行型田植機の植え付けクラッチを操作する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンからの駆動力を植え付け装置に伝達するか否かを切り替える植え付けクラッチ機構を具備する歩行型田植機および乗用型田植機は知られている。
例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の乗用型田植機および特許文献2に記載の歩行型田植機における植え付けクラッチ機構は、主として植え付けクラッチ、クラッチホーク、ワイヤー、およびクラッチレバーを具備する。
上記植え付けクラッチは、植え付け装置に駆動力を伝達するための回転軸に相対回転可能に貫装されるとともに端面に係合部(係合爪)が形成され、エンジンからの駆動力が伝達される歯車と、当該回転軸に相対回転不能かつ回転軸の軸線方向に移動(摺動)可能に貫装され、歯車に対向する端面に係合部(係合爪)が形成されるとともに外周部に螺旋状のカム面が形成された爪クラッチ部材と、爪クラッチ部材を歯車に接近する方向に付勢するバネと、を具備する。
上記クラッチホークは爪クラッチ部材のカム面に当接可能な姿勢と当該カム面に当接不能な姿勢との間で姿勢変更可能な部材である。
上記ワイヤーの一端部はクラッチホークに連結され、ワイヤーの他端部は上記クラッチレバーに連結される。
【0004】
上記植え付けクラッチ機構は、植え付けクラッチレバーを操作することにより、(a)クラッチホークが爪クラッチ部材のカム面から離間した状態、または(b)クラッチホークが爪クラッチ部材のカム面に当接した状態、のいずれかに切り替えることが可能である。
【0005】
(a)の状態では、爪クラッチ部材がバネの付勢力により歯車に接近する方向に移動するため、歯車の係合部と爪クラッチ部材の係合部とが係合する。すなわち、植え付けクラッチが「入」となる。
植え付けクラッチが「入」のとき、歯車、爪クラッチ部材および回転軸が一体的に回転する(相対回転不能である)ために歯車から回転軸に駆動力を伝達することが可能であり、ひいてはエンジンからの駆動力を植え付け装置に伝達することが可能である。
【0006】
(b)の状態では、クラッチホークが爪クラッチ部材の螺旋状のカム面に当接しつつ爪クラッチ部材が回転軸と一体的に回転することにより、爪クラッチ部材がバネの付勢力に抗して歯車から離間する方向に移動し、歯車の係合部と爪クラッチ部材の係合部との係合が解除される。すなわち、植え付けクラッチが「切」となる。
植え付けクラッチが「切」のとき、歯車と回転軸とは相対回転可能であるために歯車から回転軸に駆動力を伝達することが出来ず、ひいてはエンジンからの駆動力を植え付け装置に伝達することが出来ない。
【0007】
一般に、植え付け装置(を構成する植え付けアーム群)は回転運動あるいは往復運動をしつつ苗を移植する。
仮に作業者が植え付けクラッチを「切」にすることにより植え付け装置が動作を停止したときの姿勢がその都度異なる場合には、以下の問題が生じる。
すなわち、植え付け装置を構成する植え付けアーム群が歩行型田植機の下方に振り下ろされたときに植え付けクラッチ機構が「切」になった場合、植え付けアーム群が地面に当接したまま歩行型田植機が走行することとなり、植え付け装置を破損する恐れがある。
また、植え付けクラッチ機構が「切」になったときの植え付け装置の姿勢によっては、作業者が植え付けクラッチ機構を再度「入」にしたときに植え付け装置が植え付け作業を確実に行うことが困難な場合がある。
【0008】
このような問題を解消するために、上記爪クラッチ部材に形成される螺旋状のカム面の形状が適宜選択され、(i)クラッチホークが爪クラッチ部材のカム面に当接可能となるときのクラッチホークに対する爪クラッチ部材の位相、および(ii)植え付けクラッチ機構が「切」になるときのクラッチホークに対する爪クラッチ部材の位相が所定の位相に設定されるとともに、上記クラッチ機構のワイヤーの中途部にはバネが設けられる。
なお、爪クラッチ部材の周方向におけるカム面の二つの端部のうち、歯車から遠い方の端部が(i)の位相に対応し、歯車に近い方の端部が(ii)の位相に対応するとともに、(ii)の位相は植え付け装置を構成する植え付けアーム群が上方に振り上げられた姿勢(苗載台から苗を切り取る手前で待機する姿勢)に対応する。
このように構成することにより、上記クラッチ機構を「切」とするべく作業者が植え付けクラッチレバーを操作した(植え付けクラッチ機構のワイヤーを植え付けクラッチレバー側に引き寄せた)場合、クラッチホークに対する爪クラッチ部材の位相が(i)の位相に到達しない時点では上記クラッチ機構のワイヤーの中途部に設けられたバネが弾性変形して伸長し、クラッチホークが爪クラッチ部材に向かって付勢されつつもカム面には当接しない状態が保持され、クラッチホークに対する爪クラッチ部材の位相が(i)の位相に到達した時点でクラッチホークが爪クラッチ部材のカム面に当接する。
従って、作業者がどのタイミングで植え付けクラッチレバーを操作しても、植え付け装置を構成する植え付けアーム群が上方に振り上げられた姿勢で上記クラッチ機構が「切」となる。
【0009】
しかし、上記クラッチ機構は、以下の問題点を有する。
すなわち、上記クラッチ機構の多くはアウターワイヤーとインナーワイヤーの組み合わせからなるワイヤーを採用しているが、例えば黄砂のような微小な粉塵の多い地域で上記クラッチ機構を具備する歩行型田植機を使用する場合、上記クラッチ機構を使用する過程でインナーワイヤーの外周面に付着した粉塵がアウターワイヤーの内部、すなわちアウターワイヤーの内周面とインナーワイヤーの外周面との隙間に持ち込まれ、アウターワイヤーに対するインナーワイヤーの移動(摺動)を阻害する(インナーワイヤーの動きが重くなる)場合がある。
このような問題を回避するためにはインナーワイヤーの表面に付着した粉塵を頻繁に除去する必要があり、メンテナンスが煩雑になる。
また、インナーワイヤーの中途部(厳密には、インナーワイヤーにおける植え付けクラッチ側の端部近傍)にバネを設ける必要があり、部品点数が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭57−102924号公報
【特許文献2】特開2003−265008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、微小な粉塵があっても植え付けクラッチを確実に操作することが可能であり、かつ、植え付けクラッチの操作に係る部品点数を削減することが可能な歩行型田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1においては、
エンジンから植え付け装置への駆動力の伝達およびその停止を行う植え付けクラッチを操作する操作機構を具備する歩行型田植機であって、
前記操作機構は、
一端部が前記植え付けクラッチを操作するための操作アームに回動可能に連結され、中途部には曲げ方向に弾性変形することにより一端部から他端部までの直線距離を変更するための弾性変形部が形成されるロッド部材を具備し、
前記ロッド部材の他端部が引っ張られたとき、前記操作アームが回動することにより前記エンジンから植え付け装置への駆動力の伝達が停止されるものである。
【0014】
請求項2においては、
前記操作機構は、
前記ロッド部材の他端部に回動可能に連結されるとともに機体に回動可能に支持される回動ブラケットと、
一端部が前記回動ブラケットに回動可能に連結される副ロッド部材と、
を具備するものである。
【0015】
請求項3においては、
前記ロッド部材は鋼棒をクランク状に折り曲げることにより製造されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、微小な粉塵があっても植え付けクラッチを確実に操作することが可能であり、かつ、植え付けクラッチの操作に係る部品点数を削減することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す左前方斜視図。
【図2】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す右後方斜視図。
【図3】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す左側面図。
【図4】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す平面図。
【図5】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の機体を示す分解斜視図。
【図6】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の伝動機構を示すスケルトン図。
【図7】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態のミッションケースを示す展開断面図。
【図8】(a)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の植え付けクラッチギヤを示す側面断面図、(b)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の植え付けクラッチギヤを示す背面図。
【図9】(a)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の植え付けクラッチ爪を示す側面断面図、(b)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の植え付けクラッチ爪を示す正面図。
【図10】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の植え付けクラッチ操作機構を示す分解斜視図。
【図11】(a)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態のクラッチホークを示す側面図、(b)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態のクラッチホークを示す正面図。
【図12】(a)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の植え付けクラッチアームを示す側面図、(b)本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態の植え付けクラッチアームを示す平面図。
【図13】本発明に係るロッド部材の別実施形態を示す図。
【図14】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態のチョークワイヤーを示す図。
【図15】従来の歩行型田植機のチョークワイヤーを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図1から図13を用いて本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態である歩行型田植機1の全体構成について説明する。
【0019】
図1に示す本実施形態の歩行型田植機1は、いわゆる四条植えの歩行型田植機である。
図1から図7、および図10に示す如く、歩行型田植機1は、主として機体2(図5参照)、エンジン3、左車輪4L、右車輪4R、植え付け装置5(図6および図7参照)、苗供給装置6、伝動機構7(図6および図7参照)、センターフロート10C、左サイドフロート10L、右サイドフロート10R、主クラッチ16(図6参照)および操作部17を具備する。
【0020】
機体2は本発明に係る機体の実施の一形態であり、歩行型田植機1の主たる構造体を成す部材群である。
図5に示す如く、機体2はエンジン台21、バンパー22、ミッションケース23、センターフレーム24、左車軸ケース25L、右車軸ケース25R、左側方フレーム26L、右側方フレーム26R、中央植え付けケース27C、左植え付けケース27L、右植え付けケース27R、左後フレーム28L、右後フレーム28Rを具備する。
【0021】
エンジン台21は機体2の前部を成す部材である。本実施形態のエンジン台21は金属板を適宜折り曲げることにより製造される。
【0022】
バンパー22は機体2の前部を保護するための部材である。バンパー22はエンジン台21の前端部に固定される。
【0023】
ミッションケース23は後述する伝動機構7を構成する部材群(の一部)を収容する部材である。本実施形態のミッションケース23は鋳造品である左側部材23Lおよび右側部材23R、並びにこれらを固定するボルトを具備する。
ミッションケース23の前端部はエンジン台21の後端部にボルトにより固定される。
【0024】
センターフレーム24は機体2の中央部を成す部材である。本実施形態のセンターフレーム24は前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材である。センターフレーム24の前端部はミッションケース23の後端部にボルトにより固定される。
【0025】
左車軸ケース25Lは左車輪4Lを機体2に対して概ね上下方向にスイング可能に支持し、かつ左車輪4Lを軸支する部材である。
左車軸ケース25Lの一端部(前端部)はミッションケース23の左側面(左側部材23L)に回動可能に支持され、左車軸ケース25Lの他端部は概ね左車軸ケース25Lの一端部の後方に配置される。左車軸ケース25Lの他端部(後端部)には左車輪4Lが軸支される。
【0026】
右車軸ケース25Rは右車輪4Rを機体2に対して概ね上下方向にスイング可能に支持し、かつ右車輪4Rを軸支する部材である。
右車軸ケース25Rの一端部(前端部)はミッションケース23の右側面(右側部材23R)に回動可能に支持され、右車軸ケース25Rの他端部は概ね右車軸ケース25Rの一端部の後方に配置される。右車軸ケース25Rの他端部(後端部)には右車輪4Rが軸支される。
【0027】
本実施形態の左車軸ケース25Lおよび右車軸ケース25Rは金属板にプレス加工を施すことにより細長いケース状(内部に空間が形成された形状)に成形された部材である。
【0028】
左側方フレーム26Lは機体2の左側部を成す部材であり、右側方フレーム26Rは機体2の右側部を成す部材である。
本実施形態の左側方フレーム26Lおよび右側方フレーム26Rは二本の金属製の円筒の端部を外形が概ねL字型の継手部材で連結したものである。
左側方フレーム26Lの一端部(継手部材で連結された二本の円筒のうち、一方の円筒において継手部材に固定されていない方の端部)はミッションケース23の左側面(左側部材23L)に固定され、左側方フレーム26Lの他端部(継手部材で連結された二本の円筒のうち、他方の円筒において継手部材に固定されていない方の端部)は左側方フレーム26Lの一端部の後左側方かつやや下方となる位置に配置される。
同様に、右側方フレーム26Rの一端部はミッションケース23の右側面(右側部材23R)に固定され、右側方フレーム26Rの他端部は右側方フレーム26Rの一端部の後右側方かつやや下方となる位置に配置される。
【0029】
中央植え付けケース27Cは後述する植え付け装置5のうち中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rを回転可能に軸支するとともにこれらに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の中央植え付けケース27Cは鋳造品であり、中央植え付けケース27Cの前端部はセンターフレーム24の後端部に固定される。
【0030】
左植え付けケース27Lは後述する植え付け装置5のうち左側植え付けアーム部52Lを回転可能に軸支するとともにこれに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の左植え付けケース27Lは鋳造品であり、左植え付けケース27Lの前端部は左側方フレーム26Lの他端部(後端部)に固定される。
【0031】
右植え付けケース27Rは後述する植え付け装置5のうち右側植え付けアーム部52Rを回転可能に軸支するとともにこれに駆動力を伝達するものである。
本実施形態の右植え付けケース27Rは鋳造品であり、右植え付けケース27Rの前端部は右側方フレーム26Rの他端部(後端部)に固定される。
【0032】
左後フレーム28Lは機体2の左後部を成す部材である。
本実施形態の左後フレーム28Lは前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材であり、左後フレーム28Lの前端部は左植え付けケース27Lの後端部に固定される。
【0033】
右後フレーム28Rは機体2の右後部を成す部材である。
本実施形態の右後フレーム28Rは前後方向に伸びた金属製の角筒状の部材であり、右後フレーム28Rの前端部は右植え付けケース27Rの後端部に固定される。
【0034】
なお、本実施形態の機体2に固定されている部材群(例えば、後述するハンドルフレーム171等)も実質的には機体2の一部(歩行型田植機1の構造体として機能し得る部材)である。
【0035】
図6に示すエンジン3は本発明に係るエンジンの実施の一形態であり、歩行型田植機1の駆動源である。本実施形態のエンジン3はガソリンエンジンであり、エンジン台21の上面の後部に固定される。
【0036】
図1から図4に示す左車輪4Lおよび右車輪4Rは歩行型田植機1の駆動輪である。左車輪4Lは左車軸ケース25Lの他端部(後端部)に軸支される。右車輪4Rは右車軸ケース25Rの他端部(後端部)に軸支される。
【0037】
図6に示す植え付け装置5は苗の植え付けを行う装置である。本実施形態の植え付け装置5はクランク式の植え付け装置であり、中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52L、右側植え付けアーム部52R、および図示せぬ駆動アーム、連動アーム等を具備する。
左側植え付けアーム部52L、中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51Rおよび右側植え付けアーム部52Rは左から順に間隔を空けて並んだ状態で、歩行型田植機1の機体2の後下部に配置される。
中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rは後述する苗供給装置6(苗載台61の前端部)に載置された苗マットから所定量の苗を切り取り、切り取られた苗を水田に移植する一連の作業を行うことにより、苗を水田に植え付ける。
【0038】
図1から図4に示す苗供給装置6は植え付け装置5に苗を供給する装置である。
苗供給装置6は苗載台61、縦送り装置62、横送り装置63(図6参照)および予備苗台64を具備する。
【0039】
苗載台61は植え付け装置5に供給する苗を載置する台である。苗載台61は前下がりに傾斜した載置面を有する板状の部材であり、機体2の後部の苗載台フレーム(本実施形態ではハンドルフレーム171)に左右方向に固定された上苗台レールおよび下苗台レールの上を左右に摺動可能に載置される。
苗載台61の載置面には苗マット(床土、レキメンマット等のマット状物の上に種子を蒔いて発芽させることにより、苗の根をマット状物に絡ませたもの)が載置される。
苗載台61の前端部は中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rの上方となる位置に配置される。
【0040】
縦送り装置62は苗載台61の前下部に配置され、苗載台61の載置面に載置された苗マットを苗載台61の前端部に搬送する装置である。縦送り装置62は苗載台61の載置面の反対側の面(裏面)に設けられ、載置面に突出したローラを回転駆動することにより苗マットを苗載台61の前端部に向けて搬送する。
【0041】
横送り装置63は苗載台61を左右に往復駆動させるものであり、苗載台61の前下方に配置される。
【0042】
予備苗台64は苗載台61に供給するための予備苗(予備の苗マット)を載置するための台である。予備苗台64は機体2に固定され、苗載台61の前方かつ機体2の上方となる位置に配置される。
【0043】
以下では主として図6および図7を用いて伝動機構7について説明する。
伝動機構7はエンジン3において発生した駆動力(エンジン3が発生させた駆動力)を左車輪4L、右車輪4R、植え付け装置5および苗供給装置6に伝達するための機構(部材群)である。
図6および図7に示す如く、伝動機構7はプーリ71a・71b、ベルト71c、プーリ72a・72b、ベルト72c、主軸73、ギヤ73a・73b・73c・73d・73e・73f、変速軸74、ギヤ74a、変速ギヤ75、左サイドクラッチ軸76L、右サイドクラッチ軸76R、サイドクラッチギヤ77、ボール78L・78L・・・、ボール78R・78R・・・、左サイドクラッチシフタ79L、右サイドクラッチシフタ79R、左サイドクラッチバネ80L、右サイドクラッチバネ80R、スプロケット81L・81R、スプロケット82L・82R、チェーン83L・83R、左車軸84L、右車軸84R、株間変速軸85、ギヤ85a、第一株間ギヤ86、第二株間ギヤ87、株間変速ギヤ88、植え付けクラッチ軸89、ベベルギヤ89a、植え付けクラッチ90、中央植え付け伝動軸91、ベベルギヤ91a・91b、中央植え付けアーム軸92、ベベルギヤ92a、スプロケット92b、左植え付け伝動軸93L、右植え付け伝動軸93R、ベベルギヤ94L・94R、左後伝動軸95L、右後伝動軸95R、ベベルギヤ96L・96R、ベベルギヤ97L・97R、左植え付けアーム軸98L、右植え付けアーム軸98Rおよびベベルギヤ99L・99Rを具備する。
【0044】
プーリ71aはエンジン3の本体から左側方に突出した出力軸3aの中途部に相対回転不能に固定される。
プーリ71bは油圧ポンプ112から左側方に突出した入力軸112aに相対回転不能に固定される。
ベルト71cはプーリ71aおよびプーリ71bに巻回される。図示せぬテンションプーリが巻きバネの弾性力でベルト71cに押し付けられることにより、ベルト71cには所定の大きさの張力が付与される。
【0045】
図6に示す如く、エンジン3において発生した駆動力は、プーリ71a、ベルト71cおよびプーリ71bを経て油圧ポンプ112に伝達される。
より詳細には、エンジン3の出力軸3aが回転することにより、プーリ71a、ベルト71c、プーリ71bおよび油圧ポンプ112の入力軸112aが回転し、油圧ポンプ112が駆動される。
なお、油圧ポンプ112は図示せぬピッチング制御機構(歩行型田植機1の車高を制御する機構)を構成する油圧シリンダ(不図示)に作動油を圧送するためのポンプである。
【0046】
プーリ72aはエンジン3の出力軸3aの先端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
プーリ72bは後述する主軸73の一端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
ベルト72cはプーリ72aおよびプーリ72bに巻回される。ベルト72cに主クラッチ16を当接させることにより、所定の大きさの張力を付与することが可能である。
【0047】
図6および図7に示す如く、主軸73はエンジン3において発生した駆動力をミッションケース23に入力するための回転軸である。主軸73はミッションケース23に回転可能に軸支される。主軸73のうち、一端部(左端部)はミッションケース23の左側方に突出し、その他の部分はミッションケース23に収容される。
【0048】
ギヤ73a・73b・73c・73d・73e・73fはいずれも主軸73に相対回転不能かつ主軸73の軸線方向(長手方向)に移動不能に固定され、ミッションケース23に収容される。
ギヤ73a・73bは歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる平歯車であり、本実施形態ではギヤ73aの歯数はギヤ73bの歯数よりも大きい。
ギヤ73c・73d・73e・73fは歩行型田植機1により植え付けられる苗の進行方向における間隔(株間)の変更に関わる歯車であり、「ギヤ73cの歯数<ギヤ73dの歯数<ギヤ73eの歯数<ギヤ73fの歯数」の関係が成立する。
【0049】
変速軸74は歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる回転軸である。変速軸74はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。
【0050】
ギヤ74aは変速軸74に相対回転不能かつ変速軸74の軸線方向に移動不能に固定される平歯車である。本実施形態では、変速軸74の右半部にギヤ74aが一体的に形成され、変速軸74の左半部にはスプライン溝が形成される。
【0051】
変速ギヤ75は歩行型田植機1の走行速度の変更に関わる歯車である。変速ギヤ75は歯数の異なる二つの平歯車を同軸で積層した形状を有する。変速ギヤ75のうち歯数が小さい方の平歯車を成す部分が小ギヤ部75a、歯数が大きい方の平歯車を成す部分が大ギヤ部75bである。
変速ギヤ75には貫通孔が形成され、当該貫通孔にはスプライン溝が形成される。変速ギヤ75は変速軸74の左半部に貫装される。
変速ギヤ75の貫通孔に形成されたスプライン溝と変速軸74の左半部に形成されたスプライン溝とが係合することにより、変速ギヤ75は変速軸74に対して相対回転不能かつ変速軸74の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
【0052】
左サイドクラッチ軸76Lは左車輪4Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左サイドクラッチ軸76Lの一端部(右端部)の外周面には、左サイドクラッチ軸76Lの軸線方向(長手方向)に伸びた複数の係合溝が形成される。
左サイドクラッチ軸76Lの右半部はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。左サイドクラッチ軸76Lの左半部は左車軸ケース25Lの一端部(前端部)に回転可能に軸支され、左車軸ケース25Lに収容される。
左車軸ケース25Lは左サイドクラッチ軸76Lによりミッションケース23に回動可能に(概ね上下方向にスイング可能に)支持される。
【0053】
右サイドクラッチ軸76Rは右車輪4Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右サイドクラッチ軸76Rの一端部(左端部)の外周面には、右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向(長手方向)に伸びた複数の係合溝が形成される。
右サイドクラッチ軸76Rの左半部はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。右サイドクラッチ軸76Rの右半部は右車軸ケース25Rの一端部(前端部)に回転可能に軸支され、右車軸ケース25Rに収容される。
右車軸ケース25Rは右サイドクラッチ軸76Rによりミッションケース23に回動可能に(概ね上下方向にスイング可能に)支持される。
【0054】
左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rがミッションケース23に軸支されたとき、左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rの軸線は互いに一直線となる。また、左サイドクラッチ軸76Lの右端面と右サイドクラッチ軸76Rの左端面とが軽く当接する。
【0055】
サイドクラッチギヤ77は左車輪4Lに駆動力を伝達するか否か、並びに右車輪4Rに駆動力を伝達するか否かを切り替えるための平歯車である。
サイドクラッチギヤ77は平歯車を成す円盤状の部分および当該円盤状の部分の両端面から突出した一対のスリーブ状の部分を合わせた形状を有する。
サイドクラッチギヤ77には、当該円盤状の部分および一対のスリーブ状の部分を貫通する貫通孔が形成される。当該貫通孔には、左サイドクラッチ軸76Lの右端部および右サイドクラッチ軸76Rの左端部が挿入される。
左サイドクラッチ軸76Lの右端部および右サイドクラッチ軸76Rの左端部がサイドクラッチギヤ77の貫通孔に挿入されているとき、サイドクラッチギヤ77は左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rに対して相対回転可能であるが、左サイドクラッチ軸76Lおよび右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向には移動不能である。
サイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分には、当該の一対のスリーブ状の部分外周面から貫通孔まで貫通する複数の横孔が形成される。
サイドクラッチギヤ77はギヤ74aと噛合する。
【0056】
図7に示す如く、ボール78L・78L・・・およびボール78R・78R・・・は金属製の球状の部材である。
ボール78L・78L・・・はサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分に形成された複数の横孔のうち、左サイドクラッチ軸76Lの右端部に対応するものに収容される。
ボール78R・78R・・・はサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分に形成された複数の横孔のうち、右サイドクラッチ軸76Rの左端部に対応するものに収容される。
【0057】
図6に示す如く、左サイドクラッチシフタ79Lおよび右サイドクラッチシフタ79Rは概ね筒状の部材である。
左サイドクラッチシフタ79Lは左サイドクラッチ軸76Lの右半部に貫装される。左サイドクラッチ軸76Lに貫装された左サイドクラッチシフタ79Lは左サイドクラッチ軸76Lの軸線方向に移動可能である。
右サイドクラッチシフタ79Rは右サイドクラッチ軸76Rの左半部に貫装される。右サイドクラッチ軸76Rに貫装された右サイドクラッチシフタ79Rは右サイドクラッチ軸76Rの軸線方向に移動可能である。
【0058】
左サイドクラッチバネ80Lは左サイドクラッチシフタ79Lを左サイドクラッチ軸76Lの右端部から離間する方向(左側方)に付勢する部材である。本実施形態の左サイドクラッチバネ80Lは巻きバネからなり、左サイドクラッチ軸76Lに嵌装される。
左サイドクラッチバネ80Lは弾性変形することにより左サイドクラッチシフタ79Lを付勢する。
【0059】
右サイドクラッチバネ80Rは右サイドクラッチシフタ79Rを右サイドクラッチ軸76Rの左端部から離間する方向(右側方)に付勢する部材である。本実施形態の右サイドクラッチバネ80Rは巻きバネからなり、右サイドクラッチ軸76Rに嵌装される。
右サイドクラッチバネ80Rは弾性変形することにより右サイドクラッチシフタ79Rを付勢する。
【0060】
図6に示す如く、左サイドクラッチシフタ79Lが左サイドクラッチバネ80Lの付勢力により左側方に移動したとき、左サイドクラッチシフタ79Lの右端部がサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に重なり、当該部分に形成された複数の横孔を塞ぐ。
その結果、当該横孔に収容されたボール78L・78L・・・は左サイドクラッチ軸76Lの右端部の外周面に形成された複数の係合溝およびサイドクラッチギヤ77に形成された複数の横孔に係合し、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77はボール78L・78L・・・により相対回転不能に連結される。
【0061】
左サイドクラッチシフタ79Lに外力を作用させることにより左サイドクラッチシフタ79Lが左サイドクラッチバネ80Lの付勢力に抗して右側方に移動したとき、左サイドクラッチシフタ79Lの右半部がサイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に重なる。
しかし、左サイドクラッチシフタ79Lの右半部の内周面にはボール78L・78L・・・を収容し得る空間が形成されているため、サイドクラッチギヤ77の一対のスリーブ状の部分のうち左側の部分の外周面に形成された複数の横孔からボール78L・78L・・・が突出することが可能である。
その結果、当該横孔に収容されたボール78L・78L・・・は左サイドクラッチ軸76Lの右端部の外周面に形成された複数の係合溝に係合せず、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77はボール78L・78L・・・により相対回転不能に連結されない。
【0062】
このように、左サイドクラッチシフタ79Lの位置を変更する(左側方または右側方に移動させる)ことにより、左サイドクラッチ軸76Lおよびサイドクラッチギヤ77が相対回転不能に連結されるか否か(サイドクラッチギヤ77から左サイドクラッチ軸76Lに駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0063】
右サイドクラッチシフタ79Rも同様に、右サイドクラッチシフタ79Rの位置を変更する(右側方または左側方に移動させる)ことにより、右サイドクラッチ軸76Rおよびサイドクラッチギヤ77が相対回転不能に連結されるか否か(サイドクラッチギヤ77から右サイドクラッチ軸76Rに駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0064】
スプロケット81Lは左サイドクラッチ軸76Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左車軸ケース25Lに収容される。
スプロケット82Lは後述する左車軸84Lの一端部(右端部)に相対回転不能に固定され、左車軸ケース25Lに収容される。
チェーン83Lはスプロケット81Lおよびスプロケット82Lに巻回され、左車軸ケース25Lに収容される。
【0065】
左車軸84Lは左車輪4Lを左車軸ケース25Lに軸支するための回転軸である。
左車軸84Lは左車軸ケース25Lの他端部(後端部)に回転可能に軸支され、左車軸84Lの右半部は左車軸ケース25Lに収容され、左車軸84Lの左半部は左車軸ケース25Lの左側方に突出している。
左車輪4Lは左車軸84Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定される。
【0066】
スプロケット81Rは右サイドクラッチ軸76Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右車軸ケース25Rに収容される。
スプロケット82Rは後述する右車軸84Rの一端部(左端部)に相対回転不能に固定され、右車軸ケース25Rに収容される。
チェーン83Rはスプロケット81Rおよびスプロケット82Rに巻回され、右車軸ケース25Rに収容される。
【0067】
右車軸84Rは右車輪4Rを右車軸ケース25Rに軸支するための回転軸である。
右車軸84Rは右車軸ケース25Rの他端部(後端部)に回転可能に軸支され、右車軸84Rの左半部は右車軸ケース25Rに収容され、右車軸84Rの右半部は右車軸ケース25Rの右側方に突出している。
右車輪4Rは右車軸84Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定される。
【0068】
株間変速軸85は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる回転軸である。
株間変速軸85はミッションケース23に回転可能に軸支され、ミッションケース23に収容される。本実施形態では、株間変速軸85の外周面にはスプライン溝が形成される。
【0069】
ギヤ85aは株間変速軸85の一端部(左端部)に相対回転不能かつ株間変速軸85の軸線方向(長手方向)に移動不能に固定される。
【0070】
第一株間ギヤ86は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。第一株間ギヤ86は大ギヤ部86aおよび小ギヤ部86bを具備する。
【0071】
大ギヤ部86aは平歯車を成す円盤状の部分と、当該円盤状の部分の一方の盤面から突出したスリーブ状の部分とを合わせた形状を有する。大ギヤ部86aには、大ギヤ部86aの円盤状の部分およびスリーブ状の部分を貫通する貫通孔が形成される。また、大ギヤ部86aには、円盤状の部分の一対の盤面を貫通する複数の係合孔が形成される。
小ギヤ部86bは平歯車を成す円盤状の部分である。小ギヤ部86bには、小ギヤ部86bの円盤状の部分を貫通する貫装孔が形成される。小ギヤ部86bに形成された貫装孔には大ギヤ部86aのスリーブ状の部分が貫装され、溶接により小ギヤ部86bが大ギヤ部86aに相対回転不能に固定される。
【0072】
株間変速軸85が大ギヤ部86aに形成された貫通孔を貫通することにより、第一株間ギヤ86が株間変速軸85の略中央部に貫装される。
株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86は株間変速軸85に対して相対回転可能である。
また、株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86の左右の端部は株間変速軸85に外嵌されたリングに当接するため、第一株間ギヤ86は株間変速軸85の軸線方向に移動不能である。
株間変速軸85に貫装された第一株間ギヤ86の大ギヤ部86aはギヤ73cに噛合する。
【0073】
第二株間ギヤ87は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。第二株間ギヤ87には、一対の盤面を貫通する貫通孔が形成される。
また、第二株間ギヤ87には、一対の盤面を貫通する複数の係合孔が形成される。
株間変速軸85が第二株間ギヤ87に形成された貫通孔を貫通することにより、第二株間ギヤ87は株間変速軸85の右端部に貫装される。
第二株間ギヤ87は株間変速軸85に対して相対回転可能かつ株間変速軸85の軸線方向に移動不能である。
株間変速軸85に貫装された第二株間ギヤ87はギヤ73fに噛合する。
【0074】
株間変速ギヤ88は歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)の変更に関わる平歯車である。
株間変速ギヤ88には左右一対の盤面を貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の内周面にはスプライン溝が形成される。また、株間変速ギヤ88の左右一対の盤面には、それぞれ複数の係合突起が形成される。
【0075】
株間変速軸85が株間変速ギヤ88に形成された貫通孔を貫通することにより、株間変速ギヤ88は株間変速軸85に貫装される。
株間変速ギヤ88が株間変速軸85に貫装されたとき、株間変速ギヤ88の貫通孔に形成されたスプライン溝と株間変速軸85に形成されたスプライン溝とが係合することにより、株間変速ギヤ88は株間変速軸85に対して相対回転不能かつ株間変速軸85の軸線方向(長手方向)に移動可能である。
なお、株間変速ギヤ88が株間変速軸85に貫装されたとき、株間変速ギヤ88は第一株間ギヤ86および第二株間ギヤ87により挟まれる位置に配置される。
【0076】
植え付けクラッチ軸89は植え付け装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するための回転軸である。
植え付けクラッチ軸89はミッションケース23に回転可能に軸支される。
植え付けクラッチ軸89の中途部はミッションケース23に収容され、植え付けクラッチ軸89の一端部(左端部)および他端部(右端部)はそれぞれミッションケース23の左側方および右側方に突出している。
植え付けクラッチ軸89の左半部には二つのリング状の溝が互いに間隔を空けて形成され、当該二つの溝には二つのリングが外嵌される。また、植え付けクラッチ軸89の外周面において、植え付けクラッチ軸89の左半部に形成された二つのリング状の溝のうち右側の溝から植え付けクラッチ軸89の中央部までの部分にはスプライン溝が形成される。
【0077】
ベベルギヤ89aは植え付けクラッチ軸89の中途部に相対回転不能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向に移動不能に固定される。
【0078】
植え付けクラッチ90は本発明に係る植え付けクラッチの実施の一形態であり、エンジン3から植え付け装置5および苗供給装置6に駆動力を伝達するか否かを切り替える(駆動力の伝達およびその停止を行う)ためのクラッチである。
本実施形態の植え付けクラッチ90は植え付けクラッチギヤ90a、植え付けクラッチ爪90bおよび植え付けクラッチバネ90cを具備する。
【0079】
植え付けクラッチギヤ90aは平歯車である。
図8に示す如く、植え付けクラッチギヤ90aには一対の盤面を貫通する貫通孔90dが形成される。植え付けクラッチ軸89を貫通孔90dに相対回転可能に貫通することにより、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ軸89の左半部に貫装され、ミッションケース23に収容される。
また、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ軸89の左半部に外嵌された二つのリングに挟まれる位置に配置されるので、植え付けクラッチ軸89の軸線方向に移動不能である。
【0080】
図8に示す如く、植え付けクラッチ軸89に貫装された植え付けクラッチギヤ90aの右側の盤面には係合突起90e・90eが形成される。
本実施形態の係合突起90e・90eは、右側の盤面に植え付けクラッチギヤ90aの軸線を中心とする円筒状の突起を形成し、当該円筒状の突起の一部(図8(b)における「谷」に対応する部分)を除去することにより残った円弧状の部分(図8(b)における「山」に対応する部分)である。
本実施形態の係合突起90e・90eは植え付けクラッチギヤ90aの軸線を中心として互いに180°位相がずれた位置に配置される。
【0081】
図7に示す如く、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ軸89の右半部に外嵌された二つのリングで挟まれた位置に配置され、植え付けクラッチギヤ90aの左右の盤面は当該二つのリングに当接する。従って、植え付けクラッチ軸89に貫装された植え付けクラッチギヤ90aは、植え付けクラッチ軸89に対して相対回転可能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向に移動不能である。
【0082】
図9に示す如く、本実施形態の植え付けクラッチ爪90bはフランジ部材90fおよび胴体部材90kを具備する。
【0083】
図9(a)に示す如く、フランジ部材90fは円筒部および当該円筒部の一端部(左端部)に円盤状に形成された鍔部を有する。フランジ部材90fの円筒部には軸線方向に貫通する貫通孔90gが形成される。貫通孔90gの内周面にはスプライン溝が形成される。
図9(b)に示す如く、フランジ部材90fの鍔部の周縁部には植え付けクラッチ爪90bの軸線方向から見て円弧状の係合溝90h・90hが形成される。
【0084】
胴体部材90kは概ね円柱形状の部材である。図9(a)に示す如く、胴体部材90kには軸線方向に貫通する貫通孔90mが形成される。胴体部材90kの左側の端面には螺旋状のカム面90nが形成される。
本実施形態では、フランジ部材90fの円筒部を貫通孔90mに貫通させるとともにフランジ部材90fと胴体部材90kとを溶接で固定することにより、植え付けクラッチ爪90bが製造される。
図9(a)に示す如く、フランジ部材90fと胴体部材90kとが固定されたとき、胴体部材90kのカム面90nは所定の間隔を空けてフランジ部材90fの鍔部の右側の盤面に対向する。
【0085】
フランジ部材90fに形成された貫通孔90gに植え付けクラッチ軸89を貫通することにより、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチ軸89に貫装される。
【0086】
図7に示す如く、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチギヤ90aの右側となる位置(植え付けクラッチギヤ90aとベベルギヤ89aとで挟まれる位置)に配置される。
また、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチ爪90bの貫通孔90gに形成されたスプライン溝と植え付けクラッチ軸89に形成されたスプライン溝とが係合する。
従って、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチ軸89に対して相対回転不能かつ植え付けクラッチ軸89の軸線方向(長手方向)に移動可能(摺動可能)である。
【0087】
植え付けクラッチバネ90cは植え付けクラッチ爪90bを植え付けクラッチギヤ90aに接近する方向(本実施形態では左側方)に付勢する部材である。本実施形態の植え付けクラッチバネ90cは金属製の巻きバネであり、植え付けクラッチ軸89に貫装される。
植え付けクラッチバネ90cが植え付けクラッチ軸89に貫装されたとき、植え付けクラッチバネ90cの一端部(右端部)はベベルギヤ89aの左端面に当接し、植え付けクラッチバネ90cの他端部(左端部)は植え付けクラッチ爪90bの右側の端面に当接する。
【0088】
図7に示す如く、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチバネ90cの付勢力により左側方(植え付けクラッチギヤ90aに接近する方向)に移動したとき、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合突起90e・90eと植え付けクラッチ爪90bに形成された係合溝90h・90hとが係合し、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転不能に連結される。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bは一体的に回転することとなり、駆動力を植え付け装置5および苗供給装置6に伝達することが可能である。
【0089】
植え付けクラッチ爪90bに外力を加えたとき(本実施形態では、後述するクラッチホーク210(図7参照)が植え付けクラッチ爪90bのカム面90nに当接しつつ植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチギヤ90aと一体的に回転したとき)、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチバネ90cの付勢力に抗して右側方(植え付けクラッチギヤ90aから離間する方向)に移動し、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合突起90e・90eと植え付けクラッチ爪90bに形成された係合溝90h・90hとが係合した状態が解除される。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転可能となり(植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bは一体的に回転しなくなり)、駆動力を植え付け装置5および苗供給装置6に伝達することができない。
【0090】
このように、植え付けクラッチ爪90bの位置を変更する(左側方または右側方に移動させる)ことにより、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bが相対回転不能に連結されるか否か(植え付けクラッチギヤ90aから植え付けクラッチ爪90bを経て植え付けクラッチ軸89に駆動力を伝達可能であるか否か)を切り替えることが可能である。
【0091】
中央植え付け伝動軸91は植え付け装置5のうち、中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
図6に示す如く、中央植え付け伝動軸91はセンターフレーム24に収容される。
中央植え付け伝動軸91の一端部(前端部)はミッションケース23の後端部に回転可能に軸支され、中央植え付け伝動軸91の他端部(後端部)は中央植え付けケース27Cの前端部に回転可能に軸支される。
【0092】
ベベルギヤ91aは中央植え付け伝動軸91の一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、ミッションケース23に収容される。ベベルギヤ91aはベベルギヤ89aに噛合する。
【0093】
ベベルギヤ91bは中央植え付け伝動軸91の他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、中央植え付けケース27Cに収容される。
【0094】
中央植え付けアーム軸92は植え付け装置5のうち、中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
中央植え付けアーム軸92は中央植え付けケース27Cに回転可能に軸支される。中央植え付けアーム軸92の一端部(左端部)および他端部(右端部)は中央植え付けケース27Cの左側方および右側方にそれぞれ突出している。中央植え付けアーム軸92の中途部は中央植え付けケース27Cに収容される。
中央植え付けアーム軸92の一端部(左端部)および他端部(右端部)には、それぞれ中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rが連結される。
【0095】
左植え付け伝動軸93Lは植え付け装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左植え付け伝動軸93Lの一端部(右端部)は植え付けクラッチ軸89の一端部(左端部)に相対回転不能に連結される。
左植え付け伝動軸93Lは左側方フレーム26Lの一端部(ミッションケース23の左側面に固定されている方の端部)から屈曲部(左側方フレーム26Lの継手部材に対応する部分)までの部分に収容される。
左植え付け伝動軸93Lの他端部(左端部)は左側方フレーム26Lの屈曲部に回転可能に軸支される。
【0096】
ベベルギヤ94Lは左植え付け伝動軸93Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左側方フレーム26Lの屈曲部に収容される。
【0097】
左後伝動軸95Lは植え付け装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左後伝動軸95Lのうち一端部(前端部)から中途部までの部分は左側方フレーム26Lの屈曲部から他端部(左植え付けケース27Lの前端部に固定されている方の端部)までの部分に収容され、左後伝動軸95Lのうち他端部(後端部)は左植え付けケース27Lに収容される。
左後伝動軸95Lの一端部(前端部)は左側方フレーム26Lの屈曲部に回転可能に軸支され、左後伝動軸95Lの他端部(後端部)は左植え付けケース27Lに回転可能に軸支される。
【0098】
ベベルギヤ96Lは左後伝動軸95Lの一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、左側方フレーム26Lの屈曲部に収容される。ベベルギヤ96Lはベベルギヤ94Lに噛合する。
ベベルギヤ97Lは左後伝動軸95Lの他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、左植え付けケース27Lに収容される。
【0099】
左植え付けアーム軸98Lは植え付け装置5のうち、左側植え付けアーム部52Lへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
左植え付けアーム軸98Lは左植え付けケース27Lに回転可能に軸支される。左植え付けアーム軸98Lのうち、一端部(右端部)は左植え付けケース27Lの右側方に突出し、残りの部分は左植え付けケース27Lに収容される。
左植え付けアーム軸98Lの一端部(右端部)には、左側植え付けアーム部52Lが連結される。
【0100】
ベベルギヤ99Lは左植え付けアーム軸98Lの他端部(左端部)に相対回転不能に固定され、左植え付けケース27Lに収容される。ベベルギヤ99Lはベベルギヤ97Lに噛合する。
【0101】
右植え付け伝動軸93Rは植え付け装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右植え付け伝動軸93Rの一端部(左端部)は植え付けクラッチ軸89の他端部(右端部)に相対回転不能に連結される。
右植え付け伝動軸93Rは右側方フレーム26Rの一端部(ミッションケース23の右側面に固定されている方の端部)から屈曲部(右側方フレーム26Rの継手部材に対応する部分)までの部分に収容される。
右植え付け伝動軸93Rの他端部(右端部)は右側方フレーム26Rの屈曲部に回転可能に軸支される。
【0102】
ベベルギヤ94Rは右植え付け伝動軸93Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右側方フレーム26Rの屈曲部に収容される。
【0103】
右後伝動軸95Rは植え付け装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右後伝動軸95Rのうち一端部(前端部)から中途部までの部分は右側方フレーム26Rの屈曲部から他端部(右植え付けケース27Rの前端部に固定されている方の端部)までの部分に収容され、右後伝動軸95Rのうち他端部(後端部)は右植え付けケース27Rに収容される。
右後伝動軸95Rの一端部(前端部)は右側方フレーム26Rの屈曲部に回転可能に軸支され、右後伝動軸95Rの他端部(後端部)は右植え付けケース27Rに回転可能に軸支される。
【0104】
ベベルギヤ96Rは右後伝動軸95Rの一端部(前端部)に相対回転不能に固定され、右側方フレーム26Rの屈曲部に収容される。ベベルギヤ96Rはベベルギヤ94Rに噛合する。
ベベルギヤ97Rは右後伝動軸95Rの他端部(後端部)に相対回転不能に固定され、右植え付けケース27Rに収容される。
【0105】
右植え付けアーム軸98Rは植え付け装置5のうち、右側植え付けアーム部52Rへの駆動力の伝達に関わる回転軸である。
右植え付けアーム軸98Rは右植え付けケース27Rに回転可能に軸支される。右植え付けアーム軸98Rのうち、一端部(左端部)は右植え付けケース27Rの左側方に突出し、残りの部分は右植え付けケース27Rに収容される。
右植え付けアーム軸98Rの一端部(左端部)には、右側植え付けアーム部52Rが連結される。
【0106】
ベベルギヤ99Rは右植え付けアーム軸98Rの他端部(右端部)に相対回転不能に固定され、右植え付けケース27Rに収容される。ベベルギヤ99Rはベベルギヤ97Rに噛合する。
【0107】
以下では、エンジン3から左車輪4Lまでの駆動力の伝達経路およびエンジン3から右車輪4Rまでの駆動力の伝達経路について説明する。
図6に示す如く、エンジン3において発生した駆動力は出力軸3a、プーリ72a、ベルト72c、プーリ72bを経て主軸73に伝達される。
【0108】
主軸73から変速軸74までの駆動力の伝達経路は、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更することにより変化する。
【0109】
変速ギヤ75が左から一番目の位置(最も左側となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の小ギヤ部75aがギヤ73aに噛合する。
この場合、本実施形態では「前進2速(歩行型田植機1が高速で前方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73a、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0110】
変速ギヤ75が左から二番目の位置(左から一番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の大ギヤ部75bがギヤ73bに噛合する。
この場合、本実施形態では「前進1速(歩行型田植機1が低速で前方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73b、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0111】
変速ギヤ75が左から三番目の位置(左から二番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75はギヤ73aおよびギヤ73bのいずれにも噛合しない。
この場合、本実施形態では「中立(歩行型田植機1が走行しない場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73から変速軸74に伝達されない。
【0112】
変速ギヤ75が左から四番目の位置(左から三番目の位置の右隣となる位置であり、最も右側となる位置)に移動した場合、変速ギヤ75の大ギヤ部75bが第一株間ギヤ86の小ギヤ部86bに噛合する。
この場合、本実施形態では「後進(歩行型田植機1が後方に走行する場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73c、第一株間ギヤ86、変速ギヤ75を経て変速軸74に伝達される。
【0113】
このように、変速軸74に対する変速ギヤ75の位置を変更する(「左から一番目の位置」から「左から四番目の位置」までの四つの位置のいずれかを選択する)ことにより、歩行型田植機1の走行および停止、走行方向(前進および後進)、並びに前進時の走行速度(前進1速および前進2速)を切り替えることが可能である。
【0114】
変速軸74に伝達された駆動力は、変速軸74からギヤ74aを経てサイドクラッチギヤ77に伝達される。
左サイドクラッチシフタ79Lが左側方に移動している場合、サイドクラッチギヤ77に伝達された駆動力はボール78L・78L・・・、左サイドクラッチ軸76L、スプロケット81L、チェーン83L、スプロケット82L、左車軸84Lを経て左車輪4Lに伝達される。
右サイドクラッチシフタ79Rが右側方に移動している場合、サイドクラッチギヤ77に伝達された駆動力はボール78R・78R・・・、右サイドクラッチ軸76R、スプロケット81R、チェーン83R、スプロケット82R、右車軸84Rを経て右車輪4Rに伝達される。
【0115】
以下では、エンジン3から植え付け装置5までの駆動力の伝達経路およびエンジン3から苗供給装置6までの駆動力の伝達経路について説明する。
図6に示す如く、エンジン3において発生した駆動力は出力軸3a、プーリ72a、ベルト72c、プーリ72bを経て主軸73に伝達される。
【0116】
主軸73から株間変速軸85までの駆動力の伝達経路は、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更することにより変化する。
【0117】
株間変速ギヤ88が左から一番目の位置(最も左側となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88の左側の盤面に形成された複数の係合突起が第一株間ギヤ86の大ギヤ部86aに形成された複数の係合孔に係合し、株間変速ギヤ88および第一株間ギヤ86が一体的に回転可能な状態(相対回転不能な状態)となる。
この場合、本実施形態では「株間1速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が最も大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73c、第一株間ギヤ86、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0118】
株間変速ギヤ88が左から二番目の位置(左から一番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73dに噛合する。
この場合、本実施形態では「株間2速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が二番目に大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73d、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0119】
株間変速ギヤ88が左から三番目の位置(左から二番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73c、ギヤ73d、ギヤ73eおよびギヤ73fのいずれにも噛合しない。
この場合、本実施形態では「中立(歩行型田植機1が植え付け装置5に駆動力を伝達しない場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73から株間変速軸85に伝達されない。
【0120】
株間変速ギヤ88が左から四番目の位置(左から三番目の位置の右隣となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88がギヤ73eに噛合する。
この場合、本実施形態では「株間3速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が三番目に大きい場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73e、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0121】
株間変速ギヤ88が左から五番目の位置(左から四番目の位置の右隣となる位置であって、最も右側となる位置)に移動した場合、株間変速ギヤ88の右側の盤面に形成された複数の係合突起が第二株間ギヤ87に形成された複数の係合孔に係合し、株間変速ギヤ88および第二株間ギヤ87が一体的に回転可能な状態(相対回転不能な状態)となる。
この場合、本実施形態では「株間4速(歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)が四番目に大きい(最も小さい)場合の駆動力伝達経路)」が選択された状態となり、主軸73に伝達された駆動力は主軸73からギヤ73f、第二株間ギヤ87、株間変速ギヤ88を経て株間変速軸85に伝達される。
【0122】
このように、株間変速軸85に対する株間変速ギヤ88の位置を変更する(「左から一番目の位置」から「左から五番目の位置」までの五つの位置のいずれかを選択する)ことにより、歩行型田植機1により植え付けられる苗の間隔(株間)を切り替えることが可能である。
【0123】
植え付けクラッチ90が「入」になっている場合(植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合突起90e・90eと植え付けクラッチ爪90bに形成された係合溝90h・90hとが係合している場合)、株間変速軸85に伝達された駆動力はギヤ85a、植え付けクラッチ90を経て植え付けクラッチ軸89に伝達される。
【0124】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力はベベルギヤ89a、ベベルギヤ91a、中央植え付け伝動軸91、ベベルギヤ91b、ベベルギヤ92a、中央植え付けアーム軸92を経て中央左側植え付けアーム部51Lおよび中央右側植え付けアーム部51Rに伝達される。
また、中央植え付けアーム軸92に伝達された駆動力はスプロケット92bを経て苗供給装置6(縦送り装置62および横送り装置63)に伝達される。
【0125】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力は左植え付け伝動軸93L、ベベルギヤ94L、ベベルギヤ96L、左後伝動軸95L、ベベルギヤ97L、ベベルギヤ99L、左植え付けアーム軸98Lを経て左側植え付けアーム部52Lに伝達される。
【0126】
植え付けクラッチ軸89に伝達された駆動力は右植え付け伝動軸93R、ベベルギヤ94R、ベベルギヤ96R、右後伝動軸95R、ベベルギヤ97R、ベベルギヤ99R、右植え付けアーム軸98Rを経て右側植え付けアーム部52Rに伝達される。
【0127】
以下では図1から図4を用いてセンターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rについて説明する。
センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rは歩行型田植機1に浮力を付与する(ひいては、歩行型田植機1が水田に埋没することを防止する)ものである。
センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rは前後方向に伸びた概ね板状の部材である。センターフロート10C、左サイドフロート10Lおよび右サイドフロート10Rの内部にはそれぞれ空間が形成され、これらの空間には空気が封入される。
【0128】
図1から図3に示す如く、センターフロート10Cは機体2の左右中央かつ下方となる位置に配置される。
センターフロート10Cの後端部は機体2の左右中央部かつ後下部となる位置に回動可能に連結される。センターフロート10Cの前端部は機体2の左右中央部かつ前下部となる位置に上下方向に移動可能に(揺動可能に)連結される。
【0129】
図1から図4に示す如く、左サイドフロート10Lは機体2の下方かつ左後寄りとなる位置に配置される。
図1および図3に示す如く、左サイドフロート10Lの後端部は機体2の左後下部となる位置に回動可能に連結される。左サイドフロート10Lの前端部は機体2の前後中央部かつ左下部となる位置に上下方向に移動可能に(揺動可能に)連結される。
【0130】
図1から図4に示す如く、右サイドフロート10Rは機体2の下方かつ右後寄りとなる位置に配置される。
図1に示す如く、右サイドフロート10Rの後端部は機体2の右後下部となる位置に回動可能に連結される。右サイドフロート10Rの前端部は機体2の前後中央部かつ右下部となる位置に上下方向に移動可能に(揺動可能に)連結される。
【0131】
以下では図1から図4、並びに図10から図13を用いて操作部17について説明する。
操作部17は作業者が歩行型田植機1の各部を操作するためのものである。
図2に示す如く、操作部17はハンドルフレーム171、走行・株間変速レバー172、左サイドクラッチレバー173L、右サイドクラッチレバー173R、スイングレバー175、苗取り量調整レバー176、主クラッチレバー177および植え付けクラッチ操作機構200(図10参照)を具備する。
【0132】
ハンドルフレーム171は操作部17の主たる構造体であり、機体2の後部に固定される。
図1から図4に示す如く、ハンドルフレーム171は下部フレーム171a、中央フレーム171b、上部フレーム171c、左側部フレーム171dおよび右側部フレーム171eを具備する。
【0133】
下部フレーム171aはハンドルフレーム171の下部を成す部材である。
本実施形態の下部フレーム171aは金属製の細長い円筒である。下部フレーム171aの一端部(左端部)は左後フレーム28Lの後端部に固定される。下部フレーム171aの他端部(右端部)は右後フレーム28Rの後端部に固定される。
【0134】
中央フレーム171bはハンドルフレーム171の中央部を成す部材である。
本実施形態の中央フレーム171bは金属製の細長い角筒である。
中央フレーム171bの一端部(前端部)は中央植え付けケース27Cの後端部に固定され、中央フレーム171bの中途部は下部フレーム171aの中央部(左右中央部)に固定される。中央フレーム171bの中途部(下部フレーム171aの中央部に固定される部分)において屈曲しており、中央フレーム171bはその中途部から他端部(後端部)までの部分は後斜め上方に延びる。中央フレーム171bの他端部(後端部)は苗載台61の後面上半部の後方となる位置に配置される。
【0135】
上部フレーム171cはハンドルフレーム171の上部を成す部材である。
本実施形態の上部フレーム171cは金属製の細長い円筒であり、上部フレーム171cの両端部(一端部および他端部)の長手方向が上部フレーム171cの中途部の長手方向に対して垂直となるように二箇所で屈曲される。上部フレーム171cの中途部は中央フレーム171bの他端部に固定される。
上部フレーム171cの中途部は中央フレーム171bの他端部に固定されたとき、上部フレーム171cの中途部の長手方向は左右方向に平行となり、上部フレーム171cの一端部(左端部)および他端部(右端部)は上部フレーム171cの中途部の後方に延びる。上部フレーム171cの一端部および他端部には作業者が握るためのグリップが装着される。
【0136】
左側部フレーム171dはハンドルフレーム171の左側部を成す部材である。
本実施形態の左側部フレーム171dは金属製の細長い円筒である。左側部フレーム171dの一端部(下端部)は下部フレーム171aの一端部(左端部)に固定される。左側部フレーム171dの他端部(上端部)は上部フレーム171cの一端部と中途部との境界部分(左側の屈曲部)に固定される。
【0137】
右側部フレーム171eはハンドルフレーム171の右側部を成す部材である。
本実施形態の右側部フレーム171eは金属製の細長い円筒である。右側部フレーム171eの一端部(下端部)は下部フレーム171aの他端部(右端部)に固定される。右側部フレーム171eの他端部(上端部)は上部フレーム171cの他端部と中途部との境界部分(右側の屈曲部)に固定される。
【0138】
走行・株間変速レバー172は歩行型田植機1の走行変速および株間変速を行うためのレバーである。
走行・株間変速レバー172の基端部は機体2(より詳細には、中央植え付けケース27Cの上部)に回動可能に支持され、走行・株間変速レバー172の先端部(作業者が手で持つ部分)は苗載台61の後面上半部の前方となる位置に配置される。
走行・株間変速レバー172はリンク機構(不図示)を介して伝動機構7の変速ギヤ75および株間変速ギヤ88に連結される(より詳細には、変速ギヤ75を変速軸74の軸線方向に移動させるためのシフタおよび株間変速ギヤ88を株間変速軸85の軸線方向に移動させるためのシフタに連結される)。
作業者は、走行・株間変速レバー172の先端部を手で持って走行・株間変速レバー172を回動させることにより、歩行型田植機1の走行変速および株間変速を行うことが可能である。
【0139】
左サイドクラッチレバー173Lおよび右サイドクラッチレバー173Rは歩行型田植機1の走行方向(直進、左旋回および右旋回)を操作するためのレバーである。
【0140】
左サイドクラッチレバー173Lは上部フレーム171cの左端部の下部に回動可能に支持される。
左サイドクラッチレバー173Lはリンク機構(不図示)を介して左サイドクラッチシフタ79L(より詳細には、左サイドクラッチホーク173a(図7参照))に連結される。
作業者は、左サイドクラッチレバー173Lを握った状態で保持する(左サイドクラッチレバー173Lが上方に回動した状態を保持する)ことにより、左サイドクラッチシフタ79Lを右側方に移動させ、ひいてはエンジン3から左車輪4Lへの駆動力の伝達を停止することが可能である。
【0141】
右サイドクラッチレバー173Rは上部フレーム171cの右端部の下部に回動可能に支持される。
右サイドクラッチレバー173Rはリンク機構(不図示)を介して右サイドクラッチシフタ79R(より詳細には、右サイドクラッチホーク173b(図7参照))に連結される。
作業者は、右サイドクラッチレバー173Rを握った状態で保持する(右サイドクラッチレバー173Rが上方に回動した状態を保持する)ことにより、右サイドクラッチシフタ79Rを左側方に移動させ、ひいてはエンジン3から右車輪4Rへの駆動力の伝達を停止することが可能である。
【0142】
作業者が左サイドクラッチレバー173Lおよび右サイドクラッチレバー173Rのいずれも握っていないとき、歩行型田植機1は直進することが可能である。
作業者が左サイドクラッチレバー173Lを握るとともに右サイドクラッチレバー173Rを握っていないとき、歩行型田植機1は左旋回することが可能である。
作業者が右サイドクラッチレバー173Rを握るとともに左サイドクラッチレバー173Lを握っていないとき、歩行型田植機1は右旋回することが可能である。
作業者が左サイドクラッチレバー173Lおよび右サイドクラッチレバー173Rのいずれも握っているとき、歩行型田植機1は直進することができない。
【0143】
スイングレバー175は歩行型田植機1の車高を操作するためのレバーである。
スイングレバー175の基端部は上部フレーム171cの中途部やや右寄りかつ後述する植え付けクラッチレバー271の右隣となる位置に回動可能に支持される。
スイングレバー175の基端部は、リンク機構(不図示)を介して油圧ポンプ112が図示せぬピッチング制御機構(歩行型田植機1の車高を制御する機構)を構成する油圧シリンダ(不図示)に圧送する作動油の経路を切り替える切替弁に連結される。
作業者は、スイングレバー175の先端部が左右方向に傾倒するようにスイングレバー175を回動させることにより、歩行型田植機1の車高を変更する(歩行型田植機1の車高を上げる、あるいは下げる)ことが可能である。
【0144】
苗取り量調整レバー176は苗取り量、すなわち中央左側植え付けアーム部51L、中央右側植え付けアーム部51R、左側植え付けアーム部52Lおよび右側植え付けアーム部52Rが苗載台61に載置されている苗マットから一回に取り出す苗の本数(一株本数)を調整するためのレバーである。
苗取り量調整レバー176の基端部は中央フレーム171bの中途部右側面に回動可能に支持される。苗取り量調整レバー176の基端部はリンク機構(不図示)を介して苗載台61の前端部(下端部)に設けられた苗取り出し板(不図示)に連結される。
作業者は、苗取り量調整レバー176の先端部が上下方向に傾倒するようにスイングレバー175を回動させることにより、苗取り量を調整することが可能である。
【0145】
主クラッチレバー177は、主クラッチ16を操作することによりエンジン3から左車輪4L、右車輪4R、植え付け装置5および苗供給装置6への駆動力の伝達およびその停止を切り替えるためのレバーである。
主クラッチレバー177の基端部はハンドルフレーム171の上部フレーム171cの中途部かつ左寄りとなる位置に固定されたレバー支持部材171fに軸支される。
レバー支持部材171fに支持された主クラッチレバー177は、前後方向に(主クラッチレバー177の先端部(グリップが装着されている部分)が前方および後方に傾倒する方向に)回動することが可能である。
主クラッチレバー177はリンク機構(不図示)を介して主クラッチ16(図6参照)に連結される。
本実施形態の主クラッチ16はいわゆるベルトテンション式のクラッチであり、機体2に回動可能に支持されるアームと、当該アームの一端部に回転可能に支持されるローラと、一端部が当該アームの中途部に係止されるとともに他端部が機体2に係止されることにより当該ローラがベルト72cに当接する方向に当該アームを付勢するバネと、を具備する。
作業者は、主クラッチレバー177を後方に回動させることにより、主クラッチ16のバネの付勢力に抗して主クラッチ16のローラがベルト72cから離間する方向に主クラッチ16のアームを回動させ、ベルト72cの張力を減少させてエンジン3から左車輪4L、右車輪4R、植え付け装置5および苗供給装置6への駆動力の伝達の停止することが可能である。
【0146】
以下では、図5、および図7から図13を用いて植え付けクラッチ操作機構200について説明する。
植え付けクラッチ操作機構200は本発明に係る操作機構の実施の一形態であり、植え付けクラッチ90を操作する(作業者が植え付けクラッチ90を操作するために用いる)ものである。
図10に示す如く、植え付けクラッチ操作機構200はクラッチホーク210、植え付けクラッチアーム220、ナット225、クラッチアームバネ230、メインロッド240、ピン245・246、回動ブラケット250、サブロッド260、ピン265・266および操作部材270を具備する。
【0147】
図10および図11に示す如く、クラッチホーク210はホーク軸211およびホーク212を具備する。
【0148】
ホーク軸211は概ね円柱形状の部材であり、ホーク軸211の一端部(左端部)の外周面には雄ネジ211aが形成される。
ホーク軸211の一端部の外周面であって雄ネジ211aに連なる部分には一対の係合面211b・211bが形成される。一対の係合面211b・211bは互いに平行であり、かつ、ホーク軸211の軸線(中心線)から等距離となる位置に配置される。
【0149】
ホーク212は板状の部材であり、ホーク212の一端部(基端部)はホーク軸211の他端部(右端部)に溶接により相対回転不能に固定される。
ホーク212の他端部(先端部)はホーク212の長手方向に対してかぎ爪状に屈曲した形状を有し、当接部212aを成す。
【0150】
図5および図7に示す如く、クラッチホーク210は、ホーク軸211がミッションケース23に形成された軸支孔23aに貫装されることによりミッションケース23に回転可能に軸支される。
軸支孔23aはミッションケース23の左側部材23Lに形成される孔であり、ミッションケース23の左側面(外部)とミッションケース23の内周面(内部)とを連通する。
【0151】
ホーク軸211がミッションケース23に軸支されたとき、ホーク軸211の左端部(雄ネジ211aおよび一対の係合面211b・211bに対応する部分)はミッションケース23の左側面から外部に突出し、ホーク212はミッションケース23の内部かつ植え付けクラッチ爪90bの外周面(カム面90n)に対向する位置に配置される。
【0152】
植え付けクラッチアーム220は本発明に係る操作アームの実施の一形態であり、クラッチホーク210、ひいては植え付けクラッチ90を操作するための部材である。
図10および図12に示す如く、植え付けクラッチアーム220は細長い板状の部材である。植え付けクラッチアーム220の一端部には貫通孔221が形成される。植え付けクラッチアーム220の他端部には貫通孔222が形成される。植え付けクラッチアーム220の中途部には貫通孔223が形成される。貫通孔223の断面形状は互いに平行な一対の直線を一対の円弧で繋いだ形状である。
図7および図10に示す如く、ホーク軸211の左端部を貫通孔223に貫装するとともにホーク軸211の雄ネジ211bにナット225を螺装することにより、ホーク軸211の一対の係合面211b・211bが貫通孔223の内周面に係合し、植え付けクラッチアーム220はホーク軸211、ひいてはクラッチホーク210に相対回転不能に固定される。
【0153】
図10に示す如く、クラッチアームバネ230の一端部(前端部)は植え付けクラッチアーム220に形成された貫通孔221に係止される。クラッチアームバネ230の他端部(後端部)はセンターフレーム24に設けられたブラケット24bに係止される。本実施形態のクラッチアームバネ230は金属製の巻きバネである。
【0154】
メインロッド240は本発明に係るロッド部材の実施の一形態である。
本実施形態のメインロッド240はロッド本体241、第一ブラケット242および第二ブラケット243を具備する。
【0155】
ロッド本体241は鋼棒(棒状に成形された鉄鋼材料)であり、当該鋼棒の中途部の二箇所に設定された屈曲部241a・241bにおいて屈曲させ、当該鋼棒をクランク状に折り曲げることにより製造される。
ロッド本体241の屈曲部241a・241bは、本発明に係る弾性変形部の実施の一形態である。ロッド本体241は屈曲部241a・241bにおいて曲げ方向に弾性変形することが可能である。
ロッド本体241が屈曲部241a・241bにおいて曲げ方向に弾性変形することにより、ロッド本体241、ひいてはメインロッド240の一端部(前端部)から他端部(後端部)までの直線距離を変更することが可能である。
【0156】
第一ブラケット242および第二ブラケット243はいずれも細長い金属板の一端部と中途部との境界線および当該金属板の中途部と他端部との境界線でそれぞれ直角に折り曲げた形状の部材である。
第一ブラケット242を構成する金属板の一端部と他端部とは金属板の中途部により連結され、かつ第一ブラケット242を構成する金属板の一端部の板面と他端部の板面とが平行に対向する。第一ブラケット242を構成する金属板の一端部および他端部には貫通孔242a・242aが形成される。
第一ブラケット242の中途部は溶接によりロッド本体241の一端部(前端部)に固定される。
第一ブラケット242の一端部および他端部に形成された貫通孔242a・242a、および植え付けクラッチアーム220に形成された貫通孔222にピン245を貫装することにより、第一ブラケット242、ひいてはメインロッド240の一端部(前端部)が植え付けクラッチアーム220の他端部に回動可能に連結される。
【0157】
本実施形態における第二ブラケット243の形状は第一ブラケット242の形状と同じであるため、第二ブラケット243の形状についての説明を省略する。
第二ブラケット243の中途部は溶接によりロッド本体241の他端部(後端部)に固定される。
【0158】
回動ブラケット250は本発明に係る回動ブラケットの実施の一形態である。
回動ブラケット250は回動筒251、第一ブラケットアーム252および第二ブラケットアーム253を具備する。
【0159】
回動筒251は金属製の概ね円筒形状の部材である。回動筒251には一端部(左端部)から他端部(右端部)まで貫通する貫通孔251aが形成される。
ハンドルフレーム171の下部フレーム171aが貫通孔251aに貫装されることにより、回動筒251、ひいては回動ブラケット250は下部フレーム171aの右半部に回動可能に支持される。言い換えれば、回動ブラケット250はハンドルフレーム171を介して機体2の後部右寄りとなる位置に回動可能に支持される。
【0160】
第一ブラケットアーム252は細長い板状の部材である。第一ブラケットアーム252の一端部(基端部)は回動ブラケット250の一端部(左端部)の外周面に溶接により固定される。
第一ブラケットアーム252の他端部(先端部)には貫通孔252aが形成される。
第一ブラケットアーム252に形成された貫通孔252a、および第二ブラケット243の一端部および他端部に形成された貫通孔243a・243aにピン246を貫装することにより、第一ブラケットアーム252、ひいては回動ブラケット250が第二ブラケット243、ひいてはメインロッド240の他端部(後端部)に回動可能に連結される。
【0161】
第二ブラケットアーム253は細長い板状の部材である。第二ブラケットアーム253の一端部(基端部)は回動ブラケット250の他端部(右端部)の外周面に溶接により固定される。
第二ブラケットアーム253の他端部(先端部)には貫通孔253aが形成される。
【0162】
サブロッド260は本発明に係る副ロッド部材の実施の一形態である。
本実施形態のサブロッド260はロッド本体261、第一ブラケット262および第二ブラケット263を具備する。
【0163】
ロッド本体261は鋼棒(棒状に成形された鉄鋼材料)である。
第一ブラケット262および第二ブラケット263はいずれも細長い金属板の一端部と中途部との境界線および当該金属板の中途部と他端部との境界線でそれぞれ直角に折り曲げた形状の部材である。
第一ブラケット262を構成する金属板の一端部と他端部とは金属板の中途部により連結され、かつ第一ブラケット262を構成する金属板の一端部の板面と他端部の板面とが平行に対向する。第一ブラケット262を構成する金属板の一端部および他端部には貫通孔262a・262aが形成される。
第一ブラケット262の中途部は溶接によりロッド本体261の一端部(下端部)に固定される。
第一ブラケット262の一端部および他端部に形成された貫通孔262a・262a、および回動ブラケット250の第二ブラケットアーム253に形成された貫通孔253aにピン265を貫装することにより、第一ブラケット262、ひいてはサブロッド260の一端部(下端部)が回動ブラケット250の第二ブラケットアーム253の他端部(先端部)に回動可能に連結される。
【0164】
本実施形態における第二ブラケット263の形状は第一ブラケット262の形状と同じであるため、第二ブラケット263の形状についての説明を省略する。
第二ブラケット263の中途部は溶接によりロッド本体261の他端部(上端部)に固定される。
【0165】
操作部材270は植え付けクラッチ90を操作するときに作業者が手で触れる部分である。
図10に示す如く、本実施形態の操作部材270は植え付けクラッチレバー271、レバーピン272、レバーアーム273、スペーサ274a・274bおよびアームピン275を具備する。
【0166】
植え付けクラッチレバー271は操作部材270の主たる構造体を成す部分である。
植え付けクラッチレバー271は回動筒271a、レバー本体271b、グリップ271c、ブラケット271dおよびローラ271eを具備する。
【0167】
回動筒271aは金属製の円筒形状の部材である。回動筒271aには一対の端面を貫通する貫通孔が形成される。
【0168】
レバー本体271bは金属製の棒状の部材である。レバー本体271bの一端部(基端部)は回動筒271aの一端部(右端部)の外周面に溶接により固定される。
【0169】
グリップ271cは植え付けクラッチ90を操作するときに作業者が手で握る部分を成す部材である。
本実施形態のグリップ271cは樹脂材料製の一端部が閉塞された円筒形状の部材である。レバー本体271bの他端部(先端部)がグリップ271cの開口部に挿入されることにより、グリップ271cがレバー本体271bに固定される。
【0170】
ブラケット271dは細長い金属板の一端部と中途部との境界線および当該金属板の中途部と他端部との境界線でそれぞれ直角に折り曲げた形状の部材である。ブラケット271dを構成する金属板の一端部と他端部とは金属板の中途部により連結され、かつブラケット271dを構成する金属板の一端部の板面と他端部の板面とが平行に対向する。
ブラケット271dの中途部が回動筒271aの外周面の他端部(左端部)に溶接により固定されることにより、ブラケット271dは「ブラケット271dの一端部および他端部が回動筒271aの軸線方向に垂直な方向に突出するように」回動筒271aに固定される。
【0171】
ローラ271eは金属製の円筒形状の部材である。ローラ271eはブラケット271dに回転可能に軸支される。
【0172】
レバーピン272は植え付けクラッチレバー271をハンドルフレーム171に回動可能に支持する部材である。
本実施形態のレバーピン272は概ね円柱形状の部材であり、植え付けクラッチレバー271の回動筒271aに回転可能に貫装される。レバーピン272の左右両端部は回動筒271aの一対の端面から突出し、ハンドルフレーム171の上部フレーム171cの中途部かつ右寄りとなる位置に固定されたレバー支持部材171gに軸支される。
レバーピン272によりレバー支持部材171gに支持された植え付けクラッチレバー271は、前後方向に(植え付けクラッチレバー271のグリップ271cが前方および後方に傾倒する方向に)回動することが可能である。
【0173】
レバーアーム273は金属製の棒状の部材である。レバーアーム273はその両端部(前端部および後端部)よりも中途部の方が上方に張り出すように(上に凸となるように)湾曲した形状を有する。
レバーアーム273の一端部(前端部)には貫通孔273aが形成される。レバーアーム273の他端部(後端部)には貫通孔273bが形成される。
レバーアーム273の一端部(前端部)に形成された貫通孔273aおよびサブロッド260の第二ブラケット263に形成された貫通孔263a・263aにピン266を貫装することにより、サブロッド260の他端部(上端部)はレバーアーム273の一端部(前端部)に固定される(連結される)。
【0174】
スペーサ274a・274bは円筒形状の部材である。スペーサ274a・274bにはいずれも一対の端面を貫通する貫通孔が形成される。
【0175】
アームピン275はレバーアーム273をハンドルフレーム171に回動可能に支持する部材である。
本実施形態のアームピン275は概ね円柱形状の部材であり、レバーアーム273の他端部(後端部)に形成された貫通孔273bおよびスペーサ274a・274bに形成された貫通孔に回転可能に貫装される。アームピン275の左右両端部はそれぞれスペーサ274aの左端部およびスペーサ274bの右端部から突出し、レバー支持部材171gにおいてレバーピン272が軸支された位置よりも後方となる位置に軸支される。
アームピン275によりレバー支持部材171gに支持されたレバーアーム273は、上下方向に(レバーアーム273の前端部が上方および下方に移動する方向に)回動することが可能である。
【0176】
植え付けクラッチレバー271およびレバーアーム273がハンドルフレーム171に回動可能に支持されたとき、レバーアーム273の下面がローラ271eの外周面に当接する。
【0177】
以下では図10を用いて植え付けクラッチ操作機構200による植え付けクラッチ90の操作について説明する。
【0178】
本実施形態のクラッチアームバネ230は引っ張りバネであり、植え付けクラッチアーム220、ひいてはクラッチホーク210はクラッチアームバネ230により左側面視で時計回りに回転する方向に付勢される。
また、クラッチアームバネ230により、メインロッド240は前方に移動する方向に付勢され、回動ブラケット250は左側面視で時計回りに回動する方向に付勢され、サブロッド260は下方に移動する方向に付勢され、レバーアーム273はレバーアーム273の前端部が下方に移動する方向に付勢される。その結果、レバーアーム273の下面がローラ271eに当接した状態が保持される。
【0179】
作業者が植え付けクラッチレバー271を操作することにより植え付けクラッチレバー271が後方に傾倒する方向に回動したとき、植え付けクラッチレバー271のローラ271eは後上方に移動する。
その結果、クラッチアームバネ230の付勢力に抗して、ローラ271eに当接するレバーアーム273はレバーアーム273の前端部が上方に移動する方向に回動し、サブロッド260は上方に移動し、回動ブラケット250は左側面視で反時計回りに回動し、メインロッド240は後方に移動し、植え付けクラッチアーム220ひいてはクラッチホーク210は左側面視で反時計回りに回転し、クラッチホーク210のホーク212の当接部212aは植え付けクラッチ爪90bの胴体部材90kの外周面に当接する。
【0180】
ホーク212の当接部212aが植え付けクラッチ爪90bの胴体部材90kの外周面に当接した状態から更に植え付けクラッチレバー271が後方に傾倒する方向に回動したとき、クラッチホーク210および植え付けクラッチアーム220はそれ以上回動しないが、メインロッド240の屈曲部241a・241bが曲げ方向(ここでは、メインロッド240が真っ直ぐになる方向)に弾性変形し、メインロッド240の全長(メインロッド240の一端部から他端部までの直線距離)が長くなることによりメインロッド240の他端部(後端部)が後方に移動する。
その結果、回動ブラケット250は左側面視で反時計回りに回動し、サブロッド260は上方に移動し、ローラ271eに当接するレバーアーム273はレバーアーム273の前端部が上方に移動する方向に回動する。
【0181】
ホーク212の当接部212aが植え付けクラッチ爪90bの胴体部材90kの外周面に当接した状態でしばらく保持することにより植え付けクラッチ90が「植え付けクラッチ爪90bの胴体部材90kの外周面のうち、カム面90nからフランジ部材90fの右側の盤面までの距離が最大となる部分がホーク212の当接部212aに対向する位相」まで植え付けクラッチ軸89と一体的に回転したとき、ホーク212の当接部212aが植え付けクラッチ爪90bのフランジ部材90fの右側の盤面と胴体部材90kのカム面90nとで挟まれる部分(溝)に嵌まり、当接部212aがカム面90nに当接する。
このとき、クラッチホーク210および植え付けクラッチアーム220は左側面視で反時計回りに回動するので、その分だけメインロッド240の屈曲部241a・241bは弾性力により元の形状に戻るべく曲げ方向に弾性変形し、メインロッド240の一端部(前端部)は後方に移動する。その結果、メインロッド240の全長(メインロッド240の一端部から他端部までの直線距離)が短くなる。
当接部212aがカム面90nに当接しつつ植え付けクラッチ90が更に植え付けクラッチ軸89と一体的に回転することにより、植え付けクラッチ爪90bは植え付けクラッチバネ90cの付勢力に抗して右側方に移動し、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合突起90e・90eと植え付けクラッチ爪90bに形成された係合溝90h・90hとが係合した状態が解除される。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転可能となり、エンジン3から植え付け装置5および苗供給装置6への駆動力の伝達が停止される。すなわち、植え付けクラッチ90が「切」の状態になる。
【0182】
植え付けクラッチレバー271を前方に傾倒する方向に回動したとき、植え付けクラッチレバー271のローラ271eは前下方に移動する。
その結果、クラッチアームバネ230の付勢力により、植え付けクラッチアーム220ひいてはクラッチホーク210が左側面視で時計回りに回転し、メインロッド240は前方に移動し、回動ブラケット250は左側面視で時計回りに回動し、サブロッド260は下方に移動し、レバーアーム273はレバーアーム273の前端部が下方に移動する方向に回動し、「レバーアーム273の下面がローラ271eの外周面に当接した状態」が保持される。
クラッチホーク210が左側面視で時計回りに回転することにより、クラッチホーク210の当接部212aがカム面90nに当接した状態が解除され、植え付けクラッチ爪90bが植え付けクラッチバネ90cの付勢力により左側方に移動し、植え付けクラッチギヤ90aに形成された係合突起90e・90eと植え付けクラッチ爪90bに形成された係合溝90h・90hとが係合し、植え付けクラッチギヤ90aは植え付けクラッチ爪90bに対して相対回転不能に連結される。
その結果、植え付けクラッチギヤ90aおよび植え付けクラッチ爪90bは一体的に回転することとなり、エンジン3から植え付け装置5および苗供給装置6へ駆動力が伝達される。すなわち、植え付けクラッチ90が「入」の状態になる。
【0183】
以上の如く、歩行型田植機1は、
エンジン3から植え付け装置5への駆動力の伝達およびその停止を行う植え付けクラッチ90を操作する植え付けクラッチ操作機構200を具備し、
植え付けクラッチ操作機構200は、
一端部(前端部)が植え付けクラッチ90を操作するための植え付けクラッチアーム220に回動可能に連結され、中途部には曲げ方向に弾性変形することにより一端部(前端部)から他端部(後端部)までの直線距離を変更するための屈曲部241a・241bが形成されるメインロッド240を具備し、
メインロッド240の他端部が(後方に)引っ張られたとき、植え付けクラッチアーム220が左側面視で反時計回りに回動することにより植え付けクラッチ90が「切」の状態になり、エンジン3から植え付け装置5への駆動力の伝達が停止される。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、仮に歩行型田植機1のメインロッド240を管状のアウターワイヤーおよび当該アウターワイヤーに摺動可能に貫装されるインナーワイヤーの組み合わせに置換し、これを例えば黄砂のような微小な粉塵の多い地域で使用する場合、植え付けクラッチ操作機構200を使用する過程でインナーワイヤーの外周面に付着した粉塵がアウターワイヤーの内部(アウターワイヤーの内周面とインナーワイヤーの外周面との隙間)に持ち込まれ、アウターワイヤーに対するインナーワイヤーの移動(摺動)が阻害される(動きが重くなる)。
しかし、本実施形態の場合、メインロッド240の外周面に付着した粉塵により植え付けクラッチ操作機構200の動きが阻害されることはないので、植え付けクラッチ90を確実に操作することが可能であるとともに、メンテナンスが容易になる。
また、メインロッド240が弾性変形することによりメインロッド240の一端部(前端部)から他端部(後端部)までの直線距離を変更することが可能であるため、メインロッド240が「クラッチホーク210の当接部212aが植え付けクラッチ90のカム面90nに当接するタイミングを合わせる(植え付けクラッチ90を「切」にするタイミングと植え付け装置5の動作周期とを同期させる)ためのバネ」としての機能を兼ねることが可能である。従って、当該バネとしての機能を果たす部材を省略することが可能であり、部品点数の削減に寄与する。
また、図10に示す如く、本実施形態の歩行型田植機1は、メインロッド240が歩行型田植機1を構成する他の部材に干渉するために、メインロッド240のロッド本体241をクランク状に折り曲げることにより、メインロッド240の前端部を機体2の左側に配置される植え付けクラッチアーム220に回動可能に連結し、メインロッド240の後端部を機体2の後部右寄りとなる位置(より詳細には、下部フレーム171aの右半部となる位置)に回動可能に支持される回動ブラケット250に回動可能に連結するが、このような目的でメインロッド240を適宜屈曲させた部分(屈曲部241a・241b)を「クラッチホーク210の当接部212aが植え付けクラッチ90のカム面90nに当接するタイミングを合わせるためのバネ」として流用することが可能である。
【0184】
また、歩行型田植機1の植え付けクラッチ操作機構200は、
メインロッド240の他端部(後端部)に回動可能に連結されるとともに機体2(より詳細には、機体2の後部に固定されたハンドルフレーム171の下部フレーム171a)に回動可能に支持される回動ブラケット250と、
一端部(下端部)が回動ブラケット250に回動可能に連結されるサブロッド260と、
を具備する。
このように構成することにより、メインロッド240の長手方向(メインロッド240の一端部と他端部とを結ぶ直線の長手方向)に対してサブロッド260の長手方向が平行でない姿勢にサブロッド260を配置し、サブロッド260の他端部を引っ張ることにより、メインロッド240の他端部を引っ張ることが可能である。従って、植え付けクラッチ操作機構200からアウターワイヤーおよびインナーワイヤーの組み合わせを排除することが可能であり、植え付けクラッチ90を確実に操作することが可能である。
【0185】
また、歩行型田植機1のメインロッド240は鋼棒をクランク状に折り曲げることにより製造される。
このように構成することにより、メインロッド240を安価に製造することが可能である。
【0186】
本発明に係るロッド部材の弾性変形部は本実施形態の如くクランク状に折り曲げられた屈曲部241a・241bには限定されない。
本発明に係るロッド部材の弾性変形部の別実施形態としては、例えば図13(a)に示す如く、メインロッド240の中途部において略90°に折り曲げられた屈曲部241c・241fおよび略180°(略U字状)に折り曲げられた屈曲部241d・241eを組み合わせたものであっても良く、図13(b)に示す如く、メインロッド240の中途部において略60°(略V字状)に折り曲げられた屈曲部241g・241jおよび略120°に折り曲げられた屈曲部241h・241iを組み合わせたものであっても良く、図13(c)に示す如く、メインロッド240の中途部において螺旋状に曲げられた螺旋部241kおよび90°に折り曲げられた屈曲部241m・241nを組み合わせたものであっても良い。
【0187】
以下では、図14および図15を用いてチョークワイヤー280の取り付け方法について説明する。
図15に示す如く、従来のチョークワイヤー310はアウターワイヤー311およびインナーワイヤー312の組み合わせである。
アウターワイヤー311の両端部はそれぞれ機体(図15においては不図示)の所定の位置に固定される。
アウターワイヤー311に貫装されたインナーワイヤー312の一端部は、回動することによりエンジンに供給される燃料を濃くする操作を行うためのレバーであるチョークレバー302に連結される。
アウターワイヤー311に貫装されたインナーワイヤー312の他端部はチョークボタン303に連結される。
作業者はチョークボタン303を引くことによりチョークレバー302を回動させてエンジンに供給される燃料を濃くする操作を行い、チョークレバー302を押し込むことにより元の状態に戻す(エンジンに供給される燃料の濃度を通常の水準に戻す)。
しかし、図15に示す如く、チョークレバー302の先端部が前方に傾倒する方向にチョークレバー302が回動したときにエンジンに供給される燃料が濃くなる構成であって、かつチョークボタン303が機体の後部に配置されている場合には、チョークワイヤー310の先端部(チョークレバー302側の端部)をチョークレバー302の先端部の前方となる位置に配置し、チョークワイヤー310を大きく湾曲させることによりチョークワイヤー310の他端部(チョークボタン303側の端部)を機体の後部に配置する必要がある。
そのため、チョークワイヤー310の全長がチョークレバー302からチョークボタン303までの直線距離に比べてかなり長くなってしまう。
また、アウターワイヤー311の内周面とインナーワイヤー312の外周面との摩擦力が大きくなるため、チョークボタン303を操作するために要する力が増大するとともに、チョークワイヤー310が摩耗しやすくなる。
【0188】
図14に示す如く、本実施形態のチョークワイヤー280はアウターワイヤー281およびインナーワイヤー282の組み合わせである。
インナーワイヤー282の一端部は機体2(図14においては不図示)においてチョークレバー292の前方となる位置に固定される。
インナーワイヤー282の他端部はチョークボタン293に連結される。
チョークボタン293が押し込まれたときにインナーワイヤー282が弛緩するとともにチョークボタン293が引かれたときにインナーワイヤー282が緊張するようにインナーワイヤー282の長さが設定される。なお、チョークボタン293の取付部分には、チョークボタン293を任意の位置に押し引きした時に、その位置で保持する保持機構(不図示)が設けられる。
アウターワイヤー281の一端部がチョークレバー292の先端部に連結される。アウターワイヤー281の他端部が機体2の所定の位置に固定される。
チョークボタン293が引かれたときにはインナーワイヤー282が緊張してアウターワイヤー281の一端部がインナーワイヤー282に沿ってインナーワイヤー282の一端部に向かって移動(前進)するので、チョークレバー292の先端部を前方に傾倒する方向に回動させることが可能である。
また、チョークワイヤー280の全長を図15に示すチョークワイヤー310の全長よりもかなり短く抑えることが可能である。
なお、アクセルワイヤーに対しても同様の構成を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0189】
1 歩行型田植機
2 機体
3 エンジン
4L 左車輪
4R 右車輪
5 植え付け装置
6 苗供給装置
7 伝動機構
10C センターフロート
10L 左サイドフロート
10R 右サイドフロート
16 主クラッチ
90 植え付けクラッチ
90a 植え付けクラッチギヤ
90b 植え付けクラッチ爪
90n カム面
200 植え付けクラッチ操作機構(操作機構)
210 クラッチホーク
220 植え付けクラッチアーム(操作アーム)
230 クラッチアームバネ
240 メインロッド(ロッド部材)
250 回動ブラケット
260 サブロッド(副ロッド部材)
271 植え付けクラッチレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから植え付け装置への駆動力の伝達およびその停止を行う植え付けクラッチを操作する操作機構を具備する歩行型田植機であって、
前記操作機構は、
一端部が前記植え付けクラッチを操作するための操作アームに回動可能に連結され、中途部には曲げ方向に弾性変形することにより一端部から他端部までの直線距離を変更するための弾性変形部が形成されるロッド部材を具備し、
前記ロッド部材の他端部が引っ張られたとき、前記操作アームが回動することにより前記エンジンから植え付け装置への駆動力の伝達が停止される、
歩行型田植機。
【請求項2】
前記操作機構は、
前記ロッド部材の他端部に回動可能に連結されるとともに機体に回動可能に支持される回動ブラケットと、
一端部が前記回動ブラケットに回動可能に連結される副ロッド部材と、
を具備する、
請求項1に記載の歩行型田植機。
【請求項3】
前記ロッド部材は鋼棒をクランク状に折り曲げることにより製造される、
請求項1または請求項2に記載の歩行型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−87538(P2011−87538A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244973(P2009−244973)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】