説明

歩行型田植機

【課題】ロープの耐久性を向上させ、ロープの引き出し方向の許容範囲を広し、また、始動操作を軽くすることができる歩行型田植機を提案する。
【解決手段】機体2の前部に搭載されたエンジン3の側方にリコイルスタータ110が具備され、リコイルスタータ110の引っ張り用のロープ112の先端にリコイル握り84が設けられ、機体2の後部から立設されるとともに予備苗台64を支持する後部フレーム130に、リコイル握り84が引き出し操作可能に支持される歩行型田植機において、ロープ112が巻き掛けられるローラ140が、エンジン3及び後部フレーム130の間に配置されるとともに、機体2に対して回転可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リコイルスタータを具備する歩行型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを始動するためのリコイルスタータを具備する歩行型田植機が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載の歩行型田植機の機体の前部にはエンジンが搭載され、該エンジンの側方にはリコイルスタータが具備される。該リコイルスタータからは、前記エンジンの始動時に操作される引っ張り用のロープが後上方に向かって引き出され、該ロープの先端にはリコイル握りが設けられる。このリコイル握りは、前記機体の後部から立設されるとともに予備苗台を支持する後フレームに、引き出し操作可能に支持される。
【0003】
このような構成の歩行型田植機において、前記エンジンを始動するとき、オペレータは、前記リコイル握りを後上方に強く引っ張る。この操作(引き出し操作)により、前記ロープが前記リコイルスタータから勢いよく引き出されて、前記ロープが巻き付けられたロープリールが回転される。そして、該ロープリールの回転が前記エンジンのクランク軸に伝達されることにより、前記エンジンが始動する。
なお、上記の構成の歩行型田植機においては、前記ロープが前記機体のフレームや前記予備苗台等の構造体と接触することを回避するために、前記ロープの中途部を前記機体に固定されたロープガイドに貫装して、前記ロープの引き出し方向をガイドしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−158111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成の歩行型田植機においては、前記リコイルスタータからの前記ロープの引き出し方向と、オペレータが前記ロープを引っ張る引っ張り方向と、が大きく異なる場合があった。このため、前記ローラガイドの部分における前記ロープの折れ曲がりが急であり、始動操作により前記ロープと前記ロープガイドとの間で大きな摩擦が発生し、前記ロープが摩耗して千切れ易くなるという問題があった。
【0006】
さらに、上記のように前記ロープガイドを利用して前記ロープの引き出し方向をガイドする構成とした場合、前記ロープの引き出し方向の許容範囲が狭いという問題もあった。そのため、ロープが適切な引き出し方向ではない方向に無理やり引き出された場合、前記リコイルスタータのロープ出口や、前記ロープガイドの部分等において、前記ロープの折れ曲がる角度が大きくなり、摩擦抵抗が大きくなって、始動操作がさらに重くなっていた。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ロープの耐久性を向上させ、ロープの引き出し方向の許容範囲を広し、また、始動操作を軽くすることができる歩行型田植機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る歩行型田植機は、機体の前部に搭載されたエンジンの側方にリコイルスタータが具備され、前記リコイルスタータの引っ張り用のロープの先端にリコイル握りが設けられ、前記機体の後部から立設されるとともに予備苗台を支持する後フレームに、前記リコイル握りが引き出し操作可能に支持される歩行型田植機において、前記ロープが巻き掛けられるローラが、前記エンジン及び前記後フレームの間に配置されるとともに、前記機体に対して回転可能に支持されるものである。
【0009】
請求項2に係る歩行型田植機は、前記ローラの回転軸が、前記リコイルスタータのロープ出口と、前記ローラの前記ロープとの接触部と、前記リコイル握りを前記ロープの先端に係止する係止部と、を結ぶ平面に対して垂直に配置されたものである。
【0010】
請求項3に係る歩行型田植機は、前記ロープが前記ローラから外れることを防止するガイドを具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ロープの耐久性を向上させ、ロープの引き出し方向の許容範囲を広くし、また、始動操作を軽くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す右側面図。
【図2】本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態を示す平面図。
【図3】本発明に係る歩行型田植機の伝動機構を示す図。
【図4】リコイルスタータの引っ張り用のロープの引き出され方を模式的に示す右側面図。
【図5】リコイルスタータの引っ張り用のロープの引き出され方を模式的に示す平面図。
【図6】第一実施形態に係るローラの構成及び該ローラの機体への支持構造を示す分解説明図。
【図7】第一実施形態に係るローラの構成及び該ローラの機体への支持構造を示す図。
【図8】第二実施形態に係るローラの構成及び該ローラの機体への支持構造を示す図。
【図9】第三実施形態に係るローラの構成及び該ローラの機体への支持構造を示す図。
【図10】第四実施形態に係るローラの構成及び該ローラの機体への支持構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
以下では、図1から図4を用いて、本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態である歩行型田植機1の全体構成について説明する。
【0014】
本実施形態の歩行型田植機1は、いわゆる四条植えの歩行型田植機である。歩行型田植機1は、機体2と、エンジン3と、左車輪4Lと、右車輪4Rと、植付装置5と、苗供給装置6と、センターフロート7Cと、左サイドフロート7Lと、右サイドフロート7Rと、操作部8と、伝動機構9と、等を備える。
【0015】
機体2は、歩行型田植機1の主たる構造体を成す部材群である。機体2は、エンジン台21と、該エンジン台21の前端部に固定されるバンパー22と、前記エンジン台21の後端部に固定されるミッションケース23と、該ミッションケース23の後端部に固定されるセンターフレーム24と、前記ミッションケース23の左側面及び右側面にそれぞれ回動可能に支持される左車軸ケース25L及び右車軸ケース25Rと、前記ミッションケース23の左側面及び右側面に固定される左側方フレーム26L及び右側方フレーム26Rと、前記センターフレーム24の後端部に固定される中央植付ケース27Cと、前記左側方フレーム26L及び右側方フレーム26Rの後端部にそれぞれ固定される左植付ケース27L及び右植付ケース27Rと、これら左植付ケース27L及び右植付ケース27Rの後端部にそれぞれ固定される左後フレーム28L及び右後フレーム28Rと、で主に構成される。
【0016】
エンジン3は、歩行型田植機1の駆動源である。エンジン3は、機体2の前部に搭載される。本実施形態のエンジン3はガソリンエンジンであり、エンジン台21の上面の後部に固定される。エンジン3の右側方には、リコイルスタータ110のリコイルケース31が設けられる。
【0017】
左車輪4L及び右車輪4Rは、歩行型田植機1の駆動輪である。左車輪4Lは、前記左車軸ケース25Lの後端部に軸支され、右車輪4Rは、前記右車軸ケース25Rの後端部に軸支される。
【0018】
植付装置5は、苗の植え付けを行う装置である。本実施形態の植付装置5は、クランク式の植付装置であり、左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rを備え、左から順に間隔を空けて並んだ状態で配置される。中央左植付アーム51L及び中央右植付アーム51Rは、前記中央植付ケース27Cに回転可能に軸支され、左植付アーム52Lは、前記左植付ケース27Lに回転可能に軸支され、右植付アーム52Rは、前記右植付ケース27Rに回転可能に軸支される。
【0019】
苗供給装置6は、植付装置5に苗を供給する装置である。苗供給装置6は、苗載台61と、縦送り装置62と、横送り装置63と、予備苗台64と、を備える。
【0020】
苗載台61は、植付装置5に供給する苗を載置する台である。苗載台61は前下がりに傾斜した苗載面61aを有する板状の部材であり、後述するハンドルフレーム81に左右方向に固定された上苗台レール81aおよび下苗台レール81bの上を左右に摺動可能に載置される。苗載面61aには、条数分の苗マット(床土、レキメンマット等のマット状物の上に種子を蒔いて発芽させることにより苗の根をマット状物に絡ませたもの)が載置される。苗載台61の前端部は、前記左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rの上方となる位置に配置される。
【0021】
縦送り装置62は、載置面61aに載置された苗マットを、苗載台61の前端部に搬送する(縦送りする)装置である。縦送り装置62は、苗載台61の前下部であって、載置面61aの反対側の面(裏面)に設けられる。縦送り装置62は、載置面61aから突出するローラ62aを備え、苗載台61が左右往復ストローク端に到達するごとに、ローラ62aを作動させて、苗載台61上の苗マットを下方へ向かって搬送する(縦送りする)ように構成される。
【0022】
横送り装置63は、苗載台61を左右に往復駆動させるものである。横送り装置63は、苗載台61の前下方に配置される。横送り装置63は、外周面にネジ状の溝(ネジ溝)を有する横送り軸63aと、該ネジ溝に外嵌される滑子受け63bと、を備え、該滑子受け63bが前記苗載台61に固設される。
【0023】
予備苗台64は、苗載台61に供給するための予備苗(予備の苗マット)を載置するための台である。予備苗台64は機体2に固定され、苗載台61の前方かつ機体2の上方となる位置に配置される。
【0024】
より詳細には、予備苗台64は機体2に対して前低後高に設けられる。
予備苗台64の前部は、前部フレーム120(図4参照)等を介して、機体2に支持される。図4に示すように、前部フレーム120は、機体2(厳密にはミッションケース23)に立設される。前部フレーム120の下端部はミッションケース23に連結され、前部フレーム120の上端部は予備苗台64の前部に連結される。
予備苗台64の後部は、左右一対の後部フレーム130・130(図4参照)等を介して、機体2に支持される。図4に示すように、後部フレーム130・130は、機体2(厳密には中央植付ケース27C)に左右一対に立設される。後部フレーム130・130の下端部はそれぞれ中央植付ケース27Cの左右両側部に連結され、後部フレーム130・130の上端部はそれぞれ予備苗台64の後部に連結される。
【0025】
右側の後部フレーム130の上部には、リコイルスタータ110の引っ張り用のロープ112の先端に係止されたリコイル握り84を支持するための支持フレーム133が固定される。支持フレーム133は、概ね棒状の部材であり、右側の後部フレーム130から後方に延出するように設けられる。支持フレーム133の前端部は、右側の後部フレーム130の上部に固定される。支持フレーム133の後端部は、コイル状に折り曲げられて螺旋部133aを形成している。
【0026】
センターフロート7C、左サイドフロート7Lおよび右サイドフロート7Rは、歩行型田植機1に浮力を付与するものである。センターフロート7Cは、機体2の左右中央かつ下方となる位置に配置され、機体2の左右中央部かつ後下部となる位置に回動可能に連結される。左サイドフロート7Lは機体2の下方かつ左後寄りとなる位置に配置され、機体2の左後下部となる位置に回動可能に連結される。右サイドフロート7Rは機体2の下方かつ右後寄りとなる位置に配置され、機体2の右後下部となる位置に回動可能に連結される。
【0027】
操作部8は、作業者が歩行型田植機1の各部を操作するためのものである。操作部8はハンドルフレーム81と、主クラッチレバーと、走行変速レバー82と、株間変速レバーと、左サイドクラッチレバー83Lと、右サイドクラッチレバー83Rと、植付クラッチレバーと、リコイル握り84と、等を備える。
【0028】
ハンドルフレーム81は、操作部8の主たる構造体であり、機体2の後部に固定される。ハンドルフレーム81は、中央植付ケース27Cから後斜め上方に延出されて、予備苗台64の後方に配置される。ハンドルフレーム81の上部は、左右方向に延出されるとともに、後方に向けて湾曲され、その左右両端に作業者が握るグリップが装着される。ハンドルフレーム81の下部は、左右方向に延出されて、その左端が、前記左後フレーム28Lの後端部に固定され、その右端が、右後フレーム28Rの後端部に固定される。
【0029】
伝動機構9は、エンジン3において発生した駆動力を、左車輪4L、右車輪4R、植付装置5及び苗供給装置6に伝達するための機構である。図3に示すように、伝動機構9は、主クラッチ機構9a、走行変速機構9b、株間変速機構9c、左サイドクラッチ機構9d、右サイドクラッチ機構9e及び植付クラッチ機構9f等を備え、これらは、主クラッチ機構9aを除き、ミッションケース23に収納される。
【0030】
このような歩行型田植機1においては、エンジン3の動力が主クラッチ機構9aを介して、ミッションケース23に伝達される。そして、ミッションケース23に伝達された動力が、走行変速機構9bで変速された後に、左サイドクラッチ機構9d及び右サイドクラッチ機構9eを介して、左車輪4L及び右車輪4Rにそれぞれ伝達されて、左車輪4L及び右車輪4Rが回転駆動する。これにより、歩行型田植機1が前進または後進走行可能とされる。
【0031】
また、ミッションケース23に伝達された動力が、株間変速機構9cで変速された後、植付クラッチ機構9fを介して、左植付ケース27L、中央植付ケース27C、右植付ケース27Rにそれぞれ伝達されて、左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rが回転作動する。これにより、左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rは、苗載台61の前端部に載置された苗マットから所定量の苗を切り取り、切り取られた苗を水田に移植する一連の作業を行うことにより、苗を水田に植え付ける。
【0032】
また、エンジン3の動力が中央植付ケース27Cから横送り装置63に伝達されて、横送り軸63aが回動作動するように構成される。これにより、横送り軸63aの回転作動にともなって滑子受け63bがネジ溝に沿って左右に摺動して、この滑子受け63bとともに苗載台61が左右方向に摺動する。そして、苗載台61が左右往復ストローク端に到達すると、ローラ62aが作動して、苗マットが縦送りされて適切な位置に移動することとなる。
【0033】
以下では、リコイルスタータ110、及び、該リコイルスタータ110の引っ張り用のロープ112について、図4及び5を用いて説明する。
【0034】
リコイルスタータ110は、エンジン3を始動するための装置である。本実施形態のリコイルスタータ110は、エンジン3の右側方に配置される。
リコイルスタータ110のリコイルケース31内には、ロープリールが設けられ、該ロープリールには、リコイルスタータ110の引っ張り用のロープ112が巻き付けられる。ロープ112の一端(先端)は、リコイルスタータ110のロープ出口A(ロープ112が引き出される出口の部分)から後上方に向かって引き出され、その先端にリコイル握り84が設けられている。より詳細には、ロープ112の先端の係止部Cに、リコイル握り84の脚部84aが係止されている。リコイル握り84は、リコイルスタータ110の引き出し操作をするときに、オペレータが手で握るグリップである。
【0035】
ロープ112の一端(先端)は、前方から支持フレーム133の螺旋部133aに通される。そしてリコイル握り84は、その脚部84aが螺旋部133aに受け止められた状態で、支持フレーム133に支持される。
オペレータがリコイル握り84を後上方に強く引っ張ると、この操作(引き出し操作)により、ロープ112がリコイルスタータ110から勢いよく引き出されて、ロープ112の巻き付けられた前記ロープリールが回転される。そして、前記ロープリールの回転がエンジン3のクランク軸に伝達されることにより、該クランク軸の回転とともにマグネットに高電圧が発生されて点火装置より放電されて、エンジン3が始動する。また、オペレータがリコイル握り84を引っ張るのをやめると、バネ等の作用により、ロープ112がロープリールに巻き戻されて、リコイル握り84の脚部84aが支持フレーム133の螺旋部133aに受け止められている状態に戻る。
このように、リコイル握り84は、支持フレーム133を介して、後部フレーム130に引き出し操作可能に支持されているのである。
【0036】
ここで、ロープ112の中途部は、ローラ140に巻き掛けられている。ロープ112は、ローラ140に下側から当接している。後述するように、ロープ112は、リコイルスタータ110のロープ出口Aから係止部Cまでの範囲において、ローラ140の回転軸に対して垂直な平面内に配置された状態で、ローラ140に巻き掛けられている。
【0037】
ローラ140の構成、及び、該ローラ140の機体2への支持構造について、図4から図7を用いて説明する。
図6に示すように、本実施形態のローラ140は、取付フレーム150及び支持軸160等を介して、機体2(厳密には前部フレーム120)に対して回転可能に支持される。
【0038】
ローラ140は、ロープ112の引き出し方向を適切な方向に案内するためのものである。本実施形態のローラ140は、概ね円柱形状の部材である。ローラ140は、平面視において、エンジン3及び後部フレーム130の間に配置される。
図6に示すように、ローラ140の中心には、軸心部が空洞状の円筒部140aが設けられる。ローラ140の円筒部140aを支持軸160に嵌装することにより、ローラ140を支持軸160に取り付けることが可能である。
ローラ140の外周には、ロープ112の中途部を巻き掛けるための溝140bが形成されている。溝140bは、ロープ112をローラ140から外れ難くするべく、ロープ112の直径よりも深く形成されている。
【0039】
取付フレーム150は、ローラ140を機体2(厳密には前部フレーム120)に取り付けるためのものである。本実施形態の取付フレーム150は、丸棒状の部材を略L字状に折り曲げたものである。より詳細には、取付フレーム150は第一の辺150aと第二の辺150bとから成り、第一の辺150aの一端部と第二の辺150bの一端部とが連続している。
【0040】
取付フレーム150の第一の辺150aの他端部は、溶着等の方法により、前部フレーム120の下部に固定される。前記第一の辺150aは、前部フレーム120の下部から後下方に延出するように配置される。取付フレームの第二の辺150bは、第一の辺150aの一端部から機体2の外側に延出するように配置される。なお、取付フレーム150の第二の辺150bは、本発明に係る「ガイド」の実施の一形態を成している。
【0041】
支持軸160は、ローラ140を取付フレーム150(機体2)に対して回転可能に支持するためのものである。本実施形態の支持軸160は、概ね円柱形状の部材である。支持軸160の一端部(左端部)は、溶着等の方法により、取付フレーム150の第一の辺150aの中途部に固定される。支持軸160の他端部(右端部)は、機体2の外側に延出する。支持軸160の軸線は、取付フレーム150の第二の辺150bと平行となるように配置される。
【0042】
なお、支持軸160は、ローラ140の外周と、取付フレーム150の第二の辺150bと、の隙間の寸法が、ロープ112の直径よりも小さくなるように取り付けられることが望ましい。こうすることにより、ローラ140の外周と、取付フレーム150の第二の辺150bと、の間の隙間からロープ112が外れることを防止できる。
【0043】
ローラ140(の円筒部140a)は、一対の座金141・141の間に挟まれた状態で、支持軸160に回転可能に嵌装される。また、支持軸160にローラ140及び座金141・141を嵌装した状態で、支持軸160の先端部にRピン143が取り付けられることにより、ローラ140が支持軸160から脱落不能とされている。
【0044】
ロープ112の中途部は、図7に示すように、取付フレーム150の第二の辺150bと、ローラ140の溝140bと、の間に通されている。こうすることにより、ロープ112の引き出し方向がローラ140によりガイドされて、ロープ112が機体2のフレームや予備苗台64等の構造体と接触することが回避されている。
【0045】
また図4及び図5に示すように、ロープ112は、リコイルスタータ110のロープ出口Aから係止部Cまでの範囲において、ローラ140の回転軸に対して垂直な平面内に配置されている。すなわち、リコイルスタータ110のロープ出口Aと、ローラ140のロープ112との接触部Bと、リコイル握り84をロープ112の先端に係止する係止部Cと、が一つの平面内に配置されていて、かつ、当該平面はローラ140の回転軸(換言すれば支持軸160の軸線)に対して垂直な平面を成している。こうすることにより、ロープ112がローラ140の外周面上を該ローラ140の回転軸方向に移動して擦れることを防止できるから、ローラ140に横圧が掛かり難い。
【0046】
さらに、ロープ112の中途部は、取付フレーム150の第二の辺150bと、ローラ140の溝140bと、の間に通されているため、ロープ112が一時的に緩んだとしても、緩んだロープ112が取付フレーム150の第二の辺150bと当接することにより、ロープ112が前記ローラ140から外れることを防止できる。
【0047】
以上の如く、本実施形態に係る歩行型田植機1は、機体2の前部に搭載されたエンジン3の側方にリコイルスタータ110が具備され、リコイルスタータ110の引っ張り用のロープ112の先端にリコイル握り84が設けられ、機体2の後部から立設されるとともに予備苗台64を支持する後部フレーム130に、リコイル握り84が引き出し操作可能に支持される歩行型田植機において、ロープ112の中途部が巻き掛けられるローラ140が、エンジン3及び後部フレーム130の間に配置されるとともに、機体2に対して回転可能に支持されるものである。
【0048】
したがって、ロープ112の引き出し方向が、ローラ140によってガイドされるので、ロープ112が適切な引き出し方向ではない方向に無理やり引き出されることを防止でき、リコイルスタータ110のロープ出口等で大きな摩擦が発生することを抑制できる。よって、ロープ112の耐久性を向上させることができ、始動操作を軽くすることができる。
また、ロープ112が引き出されるときに、これに伴ってローラ140が回転するので、ロープ112の引き出し方向の変更が円滑に行われ、また、ロープ112の引き出し方向の許容範囲を広くすることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る歩行型田植機1は、ローラ140の回転軸(本実施形態では支持軸160の軸線)が、リコイルスタータ110のロープ出口Aと、ローラ140のロープ112との接触部Bと、リコイル握り84をロープ112の先端に係止する係止部Cと、を結ぶ平面に対して垂直に配置されたものである。
【0050】
したがって、ローラ140に横圧が掛かり難い構成であり、ロープ112がローラ140の外周面に対してずれる(ロープ112がローラ140の外周面上を該ローラ140の回転軸方向に移動して擦れる)ことを防止できる。よって、ロープ112の耐久性を向上させることができ、始動操作を軽くすることができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る歩行型田植機1は、ロープ112がローラ140から外れることを防止するガイドとして、取付フレーム150の第二の辺150bを具備するものである。
【0052】
したがって、ロープ112がローラ140から外れ難くなるので、操作性が向上し、また、リコイルスタータ110及び引っ張り用のロープ112の取り扱いが簡単となる。
【0053】
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の構成に代えて以下に示す如き構成とすることも可能である。
【0054】
<第二実施形態>
第一実施形態では、取付フレーム150は丸棒状の部材を略L字状に折り曲げたものとした。しかしながら、この構成に代えて、取付フレームを板状の部材を略L字状に折り曲げたもので構成してもよい。斯かる取付フレームの実施の一形態である取付フレーム170を、図8に示している。
また、ローラは図7に示す如き形状のものに限定するものではなく、例えば溝の深さをより深く形成してもよい。斯かるローラの実施の一形態であるローラ175を、図8に示している。
【0055】
本実施形態のローラ175は、取付フレーム170及び支持軸173を介して、機体2(厳密には前部フレーム120)に対して回転可能に支持される。なお、以下の説明においては、第一実施形態で説明した部材と同様の構成の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
ローラ175は、ロープ112の引き出し方向を適切な方向に案内するためのものである。ローラ175の中心に設けられた円筒部を支持軸173に嵌装することにより、ローラ175を支持軸173に取り付けることが可能である。ローラ175の外周には、ロープ112の中途部を巻き掛けるための溝175bが形成されている。溝175bは断面視において略U字状に形成された溝であり、ロープ112をローラ175から極力外れ難くするべく、第一実施形態の溝140bよりも深く形成される。また、ローラ175の溝175bの縁部(外周部)は切削されて、「サソイ」(サソイ部175c)が形成されている。
【0057】
取付フレーム170は、平板状の部材を略L字状に折り曲げたものである。取付フレーム170は第一の辺170aと第二の辺170bとから成る。取付フレーム170の第一の辺170aは、その一端部が前部フレーム120に固定されて、その他端部が後下方に延出する。取付フレーム170の第二の辺170bは、その一端部が第一の辺170aの他端部と連続していて、その他端部が機体2の内側に延出する。取付フレーム170の第二の辺170bは、本発明に係る「ガイド」の実施の一形態を成している。
【0058】
支持軸173は、第一実施形態における支持軸160に相当するものであり、頭部173aと胴体部173bとから成る。取付フレーム170の第一の辺170aの中途部に形成された貫装孔に胴体部173bが嵌装されることにより、支持軸173が取付フレーム170に取付けられる。支持軸173は、取付フレーム170の第一の辺170aから機体2の内側に向かって延出するように配置される。
ローラ175(の円筒部)は、支持軸173の胴体部173bに回転可能に嵌装される。
【0059】
ロープ112の中途部は、図8に示すように、取付フレーム170の第二の辺170bと、ローラ175の溝175bと、の間に通されている。こうすることにより、ロープ112の引き出し方向がローラ175によりガイドされる。また、ロープ112が一時的に緩んだとしても、緩んだロープ112が取付フレーム170の第二の辺170bと当接することにより、ロープ112が前記ローラ175から外れることを防止できる。
【0060】
<第三実施形態>
第一実施形態では、取付フレーム150は丸棒状の部材を略L字状に折り曲げたものとした。しかしながら、この構成に代えて、取付フレームを板状または棒状の部材を略U字状に折り曲げたもので構成してもよい。斯かる取付フレームの実施の一形態である取付フレーム180を、図9に示している。
【0061】
本実施形態のローラ185は、取付フレーム180及び支持軸183を介して、機体2(厳密には前部フレーム120)に対して回転可能に支持される。
【0062】
ローラ185は、ロープ112の引き出し方向を適切な方向に案内するためのものである。ローラ185は、支持軸183の胴体部183bに嵌装される。ローラ185の外周には、ロープ112の中途部を巻き掛けるための溝185bが形成されている。
【0063】
取付フレーム180は、平板状の部材を略U字状に折り曲げたものである。取付フレーム180は、第一面部180a、第二面部180b、及び第三面部180cから成る。取付フレーム180の第一面部180aは、その一端部が前部フレーム120に固定されて、その他端部が後下方に延出する。取付フレーム180の第二面部180bは、その一端部が前部フレーム120に固定されて、その他端部が後下方に延出する。第一面部180aの他端部と、第二面部180bの他端部と、は第三面部180cにより接続される。このような構成により、第一面部180aと第二面部180bとは、相互に平行に向かい合う一対の平面を成している。取付フレーム180の第三面部180cは、本発明に係る「ガイド」の実施の一形態を成している。
【0064】
支持軸183は、第一実施形態における支持軸160に相当するものであり、頭部183aと胴体部183bとから成る。取付フレーム180の第一面部180aの中途部に形成された貫装孔と、第二面部180bの中途部に形成された貫装孔と、に胴体部183bが左側方から嵌装されることにより、支持軸183が取付フレーム180に取付けられる。
ローラ185(の円筒部)は、支持軸183の胴体部183bに回転可能に嵌装されるとともに、第一面部180aと第二面部180bとの間に配置される。このような構成により、支持軸183の両端部が取付フレーム180により支持されるので、片持ち支持する構成とした場合と比べて、ローラ185を機体2(前部フレーム120)に対して安定的に支持することができる。
【0065】
ロープ112の中途部は、図9に示すように、取付フレーム180の第三面部180cと、ローラ185の溝185bと、の間に通されている。こうすることにより、ロープ112の引き出し方向がローラ185によりガイドされる。また、ロープ112が一時的に緩んだとしても、緩んだロープ112が取付フレーム180の第三面部180cと当接することにより、ロープ112が前記ローラ185から外れることを防止できる。
【0066】
なお、ロープ112のリコイル握り84側の先端(係止部C側の先端)を、取付フレーム180の第一面部180a及び第二面部180bの間に前方から通した後に、ローラ185を取付フレーム180に取り付けることにより、ロープ112及びローラ185を歩行型田植機1に組み付けることが可能である。
【0067】
<第四実施形態>
上記の実施形態では、「ガイド」(150b・170b・180c)は取付フレーム(150・170・180)と一体的に設けられるものとした。しかしながら、この構成に代えて、ガイドを、取付フレームとは別体の部材として設けてもよい。斯かるガイドの実施の一形態であるガイド部材191を、図10に示している。
本実施形態のガイド部材191は、支持軸183に嵌装された状態で、取付フレーム190の先端部(他端部)に連結される。なお、本実施形態の取付フレーム190は平板状の部材であり、その一端部が前部フレーム120に固定されて、その他端部が後下方に延出している。そして、取付フレーム190の他端部に、ガイド部材191が連結されている。
【0068】
このように構成することで、ガイド部材191の前部フレーム120(機体2)に対する固定角度を変更可能とすることができる。つまり、ロープ112をローラ195に巻き掛けたときに、ロープ112がガイド部材191と常時接触したり、機体2のフレームや予備苗台64等の構造体と接触したりすることを回避するべく、ガイド部材191の前部フレーム120(機体2)に対する固定角度を適切な角度に調整することができるのである。
【0069】
また、ローラは図7から図9に示す形状のものに限定するものではなく、例えば図10に示すローラ195のような形状としてもよい。本実施形態のローラ195の外周には、ロープ112の中途部を巻き掛けるための溝195bが形成されている。
【0070】
ローラ195の溝195bの幅Aは、ロープ112の直径Bと略同じ寸法に設定されている。また、ローラ195の溝195bの深さCは、ロープ112の直径Bよりも若干大きい寸法に設定されている。このような構成により、ロープ112が溝195b内に安定的に保持されて、ロープ112がローラ195の溝195bから外れ難くなっている。
【0071】
また、ローラ195の溝195bの縁部(外周部)は切削されて、「サソイ」(サソイ部195c)が形成されている。このような構成により、ロープ112が一時的に緩んだとしても、緩んだロープ112がサソイ部195cに当接して溝195b内に円滑に戻される。よって、ロープ112が前記ローラ140から外れることを防止できる。
【符号の説明】
【0072】
1 歩行型田植機
2 機体
3 エンジン
64 予備苗台
84 リコイル握り
110 リコイルスタータ
112 ロープ(引っ張り用のロープ)
130 後部フレーム
140 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に搭載されたエンジンの側方にリコイルスタータが具備され、
前記リコイルスタータの引っ張り用のロープの先端にリコイル握りが設けられ、
前記機体の後部から立設されるとともに予備苗台を支持する後フレームに、前記リコイル握りが引き出し操作可能に支持される歩行型田植機において、
前記ロープが巻き掛けられるローラが、前記エンジン及び前記後フレームの間に配置されるとともに、前記機体に対して回転可能に支持される歩行型田植機。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行型田植機であって、
前記ローラの回転軸が、前記リコイルスタータのロープ出口と、前記ローラの前記ロープとの接触部と、前記リコイル握りを前記ロープの先端に係止する係止部と、を結ぶ平面に対して垂直に配置された歩行型田植機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行型田植機であって、
前記ロープが前記ローラから外れることを防止するガイドを具備する歩行型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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