説明

歩行型管理機

【課題】機体側から後方側に延びる操向操作を行うハンドルと、機体側に支持された左右方向の駆動軸と、駆動軸に設けられたロータリとを備え、ロータリの回転によって機体を前進走行させるとともに圃場での耕耘作業を行う歩行型管理機において、ロータリによる前進走行開始時に、ハンドルの操作性が低下することを防止可能な歩行型管理機を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、機体8側から後方側に延びるハンドル11と、機体8側に支持された左右方向の駆動軸13に設けられたロータリ14とを備え、ハンドル11によって操向操作を行うとともに、ロータリ14を回転駆動させるのみによって前進走行及び圃場での耕耘作業を行う歩行型管理機において、ハンドル11を、機体8に対して弾力的に上下揺動可能に支持するとともに操向操作可能な姿勢で保持可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩行型管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
機体側から後方側に延びる操向操作を行うハンドルと、機体側に支持された左右方向の駆動軸と、駆動軸に設けられたロータリとを備え、ロータリの回転によって機体を前進走行させるとともに圃場での耕耘作業を行う、いわゆる一軸タイプと呼ばれる特許文献1に示す歩行型管理機が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−317627号公報(第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献の歩行型管理機では、前進走行開始時におけるロータリの前進走行側への駆動力によって、駆動軸を支点として、ロータリの回転方向に対して逆方向側に、機体を回動作動させる力が作用し、この力が機体側から後方側に延びるハンドルを下方に揺動させる力にもなり、ハンドルの操向操作性が低下するという課題がある。特に、ハンドルの後部側にロータリへの動力伝動を断続操作するクラッチレバーを設けた場合にはクラッチレバーの操作性も低下するとう課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、機体側から後方側に延びる操向操作を行うハンドルと、機体側に支持された左右方向の駆動軸と、駆動軸に設けられたロータリとを備え、ロータリの回転によって機体を前進走行させるとともに圃場での耕耘作業を行う歩行型管理機において、ロータリによる前進走行開始時に、ハンドルの操作性が低下することを防止可能な歩行型管理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の歩行型管理機は、第1に、機体8側から後方側に延びるハンドル11と、機体8側に支持された左右方向の駆動軸13に設けられたロータリ14とを備え、ハンドル11によって操向操作を行うとともに、ロータリ14を回転駆動させるのみによって前進走行及び圃場での耕耘作業を行う歩行型管理機において、ハンドル11を、機体8に対して弾力的に上下揺動可能に支持するとともに操向操作可能な姿勢で保持可能に構成したことを特徴としている。
【0006】
第2に、ハンドル11側と機体8側の一方に係止ピン26、他方に係止ピン26を当接させる当接部24をそれぞれ設け、係止ピン26が当接部24に当接するようにハンドル11を付勢して該ハンドル11を操向操作可能な姿勢で保持させる弾性部材27を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の歩行型管理機によれば、前進走行開始時におけるロータリの前進走行側への駆動力によりハンドルがロータリの駆動軸を支点に揺動作動することに起因した操向操作性の悪化や、ハンドルの後部側にクラッチレバーを設けた場合にはクラッチレバーの操作性の悪化等が、ハンドルの弾力的な揺動によって防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した歩行型管理機の側面図である。
【図2】前進走行開始時の状態を示す本歩行型管理機の側面図である。
【図3】許容機構の構成を示す本歩行型管理機の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した歩行型管理機の側面図であり、図2は、前進走行開始時の状態を示す本歩行型管理機の側面図である。歩行型管理機1は、前進(以下、単に前)側に向かって下方傾斜するミッションケース2と、該ミッションケース2の中途部から前方に延設された支持フレーム3とによって機体フレーム4の少なくとも一部(図示する例では略全体)を構成している。
【0010】
該機体フレーム4上にはエンジン6が固設されるとともに、エンジン6の側方にはエンジン動力をミッションケース2内の上部側にベルト伝動する伝動ベルト(図示しない)が内装された前後方向の伝動ケース7が配設されることにより機体8の主要部分を構成しており、機体8の後端部には上下方向の抵抗棒9の上端部が着脱自在に取付固定される他、機体8には操向操作を行うハンドル11がハンドルフレーム12を介して支持されている。
【0011】
上記ミッションケース2の前側下部からは左右方向のロータリ軸(駆動軸)13が軸回りに回転自在に支持され、このロータリ軸13にはロータリ軸13と一体回転する複数の耕耘爪(図示しない)が軸装されており、この複数の爪によって左右方向に延びる円柱状のロータリ14を構成している。
【0012】
エンジン6からミッションケース2内に伝動された動力は、ロータリ軸13に変速伝動され、ロータリ軸13とともに耕耘爪を回転させ、これによってロータリ14が駆動される。この回転駆動可能に機体8側に支持された1つのロータリ14によって、圃場における前進走行と、圃場における耕耘作業との両方を行う。
【0013】
このロータリ14の上方は、機体フレーム4から水平方向に一体的に延設されたプレート状の上方カバー体16によって覆われ、ロータリ14の後方は前後揺動可能に上端部が機体フレーム4側に支持された背面視方形状の板状部材である左右一対の後方カバー17によって、覆われている。
【0014】
上記ハンドルフレーム12は、機体8から後方に向かって斜め上方に突出形成されており、前側の棒状の前フレーム18及び後側の棒状の後フレーム19によって構成されている。前フレーム18の基端(前端)部が機体フレーム側に取付固定される一方で、前フレーム18の先端部に後フレーム19の基端(前端)部が上下揺動可能に支持されている。すなわち、後フレーム19は、前フレームの先端部に形成される支点Sを回動支点として、上下揺動するように構成されている。
【0015】
上記ハンドル11は、その基端部が後フレーム19の先端部に上下回動調節可能に支持され、基端側から先端側に向かって左右の間隔が広がるハの字状に枝分かれし、左右一対の各先端寄り箇所が後方に屈曲形成されて後述する水平操作部21を構成している。
【0016】
該構成により、ハンドル11は、自身の基端部側の支点Pを回動支点として前後回動調整され、該前後回動調整により、ハンドル11の基端部から中途部が後方に向かって上方傾斜して全体が後方側に延びる操作姿勢と、ハンドル11の全体が前方に倒伏して機体8に沿って収納される収納姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。ちなみに、ハンドル11は、収納姿勢と操作姿勢のそれぞれの姿勢で固定及び固定解除可能に構成されている。
【0017】
また、上述の左右の各水平操作部21は、ハンドルの操作姿勢時において水平方向を向いた状態になるように構成されている。この左右の各水平操作部21の先端寄り半部には把持部21aが形成される他、左右一方側の水平操作部21における基端寄り箇所には、先端側に向かって突出するクラッチレバー22が、水平操作部21に対して離間・近接する側(図示する例では上下)に揺動可能に支持されている。
【0018】
該クラッチレバー22をハンドル11に近接する側に揺動させてエンジン6からロータリ14への動力伝動を断続するロータリクラッチ(図示しない)の接続操作を行う一方で、クラッチレバー22をハンドル11から離間する側に揺動させて該ロータリクラッチの切断操作を行う。
【0019】
ちなみに、クラッチレバー22は弾性部材等により切断操作側に常時付勢されており、この付勢力に抗してクラッチレバー22によりロータリクラッチの接続操作を行った際には、クラッチレバー22と把持部21aとをまとめて把持できるようにクラッチレバー22が構成されており、ロータリクラッチの接続操作時、ハンドル11の操向操作性が良好な状態で保持される。
【0020】
上記抵抗棒9は、中途部及び下部が上部に対して後方に屈曲形成され、圃場において耕耘作業を行いながら前進走行する際に、圃場に挿入されて、機体8の姿勢を安定させるように構成されている。
【0021】
以上のように構成される歩行型管理機1によれば、ハンドル11を操作姿勢で固定し、機体8の後方に起立した作業者が左右の把持部21a,21aを把持して操向操作を行いながら、クラッチレバー22によりロータリ14を駆動・駆動停止させ、この1つのロータリ14のみによって、圃場における前進走行と耕耘作業とを行う。ちなみに、図示する歩行型管理機1は、ロータリクラッチの接続作動時、正転動力がロータリに伝動され、ロータリを前進走行側に駆動させるように構成されている。
【0022】
ところで、ロータリ14の前進走行側への駆動開始時、ロータリ14の少なくとも一部が土中に位置する等、ロータリ14が空転しない状態の場合には、ロータリ14の駆動力が機体8側に伝えられ、ロータリ軸13を支点として機体8をロータリ14の回転方向と逆方向(図1,2における反時計回り)に回動作動させる力が作用する。
【0023】
この力は、機体8側から後方側に延設されたハンドル11を下方揺動側への力にもなるが、前進走行開始時にハンドル11を下方揺動させる力が作用すると、ハンドル11やハンドル11に設置されたクラッチレバー22の操作性が悪化するという問題が生じるため、本歩行型管理機1では、ロータリ14の前進走行側への駆動開始時、機体8のロータリ軸13を支点としたロータリ14と逆方向側への回動をハンドル11に対して許容して、ハンドル11の下方揺動作動を抑制する許容機構23が設けられている。
【0024】
次に、図1乃至3に基づき許容機構23について、説明する。
図3は、許容機構の構成を示す本歩行型管理機の要部側面図である。上述のように前フレーム18に後フレーム19を上下揺動可能に支持するが、ハンドル11側である後フレーム19と機体8との両部材8,19における一方側(図示する例では機体8)には当接体(当接部)24が設けられる一方で他方側には当接体24側に突出する係止ピン26を設ける他、係止ピン26が当接体24に当接するように後フレーム19を弾性的に付勢する引張スプリング(弾性部材)27を、後フレーム19と機体8との間に架設することにより、上述の許容機構23が構成されている。
【0025】
ロータリ14の前進走行側への駆動開始時における機体8の回動作動に伴い、係止ピン26が当接体24から離間するように、当接体24と係止ピン26が配置されている。具体的には、前フレーム18に対して前後揺動自在に支持された後フレーム19が、ロータリ14の前進走行側への駆動開始時における機体8の回動作動に伴って機体8に対して上方揺動し、このハンドル11の上方揺動に伴って、近接状態で対向していた後フレーム19の基端部下面側と、機体8の後端部上面側とが離間するため、この後フレーム19の基端部下面側と機体8の後端部上面側とに、係止ピン26と当接体24とをそれぞれ固着し、該当接体24の係止ピン26との対向面側(図示する例では上面側)に係止ピン26を当接させる当接面24aを形成している。
【0026】
そして、ハンドル11を機体8に対して下方揺動させると、係止ピン26が当接面24aに当接してそれ以上後方側に揺動作動しない状態になり、該状態では、ハンドル11が機体8側から後方に向かって斜め上方に傾斜するように突出した操向操作可能な姿勢に切換えられ、ハンドルの該姿勢が上述の引張スプリング27の弾性力によって保持される。
【0027】
すなわち、引張スプリング27は、係止ピン26と当接体24が当接するようにハンドル11を弾性的に付勢することにより、図1に示すように該ハンドル11を操向操作可能な姿勢で保持する一方で、所定以上の大きさの力が作用すると、図2に示すように係止ピン26が当接体24から離間する側へのハンドル11の弾力的な上方揺動を許容するように構成されている。
【0028】
係止ピン26と当接体24が当接する位置から機体8に対するハンドル11の相対的な上方揺動が許容されることによって、ロータリ14の前進走行側への駆動開始時における機体8の回動作動のショックが、ハンドル11側に伝えられることが最小限に抑制され、ロータリ14の前進走行側への駆動開始時におけるハンドル11の操向操作やクラッチレバー22の断続操作を円滑に行うことが可能になる。
【0029】
ちなみに、機体8を前進走行させながら圃場を耕耘している際にも、ロータリ軸13を支点にロータリ14の回転方向と逆方向に機体8を回動させる力が作用するが、この際には、ハンドル11が揺動しないように作業者が把持部21aをしっかりと把持していれば、当接体24と係止ピン26との当接が解除されない程度に引張スプリング27の弾性力が設定されている。また、ハンドル11を上方揺動させて機体8を前方に向かって下降傾斜するように傾けた場合に、歩行型管理機1の自重により係止ピン26と当接体24との当接が解除されない程度にも引張スプリングの弾性力は設定されている。
【0030】
なお、図示する例では、係止ピン26をハンドル11側、当接体24を機体8側にそれぞれ設けたが、係止ピン26を機体8側、当接体24をハンドル11側にそれぞれ設けてもよい。
【0031】
また、図示する例では、支点Sを、機体8に対してハンドル11が上下揺動する揺動支点として設定し、該上下揺動によってハンドル11に対する機体8のロータリ軸13を支点とした回動を許容し、機体8からハンドル11に伝わるショックが低減させる構造を採用したが、支点Pをハンドル11の揺動支点として設定してもよい。この場合には、ハンドルフレーム12に対してハンドル11が上下揺動自在な状態で、操向操作を行うためにハンドル11とハンドルフレーム12の一方側に上述の係止ピン26、他方側に当接体24をそれぞれ設置し、ハンドル11の操作姿勢時に係止ピン26が当接体24と当接するように係止ピン26及び当接体24を配置構成し、操作姿勢側にハンドル11を弾性的に付勢するように弾性部材27を設ける必要があるが、これによって、ハンドルフレーム12を前フレーム18と後フレーム19との分割する必要は無く、一体的に形成できる。
【符号の説明】
【0032】
8 機体
11 ハンドル
13 ロータリ軸(駆動軸)
14 ロータリ
24 当接体(当接部)
26 係止ピン
27 引張スプリング(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(8)側から後方側に延びるハンドル(11)と、機体(8)側に支持された左右方向の駆動軸(13)に設けられたロータリ(14)とを備え、ハンドル(11)によって操向操作を行うとともに、ロータリ(14)を回転駆動させるのみによって前進走行及び圃場での耕耘作業を行う歩行型管理機において、ハンドル(11)を、機体(8)に対して弾力的に上下揺動可能に支持するとともに操向操作可能な姿勢で保持可能に構成した歩行型管理機。
【請求項2】
ハンドル(11)側と機体(8)側の一方に係止ピン(26)、他方に係止ピン(26)を当接させる当接部(24)をそれぞれ設け、係止ピン(26)が当接部(24)に当接するようにハンドル(11)を付勢して該ハンドル(11)を操向操作可能な姿勢で保持させる弾性部材(27)を設けた請求項1の歩行型管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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