説明

歩行型耕耘機

【課題】耕耘作業時、耕耘爪に土が付着し、作業効率が悪くなる事態を解消する歩行型耕耘機を提供する。
【解決手段】走行車輪を備えておらず、耕耘爪の回転により耕耘しながらの走行が可能な車軸ロータリ式の小型耕耘機であって、耕耘爪6の刃先6aに付着した土を除去する着土除去部材12aを刃先の径方向近傍に設ける。着土除去部材12aは、泥除け板8と、ギヤケース3に設けられ、エンジンと前記耕耘爪6との間に位置している。着土除去部材12aは耕耘爪6に沿うように配置されていることにより、耕耘爪6に付着する泥土等をより効果的に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘爪の回転により、走行しながら耕耘作業や除草作業を行なうことができる歩行型耕耘機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4及び図5に示すように、原動機104を備えた機体と、機体から後方に延設される操縦ハンドル110と、原動機104により伝動ケース102を介して回転駆動可能に取り付けられた耕耘爪106と、伝動ケース102の後部に取り付けられて土中に差し込まれた状態で機体に推進抵抗を与える抵抗棒107とを備え、耕耘爪106の回転により耕耘しながらの走行が可能な車軸ロータリ式の歩行型耕耘機101が知られており、抵抗棒107を土中に刺して、操縦ハンドル110の上下操作によって耕耘爪の前進力を制御しながら、当該耕耘爪を耕土中に沈下させての耕耘作業等を行なうことができるようになっている。
【0003】
このような耕耘機において、通常、耕耘爪の刃先は耕耘作業時、本体中心部を除き、走行部すべてが耕耘されるよう刃先の回転位置はとなりの耕耘爪の刃先とラップする位置まで伸びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−240750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、作業場の土の状態や、本発明のような歩行型耕耘機によっては、走行車輪を備えておらず、耕耘爪の回転により耕耘しながらの走行が可能な車軸ロータリ式の小型耕耘機であるため、耕耘爪の径が小さく、刃先は曲げられており、耕耘作業を続けていくうちに耕耘爪に土が付着していき、耕耘作業の効率が悪くなっていくことがある。
【0006】
また、土が付着したまま耕耘作業を続けると、土が耕耘爪にこびりつき、耕耘できずに進むだけではなく、耕耘軸部まで土が付着していき、耕耘爪が着脱しにくくなることもある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耕耘刃への土付着を抑制できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の歩行型耕耘機は、下方に突出する出力軸を有するエンジンと、エンジンより進行方向後方側上方に位置する操作ハンドルと、出力軸の回転により駆動し、出力軸の軸方向と略垂直方向に延びる耕耘軸と、耕耘軸の径方向に突出し、外周側で軸方向に折り曲がった刃先を備えた耕耘爪と、刃先と耕耘軸の軸方向で重なるとともに、耕耘軸が回転することで刃先が近傍を通過する位置に設けられた着土除去部材を備えて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、土よけガードの下側で、耕耘爪の刃先外周近傍と内周近傍に着土除去部材を設けたことによって、耕耘の際、耕耘作業を続けていくうちに、あるいは、耕耘作業場の土の状態によって、耕耘刃に土が付着しても、付着した土は該部材に当たり、耕耘爪から除去される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る歩行型耕耘機の斜視図である。
【図2】図1の要部の耕耘爪部分詳細図である。
【図3】本発明の実施形態に係る歩行型耕耘機の動作を示す側面図である。
【図4】従来の歩行型耕耘機の耕耘爪部分詳細図である。
【図5】一般的な歩行型耕耘機の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図1から図3により説明する。図1は、実施形態に係る歩行型耕耘機の斜視図、図2は図1の本発明の耕耘爪部分詳細図、図3は歩行型耕耘機の動作を示す耕耘爪部分側面図である。
【0012】
以下、本発明の第1実施形態を添付の図1から図3に沿って説明する。図1に示すように、歩行型耕耘機(以下、耕耘機)1は、エンジン4の下方に取り付けられるフレーム2と、フレーム2に取付けられるギヤケース3と、ギヤケース3の下端近傍から左右方向に突出して延びる耕耘軸(駆動軸)5に固定された4枚の耕耘爪6と、フレーム2の下方(耕耘爪6側)でギヤケース3に取付けられて耕耘爪6を部分的に覆う泥除け板8と、フレーム2にハンドルフレーム9を介して取付けられ、機体の後方斜め上方に延びる右側ハンドル10Rと左側ハンドル10Lから成るハンドル(操縦ハンドル)10と、ギヤケース3から後方斜め下方(図の右下方)に伸びる抵抗棒7とを備えている。
【0013】
エンジン4は、クランク軸(図示せず)がギヤケース3の伸びる方向と同方向(図1の上下方向)を向くようにギヤケース3の上端に設けられる。エンジン4の側部には、燃料タンク、エアクリーナが取付けられ、エンジン4の上部にはスタータハンドルを備えたリコイルスタータ14が取付けられている。右側の操縦ハンドル10Rの端部近傍にはスロットルケーブルの一方の端部が接続されたスロットルレバー11が取付けられている。スロットルケーブル15の他方の端部はキャブレター(図示せず)に接続され、スロットルレバー16の操作に応じてエンジン3の回転が調整される。
【0014】
耕耘爪6は、周方向に形成された複数の刃先6aを備えている。耕耘爪6は伝動軸41を挟んで左右に二対設けられており、耕耘軸5の軸方向内側に配置された耕耘爪6は、周方向に隣り合う刃先6aが外周側にて軸方向に交互に異なる方向に折り曲げて形成され、軸方向外側に配置された耕耘爪6は軸方向の伝動軸側(内側)を向いて折り曲げられている。
【0015】
抵抗棒7は、ギヤケース3の中途部後方に、下方に向けて突出する抵抗棒7を取り付けている。また、エンジン4の下方には、回転する耕耘爪6による土の跳ね上がりを防止すべく、当該耕耘爪6の上方を覆う平板状の泥除け板8を設けている。
【0016】
泥除け板8は金属板から形成され、フレーム2から前後方向に延びて耕耘刃6を覆っている。
【0017】
ギヤケース3の内部には、エンジン4のクランク軸(図示せず)の回転を遠心クラッチを介して伝達する伝動軸(出力軸)41が設けられている。伝動軸の下部には円筒ウォーム42が形成される。円筒ウォーム42はギヤケース3の内部で耕耘軸5に固定されたウォームホイール43に噛み合い、円筒ウォーム42とウォームホイール43はウォームギヤ44を構成する。エンジン4の出力は、伝動軸からウォームギヤ44を介して耕耘軸5に伝達され、耕耘刃6を回転駆動する。
【0018】
耕耘時において、作業者は、左右の操縦ハンドル10L、10Rを下方に押し付けることによって、抵抗棒7を土中に挿入し、この抵抗棒7にある程度の抵抗を与えることで耕耘作業における機体姿勢の安定を図っている。
【0019】
泥除け板8の下面及びギヤケース3には、着土除去部材12aが設けられている。着土除去部材12aは、回転する耕耘爪6の上方で折り曲げられた刃先6aと耕耘軸5の軸方向でオーバーラップすると共に、径方向外周側の近傍位置に、耕耘爪6の刃先6aに平行に延びるよう構成されている。刃先6aは先述の通り耕耘軸5の軸方向に折り曲げられて形成されており、着土除去部材12aはそれぞれの傾斜角度に沿うように構成されている。耕耘爪6が回転すると、刃先6aが着土除去部材12aの近傍位置を通過する。泥除け板8に設けられた着土除去部材12aは、耕耘軸5の軸方向において隣り合う耕耘爪6の間に配置されており、隣り合う耕耘爪6、6の刃先6a、6aの泥の除去を一つの部材で行えるよう略V字状に形成されている。
【0020】
耕耘軸5は、回転する耕耘爪6の折り曲げられた刃先6aと耕耘軸5の軸方向でオーバーラップすると共に、径方向内周側の近傍位置に耕耘爪6の刃先6aに平行に配置された着土除去部材12bが設けられている。また、耕耘軸5には内輪及び外輪から構成されるワンウェイクラッチ13が取り付けられている。
【0021】
着土除去部材12bは、ワンウェイクラッチ13の外輪に装着されており、ワンウェイクラッチ13の内輪は耕耘軸5に固定されている。ワンウェイクラッチ13は、内輪が耕耘軸5によって回転しても外輪部が回転しないよう構成されている。これにより、耕耘爪6に対して自在に回転可能であるとともに、常に耕耘軸6上方で、耕耘爪6の刃先6aの内周位置に位置している。また、着土除去部材12bは着土除去部材12aと同様隣り合う耕耘爪6に付着した泥土等を一つの部材で除去できるようV字状に形成されている。
【0022】
耕耘爪6の刃先は、耕耘作業時、本体中心部を除き、走行部すべてが耕耘されるよう刃先6aの回転位置はとなりの耕耘爪6の刃先6aとラップする位置まで伸びているため、刃先6aの内周側は耕耘軸5側から着土除去部材12bを設ける必要がある。
【0023】
また、刃先の回転位置がラップしない耕耘爪6については、着土除去部材12aに刃先6aの内周部に対しても平行な部材を設ければ良い。
【0024】
なお、耕耘爪6は耕耘軸5にギヤケース2を挟んで左右に2枚ずつ固定されているが、刃先の磨耗状態に応じて耕耘軸5の外側から抜き取ることで交換することができる。
【0025】
着土除去部材12a及び着土除去部材12bは、耕耘爪6の刃先の近傍位置に配置されているが、その周方向の長さBは、周方向に複数形成された刃先6aの隣り合う間隔Aよりも小さくなるよう構成されている。つまり、耕耘軸5から耕耘爪6を取り外す際に、刃先6aと隣り合う刃先6aの間に着土除去部材12aもしくは着土除去部材12bを配置して、耕耘軸5の軸方向に引き抜くことで、耕耘爪6の交換を容易に行うことができる。尚、耕耘爪6の刃先6aが耕耘軸5の軸上に若干ずれて配置されていても同様である。
【0026】
このように構成された歩行型耕耘機1によれば、図3に示すように、耕耘作業によって耕耘爪6に付着する泥土等は、回転中に着土除去部材12a及び着土除去部材12bの近傍を通過することにより除去される。
【0027】
また、耕耘作業を続けていくうち、あるいは、作業場の土が軟弱のために耕耘刃6に土が付着しても、付着量が多くなっていくうちに、刃先6aの上側は部材12aに、刃先6aの下側(耕耘刃6の刃先内側)は部材12bに付着した土は当たり、耕耘刃6から除去されるため、耕耘作業の効率の低下を抑制することができる。また、土の付着が減るため、耕耘軸部まで土が付着していき、耕耘爪が着脱しにくくなることも防止できる効果もある。
【0028】
また、着土除去部材は耕耘軸の軸方向に折り曲げた耕耘爪に沿うように配置されていることにより、耕耘爪6に付着する泥土等をより効果的に除去することができる。
【0029】
また、着土除去部材は泥除け板に設けられ、耕耘爪6側を向いて配置されていることで、除去した泥土等が作業者側に飛散することを抑制できる。
【0030】
また、着土除去部材は耕耘軸に設けられる構成としたことで、耕耘爪6の内側に付着した泥土を効率的に除去することができる。また、泥土の除去を行える構成でありながら、刃先6aが耕耘軸6の軸方向にオーバーラップして重なる構成としているため、耕耘時の作業性を向上させることができる。
【0031】
更に、着土除去部材12a及び着土除去部材12bを周方向に隣り合う刃先6aの間隔より短く形成したことにより、耕耘爪6の交換作業を容易に行うことができる。
【0032】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1は歩行型耕耘機、3は伝動ケース、4はエンジン、5は耕耘軸、6は耕耘爪、6aは耕耘爪の刃先、7は抵抗棒、8は泥除け板、10は操縦ハンドル、12a、12bは着土除去部材、13はワンウェイクラッチである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に突出する出力軸を有するエンジンと、
前記エンジンより進行方向後方側上方に位置する操作ハンドルと、
前記出力軸の回転により駆動し、前記出力軸の軸方向と略垂直方向に延びる耕耘軸と、
前記耕耘軸の径方向に突出し、外周側が軸方向に折り曲がった刃先を備えた耕耘爪と、
前記刃先と前記耕耘軸の軸方向で重なるとともに、前記耕耘軸が回転することで前記刃先が近傍を通過する位置に設けられた着土除去部材と、
を備えたことを特徴とする歩行型耕耘機。
【請求項2】
前記着土除去部材は前記耕耘爪の前記刃先に沿うように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行型耕耘機。
【請求項3】
前記エンジンと前記耕耘爪との間に設けられ、前記耕耘爪を覆う泥除け板を更に備え、前記着土除去部材は前記泥除け板に設けられている、
ことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の歩行型耕耘機。
【請求項4】
前記着土除去部材は、前記耕耘軸上に配置され、前記耕耘軸に対して相対回転可能に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の歩行型耕耘機。
【請求項5】
前記耕耘爪は、前記耕耘軸上に複数設けられ、前記着土除去部材は前記複数の耕耘爪がそれぞれ近傍を通過するよう構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の歩行型耕耘機。
【請求項6】
前記耕耘軸の軸方向視において、前記耕耘爪は周方向に形成された複数の刃先を備え、前記着土除去部材の周方向長さは、前記周方向に隣り合う刃先の間隔より短い、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の歩行型耕耘機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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