説明

歩行型耕耘管理機

【課題】培土器を用いずに畝立て作業を行うことができ、かつ、畝立て作業を行うか否かを容易に変更することができる歩行型耕耘管理機を提供する。
【解決手段】ロータリ耕耘装置30と、畝立て装置1とを有し、畝立て装置1をロータリ耕耘装置30の後方に配置した耕耘部5を備えたものであって、畝立て装置1は、ロータリ耕耘装置3における耕耘カバー33の後端に上部を取り付けられて、この耕耘カバー33の後端から接地可能に垂れ下がる弾性体であるカバー体12と、前記カバー体の左右中央部12Cの後方に配置されて、このカバー体12の左右両側部12L・12Rの後方への揺動は規制せず、その左右中央部の後方への揺動は規制する規制手段15である抵抗棒6および係止部材16とを備え、カバー体12を規制手段15により一部規制する畝立て作業状態と、前記規制手段により規制しない非畝立て作業状態とに切替可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘部を備える歩行型耕耘管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体の前部に走行部を、後部にロータリ耕耘装置を有する耕耘部を備えて、この耕耘部の後部に培土器を取り付け、走行部により走行しながら、耕耘部により耕耘作業を行うとともに、培土器により土壌に畝を成形する畝立て作業を実施可能とする歩行型耕耘管理機は公知となっている。このような歩行型耕耘管理機において、培土器は着脱式とされ、機体の後部に培土器支持杆を介して取り付けられていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−298902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のような着脱式の培土器を用いた歩行型耕耘管理機では、畝立て作業を行うか否かを変更するたびに、前記培土器の着脱作業を行う必要があったため、畝立て作業の変更時の作業負担が大きかった。また、前記培土器が大きくて重たい場合などには、着脱作業や畝立て作業を行う場合に大きな労力を要していた。
【0004】
そこで本発明は、着脱式の培土器を用いずに畝立て作業を行うことができ、かつ、畝立て作業を行うか否かを容易に変更することができる歩行型耕耘管理機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、耕耘作業を行うための耕耘装置と、畝立て作業を行うための畝立て装置とを有し、この畝立て装置を前記耕耘装置の後方に配置した耕耘部を備える歩行型耕耘管理機であって、前記畝立て装置は、前記耕耘装置における耕耘カバーの後端に上部を取り付けられて、この耕耘カバーの後端から接地可能に垂れ下がる弾性体と、前記弾性体の左右中央部の後方に配置されて、この弾性体の左右両側部の後方への揺動は規制せず、その左右中央部の後方への揺動は規制する規制手段とを備え、前記弾性体を前記規制手段により一部規制する畝立て作業状態と、前記規制手段により規制しない非畝立て作業状態とに切替可能に構成するものである。
【0007】
請求項2においては、前記畝立て装置は、前記弾性体の左右両側の上部を前記耕耘カバーの後端に着脱可能に取り付けるものである。
【0008】
請求項3においては、前記畝立て装置は、スリットを前記弾性体にその下端から上方へ向けて延びるように形成して、前記規制手段の左右両側方に配置するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、従来のような着脱式の培土器を用いなくても、畝立て装置で耕耘装置に常時取り付けたままの弾性体を用いて畝立て作業を行うことができる。また、規制手段を用いた簡単な操作だけで弾性体の畝立て作業状態と非畝立て作業状態とを切り替えて、畝立て作業を行うか否かを容易に変更することができる。
【0011】
請求項2においては、畝立て装置で弾性体を畝立て状態に切り替えて、畝立て作業を行う場合に、弾性体の左側部および右側部と接触する土壌に、弾性体の重量が加わることとなり、土壌に成形される溝の傾斜部を堅く押し固めることが可能となる。したがって、雨などによっても崩れ難い畝を成形することができる。
【0012】
請求項3においては、畝立て装置で弾性体を畝立て状態に切り替えて畝立て作業を行う場合に、弾性体の左側部の下部と右側部の下部とが左右中央部の下部から分離して捲れ上がることが可能となり、左側部および右側部の後方への捲れが生じやすくなる。したがって、傾斜部の傾斜角度が大きい溝を土壌に形成して、畝を成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態について説明する。
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係る歩行型耕耘管理機2の全体的な構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、歩行型耕耘管理機2では、前部に走行部4が備えられ、後部に耕耘部5が備えられる。歩行型耕耘管理機2では、また、後上部に操縦部9が備えられる。
【0016】
走行部4においては、機体フレーム3の前部にエンジン7が設けられ、機体フレーム3の後部に変速装置(不図示)が設けられる。機体フレーム3の前後中途部には伝動装置8が設けられ、エンジン6と前記変速装置との間に配置される。
【0017】
前記変速装置のミッションケース18は前後方向に延長するように構成され、前部が機体フレーム3の下方に位置し、後部が機体フレーム3の後下方に位置するように配置される。ミッションケース18の前部には車軸10が左右方向に延長するように軸支され、この車軸10の左右の各端部に走行輪22・22が取り付けられる。
【0018】
耕耘部5においては、前記変速装置の後部に耕耘作業を行うための耕耘装置としてのロータリ耕耘装置30が設けられる。ロータリ耕耘装置30では、ミッションケース18の後部に耕耘軸31が左右方向に延長するように軸支され、この耕耘軸31に複数の耕耘爪32が適宜の間隔をとって放射状に植設される。
【0019】
耕耘爪32の上方および左右両側方には耕耘カバー33が当該耕耘爪32の回動軌跡にあわせて配置され、耕耘爪32の後方には弾性体としてのカバー体12が耕耘カバー33と同程度の左右幅をもって配置される。こうして、複数の耕耘爪32が耕耘カバー33により上方から、また左右両側の上部で側方から覆われ、カバー体12により後方から覆われる。
【0020】
ロータリ耕耘装置30の後方には抵抗棒6が配置される。ここでは、ミッションケース18の後部にビーム17が耕耘カバー33の後方へ向けて突出するように設けられ、このビーム17の後端部に抵抗棒6が取り付けられる。ただし、ビーム17はミッションケース18の後部ではなく、耕耘カバー33の後部に設けてもよい。
【0021】
抵抗棒6は耕耘作業時に土壌に挿入されて土壌から抵抗を得るものであり、カバー体12の後方に配置される。抵抗棒6は上下方向に延長されて、ビーム17の挿通孔17aに挿入される。そして、抵抗棒6はビーム17にその挿通孔17aに挿入された状態で固定されて、上下位置を調節可能に取り付けられる。この抵抗棒6はその下端部を後方へ向けて若干屈曲し、L字型とされる。
【0022】
抵抗棒6の取付構造は、たとえば次のように構成される。前記ビーム17の後端に挿通孔17aが上下方向に開口され、後端面に前後方向に前記挿通孔17aに連通する取付孔17bが開口される。また、抵抗棒6の上部に取付孔(不図示)が上下方向に所定間隔ごとに開口される。抵抗棒6はビーム17の挿通孔17aに挿入されて、いずれかの前記取付孔がビーム17の取付孔17bと一致するように配置される。そのうえで、これらの前記取付孔にボルトやナットなどの締結部材21が挿入される。
【0023】
こうして、抵抗棒6がビーム17に締結固定され、このビーム17に対して任意の上下位置で取り付けられる。抵抗棒6はビーム17の取付孔17bと一致させる前記取付孔を別の取付孔に変更することによって、ビーム17に対する、ひいては土壌に対する上下位置を適宜に調節できるように取り付けられる。なお、抵抗棒6の代わりに、整地板や尾輪などをビーム17に取り付けることも可能である。
【0024】
ロータリ耕耘装置30の後方には、また、畝立て作業を行うための畝立て装置1が配置される。
【0025】
操縦部9においては、ミッションケース18の後側傾斜部にハンドル23が後上方へ向けて斜設される。ハンドル23の後端部にはグリップ13が備えられるとともに、クラッチレバー14やアクセルレバー(不図示)等が設けられる。また、ミッションケース18に変速レバー19が後上方へ向けて斜設され、ハンドル23と並置される。
【0026】
このような歩行型耕耘管理機2において、動力がエンジン7から伝動装置8を介して前記変速装置に伝達可能とされ、前記変速装置で変速された動力が走行輪22・22やロータリ耕耘装置30の複数の耕耘爪32に伝達されて、走行輪22・22および複数の耕耘爪32が回転可能とされる。また、操縦部9の各レバー等で走行部4や耕耘部5の各装置が操作可能とされる。
【0027】
こうして、歩行型耕耘管理機2は、走行輪22・22により走行しながら、ロータリ耕耘装置30により耕耘作業を行い、さらには抵抗棒6の上下位置を調節することによって、ロータリ耕耘装置30の耕耘深さを変更することができるように構成される。そのうえで、歩行型耕耘管理機2は、後述するように、畝立て装置1により耕耘作業とともに畝立て作業を行うことができるように構成される。
【0028】
次に、畝立て装置1の第一実施形態の構成について説明する。
【0029】
図2から図4に示すように、畝立て装置1には、取付手段11と、弾性体としてのカバー体12と、規制手段15とが備えられる。なお、カバー体12は耕耘作業時にロータリ耕耘装置30の耕耘爪32の回転により砕かれた土などが後方へ飛散するのを防止する部材を兼ねる構成とされる。
【0030】
カバー体12は略長方形の板状部材であり、弾性部材であるゴムで構成される。ただし、前記弾性体は、本実施形態においては、ゴムからなるカバー体12としているが、これに特に限るものではない。たとえば、前記弾性体はポリプロピレン、ナイロン、メタクリル樹脂などの弾性を有する他の素材で構成したものであってもよい。
【0031】
また、カバー体12は長手方向を左右方向として耕耘カバー33と同程度の左右幅(横幅)をもち、短手方向を上下方向として下端が当該カバー体12の耕耘カバー33への取付時に土壌に接地可能な上下幅(縦幅)をもった形状とされる。そして、カバー体12はその上部で取付手段11により耕耘カバー33の後端に取り付けられて、この耕耘カバー33の後端から下方の土壌に向けて接地可能に垂れ下げられる。
【0032】
図3に示すように、カバー体12の上端部には、複数の貫通孔12aが左右方向に所定間隔ごとに形成される。カバー体12の上端部の左右中央には、略U字状の切欠12bが貫通孔12aに並べられて形成される。この切欠12bは抵抗棒6を挿嵌することができる程度の大きさ・形状に形成される。ただし、切欠12bの代わりにスリットを形成することも可能である。
【0033】
カバー体12の下端部の左右中央には、係止孔12cが形成される。この係止孔12cは切欠12bの略鉛直下方に配置される。この係止孔12cは後述する係止部材16のフック16Bを挿嵌することができる程度の大きさ・形状に形成される。ただし、係止孔12cの代わりに環状またはU字状の係止具をカバー体12の後面下部の左右中央に設け、フックと係合可能な構成とすることも可能である。
【0034】
なお、このカバー体12が設けられる耕耘カバー33は、上板33aと左右の側板33b・33bとを有し、下方へ向けて開口する箱型とされる。上板33aは側面視で上方へ突出するように湾曲され、円弧状の曲面を有して左右方向を軸心方向とする半円筒状に構成される。上板33aはミッションケース18に取り付けられ、前端部が耕耘軸31の前方付近に位置し、後端部が耕耘軸31の後方付近に位置して、耕耘爪32を上方から覆うように配置される。
【0035】
そして、左右の各側板33b・33bは側面視で半円または扇状に構成される。左右の側板33b・33bはそれぞれ耕耘カバー33の左右の端部に側面視で互いの円弧部を合わせて取り付けられ、耕耘爪32の左右側方に配置される。こうして、耕耘カバー33は耕耘爪32の前上方と後上方、かつ左側方と右側方とにわたって設けられ、耕耘作業時にロータリ耕耘装置30の耕耘爪32の回転により砕かれた土などが上方や左右側方へ飛散するのを防止するものとされる。
【0036】
図3に示すように、取付手段11は、取付板11Aと、当て板11Bと、ボルト11Cと、ナット(不図示)とで構成される。
【0037】
取付板11Aは長板状部材で構成され、長手方向を左右方向として耕耘カバー33と同程度の左右幅をもった形状とされる。取付板11Aの上部は耕耘カバー33の後端に固定され、取付板11Aの下部は耕耘カバー33の後端から下方へ向けて若干突出される。取付板11Aの下部には複数の貫通孔11aがそれぞれカバー体12の各貫通孔12aと一致するように、左右方向に所定間隔ごとに形成される。ただし、取付板11Aは耕耘カバー33と一体的に構成してもよい。
【0038】
当て板11Bは長板状部材で構成され、長手方向を左右方向として耕耘カバー33や取付板11Aと同程度の左右幅をもち、短手方向を上下方向として取付板11Aの上部と同程度の上下幅をもった形状とされる。当て板11Bには複数の貫通孔11bがそれぞれカバー体12の各貫通孔12aおよび取付板11Aの各貫通孔11aと一致するように、左右方向に所定間隔ごとに形成される。
【0039】
そして、カバー体12の取付に際しては、耕耘カバー33に固定された取付板11Aのうちその下部に後方からカバー体12の上部が重ねられ、このカバー体12の上部に後方から当て板11Bが更に重ねられ、これらの部材が各貫通孔(11a・12a・11b)を一致させた状態とされる。この状態でボルト11Cが各貫通孔(11a・12a・11b)に後方から挿通され、それぞれのボルト11Cの取付板11Aから突出した部分にナット(不図示)が螺合される。こうして、カバー体12が上部で耕耘カバー33の後端に取付手段11により着脱可能に取り付けられる。
【0040】
図4に示すように、規制手段15は、前述の抵抗棒6と、係止部材16とで構成される。係止部材16では、筒状の本体16Aの外周面前側にL字型のフック16Bがその一端が下方を向いて突出するように設けられ、このフック16Bと抵抗棒6を挟んだ反対側の外周面後側にボルト16Cなどの締結部材が設けられる。そして、係止部材16は、カバー体12の左右中央部12Cの後方において、本体16Aを抵抗棒6に外嵌してボルト16Cを締め付けることにより、抵抗棒6に適宜の上下位置に調節可能に取り付けられる。
【0041】
このような構成の畝立て装置1を備える歩行型耕耘管理機2において、耕耘作業を行うとともに、畝立て作業を行う場合には、図2に示す状態で、抵抗棒6が一旦カバー体12の切欠12bから抜かれてビーム17から取り外された後、図4に示すように、カバー体12の後方に位置するように再びビーム17に取り付けられる。または、図2に示す状態において、カバー体12が耕耘カバー33の後端から取り外された後、図4に示すように、抵抗棒6の前方に位置するように再び耕耘カバー33の後端に取り付けられる。
【0042】
そして、このようにカバー体12が抵抗棒6、即ち規制手段15よりも前方に位置するように配置された状態で、抵抗棒6の下部に設けられた係止部材16のフック16Bが、カバー体12の下部に形成された係止孔12cに挿入されて、このカバー体12と係止される。これにより、カバー体12が耕耘作業時に、規制手段15により左右両側部12L・12Rの後方への捲れ(揺動)は規制されず、その左右中央部12Cの後方への捲れは規制される畝立て作業状態とされる。
【0043】
一方、耕耘作業のみを行って、畝立て作業を行わない場合には、図2に示すように、カバー体12が上部で耕耘カバー33の後端に取り付けられた状態で、抵抗棒6がカバー体12の切欠12bに挿通されて、カバー体12よりも前方に位置するように、ビーム17に取り付けられる。言い換えれば、カバー体12が抵抗棒6、即ち規制手段15(図4参照)よりも後方に位置するように配置される。これにより、カバー体12が耕耘作業時に規制手段15により左右中央部12Cの後方への捲れ(揺動)が規制されない非畝立て作業状態とされる。
【0044】
このような構成により、耕耘作業を行うとともに、畝立て作業を行う場合には、耕耘作業にともなう機体の前進走行時に、規制手段15が作用して、カバー体12が規制手段15により一部規制される畝立て作業状態で接地しながら前方へ移動される。このとき、カバー体12の左右中央部12Cが土壌へ向かって垂れ下がったままの姿勢となり、左右両側部12L・12Rが後方へ捲れ上がった姿勢となって、カバー体12は前方へ移動される。
【0045】
そして、カバー体12が前方へ移動されることによって、その通過時に耕耘された土が左右に押し退けられる。その結果、図10に示すように、カバー体12の左右中央部12Cが通過した軌跡上には溝Mの底部M1が形成され、左側部12Lおよび右側部12Rが通過した軌跡上には溝Mの傾斜部M2が形成されて、土壌に溝Mが成形され、この溝Mの左右両側に畝が成形される。
【0046】
一方、耕耘作業のみを行って、畝立て作業を行わない場合には、耕耘作業にともなう機体の前進走行時に、規制手段15が作用せず、カバー体12は規制手段15により規制されない非畝立て作業状態で前方へ移動される。このとき、カバー体12全体が後方へ捲れ上がった姿勢となって、カバー体12は前方へ移動される。よって、カバー体12が通過した軌跡上に溝は成形されず、畝が成形されない。
【0047】
なお、規制手段15は、本実施形態においては、抵抗棒6と係止部材16とで構成しているが、これに特に限るものではなく、たとえば、抵抗棒6の代わりに尾輪をビーム17に取り付けて、これを用いて構成してもよい。
【0048】
また、規制手段15は、抵抗棒6の下部に図5に示すような略V字状の畝立てフレーム40を固設して、これを用いて構成してもよい。畝立てフレーム40は、畝立て作業において成形したい溝、ひいては畝の形状に合わせて、適宜設計変更することが可能である。このような規制手段によれば、畝立て作業の変更時における作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0049】
次に、畝立て装置1の第二実施形態の構成について説明する。ただし、第一実施形態の構成の部材と同一の部材については同一の符号を付し、第一実施形態の構成と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
この構成では、図6、図7に示すように、畝立て装置1の部材のうち取付手段11において、当て板11Bが左右方向に三つに等分割されて、左側当て板11Lと、中央当て板11Mと、右側当て板11Rとで構成される。各当て板には複数の貫通孔11bが、左側当て板11Lと、中央当て板11Mと、右側当て板11Rとが左側から右側へ向けて一列に並べられた状態で、それぞれカバー体12の各貫通孔12aと一致するように、左右方向に所定間隔ごとに形成される。
【0051】
こうして、畝立て装置1は、カバー体12の上部を左右の当て板11L・11Rを用いずに中央当て板11Mのみを用いて耕耘カバー33の後端に取り付けることや、三つの当て板11L・11M・11Rを用いて耕耘カバー33の後端に取り付けることや、三つの当て板11L・11M・11Rを用いずに耕耘カバー33の後端から取り外すことができるように構成される。つまり、畝立て装置1はカバー体12の左右両側および左右中央の上部を別個に耕耘カバー33の後端に着脱可能に取り付けるように構成される。
【0052】
そして、畝立て装置1において、カバー体12が畝立て作業状態とされる場合には、図7に示すように、カバー体12の左右中央の上部のみが耕耘カバー33の後端に取り付けられ、左右両側の上部は耕耘カバー33の後端から取り外される。一方、カバー体12が非畝立て作業状態とされる場合には、図6に示すように、カバー体12の左右中央だけでなく左右両側の上部が耕耘カバー33の後端に取り付けられる。
【0053】
このような構成により、耕耘作業を行うとともに、畝立て作業を行う場合には、耕耘作業にともなう機体の前進走行時に、規制手段15が作用して、カバー体12が規制手段15により一部規制される畝立て作業状態で接地しながら前方へ移動される。このとき、カバー体12の左右中央部12Cが土壌へ向かって垂れ下がったままの姿勢となり、左右両側部12L・12Rが左右中央部12Cに比べて下方に垂れ下がった姿勢から後方へ大きく捲れ上がった姿勢となって、カバー体12は前方へ移動される。
【0054】
そして、カバー体12が前方へ移動されることによって、その通過時に耕耘された土が左右に押し退けられる。その結果、図10に示すように、カバー体12の左右中央部12Cが通過した軌跡上には溝Mの底部M1が形成され、左側部12Lおよび右側部12Rが通過した軌跡上には溝Mの傾斜部M2が形成されて、土壌に溝Mが成形され、この溝Mの左右両側に畝が成形される。
【0055】
一方、耕耘作業のみを行って、畝立て作業を行わない場合には、耕耘作業にともなう機体の前進走行時に、規制手段15が作用せず、カバー体12は規制手段15により規制されない非畝立て作業状態で前方へ移動される。このとき、カバー体12の左右中央だけでなく左右両側の上部が耕耘カバー33の後端に取り付けられた状態で、カバー体12全体が後方へ捲れ上がった姿勢となって、カバー体12は前方へ移動される。よって、カバー体12が通過した軌跡上に溝は成形されず、畝が成形されない。
【0056】
なお、畝立て装置1は、本実施形態においては、カバー体12の左右両側および左右中央の上部を別個に耕耘カバー33の後端に着脱可能に取り付けた構成としているが、これに限定するものではなく、カバー体12のうち左右中央の上部のみは耕耘カバー33の後端に着脱不能に取り付けた構成としてもよい。すなわち、畝立て装置1はカバー体12のうち左右両側の上部を耕耘カバー33の後端に着脱可能に取り付けた構成であればよい。
【0057】
また、畝立て装置1は、本実施形態においては、取付手段11の当て板11Bを左右方向に三つに等分割して互いが同一の左右幅(横幅)をもった構成としているが、これに限定するものではなく、当て板11Bを左右方向に三つに不均等に分割して各々が異なる左右幅をもった構成としてもよいし、当て板11Bを左右方向に四つ以上に分割して各々が適宜の左右幅(横幅)をもった構成としてもよい。
【0058】
次に、畝立て装置1の第三実施形態の構成について説明する。ただし、第一実施形態の構成の部材と同一の部材については同一の符号を付し、第一実施形態の構成と異なる部分を中心に説明を省略する。
【0059】
この構成では、図8、図9に示すように、畝立て装置1の部材のうちカバー体12において、左右のスリット34・35が当該カバー体12の下端から上方へ向けて延長するように形成される。左右のスリット34・35は規制手段15の左右両側方に配置され、カバー体12の下部を左右方向に三つに分割するように構成される。
【0060】
左スリット34は、背面視において、規制手段15よりも左側側方に位置して、カバー体12の下側で左側部12Lと左右中央部12Cとを区切るように形成される。また、左スリット34はカバー体12の下端から左斜め上方に向かって延出され、その上端がカバー体12の上下中途部の任意位置に達するように形成される。
【0061】
右スリット35は、背面視において、規制手段15よりも右側側方に位置して、カバー体12の下側で右側部12Rと左右中央部12Cとを区切るように形成される。また、右スリット35はカバー体12の下端から右斜め上方に向かって延出され、その上端がカバー体12の上下中途部の任意位置に達するように形成される。
【0062】
こうして、畝立て装置1は、カバー体12の左側部12Lの下部と、右側部12Rの下部とを、左右中央部12Cの下部から分離して捲れ上がらせることができるように構成される。
【0063】
そして、畝立て装置1において、カバー体12が畝立て作業状態とされる場合には、図9に示すように、カバー体12が規制手段15の前方に配置される。一方、カバー体12が非畝立て作業状態とされる場合には、図8に示すように、カバー体12が規制手段15の後方に配置される。ここでの畝立て作業状態と非畝立て作業状態とを切り替える構成は、第一実施形態の構成と同様となる。
【0064】
このような構成により、耕耘作業を行うとともに、畝立て作業を行う場合には、耕耘作業にともなう機体の前進走行時に、規制手段15が作用して、カバー体12が規制手段15により一部規制される畝立て作業状態で接地しながら前方へ移動される。このとき、カバー体12の左右中央部12Cが土壌へ向かって垂れ下がったままの姿勢となり、左右両側部12L・12Rが左右中央部12Cから分離して後方へ大きく捲れ上がった姿勢となって、カバー体12は前方へ移動される。
【0065】
そして、カバー体12が前方へ移動されることによって、その通過時に耕耘された土が左右に押し退けられる。その結果、図10に示すように、カバー体12の左右中央部12Cが通過した軌跡上には溝Mの底部M1が形成され、左側部12Lおよび右側部12Rが通過した軌跡上には溝Mの傾斜部M2が形成されて、土壌に溝Mが成形され、この溝Mの左右両側に畝が成形される。
【0066】
一方、耕耘作業のみを行って、畝立て作業を行わない場合には、耕耘作業にともなう機体の前進走行時に、規制手段15が作用せず、カバー体12は規制手段15により規制されない非畝立て作業状態で前方へ移動される。このとき、カバー体12の左右両側部12L・12Rだけでなく左右中央部12Cも後方へ捲れ上がった姿勢となって、カバー体12は前方へ移動される。よって、カバー体12が通過した軌跡上に溝Mは成形されず、畝が成形されない。
【0067】
なお、畝立て装置1は、本実施形態においては、スリット34・35をカバー体12の左右両側の各一箇所に形成した構成としているが、本発明はこれに特に限るものではなく、複数箇所に形成した構成としてもよい。スリット34・35をカバー体12の左右両側の複数箇所に形成した場合には、畝立て作業時に、カバー体12の左側部12Lおよび右側部12Rの後方への捲れがさらに生じやすくなり、傾斜部M2の傾斜角度が大きい溝Mを土壌に成形して、これに応じた畝を成形することが可能となる。
【0068】
以上のように、本発明の一実施形態に係る歩行型耕耘管理機2は、耕耘作業を行うための耕耘装置としてのロータリ耕耘装置30と、畝立て作業を行うための畝立て装置1とを有し、この畝立て装置1を前記ロータリ耕耘装置30の後方に配置した耕耘部5を備えたものであって、前記畝立て装置1は、前記ロータリ耕耘装置30における耕耘カバー33の後端に上部を取り付けられて、この耕耘カバー33の後端から接地可能に垂れ下がる弾性体としてのカバー体12と、前記カバー体12の左右中央部12Cの後方に位置して、このカバー体12の左右両側部12L・12Rの後方への捲れ(揺動)は規制せず、その左右中央部12Cの後方への捲れは規制する規制手段15である抵抗棒6および係止部材16とを備え、前記カバー体12を前記規制手段15により一部規制する畝立て作業状態と、前記規制手段により規制しない非畝立て作業状態とに切替可能に構成するものとされる。
【0069】
これにより、従来のような着脱式の培土器を用いなくても、畝立て装置1でロータリ耕耘装置30に常時取り付けたままのカバー体12を用いて畝立て作業を行うことができる。また、規制手段15を用いた簡単な操作だけでカバー体12の畝立て作業状態と非畝立て作業状態とを切り替えて、畝立て作業を行うか否かを容易に変更することができる。なお、カバー体12の素材や上下幅(縦幅)などを変更することで、成形する畝の形状も適宜に変更することが可能となる。
【0070】
その結果、畝立て作業の変更時における作業負担を軽減することができる。また、畝を成形するための部材の軽量化や小型化を図り、着脱作業や畝立て作業に必要な労力を軽減することができる。そのうえ、カバー体12を、耕耘作業時に耕耘装置により砕かれた土などが後方へ飛散するのを防止する部材、または畝を成形するための部材として兼用することができ、部品点数を低減することができる。
【0071】
また、前記畝立て装置1は前記弾性体としてのカバー体12の左右両側の上部を前記耕耘カバー33の後端に着脱可能に取り付けるものとされる。
【0072】
これにより、カバー体12を畝立て状態に切り替えて、畝立て作業を行う場合に、畝立て装置1のカバー体12の左側部12Lおよび右側部12Rと接触する土壌に、カバー体12の重量が加わることとなり、土壌に成形される溝の傾斜部M2を堅く押し固めることが可能となる。したがって、雨などによっても崩れ難い畝を成形することができる。なお、カバー体12の着脱可能とする左右幅を調整することで、成形する畝の形状を適宜に変更することが可能となる。
【0073】
また、前記畝立て装置1はスリット34・35を前記弾性体としてのカバー体12にその下端から上方へ向けて延びるように形成して、前記規制手段15の左右両側方に配置するものとされる。
【0074】
これにより、畝立て装置1でカバー体12を畝立て状態に切り替えて、畝立て作業を行う場合に、カバー体12の左側部12Lの下部と右側部12Rの下部とが左右中央部12Cの下部から分離して捲れ上がることが可能となり、左側部12Lおよび右側部12Rの後方への捲れが生じやすくなる。したがって、傾斜部M2の傾斜角度が大きい溝Mを土壌に形成して、畝を成形することができる。なお、カバー体12に形成するスリット34・35の形状を調整することで、成形する畝の形状を適宜に変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る歩行型耕耘管理機の全体的な構成を示す左側面図。
【図2】カバー体を非畝立て作業状態とした場合における畝立て装置の第一実施形態の構成を示す斜視図。
【図3】畝立て装置の第一実施形態の構成を示す分解説明図。
【図4】カバー体を畝立て作業状態とした場合における畝立て装置の第一実施形態の構成を示す斜視図。
【図5】規制手段に畝立てフレームを備えた場合における畝立て装置の第一実施形態の構成を示す斜視図。
【図6】カバー体を非畝立て作業状態とした場合における畝立て装置の第二実施形態の構成を示す斜視図。
【図7】カバー体を畝立て作業状態とした場合における畝立て装置の第二実施形態の構成を示す斜視図。
【図8】カバー体を非畝立て作業状態とした場合における畝立て装置の第三実施形態の構成を示す斜視図。
【図9】カバー体を畝立て作業状態とした場合における畝立て装置の第三実施形態の構成を示す斜視図。
【図10】畝立て装置のカバー体により土壌に形成された溝を示す図。
【符号の説明】
【0076】
1 畝立て装置
2 歩行型耕耘管理機
5 耕耘部
6 抵抗棒(規制手段)
11 取付装置
11A 取付板
11B 当て板
11C ボルト
12 カバー体(弾性体)
12C 左右中央部
12L 左側部
12R 右側部
12b 切欠
12c 係止孔
15 規制手段
16 係止部材(規制手段)
16B フック部
30 ロータリ耕耘装置(耕耘装置)
33 耕耘カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘作業を行うための耕耘装置と、畝立て作業を行うための畝立て装置とを有し、この畝立て装置を前記耕耘装置の後方に配置した耕耘部を備える歩行型耕耘管理機であって、
前記畝立て装置は、
前記耕耘装置における耕耘カバーの後端に上部を取り付けられて、この耕耘カバーの後端から接地可能に垂れ下がる弾性体と、
前記弾性体の左右中央部の後方に配置されて、この弾性体の左右両側部の後方への揺動は規制せず、その左右中央部の後方への揺動は規制する規制手段とを備え、
前記弾性体を前記規制手段により一部規制する畝立て作業状態と、前記規制手段により規制しない非畝立て作業状態とに切替可能に構成する、歩行型耕耘管理機。
【請求項2】
前記畝立て装置は、前記弾性体の左右両側の上部を前記耕耘カバーの後端に着脱可能に取り付ける、請求項1に記載の歩行型耕耘管理機。
【請求項3】
前記畝立て装置は、スリットを前記弾性体にその下端から上方へ向けて延びるように形成して、前記規制手段の左右両側方に配置する、請求項1に記載の歩行型耕耘管理機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−104303(P2010−104303A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280295(P2008−280295)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】