説明

歩行型農作業機におけるハンドル折畳み構造

【課題】折畳み回動を容易且つ円滑に行うことができる歩行型農作業機におけるハンドル折畳み構造を提供することを課題としている。
【解決手段】エンジン9とミッションケース1とが搭載された機体の前方に耕耘装置6を設け、機体の後方上方に向かって突出するハンドル18の前方側への折畳み回動の回動支点20を、ミッションケース1より後方の上方位置であってエンジン9より後方となる位置に配置し、ハンドル18が、前方への折畳み回動によって、エンジン9の外側を囲む倒伏姿勢Sとなった場合に、ハンドル18の前端が耕耘装置6の前端より後方に位置するように構成した。また倒伏姿勢S時にエンジン18の外側を囲むハンドル18のループ部18Aを、ハンドル18の回動支点部分から急傾斜部18Bを介して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機等の歩行型農作業機におけるハンドル折畳み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来エンジンとミッションケースとが搭載された機体に耕耘装置であるロータリを設け、機体の後方上方に向かって突出するハンドルを、前方側に折畳み回動自在にミッションケース側に取り付けて設け、該ハンドルを、前方への折畳み回動によって、エンジンの外側を囲む倒伏姿勢に切り換え可能に構成した歩行型農作業機である耕耘機が公知となっている(例えば特許文献1参照)。また前方に耕耘装置(ロータリ)を設けた耕耘機が公知となっている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−146256号公報
【特許文献2】特開平10−225205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された耕耘機は、ハンドルの回動支点がミッションケースの後方における下方側位置に配置されている。このためハンドルの折畳み回動時に、ハンドルにおける回動支点の近傍位置部分がエンジンやミッションケース側に干渉する場合があるという欠点がある。またハンドルを倒伏姿勢に切り換えると、ハンドルの前端が機体の前端より前方に位置する。このためハンドルを倒伏姿勢に切り換えると、全長が長くなり、機体を持ち上げる際等に、ハンドルが作業の妨げとなる場合があるという欠点がある。そして特許文献1のハンドル構造を特許文献2の耕耘機に採用した場合でも上記と同じ欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の歩行型農作業機におけるハンドル折畳み構造は、エンジン9とミッションケース1とが搭載された機体に耕耘装置6を設け、機体の後方上方に向かって突出するハンドル18を、前方側に折畳み回動自在にミッションケース1側に取り付けて設け、該ハンドル18を、前方への折畳み回動によって、エンジン9の外側を囲む倒伏姿勢Sに切り換え可能に構成した歩行型農作業機において、耕耘装置6を機体の前方に設け、上記ハンドル18の回動支点20を、ミッションケース1より後方の上方位置であってエンジン9より後方となる位置に配置し、倒伏姿勢Sにおいてハンドル18の前端が耕耘装置6の前端より後方に位置するように構成したことを第1の特徴としている。
【0005】
第2に倒伏姿勢S時にエンジン18の外側を囲むハンドル18のループ部18Aを、ハンドル18の回動支点部分から急傾斜部18Bを介して形成したことを特徴としている。
【0006】
第3に耕耘装置6の上方に、機体の持ち上げ用の持ち手31を突出させて設け、倒伏姿勢S時のハンドル18の前端を、上記持ち手31の前端より後方に位置させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の構造によると、ハンドルの回動支点が、ミッションケースより後方の上方位置であってエンジンより後方となる位置に配置されるため、ハンドルの折畳み回動時に、ハンドルにおける回動支点の近傍位置部分がエンジンやミッションケース側に干渉することが防止され、ハンドルの折畳み回動を円滑に行うことができるという効果がある。
【0008】
また倒伏姿勢時にエンジンの外側を囲むハンドルのループ部を、回動支点部分から急傾斜部を介して形成することによって、ハンドルを支持する支点軸の長さを長くする必要がなく、支点軸を取り付けるフレームが左右方向に拡がらないため、ハンドルの回動支点部分をコンパクトにすることができる。
【0009】
そして耕耘装置の上方に、機体の持ち上げ用の持ち手を突出させて設け、倒伏姿勢時のハンドルの前端を持ち手の前端より後方に位置させることによって、ハンドルを倒伏状態に格納し、持ち手を持って機体を持ち上げる際、ハンドルが作業の妨げとならないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1,図2,図3は、本発明を適用した耕耘機機である歩行型管理機の側面透視図,平面透視図,正面透視図である。ミッションケース1が機体フレームを構成している。ミッションケース1の下方後方左右両側には車軸2を介して車輪4が、下方前方側には耕耘用の耕耘装置であるロータリ6が、それぞれ軸支されている。
【0011】
ミッションケース1の上部の凹部7にはエンジンベース8を介してエンジン9が搭載されている。エンジン9は、重心がロータリ軸3と車軸4の中間位置より後方に位置するように、車軸2の上方位置に配置されている。エンジン9の上方はボンネット10によって覆われている。
【0012】
ミッションケース1内には、車輪4用の走行駆動力を変速する走行変速機構と、ロータリ6用のロータリ駆動力を変速するロータリ変速機構とを備えたトランスミッションが構成されている。エンジン9の出力軸12からトランスミッションの入力軸11にテンションクラッチからなるメインクラッチを介して入り切り自在に駆動力が伝動されている。
【0013】
メインクラッチの入り作動によって、エンジン9からトランスミッションに駆動力が伝動され、車輪4及びロータリ6が回転駆動される。ミッションケース1は、エンジン9から車輪4に駆動力を伝動する走行伝動ケースと、エンジン9からロータリ6に駆動力を伝動する耕耘伝動ケースとを兼ねたものとなっている。
【0014】
ミッションケース1の後方には、斜め上方に向かって左右一対のブラケット17L,17Rがボルト固定されている。両ブラケット17L,17Rの後端は、エンジン9より後方に位置し、ブラケット17L,17Rの後端には、両ブラケット17L,17Rにわたるパイプ15が一体的に固設されている。該パイプ15の両端には、平面視で略U字状をなし、後方斜め上方に向かって突出するハンドル18の左右杆部18L,18Rの端部内側が取り付けられている。
【0015】
パイプ15には、端部にハンドル18の左右杆部18L,18Rの端部内側が突き当てられた状態で、一方の杆部18Rの外側から他方の杆部18Lの外側に抜けるように、ノブ付ボルト20が挿入されている。ボルト20の杆部18L側の端部にはナット25が螺合している。
【0016】
ボルト20を締めることによって、ハンドル18の左右杆部18L,18Rの端部内側がパイプ15の端面側に押圧され、摩擦力によりハンドル18がパイプ15に固定される。パイプ15の端面と左右杆部18L,18Rの端部内側との間には菊座が介設されており、ハンドル18の固定時の回り止め(回動防止)となっている。
【0017】
ボルト20を緩めることによって、ハンドル18の左右杆部18L,18Rの端部内側のパイプ15の端面側への押圧が解除され、ボルト20を回動支点としてハンドル18をブラケット17L,17Rに対して回動させることができる。
【0018】
ハンドル18における左右の杆部18L,18Rは、基端側(パイプ15への取付けの端部側)に至る途中で、平面視内側に向かって屈曲している。屈曲した後の端部が上記のようにパイプ15の左右端面に取り付けられている。このため左右のブラケット17L,17Rの間隔が狭く、パイプ15の長さが短くなっており、ハンドル18の機体への取付け部分が幅狭でコンパクトとなり、左右の車輪4に干渉する等の不都合が防止されている。
【0019】
上記ハンドル18には、前述のメインクラッチの入り切りを操作するクラッチ操作部19が揺動自在に設けられている。クラッチ操作部19によって車輪4及びロータリ6の駆動を入り切り操作することができる。
【0020】
ミッションケース1からは、後方に向かって車輪4及びロータリ6の駆動変速を操作する主操作レバー21が突設されている。主操作レバー21はガイドパネル30に設けられたガイド孔30aを介して後方に向かって突出している。ガイドパネル30は両ブラケット17L,17Rに取り付けられている。
【0021】
主操作レバー21はガイド孔30aに沿って、前後及び左右の揺動操作が可能となっている。主変速レバー21の揺動操作によって走行速度と、ロータリ6の駆動速度及び回転方向が変速操作される。
【0022】
上記ミッションケース1におけるエンジン9とロータリ6との間の位置には、平面視で略逆U字状をなす杆状の持上げハンドル31の両基端部が固定されている。具体的には、図4(a),(b)に示されるように、ハンドル31の左右両杆部31L,31Rの先端側が、ミッションケース1の両側方に突出するボス1aにボルト35を介して固定されている。
【0023】
持上げハンドル31はロータリ6の上方を迂回するように経由して機体の前方に延出している。作業者は前述のパイプ15を後方の持ち手とし、且つ持上げハンドル31を前方の持ち手とすることによって機体を簡単に持ち上げることができる。
【0024】
ミッションケース1の前端部分には、ブラケット22がボルト固定されている。該ブラケット22には、アーム24が上下揺動自在に軸支されている。アーム24の先端側には、前側昇降車輪23が自由回転自在に軸支されている。上記ブラケット22の上端部分には、左右方向のチャンネルフレーム32が溶接等によって一体的に固定されている。
【0025】
図4(a),(b)に示されるように、上記チャンネルフレーム32の左右両端部分には、持上げハンドル31の左右両杆部31L,31Rが溶接等によって一体的に固定されている。これによりブラケット22と持上げハンドル31が一体的に固定され、ブラケット22及び持上げハンドル31が共に安定して且つ強固にミッションケース1に固定される。持上げハンドル31が機体側に強固に固定されることによって、機体の持ち上げ作業を容易に且つ安定して行うことができる。
【0026】
前述のロータリ6の上方は、カバー26によって覆われている。該カバー26は前端側が、チャンネルフレーム32の上面側にボルト36及びナット37により一体的に固定されている。またカバー26の内面側には、左右にコ字状断面を有するフック部38が一体形成されている。そしてこのフック部38がハンドル31の左右両杆部31L,31Rに嵌め込まれている。
【0027】
カバー26は上記のように、直接又はチャンネルフレーム32を介して持上げハンドル31側に取り付けられており、持上げハンドル31はカバー26のフレームとなっている。これにより持上げハンドル31がカバー26のフレームを兼用し、コストダウンが図られている。また持上げハンドル31が上記のようにミッションケース1に強固に固定されているため、持上げハンドル31をフレームとするカバー26もミッションケース1側に強固に安定して取り付けられる。
【0028】
本歩行型管理機は、上記のように構成されており、車輪4を接地させて作業者がハンドル18を持ち、エンジン9を作動させ、メインクラッチを入り作動させることによって、後方側の車輪4の駆動により機体が走行し、この機体の走行に伴って回転するロータリ6により耕耘作業が行われる。
【0029】
機体は、車輪4と前側昇降車輪23とが接地しながら走行する。車輪4とロータリ6の位置関係は固定されているため、車輪4の接地点と前側昇降車輪23の接地点とを結ぶ直線Eより下方に突出するロータリ6の量で耕耘深さが決まる。このためアーム24を揺動させて前側昇降車輪23の高さ位置を設定することにより耕耘深さが設定調節される。
【0030】
また図1に示されるように、車輪4の接地点と前側昇降車輪23の接地点とを結ぶ直線Eより下方にロータリ6が突出しないように前側昇降車輪23の高さ位置を設定することによって、ロータリ6を地面に触れさせること無く、機体の移動を車輪4及び前側昇降車輪23によって容易に行うことができる。
【0031】
前述のようにハンドル18はボルト20を回動支点として前後回動可能となっている。ハンドル18は前方への回動によりエンジン9の外側を囲む倒伏姿勢Sに切り換え可能となっている。つまりハンドル18の左右両杆部18L,18Rは、ハンドル18を倒伏姿勢Sとしたときに、側面視でエンジン9と重複する部分において、エンジン9の幅より広い間隔を持ち、エンジン9の後方側に対応する部分から屈曲が開始されている。
【0032】
ハンドル18は、左右両杆部18L,18Rのエンジン9の幅より広い間隔を持つ部分と、両杆部18L,18Rを繋ぐ連結杆部18Cとによってループ部18Aを形成している。ハンドル18は、該ループ部18Aによって倒伏姿勢S時にエンジン9の外側を囲む。左右両杆部18L,18Rの屈曲開始部分から端部までは、ボルト20(機体側への取り付け回動支点部分)からの急傾斜部18Bをなす。上記ループ部18Aは急傾斜部18Bを介して形成されているといえる。
【0033】
ハンドル18は、倒伏姿勢S時に連結杆部18Cがロータリ6の前端位置及び持上げハンドル31の前端位置より後方に位置するようにループ部18Aを形成している。これによりハンドル18の倒伏姿勢S時に、ハンドル18が機体の前方に突出して機体の全長が長くなるという不都合は無い。
【0034】
そしてハンドル18はパイプ15に挿入されているボルト20を支点として回動するため、倒伏姿勢Sとすることによって、後方の持ち手となるパイプ15の上方にはハンドル18が存在しなくなる。また倒伏姿勢S時に連結杆部18Cは、持上げハンドル31の前端位置より後方に位置する。これによりハンドル18は倒伏姿勢S時に前後の両持ち手(パイプ15,持上げハンドル31)の間に格納されることになる。
【0035】
このため機体の持ち上げの際に、後方側の持ち手であるパイプ15を容易に掴むことができ、且つ倒伏姿勢Sのハンドル18が前方側の持ち手である持上げハンドル31を握ることを妨げないことによって、作業者は両持ち手を容易に掴み、機体の持ち上げ作業を容易に行うことができる。
【0036】
またハンドル18の回動支点が、エンジン9より後方であって、且つミッションケース1より後方の上方位置に配置されているため、ハンドル18を倒伏姿勢Sとした場合、ハンドル18はミッションケース1より上方に位置して、ミッションケース1に干渉する不都合はない。
【0037】
そしてハンドル18の急傾斜部18Bはエンジン9より後方に位置するため、ハンドル18の回動時にハンドル18がエンジン9と干渉することもない。以上によりハンドル18の折畳み回動時に、ハンドル18はエンジン9やミッションケース1と干渉することはなく、作業者はエンジン9やミッションケース1との干渉を意識することなく容易に且つ円滑にハンドル18を回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】歩行型管理機の側面透視図である。
【図2】歩行型管理機の平面透視図である。
【図3】歩行型管理機の正面透視図である。
【図4】(a)は、カバー部分の側面図、(b)は、カバー部分の正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ミッションケース
6 ロータリ(耕耘装置)
9 エンジン
18 ハンドル
18A ハンドルのループ部
18B ハンドルの急傾斜部
20 ノブ付ボルト(回動支点)
31 持上げハンドル(持ち手)
S 倒伏姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(9)とミッションケース(1)とが搭載された機体に耕耘装置(6)を設け、機体の後方上方に向かって突出するハンドル(18)を、前方側に折畳み回動自在にミッションケース(1)側に取り付けて設け、該ハンドル(18)を、前方への折畳み回動によって、エンジン(9)の外側を囲む倒伏姿勢(S)に切り換え可能に構成した歩行型農作業機において、耕耘装置(6)を機体の前方に設け、上記ハンドル(18)の回動支点(20)を、ミッションケース(1)より後方の上方位置であってエンジン(9)より後方となる位置に配置し、倒伏姿勢(S)においてハンドル(18)の前端が耕耘装置(6)の前端より後方に位置するように構成した歩行型農作業機におけるハンドル折畳み構造。
【請求項2】
倒伏姿勢(S)時にエンジン(18)の外側を囲むハンドル(18)のループ部(18A)を、ハンドル(18)の回動支点部分から急傾斜部(18B)を介して形成した請求項1の歩行型農作業機におけるハンドル折畳み構造。
【請求項3】
耕耘装置(6)の上方に、機体の持ち上げ用の持ち手(31)を突出させて設け、倒伏姿勢(S)時のハンドル(18)の前端を、上記持ち手(31)の前端より後方に位置させた請求項1又は2の歩行型農作業機におけるハンドル折畳み構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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