説明

歩行型農作業機

【課題】耕耘刃の清掃作業を簡単にすると共に安全性を確保した清掃作業にすることが可能な歩行型農作業機を提供する。
【解決手段】操作レバーの操作位置として、変速伝動部に車輪の車軸に対してニュートラル状態を設定し、かつ耕耘爪の耕耘軸に対して耕耘回転の伝動状態とは逆転回転の伝動状態を設定する泥土落とし位置17bを設ける。これにより、耕耘回転方向に巻付きつつ貼り付いた草や泥土を逆転回転により容易に落とすことが可能となる。また、手作業を行うことを不要とすることができるので、耕耘刃の清掃作業を簡単にすると共に安全性を確保した清掃作業にすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理機等の歩行型農作業機に係り、詳しくは、エンジンと駆動車輪の車軸及び耕耘刃の駆動軸との間に介在する伝動装置の伝動状態を設定変更する操作レバーを備えた歩行型農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管理機等の歩行型農作業機には、車軸及び耕耘軸へ出力する伝動経路を切換え得る動力伝動装置を備えたものがある。このものは、伝動軸上で軸方向に摺動可能に配置されたシフトギヤを、シフトアームやシフトロッド等によって連結された操作レバーを操作することで移動させ、これによりエンジンから入力された動力の伝動経路を、車軸のみを駆動する経路と、車軸及び耕耘軸を駆動する経路と、耕耘軸のみを駆動する経路と、車軸及び耕耘軸のどちらも駆動しないニュートラル状態とに切換えることが可能になっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−81519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歩行型農作業機は、耕耘軸を駆動して耕耘刃(ロータリ)を回転させ、耕耘作業を行うと、該耕耘刃に草や泥土が巻付きつつ貼り付くことが多々生じる。この耕耘刃に貼り付いた(巻付いた)草や泥土を手作業により清掃する作業は、手間がかかり、作業者に疲労感を与えるばかりか、作業者に対する安全性としても配慮に欠けるものであった。
【0005】
そこで本発明は、耕耘刃の清掃作業を簡単にすると共に安全性を確保した清掃作業にすることが可能な歩行型農作業機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図7参照)、エンジン(13)と駆動車輪(11)の車軸(15)及び耕耘刃(32,132)の駆動軸(31)との間に介在する伝動装置(40)の伝動状態を設定変更する操作レバー(17)を備え、該操作レバー(17)の操作位置に基づき、前記駆動車輪(11)の車軸(15)に対する回転伝動状態及びニュートラル状態を設定し得ると共に、前記耕耘刃(32,132)の駆動軸(31)に対する耕耘回転の伝動状態を設定し得る歩行型農作業機(1,100)において、
前記操作レバー(17)の操作位置として、前記伝動装置(40)に前記駆動車輪(11)の車軸(15)に対して前記ニュートラル状態を設定し、かつ前記耕耘刃(32,132)の駆動軸(31)に対して前記耕耘回転の伝動状態とは逆転回転の伝動状態を設定する泥土落とし位置(17b,17d,17f)を設けた、
ことを特徴とする歩行型農作業機(1,100)にある。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る本発明によると、操作レバーの操作位置として、伝動装置に駆動車輪の車軸に対してニュートラル状態を設定し、かつ耕耘刃の駆動軸に対して耕耘回転の伝動状態とは逆転回転の伝動状態を設定する泥土落とし位置を設けたので、耕耘回転方向に巻付きつつ貼り付いた草や泥土を逆転回転により容易に落とすことができる。また、手作業を行うことを不要とすることができるので、耕耘刃の清掃作業を簡単にすると共に安全性を確保した清掃作業にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る歩行型農作業機を示す側面図。
【図2】正転耕耘位置と逆転泥落とし位置とを説明するレバーガイドの平面図。
【図3】ミッションケースの内部を示す展開図で、(a)は正転耕耘時、(b)は逆転泥落とし時。
【図4】逆転耕耘位置と正転泥落とし位置とを説明するレバーガイドの平面図。
【図5】ミッションケースの内部を示す展開図で、(a)は逆転耕耘時、(b)は正転泥落とし時。
【図6】第2の実施の形態に係る歩行型農作業機を示す側面図。
【図7】第2の実施の形態に係るレバーガイドの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施の形態>
以下、図面に沿って、本発明に係る第1の実施の形態について図1乃至図5に沿って説明する。
【0011】
図1に示すように、歩行型農作業機1は、走行部10と耕耘部30とが該耕耘部30を後方側に配置して一体的に構成されている。走行部10は、左右に延設された車軸15上に一対の走行車輪(駆動車輪)11を有しており、該走行車輪11に支持された機体12上に、エンジン13及び後述の変速伝動部(伝動装置)40(図3参照)が配置され、該エンジン13上には燃料タンク14が支持されている。エンジン13及び燃料タンク14の側方には、エンジン13における排気の際の減圧消音を行うマフラー(図示せず)が配設され、該マフラーはマフラーカバー25により覆われている。
【0012】
また、機体12後部からは、上記変速伝動部40を変速操作する(変速伝動部40の伝動状態を設定変更する)操作レバー17と、機体12の走行方向を操作するハンドルフレーム18とが、後方に延在するように配設されている。更に、燃料タンク14の後方下部には、上記操作レバー17の操作経路を案内するガイド溝21(図2、図4参照)が形成された変速ガイドパネル23が配設され、機体12後部側を覆うように構成されている。
【0013】
ハンドルフレーム18は、機体12後部から後ろ斜め上方に向かって延びる傾斜部18aと、該傾斜部18aの途中から屈曲して圃場と略々平行な水平状態となる水平部18bと、該水平部18bの最後端部に形成されたハンドル18cと、を有している。このハンドル18cは、オペレータが片手又は両手で把持し得るように、背面視における左右幅方向に延在する長尺状に形成されている。
【0014】
また、傾斜部18aから水平部18bへの移行部分には、ハンドル18cに対して接離可能に支持されたクラッチハンドル29が配置されている。このクラッチハンドル29は、ハンドル18c上部に重なる水平方向の位置(クラッチ接続状態となる位置)から、ハンドル18cに対して約60゜の角度に立ち上がる位置(クラッチ切断状態となる位置)まで回動し得る(図1の矢印Xに示す)ように支持されている。
【0015】
ハンドルフレーム18の右側上部には、機体12の前後方向に操作されるデフロックレバー24が配設された操作パネル16が取り付けられている。該操作パネル16には、エンジン13の停止ボタン28やスロットルレバー27等が配設されている。デフロックレバー24は、差動装置(不図示)を作動状態又は非作動状態に切換え操作して、駆動力が伝わりにくい場所で一方の走行車輪11が滑って走行困難になった場合等に、左右走行車輪11,11を直結(即ち、左右走行車輪11,11による差動駆動をロック)し、駆動力を圃場に良好に伝えるようにする。停止ボタン28は、クラッチハンドル29の接続状態又は切断状態いずれの操作状態に拘らず、押下操作されることによってエンジン13を無条件で強制的に停止するように機能する。スロットルレバー27は、該スロットルレバー27に連結された不図示のワイヤによりエンジン13の回転数が調整され、歩行型農作業機1の走行速度が調節される。
【0016】
一方、耕耘部30は、上記変速伝動部40から左右方向に延設された耕耘軸(駆動軸)31と、該耕耘軸31に固定されて圃場を耕す耕耘爪(耕耘刃)32と、該耕耘爪32の上部を覆う耕耘カバー33と、該耕耘カバー33の後方に装着された後方カバー34とを有している。耕耘爪32は、耕耘軸31の周囲に多数装着され、側面視において前後で対称な形状となっており、耕耘軸31における正回転時(ω1方向)又は逆回転時(ω2方向)のいずれにも対応自在となっている。そして、耕耘軸31及び耕耘爪32は、詳しくは後述する変速伝動部40を介して伝動されるエンジン13の出力により回転駆動される。
【0017】
ここで、前述した変速ガイドパネル23について更に詳細に説明する。変速ガイドパネル23は、図2及び図4に示すように、操作レバー17を操作案内するため、上下及び左右方向に枝別れするような一続きとなったガイド溝21を有した操作面(上面)23aを有している。該ガイド溝21にあって、操作レバー17の位置「R」は「後進位置(車軸15の逆転回転)」であり、位置「F」は「前進位置(車軸15の正転回転)」であり、位置「N」は「ニュートラル位置(車軸15のニュートラル状態)」であり、位置「F」は「高速前進位置(車軸15の高速正転回転)」である。これら横方向に対する操作レバー17の各位置は、図示を省略したシフタ軸の位置に基づき、該操作レバー17が上下の列に移動されても有効な位置となる。また、該ガイド溝21にあって、図中下方側の列は、耕耘軸31が正転回転(図1中ω1方向に回転)する列であり、図中上方側の列は、耕耘軸31が逆転回転(図1中ω2方向に回転)する列である。
【0018】
従って、図2に示す操作レバー17の位置「17a」は「前進走行(F)の正転回転位置(正転耕耘時)」であって「前進正転耕耘位置」であり、図4に示す操作レバー17の位置「17c」は「前進走行(F)の逆転回転位置」であって「前進逆転耕耘位置(逆転耕耘時)」である。そして、図2に示す操作レバー17の位置「17b」は「ニュートラル(N)の逆転回転位置」であって「逆転回転の泥土落とし位置」であり、図4に示す操作レバー17の位置「17d」は「ニュートラル(N)の逆転回転耕耘位置」であって「正転回転の泥土落とし位置」である。
【0019】
ついで、上記変速伝動部40を図3及び図5に沿って詳細に説明しつつ、上記操作レバー17の各位置との対応状態を説明する。なお、図3(a)は上記操作レバー17の位置「17a」の状態を示す図であり、図3(b)は上記操作レバー17の位置「17b」の状態を示す図であり、図5(a)は上記操作レバー17の位置「17c」の状態を示す図であり、図5(b)は上記操作レバー17の位置「17d」の状態を示す図である。
【0020】
図3(a)に示すように、エンジン13と走行車輪11の車軸15及び耕耘爪32の耕耘軸31との間に介在する変速伝動部40は、伝動ケース45を有しており、該伝動ケース45の図中上部にはシフタ軸(不図示)を摺動自在に支持する支持孔45aが設けられている。また、該伝動ケース45は、第1シャフト41、第2シャフト42、第3シャフト43を回転自在に支持している。これら第1乃至第3シャフト41,42,43は、図3及び図5において展開して示しているが、実際には側面視略々三角形の頂点をなす位置関係にあり、詳しくは後述するように、第1シャフト41上のギヤ51,61は、第2シャフト42上のギヤ53,62にも噛合し得ると共に第3シャフト43上のギヤ55,64にも噛合し得る。
【0021】
上記変速伝動部40は、これら第1乃至第3シャフト41,42,43に、駆動車輪11の車軸15を変速駆動する車軸伝動系50と、耕耘爪32の耕耘軸31を変速駆動する耕耘軸伝動系60とを有して構成されている。上記第1シャフト41は、図示を省略したベルト及びプーリを介してエンジン13の出力軸に接続されていると共に、該第1シャフト41上には車軸伝動系50のギヤ51,52と耕耘軸伝動系60のギヤ61とが配設されている。このうちギヤ52は該第1シャフト41に回転自在に支持されていると共に軸方向に対して位置決めされており、ギヤ51及びギヤ61は、該第1シャフト41に対して回転方向に係合されていると共に、軸方向に摺動自在に配置されている。即ち、ギヤ51は、上記操作レバー17の左右方向(図2参照)に連動してシフタ軸(不図示)を介して軸方向に移動駆動され、ギヤ61は、上記操作レバー17の上下方向(図2参照)に連動してシフタ軸(不図示)を介して軸方向に移動駆動される。なお、ギヤ52は、歯面52aが後述のギヤ53の歯面53bに常時噛合していると共に、内歯52bにギヤ51が嵌合する形で噛合し得るように構成されている。
【0022】
また、上記第2シャフト42上には、車軸伝動系50のギヤ53,56と耕耘軸伝動系60のギヤ62,63及びスプロケット67とが配設されている。該ギヤ53,56は、該第2シャフト42に一体的に固定されており、ギヤ62,63及びスプロケット67は一体的に構成されると共に該第2シャフト42に対して回転自在に支持され、かつ軸方向に位置決めされている。
【0023】
ギヤ53の歯面53aは、軸方向に移動し得るギヤ51の歯面51aと噛合し得る。また、ギヤ53の歯面53bは、上記ギヤ52の歯面52aと常時噛合していると共に後述のギヤ54の歯面54aとも常時噛合している。さらに、ギヤ56の歯面56aは、後述のギヤ57の歯面57aと常時噛合している。一方、ギヤ62の歯面62aは、軸方向に移動し得るギヤ61の歯面61aと噛合し得る。また、ギヤ63の歯面63aは、後述のギヤ65の歯面65aと常時噛合している。そして、スプロケット67にはチェーン58が係合しており、該チェーン58は、図示を省略したデフ機構等を介して上記耕耘軸31に連動されている。
【0024】
また、上記第3シャフト43上には、車軸伝動系50のギヤ54,55,57及びスプロケット58と耕耘軸伝動系60のギヤ64,65とが配設されている。該ギヤ55はギヤ54に一体的に固着されていると共に、これらギヤ54,55は、該第3シャフト43に対して回転自在に支持され、かつ軸方向に位置決めされている。また、ギヤ57は、該第3シャフト43に一体的に固着されており、さらに、スプロケット58も該第3シャフト43に一体的に固着されている。一方、該ギヤ64はギヤ65に一体的に固着されていると共に、これらギヤ64,65は、該第3シャフト43に対して回転自在に支持され、かつ軸方向に位置決めされている。
【0025】
ギヤ55の歯面55aは、軸方向に移動し得るギヤ51の歯面51aと噛合し得る。また、ギヤ54の歯面54aは、上記ギヤ53の歯面53bと常時噛合している。さらに、ギヤ57の歯面57aは、上記ギヤ56の歯面56aと常時噛合している。そして、スプロケット58にはチェーン59が係合しており、該チェーン59は、デフ機構70のスプロケット71に係合し、該デフ機構70を介して左右の車軸15に連動されている。一方、ギヤ64の歯面64aは、軸方向に移動し得るギヤ61の歯面61aと噛合し得る。また、ギヤ65の歯面65aは、上記ギヤ63の歯面63aと常時噛合している。
【0026】
以上のように構成された変速伝動部40は、上記操作レバー17が位置「R」にされると(図2及び図4参照)、車軸伝動系50にあって、ギヤ51とギヤ55とが噛合し、一旦ギヤ54を介して逆転回転がギヤ53に入力され、以降順に、第2シャフト42、ギヤ56、ギヤ57、第3シャフト43、スプロケット58、チェーン59、スプロケット71、デフ機構70を介して、逆転回転が車軸15に伝達される。これにより、歩行型農作業機1は後進走行する。
【0027】
なお、上記操作レバー17が位置「R」と後述の位置「F」との間、即ち、該操作レバー17を上下方向に操作し得る位置では(図2及び図4参照)、ギヤ51がギヤ55とギヤ53との軸方向の間に位置して、つまりどちらのギヤとも噛合せず、以降の第2シャフト42、ギヤ56、ギヤ57、第3シャフト43、スプロケット58、チェーン59、スプロケット71、デフ機構70、車軸15に回転が伝達されることはなく、ニュートラル状態となる。これにより、歩行型農作業機1は走行停止する。
【0028】
また、上記操作レバー17が位置「F」にされると(図2及び図4参照)、図3(a)及び図5(a)に示すように、車軸伝動系50にあって、ギヤ51とギヤ53とが噛合し、正転回転がギヤ53に入力され、以降順に、第2シャフト42、ギヤ56、ギヤ57、第3シャフト43、スプロケット58、チェーン59、スプロケット71、デフ機構70を介して、正転回転が車軸15に伝達される。これにより、歩行型農作業機1は前進走行する。
【0029】
また、上記操作レバー17が位置「N」にされると(図2及び図4参照)、図3(b)及び図5(b)に示すように、ギヤ51がギヤ53とギヤ52との軸方向の間に位置して、つまり何れのギヤとも噛合せず、特にギヤ53との伝達関係が切断されるので、以降の第2シャフト42、ギヤ56、ギヤ57、第3シャフト43、スプロケット58、チェーン59、スプロケット71、デフ機構70、車軸15に回転が伝達されることはなく、ニュートラル状態となる。これにより、歩行型農作業機1は走行停止する。
【0030】
また、上記操作レバー17が位置「F」にされると(図2及び図4参照)、例えば図3(a)に示すように、車軸伝動系50にあって、ギヤ51がギヤ52の内歯52bに噛合し、増速された正転回転がギヤ53に入力され、以降順に、第2シャフト42、ギヤ56、ギヤ57、第3シャフト43、スプロケット58、チェーン59、スプロケット71、デフ機構70を介して、増速正転回転が車軸15に伝達される。これにより、歩行型農作業機1は高速前進走行する。
【0031】
一方、上記操作レバー17が位置「17a」や位置「17d」のように下方側の列にされると(図2及び図4参照)、例えば図3(a)及び図5(b)に示すように、耕耘軸伝動系60にあって、ギヤ61がギヤ64の歯面64aに噛合し、該ギヤ64が固着されたギヤ65が逆転回転し、該ギヤ65の歯面65aに歯面63aが噛合するギヤ63に正転回転が伝達され、該ギヤ63と一体的に固定されているスプロケット67からチェーン68を介して耕耘軸31に正転回転が伝達される。これにより、歩行型農作業機1は耕耘爪32を正転回転させた耕耘を行う。
【0032】
また、上記操作レバー17が上下方向の中段の列にされると(図2及び図4参照)、ギヤ61はギヤ64とギヤ62との軸方向の間にあって、ギヤ63と対向して空回りする位置にされる。つまりギヤ61は何れのギヤとも噛合せず、特にギヤ62,63との伝達関係が切断されるので、スプロケット67、チェーン68から耕耘軸31に回転が伝達されることはなく、所謂ニュートラル状態となる。これにより、歩行型農作業機1は耕耘爪32の回転を停止する。
【0033】
そして、上記操作レバー17が位置「17b」や位置「17c」のように上方側の列にされると(図2及び図4参照)、例えば図3(b)及び図5(a)に示すように、耕耘軸伝動系60にあって、ギヤ61がギヤ52の歯面62aに噛合し、該ギヤ62及びギヤ63に逆転回転が伝達され、該ギヤ62、63と一体的に固定されているスプロケット67からチェーン68を介して耕耘軸31に逆転回転が伝達される。これにより、歩行型農作業機1は耕耘爪32を逆転回転させた耕耘を行う。
【0034】
以上のように、本歩行型農作業機1は、操作レバー17の操作位置に基づき、走行車輪11の車軸15に対する回転伝動状態(即ち車軸15の正転回転又は逆転回転)及びニュートラル状態を設定し得ると共に、耕耘爪32の耕耘軸31に対する耕耘回転の伝動状態(即ち、耕耘軸31の正転回転又は逆転回転)を設定し得るように構成されている。
【0035】
従って、例えば作業者が図2に示す位置「17a」に操作レバー17を操作した場合は、歩行型農作業機1は前進走行し、かつ耕耘爪32を正転回転させた、前進正転耕耘を行う。この状態で、耕耘爪32に草や泥土が貼り付いたとすると、例えば作業者は矢印Aで示すように操作レバー17を操作し、位置「17b」である「泥土落とし位置」に操作する。すると、歩行型農作業機1の車軸15はニュートラル状態となり、耕耘爪32を逆転回転させる。つまり、歩行型農作業機1は、その場で耕耘爪32が回転した方向とは逆回転である逆転回転にすることができ、耕耘爪32に耕耘(正転)回転方向に巻付きつつ貼り付いた草や泥土を逆転することにより容易に落とすことができる。また、手作業を行うことを不要とすることができるので、耕耘爪32の清掃作業を簡単にすると共に安全性を確保した清掃作業にすることができる。
【0036】
また反対に、例えば作業者が図4に示す位置「17c」に操作レバー17を操作した場合は、歩行型農作業機1は前進走行し、かつ耕耘爪32を逆転回転させた、前進逆転耕耘を行う。この状態で、耕耘爪32に草や泥土が貼り付いたとすると、例えば作業者は矢印Bで示すように操作レバー17を操作し、位置「17d」である「泥土落とし位置」に操作する。すると、歩行型農作業機1の車軸15はニュートラル状態となり、耕耘爪32を正転回転させる。つまり、歩行型農作業機1は、その場で耕耘爪32が回転した方向とは逆回転である正転回転にすることができ、耕耘爪32に耕耘(逆転)回転方向に巻付きつつ貼り付いた草や泥土を逆転(つまり正転)することにより容易に落とすことができる。また、手作業を行うことを不要とすることができるので、耕耘爪32の清掃作業を簡単にすると共に安全性を確保した清掃作業にすることができる。
【0037】
なお、以上説明した操作レバー17の操作位置と変速伝動部40の伝動状態との関係は、本実施の形態におけるシフタ軸やギヤの配列等に準じるものであり、これに限らず、シフタ軸やギヤの配列を設計変更することで、例えば位置「17a」から位置「17d」で耕耘爪32が逆転回転する「泥土落とし位置」とすることや、例えば位置「17c」から位置「17b」で耕耘爪32が逆転回転する「泥土落とし位置」とすることも考えられる。
【0038】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について、図6及び図7に沿って説明する。なお、本第2の実施の形態に係る歩行型農作業機100の説明においては、上記第1の実施の形態に係る歩行型農作業機1と同様な部分に、同符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
本第2の実施の形態に係る歩行型農作業機100は、上記第1の実施の形態に係る歩行型農作業機1と比して、小型かつ安価に構成されたものであり、特に走行部10に対して耕耘部30が前方側に配置されている。また、耕耘軸31には、上記耕耘爪32の代わりに耕耘ロータリ(耕耘刃)132が取付けられている。該耕耘ロータリ132の前方には、耕耘深さを調整するゲージ輪135が配設されており、該ゲージ輪135の高さ、即ち耕耘深さがレバー136により段階的に調整し得るように構成されている。
【0040】
本歩行型農作業機100における変速ガイドパネル123は、図7に示すように、操作レバー17を操作案内するためのガイド溝121を有した操作面123aを有している。該ガイド溝121にあって、操作レバー17の位置「R」は「後進位置(車軸15の逆転回転)」であり、位置「始動」はエンジン13を始動し得る「ニュートラル位置(車軸15のニュートラル状態)」であり、位置「F」は「前進位置(車軸15の正転回転)」であり、位置「耕耘」は「前進走行で耕耘軸31の正転回転位置(正転耕耘時)」(図6中ω1方向)であり、位置「その場耕耘」は「ニュートラル(N)で耕耘軸31の正転回転位置」である。
【0041】
なお、位置「N(移動)」は、「ニュートラル位置(車軸15のニュートラル状態)」であるが、上記位置「始動」よりも変速伝動部40内のギヤ列にあって、より車軸15に近い位置のギヤの噛合が解除される位置であり、即ち、変速伝動部40内のギヤ列の引き摺りを少なくして、左右走行車輪11,11を軽くし、本歩行型農作業機100の移動を軽く容易にする位置である。
【0042】
そして、本変速ガイドパネル123のガイド溝121には、位置「N(移動)」の図中左方側に位置「逆転」が設けられており、該位置「逆転」は、「ニュートラル(N)で耕耘軸31の逆転回転位置」(図6中ω2方向)である。
【0043】
従って、例えば作業者が図7に示す位置「17e」に操作レバー17を操作し、歩行型農作業機100により前進正転耕耘を行っている状態で、耕耘ロータリ132に草や泥土が貼り付いたとすると、例えば作業者は矢印Cで示すように操作レバー17を操作し、位置「17f」である位置「逆転(泥土落とし位置)」に操作する。すると、歩行型農作業機100の車軸15はニュートラル状態となり、耕耘ロータリ132を逆転回転させる。つまり、歩行型農作業機100は、その場で耕耘ロータリ132が回転した方向とは逆回転である逆転回転にすることができ、耕耘ロータリ132に耕耘(正転)回転方向に巻付きつつ貼り付いた草や泥土を逆転することにより容易に落とすことができる。また、手作業を行うことを不要とすることができるので、耕耘ロータリ132の清掃作業を簡単にすると共に安全性を確保した清掃作業にすることができる。
【0044】
なお、本第2の実施の形態に係る歩行型農作業機100の変速伝動部40の構成は、種々設計変更可能なものであり、上記第1の実施の形態に係る歩行型農作業機1の変速伝動部40の構成を簡易にしたもので足りるので、その説明を省略する。
【0045】
なお、以上説明した第1及び第2の実施の形態において、車軸15をニュートラル状態とし、かつ耕耘軸31を耕耘回転とは逆転させる「泥土落とし位置」は、操作レバー17の操作位置として、どのような位置に設けてもよく、上述した実施の形態だけに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 歩行型農作業機
11 駆動車輪(走行車輪)
13 エンジン
15 車軸
17 操作レバー
17b 泥土落とし位置
17d 泥土落とし位置
17f 泥土落とし位置(位置「逆転」)
31 駆動軸(耕耘軸)
32 耕耘刃(耕耘爪)
40 伝動装置(変速伝動部)
100 歩行型農作業機
132 耕耘刃(耕耘ロータリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと駆動車輪の車軸及び耕耘刃の駆動軸との間に介在する伝動装置の伝動状態を設定変更する操作レバーを備え、該操作レバーの操作位置に基づき、前記駆動車輪の車軸に対する回転伝動状態及びニュートラル状態を設定し得ると共に、前記耕耘刃の駆動軸に対する耕耘回転の伝動状態を設定し得る歩行型農作業機において、
前記操作レバーの操作位置として、前記伝動装置に前記駆動車輪の車軸に対して前記ニュートラル状態を設定し、かつ前記耕耘刃の駆動軸に対して前記耕耘回転の伝動状態とは逆転回転の伝動状態を設定する泥土落とし位置を設けた、
ことを特徴とする歩行型農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−19442(P2011−19442A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166486(P2009−166486)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】