説明

歩行型除雪機における操作体の配置構造

【課題】歩行型除雪機は主幹道路までの生活道路の確保に主に使用され、足元の悪い状態が多く、安全を考慮し、頻繁に行なわれる除雪部の傾き調節や高さ調節の操作体を、操縦者が両手でハンドルを握った状態で操作できるように配置した歩行型除雪機を供給する。
【解決手段】傾き調節及び高さ調節機能を作動させるシーソー式スイッチの操作体58・59を、ハンドル53が有する後方に延出する左部材53L及び右部材53Rの内側近接部に配置し、また、操作体58・59の正逆押圧部を結ぶ線が、進行方向に対しV字方向を形成するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪作業に使用するクローラ式の歩行型除雪機が備えた除雪部のクローラ接地面に対する傾き及び高さの調節機能を作動させる操作体の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、除雪作業に使用するクローラ式の歩行型除雪機においては、クローラ走行部の前方に除雪部を連動連結して配置すると共に、走行部の後部には各機能の操作体群を配した操作盤及びハンドルで構成する操縦部を配置し、操縦者はその操作体群を操作して各機能を作動させ歩きながら作業を行なうもので、除雪部のクローラ接地面に対する傾き調節機能及び高さの調節機能の夫々の操作体も操縦部に配置しているのが一般的である。
【0003】
これ等の公知技術として
1)クローラ走行部の左右旋回と除雪部の高さ調節及び傾き調節を、操作盤に配置した1本の操作体に具備させて操作するもので、操作体の左右傾動操作により走行部の左右旋回機能を作動し、前後傾動操作により除雪部の高さ調節機能を作動し、操作体の上部に配したスイッチ操作により除雪部の傾き調節機能を作動する構造がある(例えば、特許文献1参照)。
2)また、別の例として、左右傾動操作により走行部の左右旋回機能を作動する操作体のグリップ上面に、シーソー式スイッチ及び走行速度切換ボタンを配置し、シーソー式スイッチの操作により前後進切換機能を作動する構造がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
3)クローラ走行部の左右旋回と除雪部の高さ調節を、操作盤の除雪部の側部が見やすい位置に配置した1本の操作体で行なうもので、左右傾動操作により走行部の左右旋回機能を作動し、前後傾動操作により除雪部の高さ調節機能を作動し、一方、操作盤の長さ方向左寄り手前位置に配置した別の操作体の操作により除雪部の傾き調節機能を作動する構造がある(例えば、特許文献3参照)。
等が従来技術としてある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−219642号公報
【特許文献2】特開2000−71801号公報
【特許文献3】特開平11−13034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の従来技術1)及び2)においては、操作盤に配置した1本の操作体を操作するとき、片方の手をハンドルより離し動かす操作体のグリップ部を握り操作するため、機体のピッチングやスリップ及び操縦者のスリップ等が伴う歩行型の除雪機においては、片手の運転状態となり危険であり、また、大きく動かす操作体に調節を要する機能の操作を具備させることは微小調節がしにくい問題がある。
【0007】
また、3)においては、除雪部の傾き調節を操作盤の左寄り手前に配置した別の操作体を操作するため、従来技術1)及び2)と同様機体のピッチングやスリップ及び操縦者のスリップ等が伴う歩行型の除雪機においては、片手の運転状態となり危険であり、また、
機体の振動に手が追従できず微小調節が困難となる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための技術的手段を説明する。
即ち、請求項1においては、各機能の操作体群を配する操作盤及び後方延出の左右部材を有するハンドルで構成する操縦部をクローラ式走行部の後部に配すると共に、クローラ接地面に対する位置を変える調節機能を備えて除雪部を走行部の前方に配置した歩行型除雪機において、前記クローラ接地面に対する位置を変える調節機能を作動させる夫々の操作体58・59を、ハンドル53の左部材53L及び右部材53Rの内側近接部に設ける事を手段として用いた。
【0009】
また、請求項2においては、各機能の操作体群を配する操作盤及び後方延出の左右部材を有するハンドルで構成する操縦部をクローラ式走行部の後部に配すると共に、クローラ接地面に対する傾き及び高さの調節機能を備えて除雪部を走行部の前方に配置した歩行型除雪機において、前記クローラ接地面に対する傾き調節及び高さ調節機能を作動させるシーソー式スイッチの傾き調節操作体58及び高さ調節操作体59を、操作盤50の上面でハンドル53の左部材53L及び右部材53Rの内側近接付近の位置に設ける事を手段として用いた。
【0010】
また、請求項3においては、前記シーソー式スイッチの操作体58・59を、左部材53L及び右部材53Rの内側近接部で進行方向に対しV字方向で対称的に設ける事を手段として用いた。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のような構成にしたので、次のような効果が得られる。
即ち、請求項1記載のように、除雪部のクローラ接地面に対する位置を変える調節機能を作動させる夫々の操作体58・59を、ハンドル53の左部材53L及び右部材53Rの内側近接部に設ける事により、ハンドル53を掌で握りながら操作体58・59を親指で操作することが可能となり、足場の悪い雪上の作業で、操縦者は両手でハンドル53を支持しながら調節機能を作動させるので安全でしかも、機体の振動に手が追従し微調整が正確に行なえる効果が得られる。
【0012】
また、請求項2記載のように、除雪部のクローラ接地面に対する位置を変える傾き調節及び高さ調節機能を作動させるシーソー式スイッチの傾き調節操作体58及び高さ調節操作体59を、操作盤50の上面で、ハンドル53の左部材53L及び右部材53Rの内側近接付近の位置に設ける事により、左部材53Lまたは右部材53Rを掌で握りながら操作盤50に配した操作体58または操作体59を親指で操作することが可能となり、足場の悪い雪上の作業で、操縦者は両手でハンドル53を支持しながら調節機能の操作体を操作するので、前述同様安全でしかも微調節が正確に行なえる効果が得られる。
【0013】
また、請求項3記載のように、前記シーソー式スイッチの操作体58・59を、左部材53L及び右部材53Rの内側近接部で進行方向に対しV字方向で対称的に設ける事により、左部材53Lまたは右部材53Rを掌で握りながら親指のみを動かし且つ、操作体58又は操作体59の上面に沿って「正」または「逆」の操作を親指のほぼ同じ位置で行なえ、更に、操作体を斜めに配置した事により機能の上下又は左右の作動方向と操作体の操作方向が合わせるので、調節機能の作動と操作を同じ感覚で行なえる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は本発明を織り込んだクローラ式歩行型除雪機の構成を示す平面図、図2は同じく全体側面図、図3は同じくA矢視全体図、図4は同じく要部電気回路図、図5は別の実施例の要部平面図、図6は同じく要部側面図である。
【0015】
まず、本発明を織り込んだクローラ式の歩行型除雪機における操作体の配置を図1、図2、図3、図4、図5、図6を用いて説明する。
実施例の歩行型除雪機の全体の構成は、一対のクローラ3L・3Rを左右に配する走行部1を機体の中央に配置し、その走行部1の後部には各機能の操作体群6を配する操作盤50及びハンドル53で構成する操縦部5を配すると共に、走行部1の前方に除雪部4を
クローラ接地面に対し傾き及び高さを調節可能に装着して構成している。
【0016】
走行部1は、前後に延設するフレーム体71の上部に出力軸11を前方突出方向にエンジン10を締結固定し、また、出力軸11と伝達具を介して連動連結するミッション入力軸13を有し、且つ、フレーム体71より左右に突出する操向クラッチ軸14L・14Rを有するミッションケース12をフレーム体71内包部に固定し、前記操向クラッチ軸14L・14Rにクローラ3L・3Rの入力伝動体36L・36Rを係合させエンジン10とクローラ3L・3Rを連動連結する一方、フレーム体71後部に固着したハンドル取付体72に設けた後方に延出するシリンダー上取付体73と、入力伝動体36L・36Rを内包するサイドケース35L・35R後部を連結する連結体37に電動式昇降シリンダー29を架設し、昇降シリンダー29の伸縮に伴い、側面視において、クローラ接地面に対しフレーム体71が操向クラッチ軸14L・14Rを軸芯に回動する構造である。
【0017】
除雪部4は、エンジン10の出力軸11と伝動具を介して連動連結する除雪伝動軸42を前方に延設配置し、除雪伝動軸42は、後部にファンカバー48bの後端面に設けた複数の取付座48d・48d・・に締結固定したフランジ形状の軸受け体44を配し、その中間部にはファン43を固着し、先端部には左右に突出するオーガー伝動軸45bを有する減速ケース45と係合し、この減速ケース45をオーガーカバー48より下垂するケース取付体46で支持する一方、オーガー伝動軸45bに左右のオーガー47L・47Rを
装着し、シューター48cを配したファンカバー48bにオーガーカバー48を固着し回転部の雪の通路を形成すべく配置した構成である。
【0018】
また、除雪部4を走行部1に装着する構造は、軸受け体44の後面に接し外周で嵌合する除雪部取付体78を軸受け体44に止め輪79を用い回動可能に装着し、更に、除雪部取付体78をフレーム体71に締結固定すると共に、除雪部取付体78に設けた右方に延出するアーム78bとファンカバー48bの後端外周に設けたU字金具48eを電動式回動シリンダー49により連結し、回動シリンダー49の伸縮により除雪部4をクローラ接地面に対する傾きの調節を行なう構造である。
【0019】
本件を織り込んだ操作部5は、各機能の操作体群6を、走行部1の後部上面に横設する操作盤50及び操作盤50の両側の一部に近接し後方に延出する左右部材53L・53R
を後端部において横部材53aと滑らかに連結し、平面視において、U字型を形成するハンドル53に配し構成したもので、実施例の操作盤50にはアクセル操作体56、変速操作体54、左右の操向操作体55L・55R、シューター操作体51(以上の操作体の配置は図5に示す)更に、本件の除雪部の傾き調節操作体58(以下傾き調節スイッチという)及び高さ調節操作体59(以下高さ調節スイッチという)を配すると共に、ハンドル53にはデッドマン方式の走行クラッチ操作体52及び除雪クラッチ操作体57の各操作体群6を配している。
【0020】
なお、本件を織り込んだ操作体群6の配置、即ち、傾き調節スイッチ58及び高さ調節スイッチ59の配置は、ハンドル53の左右部材53L・53Rを握った手の親指で押圧できる近接位置で、正逆の切換え操作がしやすく親指の動きに合わせた配置、即ち、傾き調節スイッチ58及び高さ調節スイッチ59を進行方向に対しV字方向に向けさらに対称的に配置している。
また、図4の要部電気回路図に示すキースイッチ26は操作盤50の後端より下垂する後カバー体25に直角に配置し、バッテリー28はハンドル取付体72に固着する受け体74にバンド等により固定し、リレー27は受け体74の後面に配置している。
【0021】
図5及び図6は、別の実施例の平面図と側面図であり、傾き調節スイッチ58及び高さ調節スイッチ59をハンドルの左部材53L及び右部材53Rに固着するスイッチ取付体53cL・53cRに配置したもので、ハンドル53の左右部材53L・53Rの夫々を手で握った状態で親指の動きのみで傾き調節スイッチ58及び高さ調節スイッチ59の操作が容易に行なえる。
また、本件で図示した操作体に使用のシーソー式スイッチは、押圧をしない時は中立を保ち一端を押圧すると作動し、他端を押圧すると逆に方向に作動する押圧形式のスイッチであるが、中立を有する斜動形式のスイッチを使用しても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
これ等の効果を織り込むことにより、歩行型除雪機による除雪作業が機体のスリップや振動に加え不安定な足元の中で行なわれるので、機械の操縦は勿論、操縦者も機械に引かれ補助される事もあり、両手でハンドルを握って運転することが安全上大切で、操作頻度の高い除雪部の傾き調節や高さ調節の操作において手を離す事無く安全でしかも正確な操作が行なえる操作体の配置構造は、歩行型除雪機に採用する可能性が大である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を織り込んだクローラ式歩行型除雪機の構造を示す平面図である。
【図2】同じく全体側面図である。
【図3】同じくA矢視全体図である。
【図4】同じく要部電気回路図である。
【図5】別の実施例の要部平面図である。
【図6】同じく要部側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 走行部
4 除雪部
5 操縦部
6 操作体群
48 オーガーカバー
53 ハンドル
71 フレーム体
72 ハンドル取付体
A 図の投影方向を示す


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各機能の操作体群を配する操作盤及び後方延出の左右部材を有するハンドルで構成する操縦部をクローラ式走行部の後部に配すると共に、クローラ接地面に対する位置を変える調節機能を備えて除雪部を走行部の前方に配置した歩行型除雪機において、前記クローラ接地面に対する位置を変える調節機能を作動させる夫々の操作体58・59を、ハンドル53の左部材53L及び右部材53Rの内側近接部に設けた事を特徴とする歩行型除雪機における操作体の配置構造。
【請求項2】
各機能の操作体群を配する操作盤及び後方延出の左右部材を有するハンドルで構成する操縦部をクローラ式走行部の後部に配すると共に、クローラ接地面に対する傾き及び高さの調節機能を備えて除雪部を走行部の前方に配置した歩行型除雪機において、前記クローラ接地面に対する傾き調節及び高さ調節機能を作動させるシーソー式スイッチの傾き調節操作体58及び高さ調節操作体59を、操作盤50の上面で、ハンドル53の左部材53L及び右部材53Rの内側近接付近の位置に設けた事を特徴とする歩行型除雪機における操作体の配置構造。
【請求項3】
シーソー式スイッチの操作体58・59を、左部材53L及び右部材53Rの内側近接部で進行方向に対しV字方向で対称的に設けた事を特徴とする請求項1又は請求項2記載の歩行型除雪機における操作体の配置構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−200201(P2006−200201A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12395(P2005−12395)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】