歩行状態表示装置
【課題】比較的簡単な構成で歩行動作を詳細に分析できる歩行状態表示装置を提供する。
【解決手段】歩行者の身体の所定の部位に装着される複数のマーク2と、歩行者に装着されている各マーク2を含む光像を繰り返し撮像する撮像部3と、撮影画像ごとにマーク2を抽出する抽出部41と、撮影画像ごとに抽出された各マーク2の位置を予め定められた共通の座標系の座標で表す座標設定部42と、各マーク2の座標を用いて、予め定められた、歩行動作を表すためのパラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部43と、前記パラメータについて予め設定された条件に基づき歩行周期を複数の歩行相に分割した場合に、各撮影画像と歩行相との対応関係を当該撮影画像について算出されたパラメータ値に基づき検出し、該検出結果を用い各撮影画像を歩行相毎に区分する区分部5と、各撮影画像を区分部5の区分結果を利用して表示する表示部6とを備えた。
【解決手段】歩行者の身体の所定の部位に装着される複数のマーク2と、歩行者に装着されている各マーク2を含む光像を繰り返し撮像する撮像部3と、撮影画像ごとにマーク2を抽出する抽出部41と、撮影画像ごとに抽出された各マーク2の位置を予め定められた共通の座標系の座標で表す座標設定部42と、各マーク2の座標を用いて、予め定められた、歩行動作を表すためのパラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部43と、前記パラメータについて予め設定された条件に基づき歩行周期を複数の歩行相に分割した場合に、各撮影画像と歩行相との対応関係を当該撮影画像について算出されたパラメータ値に基づき検出し、該検出結果を用い各撮影画像を歩行相毎に区分する区分部5と、各撮影画像を区分部5の区分結果を利用して表示する表示部6とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の歩行状態を表示するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者の歩き方を、リハビリとしての適正な歩き方やエクササイズ効果を高められる歩き方、或いは姿勢の良い綺麗な歩き方等に改善させることを目的として、歩行者の歩行状態を測定・検査する装置が種々提案されている(例えば下記特許文献1,2)。
【0003】
下記特許文献1には、「左側検出手段7は訓練者2の左足の着地及び離地、又は着地もしくは離地のいずれかを検出し、右側検出手段8は訓練者2の右足の着地及び離地、又は着地もしくは離地のいずれかを検出する。撮影・測定手段としての人体側センサ部9が訓練者2の身体に取り付けられ・・・(中略)・・・、この人体側センサ部9には、加速度センサやジャイロ等が内蔵されている。撮影・測定手段としての左側センサ部10は左側歩行面3に加わる力を検出するフォースプレート等を内蔵しており、右側センサ部11は右側歩行面4に加わる力を検出するフォースプレート等を内蔵している([0015])」、「制御手段13は、・・・(中略)・・・訓練者2の左足・・・(中略)・・・又は・・・(中略)・・・右足の着地及び離地、又は着地もしくは離地のいずれかの信号に基づいて、歩行周期や左右の足の立脚期間及び遊脚期間等を測定する。さらに、・・・(中略)・・・制御手段13には、・・・(中略)・・・測定した姿勢や床反力等の測定データ、並びに駆動手段5で検出した左右の環状ベルトを駆動するモータのトルクや左右の環状ベルトの移動速度等のデータが入力され、これらデータは制御手段13から記憶手段15に出力される。さらに、制御手段13は・・・(中略)・・・記憶手段15に記憶された画像及び測定データを加工して表示手段16に出力する([0016])」,「右足の1歩行周期での着地時、立脚期1(立脚期間の20%経過後)、立脚期2(立脚期間の40%経過後)、立脚期3(立脚期間の80%経過後)及び離地の5つの画像を重畳して表示している。これにより1歩行周期での訓練者2の歩行状態の変化を側面から観測することができる([0024])」と記載されている。
【0004】
下記特許文献2には、「歩行動作解析に際して移動軌跡を算出するために撮影対象者28にマーカを取り付ける必要がある場合には、必要に応じて予め定められた部位に図示しないマーカを取り付けておく。オペレータにより入力部26に動画取り込みの指示が入ったら、撮影手段12によって撮影された動画像は画像取込み部14に転送され、そこでデジタル符号化されて記憶部16に動画像として格納される。それと同時に予め記憶部16に設けてあるデータベース内に、取り込んだ動画像のファイル名や撮影日の等の情報が書き込まれる([0021])」,「撮影対象者28に計測点を示すマーカが取り付けられている場合には、前記動画像のデータからマーカの部分を抽出して各々のマーカの面積重心を求め、そしてその求めた面積重心点をマーカの計測点とする。前記マーカの計測点を、撮影した各々のフレームに於いて算出([0026])」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−306628号公報
【特許文献2】特開2001−420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常の人間の歩行動作は、歩行姿勢が周期的に変化するが、その歩行動作における1歩行周期(一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする周期)は、鉛直方向における外果の位置の変化態様や股関節角度等の、歩行動作を表す(表現する)ための複数種類の歩行パラメータを設定した場合、いずれかの歩行パラメータにおいて特徴的なパラメータ値をもつ複数の区間にそれぞれ分割することができる。
【0007】
ここで、それらの区間ごとに、歩行者の歩行動作についての良否等を判断することができれば、好ましい歩き方との相違点の把握や詳細な歩き方の改善指導をより詳細に行うことができると考えられる。
【0008】
しかしながら、前記特許文献2においては、歩行者の歩行動作を前述した複数の区間に分割する点については提案されていない。また、前記特許文献1には、「右足の1歩行周期での着地時、立脚期1(立脚期間の20%経過後)、立脚期2(立脚期間の40%経過後)、立脚期3(立脚期間の80%経過後)及び離地の5つの画像を重畳して表示している。」と記載されているが、歩行者の歩行動作を検出するために、各種の検出手段やセンサ部(左側検出手段7、右側検出手段8、人体側センサ部9、左側センサ部10及び右側センサ部11)が必要であり、その分、装置が大規模化したり多大なコストを要したりする。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、比較的簡単な構成で歩行者の歩行動作を詳細に計測及び分析することのできる歩行状態表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、歩行者の身体のうち予め定められた部位に装着される1又は複数のマークと、歩行者に装着されているマークを含む光像を一定の光軸方向及び撮像範囲で繰り返し撮像し、複数の撮影画像を生成する撮像部と、前記撮影画像ごとに前記マークをそれぞれ抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された各マークの位置を予め定められた共通の座標系の座標で表す座標設定部と、前記座標設定部により設定された各マークについての座標を用いて、予め定められた、歩行動作を表すための歩行パラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部と、前記各撮像画像が、予め定められた条件に基づいて複数に分割された歩行相のどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮像画像を歩行相ごとに区分する区分部と、前記各撮影画像を前記区分部による区分結果を利用して表示する表示部とを備える歩行状態表示装置である。
【0011】
この発明によれば、各撮影画像がどの歩行相の歩行動作(歩行姿勢)を撮像したものであるかを前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分し、前記各撮影画像をその区分結果を利用して表示部に表示するようにしたので、例えば歩行相ごとに画像を表示するようにすることで、歩行者の歩行動作を詳細に分析することができる。
【0012】
また、本発明によれば、撮影画像から得られるマークの位置に基づいて、歩行者の歩行動作を検出するようにしたので、従来技術のように歩行者の歩行姿勢を検出するために各種のセンサを設けなくて済み、従来技術に比してコストアップや装置の大型化を回避又は抑制することができる。
【0013】
なお、前記区分部は、請求項2に記載の発明のように、より詳細には、一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする前記歩行者の歩行周期を設定し且つその1歩行周期を前記歩行パラメータについて予め定められた条件に基づいて複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出されたパラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分する処理を行うとよい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、時間的に連続して得られた2つの撮影画像の前記外果に装着された各マークに着目した場合に、前記各マークの前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる歩行相である初期接地を含むものである。
【0015】
この発明によれば、初期接地を表した撮影画像を検出することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果及び爪先を含み、前記座標系は、鉛直方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとについての前記鉛直方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる荷重応答期を含むものである。
【0017】
この発明によれば、荷重応答期を表した撮影画像を検出することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で零となる立脚中期を含むものである。
【0019】
この発明によれば、立脚中期を表した撮影画像を検出することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士との差分が1歩行周期内で最大となる立脚終期を含むものである。
【0021】
この発明によれば、立脚終期を表した撮影画像を検出することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の膝、外果及び爪先を含み、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記外果に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である足関節角度が1歩行周期内で最大となる前遊脚期を含むものである。
【0023】
この発明によれば、前遊脚期を表した撮影画像を検出することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子、膝及び外果を含み、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記膝に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記膝に装着されたマークと前記大転子に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である膝関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚初期を含むものである。
【0025】
この発明によれば、遊脚初期を表した撮影画像を検出することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の肩峰、大転子及び膝を含み、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記大転子に装着されたマークと前記肩峰に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である股関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚中期を含むものである。
【0027】
この発明によれば、遊脚中期を表した撮影画像を検出することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び外果を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最大となる遊脚終期を含むものである。
【0029】
この発明によれば、遊脚終期を表した撮影画像を検出することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10の何れかに記載の歩行状態表示装置において、前記表示部に表示させる対象の撮影画像を前記歩行相ごとに選択する入力を行うための第1入力操作部を更に備え、前記表示部は、前記第1入力操作部により選択された歩行相の撮影画像を表示するものである。
【0031】
この発明によれば、前記表示部に表示させる対象の撮影画像を前記歩行相ごとに選択する入力を行うための第1入力操作部を備え、前記表示部は、前記第1入力操作部により選択された歩行相の撮影画像を表示するようにしたので、指導者等は、歩行相ごとに歩行者の歩行動作を分析することができる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11の何れかに記載の歩行状態表示装置において、前記歩行相ごとに予め設けられた、理想のパラメータ値を有する理想画像を記憶する理想画像記憶部を更に備え、前記表示部は、更に、前記撮影画像と、該撮影画像と歩行相が一致する理想画像とを併せて表示する機能を有するものである。
【0033】
この発明によれば、前記歩行相ごとに予め設けられた、理想のパラメータ値を有する理想画像を記憶する理想画像記憶部を更に備え、前記表示部は、更に、前記撮影画像と、該撮影画像と歩行相が一致する理想画像とを併せて表示する機能を備えたので、指導者等は、歩行相ごとに歩行者の歩行動作を分析することができるとともに、歩行者の歩行動作が理想の歩行動作とどの程度異なるのかを指導者等に簡単に認識させることが可能となる。
【0034】
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至12の何れかに記載の歩行状態表示装置において、年齢と歩行相との組み合わせに基づいて予め設定された、前記歩行パラメータについての標準値を記憶する標準値記憶部を更に備え、前記表示部は、更に、前記算出部により導出されたパラメータ値と前記標準値とをグラフで表示する機能を有するものである。
【0035】
この発明によれば、前記算出部により算出された歩行パラメータのパラメータ値と前記標準値とをグラフで表示する機能を備えたので、指導者等は、歩行者の歩行動作を標準値と照らし合わせて分析することができる。
【0036】
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13の何れかに記載の歩行状態表示装置において、前記表示部に表示されている撮影画像の中から1枚の撮影画像を選択する入力を行うための第2入力操作部を更に備え、前記表示部は、更に、前記第2入力操作部により1枚の撮影画像が選択されると、その撮影画像の撮影タイミングを含む一定期間内の撮像動作で得られた複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を有するものである。
【0037】
この発明によれば、前記第2入力操作部により1枚の撮影画像が選択されると、その撮影画像の撮影タイミングを含む一定期間内の撮像動作で得られた複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を備えたので、指導者等は、歩行者の歩行動作を詳細に分析することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、従来技術に比してコストアップや装置の大型化を回避又は抑制しつつ、歩行者の歩行動作を詳細に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る歩行状態表示装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】歩行者による歩行動作の撮影状況を示す図である。
【図3】(a)〜(g)は、肩峰、大転子、膝、外果、爪先の位置及び各歩行パラメータの説明図である。
【図4】(a)は、二歩行周期分の各撮影画像について求められる、当該撮影画像及び当該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像における外果のX座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P1で示す時点で撮影された初期接地の撮影画像を示した図である。
【図5】(a)は、二歩行周期分の各撮影画像について求められる、当該撮影画像における外果及び爪先の各Y座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P2,P3で示す時点で撮影された荷重応答期の撮影画像を示した図である。
【図6】(a)は、二歩行周期分の各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P4,P5で示す時点で撮影された立脚中期の撮影画像を示した図である。
【図7】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P6,P7で示す時点で撮影された立脚終期の撮影画像を示した図である。
【図8】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における足関節角度αを示す図、(b)は、(a)の矢印P8,P9で示す時点で撮影された前遊脚期の撮影画像を示した図である。
【図9】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における膝関節角度βを示す図、(b)は、(a)の矢印P10,P11で示す時点で撮影された遊脚初期の撮影画像を示した図である。
【図10】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における股関節角度φを示す図、(b)は、(a)の矢印P12,P13で示す時点で撮影された遊脚中期の撮影画像を示した図である。
【図11】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分を示す図、(b)は、図11(a)の矢印P14,P15で示す時点で撮影された遊脚終期の撮影画像を示した図である。
【図12】撮影画像と、該撮影画像が示す歩行相についての理想画像とを並べて表示した表示画面を示す図である。
【図13】算出した歩行者の歩幅を表示する表示画面の一例を示す図である。
【図14】特定の撮影画像が1枚指定された場合に、その画像の撮影タイミングを含む一定期間内に撮像された複数の撮影画像を並べて表示した画面を示す図である。
【図15】外果に装着されたマークと爪先に装着されたマークとの識別方法の説明図である。
【図16】(a)は、股関節角度を示す図、(b)は、膝関節角度を示す図、(c)は、足関節角度を示す図である。
【図17】画像処理部及び抽出部により行われる処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る歩行状態表示装置の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る歩行状態表示装置の構成を示すブロック図である。
【0041】
図1に示すように、歩行状態表示装置1は、マーク2と、撮像部3と、座標抽出部4と、区分部5と、表示部6とを有する。マーク2は、図2に示すように、被験者である歩行者Mの身体のうち肩峰、大転子、膝、外果、爪先に装着される。歩行者Mは、肩峰、大転子、膝、外果、爪先にそれぞれマーク2を装着した状態で、予め定められた歩行領域S内を一定方向(矢印Xで示す方向)に歩行する。
【0042】
撮像部3は、例えばR(赤)、G(緑)、B(赤)のカラーフィルタが1:2:1の割合でベイヤー配列されてなるCCD(Charge Coupled Device)を備えてなる。撮像部3は、光軸の方向及び撮像範囲が一定とされており、前記歩行領域S内を一定方向に歩行する歩行者Mの歩行期間中、歩行者Mの身体の少なくとも前記マーク2が装着されている肩峰、大転子、膝、外果、爪先の部分を含む範囲の光像を繰り返し(例えば一定の周期で)撮像する。
【0043】
なお、光を出力する発光部を撮像部3に設けるとともに、その発光部から出力される光を反射する反射部をマーク2に備えると、マーク2の画像が全体画像の中で相対的に輝度の大きな画像として出現することとなるから、歩行状態表示装置1は、全体画像の中でマーク2の画像とそれ以外の画像とを明確に識別することができる。
【0044】
図1に示すように、撮像部3は、画像処理部31を備える。画像処理部31は、図17に示すように、各画素から出力される画素情報から構成される画像(ベイヤ画像)に対しカラー変換処理を行う。カラー変換処理は、各画素から当該画素に配設されたカラーフィルタの色についての画素情報しか得られていないベイヤー画像から、各画素の位置において、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色の画素情報をそれぞれ有する画像に変換する処理である。例えば、画像処理部31は、「R」のカラーフィルタが配設された画素の位置における「G(緑)」の色の画素情報を、その画素の周囲に位置するG(緑)の画素から得られる画素情報を用いて平均演算や重み演算により算出する。
【0045】
また、画像処理部31は、このカラー変換処理後の画像におけるノイズの除去も行う。前記カラー変換処理及びノイズ除去処理後の画像をカラー画像という。撮像部3は、このカラー画像を記憶する図略の記憶部を有し、表示部6に該カラー画像を表示する必要が生じたときに、前記記憶部に格納されているカラー画像を表示部6に出力する。
【0046】
次に、画像処理部31は、前記カラー画像に対して赤み除去処理及びグレー変換処理を行う。赤み除去処理は、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分のうち、マーク2と誤認識する可能性のある歩行者の肌の赤み(R)を除去する処理であり、1つの画素におけるRGBの画像情報をR,G,Bと表すものとしたとき、R>((G+B)/2+α)を演算する処理である。なお、「α」は、画像の赤みの程度に応じて設定し、誤認識しない程度まで赤み除去を行うためのパラメータである。グレー変換処理は、前記赤み除去処理後の画像から、各画素にカラーフィルタが配設されなかった場合に得られるものと想定される画像(以下、第1グレー画像という)を生成する処理である。
【0047】
一方、撮像部3は、歩行動作(マーク2)の撮影動作とは別に、歩行者Mが撮像範囲内に存在しない状態で撮影動作を行う。この撮影動作で得られた画像を背景画像という。この時点の背景画像は、各画素から当該画素に配設されたカラーフィルタの色についての画素情報しか得られていないベイヤー画像となっている。画像処理部31は、この背景画像についてG(緑)成分のみを抽出し、各画素にカラーフィルタが配設されなかった場合に得られるものと想定される画像(以下、第2グレー画像という)を生成するグレー変換処理を行う。
【0048】
画像処理部31は、前記第1グレー画像と第2グレー画像を生成すると、前記第1グレー画像と第2グレー画像とを後段の抽出部41に出力する。なお、以下の説明においては、撮像部3から表示部6に出力される画像及び座標抽出部4に出力される画像を合わせて撮影画像というものとする。
【0049】
座標抽出部4は、前記撮影画像(前記第1グレー画像)ごとに前記マーク2をそれぞれ抽出する抽出部41と、前記抽出部41により抽出された各マーク2の位置を、予め定められた共通の2次元座標系の座標で表す座標設定部42と、前記座標設定部42により設定された各マーク2についての座標を用いて、歩行動作を表す(表現する)ための予め定められた歩行パラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部43とを備える。
【0050】
図17に示すように、抽出部41は、前記画像処理部31から前記第1グレー画像及び第2グレー画像を取得すると、前記第1グレー画像と第2グレー画像との差分をとった背景差分画像を生成する。また、抽出部41は、生成した背景差分画像を画素毎に2値化した後、差分が所定の閾値以上となっている画素を抽出するラベリングを行う。
【0051】
さらに、抽出部41は、所定の閾値以上の差分を有する画素が連続する領域のうち、面積Sが予め定められた一定範囲内(Sα<S<Sβ)となっている領域をマーク2の画像領域として抽出し、それぞれ抽出した領域の中心点(又は重心)をマーク2の位置と設定する。
【0052】
座標設定部42は、歩行開始直前の歩行者の例えば外果の位置を原点とし、歩行者の進行方向をX軸、鉛直方向をY軸とする2次元座標系を設定するとともに、抽出部41により求められた中心点の座標をマーク2の位置を表す座標として設定するものである。
【0053】
算出部43は、各マーク2が歩行者のどの部位(肩峰、大転子、膝、外果、爪先)に装着されたものであるかの識別を次のように行う。
【0054】
まず、算出部43は、Y座標が大きいマーク2から順に、その装着位置が肩峰、大転子、膝、外果、爪先であると仮に割り当てる。次に、算出部43は、肩峰に装着されたマーク2と大転子に装着されたマーク2と膝に装着されたマーク2とその他の部位(外果及び爪先)に装着されたマーク2との識別については、歩行中における肩峰の高さ位置、大転子の高さ位置、膝の高さ位置及びその他(外果及び爪先)の高さ位置との大小関係は、1歩行周期中のどの時点でも一定であり、Y座標のみで識別可能である。
【0055】
したがって、この点を利用して、肩峰に装着されたマーク2の画像と大転子に装着されたマーク2の画像と膝に装着されたマーク2の画像とを確定する。すなわち、算出部43は、Y座標が最も大きいマーク2を、肩峰に装着されたマーク2であると確定し、その次にY座標が大きいマーク2を、大転子に装着されたマーク2であると確定し、その次にY座標が大きいマーク2を、膝に装着されたマーク2であると確定する。
【0056】
また、算出部43は、外果に装着されたマーク2と爪先に装着されたマーク2との識別については、次のように行う。算出部43は、図15(a)に示すように、外果・膝・爪先にそれぞれ装着された各マーク2の位置を点A,B,Cとし、点Aを始点、点Bを終点とするベクトルABと、点Aを始点、点Cを終点とするベクトルACとを生成する。
【0057】
次に、算出部43は、ベクトルABとベクトルACとの外積を算出する。すなわち、ベクトルAB=(X1,Y1),ベクトルAC=(X2,Y2)と表すものとすると、算出部43は、ベクトルABとベクトルACとの外積AB×ACを
AB×AC=X1×Y2−X2×Y1・・・(1)
により算出する。
【0058】
一方、図15(a)に示すように、ベクトルACを基準としたベクトルABまでの角度をθと表し、ベクトルAB、ベクトルACを単にAB,ACと表すものとすると、外積AB×ACは、
AB×AC=|AB||AC|sinθ ・・・(2)
とも表すことができる。なお、|AB|は、ベクトルABの長さ(スカラー量)、|AC|は、ベクトルACの長さ(スカラー量)である。
【0059】
ここで、前記式(2)によって算出した外積の値が負の値になったときには、図15(b)に示すように、角度θが負の値であり、膝・外果・爪先の位置関係が図15(b)に示す位置関係となることを示すが、人間の身体の構造上、このような状態になることは無い。すなわち、この場合、外果・膝・爪先の位置に係る先の仮割当てが正解でないことを示している。
【0060】
算出部43は、これを用い、算出した前記ベクトルABとベクトルACとの外積の値が正の値となったか否かを判断し、前記外積の値が正の値であるときには、図15(a)に示すように、Y座標が大きい方のマーク2が外果に装着されたマーク2であり、Y座標が小さい方のマークが爪先に装着されたマーク2であると判断する。すなわち、算出部43は、先に仮定した前述の割り当て内容(Y座標が大きいマーク2から順に、マーク2の装着位置が肩峰、大転子、膝、外果、爪先であるとの内容)が正しいと判断する。
【0061】
一方、算出部43は、前記外積の値が負の値であると判断したときには、図15(b)に示すように、Y座標が大きいマーク2から順に、その装着位置が肩峰、大転子、膝、外果、爪先であると設定した先の仮割当ては誤りであり、図15(c)に示すように、Y座標が大きい方のマーク2が爪先に装着されたマーク2、Y座標が小さい方のマークが外果に装着されたマーク2であると判断する。
【0062】
以上の処理により、算出部43は、5つのマーク2の装着位置を特定する。そして、算出部43は、この5つのマーク2の装着位置を特定する処理を、撮像部3から得られた複数の撮影画像のそれぞれについて実施し、その処理結果を区分部5に出力する。
【0063】
ところで、歩行者の歩行動作は、該歩行者の身体の部位のうちの2つの特定部位間の距離、或いは、後述する股関節角度、足関節角度、膝関節角度など歩行動作を表すための複数種類の歩行パラメータを設定した場合、そのパラメータ値が周期的に変化する。その変化の周期は、一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする周期である。そして、その1歩行周期は、いずれかの歩行パラメータにおいて特徴的なパラメータ値をもつ複数の区間(歩行相)に分割することができる。
【0064】
本実施形態では、このように1歩行周期を複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを、当該撮影画像が示す各歩行パラメータのパラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するようにしている。各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを検出するためのパラメータ値は、前記各撮影画像におけるマーク2の座標によって検出することができる。前記複数の歩行相とは、以下に説明する、初期接地、荷重応答期、立脚中期、立脚終期、前遊脚期、遊脚初期、遊脚中期及び遊脚終期である。
【0065】
区分部5は、前記各撮影画像が示す各歩行パラメータのパラメータ値を算出するとともに、前記各歩行パラメータのパラメータ値について予め定められた条件(特徴点)に基づき1歩行周期を複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出した前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するものである。
【0066】
図3(a)〜(g)は、肩峰、大転子、膝、外果、爪先の位置及び各歩行パラメータの説明図である。なお、以下の説明においては、歩行者の身体の各部位(肩峰、大転子、膝、外果、爪先)に装着されたマークMの座標を前記各部位の座標と表現するものとする。
【0067】
図4〜図11は、撮像部3の撮影範囲が4歩分の長さ(二歩行周期分の長さ)を持ち、撮像部3が4歩行分の歩行動作を所定の時間間隔で撮影したことにより得られた60枚の各撮影画像が示す各歩行パラメータのパラメータ値の変化を示すグラフと、各歩行相の歩行姿勢を示す撮影画像とを示している。なお、二歩行周期においては、前記初期接地を除く各歩行相は2回ずつ発生する(初期接地は1回のみ)。
【0068】
図4(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像に対して撮影タイミングの順番に割り付けられた識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像及び当該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像における外果のX座標同士の差分(縦軸)を示す図である。この差分は前記歩行パラメータの1つである。
【0069】
初期接地は、図4(a)に示すように、当該撮影画像及び当該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像における外果のX座標同士の差分が所定の範囲内となる最初の時点(例えば矢印P1で示す時点)である。前記所定の範囲は、例えば測定を実施する前に予め歩行画像を撮像し、その撮影画像における初期接地時のX座標同士の差分をとることで得られる。また、前記所定の範囲は、着地時の衝撃の強さに影響を受けるが、通常の歩行動作の場合は、それほど大きな範囲に設定する必要はなく、数画素分の幅に相当する長さを許容誤差分として設定するとよい。図4(b)は、図4(a)の矢印P1で示す時点で撮影された撮影画像(初期接地を示す撮影画像)を示している。
【0070】
図5(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における外果と爪先とのY座標同士の差分(図3(b)のΔY;縦軸)を示す図である。この差分も歩行パラメータの1つである。
【0071】
荷重応答期は、図5(a)に示すように、各撮影画像における外果及び爪先のY座標同士の差分ΔYが所定の範囲内となった最初の時点(例えば矢印P2や矢印P3で示す時点)である。前記所定の範囲は、例えば測定を実施する前に予め歩行画像を撮像し、その撮影画像における外果と爪先とのY座標同士の差分をとることで得られる。荷重応答期においては、通常、外果及び爪先のY座標同士の差分ΔYが零となり得るので容易に判定することができるが、例外的に、マーカ2が着地の衝撃により振動していることがあり、このとき、その差分ΔYが零から若干ずれることとなるため、これを考慮し、数画素分の幅に相当する長さを許容誤差分として設定してもよい。図5(b)は、図5(a)の矢印P2,P3で示す時点で撮影された撮影画像(荷重応答期を示す撮影画像)を示している。
【0072】
図6(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分(図3(c)のΔX;縦軸)を示す図である。この差分も歩行パラメータの1つである。
【0073】
立脚中期は、股関節が進展中の歩行相であり、図6(a)の例えば矢印P4や矢印P5で示すように、大転子及び膝のX座標同士の差分ΔXが略零となる時点又は前記差分ΔXが最も零に近似する時点である。図6(b)は、図6(a)の矢印P4,P5で示す時点で撮影された撮影画像(立脚中期を示す撮影画像)を示している。
【0074】
図7(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分(図3(c)のΔX;縦軸)を示す図である。
【0075】
立脚終期は、図7(a)の例えば矢印P6や矢印P7で示すように、大転子及び膝のX座標同士の差分ΔXが最大となる時点である。図7(b)は、図7(a)の矢印P6,P7で示す時点で撮影された撮影画像(立脚終期を示す撮影画像)を示している。
【0076】
なお、立脚終期は、大転子及び膝のX座標同士の差分ΔXだけでなく、股関節角度が最大となる歩行相でもあるから、この股関節角度に基づいて当該撮影画像が立脚終期を示す撮影画像を表しているのか否かを判断することができる。なお、股関節角度の算出方法については後述する。
【0077】
図8(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における足関節角度α(図3(d)参照;縦軸)を示す図である。この足関節角度αも歩行パラメータの1つである。
【0078】
前遊脚期は、図8(a)の例えば矢印P8や矢印P9で示すように、前記足関節角度αが最大となる時点である。図8(b)は、図8(a)の矢印P8,P9で示す時点で撮影された撮影画像(前遊脚期を示す撮影画像)を示している。
【0079】
図9(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における膝関節角度β(図3(e)参照;縦軸)を示す図である。この膝関節角度βも歩行パラメータの1つである。
【0080】
遊脚初期は、図9(a)の矢印P10や矢印P11で示すように、前記膝関節角度βが最小となる時点である。図9(b)は、図9(a)の矢印P10,P11で示す時点で撮影された撮影画像(遊脚初期を示す撮影画像)を示している。
【0081】
図10(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における股関節角度φ(図3(e)参照;縦軸)を示す図である。この股関節角度φも歩行パラメータの1つである。
【0082】
遊脚中期は、図10(a)の例えば矢印P12や矢印P13で示すように、股関節角度φが最小となる時点である。図10(b)は、図10(a)の矢印P12,P13で示す時点で撮影された撮影画像(遊脚中期を示す撮影画像)を示している。
【0083】
図11(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分Δw(図3(g)参照;縦軸)を示す図である。この差分Δwも歩行パラメータの1つである。
【0084】
ここで、股関節角度φ、足関節角度α及び膝関節角度βの各関節角度の算出方法について説明する。前記各関節角度の算出は前記算出部43により算出される。
【0085】
股関節角度φは、図16(a)に示すように、前記大転子に装着されたマーク2と前記膝に装着されたマーク2とを結ぶ線分と、前記大転子に装着されたマーク2と前記肩峰に装着されたマーク2とを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である。
【0086】
算出部43は、大転子・肩峰・膝にそれぞれ装着された各マーク2の位置を点O,P,Qとし、点Oを始点、点Pを終点とするベクトルOPと、点Oを始点、点Qを終点とするベクトルOQとを生成する。
【0087】
次に、算出部43は、ベクトルOPとベクトルOQとの内積を算出する。すなわち、ベクトルOP=(X3,Y3),ベクトルOQ=(X4,Y4)と表すものとすると、算出部43は、ベクトルOPとベクトルOQとの内積OP×OQを
OP×OQ=X3×X4+Y3×Y4 ・・・(3)
により算出する。
【0088】
一方、ベクトルOPとベクトルOQとのなす角度のうち小さい方の角度をφと表し、ベクトルOP、ベクトルOQを単にOP,OQと表すものとすると、内積OP×OQは、
OP×OQ=|OP||OQ|cosφ ・・・(4)
とも表すことができる。なお、|OP|は、ベクトルOPの長さ(スカラー量)、|OQ|は、ベクトルOQの長さ(スカラー量)である。
【0089】
算出部43は、前記式(3),(4)に基づき、
X3×X4+Y3×Y4=|OP||OQ|cosφ
が成立し、
φ=cos-1{(X3×X4+Y3×Y4)/|OP||OQ|}
により角度φを算出する。
【0090】
足関節角度αは、図16(b)に示すように、前記外果に装着されたマーク2と前記爪先に装着されたマーク2とを結ぶ線分と、前記外果に装着されたマーク2と前記膝に装着されたマーク2とを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度であり、股関節角度φの算出方法と同様の算出方法により算出することができる。
【0091】
すなわち、前記股関節角度φの算出方法における「大転子に装着されたマーク2」を「外果に装着されたマーク2」に置換し、「膝に装着されたマーク2」を「爪先に装着されたマーク2」に置換し、「肩峰に装着されたマーク2」を「膝に装着されたマーク2」に置換した上で、前記股関節角度φの算出方法と同様にベクトル(外果の位置を始点とする2つのベクトル)を設定し、それらのベクトルの内積を利用することで算出することができる。
【0092】
膝関節角度βは、図16(c)に示すように、前記膝に装着されたマーク2と前記外果に装着されたマーク2とを結ぶ線分と、前記膝に装着されたマーク2と前記大転子に装着されたマーク2とを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度であり、股関節角度φや足関節角度αの算出方法と同様の算出方法により算出することができる。
【0093】
すなわち、前記股関節角度φの算出方法における「大転子に装着されたマーク2」を「膝に装着されたマーク2」に置換し、「膝に装着されたマーク2」を「外果に装着されたマーク2」に置換し、「肩峰に装着されたマーク2」を「大転子に装着されたマーク2」に置換した上で、前記股関節角度φの算出方法と同様にベクトル(膝の位置を始点とする2つのベクトル)を設定し、それらのベクトルの内積を利用することで算出することができる。
【0094】
図11(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分Δw(図3(g)参照;縦軸)を示す図である。この差分も歩行パラメータの1つである。
【0095】
遊脚終期は、図11(a)の矢印P14や矢印P15で示すように、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分Δwが最大となる時点である。図11(b)は、図11(a)の矢印P14,P15で示す時点で撮影された撮影画像(遊脚終期を示す撮影画像)を示している。
【0096】
区分部5は、以上のような各歩行相における特徴点(前記各歩行パラメータのパラメータ値)に基づいて、前記各撮影画像を歩行相ごとに区分する。すなわち、区分部5は、例えば、或る撮影画像における外果及び爪先のY座標同士の差分ΔYが前記所定の範囲内となったときには、その撮影画像は荷重応答期を示した撮影画像であると判断するという処理を各撮影画像について実施する。そして、区分部5は、各撮影画像がどの歩行相の歩行姿勢を撮像したものであるか(歩行相の種類)に応じてそれらの撮影画像を区分する。
【0097】
表示部6は、区分部5により歩行相の種類別にそれぞれ区分された撮影画像のうち、図略の入力操作部(前記第1入力操作部に相当)により指定された歩行相を示す撮影画像を表示する。例えば、入力操作部により荷重応答期を示した撮影画像を表示部6に表示する指示が入力された場合に、荷重応答期を示した撮影画像が5枚存在するときには、表示部6は、この5枚の撮影画像を例えば映像(動画像)として表示したり、5枚の静止画として並べて表示したりする。
【0098】
以上のように、本実施形態では、各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出されたパラメータ値(前記差分ΔX,ΔY,α,βなど)に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するとともに、前記入力操作部により歩行相が指定されると、その歩行相を示す撮影画像を表示するようにしたので、歩行者の歩行動作を歩行相ごとに詳細に分析することができる。
【0099】
また、撮影画像における各マーク2の位置(座標)を用いて、当該撮影画像が示す歩行相を検出するようにしたので、従来技術のように歩行者の姿勢を検出するための各種のセンサを設けなくて済み、従来技術に比してコストアップや装置の大型化を回避又は抑制することができる。
【0100】
本件は、前記実施形態に代えて、或いは前記実施形態に加えて次のような変形形態も採用可能である。
【0101】
[1]各歩行相における理想的な歩行姿勢を示した画像を理想画像として図略の記憶部に予め記憶しておき、図12に示すように、撮像部3により撮影画像が得られると、表示部6は、その撮影画像と、該撮影画像が示す歩行相についての理想画像(撮影画像と歩行相が一致する理想画像)とを並べて表示するようにすると、適切な歩行動作を指導する指導者や歩行者等は、該歩行者の歩行動作における改善点を明確に認識することができる。なお、図12は、立脚周期、前遊脚期及び遊脚初期についての撮影画像と理想画像とを上下に並べて配置した状態で表示した画面を示している。
【0102】
[2]歩行者の歩幅を算出する機能を算出部43に搭載し、表示部6は、算出部43により算出された歩幅を表示するようにすると、指導者等は、歩行者の歩行動作を歩幅の観点から分析することができる。歩幅は、例えば、当該撮影画像と該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像とにおける外果のX座標同士の差分をとることで算出することができる。
【0103】
図13は、歩行者の歩幅の検出結果を表示する表示画面の一例を示す図であり、図13に示す表示画面においては、歩行者の年齢を横軸、歩幅を縦軸として、各年齢における標準的な歩幅の範囲の上限値を示したグラフL1と、各年齢における標準的な歩幅の範囲の下限値を示したグラフL2とを示した上で、算出した歩行者の歩幅とその歩行者の年齢との組み合わせに対応する点Wを示している。
【0104】
これにより、被験者や歩行者は、該歩行者の歩幅が標準的なものか否かとか標準的な範囲に含まれる場合であっても、大きい方の歩幅であるのか小さい方の歩幅であるのかなど、歩行者の歩行動作を歩幅の観点から詳細に分析することができる把握することができる。
【0105】
なお、ここでは、歩行者の歩行動作を表すための歩行パラメータの1例として歩幅を挙げ、該歩幅の検出結果と標準値とを表示部6に表示するようにしたが、その表示対象の歩行パラメータは前記歩幅に限定されず、例えば、前述の股関節角度、足関節角度、膝関節角度や歩行速度等の歩行パラメータも採用可能である。なお、歩行速度は、連続して撮影された2枚の撮影画像おける外果のX座標同士の差分をとることで算出される前記歩幅を、この2枚の撮影画像の撮影タイミングの時間差で除算することにより算出することができる。
【0106】
[3]一連の撮影画像のうち1枚の撮影画像を指定する入力を行うための入力操作部(図示せず;前記第2入力操作部に相当)を備え、該入力操作部により特定の撮影画像が1枚指定される(指定された撮影画像を指定画像という)と、図14に示すように、表示部6は、その指定画像の撮影タイミングを含む一定期間内に撮像された複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を表示部6に搭載するようにしてもよい。
【0107】
これにより、撮影画像を1枚しか表示部6に表示できない場合に比して、指導者や歩行者等は、歩行動作の遷移態様などを詳細に把握することができ、歩行者の歩行動作について詳細に分析することができる。なお、図14においては、指定画像と、該指定画像の直前及び直後にそれぞれ2回ずつ撮影して得られた4枚の撮影画像との5枚の撮影画像が、撮影順に並べて表示された表示画面を示している。
【符号の説明】
【0108】
1 歩行状態表示装置
2 マーク
3 撮像部
31 画像処理部
4 座標抽出部
41 抽出部
42 座標設定部
43 算出部
5 区分部
6 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の歩行状態を表示するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者の歩き方を、リハビリとしての適正な歩き方やエクササイズ効果を高められる歩き方、或いは姿勢の良い綺麗な歩き方等に改善させることを目的として、歩行者の歩行状態を測定・検査する装置が種々提案されている(例えば下記特許文献1,2)。
【0003】
下記特許文献1には、「左側検出手段7は訓練者2の左足の着地及び離地、又は着地もしくは離地のいずれかを検出し、右側検出手段8は訓練者2の右足の着地及び離地、又は着地もしくは離地のいずれかを検出する。撮影・測定手段としての人体側センサ部9が訓練者2の身体に取り付けられ・・・(中略)・・・、この人体側センサ部9には、加速度センサやジャイロ等が内蔵されている。撮影・測定手段としての左側センサ部10は左側歩行面3に加わる力を検出するフォースプレート等を内蔵しており、右側センサ部11は右側歩行面4に加わる力を検出するフォースプレート等を内蔵している([0015])」、「制御手段13は、・・・(中略)・・・訓練者2の左足・・・(中略)・・・又は・・・(中略)・・・右足の着地及び離地、又は着地もしくは離地のいずれかの信号に基づいて、歩行周期や左右の足の立脚期間及び遊脚期間等を測定する。さらに、・・・(中略)・・・制御手段13には、・・・(中略)・・・測定した姿勢や床反力等の測定データ、並びに駆動手段5で検出した左右の環状ベルトを駆動するモータのトルクや左右の環状ベルトの移動速度等のデータが入力され、これらデータは制御手段13から記憶手段15に出力される。さらに、制御手段13は・・・(中略)・・・記憶手段15に記憶された画像及び測定データを加工して表示手段16に出力する([0016])」,「右足の1歩行周期での着地時、立脚期1(立脚期間の20%経過後)、立脚期2(立脚期間の40%経過後)、立脚期3(立脚期間の80%経過後)及び離地の5つの画像を重畳して表示している。これにより1歩行周期での訓練者2の歩行状態の変化を側面から観測することができる([0024])」と記載されている。
【0004】
下記特許文献2には、「歩行動作解析に際して移動軌跡を算出するために撮影対象者28にマーカを取り付ける必要がある場合には、必要に応じて予め定められた部位に図示しないマーカを取り付けておく。オペレータにより入力部26に動画取り込みの指示が入ったら、撮影手段12によって撮影された動画像は画像取込み部14に転送され、そこでデジタル符号化されて記憶部16に動画像として格納される。それと同時に予め記憶部16に設けてあるデータベース内に、取り込んだ動画像のファイル名や撮影日の等の情報が書き込まれる([0021])」,「撮影対象者28に計測点を示すマーカが取り付けられている場合には、前記動画像のデータからマーカの部分を抽出して各々のマーカの面積重心を求め、そしてその求めた面積重心点をマーカの計測点とする。前記マーカの計測点を、撮影した各々のフレームに於いて算出([0026])」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−306628号公報
【特許文献2】特開2001−420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常の人間の歩行動作は、歩行姿勢が周期的に変化するが、その歩行動作における1歩行周期(一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする周期)は、鉛直方向における外果の位置の変化態様や股関節角度等の、歩行動作を表す(表現する)ための複数種類の歩行パラメータを設定した場合、いずれかの歩行パラメータにおいて特徴的なパラメータ値をもつ複数の区間にそれぞれ分割することができる。
【0007】
ここで、それらの区間ごとに、歩行者の歩行動作についての良否等を判断することができれば、好ましい歩き方との相違点の把握や詳細な歩き方の改善指導をより詳細に行うことができると考えられる。
【0008】
しかしながら、前記特許文献2においては、歩行者の歩行動作を前述した複数の区間に分割する点については提案されていない。また、前記特許文献1には、「右足の1歩行周期での着地時、立脚期1(立脚期間の20%経過後)、立脚期2(立脚期間の40%経過後)、立脚期3(立脚期間の80%経過後)及び離地の5つの画像を重畳して表示している。」と記載されているが、歩行者の歩行動作を検出するために、各種の検出手段やセンサ部(左側検出手段7、右側検出手段8、人体側センサ部9、左側センサ部10及び右側センサ部11)が必要であり、その分、装置が大規模化したり多大なコストを要したりする。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、比較的簡単な構成で歩行者の歩行動作を詳細に計測及び分析することのできる歩行状態表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、歩行者の身体のうち予め定められた部位に装着される1又は複数のマークと、歩行者に装着されているマークを含む光像を一定の光軸方向及び撮像範囲で繰り返し撮像し、複数の撮影画像を生成する撮像部と、前記撮影画像ごとに前記マークをそれぞれ抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された各マークの位置を予め定められた共通の座標系の座標で表す座標設定部と、前記座標設定部により設定された各マークについての座標を用いて、予め定められた、歩行動作を表すための歩行パラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部と、前記各撮像画像が、予め定められた条件に基づいて複数に分割された歩行相のどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮像画像を歩行相ごとに区分する区分部と、前記各撮影画像を前記区分部による区分結果を利用して表示する表示部とを備える歩行状態表示装置である。
【0011】
この発明によれば、各撮影画像がどの歩行相の歩行動作(歩行姿勢)を撮像したものであるかを前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分し、前記各撮影画像をその区分結果を利用して表示部に表示するようにしたので、例えば歩行相ごとに画像を表示するようにすることで、歩行者の歩行動作を詳細に分析することができる。
【0012】
また、本発明によれば、撮影画像から得られるマークの位置に基づいて、歩行者の歩行動作を検出するようにしたので、従来技術のように歩行者の歩行姿勢を検出するために各種のセンサを設けなくて済み、従来技術に比してコストアップや装置の大型化を回避又は抑制することができる。
【0013】
なお、前記区分部は、請求項2に記載の発明のように、より詳細には、一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする前記歩行者の歩行周期を設定し且つその1歩行周期を前記歩行パラメータについて予め定められた条件に基づいて複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出されたパラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分する処理を行うとよい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、時間的に連続して得られた2つの撮影画像の前記外果に装着された各マークに着目した場合に、前記各マークの前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる歩行相である初期接地を含むものである。
【0015】
この発明によれば、初期接地を表した撮影画像を検出することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果及び爪先を含み、前記座標系は、鉛直方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとについての前記鉛直方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる荷重応答期を含むものである。
【0017】
この発明によれば、荷重応答期を表した撮影画像を検出することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で零となる立脚中期を含むものである。
【0019】
この発明によれば、立脚中期を表した撮影画像を検出することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士との差分が1歩行周期内で最大となる立脚終期を含むものである。
【0021】
この発明によれば、立脚終期を表した撮影画像を検出することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の膝、外果及び爪先を含み、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記外果に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である足関節角度が1歩行周期内で最大となる前遊脚期を含むものである。
【0023】
この発明によれば、前遊脚期を表した撮影画像を検出することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子、膝及び外果を含み、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記膝に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記膝に装着されたマークと前記大転子に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である膝関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚初期を含むものである。
【0025】
この発明によれば、遊脚初期を表した撮影画像を検出することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の肩峰、大転子及び膝を含み、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記大転子に装着されたマークと前記肩峰に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である股関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚中期を含むものである。
【0027】
この発明によれば、遊脚中期を表した撮影画像を検出することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置において、前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び外果を含み、前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最大となる遊脚終期を含むものである。
【0029】
この発明によれば、遊脚終期を表した撮影画像を検出することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10の何れかに記載の歩行状態表示装置において、前記表示部に表示させる対象の撮影画像を前記歩行相ごとに選択する入力を行うための第1入力操作部を更に備え、前記表示部は、前記第1入力操作部により選択された歩行相の撮影画像を表示するものである。
【0031】
この発明によれば、前記表示部に表示させる対象の撮影画像を前記歩行相ごとに選択する入力を行うための第1入力操作部を備え、前記表示部は、前記第1入力操作部により選択された歩行相の撮影画像を表示するようにしたので、指導者等は、歩行相ごとに歩行者の歩行動作を分析することができる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11の何れかに記載の歩行状態表示装置において、前記歩行相ごとに予め設けられた、理想のパラメータ値を有する理想画像を記憶する理想画像記憶部を更に備え、前記表示部は、更に、前記撮影画像と、該撮影画像と歩行相が一致する理想画像とを併せて表示する機能を有するものである。
【0033】
この発明によれば、前記歩行相ごとに予め設けられた、理想のパラメータ値を有する理想画像を記憶する理想画像記憶部を更に備え、前記表示部は、更に、前記撮影画像と、該撮影画像と歩行相が一致する理想画像とを併せて表示する機能を備えたので、指導者等は、歩行相ごとに歩行者の歩行動作を分析することができるとともに、歩行者の歩行動作が理想の歩行動作とどの程度異なるのかを指導者等に簡単に認識させることが可能となる。
【0034】
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至12の何れかに記載の歩行状態表示装置において、年齢と歩行相との組み合わせに基づいて予め設定された、前記歩行パラメータについての標準値を記憶する標準値記憶部を更に備え、前記表示部は、更に、前記算出部により導出されたパラメータ値と前記標準値とをグラフで表示する機能を有するものである。
【0035】
この発明によれば、前記算出部により算出された歩行パラメータのパラメータ値と前記標準値とをグラフで表示する機能を備えたので、指導者等は、歩行者の歩行動作を標準値と照らし合わせて分析することができる。
【0036】
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13の何れかに記載の歩行状態表示装置において、前記表示部に表示されている撮影画像の中から1枚の撮影画像を選択する入力を行うための第2入力操作部を更に備え、前記表示部は、更に、前記第2入力操作部により1枚の撮影画像が選択されると、その撮影画像の撮影タイミングを含む一定期間内の撮像動作で得られた複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を有するものである。
【0037】
この発明によれば、前記第2入力操作部により1枚の撮影画像が選択されると、その撮影画像の撮影タイミングを含む一定期間内の撮像動作で得られた複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を備えたので、指導者等は、歩行者の歩行動作を詳細に分析することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、従来技術に比してコストアップや装置の大型化を回避又は抑制しつつ、歩行者の歩行動作を詳細に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る歩行状態表示装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】歩行者による歩行動作の撮影状況を示す図である。
【図3】(a)〜(g)は、肩峰、大転子、膝、外果、爪先の位置及び各歩行パラメータの説明図である。
【図4】(a)は、二歩行周期分の各撮影画像について求められる、当該撮影画像及び当該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像における外果のX座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P1で示す時点で撮影された初期接地の撮影画像を示した図である。
【図5】(a)は、二歩行周期分の各撮影画像について求められる、当該撮影画像における外果及び爪先の各Y座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P2,P3で示す時点で撮影された荷重応答期の撮影画像を示した図である。
【図6】(a)は、二歩行周期分の各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P4,P5で示す時点で撮影された立脚中期の撮影画像を示した図である。
【図7】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分を示す図、(b)は、(a)の矢印P6,P7で示す時点で撮影された立脚終期の撮影画像を示した図である。
【図8】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における足関節角度αを示す図、(b)は、(a)の矢印P8,P9で示す時点で撮影された前遊脚期の撮影画像を示した図である。
【図9】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における膝関節角度βを示す図、(b)は、(a)の矢印P10,P11で示す時点で撮影された遊脚初期の撮影画像を示した図である。
【図10】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における股関節角度φを示す図、(b)は、(a)の矢印P12,P13で示す時点で撮影された遊脚中期の撮影画像を示した図である。
【図11】(a)は、二歩行周期分の撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分を示す図、(b)は、図11(a)の矢印P14,P15で示す時点で撮影された遊脚終期の撮影画像を示した図である。
【図12】撮影画像と、該撮影画像が示す歩行相についての理想画像とを並べて表示した表示画面を示す図である。
【図13】算出した歩行者の歩幅を表示する表示画面の一例を示す図である。
【図14】特定の撮影画像が1枚指定された場合に、その画像の撮影タイミングを含む一定期間内に撮像された複数の撮影画像を並べて表示した画面を示す図である。
【図15】外果に装着されたマークと爪先に装着されたマークとの識別方法の説明図である。
【図16】(a)は、股関節角度を示す図、(b)は、膝関節角度を示す図、(c)は、足関節角度を示す図である。
【図17】画像処理部及び抽出部により行われる処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る歩行状態表示装置の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る歩行状態表示装置の構成を示すブロック図である。
【0041】
図1に示すように、歩行状態表示装置1は、マーク2と、撮像部3と、座標抽出部4と、区分部5と、表示部6とを有する。マーク2は、図2に示すように、被験者である歩行者Mの身体のうち肩峰、大転子、膝、外果、爪先に装着される。歩行者Mは、肩峰、大転子、膝、外果、爪先にそれぞれマーク2を装着した状態で、予め定められた歩行領域S内を一定方向(矢印Xで示す方向)に歩行する。
【0042】
撮像部3は、例えばR(赤)、G(緑)、B(赤)のカラーフィルタが1:2:1の割合でベイヤー配列されてなるCCD(Charge Coupled Device)を備えてなる。撮像部3は、光軸の方向及び撮像範囲が一定とされており、前記歩行領域S内を一定方向に歩行する歩行者Mの歩行期間中、歩行者Mの身体の少なくとも前記マーク2が装着されている肩峰、大転子、膝、外果、爪先の部分を含む範囲の光像を繰り返し(例えば一定の周期で)撮像する。
【0043】
なお、光を出力する発光部を撮像部3に設けるとともに、その発光部から出力される光を反射する反射部をマーク2に備えると、マーク2の画像が全体画像の中で相対的に輝度の大きな画像として出現することとなるから、歩行状態表示装置1は、全体画像の中でマーク2の画像とそれ以外の画像とを明確に識別することができる。
【0044】
図1に示すように、撮像部3は、画像処理部31を備える。画像処理部31は、図17に示すように、各画素から出力される画素情報から構成される画像(ベイヤ画像)に対しカラー変換処理を行う。カラー変換処理は、各画素から当該画素に配設されたカラーフィルタの色についての画素情報しか得られていないベイヤー画像から、各画素の位置において、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色の画素情報をそれぞれ有する画像に変換する処理である。例えば、画像処理部31は、「R」のカラーフィルタが配設された画素の位置における「G(緑)」の色の画素情報を、その画素の周囲に位置するG(緑)の画素から得られる画素情報を用いて平均演算や重み演算により算出する。
【0045】
また、画像処理部31は、このカラー変換処理後の画像におけるノイズの除去も行う。前記カラー変換処理及びノイズ除去処理後の画像をカラー画像という。撮像部3は、このカラー画像を記憶する図略の記憶部を有し、表示部6に該カラー画像を表示する必要が生じたときに、前記記憶部に格納されているカラー画像を表示部6に出力する。
【0046】
次に、画像処理部31は、前記カラー画像に対して赤み除去処理及びグレー変換処理を行う。赤み除去処理は、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分のうち、マーク2と誤認識する可能性のある歩行者の肌の赤み(R)を除去する処理であり、1つの画素におけるRGBの画像情報をR,G,Bと表すものとしたとき、R>((G+B)/2+α)を演算する処理である。なお、「α」は、画像の赤みの程度に応じて設定し、誤認識しない程度まで赤み除去を行うためのパラメータである。グレー変換処理は、前記赤み除去処理後の画像から、各画素にカラーフィルタが配設されなかった場合に得られるものと想定される画像(以下、第1グレー画像という)を生成する処理である。
【0047】
一方、撮像部3は、歩行動作(マーク2)の撮影動作とは別に、歩行者Mが撮像範囲内に存在しない状態で撮影動作を行う。この撮影動作で得られた画像を背景画像という。この時点の背景画像は、各画素から当該画素に配設されたカラーフィルタの色についての画素情報しか得られていないベイヤー画像となっている。画像処理部31は、この背景画像についてG(緑)成分のみを抽出し、各画素にカラーフィルタが配設されなかった場合に得られるものと想定される画像(以下、第2グレー画像という)を生成するグレー変換処理を行う。
【0048】
画像処理部31は、前記第1グレー画像と第2グレー画像を生成すると、前記第1グレー画像と第2グレー画像とを後段の抽出部41に出力する。なお、以下の説明においては、撮像部3から表示部6に出力される画像及び座標抽出部4に出力される画像を合わせて撮影画像というものとする。
【0049】
座標抽出部4は、前記撮影画像(前記第1グレー画像)ごとに前記マーク2をそれぞれ抽出する抽出部41と、前記抽出部41により抽出された各マーク2の位置を、予め定められた共通の2次元座標系の座標で表す座標設定部42と、前記座標設定部42により設定された各マーク2についての座標を用いて、歩行動作を表す(表現する)ための予め定められた歩行パラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部43とを備える。
【0050】
図17に示すように、抽出部41は、前記画像処理部31から前記第1グレー画像及び第2グレー画像を取得すると、前記第1グレー画像と第2グレー画像との差分をとった背景差分画像を生成する。また、抽出部41は、生成した背景差分画像を画素毎に2値化した後、差分が所定の閾値以上となっている画素を抽出するラベリングを行う。
【0051】
さらに、抽出部41は、所定の閾値以上の差分を有する画素が連続する領域のうち、面積Sが予め定められた一定範囲内(Sα<S<Sβ)となっている領域をマーク2の画像領域として抽出し、それぞれ抽出した領域の中心点(又は重心)をマーク2の位置と設定する。
【0052】
座標設定部42は、歩行開始直前の歩行者の例えば外果の位置を原点とし、歩行者の進行方向をX軸、鉛直方向をY軸とする2次元座標系を設定するとともに、抽出部41により求められた中心点の座標をマーク2の位置を表す座標として設定するものである。
【0053】
算出部43は、各マーク2が歩行者のどの部位(肩峰、大転子、膝、外果、爪先)に装着されたものであるかの識別を次のように行う。
【0054】
まず、算出部43は、Y座標が大きいマーク2から順に、その装着位置が肩峰、大転子、膝、外果、爪先であると仮に割り当てる。次に、算出部43は、肩峰に装着されたマーク2と大転子に装着されたマーク2と膝に装着されたマーク2とその他の部位(外果及び爪先)に装着されたマーク2との識別については、歩行中における肩峰の高さ位置、大転子の高さ位置、膝の高さ位置及びその他(外果及び爪先)の高さ位置との大小関係は、1歩行周期中のどの時点でも一定であり、Y座標のみで識別可能である。
【0055】
したがって、この点を利用して、肩峰に装着されたマーク2の画像と大転子に装着されたマーク2の画像と膝に装着されたマーク2の画像とを確定する。すなわち、算出部43は、Y座標が最も大きいマーク2を、肩峰に装着されたマーク2であると確定し、その次にY座標が大きいマーク2を、大転子に装着されたマーク2であると確定し、その次にY座標が大きいマーク2を、膝に装着されたマーク2であると確定する。
【0056】
また、算出部43は、外果に装着されたマーク2と爪先に装着されたマーク2との識別については、次のように行う。算出部43は、図15(a)に示すように、外果・膝・爪先にそれぞれ装着された各マーク2の位置を点A,B,Cとし、点Aを始点、点Bを終点とするベクトルABと、点Aを始点、点Cを終点とするベクトルACとを生成する。
【0057】
次に、算出部43は、ベクトルABとベクトルACとの外積を算出する。すなわち、ベクトルAB=(X1,Y1),ベクトルAC=(X2,Y2)と表すものとすると、算出部43は、ベクトルABとベクトルACとの外積AB×ACを
AB×AC=X1×Y2−X2×Y1・・・(1)
により算出する。
【0058】
一方、図15(a)に示すように、ベクトルACを基準としたベクトルABまでの角度をθと表し、ベクトルAB、ベクトルACを単にAB,ACと表すものとすると、外積AB×ACは、
AB×AC=|AB||AC|sinθ ・・・(2)
とも表すことができる。なお、|AB|は、ベクトルABの長さ(スカラー量)、|AC|は、ベクトルACの長さ(スカラー量)である。
【0059】
ここで、前記式(2)によって算出した外積の値が負の値になったときには、図15(b)に示すように、角度θが負の値であり、膝・外果・爪先の位置関係が図15(b)に示す位置関係となることを示すが、人間の身体の構造上、このような状態になることは無い。すなわち、この場合、外果・膝・爪先の位置に係る先の仮割当てが正解でないことを示している。
【0060】
算出部43は、これを用い、算出した前記ベクトルABとベクトルACとの外積の値が正の値となったか否かを判断し、前記外積の値が正の値であるときには、図15(a)に示すように、Y座標が大きい方のマーク2が外果に装着されたマーク2であり、Y座標が小さい方のマークが爪先に装着されたマーク2であると判断する。すなわち、算出部43は、先に仮定した前述の割り当て内容(Y座標が大きいマーク2から順に、マーク2の装着位置が肩峰、大転子、膝、外果、爪先であるとの内容)が正しいと判断する。
【0061】
一方、算出部43は、前記外積の値が負の値であると判断したときには、図15(b)に示すように、Y座標が大きいマーク2から順に、その装着位置が肩峰、大転子、膝、外果、爪先であると設定した先の仮割当ては誤りであり、図15(c)に示すように、Y座標が大きい方のマーク2が爪先に装着されたマーク2、Y座標が小さい方のマークが外果に装着されたマーク2であると判断する。
【0062】
以上の処理により、算出部43は、5つのマーク2の装着位置を特定する。そして、算出部43は、この5つのマーク2の装着位置を特定する処理を、撮像部3から得られた複数の撮影画像のそれぞれについて実施し、その処理結果を区分部5に出力する。
【0063】
ところで、歩行者の歩行動作は、該歩行者の身体の部位のうちの2つの特定部位間の距離、或いは、後述する股関節角度、足関節角度、膝関節角度など歩行動作を表すための複数種類の歩行パラメータを設定した場合、そのパラメータ値が周期的に変化する。その変化の周期は、一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする周期である。そして、その1歩行周期は、いずれかの歩行パラメータにおいて特徴的なパラメータ値をもつ複数の区間(歩行相)に分割することができる。
【0064】
本実施形態では、このように1歩行周期を複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを、当該撮影画像が示す各歩行パラメータのパラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するようにしている。各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを検出するためのパラメータ値は、前記各撮影画像におけるマーク2の座標によって検出することができる。前記複数の歩行相とは、以下に説明する、初期接地、荷重応答期、立脚中期、立脚終期、前遊脚期、遊脚初期、遊脚中期及び遊脚終期である。
【0065】
区分部5は、前記各撮影画像が示す各歩行パラメータのパラメータ値を算出するとともに、前記各歩行パラメータのパラメータ値について予め定められた条件(特徴点)に基づき1歩行周期を複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出した前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するものである。
【0066】
図3(a)〜(g)は、肩峰、大転子、膝、外果、爪先の位置及び各歩行パラメータの説明図である。なお、以下の説明においては、歩行者の身体の各部位(肩峰、大転子、膝、外果、爪先)に装着されたマークMの座標を前記各部位の座標と表現するものとする。
【0067】
図4〜図11は、撮像部3の撮影範囲が4歩分の長さ(二歩行周期分の長さ)を持ち、撮像部3が4歩行分の歩行動作を所定の時間間隔で撮影したことにより得られた60枚の各撮影画像が示す各歩行パラメータのパラメータ値の変化を示すグラフと、各歩行相の歩行姿勢を示す撮影画像とを示している。なお、二歩行周期においては、前記初期接地を除く各歩行相は2回ずつ発生する(初期接地は1回のみ)。
【0068】
図4(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像に対して撮影タイミングの順番に割り付けられた識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像及び当該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像における外果のX座標同士の差分(縦軸)を示す図である。この差分は前記歩行パラメータの1つである。
【0069】
初期接地は、図4(a)に示すように、当該撮影画像及び当該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像における外果のX座標同士の差分が所定の範囲内となる最初の時点(例えば矢印P1で示す時点)である。前記所定の範囲は、例えば測定を実施する前に予め歩行画像を撮像し、その撮影画像における初期接地時のX座標同士の差分をとることで得られる。また、前記所定の範囲は、着地時の衝撃の強さに影響を受けるが、通常の歩行動作の場合は、それほど大きな範囲に設定する必要はなく、数画素分の幅に相当する長さを許容誤差分として設定するとよい。図4(b)は、図4(a)の矢印P1で示す時点で撮影された撮影画像(初期接地を示す撮影画像)を示している。
【0070】
図5(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における外果と爪先とのY座標同士の差分(図3(b)のΔY;縦軸)を示す図である。この差分も歩行パラメータの1つである。
【0071】
荷重応答期は、図5(a)に示すように、各撮影画像における外果及び爪先のY座標同士の差分ΔYが所定の範囲内となった最初の時点(例えば矢印P2や矢印P3で示す時点)である。前記所定の範囲は、例えば測定を実施する前に予め歩行画像を撮像し、その撮影画像における外果と爪先とのY座標同士の差分をとることで得られる。荷重応答期においては、通常、外果及び爪先のY座標同士の差分ΔYが零となり得るので容易に判定することができるが、例外的に、マーカ2が着地の衝撃により振動していることがあり、このとき、その差分ΔYが零から若干ずれることとなるため、これを考慮し、数画素分の幅に相当する長さを許容誤差分として設定してもよい。図5(b)は、図5(a)の矢印P2,P3で示す時点で撮影された撮影画像(荷重応答期を示す撮影画像)を示している。
【0072】
図6(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分(図3(c)のΔX;縦軸)を示す図である。この差分も歩行パラメータの1つである。
【0073】
立脚中期は、股関節が進展中の歩行相であり、図6(a)の例えば矢印P4や矢印P5で示すように、大転子及び膝のX座標同士の差分ΔXが略零となる時点又は前記差分ΔXが最も零に近似する時点である。図6(b)は、図6(a)の矢印P4,P5で示す時点で撮影された撮影画像(立脚中期を示す撮影画像)を示している。
【0074】
図7(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び膝のX座標同士の差分(図3(c)のΔX;縦軸)を示す図である。
【0075】
立脚終期は、図7(a)の例えば矢印P6や矢印P7で示すように、大転子及び膝のX座標同士の差分ΔXが最大となる時点である。図7(b)は、図7(a)の矢印P6,P7で示す時点で撮影された撮影画像(立脚終期を示す撮影画像)を示している。
【0076】
なお、立脚終期は、大転子及び膝のX座標同士の差分ΔXだけでなく、股関節角度が最大となる歩行相でもあるから、この股関節角度に基づいて当該撮影画像が立脚終期を示す撮影画像を表しているのか否かを判断することができる。なお、股関節角度の算出方法については後述する。
【0077】
図8(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における足関節角度α(図3(d)参照;縦軸)を示す図である。この足関節角度αも歩行パラメータの1つである。
【0078】
前遊脚期は、図8(a)の例えば矢印P8や矢印P9で示すように、前記足関節角度αが最大となる時点である。図8(b)は、図8(a)の矢印P8,P9で示す時点で撮影された撮影画像(前遊脚期を示す撮影画像)を示している。
【0079】
図9(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における膝関節角度β(図3(e)参照;縦軸)を示す図である。この膝関節角度βも歩行パラメータの1つである。
【0080】
遊脚初期は、図9(a)の矢印P10や矢印P11で示すように、前記膝関節角度βが最小となる時点である。図9(b)は、図9(a)の矢印P10,P11で示す時点で撮影された撮影画像(遊脚初期を示す撮影画像)を示している。
【0081】
図10(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における股関節角度φ(図3(e)参照;縦軸)を示す図である。この股関節角度φも歩行パラメータの1つである。
【0082】
遊脚中期は、図10(a)の例えば矢印P12や矢印P13で示すように、股関節角度φが最小となる時点である。図10(b)は、図10(a)の矢印P12,P13で示す時点で撮影された撮影画像(遊脚中期を示す撮影画像)を示している。
【0083】
図11(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分Δw(図3(g)参照;縦軸)を示す図である。この差分Δwも歩行パラメータの1つである。
【0084】
ここで、股関節角度φ、足関節角度α及び膝関節角度βの各関節角度の算出方法について説明する。前記各関節角度の算出は前記算出部43により算出される。
【0085】
股関節角度φは、図16(a)に示すように、前記大転子に装着されたマーク2と前記膝に装着されたマーク2とを結ぶ線分と、前記大転子に装着されたマーク2と前記肩峰に装着されたマーク2とを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である。
【0086】
算出部43は、大転子・肩峰・膝にそれぞれ装着された各マーク2の位置を点O,P,Qとし、点Oを始点、点Pを終点とするベクトルOPと、点Oを始点、点Qを終点とするベクトルOQとを生成する。
【0087】
次に、算出部43は、ベクトルOPとベクトルOQとの内積を算出する。すなわち、ベクトルOP=(X3,Y3),ベクトルOQ=(X4,Y4)と表すものとすると、算出部43は、ベクトルOPとベクトルOQとの内積OP×OQを
OP×OQ=X3×X4+Y3×Y4 ・・・(3)
により算出する。
【0088】
一方、ベクトルOPとベクトルOQとのなす角度のうち小さい方の角度をφと表し、ベクトルOP、ベクトルOQを単にOP,OQと表すものとすると、内積OP×OQは、
OP×OQ=|OP||OQ|cosφ ・・・(4)
とも表すことができる。なお、|OP|は、ベクトルOPの長さ(スカラー量)、|OQ|は、ベクトルOQの長さ(スカラー量)である。
【0089】
算出部43は、前記式(3),(4)に基づき、
X3×X4+Y3×Y4=|OP||OQ|cosφ
が成立し、
φ=cos-1{(X3×X4+Y3×Y4)/|OP||OQ|}
により角度φを算出する。
【0090】
足関節角度αは、図16(b)に示すように、前記外果に装着されたマーク2と前記爪先に装着されたマーク2とを結ぶ線分と、前記外果に装着されたマーク2と前記膝に装着されたマーク2とを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度であり、股関節角度φの算出方法と同様の算出方法により算出することができる。
【0091】
すなわち、前記股関節角度φの算出方法における「大転子に装着されたマーク2」を「外果に装着されたマーク2」に置換し、「膝に装着されたマーク2」を「爪先に装着されたマーク2」に置換し、「肩峰に装着されたマーク2」を「膝に装着されたマーク2」に置換した上で、前記股関節角度φの算出方法と同様にベクトル(外果の位置を始点とする2つのベクトル)を設定し、それらのベクトルの内積を利用することで算出することができる。
【0092】
膝関節角度βは、図16(c)に示すように、前記膝に装着されたマーク2と前記外果に装着されたマーク2とを結ぶ線分と、前記膝に装着されたマーク2と前記大転子に装着されたマーク2とを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度であり、股関節角度φや足関節角度αの算出方法と同様の算出方法により算出することができる。
【0093】
すなわち、前記股関節角度φの算出方法における「大転子に装着されたマーク2」を「膝に装着されたマーク2」に置換し、「膝に装着されたマーク2」を「外果に装着されたマーク2」に置換し、「肩峰に装着されたマーク2」を「大転子に装着されたマーク2」に置換した上で、前記股関節角度φの算出方法と同様にベクトル(膝の位置を始点とする2つのベクトル)を設定し、それらのベクトルの内積を利用することで算出することができる。
【0094】
図11(a)は、前記二歩行周期分の各撮影画像の識別番号1〜59を横軸とした場合に、各撮影画像について求められる、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分Δw(図3(g)参照;縦軸)を示す図である。この差分も歩行パラメータの1つである。
【0095】
遊脚終期は、図11(a)の矢印P14や矢印P15で示すように、当該撮影画像における大転子及び外果のX座標同士の差分Δwが最大となる時点である。図11(b)は、図11(a)の矢印P14,P15で示す時点で撮影された撮影画像(遊脚終期を示す撮影画像)を示している。
【0096】
区分部5は、以上のような各歩行相における特徴点(前記各歩行パラメータのパラメータ値)に基づいて、前記各撮影画像を歩行相ごとに区分する。すなわち、区分部5は、例えば、或る撮影画像における外果及び爪先のY座標同士の差分ΔYが前記所定の範囲内となったときには、その撮影画像は荷重応答期を示した撮影画像であると判断するという処理を各撮影画像について実施する。そして、区分部5は、各撮影画像がどの歩行相の歩行姿勢を撮像したものであるか(歩行相の種類)に応じてそれらの撮影画像を区分する。
【0097】
表示部6は、区分部5により歩行相の種類別にそれぞれ区分された撮影画像のうち、図略の入力操作部(前記第1入力操作部に相当)により指定された歩行相を示す撮影画像を表示する。例えば、入力操作部により荷重応答期を示した撮影画像を表示部6に表示する指示が入力された場合に、荷重応答期を示した撮影画像が5枚存在するときには、表示部6は、この5枚の撮影画像を例えば映像(動画像)として表示したり、5枚の静止画として並べて表示したりする。
【0098】
以上のように、本実施形態では、各撮影画像がどの歩行相を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出されたパラメータ値(前記差分ΔX,ΔY,α,βなど)に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するとともに、前記入力操作部により歩行相が指定されると、その歩行相を示す撮影画像を表示するようにしたので、歩行者の歩行動作を歩行相ごとに詳細に分析することができる。
【0099】
また、撮影画像における各マーク2の位置(座標)を用いて、当該撮影画像が示す歩行相を検出するようにしたので、従来技術のように歩行者の姿勢を検出するための各種のセンサを設けなくて済み、従来技術に比してコストアップや装置の大型化を回避又は抑制することができる。
【0100】
本件は、前記実施形態に代えて、或いは前記実施形態に加えて次のような変形形態も採用可能である。
【0101】
[1]各歩行相における理想的な歩行姿勢を示した画像を理想画像として図略の記憶部に予め記憶しておき、図12に示すように、撮像部3により撮影画像が得られると、表示部6は、その撮影画像と、該撮影画像が示す歩行相についての理想画像(撮影画像と歩行相が一致する理想画像)とを並べて表示するようにすると、適切な歩行動作を指導する指導者や歩行者等は、該歩行者の歩行動作における改善点を明確に認識することができる。なお、図12は、立脚周期、前遊脚期及び遊脚初期についての撮影画像と理想画像とを上下に並べて配置した状態で表示した画面を示している。
【0102】
[2]歩行者の歩幅を算出する機能を算出部43に搭載し、表示部6は、算出部43により算出された歩幅を表示するようにすると、指導者等は、歩行者の歩行動作を歩幅の観点から分析することができる。歩幅は、例えば、当該撮影画像と該撮影画像より1つ前に撮影された撮影画像とにおける外果のX座標同士の差分をとることで算出することができる。
【0103】
図13は、歩行者の歩幅の検出結果を表示する表示画面の一例を示す図であり、図13に示す表示画面においては、歩行者の年齢を横軸、歩幅を縦軸として、各年齢における標準的な歩幅の範囲の上限値を示したグラフL1と、各年齢における標準的な歩幅の範囲の下限値を示したグラフL2とを示した上で、算出した歩行者の歩幅とその歩行者の年齢との組み合わせに対応する点Wを示している。
【0104】
これにより、被験者や歩行者は、該歩行者の歩幅が標準的なものか否かとか標準的な範囲に含まれる場合であっても、大きい方の歩幅であるのか小さい方の歩幅であるのかなど、歩行者の歩行動作を歩幅の観点から詳細に分析することができる把握することができる。
【0105】
なお、ここでは、歩行者の歩行動作を表すための歩行パラメータの1例として歩幅を挙げ、該歩幅の検出結果と標準値とを表示部6に表示するようにしたが、その表示対象の歩行パラメータは前記歩幅に限定されず、例えば、前述の股関節角度、足関節角度、膝関節角度や歩行速度等の歩行パラメータも採用可能である。なお、歩行速度は、連続して撮影された2枚の撮影画像おける外果のX座標同士の差分をとることで算出される前記歩幅を、この2枚の撮影画像の撮影タイミングの時間差で除算することにより算出することができる。
【0106】
[3]一連の撮影画像のうち1枚の撮影画像を指定する入力を行うための入力操作部(図示せず;前記第2入力操作部に相当)を備え、該入力操作部により特定の撮影画像が1枚指定される(指定された撮影画像を指定画像という)と、図14に示すように、表示部6は、その指定画像の撮影タイミングを含む一定期間内に撮像された複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を表示部6に搭載するようにしてもよい。
【0107】
これにより、撮影画像を1枚しか表示部6に表示できない場合に比して、指導者や歩行者等は、歩行動作の遷移態様などを詳細に把握することができ、歩行者の歩行動作について詳細に分析することができる。なお、図14においては、指定画像と、該指定画像の直前及び直後にそれぞれ2回ずつ撮影して得られた4枚の撮影画像との5枚の撮影画像が、撮影順に並べて表示された表示画面を示している。
【符号の説明】
【0108】
1 歩行状態表示装置
2 マーク
3 撮像部
31 画像処理部
4 座標抽出部
41 抽出部
42 座標設定部
43 算出部
5 区分部
6 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の身体のうち予め定められた部位に装着される1又は複数のマークと、
歩行者に装着されているマークを含む光像を一定の光軸方向及び撮像範囲で繰り返し撮像し、複数の撮影画像を生成する撮像部と、
前記撮影画像ごとに前記マークをそれぞれ抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された各マークの位置を予め定められた共通の座標系の座標で表す座標設定部と、
前記座標設定部により設定された各マークについての座標を用いて、予め定められた、歩行動作を表すための歩行パラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部と、
前記各撮像画像が、予め定められた条件に基づいて複数に分割された歩行相のどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮像画像を歩行相ごとに区分する区分部と、
前記各撮影画像を前記区分部による区分結果を利用して表示する表示部と
を備える歩行状態表示装置。
【請求項2】
前記区分部は、一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする前記歩行者の歩行周期を設定し且つその1歩行周期を前記歩行パラメータについて予め定められた条件に基づいて複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出されたパラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するものである請求項1に記載の歩行状態表示装置。
【請求項3】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、時間的に連続して得られた2つの撮影画像の前記外果に装着された各マークに着目した場合に、前記各マークの前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる歩行相である初期接地を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項4】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果及び爪先を含み、
前記座標系は、鉛直方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとについての前記鉛直方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる荷重応答期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項5】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で零となる立脚中期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項6】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士との差分が1歩行周期内で最大となる立脚終期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項7】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の膝、外果及び爪先を含み、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記外果に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である足関節角度が1歩行周期内で最大となる前遊脚期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項8】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子、膝及び外果を含み、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記膝に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記膝に装着されたマークと前記大転子に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である膝関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚初期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項9】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の肩峰、大転子及び膝を含み、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記大転子に装着されたマークと前記肩峰に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である股関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚中期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項10】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び外果を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最大となる遊脚終期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項11】
前記表示部に表示させる対象の撮影画像を前記歩行相ごとに選択する入力を行うための第1入力操作部を更に備え、
前記表示部は、前記第1入力操作部により選択された歩行相の撮影画像を表示する請求項1乃至10の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【請求項12】
前記歩行相ごとに予め設けられた、理想のパラメータ値を有する理想画像を記憶する理想画像記憶部を更に備え、
前記表示部は、更に、前記撮影画像と、該撮影画像と歩行相が一致する理想画像とを併せて表示する機能を有する請求項1乃至11の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【請求項13】
年齢と歩行相との組み合わせに基づいて予め設定された、前記歩行パラメータについての標準値を記憶する標準値記憶部を更に備え、
前記表示部は、更に、前記算出部により導出されたパラメータ値と前記標準値とをグラフで表示する機能を有する請求項1乃至12の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【請求項14】
前記表示部に表示されている撮影画像の中から1枚の撮影画像を選択する入力を行うための第2入力操作部を更に備え、
前記表示部は、更に、前記第2入力操作部により1枚の撮影画像が選択されると、その撮影画像の撮影タイミングを含む一定期間内の撮像動作で得られた複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を有する請求項1乃至13の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【請求項1】
歩行者の身体のうち予め定められた部位に装着される1又は複数のマークと、
歩行者に装着されているマークを含む光像を一定の光軸方向及び撮像範囲で繰り返し撮像し、複数の撮影画像を生成する撮像部と、
前記撮影画像ごとに前記マークをそれぞれ抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された各マークの位置を予め定められた共通の座標系の座標で表す座標設定部と、
前記座標設定部により設定された各マークについての座標を用いて、予め定められた、歩行動作を表すための歩行パラメータについてのパラメータ値を撮影画像ごとに算出する算出部と、
前記各撮像画像が、予め定められた条件に基づいて複数に分割された歩行相のどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、前記パラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮像画像を歩行相ごとに区分する区分部と、
前記各撮影画像を前記区分部による区分結果を利用して表示する表示部と
を備える歩行状態表示装置。
【請求項2】
前記区分部は、一方の足の踵が歩行面に着地してからその踵が次に前記歩行面に着地するまでの期間を1単位とする前記歩行者の歩行周期を設定し且つその1歩行周期を前記歩行パラメータについて予め定められた条件に基づいて複数の歩行相に分割した場合に、前記各撮影画像がどの歩行相の歩行動作を撮像したものであるかを、当該撮影画像について算出されたパラメータ値に基づいてそれぞれ検出し、該検出結果を用いて前記各撮影画像を歩行相ごとに区分するものである請求項1に記載の歩行状態表示装置。
【請求項3】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、時間的に連続して得られた2つの撮影画像の前記外果に装着された各マークに着目した場合に、前記各マークの前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる歩行相である初期接地を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項4】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の外果及び爪先を含み、
前記座標系は、鉛直方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとについての前記鉛直方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最初に所定範囲内となる荷重応答期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項5】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で零となる立脚中期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項6】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び膝を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士との差分が1歩行周期内で最大となる立脚終期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項7】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の膝、外果及び爪先を含み、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記外果に装着されたマークと前記爪先に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記外果に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である足関節角度が1歩行周期内で最大となる前遊脚期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項8】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子、膝及び外果を含み、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記膝に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記膝に装着されたマークと前記大転子に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である膝関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚初期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項9】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の肩峰、大転子及び膝を含み、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像において、前記大転子に装着されたマークと前記膝に装着されたマークとを結ぶ線分と、前記大転子に装着されたマークと前記肩峰に装着されたマークとを結ぶ線分とを設定した場合に、それらの線分の交差角度である股関節角度が1歩行周期内で最小となる遊脚中期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項10】
前記予め定められた部位は、前記歩行者の大転子及び外果を含み、
前記座標系は、前記歩行者の歩行方向に延びる軸を座標軸として持つものであり、
前記複数の歩行相は、同一の撮影画像の前記大転子に装着されたマークと前記外果に装着されたマークとについての前記歩行方向における各座標同士の差分が1歩行周期内で最大となる遊脚終期を含む請求項1又は2に記載の歩行状態表示装置。
【請求項11】
前記表示部に表示させる対象の撮影画像を前記歩行相ごとに選択する入力を行うための第1入力操作部を更に備え、
前記表示部は、前記第1入力操作部により選択された歩行相の撮影画像を表示する請求項1乃至10の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【請求項12】
前記歩行相ごとに予め設けられた、理想のパラメータ値を有する理想画像を記憶する理想画像記憶部を更に備え、
前記表示部は、更に、前記撮影画像と、該撮影画像と歩行相が一致する理想画像とを併せて表示する機能を有する請求項1乃至11の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【請求項13】
年齢と歩行相との組み合わせに基づいて予め設定された、前記歩行パラメータについての標準値を記憶する標準値記憶部を更に備え、
前記表示部は、更に、前記算出部により導出されたパラメータ値と前記標準値とをグラフで表示する機能を有する請求項1乃至12の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【請求項14】
前記表示部に表示されている撮影画像の中から1枚の撮影画像を選択する入力を行うための第2入力操作部を更に備え、
前記表示部は、更に、前記第2入力操作部により1枚の撮影画像が選択されると、その撮影画像の撮影タイミングを含む一定期間内の撮像動作で得られた複数の撮影画像を同一画面に表示する機能を有する請求項1乃至13の何れかに記載の歩行状態表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−172394(P2010−172394A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16025(P2009−16025)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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