説明

歩行者保護のための衝突センサシステム

歩行者保護のための衝突センサシステムであって、複数の動作領域を有する少なくとも1つのホイル式スイッチ素子を備える。ホイル式スイッチ素子は、少なくとも第1の担体ホイルおよび第2の担体ホイルを少なくとも1つの第1のスペーサによってある距離に配置して備え、前記少なくとも1つの第1のスペーサが、少なくとも前記動作領域のうちの第1の部分を画定している複数の凹部を備える。それぞれの動作領域において、少なくとも2つの電極構造が、スイッチ素子の動作領域に作用する力に応答して第1および第2の担体ホイルが弾性的である担体ホイルの反力に逆らって一体に押し付けられ、所定のしきい値作動力を超えた場合に該少なくとも2つの電極構造の間に電気的な接触が確立されるように、前記第1および第2の担体ホイルの間に配置されている。本発明によれば、前記ホイル式スイッチ素子が、前記複数の動作領域のうちの第1のグループのしきい値作動力が、前記複数の動作領域のうちの第2のグループのしきい値作動力と異なるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、車両の前部に衝突する歩行者を保護するための展開可能装置の作動を生じさせるために使用される衝突センサシステムに関する。さらに詳しくは、本発明は、歩行者との衝突と他の種類の衝突との間の区別を行うため、衝突の分類に使用される衝突センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車などの自動車が歩行者に衝突する場合、結果として生じる歩行者の頭部と車両のボンネットとの間の衝突によって、ある種の負傷が生じる可能性がある。そのような負傷を最小限にするために、自動車製造会社は、自動車/歩行者の衝突の場合に歩行者を保護するために役に立つ自動車用の安全システムの開発を開始している。そのような安全システムは、例えばボンネットに取り付けられるエアバッグなどの1つ以上の能動システム、または車両の構造(例えば、ボンネット)への歩行者の衝突の激しさを最小限にするように設計されるエネルギー吸収式のボンネット板を備える。
【0003】
このような能動システムを効果的に制御するために、自動車/歩行者の衝突の発生を素早く検出できる信頼できる検出装置が必要とされることは明らかである。展開の要否の決定を、車両の前部への初期の衝突を検出した後に、きわめて短い時間のうちに行わなければならない。
【0004】
既知の衝突センサは、通常は、少なくとも1つの測定可能な特性を有する検出素子を備え、この測定可能な特性が、検出素子の変形または作動によって変化する。このような検出素子は、例えば光ファイバ検出素子または力検出素子を備え、車両の前部バンパーにおいてバンパーの前向きの領域に取り付けられ、例えばバンパーのプラスチック製または金属製の表皮の直下でバンパーの発泡体コアに取り付けられる。これら既知の衝突センサは、バンパーの変形またはセンサの作動の強度を検出することができ、したがって対象と車両との間に作用する衝突力の大きさを割り出すために使用可能である。
【0005】
歩行者との衝突と他の種類の衝突との間の区別を確実に行うために、対象と車両との間の衝突領域の幅、すなわち対象と車両との間の接触面の幅を検出すると、さらに望ましいと考えられる。現在既知のセンサはいずれも、衝突の強度よび衝突領域の横方向の広がりを検出することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善された衝突センサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、請求項1に記載の衝突センサシステムによって達成される。この歩行者保護のための衝突センサシステムは、複数の動作領域を有する少なくとも1つのホイル(箔)式スイッチ素子を備える。ホイル式スイッチ素子は、少なくとも1つの第1のスペーサによってある距離に配置された少なくとも第1の担体ホイルおよび第2の担体ホイルを備え、前記少なくとも1つの第1のスペーサが、少なくとも前記動作領域のうちの第1の部分を画定している複数の凹部を備える。それぞれの動作領域において、少なくとも2つの電極構造が、スイッチ素子の動作領域に作用する力に応答して第1および第2の担体ホイルが弾性的である担体ホイルの反力に逆らって一体に押し付けられ、所定のしきい値作動力を超えた場合に該少なくとも2つの電極構造の間に電気的な接触が確立されるように、前記第1および第2の担体ホイルの間に配置されている。本発明によれば、前記ホイル式スイッチ素子が、前記複数の動作領域のうちの第1のグループのしきい値作動力が、前記複数の動作領域のうちの第2のグループのしきい値作動力と異なるように構成される。
【0008】
第1のグループの動作領域のしきい値作動力を、第2のグループの動作領域のしきい値作動力と相違させることで、第1のグループの動作領域が、第2のグループの動作領域の感度と異なる感度を有する結果となる。その結果、しきい値作動力が小さい方のグループの動作領域が、衝突センサシステムへと作用する衝撃力に応答して動作できる一方で、他方のグループの動作領域は、衝撃力がこの他方のグループの高いしきい値作動力を超えないために、動作しない。
【0009】
好ましい実施形態においては、ホイル式スイッチ素子が、動作領域が所定の数のグループを形成し、1つのグループの動作領域が他のグループの動作領域のしきい値作動力とは異なる特定の所定のしきい値作動力を有するように構成されている。この方法で形成される作動領域のグループの数は、検出すべき対象の異なる衝撃力のレベルの数によって決定される。例えば、区別のための理由で衝撃の強度を4つの異なる力のレベルに分類しなければならない場合には、ホイル式スイッチ素子が4つのグループの動作領域を有し、これらの異なる動作領域が、しきい値作動力が種々の力のレベルの分類の境界値に一致するように寸法付けられる。衝突の強度、すなわち衝撃力の大きさを、接続された制御ユニットによって、衝突の際に作動する動作領域のグループのうちで最大のしきい値作動力を有するグループを特定することにより、検出することができる。
【0010】
すべての動作領域が単純なスイッチ素子として構成されているホイル式スイッチ素子のきわめて単純な実施形態においては、衝突領域の幅を、衝突の状況の際に作動した特定のグループの動作領域の数、およびそれらのそれぞれの車両における配置によって割り出すことができる。実際、きわめて大きな物体との衝突の場合には、横方向に隣接する動作領域の数が、小さな物体との衝突の場合に比べて大いに多くなる。このように、所定の方向における作動した動作領域の数を、衝突領域の幅に関連付けることができる。
【0011】
ホイル式スイッチ素子の動作領域のしきい値作動力を、例えばスペーサの凹部の特定の設計および寸法付け、スペーサの厚さ、動作領域の範囲における担体ホイルの特定の寸法付け、担体ホイルへの補強層の貼り付け、担体ホイル間の電極構造の特定の配置構成、など、考えられるいくつかの手段によって所望の値へと調節できることに注意すべきである。
【0012】
本発明の好ましい実施形態においては、前記複数の動作領域のうちの少なくとも1つが、直線ポテンショメータとして構成される。そのような直線ポテンショメータの第1の変形においては、前記第1の電極構造が、抵抗性の材料からなる細長いパッチを備え、このパッチの両端の端子が異なる電位へと接続され、この第1の電極構造が、前記第1の担体ホイル上に配置され、前記第2の電極構造が、前記第1の電極構造に対面する関係で前記第2の担体ホイル上に配置される導電層を備える。そのような直線ポテンショメータの他の変形においては、前記第1の電極構造が、抵抗性の材料からなる細長いパッチおよび該抵抗性の材料からなる細長いパッチから直角に延びる多数の導電路を備え、この第1の電極が、前記第1の担体ホイル上に配置され、前記抵抗性の材料からなる細長いパッチの両端の端子が異なる電位へと接続され、前記第2の電極構造が、バス電極と該バス電極から直角に延びる複数の導電路とを有するくし状の電極を備え、この第2の電極構造が、前記第1の電極構造の前記導電路と該電極構造の前記導電路とが交互の関係に配置されるように、前記第1の担体ホイル上に配置され、短絡(shunt)要素を備える第3の電極構造が、前記第1および第2の電極構造の前記導電路に対面する関係で前記第2の担体ホイル上に配置されている。
【0013】
両方の実施形態において、直線ポテンショメータの出力端子の信号が、直線ポテンショメータが作動した領域の位置および幅を表わしている。したがって、車両に適切に配置されているならば、これらの直線ポテンショメータ構成の動作領域は、単純なスイッチとして構成された動作領域のグループよりも、より良好な空間分解能にて衝突領域の位置および幅を割り出すために使用することができる。
【0014】
本発明の考えられる実施形態においては、前記複数の動作領域のうちの前記第1のグループが、前記複数の動作領域のうちの前記第2のグループに隣接して配置される。この配置構成は、例えば、動作領域の第1のグループおよび動作領域の第2のグループが、それぞれ車両のバンパーに沿った列に配置されて、動作領域の第1のグループが動作領域の第2のグループの上方に配置されているような配置構成であってよい。他の実施形態においては、前記複数の動作領域のうちの前記第1のグループおよび前記複数の動作領域のうちの前記第2のグループが、交互の関係で互いに隣接して配置され、例えば単一の列にて該衝突センサシステムの検出領域に規則的に分布している。
【0015】
さらなる実施形態においては、前記ホイル式スイッチ素子が、少なくとも1つの第3の担体ホイルをさらに備え、この第3の担体ホイルが、少なくとも1つの第2のスペーサによって前記第2の担体ホイルからある距離に配置され、前記少なくとも1つの第2のスペーサが、少なくとも前記動作領域のうちの第2の部分を画定する複数の凹部を備える。この場合、異なる動作領域が異なる層に配置され、前記複数の動作領域の前記第1のグループの前記少なくとも一部が、例えば前記複数の動作領域の前記第2のグループの上に配置される。本実施形態の変形においては、前記動作領域の前記第2の部分が、既に述べたように直線ポテンショメータとして構成される。
【0016】
さらに他の実施形態においては、前記複数の動作領域のそれぞれが、直線ポテンショメータとして構成され、これらの直線ポテンショメータが、異なるしきい値作動力を呈するように構成される。直線ポテンショメータについて上述の両方の変形が可能であることは理解できる。
【0017】
ホイル式スイッチ素子が、好ましくは車両のバンパーの外皮層の下方に配置されることに注意すべきである。好ましい実施形態においては、衝突センサシステムが、複数の動作領域をそれぞれが有する複数のホイル式スイッチのセンサを備え、該ホイル式の圧力センサが、横方向に延びるように車両のバンパーの外皮層の下方に横並びで配置されている。前記複数のホイル式スイッチ素子を、例えば共通の担体ホイルを使用して製造することができる。
【0018】
局地的な入力をスイッチ素子の全領域へと分布させるために、衝突センサシステムは、好ましくは前記ホイル式スイッチ素子に組み合わせられたアクティベーション層を備え、このアクティベーション層が、該スイッチ素子に作用する力を前記複数の動作領域の間に分配する。このアクティベーション層によれば、ホイル式のスイッチ層の一部分に局所的に作用する力が、ホイル式スイッチ素子の前記動作領域の全体へと伝えられ、しきい値作動力を超えるすべての動作領域が確実に作動する。
【0019】
本発明が、添付の図面を参照して行われるいくつかの実施形態(本発明がこれらの実施形態に限られるわけではない)についての以下の説明から、さらに明らかになる。
【0020】
本発明は、衝突現象の分類を可能にするために車両と衝突物との間の衝突に関する特定のパラメータ(衝突の強度および衝突領域の幅など)を検出するため、自動車のバンパーまわりに一体化される衝突センサシステムに関する。そのようなセンサシステムは、所与の衝突物について、時間に対する実効の力荷重の位置および横方向の分布を同時に測定する。取得されるデータに基づき、さらなるアルゴリズムが、歩行者を識別して専用の安全手段を作動させるために、衝突物の特定の分類を可能にする。
【0021】
典型的な自動車用バンパー10の形状が、自動車と衝突物12との間の衝突プロセスを概略的に説明する図1に描かれている。自動車用バンパー10は、エネルギー吸収媒体16によって裏打ちされた弾性外皮材料14と剛体クロス・ビーム18とで構成されている。衝突物12を識別するために、力検出システムを、バンパーの外皮14とクロス・ビーム18との間に組み込まなければならない。衝突センサシステムが、衝突の位置および実効の衝突力の横方向の分布を測定する。一般に、これらの値は、衝突相手のそれぞれの質量、材料パラメータ、幾何学的寸法、および速度に依存して決まる。
【0022】
衝突センサシステム100の実施形態が、図2に概略的に示されている。図示の衝突センサは、自動車用バンパーの全長Lに及ぶように寸法付けられた積層ホイル片を備える。積層ホイル片は、共通の担体ホイル上に製造される3つのホイル式スイッチ素子20、22、および24を含み、これらのスイッチ素子が、動作時に車両のバンパーに沿って横並びに配置されている。
【0023】
ホイル式スイッチ素子は、典型的には、スペーサ30によってある特定の間隔に配置された第1の担体ホイル26および第2の担体ホイル28を備える(図4も参照のこと)。スペーサ30は、スイッチ素子の動作領域32を画定する種々の形状(ここでは、矩形の形状a、bである)の複数の凹部構造を備える。それぞれの動作領域において、少なくとも2つの電極構造34および36が、担体ホイル26、28が押し合わされた場合に2つの電極構造34および36の間に電気的な接触が確立されるように、前記第1および第2の担体ホイル26および28上に配置されている。
【0024】
図2に示した衝突センサにおいて、それぞれのスイッチ素子20、22、または24は、種々の動作感度の比較的小さなスイッチ式センサ・セル38からなる一式を、直線ポテンショメータとして機能する(種々の感度の)細長い力検出領域40に組み合わせて備える。スイッチ式のセンサ・セル38は、種々のしきい値作動力を有する単純な膜スイッチとして構成されている。一般に、スイッチ・セルの電極間に接触を確立するために必要とされる正味の力は、担体ホイルおよびスペーサ材料に依存して決まり、さらに作動するセンサ・セルの形状に依存して決まる。所与の材料の組み合わせにおいて、単純にそれぞれの動作領域の形状を変更するだけで、個々の位置について明確な作動しきい値を設定することができる。これが、図3に、異なるサイズを有する動作領域38、38、38によって概略的に示されている。
【0025】
直線ポテンショメータのセルは、細長い形状を有し、図4の右側部分に示されているように構成することができる。担体ホイル26に配置される第1の電極構造42が、抵抗性材料44からなる細長いパッチを備え、その両端の端子46および48が、異なる電位へと接続されている。第2の電極構造50は、前記第1の電極構造42に対面する関係で担体ホイル28上に配置された導電層を備える。
【0026】
(衝突によって)局所的に外力が加わる場合、担体ホイルが機械的に接触するため、両方の種類のセンサ38および40が電気信号をもたらす。一般に、このような接触を確立させるために必要とされる正味の力は、ホイルおよびスペーサの材料ならびに作動するセンサ・セルの形状に依存して決まる。所与の材料の組み合わせにおいて、単純にそれぞれの動作領域の形状を変更するだけで、個々の位置に明確な作動しきい値を設定することができる。
【0027】
したがって、このようなセンサ片の各位置における検出感度を、所与のバンパー長さにわたって変化している剛性に応じて調節することができる。
【0028】
このセンサシステムは、車両のバンパー10との衝突の際に衝突物12を分類するための直接的な方法を提供する。人間などの衝突(交通弱者)を誤用から区別することによって、歩行者保護システムを適切に展開することができる。衝突の検出は、一般に、センサシステム100を、車両の前端の発泡状または熱可塑性のショックアブソーバ10に配置することによって達成される(図5を参照)。図示の実施形態においては、衝突センサ100が、エネルギー吸収媒体16と剛体クロス・ビーム18との間に配置されている。
【0029】
衝突の際、衝突物12が、バンパーの外皮14をz(s,t)だけ変形させ、下方のエネルギー吸収媒体16を圧縮する。この圧縮は、横方向の位置s(t)に依存する。衝突の検出が、システムへと加わる圧縮力F(z)が1つ以上の特定のしきい値レベルF(N=1、・・・n)を超えた場合に動作する1つ以上のスイッチ式センサ38または直線ポテンショメータ・セル40によって達成される。
【0030】
様々な作動しきい値を実現することで、伝達される衝突モーメント/エネルギーの速度および質量依存性を考慮に入れることが可能になる。さらに、クラッシュ(すなわち、大きな質量の衝突)の検出のために特定のしきい値レベルFcrashを定めることが可能である。少なくとも1つのアナログ・センサ(作動しきい値がF<Fである直線ポテンショメータ)が存在することで、衝突についてさらなる幾何学的情報がもたらされる。このような直線ポテンショメータは、加わる力の変化を抵抗の変化に変換する。これらの抵抗値の読み取りが、衝突領域の幅s(t)および衝突の位置(衝突の中心点)についての指標をもたらす。この位置情報が、バンパーの剛性が局所的に変化する場合のソフトウェアにもとづくデータ較正のための追加の入力をもたらす。衝突物の最終的な分類のために、アルゴリズムが、上述のすべてのセンサから時間に対するすべての信号を入力として取り入れる。
【0031】
スイッチ式センサ38ならびにポテンショメータ40を、3層の積層(基板−スペーサ−基板)に組み立てることができ、個々の動作領域の形状を調節(図2および3に示されているように)することによって(種々のバンパー位置に)種々の作動レベルを画定することができることに注目すべきである。これらの実施形態において、動作領域の第1のグループが、動作領域の第2のグループの垂直上方に配置される。
【0032】
さらに、5層の積層が、同じ検出位置において2つの作動しきい値を実現するというさらなる利点をもたらす(2重スイッチ式/2重ポテンショメータ式、またはポテンショメータ−スイッチ式;図6を参照)。
【0033】
積層片におけるスイッチ式センサ・セルおよびポテンショメータの横方向の分布を、柔軟なままに保つことが可能である。図2に示した全体配置に加えて、種々の作動レベルの複数のポテンショメータ構造を、種々の衝突力において衝突の位置および幅を時間に対して測定するために使用することができる。ポテンショメータ領域を導入することによって、より複雑な複数衝突も検出可能である(複数のポテンショメータからなる構成を示している図7、および複数領域のポテンショメータからなる構成を示している図8を参照)。
【0034】
種々のスイッチ・センサ・セル38および/またはポテンショメータ・セル40を適切に構成することで、このようなセンサ片の個々の場所における検出感度を、所与のバンパー長さにおける剛性の変化に応じて調節できることを理解されたい。例えば、動作時にバンパーの側方のあたりに配置されることになる動作領域に、バンパーの角部分の高い剛性に合わせて特別に調節した感度を有することができ、すなわちバンパーの中央付近に配置される類似の動作領域の感度と異なる感度を有することができる。この構成は、図8に示した衝突センサの実施形態においては、直線ポテンショメータ・セル40および40のしきい値作動力が、対応する直線ポテンショメータ・セル40または40のしきい値作動力とそれぞれ異なることを意味する。
【0035】
衝突センサのさらなる実施形態においては、バンパーの特定の領域に組み合わせられるホイル式スイッチ素子が、第1のしきい値作動力を有する少なくとも第1の複数の直線ポテンショメータ・セル40を備え、これら複数の直線ポテンショメータ・セル40が、バンパーの前記領域に沿って横並びに配置されている。複数の直線ポテンショメータ・セルが横並びに配置されているため、この衝突センサは、衝突領域の検出のための空間分解能が高いという特徴を有し、したがって衝突領域のサイズについて精密な検出が可能であり、さらには接触領域の具体的形態についても精密な検出が可能である。
【0036】
一般に、単一の直線ポテンショメータ・セルにおいては、直線ポテンショメータが作動される最も外側の位置の間の距離だけしか割り出すことができない。これは、バンパーの全領域にわたって広がる単一の直線ポテンショメータ・セルでは、遠く離れた衝突位置を呈する衝突の状況、すなわち人間の2本の離れた脚の衝突が、2つの最も外側の作動位置の間に広がる単一の大きな検出領域として検出されることを意味する。
【0037】
複数の直線ポテンショメータ・セルが特定のバンパー領域に組み合わせられているセンサによれば、遠く離れた2つの衝突領域のそれぞれが、複数の直線ポテンショメータ・セルのうちの1つ以上によって個別に検出され、したがって上述の衝突の状況を正しく判断することができる。衝撃力が特に2つの直線ポテンショメータ・セルの間に作用する場合、すなわち衝突領域が2つ以上の直線ポテンショメータ・セルにまたがって広がる場合には、別個の直線ポテンショメータ・セルにおいて作動した個々の表面を合計することによって衝突領域を割り出すことができることに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】いわゆる実験室系(外部参照系)における自動車のバンパーと衝突物との間の衝突を記述するパラメータを概略的に説明する。
【図2】衝突センサシステムの実施形態を示す。
【図3】異なる感度を有するスイッチ式センサ・セルの一部分(図2のA)および細長い力検出領域(図2のB)の拡大図を示す。
【図4】スイッチ式センサ・セルのグループおよび直線ポテンショメータ・セルの断面を示す。
【図5】衝突センサを備えた自動車バンパーへの衝突の事象を概略的に示す。
【図6】動作領域が異なる層に配置されている衝突センサの種々の実施形態を示す。
【図7】1つのホイル式スイッチ・センサを有し、このホイル式スイッチ・センサが異なる作動しきい値を有する2つの直線ポテンショメータ・セルを備える衝突センサの実施形態を示す。
【図8】3つのホイル式スイッチ・センサを有し、そのそれぞれが異なる作動しきい値を有する2つの直線ポテンショメータ・セルを備える衝突センサの実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者保護のための衝突センサシステムであって、
複数の動作領域を有する少なくとも1つのホイル式スイッチ素子を備え、
前記ホイル式スイッチ素子が、少なくとも1つの第1のスペーサによってある距離に配置された少なくとも第1の担体ホイルおよび第2の担体ホイルを備え、
前記少なくとも1つの第1のスペーサが、少なくとも前記動作領域のうちの第1の部分を画定している複数の凹部を備え、
それぞれの動作領域において、少なくとも2つの電極構造が、スイッチ素子の動作領域に作用する力に応答して前記第1および第2の担体ホイルが弾性的である担体ホイルの反力に逆らって一体に押し付けられ、所定のしきい値作動力を超えた場合に前記少なくとも2つの電極構造の間に電気的な接触が確立されるように、前記第1および第2の担体ホイルの間に配置され、
前記ホイル式スイッチ素子が、前記複数の動作領域のうちの第1のグループのしきい値作動力が、前記複数の動作領域のうちの第2のグループのしきい値作動力と異なるように構成されている衝突センサシステム。
【請求項2】
前記複数の動作領域のうちの少なくとも1つが、直線ポテンショメータとして構成され、
前記第1の電極構造が、抵抗性の材料からなる細長いパッチを備え、前記パッチの両端の端子が異なる電位へと接続され、前記第1の電極構造が、前記第1の担体ホイル上に配置され、
前記第2の電極構造が、前記第1の電極構造に対面する関係で前記第2の担体ホイル上に配置される導電層を備える、請求項1に記載の衝突センサシステム。
【請求項3】
前記複数の動作領域のうちの少なくとも1つが、直線ポテンショメータとして構成され、
前記第1の電極構造が、抵抗性の材料からなる細長いパッチおよび前記抵抗性の材料からなる細長いパッチから直角に延びる多数の導電路を備え、前記第1の電極が、前記第1の担体ホイル上に配置され、前記抵抗性の材料からなる細長いパッチの両端の端子が異なる電位へと接続され、
前記第2の電極構造が、バス電極と前記バス電極から直角に延びる多数の導電路とを備えるくし状の電極を備え、前記第2の電極構造が、前記第1の電極の前記導電路と前記電極構造の前記導電路とが交互の関係に配置されるように、前記第1の担体ホイル上に配置され、
短絡要素を備える第3の電極構造が、前記第1および第2の電極構造の前記導電路に対面する関係で前記第2の担体ホイル上に配置されている、請求項1に記載の衝突センサシステム。
【請求項4】
前記複数の動作領域のうちの前記第1のグループが、前記複数の動作領域のうちの前記第2のグループに隣接して配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝突センサシステム。
【請求項5】
前記複数の動作領域のうちの前記第1のグループおよび前記複数の動作領域のうちの前記第2のグループが、交互の関係で互いに隣接して配置され、前記衝突センサシステムの検出領域に規則的に分布している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の衝突センサシステム。
【請求項6】
前記ホイル式スイッチ素子が、少なくとも1つの第3の担体ホイルをさらに備え、前記第3の担体ホイルが、少なくとも1つの第2のスペーサによって前記第2の担体ホイルからある距離に配置され、前記少なくとも1つの第2のスペーサが、少なくとも前記動作領域のうちの第2の部分を画定している複数の凹部を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の衝突センサシステム。
【請求項7】
前記動作領域のうちの前記第2の部分が、直線ポテンショメータとして構成されている、請求項6に記載の衝突センサシステム。
【請求項8】
前記複数の動作領域のそれぞれが、直線ポテンショメータとして構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の衝突センサシステム。
【請求項9】
前記ホイル式スイッチ素子が、車両のバンパーの外皮層の下方に配置されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の衝突センサシステム。
【請求項10】
複数の動作領域をそれぞれが有する複数のホイル式スイッチ素子を備え、前記ホイル式の圧力センサが、横方向に延びるように車両のバンパーの外皮層の下方に横並びで配置されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の衝突センサシステム。
【請求項11】
前記複数のホイル式スイッチ素子が、共通の担体ホイルを使用して製造されている、請求項10に記載の衝突センサシステム。
【請求項12】
前記ホイル式スイッチ素子に組み合わせられたアクティベーション層をさらに備え、前記アクティベーション層が、前記スイッチ素子に作用する力を前記複数の動作領域の間に分配するためのものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の衝突センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−536753(P2008−536753A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507080(P2008−507080)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061701
【国際公開番号】WO2006/111558
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(503150594)アイイーイー インターナショナル エレクトロニクス アンド エンジニアリング エス.エイ. (56)
【氏名又は名称原語表記】IEE INTERNATIONAL ELECTRONICS & ENGINEERING S.A.