説明

歩行者保護装置

【課題】歩行者の体格に適切に対応した保護を可能とする歩行者保護装置を得る。
【解決手段】フロントバンパ16の両サイドには車両上下方向へ伸び出し可能とされた左右一対のアッパ側ポール20及びロア側ポール22が配設されている。アッパ側ポール20間にはアッパ側保護ネット36が張設されており、又ロア側ポール22間にはロア側保護ネット38が張設されている。大柄な体格の歩行者14Aの場合にはアッパ側及びロア側の双方が展開し、小柄な体格の歩行者14Bの場合にはロア側のみが展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者との前面衝突時に歩行者を保護するための歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者との前面衝突時に歩行者をフードとの関係で保護する技術が盛んに開発されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、歩行者との前面衝突時にフードの上面に左右二つの薄型直方体形状のエアバッグを隣接して展開させると共に、左右のエアバッグの隣接する面に接着テープ等をそれぞれ貼着しておき、両者が風圧等によって離間するのを防止する技術が開示されている。
【0004】
上記構成によれば、歩行者との前面衝突時、歩行者をフード上に展開させたマット状のエアバッグで受け止めることにより、フードに当接した際の衝撃を吸収することができるというものである。
【特許文献1】特開平7−232615号公報
【特許文献2】特開2004−142732号公報
【特許文献3】特開平8−258667号公報
【特許文献4】特開2000−255350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術による場合、歩行者の体格に適切に対応した保護をすることまでは困難である。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、歩行者の体格に適切に対応した保護を可能とする歩行者保護装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る歩行者保護装置は、車体前部の所定位置から車両上方側及び車両下方側に展開可能に格納されると共に柔軟性を有する歩行者保護部材を備えた歩行者保護装置であって、車両前方側の所定範囲内に歩行者が存在する場合に当該歩行者の体格を検知する歩行者体格検知手段を備えており、歩行者体格検知手段による検知結果に基づいて歩行者保護部材を車両上方側及び車両下方側のいずれか一方又は双方へ選択的に展開させる、ことを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項1記載の発明において、前記歩行者体格検知手段は、歩行者の身長を検知する、ことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項2記載の発明において、前記歩行者の身長が所定値未満の場合には前記歩行者保護部材を車両下方側へのみ展開させ、前記歩行者の身長が所定値以上の場合には前記歩行者保護部材を車両上方側及び車両下方側の双方へ展開させる、ことを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記歩行者保護部材は、フロントエンド部の両サイドに車両上下方向へ伸縮可能に設けられ、歩行者体格検知手段によって歩行者が検知されていない場合には当該フロントエンド部の両サイドに格納されており、歩行者体格検知手段によって歩行者が検知された場合には車両上下方向へ伸び出す左右一対の棒状の支持部材と、これらの支持部材間に張設された柔軟性を有する張設部材と、を含んで構成されている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記歩行者保護部材には、歩行者を受け止めた後に当該歩行者が路面に落下するのを防止する落下防止機能を有しているか又は落下防止手段を備えている、ことを特徴としている。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、車両前方側の所定範囲内に歩行者が存在する場合には、歩行者体格検知手段によって当該歩行者の体格が検知される。これにより、例えば、子供のように比較的小柄な体格の歩行者なのか、それとも成人男性のように比較的大柄な体格の歩行者であるのかを判別することができる。そして、比較的小柄な体格の歩行者の場合であれば、歩行者保護部材を例えば車両下方側へのみ展開させることにより、当該小柄な体格の歩行者の車体前部下方側への潜り込みを防止することができる。
【0013】
逆に、比較的大柄な体格の歩行者の場合であれば、歩行者保護部材を例えば車両上方側及び車両下方側の双方へ展開させることにより、フード上へ体が乗り上げた場合にもエネルギー吸収可能性能が発揮され、併せて車体前部下方側への潜り込みも防止することができる。このように歩行者の体格に応じて歩行者保護部材を選択的に展開させることにより、歩行者の体格に適した保護性能が発揮される。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、歩行者体格検知手段が歩行者の身長を検知するものであるため、比較的容易に検知することができる。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、歩行者の身長が所定値未満の場合には、歩行者保護部材を車両下方側へのみ展開させる。歩行者の身長が所定値以上の場合には、歩行者保護部材を車両上方側及び車両下方側の双方へ展開させる。従って、車種ごとに異なる車体前部の車高やバンパとの接触範囲(歩行者とバンパとの車両上下方向のオーバーラップ量)等を考慮して、基準となる所定値の値を最適化するだけで、歩行者保護装置を適用(共用)することができる。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、歩行者体格検知手段によって歩行者が検知されていない場合には、左右一対の棒状の支持部材はフロントエンド部の両サイドに格納されている。従って、張設部材も非張設状態にある。
【0017】
この状態から歩行者体格検知手段によって歩行者の体格が検知されると、その体格に応じて左右一対の支持部材が車両上方側及び車両下方側の一方又は双方へ伸び出され、これに伴い支持部材間に張設部材が張設される。これにより、歩行者は張設部材に受け止められることでエネルギー吸収される。
【0018】
特に張設部材は柔軟性を有するので、例えば、比較的大柄な体格の歩行者であった場合に、フード上へ乗り上がった際の姿勢に拘わらず、柔軟に受け止めることができる。
【0019】
請求項5記載の本発明によれば、歩行者保護部材は歩行者を受け止めた後に当該歩行者が路面に落下するのを防止する落下防止機能を有しているか又は落下防止手段を備えているので、歩行者が路面から大きな荷重を受けることはない。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る歩行者保護装置は、車両前方側の所定範囲内に歩行者が存在する場合に当該歩行者の体格を検知する歩行者体格検知手段を備えており、歩行者体格検知手段による検知結果に基づいて歩行者保護部材を車両上方側及び車両下方側のいずれか一方又は双方へ選択的に展開させるようにしたので、歩行者の体格に適切に対応した保護が可能になるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項2記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項1記載の発明において、歩行者体格検知手段が歩行者の身長を検知するものであるため、比較的容易に検知することができる割には実際の体格とのずれが生じ難いという優れた効果を有する。
【0022】
請求項3記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項2記載の発明において、歩行者の身長が所定値未満の場合には歩行者保護部材を車両下方側へのみ展開させ、歩行者の身長が所定値以上の場合には歩行者保護部材を車両上方側及び車両下方側の双方へ展開させることとしたので、基準となる所定値の値を最適化するだけで、種々の車種に歩行者保護装置を適用することができ、その結果、歩行者保護装置の共通化によるコストダウンを図ることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項4記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明において、フロントエンド部の両サイドに車両上下方向へ伸縮可能に設けられ、歩行者体格検知手段によって歩行者が検知されていない場合には当該フロントエンド部の両サイドに格納されており、歩行者体格検知手段によって歩行者が検知された場合には車両上方側及び車両下方側の一方又は双方へ伸び出す左右一対の棒状の支持部材と、これらの支持部材間に張設された柔軟性を有する張設部材と、を含んで前述した歩行者保護部材を構成したので、張設部材の柔軟性を利用して歩行者を柔軟に保護することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項5記載の本発明に係る歩行者保護装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明において、歩行者保護部材は歩行者を受け止めた後に当該歩行者が路面に落下するのを防止する落下防止機能を有しているか又は落下防止手段を備えているので、歩行者が路面に落下することはなく、その結果、歩行者に落下荷重が入力されるのを防止することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る歩行者保護装置の一実施形態について説明する。なお、これらの図において示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0026】
図1及び図2には、本実施形態に係る歩行者保護装置10が作動した状態が側面図と正面図で示されている。なお、図1は車両12が比較的大柄な体格の歩行者14Aに衝突する前の状態を描いたものであり、図2は車両12が当該歩行者14Aに衝突した後の状態を描いたものである。また、図3には、本実施形態に係る歩行者保護装置10が別の態様で作動した状態が側面図と正面図で示されている。なお、図3は車両12が比較的小柄な体格の歩行者14Bに衝突した後の状態を描いたものである。さらに、図4には、本実施形態に係る歩行者保護装置10の要部を抽出した斜視図が示されている。
【0027】
これらの図に示されるように、歩行者保護装置10は、フロントエンド部としてのフロントバンパ16内に設けられている。具体的には、フロントバンパ16は、意匠面を構成するフロントバンパカバー18と、その車両後方側に配置されて車両幅方向に沿って延在する図示しない長尺状のフロントバンパリインフォースメントと、このフロントバンパリインフォースメントの前面側に配置されてフロントバンパリインフォースメントに沿って車両幅方向に延在する図示しないエネルギー吸収材と、を含んで構成されている。なお、エネルギー吸収部材はフォーム材等の弾性材料によって構成されている。
【0028】
上述したフロントバンパリインフォースメントは高強度の部材であり、その長手方向の両端部付近にはアッパ側歩行者保護装置10Aの一部を構成する支持部材としての左右一対のアッパ側ポール20と、ロア側歩行者保護装置10Bの一部を構成する支持部材としての左右一対のロア側ポール22が同軸上に配置されている。
【0029】
図4に示されるように、アッパ側ポール20及びロア側ポール22はいずれも竿状に構成されており、その軸線方向(車両上下方向)へ伸縮可能とされている。アッパ側ポール20は、ポールを構成する要素(筒体)がロア側ポール22よりも多く設定されている。従って、車両上方側へ伸び出されるアッパ側ポール20の方が、車両下方側へ伸び出されるロア側ポール22よりも伸長時の長さが長くなるように設定されている。
【0030】
なお、上記アッパ側ポール20及びロア側ポール22の底面は閉止されており、伸長時に最上部又は最下部を構成する先端筒部は蓋体24、40によって閉止されている。これらの合計4個のアッパ側ポール20及びロア側ポール22の最も大径なアッパ側基部20A及びロア側基部22Aは、フロントバンパリインフォースメントの長手方向の両端部付近に形成されかつ上下方向に貫通する図示しない貫通孔内へ挿入された状態で溶接又は固定具で固定されている。
【0031】
また、各アッパ側基部20A及びロア側基部22Aの外周面(後部側)には、有底円筒状のアッパ側インフレータ26及びロア側インフレータ28がそれぞれ軸直角方向(半径方向後側)に固着されている。アッパ側インフレータ26はロア側インフレータ28よりも大型に形成されており、前面衝突時に噴出するガス量が多くなるように設定(ガス発生剤封入タイプであればガス発生剤の封入量が多い)されている。上記各アッパ側インフレータ26及びロア側インフレータ28は、図示しないコンソールボックス下方等に設置された歩行者体格検知手段としてのセンタコントロールユニット32に接続されている。
【0032】
また、センタコントロールユニット32には、フロントバンパ16の中央部等に配置された歩行者体格検知手段としてのプリクラッシュセンサ34が接続されている。プリクラッシュセンサ34はミリ波レーダやカメラ等によって構成されており、衝突体との衝突を予め検知するようになっている。
【0033】
センタコントロールユニット32では、プリクラッシュセンサ34からの入力信号に基づいて、歩行者14との衝突であるのか、それとも相手車両等との衝突であるのかといった事項の他、歩行者14との衝突である場合には当該歩行者14の身長の測定値に基づいて比較的大柄な体格の歩行者14Aとの衝突であるのか、それとも比較的小柄な体格の歩行者14Bとの衝突であるのかが判定可能とされている。
【0034】
また、左右一対のアッパ側ポール20の先端部間には、展開形状が矩形平面状とされた張設部材としてのアッパ側保護ネット36が張設されている。同様に、左右一対のロア側ポール22の先端部間には、展開形状が矩形平面状とされかつ展開高さがアッパ側保護ネット36よりも低い張設部材としてのロア側保護ネット38が張設されている。これらのアッパ側保護ネット36及びロア側保護ネット38は柔軟な材料によって構成されており、歩行者保護装置10の非作動時においては前述したフロントバンパ16の構成要素の一つであるエネルギー吸収部材の上面等に折り畳み状態で格納されている。例えば、エネルギー吸収部材を側面視で車両後方側が開放された断面コ字状に形成し、その上面にアッパ側保護ネット36を折り畳み状態で載置させ、高さ方向中間部の凹部内にロア側保護ネット38を折り畳み状態で収容するといったかたちで格納されている。
【0035】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0036】
通常の車両走行時においては、歩行者保護装置10は非作動状態に維持される。また、プリクラッシュセンサ34によって相手車両やポール等との衝突が予測された場合も、歩行者保護装置10は非作動状態に維持される。
【0037】
一方、プリクラッシュセンサ34によって歩行者14との衝突が予測されると、センタコントロールユニット32によってその歩行者14が比較的大柄な体格の歩行者14Aであるのか、それとも比較的小柄な体格の歩行者14Bであるのかが判定される。その際、プリクラッシュセンサ34から入力された信号に基づいて、歩行者14の身長が測定(検知)され、例えば、身長が160cm未満であった場合には、比較的小柄な体格の歩行者14Bであると判定され、身長が160cm以上であった場合には、比較的大柄な体格の歩行者14Aであると判定される。
【0038】
そして、比較的小柄な体格の歩行者14Bと判定された場合には、図3に示されるように、センタコントロールユニット32によってロア側インフレータ28のみに作動信号が送られる。これにより、左右のロア側インフレータ28が作動し、所定量のガスをロア側ポール22のロア側基部22A内へ噴出する。ロア側ポール22の軸方向の両端部は閉止されているので、ガスが供給されることにより、ロア側ポール22は車両下方側へと伸長される。なお、伸長時のロア側ポール22の長さは、先端部の蓋体40がタイヤ42の接地面(路面)44に接触しない程度となるように予め設定されている。
【0039】
左右のロア側ポール22が伸長されると、これに伴って折り畳み状態で格納されていたロア側保護ネット38がフロントバンパ16内から引き出されて左右のロア側ポール22間に張設される。これにより、フロントバンパ16の下面16Aから接地面44までの隙間46にロア側保護ネット38が張設され、比較的小柄な体格の歩行者14Bはロア側保護ネット38に掬い取られるようにして受け止められる。その結果、比較的小柄な体格の歩行者14Bの車体前部下方側への潜り込みを防止することができると共に接地面(路面)44から落下荷重を受けるのを防止することができる。
【0040】
逆に、比較的大柄な体格の歩行者14Aと判定された場合には、図2に示されるように、センタコントロールユニット32によってアッパ側インフレータ26及びロア側インフレータ28の両方に作動信号が送られる。これにより、左右のアッパ側インフレータ26が作動し、所定量のガスがアッパ側ポール20のアッパ側基部20A内へ噴出される。アッパ側ポール20の軸方向の両端部は閉止されているので、ガスが供給されることにより、アッパ側ポール20は車両上方側へと伸長される。
【0041】
左右のアッパ側ポール20が伸長されると、これに伴って折り畳み状態で格納されていたアッパ側保護ネット36がフロントバンパ16内から引き出されて左右のアッパ側ポール20間に張設される。これにより、フロントバンパ16の上方にアッパ側保護ネット36が張設される。その結果、比較的大柄の歩行者14Aはアッパ側保護ネット36に包み込まれるようにしてフード48上へ乗り上げる。従って、当該歩行者14Aがフード48から受ける反力が軽減される。またこの際、左右のアッパ側ポール20が図2(B)に示されるように、フード48上でクロスするように弾性変形することにより、所定のエネルギー吸収もなされる。
【0042】
なお、伸長時のアッパ側ポール20の長さは、左右のアッパ側ポール20間に張設されたアッパ側保護ネット36の略中央部に比較的大柄な体格の歩行者14Aが倒れ込んできた場合に、当該歩行者14Aを包み込むことができる程度のアッパ側保護ネット36の面積及び形状が最初に決定され、そのアッパ側保護ネット36の上下方向の幅から決められる。
【0043】
同時に、前述した図3の場合と同様に、左右のロア側ポール22も伸長されてロア側保護ネット38が張設されるため、当該歩行者14Aが車体前部下方側へ潜り込むのを防止することができる。
【0044】
このように本実施形態に係る歩行者保護装置10では、歩行者14の体格に応じてアッパ側保護ネット36及びロア側保護ネット38を選択的に展開させることにより、歩行者14の体格に適切に対応した保護が可能になる。
【0045】
また、本実施形態に係る歩行者保護装置10では、アッパ側ポール20、アッパ側インフレータ26、アッパ側保護ネット36から成るアッパ側歩行者保護装置10Aと、ロア側ポール22、ロア側インフレータ28、ロア側保護ネット38から成るロア側歩行者保護装置10Bとからシステムが構成されているため、歩行者14の体格を検知してアッパ側歩行者保護装置10A及びロア側歩行者保護装置10Bを選択的に使用することにより、装置を無駄に作動させるのを回避することができる。従って、歩行者保護装置10の作動後に実際に使用した歩行者保護装置10A、10Bのみを交換すればよいので、交換コストを削減することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る歩行者保護装置10では、歩行者14の身長を検知して当該歩行者14の体格を判定することとしたので、比較的容易に検知することができる割には実際の体格とのずれが生じ難いというメリットがある。
【0047】
さらに、本実施形態に係る歩行者保護装置10では、歩行者14の身長が所定値未満の場合には、ロア側歩行者保護装置のみを作動させ、歩行者14の身長が所定値以上の場合には、アッパ側歩行者保護装置とロア側歩行者保護装置の双方を作動させる構成としたので、車種ごとに異なる車体前部の車高やフロントバンパ16との接触範囲(歩行者14とフロントバンパ16との車両上下方向のオーバーラップ量)等を考慮して、基準となる所定値の値を最適化するだけで、歩行者保護装置10を適用することができる。その結果、本実施形態によれば、歩行者保護装置10の共通化によるコストダウンを図ることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る歩行者保護装置10では、アッパ側保護ネット36及びロア側保護ネット38がネット状の柔軟性を有する部材で構成されているため、素材の柔軟性を利用して、特に比較的大柄な体格の歩行者14Aを柔軟に保護することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る歩行者保護装置10では、図2(B)に示されるように、アッパ側ポール20が弾性変形可能な竿状に構成されているおり、左右のアッパ側ポール20間に張設されたアッパ側保護ネット36の略中央部に比較的大柄な体格の歩行者14Aを受け止めた際に、左右のアッパ側ポール20がフード中央で交差するように撓んで当該歩行者14Aを包み込むようにしているので、当該歩行者14Aを受け止めた後に当該歩行者14Aがフード48の上面から接地面(路面)44に落下するのを防止することができる。その結果、本実施形態によれば、当該歩行者14Aに落下荷重が入力されるのを防止することができる。この点は、ロア側歩行者保護装置10Bについても同様に当てはまる。
【0050】
〔本実施形態の補足説明〕
なお、上述した本実施形態では、比較的小柄な体格の歩行者14Bの場合にはロア側保護ネット38を車両下方側へ展開させ、比較的大柄な体格の歩行者14Aの場合にはアッパ側保護ネット36を車両上方側へ展開させると共にロア側保護ネット38をも車両下方側へ展開させる制御をしたが、これに限らず、例えば、前者の場合にアッパ側保護ネット36をも車両上方側へ展開させる制御をしてもよいし、又後者の場合にアッパ側保護ネット36のみを車両上方側へ展開させる制御をしてもよい。
【0051】
また、上述した本実施形態では、歩行者保護部材としてネットを使用したが、これに限らず、柔軟性を有するものであればよく、布状又はシート状のものを用いてもよい。
【0052】
さらに、上述した本実施形態では、アッパ側ポール20及びロア側ポール22を伸張させるのにアッパ側インフレータ26及びロア側インフレータ28を用いたが、これに限らず、圧縮コイルスプリング等の付勢手段を使ったものでもよいし、油圧シリンダ等の油圧駆動手段を用いたものを使ってもよい。
【0053】
また、上述した本実施形態では、歩行者14の身長を測定(検知)し、身長を基準にして歩行者14の体格を判定する構成を採ったが、これに限らず、歩行者14の画像(シルエット)から当該歩行者14の体格を判定してもよいし、それ以外の基準に従って歩行者14の体格を判定してもよい。
【0054】
さらに、上述した本実施形態では、左右のアッパ側ポール20の撓みと柔軟に変形可能なアッパ側保護ネット36自体が有する弾性や柔軟性によって落下防止機能が実現される構成を採ったが、これに限らず、別個に落下防止手段を設定してもよい。
【0055】
また、上述した本実施形態では、インフレータを合計4個使用する構成を採ったが、これに限らず、種々の態様を採ることが可能である。例えば、左右のアッパ側インフレータ26を一つのインフレータにまとめて上下二個使うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(A)、(B)は本実施形態に係る歩行者保護装置が作動した状態(比較的大柄な体格の歩行者と衝突する前の状態)を示す側面図と正面図である。
【図2】(A)、(B)は本実施形態に係る歩行者保護装置が作動した状態(比較的大柄な体格の歩行者と衝突した後の状態)を示す側面図と正面図である。
【図3】(A)、(B)は本実施形態に係る歩行者保護装置が作動した状態(比較的小柄な体格の歩行者と衝突した後の状態)を示す側面図と正面図である。
【図4】本実施形態に係る歩行者保護装置の要部を抽出して描いた斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
10 歩行者保護装置
10A アッパ側歩行者保護装置
10B ロア側歩行者保護装置
12 車両
14 歩行者
14A 比較的大柄な体格の歩行者
14B 比較的小柄な体格の歩行者
16 フロントバンパ(フロントエンド部)
20 アッパ側ポール(支持部材、歩行者保護部材、落下防止手段)
22 ロア側ポール(支持部材、歩行者保護部材、落下防止手段)
26 アッパ側インフレータ
28 ロア側インフレータ
32 センタコントロールユニット(歩行者体格検知手段)
34 プリクラッシュセンサ(歩行者体格検知手段)
36 アッパ側保護ネット(張設部材、歩行者保護部材、落下防止手段)
38 ロア保護ネット(張設部材、歩行者保護部材、落下防止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の所定位置から車両上方側及び車両下方側に展開可能に格納されると共に柔軟性を有する歩行者保護部材を備えた歩行者保護装置であって、
車両前方側の所定範囲内に歩行者が存在する場合に当該歩行者の体格を検知する歩行者体格検知手段を備えており、
歩行者体格検知手段による検知結果に基づいて歩行者保護部材を車両上方側及び車両下方側のいずれか一方又は双方へ選択的に展開させる、
ことを特徴とする歩行者保護装置。
【請求項2】
前記歩行者体格検知手段は、歩行者の身長を検知する、
ことを特徴とする請求項1記載の歩行者保護装置。
【請求項3】
前記歩行者の身長が所定値未満の場合には前記歩行者保護部材を車両下方側へのみ展開させ、
前記歩行者の身長が所定値以上の場合には前記歩行者保護部材を車両上方側及び車両下方側の双方へ展開させる、
ことを特徴とする請求項2記載の歩行者保護装置。
【請求項4】
前記歩行者保護部材は、
フロントエンド部の両サイドに車両上下方向へ伸縮可能に設けられ、歩行者体格検知手段によって歩行者が検知されていない場合には当該フロントエンド部の両サイドに格納されており、歩行者体格検知手段によって歩行者が検知された場合には車両上下方向へ伸び出す左右一対の棒状の支持部材と、
これらの支持部材間に張設された柔軟性を有する張設部材と、
を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の歩行者保護装置。
【請求項5】
前記歩行者保護部材には、歩行者を受け止めた後に当該歩行者が路面に落下するのを防止する落下防止機能を有しているか又は落下防止手段を備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の歩行者保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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