説明

歩行解析システムおよび歩行解析方法

【課題】測定場所の制限がなく、下肢の関節の動作を把握可能で、歩行状態をより細かく評価することができる歩行解析システムおよび歩行解析方法を提供する。
【解決手段】各測定センサS1〜S7が、歩行者1の両足の股関節、膝関節および足関節を挟むよう取り付けられ、歩行者1の歩行時の角速度および加速度を測定して測定データを出力する。歩行解析部12が、測定センサS1〜S7から出力された測定データを受信し、受信した測定データに基づいて、歩行者1の股関節、膝関節および足関節の関節角度を求め、さらに、それ以外の歩行情報も求める。歩行解析部12は、関節角度とそれ以外の歩行情報との関係に基づいて、歩行者1の歩行状態の評価を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行解析システムおよび歩行解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行解析システムとして、歩行者をカメラで撮影して解析を行う三次元動作解析装置がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、三次元動作解析装置は、非常に高価で、計測の準備や解析に多くの時間および労力を要する。加えて、カメラ等の機器の設置場所に制約が生じるため、計測場所が装置を設置した実験室等に限定され、歩行者に日常の歩行とは異なる感覚、意識が発生し、歩行結果に違いが出る可能性がある。
【0003】
このような問題を解決するため、歩行者のつま先やかかと付近に、加速度や角速度を測定する歩行センサを取り付けて計測し、そのデータに基づいて歩行解析を行う歩行解析システムが提案されている(例えば、特許文献2乃至4参照)。この歩行解析システムは、歩行センサを歩行者に装着するだけで計測可能であり、計測場所が制限されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−344418号公報
【特許文献2】特開2008−161227号公報
【特許文献3】特開2008−161228号公報
【特許文献4】特開2008−173365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2乃至4に記載の従来の歩行解析システムは、歩行センサをつま先やかかと等の足首より先端側に取り付けるため、足首より先の部分の動きしか計測することができず、下肢の各関節の動作を把握することはできないという課題があった。このため、関節を含めたより細かな歩行状態の評価を行うことができないという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、測定場所の制限がなく、下肢の関節の動作を把握可能で、歩行状態をより細かく評価することができる歩行解析システムおよび歩行解析方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る歩行解析システムは、歩行者の右足もしくは左足の少なくともいずれか一方の股関節、膝関節または足関節を挟むよう取り付けられ、前記歩行者の歩行時の角速度または加速度の少なくともいずれか一方を測定して測定データを出力する測定センサと、前記測定センサから出力された前記測定データを受信し、受信した前記測定データに基づいて、前記歩行者の股関節、膝関節または足関節の関節角度を求め、求められた前記関節角度に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価可能に構成された歩行解析部とを、有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る歩行解析方法は、歩行者の右足もしくは左足の少なくともいずれか一方の股関節、膝関節または足関節を挟む位置で、前記歩行者の歩行時の角速度または加速度の少なくともいずれか一方を測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定された測定データに基づいて、前記歩行者の股関節、膝関節または足関節の関節角度を求める歩行情報計算ステップと、前記歩行情報計算ステップで求められた前記関節角度に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価する評価ステップとを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る歩行解析システムおよび歩行解析方法は、歩行者の股関節、膝関節または足関節の関節角度を求めることにより、少なくともいずれかの下肢の関節の動作を把握することができる。また、関節を挟む位置で測定された角速度または加速度の少なくともいずれか一方の測定データから、測定位置の動きも把握することができるため、関節の動作と合わせて歩行者の歩行状態をより細かく評価することができる。測定位置に、角速度または加速度の少なくともいずれか一方を測定可能な測定センサを取り付けるだけで測定が可能であり、歩行者への負荷が小さく、測定場所の制限がない。
【0010】
本発明に係る歩行解析システムおよび歩行解析方法は、関節角度を含む複数の評価指標を同時に測定可能であるため、下肢の空間的な動きを測定して解析することができ、歩行者の足の動きを3次元的に把握することができる。本発明に係る歩行解析システムおよび歩行解析方法によれば、例えば、下肢不自由者の補装具や義肢(義足)の装着前後の変化、それらの調整前後の変化、歩行リハビリの訓練前後の変化、長期間経過前後の変化等を、定量的に比較して評価することができる。これにより、補装具や義肢(義足)の選定や調整の支援、リハビリ訓練の評価支援等を行うことができる。
【0011】
測定センサは、角速度または加速度の少なくともいずれか一方の3次元でのデータを測定可能であることが好ましい。測定センサからの測定データを、歩行者に装着されたデータロガー等の中継器に送信して記憶媒体に一旦記憶し、測定終了後に記憶媒体から測定データを回収して歩行解析部で解析を行ってもよい。また、中継器から無線で、歩行解析部に測定データを送信してもよい。測定センサから直接、無線で歩行解析部に測定データを送信してもよい。中継器や無線を利用することにより、測定時の歩行者への負荷をさらに軽減することができる。
【0012】
本発明に係る歩行解析システムで、前記歩行解析部は、前記測定データに基づいて、前記関節角度を含む複数の歩行情報を求め、求められた前記歩行情報の内、前記関節角度とそれ以外の所定の歩行情報との関係に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価可能に構成されていることが好ましい。本発明に係る歩行解析方法で、前記歩行情報計算ステップは、前記測定データに基づいて、前記関節角度を含む複数の歩行情報を求め、前記評価ステップは、前記歩行情報計算ステップで求められた前記歩行情報の内、前記関節角度とそれ以外の所定の歩行情報との関係に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価することが好ましい。この場合、関節角度とそれ以外の所定の歩行情報との関係に基づいて歩行者の歩行状態を評価することにより、各歩行情報で独立に評価を行っていた場合と比べて、より微妙な歩行状態の変化を把握することができ、歩行状態をより細かく評価することができる。
【0013】
また、本発明に係る歩行解析システムで、前記歩行解析部は、求められた前記関節角度と前記所定の歩行情報との関係を、あらかじめ求められた健常者の歩行時の股関節、膝関節または足関節の関節角度と所定の歩行情報との関係と比較して、前記歩行者の歩行状態を評価可能に構成されていてもよい。本発明に係る歩行解析方法で、前記評価ステップは、前記歩行情報計算ステップで求められた前記関節角度と前記所定の歩行情報との関係を、あらかじめ求められた健常者の歩行時の股関節、膝関節または足関節の関節角度と所定の歩行情報との関係と比較して、前記歩行者の歩行状態を評価してもよい。この場合、健常者と比較することにより、下肢不自由者等の歩行状態を健常者に近づけるための支援を行うことができる。また、健常者との歩行状態のずれから、被測定者である歩行者の身体の異常を把握することができる。
【0014】
本発明に係る歩行解析システムで、前記測定センサは、前記歩行者の腰、両足の大腿部、両足の下腿部、両足の足背部に取り付けられ、前記歩行者の歩行時の角速度および加速度を測定可能であり、前記歩行解析部は、前記歩行者の両足の股関節、膝関節および足関節の関節角度を求めるよう構成されていてもよい。本発明に係る歩行解析方法で、前記測定ステップは、前記歩行者の腰、両足の大腿部、両足の下腿部、両足の足背部で、前記歩行者の歩行時の角速度および加速度を測定し、前記歩行情報計算ステップは、前記歩行者の両足の股関節、膝関節および足関節の関節角度を求めてもよい。この場合、下肢全体の動作を把握することができ、さらに詳細に歩行状態を評価することができる。
【0015】
7つの測定センサのうちの1または複数を用いることにより、関節角度情報として、股関節角度、膝関節角度、足関節角度、股関節最大屈曲角度、股関節最大伸展角度、立脚期膝関節ダブルニーアクション時角度、遊脚期膝関節最大屈曲角度、遊脚期足関節最大底屈角度を、歩行事象情報として、踵離床、爪先離床、踵接地、爪先接地、遊脚期、立脚期、静止、立脚期時間、遊脚期時間を、歩行状態情報として、ストライド長(瞬時値、平均値)、歩行速度(瞬時値、平均値)、歩数、歩行率(瞬時値、平均値)などの歩行情報を求めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定場所の制限がなく、下肢の関節の動作を把握可能で、歩行状態をより細かく評価することができる歩行解析システムおよび歩行解析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の歩行解析システムの(a)使用状態を示す側面図、(b)変形例の使用状態を示す側面図である。
【図2】図1に示す歩行解析システムの(a)測定センサの取付状態を示す側面図、(b)測定センサを取り付けるための伸縮性バンドを示す正面図、(c)測定センサを取り付けるための伸縮性サポーターを示す斜視図である。
【図3】図1に示す歩行解析システムの全体構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す歩行解析システムの測定センサの(a)低域通過フィルタを有する構成を示すブロック図、(b)低域通過フィルタを有しない構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す歩行解析システムのデータロガーの構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示す歩行解析システムの歩行解析部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態の歩行解析システムおよび歩行解析方法により求められた(a)左下肢の関節角度の特徴点の1歩毎の変化を示すグラフ、(b)右下肢の関節角度の特徴点の1歩毎の変化を示すグラフ、(c)歩行速度の1歩毎の変化を示すグラフ、(d)ストライド長の1歩毎の変化を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態の歩行解析システムおよび歩行解析方法により定期的に測定した(a)ストライド長の変化を示すグラフ、(b)歩行速度の変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態の歩行解析システムおよび歩行解析方法により求められた、健常者の歩行時の関節角度の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態の歩行解析システムおよび歩行解析方法により求められた(a)股関節最大屈曲角度とストライド長との相関を示すグラフ、(b)股関節最大伸展角度とストライド長との相関を示すグラフ、(c)立脚期ダブルニーアクション時膝関節角度とストライド長との相関を示すグラフ、(d)膝関節遊脚期最大屈曲角度とストライド長との相関を示すグラフ、(e)足関節遊脚期最大底屈角度とストライド長との相関を示すグラフ、(f)ストライド長と歩行速度との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図10は、本発明の実施の形態の歩行解析システムおよび歩行解析方法を示している。
図1(a)に示すように、歩行解析システム10は、7つの測定センサS1,S2,S3,S4,S5,S6,S7とデータロガー11と歩行解析部12とを有している。歩行解析システム10は、被測定者である歩行者1の歩行状態を評価するために使用される。
【0019】
図1(a)に示すように、各測定センサS1〜S7は、センサの装着面に沿った互いに垂直な2つの方向(x軸方向、y軸方向)およびセンサの装着面に垂直な方向(z軸方向)の3成分の角速度および加速度を測定可能なセンサユニットから成っている。各測定センサS1〜S7は、それぞれ歩行者1の腰、両足の大腿部、両足の下腿部、両足の足背部に取り付けられている。図2(a)および(b)に示すように、歩行者1の腰、大腿部、下腿部および足背部には、伸縮性バンド21の収納ポケット21aに各測定センサS1〜S7を収納し、伸縮性バンド21を所定の取付位置に巻き付けて面ファスナー21bで固定することにより、各測定センサS1〜S7が取り付けられている。なお、図2(c)に示すように、各測定センサS1〜S7は、伸縮性サポーター22の収納ポケット22aに収納されて、伸縮性サポーター22を所定の取付位置に巻き付けて固定することにより、取り付けられていてもよい。
【0020】
図3および図4(a)に示すように、各測定センサS1〜S7は、角速度および加速度の各成分のセンサからの測定データを、低域通過フィルタ31を通した後、A/D変換器32でデジタルデータに変換し、その測定データのうち、マイコン部33で取得を要求された時刻の測定データのみを通信インターフェイス34を介して出力するようになっている。なお、図4(b)に示すように、各測定センサS1〜S7は、低域通過フィルタ31を有していなくてもよい。
【0021】
図1(a)に示すように、データロガー11は、歩行者1の腰に取り付けられ、各測定センサS1〜S7に接続されている。図3および図5に示すように、データロガー11(歩行データ計測部)は、同時刻に測定データを取得するよう、コネクタ35および通信インターフェイス36を介して、各測定センサS1〜S7にマイコン部37(データ計測部)から同期計測の制御信号を送信するようになっている。また、データロガー11は、コネクタ35および通信インターフェイス36を介して、各測定センサS1〜S7から出力された測定データを受信し、その測定データを、内蔵された記憶媒体や取り外し可能な記憶媒体等のデータ記録部38に記憶するようになっている。データロガー11は、記憶した測定データを無線で出力可能になっている。なお、データロガー11は、操作部39により、同期計測時間や測定間隔等の測定条件を入力し、その測定条件や記憶した測定データを表示部40に表示可能になっている。
【0022】
図1(a)に示すように、歩行解析部12は、コンピュータから成っている。図1(a)および図3に示すように、歩行解析部12(歩行データ解析部)は、USB等によりデータロガー11に接続したり、データロガー11からの無線出力を受信したり、データロガー11から取り外した記憶媒体を取り付けたりすることにより、データロガー11で記憶された測定データを、データ読み取り部41で取得可能になっている。図3および図6に示すように、歩行解析部12は、取得した測定データに基づいて、データ解析部42にて、歩行データ解析アルゴリズムに従って、歩行者1の両足の股関節、膝関節および足関節の関節角度や、その他の歩行情報を求めるようになっている。
【0023】
歩行解析部12は、求められた歩行情報に基づいて、歩行者1の歩行状態を評価可能に構成されている。また、歩行解析部12は、求められた歩行情報の内、関節角度とそれ以外の所定の歩行情報との関係に基づいて、歩行者1の歩行状態を評価可能に構成されている。さらに、歩行解析部12は、求められた関節角度と所定の歩行情報との関係を、あらかじめ求められた健常者の歩行時の関節角度と所定の歩行情報との関係と比較して、歩行者1の歩行状態を評価可能に構成されている。
【0024】
なお、歩行情報は、例えば、関節角度情報として、股関節角度、膝関節角度、足関節角度、股関節最大屈曲角度、股関節最大伸展角度、立脚期膝関節ダブルニーアクション時角度、遊脚期膝関節最大屈曲角度、遊脚期足関節最大底屈角度、歩行事象情報として、踵離床、爪先離床、踵接地、爪先接地、遊脚期、立脚期、静止、立脚期時間、遊脚期時間、歩行状態情報として、ストライド長(瞬時値、平均値)、歩行速度(瞬時値、平均値)、歩数、歩行率(瞬時値、平均値)などである。
【0025】
本発明の実施の形態の歩行解析方法は、歩行解析システム10により実施することができる。本発明の実施の形態の歩行解析方法は、まず、各測定センサS1〜S7により、静止時の歩行者1の腰、両足の大腿部、両足の下腿部、両足の足背部の角速度および加速度を測定し、その測定データを、データロガー11を介して歩行解析部12で取得する。歩行解析部12にて、各測定センサS1〜S7の取り付け傾斜角や、関節角度計算の初期値を計算する。
【0026】
次に、各測定センサS1〜S7により、歩行時の歩行者1の腰、両足の大腿部、両足の下腿部、両足の足背部の角速度および加速度を測定し、その測定データを、データロガー11を介して歩行解析部12で取得する。歩行解析部12で、取得した測定データに基づいて、関節角度情報、歩行事象情報および歩行状態情報を求める。例えば、関節角度情報として、歩行解析部12で、測定センサS1およびS2から左足関節角度、測定センサS2およびS3から左膝関節角度、測定センサS3およびS7から左股関節角度、測定センサS4およびS5から右足関節角度、測定センサS5およびS6から右膝関節角度、測定センサS6およびS7から右股関節角度を求める。また、測定センサS1またはS2から左脚歩行事象情報、測定センサS4またはS5から右脚歩行事象情報、測定センサS1から左脚の歩行状態情報、測定センサS4から右脚の歩行状態情報を求める。
【0027】
歩行解析部12で、関節角度とそれ以外の所定の歩行情報との関係に基づいて、歩行者1の歩行状態の評価を行う。これにより、各歩行情報で独立に評価を行っていた場合と比べて、より微妙な歩行状態の変化を把握することができ、歩行状態をより細かく評価することができる。また、歩行解析部12で、関節角度と所定の歩行情報との関係を、あらかじめ求められた健常者の関節角度と所定の歩行情報との関係と比較して、歩行者1の歩行状態を評価する。これにより、下肢不自由者等の歩行状態を健常者に近づけるための支援を行うことができる。また、健常者との歩行状態のずれから、被測定者である歩行者1の身体の異常を把握することもできる。
【0028】
本発明の実施の形態の歩行解析システム10および歩行解析方法は、関節角度を含む複数の評価指標を同時に測定可能であるため、下肢全体の空間的な動きを測定して解析することができる。このため、歩行者1の足の動きを3次元的に把握することができ、詳細に歩行状態を評価することができる。測定位置に、各測定センサS1〜S7を取り付けるだけで測定が可能であり、歩行者1への負荷が小さく、測定場所の制限がない。
【0029】
本発明の実施の形態の歩行解析システム10および歩行解析方法によれば、下肢不自由者の補装具や義肢(義足)の装着前後の変化、それらの調整前後の変化、歩行リハビリの訓練前後の変化、長期間経過前後の変化等を、定量的に比較して評価することができる。これにより、補装具や義肢(義足)の選定や調整の支援、リハビリ訓練の評価支援等を行うことができる。これらの支援は、これまで、専門家の知識と経験に基づく判断により行われており、定量的評価に基づく方法は用いられていなかったが、本発明により、定量的な評価に基づいて行うことが可能である。
【0030】
本発明の実施の形態の歩行解析システム10および歩行解析方法により求められた歩行情報の一例を、図7に示す。また、期間をあけて定期的に測定した歩行情報の一例を、図8に示す。図7に示すように、関節角度の特徴点や歩行速度、ストライド長などについて、1歩毎の変動を比較して評価することができる。また、1歩毎に左右の差を比較することもできる。図8に示すように、同一条件での測定を定期的に行うことにより、ストライド長や歩行速度などの変化を、左右を比較しながら評価することができる。
【0031】
健常者の各関節角度を計測した例を、図9に示す。また、健常者の各関節角度の特徴点とストライド長との関係を求めた例を、図10(a)〜(e)に示す。健常者の歩行速度とストライド長との関係を求めた例を、図10(f)に示す。図10(a)〜(e)に示すように、健常者では、歩行時に各関節角度の特徴点とストライド長との間に、相関係数(R)が0.7以上の相関関係が認められる。また、図10(f)に示すように、健常者では、歩行時にストライド長と歩行速度との間にも、相関係数(R)が0.9以上の相関関係が認められる。
【0032】
これらの健常者の相関関係と、被測定者である歩行者1の測定結果とを比較することにより、歩行者1の歩行状態を評価することができる。また、健常者の相関関係と比較することにより、補装具や義肢(義足)の選定や調整が適切であるかどうかの評価、リハビリ訓練の評価などを行うこともできる。このように、複数の歩行情報間での相関関係に基づいて評価を行うことにより、各歩行情報で独立に評価を行っていた場合と比べて、より微妙な歩行状態の変化を把握することができ、歩行状態をより細かく評価することができる。
【0033】
なお、図1(b)に示すように、歩行解析システム10は、データロガー11を有さずに、測定センサS1〜S7から直接、無線で歩行解析部12に測定データを送信してもよい。この場合、測定時の歩行者1への負荷をさらに軽減することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 歩行者
10 歩行解析システム
S1,S2.S3,S4,S5,S6,S7 測定センサ
11 データロガー
12 歩行解析部
21 伸縮性バンド
21a 収納ポケット
21b 面ファスナー
22 伸縮性サポーター
22a 収納ポケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の右足もしくは左足の少なくともいずれか一方の股関節、膝関節または足関節を挟むよう取り付けられ、前記歩行者の歩行時の角速度または加速度の少なくともいずれか一方を測定して測定データを出力する測定センサと、
前記測定センサから出力された前記測定データを受信し、受信した前記測定データに基づいて、前記歩行者の股関節、膝関節または足関節の関節角度を求め、求められた前記関節角度に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価可能に構成された歩行解析部とを、
有することを特徴とする歩行解析システム。
【請求項2】
前記歩行解析部は、前記測定データに基づいて、前記関節角度を含む複数の歩行情報を求め、求められた前記歩行情報の内、前記関節角度とそれ以外の所定の歩行情報との関係に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価可能に構成されていることを、特徴とする請求項1記載の歩行解析システム。
【請求項3】
前記歩行解析部は、求められた前記関節角度と前記所定の歩行情報との関係を、あらかじめ求められた健常者の歩行時の股関節、膝関節または足関節の関節角度と所定の歩行情報との関係と比較して、前記歩行者の歩行状態を評価可能に構成されていることを、特徴とする請求項2記載の歩行解析システム。
【請求項4】
前記測定センサは、前記歩行者の腰、両足の大腿部、両足の下腿部、両足の足背部に取り付けられ、前記歩行者の歩行時の角速度および加速度を測定可能であり、
前記歩行解析部は、前記歩行者の両足の股関節、膝関節および足関節の関節角度を求めるよう構成されていることを、
特徴とする請求項1、2または3記載の歩行解析システム。
【請求項5】
歩行者の右足もしくは左足の少なくともいずれか一方の股関節、膝関節または足関節を挟む位置で、前記歩行者の歩行時の角速度または加速度の少なくともいずれか一方を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定された測定データに基づいて、前記歩行者の股関節、膝関節または足関節の関節角度を求める歩行情報計算ステップと、
前記歩行情報計算ステップで求められた前記関節角度に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価する評価ステップとを、
有することを特徴とする歩行解析方法。
【請求項6】
前記歩行情報計算ステップは、前記測定データに基づいて、前記関節角度を含む複数の歩行情報を求め、
前記評価ステップは、前記歩行情報計算ステップで求められた前記歩行情報の内、前記関節角度とそれ以外の所定の歩行情報との関係に基づいて前記歩行者の歩行状態を評価することを、
特徴とする請求項5記載の歩行解析方法。
【請求項7】
前記評価ステップは、前記歩行情報計算ステップで求められた前記関節角度と前記所定の歩行情報との関係を、あらかじめ求められた健常者の歩行時の股関節、膝関節または足関節の関節角度と所定の歩行情報との関係と比較して、前記歩行者の歩行状態を評価することを、特徴とする請求項6記載の歩行解析方法。
【請求項8】
前記測定ステップは、前記歩行者の腰、両足の大腿部、両足の下腿部、両足の足背部で、前記歩行者の歩行時の角速度および加速度を測定し、
前記歩行情報計算ステップは、前記歩行者の両足の股関節、膝関節および足関節の関節角度を求めることを、
特徴とする請求項5、6または7記載の歩行解析方法。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−343(P2012−343A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139926(P2010−139926)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興委託事業 先進予防型健康社会創成クラスター構想(時空を超えたユビキタスな健康管理環境技術の確立)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】