説明

歩行計

【課題】日常の歩行の特徴から測定対象者の体力年齢を推定することができる歩行計を提供することにある。
【解決手段】測定対象者Mの体幹の中央部に装着された歩行計は、演算部4が2軸の加速度センサ2の検出加速度から測定対象者が歩行状態であるか否かを判断するとともに、歩行状態おいて、1日の中で数回一定時間内における進行方向の加速度の変動平均Sxと、横方向の加速度の変動平均Syとからその比(Rxy=Sy/Sx)を求め、その求めた比Rxyと、記憶部3に記憶されている相関関係とから当該測定対象者Mの体力年齢を推定する処理を行い、その推定結果を表示部5で表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体力年齢を測定する歩行計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、健康上或いは医療的に有用で意味のある情報を得る装置として、身体の所定部位の動作を検出する装置が提供されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に開示されている装置は、身体の所定の部位に装着した振動ジャイロなどの運動センシングモジュールによって運動情報を得て測定対象者の身体の状況や運動の程度を得るものである。
【特許文献1】特開2001−198110公報(段落番号0032、0038)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人は高齢になって脚力が弱ってくると、足の蹴りの力が弱くなり、歩幅が減少する。また、転倒を防ぐために、足底の中心に重心がくるような動きとなり、摺り足歩行と呼ばれる歩行となるといわれている。このような日常の歩行の特徴を捉えて脚力の低下(体力年齢)を測定する装置が希求されているが、上述の特許文献1に開示されている上述の特許文献1に開示されている装置では、身体の運動の特徴を捉えることができるものの、歩行の特徴を詳細に捉えて脚力の低下などを知ることはできなかった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、日常の歩行の特徴から測定対象者の体力年齢を推定することができる歩行計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、測定対象者に装着され、測定対象者の体幹の進行方向の加速度変化及び、横方向又は鉛直方向の加速度変化を検出するセンサと、予め測定された進行方向の加速度、横方向又は鉛直方向の加速度変化、年齢との相関関係を記憶した記憶部と、前記センサで検出した進行方向変化と、横方向変化の比と、前記記憶部に記憶している相関関係から体力年齢を推定する手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、年齢とともに歩行状態が進行方向の変化よりも横方向の変化が大きくなるという特徴を捉えて体力年齢を測定することができるもので、測定対象者の日常の歩行活動から簡単に測定できるため、筋力測定等のように測定対象者に負担を強いることもない。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記変化の比とは、進行方向の加速度変化を横方向の加速度変化で除したものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、前記変化の比とは、横方向の加速度変化を3軸の加速度のベクトルの大きさで除したものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、前記変化の比とは、進行方向の加速度変化を3軸の加速度のベクトルの大きさで除したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、年齢とともに歩行状態が進行方向の変化よりも横方向の変化が大きくなるという特徴を捉えて体力年齢を推定することができるもので、測定対象者の日常の歩行活動から簡単に測定できるため、筋力測定等のように測定対象者に負担を強いることもないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず本発明の原理について簡単に説明する。
【0013】
2軸の加速度センサを人の体幹の中心付近に装着して歩行を行って貰い、体幹の進行方向と横方向の或る一定時間の加速度の変動平均Sx<進行方向>、Sy<横方向>を下式のように標準偏差として求め、それらの変動の状態を65歳以上の高齢者と、65歳未満の若齢者とで比較してみた。
【0014】
【数1】

【0015】
図Aは比較のために、行方向の加速度変動を縦軸に、横方向の加速度変動を縦軸にとり、高齢者(◆)、若齢者(×)別にプロットしたものである。
【0016】
この図Aから、高齢者の方の傾き(I)が若齢者の傾き(II)よりも傾きが大きく、高齢者になると進行方向の加速度変動よりも横方向の変動の増加が大きいことがわかる。従って横方向の平均変動Syを進行方向の平均変動Sxで除する形で求める比(Rxy=Sy/Sx)と年齢或いは他の体力測定項目から推定される体力年例の関係は年齢の増加に従い、Rxyが増加することがわかる。
【0017】
横方向に代えて鉛直方向の加速度の変動においても同様な結果が得られることが確認できた。
【0018】
そこで、本発明では、進行方向の加速度変化と横方向(又は鉛直方向)の加速度変化との比(Rx/Ry)と年齢との相関関係を予め求めて、この相関関係をテーブル或いは近似式として標準的なデータベースとして備え、測定対象者に装着した加速度センサの検出情報から求まる進行方向の加速度変動と横方向(又は鉛直方向)の加速度変動との比と、相関関係から当該測定対象者の体力年齢を推定するのである。
【0019】
以下本発明の実施形態を説明する。
(実施形態1)
本実施形態の歩行計1は、図1(a)に示すように2軸の加速度センサ2と、上述の相関関係のデータベースとして予め記憶している記憶部3と、加速度センサ2の検出加速度と記憶部3の相関関係のデータとから体力年齢を推定する処理を行う演算部4と、演算部4で推定された体力年齢を表示する表示部5と、電池電源6とからなり、図1(b)に示す筐体7にこれら回路構成要素を内蔵するとともに、表示部5の表示面及び電源スイッチSWの操作部を筐体7の前面に露出させている。
【0020】
このように構成された本実施形態の歩行計1は、図1(c)に示すように測定対象者の腰部に巻き付けるベルト8の中央部に設けたポケット部9内に収納し、図1(d)に示すように測定対象者Mの体幹の中央部(正面側又は背面)に配されるようにベルト8により測定対象者Mnに装着される。尚10はベルト8の一端部側に設けた面状ファスナーであって、ベルト8の他端側に設けた受け側の面状ファスナー(図示せず)と結合するようになっている。
【0021】
而して、歩行計1は図1(d)のようにベルト8で測定対象者Mの体幹の中央部(正面又は背面)に装着され、電源スイッチSWがオンされると、演算部4が2軸の加速度センサ2の検出加速度の変化から測定対象者Mが歩行状態であるか否かを判断するとともに、歩行状態おいて、1日の中で数回一定時間内における進行方向(前方方向)の加速度の変動平均Sxと、体幹の横方向の加速度の変動平均Syとからその比(Rxy=Sy/Sx)を求め、その求めた比Rxyと、記憶部3に記憶されている相関関係とから当該測定対象者Mの体力年齢を推定する処理を行い、その推定結果を表示部5で表示する。これにより測定対象者Mは自己の体力年齢を知り、健康に対する注意をはらうことができることになる。
(実施形態2)
上記実施形態1では加速度センサ2として2軸の加速度センサを用いているが、本実施形態では加速度センサ2として3軸の加速度センサを用い、演算部4では、加速度センサ2からの3軸の検出加速度から3軸加速度のベクトルの大きさ(ノルム)を求め、下式のように横方向の加速度の平均変動Syをノルムの平均変動(√(Sx+Sy+Sz)で徐することで比(Rny)を下式のように求める演算を行い、この比(Rny)と、記憶部3に記憶されている相関関係とから体力年齢を推定する処理を行う点で実施形態1と相違する。尚横方向の代わりに進行方向の速度度の平均変動Sxを用いても良い。
【0022】
【数2】

【0023】
尚平方根をとらず、
Rn=Sy/(Sx+Sy+Sz
としても同様に体力年齢の推定に用いることができる。
【0024】
ところで、高齢者になると摺り足方向となるため、上下動が少なくなることから、横方向の加速度の平均変動Syに代えて鉛直方向の加速度の平均変動Szを用いて上述の比を求めるようにしても良い。
【0025】
この場合は当然記憶部3に記憶させる年齢との相関関係に用いる比は横方向の代わりに鉛直方向を用いて求めた比とする。
【0026】
また加速度センサの代わりに2軸以上の角速度を検出する角速度センサや、体幹の前後軸(進行方向)を中心としたロール方向の角速度と進行方向の加速度を夫々別個のセンサを用い、上述のいうな比を求めて年齢との相関関係から体力年齢の推定を行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は実施形態1の回路構成図、(b)は実施形態1の外観斜視図、(c)は実施形態1を装着するためのベルトの一部省略せる斜視図、(d)は実施形態1の使用状態図である。
【図2】本発明の原理説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 加速度センサ
2 記憶部
3 演算部
4 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者に装着され、測定対象者の体幹の進行方向の加速度変化及び、横方向又は鉛直方向の加速度変化を検出するセンサと、予め測定された進行方向の加速度、横方向又は鉛直方向の加速度変化、年齢との相関関係を記憶した記憶部と、前記センサで検出した進行方向変化と、横方向変化の比と、前記記憶部に記憶している相関関係から体力年齢を推定する手段とを備えていることを特徴とする歩行計。
【請求項2】
前記変化の比とは、進行方向の加速度変化を横方向の加速度変化で除したものであることを特徴とする請求項1記載の歩行計。
【請求項3】
前記変化の比とは、横方向の加速度変化を3軸の加速度のベクトルの大きさで除したものであることを特徴とする請求項1記載の歩行計。
【請求項4】
前記変化の比とは、進行方向の加速度変化を3軸の加速度のベクトルの大きさで除したものであることを特徴とする請求項1記載の歩行計。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−89703(P2007−89703A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280940(P2005−280940)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】