説明

歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法

【課題】被訓練者の身体的状態に応じて2台以上の歩行訓練装置を用いること無く包括的な歩行訓練を行うことができる歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法を提供する。
【解決手段】被訓練者の通常の歩行速度を歩行速度測定工程により測定し且つ被訓練者により選択された環状ベルトの負荷トルク(段階)を測定しておき、前記通常の歩行速度並びに負荷トルク(段階)を基準として環状ベルトの回転速度及び負荷トルクを変化させた状態で第1及び第2(トレーニング)工程を実行すると共に、回動中の環状ベルトの減速率をランダムな時間間隔で変化させる第3(トレーニング)工程を実行することにより、被訓練者の身体状態に応じた歩行訓練及び転倒予防訓練を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行訓練のリハビリテーションに好適な歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法に係り、特に被訓練者の身体状態に応じた歩行訓練及び転倒予防訓練を行うことができる歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被訓練者の右足用・左足用に分離された環状ベルトを有し、左右の環状ベルトが別々に設定された速度で駆動され、片足麻痺の患者でも環状ベルトの速度に歩調を合わせ立位での歩行訓練を行うことができる歩行訓練装置が下記特許文献により提案され、特に特許文献5には、被訓練者の歩行機能及び生態情報を測定する測定手段と、歩行訓練装置による訓練の条件(例えば左右の環状ベルト毎の速度や訓練時間等の各種条件)を設定する動作条件設定手段と、前記測定手段により測定した測定結果や動作条件等を演算してグラフ化及び数値化して表示する表示手段とを備え、訓練計画に応じた訓練結果を介護士等が容易に訓練の処方判断の支援を行う技術が記載されている。
【特許文献1】特開平7−124208号公報
【特許文献2】特開2002−278855号公報
【特許文献3】特開2002−306628号公報
【特許文献4】特開2002−336315号公報
【特許文献5】特開2002−245994号公報
【特許文献6】特開平8−141025号公報
【特許文献7】特開平8−141027号公報
【特許文献8】特開平10−099390号公報
【特許文献9】特開平10−243979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術による歩行訓練装置は、予め定められた訓練計画に沿って訓練を行うと共に、被訓練者の訓練結果を目視により容易に理解できるように表示する技術が記載されているものの、当該訓練方法の立案、訓練装置の調整・運用・管理を、介護士等が被訓練者毎に訓練毎に設定する必要があり、介護士等の作業を必要とするという問題があった。
【0004】
更に従来技術による歩行訓練方法では、歩行訓練装置がほぼ単一機能のために、老人介護施設等において包括的なリハビリを行う場合、複数の装置を併用する必要があり、前記訓練方法の立案、訓練装置の調整・運用・管理に対して介護士等の作業が必要となるという問題があった。
【0005】
本願発明の目的は、前述の従来技術による問題を解決することであり、被訓練者の身体的状況に応じて好適な歩行訓練を容易に行うことができる歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、環状ベルトの回動及びトルクを制御するベルト駆動制御手段と、前記環状ベルトの回転速度を測定する速度測定手段と、前記環状ベルトの負荷トルクを測定する負荷トルク測定手段と、前記ベルト駆動制御手段と速度測定手段と負荷トルク測定手段を制御する制御手段とを備え、前記環状ベルト上を被訓練者が歩行することにより歩行訓練を行う歩行訓練装置であって、
前記制御手段が、
前記被訓練者が前記環状ベルト上を歩行したときのベルト速度を被訓練者の歩行標準速度として速度測定手段により測定する歩行速度測定工程と、
該歩行速度測定工程により測定した歩行標準速度から30%乃至40%減速したベルト駆動速度を下限とし且つ歩行標準速度を上限として、前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトの回動速度の減衰率を変化させる第1工程と、
前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトへ複数段階の負荷トルクを与え、前記環状ベルト上を歩行した被訓練者により選択された負荷トルクの段階を負荷トルク測定手段により測定する負荷トルク測定工程と、
該負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準とし、且つ前記評価工程により検出した歩行標準速度で前記環状ベルトを回動する第2工程と、
前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準として前記環状ベルトを回動し、且つ前記回動中の環状ベルトの前記減衰率をランダムな時間間隔で変化させる第3工程とを実行することを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、前記第1の特徴の歩行訓練装置の制御手段が、第1工程において、前記環状ベルトを、前記減衰率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度から10%乃至30%加速する加速率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で所定時間駆動する工程とを実行することを第2の特徴とし、前記何れかの特徴の歩行訓練装置の制御手段が、第2工程において、前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階から1又は2段階低い負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程と、前記負荷測定工程により測定した段階の負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程とを実行することを第3の特徴とし、前記何れかの特徴の歩行訓練装置の制御手段が、第3工程において、前記加速率の範囲で環状ベルトを所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で環状ベルトを所定時間駆動する工程とを実行することを第4の特徴とする。
【0008】
また本発明は、環状ベルトの回動及びトルクを制御するベルト駆動制御手段と、前記環状ベルトの回転速度を測定する速度測定手段と、前記環状ベルトの負荷トルクを測定する負荷トルク測定手段と、前記ベルト駆動制御手段と速度測定手段と負荷トルク測定手段を制御する制御手段とを備え、前記環状ベルト上を被訓練者が歩行することにより歩行訓練を行う歩行訓練装置の制御方法であって、
前記制御手段が、
前記被訓練者が前記環状ベルト上を歩行したときのベルト速度を被訓練者の歩行標準速度として速度測定手段により測定する歩行速度測定工程と、
該歩行速度測定工程により測定した歩行標準速度から30%乃至40%減速したベルト駆動速度を下限とし且つ歩行標準速度を上限として、前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトの回動速度の減衰率を変化させる第1工程と、
前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトへ複数段階の負荷トルクを与え、前記環状ベルト上を歩行した被訓練者により選択された負荷トルクの段階を負荷トルク測定手段により測定する負荷トルク測定工程と、
該負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準とし、且つ前記評価工程により検出した歩行標準速度で前記環状ベルトを回動する第2工程と、
前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準として前記環状ベルトを回動し、且つ前記回動中の環状ベルトの前記減衰率をランダムな時間間隔で変化させる第3工程とを実行することを第5の特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記特徴の歩行訓練装置の制御方法の制御手段が、第1工程において、前記環状ベルトを、前記減衰率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度から10%乃至30%加速する加速率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で所定時間駆動する工程とを実行することを第6の特徴とし、前記何れかの特徴の歩行訓練装置の制御方法の制御手段が、第2工程において、前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階から1又は2段階低い負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程と、前記負荷測定工程により測定した段階の負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程とを実行することを第7の特徴とし、前記何れかの特徴の歩行訓練装置の制御方法の制御手段が、第3工程において、前記加速率の範囲で環状ベルトを所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で環状ベルトを所定時間駆動する工程とを実行することを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法は、前記歩行速度測定工程により測定した被訓練者の通常の歩行標準速度並びに前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準として環状ベルトの回動速度及び負荷トルクを変化させた状態で歩行訓練を行うことにより、被訓練者の身体状態及び歩行能力に応じた歩行訓練を実行することができ、且つ前記第3期トレーニング工程により回動中の環状ベルトの減速率をランダムな時間間隔で変化させる制御により、被訓練者の歩行訓練及び転倒予防訓練を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による歩行訓練装置及び該歩行訓練装置の制御方法を説明する。図1は、本実施形態による歩行訓練装置の制御回路を示す図、図2は、本実施形態による歩行訓練装置の制御回路の全体動作を示す図、図3は、本実施形態による歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法の測定モード動作を示す図、図4は、本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法のモード動作を示す図、図5aは、本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法の見極めテストモード動作を示す図、図5bは、本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法のトレーニング1の動作を示す図、図6aは、本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法のトレーニング2の動作を示す図、図6bは、本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法の効果測定モード動作を示す図である。
【0012】
まず、本実施形態による歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法は、被訓練者が左右の足を載せて歩行訓練を行うための左右独立駆動の一対の環状ベルトを独立に駆動するモータと、該環状ベルトにかかる被訓練者による接触乃至被訓練者が環状ベルトから離脱することを検出するための歩行面センサと、被訓練者の身体に離脱容易に取り付けられ、被訓練者が環状ベルト上から離脱/転倒したことを検出する腰ベルトと、前記回路機構を制御するための制御回路と、被訓練者他による操作スイッチ等を含む操作パネルと、被訓練者に対する風景画像や各種案内画面を表示するためのモニタ等を備え、制御回路が前記機構回路を制御するものである。前述のハード構成は前記した特許文献に記載されているため、本実施形態ではハード的図示を省略して説明する。
【0013】
さて、本実施形態による歩行訓練装置の回路構成は、図1に示す如く、制御回路(本体)100及び操作パネル200とから構成され、制御回路100は、前記環状ベルトへの被訓練者の接触乃至被訓練者が環状ベルトからの離脱を検出する歩行面センサ102と、前記腰ベルトが歩行者から離脱したことを検出する腰ベルトセンサ103と、前記環状ベルトを駆動するための一対のモータ106及び107と、該モータ106及び107を駆動制御するモータドライバ104及び105と、これら歩行センサ102と腰ベルトセンサ103とモータドライバ104及び105を制御する制御コンピュータ101と、前記被訓練者に対する風景画像や各種案内画面(訓練モード/訓練時間/歩行距離等)を表示するためのモニタ114と、外部のパーソナルコンピュータ300等とネットワークにて接続するためのHUB113と、被訓練者毎を識別するためのIDカードユニット112が接続されるUSBインフェースと、前記回路を統括的に制御する統制コンピュータ110と、該統制コンピュータ110に接続されるキーボート/マウス111とから構成され、前記操作パネル200は、前記制御コンピュータ101に歩行訓練の停止を指示するための非常停止スイッチ204と、装置駆動条件等を設定可能な操作スイッチ121と、主に被訓練者による操作を入力するためのタッチパネル122と、主に歩行速度等の数値データを表示するための表示器123とから構成される。尚、本実施形態においては、前記モータ106及び107並びにモータドライバ104及び105がベルト駆動手段並びに負荷トルク測定手段に相当する。
【0014】
この様に構成された本実施形態による歩行訓練装置は、統制コンピュータ110の制御下において、後述する被訓練者の身体的状態(通常の歩行速度、負荷トルク他)並びに該身体的状態を基に予め設定した歩行訓練計画と左右の足の状態に応じた歩行訓練を行うと共に、被訓練者毎の訓練実績や被訓練者の身体的情報(脈拍/血圧等)を測定して記憶する機能を有するものである。
【0015】
また本実施形態で述べる「初回評価」とは、被訓練者に対する歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法における「評価モード」による体力測定を意味し、具体的には、環状ベルトの駆動速度を0.1〜3.0Km/hまで経時的に速度を上げ、被訓練者が通常の歩行速度より速度が速いと感じてタッチパネル122等に接触したときの速度を測定し、被訓練者の通常の歩行速度を把握するためのトレーニング工程の一部であり、この「初回評価」を行う工程は、歩行速度測定工程に相当する。
【0016】
また本実施形態で述べる「第1期」とは、訓練に被訓練者が慣れるためのトレーニングを意味し、例えば(a)前記初回評価で得た通常歩行速度の約70%の速度による歩行訓練を約5分間定速で歩行する訓練と、(b)通常歩行速度の約70%の速度による歩行訓練を約10分間定速で歩行する訓練と、(c)通常歩行速度の約80%の速度による歩行訓練を約10分間定速で歩行する訓練と、(d)通常歩行速度の約90%の速度による歩行訓練を約15分間定速で歩行する訓練と、(e)通常歩行速度による歩行訓練を約10分間定速での歩行を2回行う訓練と、(f)通常歩行速度による歩行訓練を約10分間定速で歩行する訓練と、(g)通常歩行速度による歩行訓練を約10分間定速での歩行を2回行う訓練と、(h)通常歩行速度による歩行訓練を約10分間定速で歩行する訓練である。
【0017】
更に本実施形態で述べる「第2期」では、「第1期」の成果として「負荷見極めスト」による確認を経て「軽度トレーニング」が実施され、「負荷見極めテスト」とは、前記「第1期」により被訓練者が歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法に慣れた後に行われ、被訓練者の歩行訓練時に環状ベルトに負荷トルクを与えて被訓練者の許容負荷レベルを測定するためのものであって、(i)環状ベルトの駆動速度を0.1Km/h〜3.0Km/hまで経時的に速度を上げ、被訓練者が普通より速度が速いと感じてタッチパネル122等に接触したときの速度で止め、次いで、被訓練者が前傾姿勢にて環状ベルトを後方へ押し出しながら歩行した際、予め設定された6段階の環状ベルト負荷トルク(例えば、0.04Nm/0.09Nm/0.13Nm/0.19Nm/0.25Nm/0.30Nm)を経時的に上げ、被訓練者が、ややきついと速いと感じてタッチパネル122等に接触したときの負荷レベルを測定する負荷測定テストである。この「負荷見極めテスト」は、負荷トルク測定工程に相当する。
【0018】
更に本実施形態で述べる「軽度トレーニング」とは、(j)前記「負荷見極めテスト」で測定した負荷レベルを本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法により設定、制御可能な負荷トルク幅で1段階下げた負荷レベルによる約3分間の負荷歩行訓練と(k)前記「評価モード」で測定した通常速度で約10分間の定速歩行訓練とを1セットとして行う訓練と、(l)前記「負荷見極めテスト」で測定した負荷レベルで約5分間の負荷歩行を2回行う訓練と(m)前記「評価モード」で測定した通常歩行速度で約10分間の定速歩行訓練とを1セットとして行う訓練と、(n)前記「負荷見極めテスト」で測定した負荷レベルで約5分間の負荷歩行を2回行う訓練と(o)前記「評価モード」で測定した通常歩行速度で約15分間の定速歩行訓練とを1セットとして行う訓練である。
【0019】
更に本実施形態で述べる「転倒予防訓練」とは、回動中の左右の環状ベルトについて片方又は両方の減速率をランダムな時間間隔で変化させる制御であり、例えば片方の回動中の環状ベルトに対して、起動より固定の減速率20%/40%/60%/100%の様に減速率を変えて減速させる動作を行うものであり、減速率の大小によって4段階のレベル1〜4に区分される。
この転倒防止訓練レベルは、例えば、レベル1の減速率が20%程度、レベル2の減速率が40%程度、レベル3の減速率が60%程度、レベル4の減速率が100%の設定が考えられる。この「転倒予防訓練」は、一定リズムの歩行動作に転倒原因となるランダムな刺激を加え、この変化(例えば「足先の引っ掛かり」や「躓き」)に被訓練者が対応するように歩行訓練が行われるため、被訓練者の下肢神経の感覚統合を高めることができる。
【0020】
更に本実施形態で述べる「インターバルトレーニング」とは、例えば一定時間の通常歩行速度又は通常歩行速度から10%程度減速の速度から回動中の環状ベルトを40%程度減速させた状態にて一定時間回動させることを1セットとして、これを繰り返す制御を加えたトレーニングを実施することであり、被訓練者の身体状態に応じたトレーニングを行うことが可能なものである。
【0021】
更に本実施形態で述べる「第3期」では、「第2期」の成果として「効果測定」による確認を経て「高度トレーニング」が実施され、「高度トレーニング」とは、(p)前記「評価モード」で測定した通常歩行速度から10%乃至30%加速の速度での約5分間の訓練中、前記「転倒予防訓練(レベル1:減速率20%設定)」を加えた訓練(「転倒予防訓練」に対するインターバルトレーニング)を1セットとして行う訓練と、(q)前記「評価モード」で測定した通常歩行速度での約10分間の訓練中、前記「転倒予防訓練(レベル2:減速率40%設定)」を加えた訓練を1セットとして行う訓練と、(r)通常歩行速度での約15分間の訓練中、前記「転倒予防訓練レベル3」を加えた訓練を1セットとして行う訓練と、(s)通常歩行速度での約30分間の訓練中、前記「転倒予防訓練(レベル1:減速率20%設定)」を加えた歩行訓練である。
<全体動作>
【0022】
図2は、本実施形態による歩行訓練装置の全体動作を説明するための図であり、本装置の動作(統制コンピュータ110のプログラム)は、被訓練者の個人認証を行う「個人認証処理」と、被訓練者の歩行訓練が初回か否かを判定する「初回判定処理」と、被訓練者のトレーニングを実施する「トレーニング期処理」とに大別される。前記「個人認証処理」は、図2に示す如く、IDカードユニット112にセットされたIDカードを用いた被訓練者の個人認証を行うための個人認証ステップ201と、該個人認証が認証されたか否かを判定する認証判定ステップ202と、該判定ステップ202において「未認証」と判定されたとき、新規の登録手続きを行うか否かを判定し、操作パネル200の操作スイッチ121等からの指示が「不要」と判定されたとき処理を終了する登録判定ステップ203と、該登録判定ステップ203において登録「要」と判定されたとき、登録処理を行うステップを順次実行することにより行われる。
【0023】
前記「初回判定処理」は、前記認証判定ステップ202において「認証」と判定されたとき、IDカードにより認証され、これに基づいて読み出しされた被訓練者情報を基に初回測定か否かを判定し、初回である「未実施」と判定されたとき、後述の初回評価ステップ205(図3)に移行するステップ204とを実行することにより行われる。
【0024】
前記「トレーニング期処理」は、前記ステップ204において初回測定ではなく既に初回評価が完了していると判定したとき、当該被訓練者のトレーニング状態を記憶した過去の履歴情報を基に判定するトレーニング期判定ステップ206と、該ステップ206においてトレーニング(図4)を実施するステップ207と、前記判定ステップ206において、第2期を行うステップ208と、該ステップ208の後に前記「負荷見極め判定テスト」を行っているか否かを判定するステップ209と、該ステップ209において「負荷見極め判定テスト」を行っている(完了)と判定したとき、前記「軽度トレーニング」を実施するステップ211(図5b)と、トレーニング期を判定するステップ206において第3期を実行するステップ212と、前記第3期の効果を測定しているか否かを判定するステップ213と、該ステップ213において効果判定していると判定したとき、「高度トレーニング」を実行するステップ214と、該ステップ213において効果測定が「未実施」と判定されたとき、効果判定(図6b)を行うステップ215とを順次実行することにより行われる。
【0025】
次いで、前述の各ステップ205/207/210/211/214/215の詳細を説明する。
<初回評価>
前記初回評価を行うステップ205は、図3に示す如く、モニタ114に本装置の各種メニューを表示するステップ301と、該表示されたメニュー中から包括的トレーニングモードが選択されるステップ302と、該包括的トレーニングモード中の測定モートが設定されるステップ306と、該選択された測定モードが体力測定中か否かを判定するステップ303と、該ステップ303において体力測定中と判定されたとき、被訓練者毎に設定された個別プログラム(訓練メニュー)を生成するステップ304と、前記ステップ304において体力測定が完了したと判定したとき、被訓練者の身体状態の評価を行うステップ305を順次実行することによって、前述した評価モードによる被訓練者の通常歩行速度の測定を行うように動作する。
【0026】
このステップ207による第1期は、図4に示す如く、モニタにトレーニングメニューを表示するステップ401と、前述の「第1期」による装置に慣れるトレーニングを実行中か否かを判定するステップ402と、該ステップ402により「実行中」と判定したとき、前記「初回評価」によって測定した通常歩行速度を基にしたトレーニングプログラムを生成するステップ403と、該ステップ403により生成したトレーニングプログラムをモニタに表示し且つトレーニングを実施するステップ404と、被訓練者による当日のトレーニングが終了したか否かを確認し、終了しておらず「継続」と判定したとき、前記ステップ402に戻るステップ405と、前記ステップ402においてトレーニングが完了して実行中でないと判定したとき、当該「第1期」終了を登録するか否かを判定し、「不要」と判定されたときに前記ステップ405に移行するステップ406と、該ステップ406において、登録「要」と判定されたとき、データ登録処理を行うステップとを順次実行することによって、IDカードにより被訓練者を認証し被訓練者毎に登録された訓練履歴情報(第n回目まで終了等)並びに通常徒歩速度情報等を基にトレーニングプログラムをIDカードより被訓練者が認証される度に生成し、「第1期」を行うことができる。このように本処理は、ステップ402において前述した訓練(a)〜(h)がトレーニング期間中か否かを判定し、当該期間中においては訓練履歴情報や通常歩行速度情報等を基にトレーニングプログラムを毎回作成し、被訓練者に提供することができ、被訓練者に対する訓練メニューを実施することができる。
【0027】
尚、前記ステップ402における当該被訓練者が「第1期」実行期間中であるか否かの判定は、IDカードにより認証された被訓練者の訓練履歴情報によって判定され、ステップ406における登録確認の判定は、操作スイッチ121を用いた介護士等による操作によって入力された判断結果情報によって判定され、これら判定処理は他の動作においても同様である。更にIDカードがセットされたことを契機としてステップ403によるトレーニングプログラムを毎回生成することも、他の処理においても同様である。更に本例では、IDカードにより認証された被訓練者の通常徒歩速度情報等を記憶しておく例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、これら個人情報を歩行訓練装置及び歩行訓練プログラムにおいて記憶しておき、IDカードより被訓練者が認証されたことを契機として、該IDをキーとして個人情報を呼び出してトレーニングプログラム及びトレーニングメニューを生成しても良い。これは他の処理においても同様である。
<負荷見極め判定テスト>
【0028】
この環状ベルトに負荷トルクを与えた被訓練者に好適な負荷程度を測定するステップ210は、図5aに示す如く、モニタにトレーニングメニューを表示するステップ501と、本装置による測定モードが介護士等により設定されたことを入力するステップ509と、負荷見極め判定テストが実行中か否かを判定するステップ502と、該ステップ502により負荷見極めテストが「実行中」と判定したとき、負荷モードを初期値の「1」に設定するステップ503と、該設定した負荷レベル及び通常歩行速度に応じた個別プログラムを生成するステップ504と、該生成した個別プログラムメニューをモニタ上に表示し、且つ負荷テストを実行するステップ505と、該トレーニングメニューが終了しているか否かを判定するステップ506と、該ステップ506において「継続」と判定されたとき、前記ステップ502に戻るステップ506と、前記ステップ502において負荷見極めテストが完了していると判定したとき、当該負荷見極めデータ(被訓練者の負荷レベル)を登録するか否かを判定し、「不要」と判定されたときに前記ステップ506に戻るステップ507と、該ステップ507において「登録」と判定されたとき、データ登録処理を行うステップ510とを順次実行することによって、被訓練者の状態に応じた負荷レベルの測定を行うことができる。即ち、本処理は、ステップ502において前述したテスト(i)の負荷レベルを上げながら実施することができる。尚、前記ステップ506による負荷テスト終了確認は、前述した被訓練者がややきついと感じたときに入力される信号が入力されているか否かによって判定される。
<軽度トレーニング>
【0029】
このステップ211による軽度トレーニングは、図5bに示す如く、例えばトレーニング1レベルである当該軽度トレーニングが実行期間中であるか否かを判定するステップ511と、該ステップ511により「実行期間中」と判定されたとき、前記測定した被訓練者の負荷レベル及び通常歩行速度の各データを基に軽度のトレーニングメニュープログラムを生成するステップ512と、該生成したトレーニングプログラムをモニタに表示し且つ実行するステップ513と、該トレーニングメニューが終了しているか否かを判定するステップ514と、該ステップ514において「継続」と判定されたとき、前記ステップ511に戻るステップ514と、前記ステップ511において軽度トレーニングが完了完了していると判定したとき、当該軽度トレーニングを登録するか否かを判定し、「不要」と判定されたときに前記ステップ514に戻るステップ515と、該ステップ515において「登録」と判定されたとき、データ登録処理を行うステップ517とを順次実行することによって、軽度トレーニングを実施することができる。即ち、本処理は、ステップ512において前述した訓練(j)〜(o)を低負荷レベル且つ短時間から経時的に負荷トルク及び時間を上げながらの軽度トレーニングを実施することができる。
<高度トレーニング>
【0030】
このステップ212による高度トレーニングは、図6aに示す如く、第3期である当該高度トレーニングが実行期間中であるか否かを判定するステップ601と、該ステップ601により「実行期間中」と判定されたとき、前記測定した被訓練者の負荷レベル及び通常歩行速度の各データを基に高度のトレーニングメニュープログラムを生成するステップ602と、該生成したトレーニングプログラムをモニタに表示し且つ実行するステップ603と、該トレーニングメニューが終了しているか否かを判定するステップ604と、該ステップ604において「継続」と判定されたとき、前記ステップ601に戻るステップ604と、前記ステップ601において高度トレーニングが完了していると判定したとき、当該高度トレーニングを登録するか否かを判定し、「不要」と判定されたときに前記ステップ604に戻るステップ605と、該ステップ605において「登録」と判定されたとき、データ登録処理を行うステップ607とを順次実行することによって、高度トレーニングを実施することができる。即ち、本処理は、ステップ603において前述した訓練(p)〜(s)の如く、転倒予防訓練を加えた歩行訓練を経時的に速度及び転倒予防レベルを上げながら高度トレーニングを実施することができる。
<効果判定>
【0031】
このステップ213による判定処理は、例えば前述の「評価モード」で測定した歩行速度において前記転倒予防レベル1を加えた条件で30分間の歩行を行い、被訓練者の身体的情報(心拍数/血圧等)と歩行距離を測定するものであって、図6bに示す如く、効果測定(期間)中であるか否かを判定するステップ611と、該ステップ611において「測定中」と判定されたとき、前記同様に通常歩行速度を基にした効果測定プログラムを生成するステップ612と、該生成したプログラムの項目をモニタに表示し且つ前記歩行テストを行い、ステップ611に戻るステップ613と、前記ステップ611において効果測定が完了したと判定されたとき、前記測定結果(身体的情報/歩行距離/測定中の腰ベルト離脱等の情報)を集計するステップ614と、該ステップ614による集計が終了して結果を出力したか否かを判定し、未出力の場合にステップ614に戻るステップ616と、該ステップ616により出力が実行されたと判定されたとき、当初の評価モードにて測定した評価結果と比べて効果測定モードによって測定した値が向上しているか否かを判定するステップ615を実行することによって、当該歩行訓練及び転倒予防訓練における効果を数値比較により判定することができる。
【0032】
この様に本実施形態による歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法は、被訓練者の通常の歩行速度を歩行速度測定工程により測定し且つ被訓練者により選択された環状ベルトの負荷トルクの段階を測定し、該通常の歩行速度並びに負荷トルクの段階を基準として環状ベルトの回動速度及び負荷トルクを変化させた状態で第1期及び第2期トレーニング工程を実行すると共に、回動中の環状ベルトの減速率をランダムな時間間隔で変化させる第3期トレーニング工程を実行することにより、被訓練者の身体状態に応じた歩行訓練及び転倒予防訓練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による歩行訓練装置の制御回路を示す図。
【図2】本実施形態による歩行訓練装置の制御回路の全体動作を示す図。
【図3】本実施形態による歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法の測定モード動作を示す図。
【図4】本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法のモード動作を示す図。
【図5a】本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法の見極めテストモード動作を示す図。
【図5b】本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法のトレーニング1の動作を示す図。
【図6a】本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法のトレーニング2の動作を示す図。
【図6b】本歩行訓練装置及び歩行訓練装置の制御方法の効果測定モード動作を示す図。
【符号の説明】
【0034】
100:制御回路、101:制御コンピュータ、102:歩行面センサ、102:歩行センサ、103:腰ベルトセンサ、104及び105:モータドライバ、106及び107:モータ、110:統制コンピュータ、111:マウス・キーボード、112:IDカードユニット、114:モニタ、121:操作スイッチ、122:タッチパネル、123:表示器、124:非常停止スイッチ、200:操作パネル、121:個人認証ステップ、202:認証判定ステップ、203:登録判定ステップ、205:初回評価ステップ、206:トレーニング期判定ステップ、300:パーソナルコンピュータ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ベルトの回動及びトルクを制御するベルト駆動制御手段と、前記環状ベルトの回転速度を測定する速度測定手段と、前記環状ベルトの負荷トルクを測定する負荷トルク測定手段と、前記ベルト駆動制御手段と速度測定手段と負荷トルク測定手段を制御する制御手段とを備え、前記環状ベルト上を被訓練者が歩行することにより歩行訓練を行う歩行訓練装置であって、
前記制御手段が、
前記被訓練者が前記環状ベルト上を歩行したときのベルト速度を被訓練者の歩行標準速度として速度測定手段により測定する歩行速度測定工程と、
該歩行速度測定工程により測定した歩行標準速度から30%乃至40%減速したベルト駆動速度を下限とし且つ歩行標準速度を上限として、前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトの回動速度の減衰率を変化させる第1工程と、
前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトへ複数段階の負荷トルクを与え、前記環状ベルト上を歩行した被訓練者により選択された負荷トルクの段階を負荷トルク測定手段により測定する負荷トルク測定工程と、
該負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準とし、且つ前記評価工程により検出した歩行標準速度で前記環状ベルトを回動する第2工程と、
前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準として前記環状ベルトを回動し、且つ前記回動中の環状ベルトの前記減衰率をランダムな時間間隔で変化させる第3工程とを実行することを特徴とする歩行訓練装置。
【請求項2】
前記制御手段が、第1工程において、
前記環状ベルトを、前記減衰率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度から10%乃至30%加速する加速率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で所定時間駆動する工程とを実行することを特徴とする請求項1記載の歩行訓練装置。
【請求項3】
前記制御手段が、第2工程において、
前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階から1又は2段階低い負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程と、
前記負荷測定工程により測定した段階の負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程とを実行することを特徴とする請求項1又は2記載の歩行訓練装置。
【請求項4】
前記制御手段が、第3工程において、
前記加速率の範囲で環状ベルトを所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で環状ベルトを所定時間駆動する工程とを実行することを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の歩行訓練装置。
【請求項5】
環状ベルトの回動及びトルクを制御するベルト駆動制御手段と、前記環状ベルトの回転速度を測定する速度測定手段と、前記環状ベルトの負荷トルクを測定する負荷トルク測定手段と、前記ベルト駆動制御手段と速度測定手段と負荷トルク測定手段を制御する制御手段とを備え、前記環状ベルト上を被訓練者が歩行することにより歩行訓練を行う歩行訓練装置の制御方法であって、
前記制御手段が、
前記被訓練者が前記環状ベルト上を歩行したときのベルト速度を被訓練者の歩行標準速度として速度測定手段により測定する歩行速度測定工程と、
該歩行速度測定工程により測定した歩行標準速度から30%乃至40%減速したベルト駆動速度を下限とし且つ歩行標準速度を上限として、前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトの回動速度の減衰率を変化させる第1工程と、
前記ベルト駆動制御手段により環状ベルトへ複数段階の負荷トルクを与え、前記環状ベルト上を歩行した被訓練者により選択された負荷トルクの段階を負荷トルク測定手段により測定する負荷トルク測定工程と、
該負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準とし、且つ前記評価工程により検出した歩行標準速度で前記環状ベルトを回動する第2工程と、
前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階を基準として前記環状ベルトを回動し、且つ前記回動中の環状ベルトの前記減衰率をランダムな時間間隔で変化させる第3工程とを行うことを特徴とする歩行訓練装置の制御方法。
【請求項6】
前記制御手段が、第1工程において、
前記環状ベルトを、前記減衰率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度から10%乃至30%加速する加速率の範囲で所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で所定時間駆動する工程とを行うことを特徴とする請求項5記載の歩行訓練装置の制御方法。
【請求項7】
前記制御手段が、第2工程において、
前記負荷トルク測定工程により測定した負荷トルクの段階から1又は2段階低い負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程と、
前記負荷測定工程により測定した段階の負荷トルクを与えて環状ベルトを所定時間回動する工程とを行うことを特徴とする請求項5又は6記載の歩行訓練装置の制御方法。
【請求項8】
前記制御手段が、第3工程において、
前記加速率の範囲で環状ベルトを所定時間駆動する工程と、前記歩行標準速度で環状ベルトを所定時間駆動する工程とを行うことを特徴とする請求項5乃至7何れかに記載の歩行訓練装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2008−36054(P2008−36054A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212936(P2006−212936)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)